椙山女学園大学
早産児をもつ親の育児に対する反応に関する記述研
究
著者
深谷 久子
雑誌名
椙山女学園大学 看護学研究
号
2
ページ
67-77
発行年
2010
URL
http://id.nii.ac.jp/1454/00001586/
早産児をも つ親の育児に対する反応 に関する
記述研究
The Reaction of Prents to the Care and to their Preterm Infant.
キ ー ワ ー ド : 研 究 者 1。早 産児 (preterm infant) 3.育 児 感 情 (childcare emotion ) 5.質 的 記 述 的 研 究 (qualitative research) 深 谷久 子 2。親 (parents ) 4.看 護 (nursing ) 椙 山 女 学 園 大 学 新 学 部 設 置 準備 室
I 。
は じ め に
周 産期 医療 の著 しい 進歩に伴い 、早産児 の多 く が新生児集 中治療 室( 以 下
NICU とする) での集中的な治療を受け、生命の危機を 乗り越え退 院できるよ
うに な ってい る。し かし、親 に とって 児 の退 院は喜 ばし い こ とであ る反 面、
不安 に満ちた新 たな スタート であ り1)、NICU 入 院中 から退 院後の継続的 な育
児支援が必 要とさ れている2)。
早 産児 は育児不安 の要因 の一つ であり、早 産児と育児不 安に関 する研究 は
多い が、 デー タの測定に より育 児不安を もっ た母親集団 の傾向を示 し たもの
であるため、実 際にNICU 退院後の早産児をもつ親の育児にお ける反応と育児
不安の関連性、およびNICU 入院中の看護ケ アがどの程度活かされてい るかは
明ら かにさ れてい ない。した がって、 親が体験し た育児不 安に対 する反 応が
わ かりづら く、早産児を もう 親 の育児 支援へ の問題点 がすべて解 決さ れてい
ると は言い がたい。
そ こで 本研究 は、 この点に 着眼し、一 般的に 育児不安 が強い と言わ れてい
るNICU
退 院後半年 から1
年までの時期における早産児を もつ 親の育児にお
け る反応 から導き 出した不安 構造 概念を 記述し、そ の結果 を通し て育児 にお
ける 反応 に応じ た親へ の看護につ いて 検討す ることを目 的とし た。 なお、本
研究 では、 育児におけ る反応を 「親が早産児の育児体験に応じて起こす感 情・
活動」
、 育児不安を「子どもや育 児に対す る漠然とした恐れを含む情 緒の蓄積
さ れた状態」3)4)
として用い た。
n. 研 究 方 法
1 .研究協力者
研究協力者 はヽ 出生 体重1000g ∼2000g 前後の早産児を 養育しヽNICU 退
院後1 週 間から1 年の母親で、 研究協力に承諾が得られた者とし た。
2 。デ ー タ 収 集 法 デ ー タ 収 集 は、 平 成12 年8 月 から 同 年10 月 ま で の2 ヵ月 間に お い て 、 半 構 成 的 面 接 法 に よ って 行 っ た。 面 接 は、 各 研 究 協 力 者 の 希 望 の 場所 に て 、1 人 あ た り 約1 時 間 とし た。 面 接 内 容 は 、NICU 退 院後 から 今 日 まで の 育 児 状 況 、 お よび 心 配 ・ 不 安 な ど とし 、 具 体 的 に は 次 のよ う な 問い かけ を し た: ①NICU 退 院後 の 育 児 は どの よ う で し た か ; ②NICU 退 院 後 の 心 配や 不 安 はい か が でし た か。 な お 、 面 接 内 容 は 承 諾 の も と 録 音し た。
3 。データ分析方法
分 析は、看護概念創出法5) を 用い、 育児反 応のコード 化とカテゴリ ー化に
よっ て、 早産児を もつ 親の育児 におけ る反 応と不安 構造につい て、概念(コ
アカ テゴリ ー)を 抽出した。なお、抽 出さ れた概 念間 は、互い に独立 である
ものとした。
4 。データ の信頼・妥当性の確保
デ ー タおよ び分析 の信頼・妥当性 を 確保 する ために 次 のように行 っ た ‰
データの信頼性を高めるために、面接実施前に研究者 の過去 のNICU 実 務経験
を活 かしな がら面接 の練 習を 繰り返し 、研究者 自身 の進行・調整技術を 高め
る よう努 めた。 また、研究 協力者 の意 見の拡 がりを理 解し、研究協力 者自身
の視点を 発見し、異なった 視点 を表現 するこ とを促し た。分析の 信頼性お よ
び 妥当性を 高める ために は、デ ータの 分析と 解釈は研 究者を含め て周産期医
療・看 護を 専門とする医師・看護師 の4 名 で行い、偏見や見落としがない よ
うにし た。
5 。
倫理的配慮 し
本研究 は、A 大学病院から 倫理面について の承認を得 て行っ た。
調査開始 前に、A 大学病 院の責任者 に、文書に て協力を 依頼し、同意を 得
た。そ の後、新生児科医師・NICU 看護師長に、研究目的・方法・意義・守 秘
義 務・研究協力 への任意性お よび中 断の自 由・結果 の公表につい て口頭お よ
び文書で説明し、同意を得た。 NICU 看護師長より紹介を受けた親には、研究
者 が、研究 目的・方法・意義・守秘 義務・研究 協力 への 任意性およ び中断 の
自由・結果 の公表につい て文書 で説明し、 研究協力 を依 頼した。 面接開始 直
前に、再 度同 様の説明、特に研 究協力 の辞退お よび 撤回の自由 の再確認を 行
い 、研究協力 への承諾を文書にて得た。
Ⅲ .
