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現像工程不要な波長1.55μm帯ホログラムの試作・評価

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Academic year: 2021

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*近畿大学工業高等専門学校

総合システム工学科 電気電子コース

現像工程不要な波長

1.55μm帯ホログラムの試作・評価

大島 茂

Trial Manufacture and Evaluation of a Hologram with an unnecessary

development process at 1.55 μm

Shigeru Ohshima

A holographic optical element (HOE) for optical fiber coupling has been investigated. The hologram with an

unnecessary development process has been manufactured at wavelength of 1.55μm. Diimonium organic dye was

used for photosensitive material. Because diimonium organic dye did not stick to a plate glass, acrylic resin was used

for binder resin. The thin film of the organic dye was exposed by improved equipment for high power light irradiation

at wavelength of 1.55μm. The thin film became the hologram with an unnecessary development process at the

exposure. Reconstructed images of the hologram has been also observed by using an infrared camera with a

microscope.

Keyword : holographic optical element, hologram, optical fiber, communication, organic dye,

optical coupling,

1.はじめに

筆者は光デバイスを低コスト化するためにホログラム による自己光結合の実現を目指していた1)。自己光結合を 行うためには、現像工程が不要な波長1.55μm 帯のホログ ラムを実現する必要がある2)。しかし、1.55μm 帯の光は フォトンのエネルギーが低いため、光化学反応を生じさせ ることが困難であり、感光性が低い。したがって、1.55μ m 帯のホログラムはパターンマスクを使って短波長光で 露光するか、電子ビームなどで描画するなど製造工程が多 くなる。加えて自己光結合では現像工程があることも好ま しくない。露光後に乾板を現像し、元の位置に戻すとして もμmオーダの位置ずれが生じるからである。このような 理由から現像工程が不要な波長1.55μm 帯ホログラムの 実現を目指していた。 近年の光ファイバ増幅器の高性能化に伴い、高出力な 1.55μm光を容易に扱うことが可能となった。また、 DVD-R や CD-R のように有機色素を使った光ディスクに データ記録がなされており、保管に気を付ければ信頼性も 得られている。そこで、これら2つの技術を使って、 ホログラムを製作することを考えた2)。有機色素には波長 1.55μm帯で適度な光吸収を有するジイモニウム系有機 色素が有望である。しかし、ジイモニウム系有機色素はガ ラス基板に直接付着しないため、アクリル樹脂をバインダ ーとして使い、アクリル樹脂中にジイモニウム系色素を溶 かし、成膜した3)。また、有機色素膜を露光するためには 1W 程度の強力な光を照射する必要がある。Er ドープト 光アンプを用いて強い光を得るが、光アンプの出力コネク タが損傷しないように露光光学系を構成する必要がある。 さらに、露光した干渉縞のコントラストが大きくなるよう に露光条件を最適化する必要がある。 この程、これら種々の問題を解決し、1.55μm 帯のホロ グラムを試作し、その再生像の観測に成功したのでご報告 する。自己光結合は未だに実現されていないが、現像工程 不要な1.55μm帯ホログラムはホロカップラ4)などに適 用可能であり、新たな光デバイス開発の可能性を有する。

2.有機色素膜の製作

波長 1.55μmの光を吸収する有機色素の種類は極めて 少ないが、アミニウム系有機色素とジイモニウム系有機色

(2)

素などがある。これらの有機色素は200℃前後で熱分解し、 光透過率や屈折率が変化する。アミニウム系有機色素は波 長1.5 μmに吸収のピークがあり、1.55μmにおいても極 めて大きい吸収がある。従って、アミニウム系有機色素は 透過率変化型のホログラムを製作するのに適しているが、 屈折率変化型ホログラムでは光損失が大きくなるので適 さない。ジイモニウム系有機色素は波長1.1μmに吸収の ピークがあり、1.55μmにおいては適度な光吸収がある。 従って、ジイモニウム系有機色素は屈折率変化型ホログラ ムとして有望である。 最初はジイモニウム系有機色素をジクロロメタンなど の有機溶剤に溶かし、ガラス基板上に成膜した。しかし、 有機溶剤が蒸発するとジイモニウム有機色素が粉末状に なって現れ、しかもガラス基板に密着していなかった。こ のような状態ではホログラムとして用いるには不適当で あり、アクリル樹脂をバインダーとして使うことにした3) ジクロロメタン中に PMMA(アクリル樹脂)とジイモ ニウム系有機色素を溶かし、スピンコータによってガラス 板上に有機色素膜を成膜した。純度が低いアクリル樹脂で は相分離と見られる縞状模様が出現することがあるので 5)、東京化成工業㈱のPMMA No.890 を用いた。ジクロロ メタン 5.47 g中に PMMA426 mg とジイモニウム色素 41.5 mg を溶解し、スピンコータ 2200rpm、60 秒間の条 件で直径 27mm のガラス基板上に成膜した。2 度塗りを 行い、15μm厚の有機色素膜を成膜した。波長 1.55μm の光透過率は37 %であった。成膜した有機色素膜の外観 を図1に示す。膜厚を厚くするために回転速度を遅くし、 2度塗りを行ったためか、多少むらが出ている。下部の欠 けている部分は膜厚を測定するために、人為的に剥がした 部分である。 図1 試作した有機色素膜

