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特集「超高齢社会とAI ─社会生活支援編─」にあたって

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324 人 工 知 能  31 巻 3 号(2016 年 5 月) 世界保健機構(WHO)や国連の定義によると,総人 口に対する 65 歳以上の高齢者人口が占める割合を指す 高齢化率が 7%を超えた社会が「高齢化社会」,14%を 超えた社会が「高齢社会」,21%を超えた社会が「超高 齢社会」とされる.日本が初めて「高齢化社会」となっ たのは 1970 年,1994 年には「高齢社会」,そしてつい に 2007 年に高齢化率が 21%を超え,「超高齢社会」に 進んだ.2011 年から 2012 年まで内閣府により 5 回にわ たり開催された「高齢社会対策の基本的在り方等に関す る検討会」での報告書には,超高齢社会における課題の キーワードとして,「高齢者の生活環境の充実」,「高齢 者の社会的・物理的・地理的孤立の防止」,「世代間・世 代内格差の拡大防止」,「高齢者の意欲尊重」,「生涯現役 社会の実現」,「認知症」があげられている. 国連加盟約 200 か国の中で日本だけが直面している 人類未体験規模での超高齢社会が抱えるさまざまな課題 を解決するための一つのツールとなり得るのが,高齢社 会と情報技術の融合であると期待されている.このよう な中,本学会では,2014 年 4 月 18 日に第 68 回人工知 能セミナー「医療と IT ∼既存の医療の壁を情報技術で 超えるために∼」を開催し,各分野の研究者が超高齢社 会をキーワードとして意見交換を行った.本学会全国大 会でも高齢者・障害者の自立的移動を支援するロボッ トに関するセッションや,関連する口頭発表が数多く 行われている.本誌でも,2014 年 11 月の「Big Data Becomes Personal ─発見情報学が拓くヘルス & ウェル ネス─」(Vol. 29, No. 6, pp. 580-627)および 2015 年 11 月の「人の認知を拡張し健康を促進する環境知能」(Vol. 30, No. 6, pp. 724-752)と題する特集号の中で,高齢者 支援を対象とする研究が紹介されている.本特集号では, 内閣府でまとめられた超高齢社会における課題のキー ワードをもとに当該分野を牽引する研究者による最新の 研究成果を紹介し,本分野の研究をさらに加速させてい きたい. 「高齢者の生活環境の充実」をキーワードとして,沼 尾の「無負荷・無侵襲センサによる高齢者見守りシステ ム」では,多くの高齢者が,在宅でできるだけ長く健康 に自立した生活を送るために,居住者の健康状態をきめ 細かく,かつ切れ目なく長時間にわたってモニタし,異 常状態に対しては,即座に関係機関に通報し,また,症 状が発症する前の未病を発見し,手当てができるような 無負荷・無侵襲見守りシステムについて紹介している. 「高齢者の社会的・物理的・地理的孤立の防止」をキー ワードとしては,荒牧らが「高齢者の社会的孤立と認知 症,その防止」というタイトルで,社会的孤立が抱える 問題について概観し,高齢者の孤立を防ぐためには,ソー シャルメディアなど高齢者をつなぐサービスを活用して いくとともに,語りを引き出すことが QoL 向上につな がる可能性について解説している.インターネットを通 じて情報自体を提供するのではなく,情報を提供する人 を提供する技術,情報提供者と提供される側を結びつけ る技術などを自身の取組みを交えて紹介している. 「世代間・世代内格差の拡大防止」というキーワード では,田中らが「世代をつなぐ知的インタフェースとし てのロボット活用」の中で,高齢者と子供が交流する場 面に着目し,そこでの交流を支援するロボット技術につ いて解説している.少子高齢社会において,高齢者の就 労支援と子供の教育はともに重要な社会的課題であると し,その双方に有益をもたらす技術の重要性,世代間に 存在するさまざまなギャップを埋める知的機能の研究の 必要性を訴え,自身のプロジェクトの背景と展望が述べ られている. 「高齢者の意欲尊重」というキーワードでは,大島ら が,「高齢者に意欲をもたらす活動方法と内容の個人化」 というタイトルで,介護施設利用者の認知症の状態や 作業能力を考慮して作業を個人化すると,達成感が得ら れ,意欲が継続すると議論している.ピアノの模範演奏 を CG で作成し,ハーフミラーを使って,奏者の手をリ アルタイムに模範演奏の手にかぶせるピアノ学習の支援 方法の個人化の取組みについて紹介している. 「生涯現役社会の実現」というキーワードでは,矢入が, 「高齢者の Technology Acceptance と人工知能」という タイトルで,介護・福祉に関わる産業の振興が強く期待 されているにもかかわらず,新技術の多くが実用化され にくいという問題について議論している.Davisらによっ て 1989 年に提案された Technology Acceptance Model (TAM)のその後の展開について関連研究とともに解説 し,人工知能と CHI が融合することで高齢者に新技術 が受け入れやすくなる可能性について述べている. 最後に,今後四人に一人が発症するとされる「認知症」

特集「超高齢社会と AI ─社会生活支援編─」にあたって

坂本 真樹

(電気通信大学)

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325 人 工 知 能  31 巻 3 号(2016 年 5 月) については 2 本の記事を紹介する.加藤らの「高齢者の 発話から認知症の危険度を察知する情報技術─誰でも気 軽に使える認知症スクリーニングを目指して─」では, 高齢者の質問応答時の発話音声と脳血流に着目し,これ らを用いて認知機能低下のリスクを推定する情報システ ムについて解説している.高齢者の発話音声から早期認 知症の認知機能スコアに相関性を有する非言語的特徴を 早期認知症の認知機能スコアに相関性を有する抽出し, これに統計的機械学習の AI 技術を適用することで,認 知症の観察型評価尺度 CDR と高い一致度を有する認知 症の早期スクリーニングをしようとする研究開発事例を 紹介している. 大武の「認知症の予防と支援に役立つ人工知能と高齢 者とともにつくる認知症予防支援サービスの開発」では, 認知症予防と支援のための技術開発と社会実装には,当 事者である高齢者や関係者の参加や関与が不可欠である とし,その方法論について議論している.具体的には, 高齢者とともにつくっている認知症予防サービスの開発 について,本学会近未来チャレンジセッションでの高齢 者自身の発表内容とその後の展開を紹介する形で解説し ている. 編者の坂本も,情報処理学会誌 2015 年 6 月号の特集 「社会参加を支援する情報処理─障害者・高齢者と拓く イノベーション─」で「高齢者の感性を尊重する情報処 理技術─オノマトペに着目して─」と題する解説論文を 執筆している.超高齢社会と情報技術に関心をもたれた 方は,関連学会の研究成果も合わせて参考にされること をお勧めする. 最後に,本特集記事の編集にあたってご尽力いただい た執筆者,関係者の皆様に心より感謝申し上げたい.

参照

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