Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
頚椎後方の解剖学的アプローチ-inter-muscular plane
approach−とその応用
Author(s)
白石, 建
Journal
歯科学報, 115(5): 464-464
URL
http://hdl.handle.net/10130/3878
Right
四肢や頚椎前方の手術では,隣り合う筋肉と筋肉の間にもともと存在する隙間を広げて進入する解剖学的ア プローチ:inter-muscular plane approach がすでに確立されているが,椎弓形成術をはじめとする従来の頚椎 後方手術では頚椎後方筋群の筋腹を裂く,切除する,あるいは棘突起から切離する intra-muscular approach が唯一の進入法である。頚半棘筋と多裂筋は頚椎伸展運動の力源であると同時に,レバーアームとなる棘突起 に付着しているために dynamic stabilizer としての役割も併せもつ。頚椎後方の従来型アプローチでは,これ らの筋肉への損傷が大きく,術後に頑固な項背部痛,頚椎の直線化あるいは後弯化,さらには可動域制限など の問題が生じてきた。筆者は1999年に,頚椎外科の歴史では初めて,inter-muscular plane に沿って進入する 頚椎後方の解剖学的アプローチを考按し,以降,上位頚椎を含め多くの頚椎後方手術に応用している。新しい 進入法は正中アプローチと傍正中アプローチからなり,ともに手術用顕微鏡を用いて inter-muscular plane に 沿って進入するため,筋実質への損傷が最小限に抑えられることが最大の利点である。 正中アプローチによる手術の代表的疾患は頚髄症であり,傍正中アプローチでは頚椎神経根症である。ま た,頚髄腫瘍は正中および傍正中アプローチを併用して切除する。頸髄腫瘍の中でも腫瘍が脊柱管内から椎間 孔を通って大きく前方に膨隆する頚髄砂時計腫は,前方腫瘍部分が椎骨動脈を巻き込むため,従来の術式で術 野を確保するにはどうしても椎間関節や椎弓の切除量が多くなる。これによって頚椎の支持性が損なわれれ ば,金属固定材料を用いた非常に侵襲の大きな手術となる。あるいは,椎骨動静脈からの出血をコントロール することが困難になれば腫瘍を取り残さざるを得ない。さらには,再発腫瘍の切除は初回手術にくらべて侵襲 が必然的に大きくなる。これに対し,筆者の開発した「椎弓根部をピボットポイントとする完全還納式片側椎 弓形成術」Pedicle-hinged Unilateral Posterior Arch Recapping Technique(P-UPART)は,
1)腫瘍の前方部分と椎骨動脈を直視下において剥離するため,腫瘍を安全,確実に全切除できる 2)頚椎後方の骨・軟部支持組織からなるランドマークが解剖学的位置にほぼ完全に温存されるため,術後の 頚椎弯曲異常が予防でき,頚椎の支持性と運動性が保持され,再手術も安全に行える。 3)椎弓開大のピボットポイントが椎弓根部であるため,椎弓外縁をピボットとする従来の拡大術に比べ,椎 弓開大の回転半径が大きくなり,脊柱管内の視野を広く確保できる 4)健康な筋肉によって死腔が埋まるため,感染予防および髄液瘻の早期閉鎖が期待できる 5)筋付着部の温存によって椎弓・棘突起への血流が保たれるため,骨切り線や移植骨の骨癒合が促進される などの利点を持つ画期的な術式である。 本論ではこれらの術式を,代表症例に行った手術のビデオを供覧しながら解説する。 ≪プロフィール≫ <略 歴> 昭和52年3月 慶應義塾大学医学部卒業 平成3年8月 英国ロンドン大学医学部ハマースミス病 院整形外科留学 senior registrar 平成17年4月 東京歯科大学市川総合病院整形外科教授 平成18年9月 東京歯科大学市川総合病院脊椎脊髄病セ ンター長 現在に至る <資 格> 日本脊椎脊髄病学会評議員 日本脊椎脊髄神経手術手技 学会理事 米国および欧州頚椎外科学会会員 NPO 法 人国際頚椎学会日本機構理事長 <業 績>
平成14年6月 Mario Boni Award(最優秀演題賞) 第18回国際頚椎外科学会ヨーロッパ部門 Paris, France
平成16年6月 最優秀臨床論文賞 第44回日本脊椎脊髄 病学会 東京
平成25年6月 Mario Boni Award(最優秀演題賞) 第29回国際頚椎外科学会ヨーロッパ部門 Bordeaux, France
平成26年4月 ベトナムホーチミン市名誉市民(ベトナ ム脊椎外科医育成,医療活動に対して) 平成26年6月 Mario Boni Award(最優秀演題賞)
第30回国際頚椎外科学会ヨーロッパ部門 Pamplona, Spain 平成27年3月 第6回国際頚椎外科学会アジア太平洋部 門学会長 横浜 平成27年8月 中国大連市第2人民医院骨科客員教授 <その他> 海外招待講演および海外手術指導多数
特 別 講 演 2
頚椎後方の解剖学的アプローチ
inter-muscular plane approach−とその応用
東京歯科大学市川総合病院整形外科教授
白石
建
学 会 講 演 抄 録 464