結 果
1 .研究協力者の背景
研究協力者の背景を表1 に示した。面接に先立ち、13 名から研究協力につ
いての同意を得た。面接を行いながらコード 化を行っ た結果、研究協力者10
例目 でほ ぼ飽 和化 し た。し かし、 飽和 化か 確実 であ るこ とを 確認 する ため、
さらに2 名 の面接を 続行し た。 その結果、2 名から得られたデータ内容は10
例のデータが飽和化しているこ とを確認した ため、実 際の研究協力者は12 名
より構成された。
表1.
研 究 協力 者 の 背 景
研 究 協 力 者 A BCDE FGHIJKL 平 均 初 経 産 1 経 産 初 産 1 経 産 初 産 1 経 産 1 経 産 1 経 産 2 経 産 初 産 初 産 3 経 産 初 産 一 初 産5 名 経 産7 名 分 娩 様 式 帝 王 切 開 帝 王 切 開 経 腔 分 娩 帝 王 切 開 帝 王 切 開 急 墜 分 娩 帝 王 切 開 経 腔 分 娩 帝 王 切 開 帝 王 切 開 帝 王 切 開 帝 王 切 開 四帝 切9 名 経 腔2 名 そ の 他1 名 在 胎 期 間 (週・日) -28.3 34.2 32.3 33.6 31.3 29.3 34.1 34.0 32.5 37.2 30.4 33.5 -32.6 出 生 体 重 (9) -1198 1838 2020 1962 1866 1178 1058 1594 1454 1452 1774 2002 -1799.5 保 育 器 収 容/ 入 院期 間 (日) 43/75 11/31 22/37 14/32 24/39 55/95 4078 19/36 44/72 22/50 35/43 21/57 -29.1/53.8 面接時 の産 後日数 (日) 1 ① ② ③ f N v D 0 0 0 c r > ≪ ︱ 47 189 225 283 158 239 124 219 298 226 122 -172.72 。早産した親の育児に対 する反応と不安構造を示 す概念
抽 出さ れ た育児反 応コード が、過去に 抽出さ れた反 応コード と一 致もし く
表2 .早産した親の育児における反応と不安構造を示す17 の概念 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 17 の 概 念 (コ ア カ テ ゴ リ ー ) 戸 惑 い と 負 い 目 少 し で も 普 通 の 子 に 近 づ い て ほ し い と い う 願 望 子 ど も に 最 善 を 尽 く し た い と 思 う 母 親 と し て の 役 割 遂 行 早 産 児 と し て 退 院 施 設 のNICU ス タ ッ フ に 対 す る 対 応 へ の 満 足 と 心 理 的 。。 一 援 助 へ の 期 待 感 産 か だC と に よ る , 保 健 師 に 対 す る 早 産 児 と そ の 母 親 に 関 す る 専 門 的 学 習 と 適 切 な 看 護 ヶ ア ヘ の 期 待 退 院 後の 実 生 活 から 得 た子 ど も の確 か さ と 育児 へ の 自信 獲 得 き ょ う だ い へ の 育 児 配 慮 の 変 調 自 然 な 社 会 的 承 認 へ の 喜 び 子 ど も が 早 産 児 だ と い う こと を 容 易 に ぬ ぐい 去 れな い こ と に よ る , 先行 き の 不 確 か な 子 ど も のQOL へ の 漠 た る 恐 れ と 育 児 へ の 自 信 喪 失 過 去に 育 児 経験 がな い こと に よ る, 自己 育 児能 力 の不 足感 と 先行 き の育 児 への 不確 か さ 身 近 の 育 児 協 力 者 の 存 在に よ る , 孤 独 感 から の 解放 と 育 児 へ の 自 信獲 得 育 児 情 報 の 利 用 に よ り , 深 ま る 子 ども の 先 行き への 精神 的 混 乱 医 師 の 価 値 観 優 先 に よ る , 意 思 の 制 限 と 孤 立感 過 去 の 育 児 経 験 に よ る , 育 児 へ の 自 信 と 自己 の 確 立 母 子 分 離 体 験 に 伴 う 心 理 的 分 離 感 と 自 己 の 育 児能 力 へ の 不 確 かさ 退 院後 の 実 生 活 に お け る 愛 着 の 深 ま り に よ る , 先 行き の母 子分 離 不 安 合併 症をも つ子どもへの心 理的危機として のショック・否認・衝撃 ・罪責感・適応・希望的 祈り は 類 似 し た と 判 断 し た 状 態 で 、536 の コ ー ド が 抽 出 さ れ た。 コ ー ド の カ テ ゴ リ ー 化 に よ り135 サ ブ カ テ ゴリ ー から45 カ テ ゴ リ ー を 経 て 、 表2 に示 す17 の 概念 を 抽 出 す る こ と が で き た。 17 の 概 念 の う ぢ 早 産 児 と し て 産 ん だ こ ど に 関 連 す る も の が 8 概 念 抽 出さ れ た。 以 下、 各 概 念 の 状 況 を 代 表 的 な カ テ ゴ リ ー を 示 し な が ら 記 述 し た。1
) 早産児として産んだことによる、戸惑いと負い目(コアカテゴリー1 )
母親 は、体の小さ な わが子を他 の子ども とつい つい 比較してし まい、早産
