特別な支援を必要とする子どもの理解と
対応に関する研究(2)
──放課後児童クラブに在籍する子どもの行動に着目して──
小柳津 和博
A Study on Understanding and Supporting of Children with Special Needs (2)
—Focusing on The Behavior of Children in After School Care—Kazuhiro O
YAIZU 1. 問題および目的 近年、核家族化とともに、両親共働き家庭やひとり親家庭が増加するなど、子育てを取り巻 く環境は大きく様変わりをしている。文部科学省(2018)(1)によると、平成30年度の全国小学 校在籍児童数は642万7867人であり、5年前と比べ約25万人減少している。一方、放課後児 童健全育成事業登録児童数を見てみると、平成29年5月1日現在で117万1162人の利用がある と示されており、5年前より約32万人もの増加がある(厚生労働省;2017a)(2)。実に小学生 5∼6人に1人が放課後健全育成事業を利用している計算となる。放課後児童健全育成事業と は「小学校に就学している児童であって、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、 授業の終了後に児童厚生施設等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成 を図る事業(児童福祉法第6条の3第2項)」としており、放課後児童健全育成事業を行う場 として放課後児童クラブがあるとされている(厚生労働省;2017b)(3)。小学校児童数が減少す る中、放課後児童健全育成事業登録児童数は増加の一途をたどっている現状を鑑みると、今後 も社会全体で放課後児童クラブ等の子育て支援環境の充実を図っていく必要があるだろう。 障害のある子どもを含むすべての子ども達の豊かな放課後生活の保障は、児童健全育成の大 きなテーマである(柏女;2015)(4)。厚生労働省(2017a)によると、現在、障害児を受け入れ ている放課後児童クラブは55.5%にのぼる。しかし宮里(2015)(5)は、全ての放課後児童クラ ブにおいて発達障害を抱えた児童がいると認識して対応に臨む方が望ましいと述べており、残 りの約44.5%においても支援を必要とする子どもたちが在籍していることは容易に想像でき る。実際、放課後児童クラブと他機関との連携に関する調査を行った武藤・青 (2017)(6)は、 連携時に頻回に話題にあがる内容として「気になる児童の様子」があると報告している。また、 布施ら(2017)(7)は、放課後児童クラブ支援員のストレスの対象となることについて「気にな る子どもへの対応」が上位にあがる調査結果を報告している。恒次(2014)(8)においては、発達障害の子ども達への対応に苦慮するのは学校だけでなく、放課後児童クラブ(本文では学童 保育と表記されている)でも同様であると述べている。これらの報告からも放課後児童クラブ では、気になる子どもの対応に困難を抱えている現状が浮き彫りになっている。支援を必要と する子どもたちにとってよりよい生活環境を整えるためにも、放課後児童クラブ支援員にとっ て必要となる子どもの行動を理解する視点や、具体的な支援方法について検証する必要がある。 子育て支援にかかわる施設では、障害の診断有無にかかわらず気になる子どもの対応に苦慮 しながらも日々工夫を重ねて実践を進めている。しかしながら今中ら(2013)(9)も指摘するよ うに、子どもの理解を深める視点をもとにした対応策について検討や議論が十分になされてい るとは言い難い。そのため、筆者は保育所に勤める現職保育士を対象にして気になる行動を示 す子どもを理解する視点や具体的支援策について調査を行ってきた(小柳津;2018)(10)。保育 所を対象とした調査を進める中で、施設独自の機能があるゆえに気になる子どもへの捉えに影 響を与えている(守ら;2013)(11)ことが明らかになり、他の施設を対象にした調査が必要であ ると考えた。そこで、本研究では前報告(小柳津;2018)に続く調査として放課後児童クラブ を射程とし、子どもを理解する視点と具体的な支援の方策について検証を行うことにした。