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コンピュータとの出会いと変化のスピード

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Academic year: 2021

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(1)IPSJ Magazine. [巻頭コラム]. コンピュータとの出会いと 変化のスピード ▪中林 美恵子.  一個人として初めてコンピュータを購入したのは,1990 年のことだった.それまではもっぱら小さなワー プロが執筆道具だったが,アメリカに渡り大学院で政治学の論文を書くうち,ワープロではとても間に合わ なくなってしまったのだ.その頃学生たちの間で人気だったのが,発売されて間もない Macintosh SE/30 で あった.学割を駆使して 30 万円以下で買ったように記憶している.貧乏学生としては一念発起だった.  しかし結局のところ,高性能なワープロ程度にしか使いこなせなかったのは,実に残念だった.ネットワー クに接続しコンピュータ機能を十分活用するまでには及ばなかったのである.SE/30 を横目に FAX で日本に 原稿を送信するありさまだった.それでも,初めて買った Macintosh には特別な愛着が残っている.十分使 いこなせなかったので申し訳ないという気持ちもあったのだろう.1992 年には日本語の機能が入ったラッ プトップに買い替えたものの,SE/30 はしばらく自宅の机上に飾り続け,ついには青い専用ケースごと日本 に持ち帰り,実は今でも埼玉県の実家の押入れに眠らせている.  アメリカ議会の職場では,1980 年代からとっくにコンピュータ化が進んでいた.私が上院予算委員会に 採用が決まった 1992 年には,スタッフ同士のオフィス内連絡は完全にメールだったし,外部とのネットワー ク機能もフル活用され,情報セキュリティのファイアウォールは,二重にも三重にも張り巡らされていた. リサーチのみならず,データやドキュメントの共有,複雑な計算式,グラフの作成やニュースレターの編集. 498. 情報処理 Vol.59 No.6 June 2019.

(2) ■ 中林 美恵子 早稲田大学 教授 早稲田大学社会科学総合学術院・教授.元ア メリカ連邦議会上院予算委員会補佐官(連邦 公務員,共和党) .元衆議院議員.大阪大学 博士(国際公共政策) .米ワシントン州立大学 修士(政治学) .近著に『トランプ大統領とア メリカ議会』 .. まで,ありとあらゆるものが簡単で手軽に扱える段階にあり,ひどく感激したものだ.  そんなアメリカ議会の職場では,次から次へとプログラムやシステム,機種のアップデートが進み,あれ よあれよという間に何もかもが高性能化していった.1993 年にクリントン政権が誕生すると,ゴア副大統 領による情報スーパーハイウェイ構想が注目を浴び,IT バブルのレールが敷かれた.仮想書店のアマゾンが 誕生したのもこの頃である.2000 年問題という未知の課題を前に,アメリカ議会が戦々恐々としたときも あった.  その後も IT の進化は目覚ましいスピードで私たちの生活や考え方を変えようとしている.仮想通貨やソー シャルネットワーキングは,金融や政治にインパクトを与え,私たちの法整備はそれについていけていない. 国際犯罪も国家の安全保障も,サイバー空間抜きには語れなくなった.  そんな時代だからこそ,IT 人材の育成は私たちの生活や国際競争力にとって死活問題だ.便利になる生 活の一方で,情報テクノロジーは国家の安全にとって核兵器よりも重要な役割を担いそうだ.どの分野でも, 凄まじい技術発展にこそ哲学や倫理が不可欠なことは間違いない.哲学そしてリーダーシップや倫理,歴史 や世界観について,IT 人材育成にバランス良く取り入れていくことこそが,教育界に課せられた役割である と感じる.. 情報処理 Vol.59 No.6 June 2019. 499.

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