児 の 母 親 で あ る こ と に コ ン プ レ ッ ク スを 感 じ て い た( カ テ ゴ リ ー1 )。 一 方 、 他 の 子 ど も と 比 較 を し て 良 い と こ ろ も 見 つ け 、 体 が 小 さ く て も 大 丈 夫 だ と い う将 来 の 発 達 へ の 期 待 を 抱 く こ と も あ っ た。 ど の母 親 に も 共 通 し てい た の は 、 子 ど も に 対 し て 早 産 児 イ コ ー ル 脆 弱 的 とい う イ メ ー ジ を 出 産 直 後 から 抱い て お り 、 事 あ る ご と に 早 産 児 とい う レ ッ テ ル が 一 生 つ く の だ ろ う か と 心 配 し 、 先 行 き に及 ぼ す 影 響 につ い て不 安 を 感 じ て い た( カ テ ゴ リ ー2 )。 さ ら に 、 脆 弱的 な 固定 観 念 に よ っ て、 子 ど も へ の特 別 視 が み ら れ た ( カ テ ゴリ ー3 )。 こ れら は 、 母 親 が 早 産 児 を 出 産し 、 成 熟 児 よ り も 小 さ い 子 ど もを 育 て て い く こ と が ど う し たら よ い の か わ か ら ず、 戸 惑い を 感 じ る と と も に 、 早 産 児 を 産 ん で し まっ た こ と に 負い 目を 感 じ て い る 状 況 で あ っ た。 2 ) 早 産 児 と し て 産 ん だこ と に よ る 、 少 し で も 普 通 の 子 に 近 づい て ほし い と い う 願 望 (コ アカ テゴ リ ー2 ) 普 通 の 子 と は、 早 産児 とし て 産 まれ た 子 ど も が ”そ の 子 な り に 普 通 であ る¨、 す な わ ち 順 調 に 発 育 ・ 発 達 し て ほ し い とい う こ と を 意 味 し て い た。 子 ど も の 体 が 小 さ い た め 、 早 く 大 き く な っ て ほ しい こ とを 願 い 、 そ れ ゆ え 授 乳 に 関 し て 、 少 し で も 多 く 哺 乳 し て も ら う た め の 配 慮 を し てい た 。 し かし 一 方 で、 自 分 が し て い る こ と が 正 し い の だ ろ う か と、 授 乳 へ の 疑 心 や 心 配、 焦 り を 感 じ て い た( カ テ ゴリ ー10 )。 ま た 、 子 ど も の 成 長 発 達を 標 準 値 と 照ら し 合 わせ 、 子 ど も の 発 達 の 遅 れ を 認 識 し、 少 し で も 標 準 値 に 近 づ い て ほ し い とい う 願 望 が みら れ る 状 況 であ っ た( カ テ ゴ リ ー11 )。3 ) 早産児とし て産んだことによる、子どもに最善を尽くしたいと思う母親
としての役割遂行(コ アカ テゴリ ー3 )
子どもに 最善を尽 くす育児を する ため、現在 の状 態・育児全 般・疾 患の病
態・将来 とい った子 どもに 関する知識 不足に 対する学 習ニー ズがあり(カテ
ゴリ ー12 )
、子 どもに合 併症があ る場合 は状態を きちん と知り たい と考え、
最悪の事態に備える覚悟をし ようとする状況 であっ た( カテゴリー14 )
。 ま
た、自 分の健康管 理の努力 や、 子ども に抵抗力を つけて ほしい ために母乳 栄
養を 続け ようと努力する状況であ った(カテゴリ ー13 ・ 15)
。
4 ) 早産児として産んだことによる、 退院施設のNICU スタッフに対する対
応への満足と心理的援助への期待感(コアカテゴリ ー4 )
子どものNICU 入院中から、 看護師や医 師による子 どもに対するかかわりに
信 頼と 安心 を寄 せ てお り、退院 後 も育 児上 の 疑問 が生 じ た 際に は、 迷 わず
NICU へ電話相談し、 安心感を得てい た状況 であった。ま た、退院後の定期的
なフ ォロ ーアップ 診察で は、入 院中 と伺 じ 医 師が診察にあ たる ため、安 心し
て一貫し た相談が できるとい う満足感 があ っ た。 母親達 から一貫して 語られ
た の は 、 子 ど も の こ と を 一 番 よ く わ か っ て く れ て い るNICU ス タ ッ フ へ の 絶 対 的 な 信 頼 と 、 心 の 支 え と し て の 期 待 感 が 大 き い と い う こ と だ っ た (カ テ ゴ リ ー22 ・ 23 ). ● . .
5 ) 早産児として産んだことによる、保健師に対する早産児とその母親に関
する専門的学習と適切な看護ケアヘの期待 (コアカテゴリー5 )
保健 師によ るケアにつ いて、 育児 の一 般的 内容は満足し てい るが(カテ ゴ
リ ー26 )
、 早産児の育児をし ている自 分にとって必要な ケアを期待する状況
であ った(カテゴリ ー27 )
。 早産児であ る子どもへの個別的 なケアに対し て
は、保 健師 の早産児 に対 する知識 不足 がみら れ、マニ ュア ル的で役に 立たな
かった と感じてい た。さら には、今後 の育児 への不安 が増し た援助 であっ た
こ とから、 相談は無 駄であ った と感じ、今後 は保 健師 との 関わりを 積極的 に
求めない とい う状況 であっ た。
6 ) 早 産 児 とし て 産 ん だこ と に よ る 、 退 院 後 の 実 生 活 から 得 た 子 ども の 確 か さ と 育 児 へ の 自 信 獲 得 ( コ ア カ テ ゴ リ ー6 ) 早 産 児 とし て 産 ん でし ま っ た 子 ど も が 、NICU 退 院時 に は 成 熟 児 同 様 の 体型 で あ っ た こ と から 、 順 調 な 発 育 を 感 じ 、 子 ど も の 成 長 は 大 丈 夫 だ とい う 安 心 感 を 得 て い た( カ テ ゴ リ ー30 )。 ま た 、 子 ど も の 入 院 に よ る 母 子 分 離 体 験 か ら 、 子 ど も の 生 命 力 へ の 不 確 か な 思 い を 抱 い て い た が 、 子 ど も が 退 院 を し て 実 際 に 一 緒 に 生 活 を し てい く 中 で 子 ど も を 観 察 し 、 入 院 中 の 不 安 は 軽 減 さ れ、 子 ど も の 確 か な 生 命 力 へ の 安 心 感 と 期 待 感 を 得 て い た 状 況 で あ っ た ( カ テ ゴ リ ー31 )。 ヶ7 )早産 児とし て産んだこと による、きょうだいへの育児配慮の変調(コア