放 課後児童クラブは、小学生が利用するがゆえの施設独自の機能があり、保育所における調査と は違う視点で子どもを捉えていると考えられる。特に、自由な生活の場として過ごす放課後児 童クラブにおいては、発達の遅れや障害を疑う行動よりも、仲間同士のトラブルに関わる行動 が表れやすく、支援員も着目しやすいと仮定した。この仮説を検証するために、放課後児童ク ラブ支援員の年齢や経験年数によって子どもの行動を理解する視点や、具体的な支援の方策に おいて差異があるのかについて明らかにすることを本研究の主たる目的とした。 2. 方法 ⑴ 調査の対象および手続き 2017年X月Y日、A県内の現職放課後児童クラブ支援員が参加する研修会(筆者が講師を 担当)において、参加者100名を対象にして質問紙による調査を依頼した。対象者には研修会 の休憩時間等を利用して質問紙の記入を依頼した。回収については、研修会終了後の当日に行っ た。 ⑵ 倫理的な配慮 事前および当日において倫理的な配慮を行った。事前の配慮として、本研究の趣旨について 当該研修会を主催する事務局に口頭にて説明し、調査の許可を得た。当日の配慮としては、対 象者に本研究の趣旨について口頭および文書にて説明した。また、調査の結果について、個人 が特定される形で公表することはないこと、いつでも研究協力を撤回できることについて口頭 および文書で説明した。その上で、本研究の趣旨に賛同する方に質問紙の提出を依頼した。
⑶ 調査内容 基本情報として、所属先、年齢、経験年数(休職期間等がある場合は通算)を尋ねた。 子どもの行動を理解する視点として、菅原(2015)(12)の調査を基に、「気になる行動」を示 す子どもが在籍しているかについて以下の14項目から尋ねた。 具体的には、①落ち着きがない、②じっとしていられない、③部屋を飛び出す、④ことばが 出ない、⑤パニックになる、⑥話を聞くことができない、⑦指示を理解することができない、 ⑧集団生活に参加できない、⑨遊びをやめられない、⑩偏食がある、⑪自傷行為がある、⑫他 害行為がある、⑬ぼうっとしている、⑭視線が合わない、の14項目である。 子どもの行動に対応する具体的な支援の視点として、現職の放課後児童クラブ支援員が実際 に行っている対応について自由記述で尋ねた。 3. 結果 ⑴ 回収状況 質問紙を配布した研修会参加者(現職の放課後児童クラブ支援員)100名のうち、78名から 回答があった(回収率78.0%)。そのうち、未記入等の不備のあるものを除き、70名の有効回 答を分析の対象とした。 ⑵ 対象者の属性 基本情報として、対象者を経験年数で4群(1‒3年、4‒6年、7‒9年、10年以上)に分けた場 合の年齢群の人数および割合(平均値・標準偏差)をまとめ、表1に示した。 表1 対象者の属性 年齢 経験年数 20‒29歳 30‒39歳 40‒49歳 50 歳以上 合計(N) 割合(%) 1‒3年(n) 7 4 5 10 26 37.1 4‒6年(n) 2 1 7 10 20 28.6 7‒9年(n) 0 0 2 7 9 12.9 10年以上(n) 0 0 1 14 15 21.4 合計(N) 9 5 15 41 70 ― 割合(%) 12.9 7.1 21.4 58.6 ― 100 経験年数(M) (SD) 2.0 1.3 2.4 2.1 4.9 4.5 8.8 7.4 6.6 6.6 ― 年齢群の割合は、50歳以上の支援員が最も多く、全体の58.6%を占めていた。次いで40歳 代が21.4%、20歳代12.9%、最も少ない30歳代が7.1%という割合であった。 経験年数について見てみると、全体の平均経験年数は6.6年であった。年齢群が高くなるご とに経験年数の平均値も長くなる傾向にあった。経験年数を1‒3年、4‒6年、7‒9年、10年以上