3.露光用光学系

最も簡易な光ファイバのホログラムの1つとして、図2 (a)に示すように2本の光ファイバを揃えて配置し、両 光ファイバから光を照射したものが考えられる。この場合、 1つが参照光、もう一方が物体光を放射して有機色素膜を 露光することになる。有機色素膜上では2本の光ファイバ からの光で干渉縞が生じ、縞の明部では有機色素が熱分解 する。このため、2本の光ファイバからは 1.55μm帯の 同一波長、同一偏波かつ、コヒーレント長以下の光学長差 で強い光を出射させる必要がある。干渉縞の模様により熱 分解した有機色素膜はホログラムとなる。図2(b)のよ うに1本の光ファイバから光をホログラムに照射すれば、 この光が照明光となり、再生像がもう片方のファイバコア から出射したような虚像が得られる。 光ファイバ 有機色素膜 ガラス板 (a) ホログラムの製作 (b) ホログラムの再生像 再生像 (虚像) 図2 ホログラムの製作と像の再生 露光する際に高出力光アンプの出力コネクタが損傷す る事故が生じるため、光アンプの出力を極力抑える必要が ある。そこで、図3に示すように2 台の光アンプを用いる ことにより光アンプの出力を半減した光学系を構築した。 2 台の光アンプは光学長に差があるため、それぞれの光ア ンプのファイバ長を測定し、光学長補正用の光ファイバを 挿入した。光アンプは入力レベルが小さいと、安全装置に より動作を停止してしまうため、光スイッチは光アンプの 出力側に挿入した。光スイッチはAC Photonics 社製 1× 2 Solid-State Fiberoptic Switches を使った。この光スイッ チは磁気光学効果により切り替え動作を行うものと推測 され、Unidirectional タイプでは出力ポートからの反射光は 入力側に戻らず、光アンプの出力側の反射光検出を動作さ せないようにすることができる。また、高速タイプの光 SW では 30μs で切り替え可能であり、十分な切り替え速 度が得られた。当初、光スイッチを片枝のみに挿入した光 学系で露光したが、明確な干渉縞を焼き付けることが出来 なかった。次に、両枝に光スイッチを挿入した光学系にす ることにより縞のコントラストは格段に改善した。この理 由は露光時の縞内の温度高低差が大きくなったためと考 えている。偏光ビームスプリッタ(PBS)以降は PANDA ファイバを用い、2 本の PANDA ファイバの目の方向を合 わせ、偏波を揃えた。PANDA ファイバの出射端から有機 色素膜までの距離L は2mmとした。2 本の PANDA ファ イバは図4に示すようにポリスチレンのチューブに挿入

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し、接する状態(2つのコアの間隔が 125μm)とした。 ポリスチレンのチューブは光ファイバが接するような内 径が得られるように型をチューブに挿入して、熱加工した。 図5に2 本の PANNDA ファイバの端面の写真を示す。2 本のファイバが接し、PANDA の目の方向が合っている事 が分かる。 PANDA ファイバ1 LD 有機 色素膜 PBS1 光SW1 光アンプ1 偏波コントローラ゚1 光学長 補正ファイバ 光カプラ P1 P2 光アンプ2 偏波コントローラ゚2 PBS2 PANDA ファイバ2 L 光SW2 図3 ホログラム露光用光学系 図4 光出射端のPANDA ファイバ 図5 PANNDA ファイバの端面

4.