カ テゴリー7 )
母親 は、 幼児期 のきょう だい が育児に 協力し てく れる行動に、 喜びと感 謝
を示し てい た。一方、早 産児 の子 どもに手 がか かるため、き ょう だい へ の育
児 負担に 困惑し、きょ うだい に対し て十分 に関 わること ができない ことに 申
し 訳なさを 感じ てい た。 そし て、早 産児 の子ど もの退 院後は、きょ うだい に
対し て退 院前に比 べて十分 に手 がかけら れない というよ うに育児 への配慮 が
変化し てい た状況 であ った( カテゴリ ー33 )
。
8 ) 早産児とし て産んだことによる、自然な社会的承認への喜び (コアカテ
コリー8 )
子ど もの体 が小さ い ことを とても気 にし てい た が、 かえって 体が小さい こ
とで、初対 面の人 達から子 どもを か わいい と言っても らえ たこと から、 自然
に 社会 がわ が子を受 け 入れてく れた と感じ、母 親であ る自分も 社会に認 めら
れたとい う喜びを感じ た状況であった(カテゴリー45 )
。
9 ) 子ど も が早 産 児 だ と い う こ と を 容 易に ぬ ぐ い 去 れな い こ と に よ る 、 先 行 き の 不 確 かな 子 ど も のQOL へ の漠 た る 恐 れ と 育 児 へ の 自 信 喪 失 ( コ アカ テ ゴ リ ー9 ) 子 ど も が 早産 児 とい う 理 由 か ら 、 些 細な こ とで も 子 ども のQOL が 変 化 する こ とを 過剰 に心 配 し 、 過 保 護 に な る 状況 で あ っ た( カ テ ゴ リ ー4 )。 ま た、 早 産 児 ゆ え の 非 限 定 的 ・不 確 か な イ メ ー ジ 感 を 容 易 に ぬ ぐ い 去 れ ず に お り、 そ れ は 子 ど も の 先 行 き へ の 漠 然 とし た 恐 れ を 母 親 自 身 に 引 き 起 こ し て い た( カ テゴ リ ー5 )。 さ ら に 、 過 去 の育 児 経験 に 関 係 な く 、 ど の 母 親 も 、 子 ど も の行 動を 観察 する 中 で 、 標 準 体 重以 下 で 成 熟児 に ま だ遠 い わ が子 のQOL は 楽観 で き ず 不 確 か で あ る 、 と受 け 止 め てお り、 ど の よ う な 育 児 を 行 っ て い っ た ら よ い の か迷 い 、 不 安 を 感 じ て い た 状 況 であ っ た( カ テ ゴ リ ー6 ∼9 )。 10) 過去 に 育 児 経 験 が な い こ と に よる 、 自 己 育 児 能 力 の不 足 感と 先 行 き の 育 児へ の 不確 かさ (コ ア カ テ ゴ リ ー10 ) 子 ど も が 第1 子 の 場 合 に は 、 初 め て の 育 児 経 験 に な る ため に 戸 惑 う こ と も 多 く 、 些 細 な こ と で 心 配 を し た り、 便 が 出 な い 、 ミ ル クを よ く 吐 く と い っ た 育 児 上 の 問 題 へ の 対 処 が容 易 に でき な い でい た。 子 ど も の 未 熟 性 は 関 係 な く、 育 児 の 全 て が 初 め て の 経 験 で あ る こ と か ら 、 そ れ ま で の 自 分 の 経 験 や 知 識 が 活 か さ れ ず 、 自 分 の 育 児 能 力 の 不 足 感 と ( カ テ ゴ リ ー16 )、 自 分 の性 格で う ま く 育 児 が で き る の だろ う か と い う 不 安 を 感 じ ( カ テ ゴリ ー17 )、 育 児 があ る 種 の脅 威 とな っ て 疲 労 を 感 じ て い る 状況 で あ っ た( カテ ゴ リ ー19 )。 ま た、 過 去 に 育 児 経 験 が ない こ と に よ り 、 育 児 上 の 問 題 へ の 対 処 能 力 が 低 く、 信 頼 す る 人 から 助 言 を も ら う だけ で は 解 決 せ ず、 子 ど も に 起 き て い る 問 題 が完 全 に 改 善 さ れ な い か ぎ り 、 心 配 な 気 持 ち は ぬ ぐ い 去 れ な い 状 況 で あ っ た (カ テ ゴリ ー18 )。 11 )身 近 の 育児 協 力 者 の 存 在 に よ る 、 孤 独 感 から の 解 放と 育 児 への 自信 獲 得 ( コ アカ テゴ リ ー11 ) 育 児 経 験を 有 す る 友 人 から の 助 言 は と て も 心 強 く、 特 に 早 産 児 の 育 児 経 験 者 は 、 具 体 的 な 自 分 の 育 児 へ の 評 価 と 子 ど も の 先 行 き へ の 安 心 感 が 得 ら れ る 非 常 に 大 切 な 存 在 で あ っ た ( カ テ ゴ リ ー22 ・ 24 )。 し か し 、 身 近 に 育 児 支 援 ・ 相 談 者 がい な い 場 合 、 育 児 へ の 孤 独 感 を 引 き 起 こ し て い た ( カ テ ゴ リ ー 23 )。 また 、 友 人 や 早 産 児 の 育 児 経 験者 以 外 で は 、 気 の置 け な い 存 在 で あ っ た 実 父 母 か ら も 育 児 へ の 安 心 感 を 得 て い た ( カ テ ゴ リ ー25 )。 身 近な 存 在 と 理 解 に よ り 、 自 分 は ひ と り で は な い と い う 心 強 さ と、 育 児 に 対 し て 自 信 を 感 じ てい る 状況 であ っ た。