表2 放課後児童クラブ支援員が気になる行動(年齢群別) 年齢 行動 20‒29(n) 割合(%) 30‒39(n) 割合(%) 40‒49(n) 割合(%) 50‒(n) 割合(%) 全体(N) 割合(%) 落ち着きがない 9 100.0 3 60.0 9 60.0 31 75.6 52 74.3 じっとしていられない 8 88.9 1 20.0 9 60.0 30 73.2 48 68.6 部屋を飛び出す 4 44.4 0 0 3 20.0 13 31.7 20 28.6 ことばが出ない 3 33.3 1 20.0 2 13.3 6 14.6 12 17.1 パニックになる 3 33.3 0 0 3 20.0 10 24.4 16 22.9 話を聞くことができない 7 77.8 1 20.0 6 40.0 25 61.0 39 55.7 指示が理解できない 5 55.6 0 0 5 33.3 17 41.5 27 38.6 集団生活に参加できない 3 33.3 1 20.0 4 26.7 21 51.2 29 41.4 遊びをやめられない 3 33.3 1 20.0 4 26.7 13 31.7 21 30.0 偏食がある 1 11.1 0 0 1 6.7 3 7.3 5 7.1 自傷行為がある 0 0 0 0 1 6.7 1 2.4 2 2.9 他害行為がある 3 33.3 3 60.0 6 40.0 12 29.3 24 34.3 ぼうっとしている 2 22.2 2 40.0 1 6.7 7 17.1 12 17.1 視線が合わない 4 44.4 0 0 6 40.0 9 22.0 19 27.1 合計 (N) 55 13 60 198 326 一人当たり指摘数 (M) 6.11 2.60 4.00 4.83 4.66 の4群に分けた。最も多い経験年数群は1‒3年であり、全体の37.1%となった。次いで4‒6年 の28.6%、10年以上の21.4%、7‒9年が最も少なく12.9%という結果であった。 ⑶ 放課後児童クラブ支援員が気になる子どもの行動 子どもに見られる14項目の行動の中で、支援員として気になる項目について、年齢群別の 結果を表2に、経験年数群別の結果を表3に示す。 年齢群別の結果(表2参照)において、2/3以上の高い割合で支援員が気になると指摘した
表3 放課後児童クラブ支援員が気になる行動(経験年数群別) 経験年数 行動 1‒3(n) 割合(%) 4‒6(n) 割合(%) 7‒9(n) 割合(%) 10‒(n) 割合(%) 全体(N) 割合(%) 落ち着きがない 21 80.8 13 65.0 5 55.6 13 86.7 52 74.3 じっとしていられない 20 76.9 8 40.0 7 77.8 13 86.7 48 68.6 部屋を飛び出す 6 23.1 4 20.0 3 33.3 7 46.7 20 28.6 ことばが出ない 7 26.9 1 5.0 1 11.1 3 20.0 12 17.1 パニックになる 3 11.5 5 25.0 1 11.1 7 46.7 16 22.9 話を聞くことができない 12 46.2 9 45.0 8 88.9 10 66.7 39 55.7 指示が理解できない 8 30.8 7 35.0 5 55.6 7 46.7 27 38.6 集団生活に参加できない 10 38.5 6 30.0 4 44.4 9 60.0 29 41.4 遊びをやめられない 10 38.5 5 25.0 4 44.4 2 13.3 21 30.0 偏食がある 2 7.7 1 5.0 2 22.2 0 0 5 7.1 自傷行為がある 2 7.7 0 0 0 0 0 0 2 2.9 他害行為がある 9 34.6 11 55.0 1 11.1 3 20.0 24 34.3 ぼうっとしている 4 15.4 3 15.0 2 22.2 3 20.0 12 17.1 視線が合わない 4 15.4 7 35.0 5 55.6 3 20.0 19 27.1 合計 (N) 118 80 48 80 326 一人当たり指摘数 (M) 4.54 4.00 5.33 5.33 4.66 ものは、20歳代では、「落ち着きがない」、「じっとしていられない」、「話を聞くことができない」 の3項目であった。30歳代、40歳代では、2/3を超える項目がなかった。50歳以上では「落ち 着きがない」、「じっとしていられない」の2項目であった。 1/3未満の低い割合で支援員が指摘する項目は、20歳代では3項目、30歳代では11項目、40 歳代は8項目、50歳以上は9項目あった。 支援員一人当たりが指摘する項目数の平均値は、20歳代6.11、30歳代2.60、40歳代4.00、50 歳以上では4.83であり、20歳代が最も気になる項目数をあげる結果となった。年齢群別の一
