2 人 工 知 能 学 会 誌 33 巻 1 号(2018 年 11 月)
表紙解説
─うめ─
Cover Comment : UME
う め
(小沢高広・妹尾朝子)
三宅 陽一郎
株式会社スクウェア・エニックス
Youichiro Miyake SQUARE ENIX CO., LTD. [email protected]
Keywords:
art, robot, manga.図 1 1 月号表紙 作画:うめ
3 表紙解説─うめ─ 1.は じ め に 今年も毎号,人工知能にちなんだイ ラストをそろえることで,多彩な表紙 を楽しんでいただく企画を開催いたし ます.本年最初となる 1 月号の表紙を, うめ(小沢高広・妹尾朝子)先生に飾っ ていただきました. 近未来のお正月がテーマです.この ようにペットロボットと一緒にお散歩 や,初詣ができるようになり,それと 同時に,ペットの人工知能も,リアル タイムにさまざまな計算を,データベー スを活用しながら高速にするようにな ると期待されます. また,マルチエージェント技術で, 人工知能同士のコミュニケーションを 行うことで情報を共有し,計算負荷を 減らしながら,あるいは情報の信頼度 を高めながら,人間と共生していくこ とになる未来が来るのでしょうか. 2.解 説 小沢先生とは,筆者(三宅)が登壇 した「マンガ×人工知能」というトー クセッションの懇親会でお会いしまし た.マンガの中で人工知能はどう活用 できるかについてお話を聴かせていた だいたのがきっかけです.うめ先生は, ゲーム開発を題材にされた作品でテレ ビドラマ化もされた「大東京トイボッ クス」(幻冬舎コミックス)や,アップ ルコンピュータの葛藤を題材にした「ス ティーブズ」(小学館)など話題作をリ リースされ,技術にも造詣が深く,常 にエンジニアや研究者にも刺激を与え 続けています.人工知能にも深い関心 をもたれており,今回表紙をお願いさ せていただきました. そこで小沢先生からは創作者,マン ガ家という立場から,AI に思うところ を率直に書いていただきました.以下, 掲載させていただきます. 「AI がマンガを描く. いつの日か,そんなこともあるかも しれないけれど,数十年の単位でまだ ないだろうし,うーん,あんまり期待 もしていない(当然,危惧もしていな い).ただ AI が,打合せの相手をして くれるというのは,あったらいいな, と思う未来だ.編集者の役割のうち, ネタ出しの部分だったら,何とかなっ たりしないもんだろうか. 例えば,次の展開を考えるという場 面.ああだこうだと,いろいろなアイ ディアが飛び交う.編集者が出すネタ というのは,何も正解である必要はな い.むしろ,あさってな方向のアイディ アを言ってくれて,そこを起点に思い もしなかった展開を作家が思いつくこ とは,エンタメ業界にいれば,誰もが 経験あることだろう. つまり大事なことは,精度よりも, こちらがスコーンと打ち返せるまで, 心折れずに,根気良くアイディアを投 げ続けてくれることなのである. 『あのキャラ,最近出てないですよね』 『ヒロインを追いつめませんか』 『主人公を空飛ばしましょうよ』 そんな感じのことをどんどん提案し てほしい.夜中でも,お風呂でもいつ でも相手をしてくれるというのは,た いへんありがたい. あともう一つ贅沢を言うなら,読み にくい箇所を指摘してほしい. 『何ページの何コマ目がちょっとわか りにくいです』 もちろん作家が意図的にわかりにく くしているときもあるので,そのとき は「そこは大丈夫」とこちらも言うだ けである.もしかしたら,リアルな人 間に言われるより,ストレスが少ない んじゃなかろうか. そのうえ, 『主人公,右頬殴られましたけど,次 ページで左頬が腫れてます』 なんて,作画のミスの指摘までして くれたら,もう最高である. 要するに,編集者とは,作家にとっ てファーストリーダーだ.つまり AI に 早くマンガが読めるようになってほし い.そこが,まずは第一歩なんだろう と素人ながらに思う.その辺りにご興 味のある方,もしプロマンガ家として 役に立てることがあれば,ぜひ協力さ せてください. ちなみに,今回の表紙のイラストは, 道案内を中心にガイド役をしてくれる AIネコである.最近普及してきたシェ アリングサイクルみたいに,そこいら にいるネコがちょっとしたガイドをし てくれる未来,というのもまた楽しい かな,と思う.」 第一線のマンガ家から聴ける貴重な ご意見であると思います.特に,マン ガそのものではなくて,ネタを投げ続 けてほしい,しかも正解のネタではな くても,それなりの提案でいい,それ によって創作活動が促進されるという ところは,目から鱗が落ちました. また,ロジカルな間違いがあった場 合の指摘は,品質保証における人工知 能という分野で示唆に富んでいます. 芸術,創作と人工知能が交わる年にな る予感です. 2017年 12 月 15 日 受理