12)育児情報の利用に より、深 まる子ども の先行き への精神的混乱(コ アカ
テゴリー12 )
早産児 であ る子 どものこ とを 少しでも知 るために 、育児 書や合併 症を もつ
子 ども の育児 経験者 からの情 報を 得 たことに より、かえってマ イ ナスイ メー
ジ に洗脳 さ れ、子 ども の発達や先 行き が心 配にな ると ともに、さまざ まな情
報 の整理 がつ かずに右往左往する状 況であ った(カテゴリ ー28 )
。
13)医 師の価値観優先による、 意思の制限と孤立感(コアカテゴリ ー13 )
早 産児で 産 まれ た上に合 併症を もつ 子 ども の先行 きは不 確か である ため、
子 ども と自分に とって 医師の存 在は絶対 的であ った が、医師 からの助けを 得
ら れず孤立感を 感じる状況であっ た( カテゴリ ー29 )
。医師の話し にくい 雰
囲気・態度 や、自分 の予 測に反し た子 どもの 将来の発 達に関す る医師 から の
説 明は、母 親に とって子 どもの先行 きへ の不安を 抱かせ る反面、医師の もつ
価値観を 優先し 、母親の意思の自由を 制限することになってい た。
14) 過去 の育児経験による、育児への自信と自己の確立
(コ アカ テゴリー14)
過去 の育児 経験に基づ いて、子 どもの生 命力 の確かさ・不確 かさを 自己 判
断し てい た。そし て、現在 の育児が正し い か否 かを 認識し ており、そ れまで
の自分 の経験・知 識の応用 として育 児の工 夫を行い 、過去の育 児経験 が早産
児 である わが子 を育て てい く自 信につな がってい た状 況であっ た。そ のよう
な 自信は、早 産児 の母親とし ての自己 の確立 にプラ スとなっ てい るこ とを 示
してい た( カテゴリ ー32)
15)母子分 離体験に伴う心 理的分離感と自己 の育児能力 への不確 かさ
(コ アカ テゴリー15 )
出産直後 から の母子 分離体験 により、連 続性 のあ る妊娠一出 産を受け 止め
ら れず、 子ど もとの一体感を感じら れずにい た(カテゴリー34 )
。また、母
子分 離体験に より、出産直後 から退 院までのNICU における子どもの生活がわ
からな かっ たことから、NICU 退院直後にどのように育児をしたらよいのか戸
惑う状況 であ った( カテゴリ ー35 )
。
16)退院後 の実生活における 愛着の深 まり による、 先行きの母 子分離不安
(コ アカ テゴリー16 )
出産直後 から子どもがNICU に入院したこ とによって、子どもとの分離感を
感じ てい たこ とから、子ども が退 院をし て一 緒に生活をし ていく 中で子 ども
へ の愛情 が深 めら れていた。そし て、 その 愛情 の深まり から、例え ば、職場
復 帰に 関し て も、 もう子ど もと離 れたくない ・先行き に再度子 どもと離 れる
事 態が起 こり はし ない だろ うかとい う不安 を抱く 状況であ った(カテゴリ ー
36) 。 17) 合併 症を も つ 子 ども へ の 心 理的 危 機 と し て のシ ョ ッ ク ・ 否 認・ 衝 撃・ 罪 責 感 ・ 適 応 ・ 希 望 的 祈り (コ アカ テ ゴ リ ー17 )入 院 中 に 子 ど も の 合 併 症を 知 り 、 そ の 事 実 に 対 し て 次 の よ う な 反 応 を 示 す 状 況 で あ っ た : ① ど う し て わ が 子 だ け が とい う 、 合 併 症 出 現 に 対 す る 釈 然 と し な い 思 い か ら 、 自 分 も 夫 も視 力 が 悪 い の で 仕 方 が な い と、 シ ョ ッ クや 子 ど も へ の 申 し 訳 な い 思 い の置 き 換 えを す る 状 況 で あ っ た( カ テ ゴリ ー37 ・ 38 ); ② 合 併 症 を もつ わ が 子 に 愛 情 を 感 じ ら れ ず 、 子 ど も の サ イ ン に 応 答 で き な い とい う 状 況 で あ っ た( カ テ ゴ リ ー39 ); ③ 合 併 症 の 最 悪 事 態 の 予 感 から 、 脅 威 や 絶 望 を 伴 う 衝 撃 を 抱 い て い た 状 況 であ っ た ( カ テ ゴ リ ー40 ); ④ 合 併 症 を も つ 子 ど も の 現 在 の 状 況 を 認 識 す る こ と で、 先 行 き に 恐 れ を 抱 き ( カ テ ゴ リ ー41 )、 今 か ら で も早 産 児 とし て 出 産し て し ま い 合 併 症 が 出 現し た こ とを 償 っ て 埋 め 合 わ せ を し たい と 考 え 、 自 分 の こ れ まで の 行 動 を 悔 み 自 分 を 責 め てい た ( カ テ ゴリ ー42 );⑤ 自 分 を 責 め る 思い を 子 ど も の 役 に 立 つ こ と、 す な わ ち 最 善 を 尽 く す 決 意 に よ っ て 軽 減さ せ よ う と す る だ け で は な く ( カ テ ゴ リ ー44 )、 ど う か 大 丈 夫 で あ っ て ほ し い と い う 希 望 か ら 祈 る 状 況 で あ っ た ( カ テ ゴ リ ー43 )。 以 上 のよ う な 状 況 は、 子 ど も のNICU 退 院 後 も 続 い て い た。 IV .考 察 早 産 児 を も つ 親 の 育 児 に お け る 反 応 か ら 導 き 出 し た17 の 不 安 構 造 概念 は、 早 産 児 を もつ 親 の 育 児 に 込 め ら れ た 内 容 ・ 意 図 ・理 由 ・ 目 的 ・ 感 情 で あ っ た。 以 下 、 親 の 育 児 に お け る 複雑 な 反 応 を 捉 え る こ と に よ っ て 親 の 反 応 に 応 じ た 看 護ヶ ア に つ い て 考 察し たい 。 1