表4 カテゴリー別の具体的な対応 カテゴリー 具体的な回答(一部抜粋) 本人の理解力に合わせる支援 ・分かりやすく伝える(視覚的・具体的・繰り返し) ・落ち着いてから対応する ・一対一で対応する ・できたことを褒める 人への意識をもたせる支援 ・話しやすい雰囲気を作る ・関わる回数を増やす ・名前を呼んでから話をする 本人の気持ちに寄り添う支援 ・見守る ・不適切な行動が起こる前に止める ・じっくりと話を聞く ・共感する(行動の理由、背景など) 他者との関わりを広げる支援 ・友達・相手の思いを代弁する(想像させる) ・仲裁に入る ・適切な関わり方を教える ・役割を与える 連携による支援 ・職員間で連携をとる(役割分担・指導方針の統一) ・保護者と連携をとる ・きょうだいの協力を得る 他児への支援 ・本人の気持ちを他児に説明して他児の理解を得る ・他児に本人との適切な関わり方を伝える ・よいところを見つける(他児の理解を深めるために) ・本人も他児も同時に理解できるような伝え方をする。 ・他児の話もよく聞くようにして両者の気持ちを理解する 人当たりの指摘項目数の平均値について、対応する全ての組み合わせで t-検定(両側検定)を 行ったところ、20歳代−30歳代間に1%有意、20歳代−40歳代間に5%有意、30歳代−50歳 以上間に5%有意で差が認められた。 経験年数群別の結果(表3参照)において、2/3以上の高い割合で支援員が気になると指摘 した項目を見ると、1‒3年群では、「落ち着きがない」、「じっとしていられない」の2項目であっ た。4‒6年群では見られなかった。7‒9年群では、「じっとしていられない」、「話を聞くことが できない」の2項目であった。10年以上群では、「落ち着きがない」、「じっとしていられない」、 「話を聞くことができない」の3項目であった。 1/3未満の低い割合で支援員が指摘するのは、1‒3年群では8項目であった。4‒6年群では8 項目、7‒9年群では6項目、10年以上群では7項目であった。 支援員一人当たりが指摘する項目数の平均値は、1‒3年群4.54、4‒6年群4.00、7‒9年群5.33、 50歳以上群5.33であり、経験年数の長い群(7‒9年群、10年以上群)が高い結果となった。経 験年数群別の一人当たりの指摘項目数の平均値について、対応する全ての組み合わせで t-検定 (両側検定)を行ったものの、有意差を認められる組み合わせはなかった。 ⑷ 放課後児童クラブ支援員が実行している具体的な対応 子どもの行動に対して行っている支援員の具体的な対応について、自由記述による回答を整
表5 気になる行動に対する支援員の具体的な対応(年齢群別) 年齢 カテゴリー 20‒29 (n) 30‒39 (n) 40‒49 (n) 50‒ (n) 合計 (N) 一人当たり 回答数(M) 本人の理解に合わせる支援 7 2 16 68 93 1.33 人への意識をもたせる支援 3 3 1 19 26 0.37 本人の気持ちに寄り添う支援 8 4 22 57 91 1.30 他者との関わりを広げる支援 0 0 7 20 27 0.39 連携による支援 2 0 2 9 13 0.19 他児への支援 0 1 1 6 8 0.11 合計 (N) 20 10 49 179 258 ― 一人当たり回答数(M) 2.22 2.00 3.27 4.37 3.69 ― 表6 気になる行動に対する支援員の具体的な対応(経験年数群別) 経験年数 カテゴリー 1‒3 (n) 4‒6 (n) 7‒9 (n) 10‒ (n) 合計 (N) 一人当たり 回答数(M) 本人の理解に合わせる支援 29 19 17 28 93 1.33 人への意識をもたせる支援 7 6 1 12 26 0.37 本人の気持ちに寄り添う支援 28 21 13 29 91 1.30 他者との関わりを広げる支援 4 9 6 8 27 0.39 連携による支援 2 3 1 7 13 0.19 他児への支援 2 3 1 2 8 0.11 合計 (N) 72 61 39 86 258 ― 一人当たり回答数(M) 2.77 3.05 4.33 5.73 3.69 ― 理する上で、櫻井(2015)(13)がまとめた特別な支援を必要とする子どもに対する保育者の援助 方法の分類を用いて6カテゴリーに分けた。