露光実験

露光を行なう前に、図3の光学系で光アンプ1,2 の出力 を0.01W とし、2つの光 SW を閉じた。図6に示すよう に顕微鏡付赤外線TV カメラで PANDA ファイバの端面を 観察した。赤外線TV カメラは XYZ ステージ上に設置さ れており、観察位置調整やピント調整が可能である。TV モニタ画面の写真を図7に示す。2つの光っている部分が コアであり、その間隔はファイバの直径である125μmに 等しい。2本のPANDA ファイバの偏光方向を揃えるため に、光アンプ1,2 の出力を 0.05W とし、偏波コントローラ 1,2 を調整して PBS の出力 P1,P2が最小になるようにした。 この偏光状態ではほとんどの光がPBS を通過し、PANDA ファイバ1と2から出力される。 赤外線TVカメラ ステージ ガラス板 有機色素膜 光ファイバ 顕微鏡 ホログラム 図6 像観察装置 図7 光ファイバ端面の観察像 露光する祭には、光SW1,2を開け、光アンプ 1 と2 の出力をともに0.35W に設定した。その後、光 SW を 200ms の時間だけ閉じ、有機色素膜を露光した。露光後、光アン プ1,2 の出力を 0.01W とし、光 SW を閉じ、顕微鏡付赤外 線TV カメラで PANDA ファイバの端面を観察した。1本 のファイバから照明した時の様子を図8に、また、2本の 光ファイバから照明した時の様子を図9に示す。図8で最 も明るく光っているのは照明光を照射しているファイバ コア部であり、次に明るいのが1 次回折光の再生像であっ た。-1 次回折光は弱く、1次回折光のほうが効率が高く なっており、屈折率変化型ホログラムの特徴が出ている。 図7~9の写真の左端に光強度分布(直線性は良くない) が出ており、-1 次回折光は1次回折光の1/3程度に見 える。また、図9と比べてわかるように1次回折光はもう 一方のファイバコアの位置と重なっており、ホログラムの 再生像であることが確認された。 1本の光ファイバから照明した時の光透過率は40% であり、有機色素膜の光透過率37%より若干多くなって いる。これは有機色素の光透過率が熱分解により大きくな るためである。図8の左端に表示されている光強度分布か らそれぞれの光強度を見積もった。3 次元的に考えた光強

125μm

ファイバ

チューブ

(4)

度分布はそれぞれの分布の中心を軸とした回転体の体積 で表せる。簡単のため、円錐台の体積として近似し、それ ぞれの光の体積比を求めると、ファイバコア:1 次回折光: -1 次回折光=8:3:1となった。これから、1 次回折 光の回折効率は10%程度と見積もられる。 図8 1本の光ファイバから照明した時の再生像 図9 2本の光ファイバから照明した時の再生像 露光により、有機色素膜は図10のように変化した。ジ イモニウム系有機色素膜は強い光により熱分解し、光吸収 率が減少するので、干渉縞を観測することが可能である。 干渉縞の間隔は22μmであり、ヤングの干渉の実験式と 一致している。泡が数個発生しているが、ごみなどにより 光吸収が大きくなり、発熱温度が大きくなり、気体が発生 したと考えられる。

5.おわりに

現像工程不要な波長 1.55μm帯ホログラムを実現す るためにガラス板上にPMMA をバインダーとしたジイモ ニウム系有機色素膜を製作した。有機色素膜を露光するた めに強力な光を照射するために、2 台の光アンプを用い、 磁気光学効果を用いた高速光スイッチ 2 台を光アンプ出 力端に挿入した露光光学系を構築した。露光出射端には目 の方向を並行に合わせた2 本の PANDA ファイバを用い、 偏波を揃えて光照射した。露光により、有機色素膜は光透 過率が上昇するため、光学顕微鏡により干渉縞が観測され た。このホログラムに照明光を照射し、顕微鏡付赤外線カ メラで再生像を観測した。その結果、虚像の再生像を観測 し、光強度分布から回折効率は10%程度であることが分 かった。 図10 露光した有機色素膜

参考文献

1) 大島 茂:反射鏡付き自己光結合用ホログラムの原理 と提案、近畿大学工業高等専門学校 研究紀要、6 号、 pp.37-38、2012 2) 大島 茂、大森 優太:自己光結合用有機色素膜の製 作と露光実験、近畿大学工業高等専門学校 研究紀要、5 号、pp.29-32、2011 3)宮古強臣:ジイモニウム系化合物を用いた近赤外線吸 収フィルムの耐久性向上、 旭硝子研究報告 55、 pp.67-71、 2005

4) H. Nishihara, "Holocoupler : A Novel Coupler for Optical Circuits," IEEE Journal of Quantum Electronics, 1975, pp.794-796 5) 大島 茂、中田 武志:反射鏡付き自己光結合用ホロ グラムの試作、近畿大学工業高等専門学校 研究紀要、7 号、pp.19-21、2013

ファイバコア

1次回折光

-1次回折光

ファイバコア

ファイバコア

参照

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