.不安を自覚しながら世間と向き合うことを否定しない
一般 的に 使用さ れてい る医学・看護学 のテキ スト を みると、その ほとん ど
に、 早 産 は 丁異常 妊 娠 」 な ら び に 「 異 常 分 娩 」「 異 常 産」 な ど と 、 ま た 早 産 し た 親 や 児 は 「 異 常 妊 婦 」「 成 熟 異 常 を 示 す 児 」「出 生 体 重 異 常 」「新 生 児 の 異 常」 な ど と い う よ う に、「病 気 」 や 「 異 常 」 と し て 位 置 づ け ら れ て い る。 ま た、 地 域 で 生 活 す る 早 産 児 を もつ 親 たち に と っ て 早 産 と は ど の よ う な 意 味 が あ る の か を 考 え て み る と 、 出 産 し た 子 ど も と の 関 わ り や 出 来 事、 医 療 者 や 家 族 を 含 め 周 囲 の 人 々 が 示 す 態 度 な ど か ら 、 障 害 を も つ 子 ど も を 産 ん だ 親 や 早 産 児 をも つ 親 は、 自 分 は子 ど も に ¨よ く な い こ と を し た 存 在 ”、 子 ども ば 不 幸 な 存 在nil特 別 な 存 在 ¨とい う よ う な 位置 づ け を 知 ら さ れて い る7)。 こ の よ う に 、 早 産 と は 医 学的 に ば 病気 ¨や ¨異常 ¨な 規 定 で あ る と 同 時 に 、 文 化 社 会 的 に ぱ 並 で な いtltl普 通 で は ない ¨と 差 別さ れ る 存 在 であ る。 本 研 究 結 果 の戸 惑 い と負 い 目 を 感 じ る 反 応 は( コ アカ テ ゴ リ ー1 )、 妊娠 ・ 出 産 に よ る 子 ど も へ のイ メー ジ の ¨ギ ャ ッ プ ¨と、 脱 健全 者 とい う 差 別 さ れる 立場8) とい う 世 間 とい う 内の 人 間 か ら 外 れる こ とで 、 世 間体 を 重 んじ 他 者 から の 視 線 や 評 価 に よ っ て 恥 や 罪 の意 識 が 助 長 さ れ る とい う 日 本 的 な 考 え 方9 )に 裏 付け さ れ て い る と 考 え る。 ま た 親 た ち は、NICU 退 院 後 の 社 会 的承 認 や 、 直 接 子 ど もと 接 す るこ とで 子 ど も の 確 か さ を 感 じ 、 早 産 児 で あ る 子 ど も の 受 け 入 れ と 自己 の 確 立 へ の 努 力を し てい た ( コ ア カ テ ゴ リ ー6 ・8 )。 早 産 と 医 学 的 に 診 断 さ れ た 医 学 的 レ ッ テ ル や、 世 間 に よ っ て 並 で な い 、 普 通 で は な い と 差 別 さ れ た 文 化 社 会 的 レ ッ テ ル を 貼 ら れ た 存 在 の 早 産 児 と 親 た ち は、 な ぜ そ の よ う な レ ッ テ ル を 貼 ら れ な け れ ば な ら な い の だ ろ う か 。 親 た ち め 視 点 か ら そ の生 活 体 験 に つ い て 知 る こ と は、 私 た ち が 今 生 活 し てい る 文 化 や 社 会 が ど の よ う な も の か を 知 る こ と で あ り、 早 産 児 を も つ 親 た ち を 通 し て 見 え る ケ ア の 本 質 や 、 私 た ち 誰 も が よ り よ く 生 活 す る た め の 方 法を 探 るこ とに も つ な が る の で はな い だろ う か。 早 産し た 親 は ど の よ う に 捉 え ら れ る の だ ろ う か。 早 産 を し た 事 実 、 育 児 に 伴 う 困 難 さ に 遭 遇 し て も、 不 安 を 感 じ な い 状 態 とい う の は 果 たし てあ る の か 。 医 療 者 は、 親 が 不 安 を 自 覚 し な が ら 困 難 さ や 弱 さ と 向 き 合 う こ と を 否 定 し な い こ と が 大 切 で は な い か と 考 え る。 早 産 を し た こ と は 親 の せい な の か 、 早 産 を ど の よ う に 捉 え る か は 、 医 療 者 と し て の 自 分 が ど の よ う な 価 値 観 に 基 づ い て 行 動 し て い る か を 常 に 意 識 し 一 生 の 課 題 と 位 置 づ け 、 医 療 者 が 親 に 対 し て 早急 に 期待 す る こ と で は な い と 考え る 。 ’J7t 2 。親 で あ る こ と を 支 え る 子 ど も の 成 長 や 生 き る 力 が確 かで あ る と 実 感 で き な い と、 子 ど も のQOL が マ イ ナ ス に 変 化 す る こ と へ の恐 れを 抱 く こ とか ら ( コ ア カ テ ゴ リ ー9 )、 親 の 過 去 の 育 児 経 験 に 関 係 な く 、 ”子 ども のQOL は 大丈 夫 であ るII と 実 感し 、 将 来 に 確 証 を も て る よ う に 子 ど も の 入 院時 か ら 働 き か け な け れ ば な ら な い と 考 え る。 