各カテゴリーに分類した具体的な対応の記述につ いて一部抜粋し、表4に示す。 各カテゴリーにおける自由記述の回答数をまとめ、年齢群別に整理したものを表5に、経験 年数群別に整理したものを表6に示す。 表5において、年齢群別で多く回答があったカテゴリーは、「本人の理解に合わせる支援」 と「本人の気持ちに寄り添う支援」であり、それぞれ調査対象者一人当たり1.33、1.30の回答 があった。その他で一人当たりの平均が1.00を超えるカテゴリーはなく、最も低いものは「他 児への支援」で0.11であった。年齢群別に一人当たりの回答数の平均値を見ると50歳以上が 最も多く4.37となった。その他は、30歳代が2.00と最も低く、20歳代2.22、40歳代3.27という 結果であった。年齢群別の一人当たりの回答数の平均値について、対応する全ての組み合わせ で t-検定(両側検定)を行った結果、20歳代−50歳以上間に5%有意、30歳代−50歳以上間 に5%有意で差が認められた。 表6において、経験年数別に一人当たりの回答数の平均値を見ると、10年以上群が最も多
く5.73であった。次いで7‒9年4.33、4‒6年3.05、1‒3年2.77という結果であった。経験年数が 長くなるほど回答数が多くなる傾向にあった。経験年数群別の一人当たりの回答数の平均値に ついて、対応する全ての組み合わせで t-検定(両側検定)を行った結果、1‒3年群−10年以上 群間に5%有意で差が認められた。 4. 考察 ⑴ 子どもを捉える視点として施設で共通する項目 表2より、支援員が気になる行動として示す上位5項目は、「落ち着きがない」、「じっとし ていられない」、「話を聞くことができない」、「集団生活に参加できない」、「指示が理解できな い」であった。これらは、小柳津(2018)で述べた保育所に在籍する子どもの行動として現職 保育士が高い値で気になると答えた上位5つの項目と同じ結果であった。気になる行動と指摘 する上位5項目については、保育所においても放課後児童クラブにおいても同様の結果であっ たことから、施設独自の機能による視点が影響しない項目と言えよう。では、これらの行動が 保育所等の幼児期だけでなく、放課後児童クラブに通う児童期の子ども達においても当てはま る結果について考察したい。これら5つの行動は、玉井(2011)(14)のいう「対人関係に沿わな い行動」、「集団行動から逸脱した行動」に属する内容であり、いわば小柳津(2018)で示した 「その行動に対応することによって円滑な保育活動を進める上での支障となる可能性がある行 動」であるといえる。石倉・仲村(2011)(15)は、気になる子どもを見る目において、保育者と 小学校教員との間に違いがあるかについて調査を行ったところ、保育者・小学校教員の両者に おける気づきの因子として「対人関係領域」、「多動・衝動性領域」、「注意集中・不注意領域」 が共通すると報告している。本研究で上位にあがった「落ち着きがない」、「じっとしていられ ない」は石倉・仲村(2011)のいう「多動・衝動性領域」に当たる。また、「話を聞くことが できない」、「指示が理解できない」は「注意集中・不注意領域」に当たり、「集団生活に参加 できない」は「対人関係領域」に属するものと考えられる。本研究で上位にあがった5つの項 目は、石倉ら(2011)のいう保育者と小学校教員が共通する3つの気づきの因子と重なる結果 であることから、放課後児童クラブ支援員にも当てはまる共通する視点であると考えられる。 よって、放課後児童クラブという施設独自の機能によって子どもを捉える視点に違いが出ると いう仮説について、上位5項目の結果からは成立しなかったといえる。 ⑵ 子どもを捉える視点に施設独自の機能が影響を与える項目 放課後児童クラブという施設独自の機能が影響したと考えられる項目として、前述した上位 5項目に続く6番目に高い値を示した「他害行為がある」に注目したい。筆者の前報告(小柳 津;2018)では、保育所を対象にした調査において「他害行為がある」の項目は14項目中11 番目と下位に属していた。しかし、放課後児童クラブを対象とした本調査では上位にあたる6 番目に位置した。この差異は以下の2つの背景が要因となり、支援員にとって高い値で気にな
る行動と捉えられたと推察する。 1点目は子ども自身の家庭環境における背景である。放課後児童クラブに在籍する児童は、 「保護者が労働等によって昼間家庭にいないもの」とされている。それらの児童は長時間放課 後児童クラブで過ごしていることから一定の心理的負荷がある状況が長く続くことにより、他 害行為などの暴力行為につながってしまうのではないかと推察する。小学校では他害行為に発 展しない場合においても、放課後児童クラブでは目に見える形で他害行為として表出してしま うことがあるのではないだろうか。実際に、武藤・青 (2017)の調査において、放課後児童 クラブ支援員が児童への対応で最も困ることとして「児童同士のトラブル」を挙げている。ま た、具体的数値として「友人への暴言」、「友人への暴力」について児童に叱った経験を持つ支 援員は80%以上いることを示しており、放課後児童クラブにおいて仲間関係のトラブルが目 立つことを裏付けている。 2点目は支援員の子どもに対する支援目標における背景である。放課後児童クラブ運営指針 (厚生労働省;2017b)では、放課後児童クラブにおける育成支援の基本として「子どもが安心 して過ごせる生活の場としてふさわしい環境を整え、安全に配慮しながら(中略)子どもの健 全な育成を図ることを目的とする」とされており、支援員にとって安全管理が最も重視される 支援目標となるのである。武藤・青 (2017)の調査においても放課後児童クラブ支援員が特 に心がけて指導している内容で最も多かったものが「活動中の安全」であり、90%以上の支援 員が特に心がけていると回答している。そういった状況において、子ども同士のトラブルとし て最も困るのが他害行為ではないだろうか。仲間同士のトラブルは放課後児童クラブの運営指 針から考えると、支援員の安全管理能力を問われる事態にもなりかねない。そのため、「他害 行為」が気になる行動として高い値を示したのではないかと考える。 この結果は、施設独自の機能によって子どもを捉える視点に違いが出ると考えた仮説を支持 するものであるといえよう。本研究の結果から、支援を必要とする子どもを理解する視点とし て重要なのは、対象となる子どもが幼児期か児童期かという年齢の要因よりも、施設の運営方 針(指針)によって差異が生まれることが示唆された。 ⑶ 具体的支援の方策における考察 表6より、具体的な支援の方策について、経験年数群ごとの一人当たりの回答数に着目した い。経験年数10年以上群が最も回答数が多く、次いで7‒9年、4‒6年、1‒3年の順であった。 特に10年以上群−1‒3年群間には有意差が認められることから、経験年数が長くなるほど具体 的な支援の方策が増えることが明らかになった。筆者の前報告(小柳津;2018)では、保育所 を対象にした調査において経験年数が長くなると支援の方策が減少する結果となっていた。し かし、本研究では、経験年数が長くなるにつれ、一人一人の支援の方策が増加する結果となっ た。この結果も施設独自の機能が影響していることによるものと考えることができ、当初の仮 説を支持するものであると言えよう。宮里(2015)の調査では、放課後児童クラブ支援員が支 援を必要とする子ども達に対して最も困難を抱く時期を3∼4年目であると指摘している。さ
らに、5年以上の中堅になると、経験や知識、長年対応し乗り越えてきた自信がある程度獲得 され、「対応できる自分」になると述べている。本研究においても、4‒6年群以上で支援の方 策が増えていくことから、経験年数と子どもへの対応力については宮里(2015)の報告を支持 できる結果となった。このことから、放課後児童クラブ支援員にとってよりよい支援を提供す るには、経験の長い支援員を多数在職させることが重要であるといえよう。言い換えてみると 放課後児童クラブ支援員として離職しないような社会的な仕組み作りが必要となるのである。 支援員の離職を防ぐために、布施ら(2017)は支援員の学びのニーズを充足する取組を展開す る必要性について述べている。取組の一つとして、2015年より放課後児童支援員認定研修事 業が全国で展開されるようになった。今後は研修内容の充実を図ることで支援員がより深く子 どもを理解し、適切な支援ができる体制を構築していく必要があると考える。 