過 去 の育 児 経 験 の 有 無 か ら 起 こ る 反 応 は ( コ ア カ テ ゴ リ ー10 ∼12 ・ 14 )、 早 産 児 を も つ 親 だ け で な く 、 乳 幼 児 を 育 児 す る 一 般 的 な 親 に も 認 め ら れ る も の で あ る こ と から 、 早 産 児 を も つ 生 活 背 景 の 異 な る 全 て の 親 の 思い を 適 切 に 把 握し た、 個 別 性 に 合 っ た 技 術 的 ・ 心 理 的 援 助 を す る 必 要 が あ る 。 NICU に 子 ども が 入 院 す る と 、 親 とし て の 役割 が 果 た せ ない よ う に 思 わ れ が ち で あ る が 、 親 が 一 日 で も 早 く 子 ど も を 我 が 家 に 連 れ て 帰 り 、 一 緒 に 暮ら し たい と思 え る よ う に 、 入 院 の そ の 日 か ら 子 ど も へ の ケ アを 医 療 者 は 親 と と も に 取 り 組 む こ と が 、 退 院 の 準 備 で あ る ‰ ケ ア リ ン グ の 関係 は、 子 ど も と 親 ・ 家 族 の 間 で も 重 要 で あ る と 考 え ら れ る。 子 ど も の そ ば に い て 子 ど も のこ と を 感じ る こ と、 子 ど も がNICU 入 院 中 の 場 合 は 子 ど も を 指 で 触 れ る だ け で も よ い 、 看 護 師 の ケ ア を 見 る だ け で も1, )、 親 は 自 分 の 力 で 子 ど も の あ ら ゆ る こ と に つ い て 判 断 し 愛 着 や 絆 を 形 成 し て い く 。 育 児 技 術 を 教 え る だ け で な く 、 親 であ る 親 と な る こ と の 関 係 を 大 切 に し て 心 の 整 理 を 手 伝 う こ と が重 要 で あ る 。 3 。早 産 児 を も つ 親の あ り の ま ま の 姿を ¨知 る ¨ NICU 入 院 に よ る 母 子 分 離 体 験 は、 退 院後 も 親 に あ る 種 の脅 威 ( スト レ ス ) を 与 え てい る ( コ ア カ テ ゴ リ ー15 ・ 16)。 そ の た め 、NICU ス タ ッ フ は 、 子 ど も のNICU 入 院 直 後 か ら 親 の 心 理 過 程 を よ く 理 解 す る こ と で 、 危 機 的 な 心 理 反 応 の 軽 減を 図 り 、 早 期 に 子 ど も と の一 体 感 を 感 じ 、 親 と し て の 自 己 を 確 立 で
き る よ うに 援 助 す る 必 要 があ る。 子 ど も が 合 併 症 を も つ 場 合 の 危 機 的 な 心 理 反 応 は( コ ア カ テ ゴ リ ー17) 、 一 般 的 に 言 わ れ て い る 障 害を も つ 子 ど も を 養 育 す る 親 に 通 じ る 反 応 と 考 え ら れ る が 、 早 産 児 の 出 産 に 加 え て 合 併 症 が 出 現 す る こ と は、 さ ら に 危 機 的 状 況 の 増 大 を 引 き 起 こ す 可 能 性 が あ る。 現 実 を 受 け 入 れ よ う と す る 親 の心 情 を 理 解 し 、 危機 的 状 況 を 乗 り 越 え る た め の心 の ケ ア が必 要 と考 え る 。 障 害 を もつ 子 ど もを 出 産 し 、 危 機 状 況 に あ り な が ら も、 親 は 早 期 に 子 ど も へ の愛 着 感 情 を も っ てい る11)∼13)。 親 が産 ま れた ば か り の わ が 子 の病 気 や 障 害を 悲 し み、 子 ど も の 将 来 につ い て 心 配 する こ と も 愛 着 の 表 れ で は な い だ ろ う か。 子 ど も の 病気 に 対 す る不 安 も 、 子 ど も が す る小 さ な 事 々 か ら 喜 び や 力 を 受 け る と い う の も 自 然 の 親 の 愛 着 感 情 で あ る 。 誰 も が 同 じ よ う な 危 機 状 況 の 反 応 を 示 す と は 限 ら な い こ と を 理 解 し 、 シ ョ ッ ク や 不 安 ・悲 し み な ど の ネ ガ テ ィ ブ な 強 い 反 応 ば か り に 目を 向 け ず、 親 が 子 ど も を 愛 お し く 思 う あ り の ま ま の 姿 を 捉 える こ と が 大 切 であ る と 考 え る。 4 。親 の 目 を 通 し てケ ア の 本 質 を 見 る 医 師 の 価 値 観 を 優先 し て し ま う こ と は、 意 思 表 示 の 困難 さ か ら 適 切 な 援 助 が 得 ら れな い と 感 じ る こ と で 孤 立 感 に 陥 る 反 応 に つ な が る ( コ ア カ テ ゴ リ ー 13 )。 看 護 師 は 、 医 師 と親 の 間で 効 果 的 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と 信頼 関 係 が 成 立 す る よ う取 り 持 つ こ と が 必 要 で あ る。 親 は、 子 ど ものNICU 退 院後 も早 産児 の 専門 家 の サ ポ ート を 必 要 とし てい る こ と から (コ アカ テ ゴ リ ー4 ・5 )、NICU ス タッ フ は 、 入 院 の そ の 日 か ら 退 院 の こ とを 考 え た 取 り 組 みを 始 め る こ と が 重 要 であ る2)。 子 ど も の退 院後 の 親 の 反 応 を 考 慮し た 技 術 的 ・心 理 的 援 助 を 入 院 直 後 か ら 開 始 し 、 退 院 後 も 地 域 と 連 携を と っ て 継 続 す る 必 要 が あ る。 数 年 前 よ り 、「 医 療 的 ケ ア を 必 要 とし な く て も、 育 児 を 支 え る た め に 訪 問 看 護 制 度 を 活 用し てい く 」 取 り 組 み が あ る2 )1,)。 そ の地 域 の 特 性 に 応 じ た 形 で、 子 育 てを 地 域 で 支 える ため のNICU 入 院時 点 か ら 退 院 後 ま で の 長 期 に わ た る 生 活 全 般 に お け る 充 実 し た 看 護 ケ ア が 可 能 な シ ス テ ム を 築い て い く こ と が 必 要 で あ る と 考 え る 。 そ の 推 進力 は 、 親 ・ 家 族 の 体 験 で あ り、 医 療 者 が 親 ・家 族 の 気 持 ち に 近 づ き、 互 い の 立 場 や 役 割 ・状 況 を 理 解し 合 っ てNICU 入 院中 ・退 院後 の 運営 を 協 働 す る こ と であ り、 こ こ に 親 の 目 線 にな り率 直 な 声 を 吸い 上 げ た ケ ア と い う 課 題 があ る 。 親 が 子 ど も を 育 て る 過 程 が 過 酷 な も の で あ っ て は な ら な い 。 医 療 者 は 誠 実 に 謙 虚 に、 親 の 心 の う ち を 「 き く」 こ と か ら 、 ケ ア の 本 質 を 「 み る 」 こ と 、 医 療 者 と し て の あ り よ う を み な け れ ば な ら な い 。 そ れ が 、 医 療 者 に 求 め ら れ る 専 門 職 とし て の倫 理 で も あ る と 考 え る 。
5 。
本研究の限界と今後の課題
本研究は、研究協力者のリ クルート が1
施設 からであっ たことから、参加
し た研究 協力者の特 性に偏り があ る可能 性があ る。今 後、本研究 結果を 看護
に 適用し ながら、看 護ケアや 研究協力 者め 背景の異な るグループ による 理論
的 サンプリ ン グお よび 継続比較 法を用い ることに よって、早産児 をもつ 母親
の育児にお ける反 応の構 造を理 論化し、早 産児とその家 族へ のケ ア方法お よ
び ケアシステ ム構築に 繋げ ていく ことができると考える。
謝辞:本研 究に快く ご協力 くださり まし たお 母さま方 に心より お礼申し 上
げ ます。
なお、本研究 の一部は、第11 回日本小児 看護学会学術集 会(2001
神戸)
で 発表を 行っ ている。
引 用 文 献1 )Affleck,G. : Effects of Formal Support on Mothers' Adaptation to the Hospital-to-Home Transition of High Risk Indants:The Benefits and Costs of HelpingヽChild Developヽ60 ヽ 488-501 、1989. 2 ) 野 辺 明 子 、 加 部 一 彦 、 横 尾 京 子 他 : 障 害 を も つ 子 が 育 つ と い う こ と 10 家 族 の 体 験、 中央 法 規 、219-242 、2008. 3 ) 高 橋 由 典 : 感 情 と 行 為 社 会 学 的 感 情 論 の 試 み 、 新 曜 社 、1996. 4 ) 牧 野 カ ツ コ : < 育 児 不 安 > の 概 念 と そ の 影 響 要 因 に つ い て の 再 検討 、 家 庭 教 育 研 究 所 紀 要 、 10 、23-31 、1988. 5 ) 舟 島 な を み : 質 的 研 究 へ の 挑 戦 、 医 学 書 院 、1999.
6 )HoUoway,I 。Wheeler,S. : Qualitative Research for Nueses,Blackwell Science Ltd, 1996, 野 口 美 和 子 、 ナ ー ス の た め の 質 的 研 究 入 門 、1-9 、 医 学 書 院 、2000.
7 ) 野 辺 明 子 、 加 部 一 彦、 横 尾 京 子 : 障 害 を も つ 子 を 産 む とい う こ と 19 人 の体 験 、 中 央 法規 、 2006.
8 ) 要田 洋 江 :障 害者 差 別 の社 会 学 、 岩 波 書店 、1999.
9 )BenedictL : TheCherysnthemum And The Sword,Houghton Mifflin CO, 1946, 長 谷 川 松 治ヽ 菊 と 刀 日 本 文 化 の 型、113-262 、 社 会 思 想 社 、1995. 10 ) 横 尾 京 子 編 集 : 助 産 学 講 座8 助 産 診 断 ・ 技 術 学n [3】新 生 児 期 ・ 乳 幼 児 期 、1 14-122 、 医 学 書 院 、1991. 11 ) 深 谷 久 子 、 横 尾 京 子、 中 込さ と 子:Drotar ら の 先 天 奇 形を 持つ 子 ど もを 出 産し た 親 の 反 応 仮 説 モ デ ル の 分 析 、 日 本 新 生 児 看 護 学 会 誌 、12(1):9-20,2006. 12 ) 深 谷 久 子 、 横 尾 京 子、 中 込 さ と 子:Drotar ら の 先 天 奇 形を 持つ 子 ど もを 出 産 し た 親 の 反 応 仮 説 モ デ ル の 信 頼 性 の 検 証、 日 本 新 生 児 看 護 学 会 誌,12(1):21-32.2006. 13 ) 深 谷 久 子 、 横 尾 京 子、 中 込さ と 子 他 : 先 天 奇 形 を 持つ 子 ど も の出 産 お よ び 子 ど もに 対 す る反 応 に 関 す る 記 述 研 究、 日 本 新 生 児 看 護 学 会 誌,13(2):2-16,2007.