表4より、具体的な支援策についての自由記述にも注目したい。例えば「他者との関わりを 広げる支援」のカテゴリーに集約した中に「仲裁に入る」といった記述が多数見られた。この 記述は、放課後児童クラブにおいて対人関係によるトラブルが多いことを暗に表していると考 えることができる。子ども同士1対1でのトラブルだけでなく、グループ対グループという対 立構造も想像でき、そのトラブルのたびに職員が仲裁に入っていることが考えられる。また「他 児の理解を得る」や、「両者の気持ちを理解する」といったトラブルの仲裁をうかがえる内容 の記述も散見され、「きょうだいの協力を得る」という特徴的な回答もあった。学校では年齢 が違うきょうだい児を同時に支援することは少ない。しかし、異年齢の仲間が同一空間で過ご す放課後児童クラブであればきょうだい児を同時に支援する場面もあるだろう。これらの記述 からも、放課後児童クラブにおいては、施設独自の機能による影響を踏まえて支援の方策が工 夫されているといえる。 以上のことから、支援を必要とする子どもへの具体的な支援の方策における差異は、施設独 自の機能によって表れることが本研究によって示唆された。 5. 今後の課題 本研究は、意図的に対象を放課後児童クラブに焦点化したため、ごく限られた集団による調 査といえる。今後は、幼稚園、学校など他の施設独自の機能による影響についても検証してい く必要がある。検証を進める中で、特別な支援を必要とする子どもの理解や対応について、各 施設における特性を比較・検討し、よりよい保育・教育環境の在り方を探っていきたい。 謝辞 本研究を実施するにあたり、ご協力いただいた放課後児童クラブ支援員の皆様に厚く御礼申し上 げます。
引用・参考文献 ⑴ 文部科学省(2018)平成30年度学校基本調査 ⑵ 厚生労働省(2017a)平成29年(2017年)放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実 施状況 ⑶ 厚生労働省(2017b)放課後児童クラブ運営指針解説書.フレーベル館 ⑷ 柏女霊峰(2015)子ども・子育て支援新制度と放課後児童クラブ.放課後児童支援員都道府県 認定資格研修教材,中央法規,1‒8 ⑸ 宮里新之介(2015)放課後児童クラブにおける指導員の発達障害児対応の困難感に関する調査 研究.鹿児島女子短期大学紀要,50, 121‒128 ⑹ 武藤七海・青 直子(2017)放課後児童支援員における子どもの育成支援に関する研究.茨城 大学教育実践研究,36, 269‒279 ⑺ 布施晴美・風間文明・安田哲也・長田瑞恵・加藤陽子(2017)放課後児童クラブ職員の職務に 対する想い─やりがいとストレスと学びのニーズとの関係から─.十文字学園女子大学紀要, 48(2), 29‒38 ⑻ 恒次欽也(2014)障害のある子どもの学童保育(放課後児童クラブ)─今後の調査研究のため の序─.障害者教育・福祉学研究,10, 27‒32 ⑼ 今中博章・高橋実・伊澤幸洋・中村満紀男(2013)保育者の「気になる子」という認識と子ど もの行動に関する調査.福山市立大学教育学部研究紀要,1, 7‒14 ⑽ 小柳津和博(2018)特別な支援を必要とする子どもの理解と対応に関する研究─保育所に在籍 する子どもの行動に着目して─.桜花学園大学保育学部研究紀要,18, 13‒23 ⑾ 守巧・山崎摂史・駒井美智子(2013)保育現場における「気になる」姿への傾向分析.東京福 祉大学・大学院紀要,4(1), 63‒71 ⑿ 菅原亜紀(2016)A市内保育所における「気になる子」に関するアンケート調査結果より見え てくるもの.純真紀要,56, 85‒96 ⒀ 櫻井貴大(2015)統合保育における自閉症児へのコミュニケーション支援の実態─保育者の援 助や躓きに着目して─.愛知教育大学幼児教育研究,18, 27‒34 ⒁ 玉井ふみ・堀江真由美・寺脇希・松村文美(2011)就学前における「気になる子ども」の行動 特性に関する検討.人間と科学 県立広島大学保健福祉学部誌,11(1), 103‒112 ⒂ 石倉健二・仲村愼二朗(2011)「気になる子ども」についての保育者と小学校教員による気づ きの相違と引継ぎに関する研究.兵庫教育大学研究紀要,39, 67‒76 (受理日 2019年1月9日)