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被災者の居住を支える福祉的支援について ―行政の役割と民間組織との協働のあり方―

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『日本福祉大学社会福祉論集』第 143・144 号 2021 年 3 月  要 旨  自然災害により住宅が滅失又は損壊した場合,また住宅にとどまることに危険が伴う 場合,多くの被災者は,避難所→仮設住宅→災害公営住宅(もしくは再建した住宅)へ と居所を移動することが想定される.その期間が長期化するほど,慣れない居住環境や 人間関係の中で生活することによる身体的・精神的・社会的ダメージは増大すると考え られ,特に要配慮者の場合,コミュニティの崩壊による孤立の問題は深刻となる.  本稿では,まず被災者の居所について関連法規における設置や利用基準等の諸規定を 確認した.その上で,これまでに起きた自然災害の中でも特に被害が甚大だったものに ついて,行政の果たした役割(創設・適用した制度等)を明確にしながら,被災者の見 守りや相談支援,コミュニティの構築など民間組織が担った役割を概観し,居住を支え るための両者の協働の意義と課題について考察した.  行政と民間組織の役割分担や協働のあり方については,繰り返される災害における経 験を活かし,振り返りと検証が重ねられて今日に至っている.行政と民間組織それぞれ が自らの使命を自覚し,発災時にはその求められる役割を果たしつつ,協働して被災者 支援にあたる必要がある. キーワード:避難所,応急仮設住宅,災害公営住宅,行政と民間の協働,見守り, コミュニティ形成

 Ⅰ.はじめに

 (1)研究の背景と目的  近年,日本ではほぼ毎年,各地で自然災害が発生している.最近では,阪神・淡路大震災 (1995),新潟県中越地震(2004),東日本大震災(2011),熊本地震(2016),大阪府北部地震 (2018),平成 30 年 7 月豪雨(2018),北海道胆振東部地震(2018)など大地震を中心とした災害 〈研究ノート〉

被災者の居住を支える福祉的支援について

   行政の役割と民間組織との協働のあり方   

田 嶋 香 苗 

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が多く発生した.さらに2019 年は 8 月の九州北部豪雨,9 月の台風 15 号(関東地方),10 月の 台風19 号(関東・甲信・東北地方)などによる風水害の発生が相次いでいる.  そうした災害により住宅が滅失・損壊したり,滞在に危険が伴ったりする場合,被災者は安全 な居所を求めて避難を行う.緊急一時的には避難所に避難するが,共用施設が多くプライバシー の問題もあり,長期滞在に耐えうる生活環境とは言い難い.阪神・淡路大震災の際は,避難所と なっている体育館や公民館,集会所等へ多くの住民が避難したが,パーテーション等が設置され ることはなく,福祉避難所の設置もなされない中で,まさに着の身着のままの被災者が押しかけ 滞在している状況が散見された.田嶋(2019)は,阪神・淡路大震災時の避難所について「認知 症の高齢者が夜になると不安になって避難所中を徘徊したり,障害を持った子どもが大きな声を 出したり,乳児が頻繁に泣くなどした場合,周囲の避難者とトラブルになっていた.『じっとし ておけ』『静かにさせろ』などの怒号が飛び交うこともあった」と,限られた空間に多数の被災 者が身を寄せた当時の状況をふりかえっている.最近では段ボール製の間仕切りや簡易ベッドな どが使用されるようになり,また福祉避難所の設置も進み,改善された面も見受けられるが,昨 今の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,いまや避難を要する被災者が全員避難所に身 を寄せることも困難な状況である.知人宅や車中など,分散避難も検討されているところである が,いずれにせよ被災者は避難に伴う疲労に加え,短期間とはいえ不十分な環境での生活を余儀 なくされることで大きな負担を強いられることとなる.  そして応急仮設住宅は,プライバシーは確保されるが,家族の人数や家族構成と比して十分な スペースを備えているとは言い難い.さらに造成の必要のない学校園の校庭などに建設される ケースが多く,また抽選等によって入居先が決まるため,必ずしも元の居住地の近くに入居でき るとも限らない.慣れない居住環境での生活が数か月間~数年間継続することになる中,被災自 治体では仮設住宅に集会所等を整え新たな集落コミュニティを作り,孤立による自殺や孤独死を 防ぐための仕組み作りに腐心することとなった.立谷(2017)は,東日本大震災の発災当時の福 島県相馬市長としての立場から,仮設住宅の重要課題を「新しい集落コミュニティーをつくり, 共同体として助け合って暮らすためのシステム作り」とし,仮設住宅1 棟(5 戸入居)のうち 1 戸を代表者(戸長),集会所を取り巻く16 ~ 20 棟からなる仮設住宅群の中からリーダー(組長) として,戸長会議・組長会議で話し合われた仮設住宅における課題を月1 回の市役所の会議で話 し合う,という体制を構築することにより仮設住宅でのコミュニティー形成を図った,としてい る.  さらに災害公営住宅に入居,もしくは住宅を再建した場合も,発災前のような馴染みの人間関 係もなく,地域の様相も様変わりした環境で,孤立感を深める被災者が多数存在するであろうこ とは想像に難くない.伊藤(2018)は,阪神・淡路大震災後の災害復興公営住宅の多くが市街地 から離れた地域に建設されたこと,震災前には長屋や文化住宅などの密集市街地に居住していた 被災者にとって高層住宅という住環境はなじみにくいものであったこと,仮設住宅と同様に抽選 によって入居が決められ,慣れない土地で初対面の人々とゼロからコミュニティづくりをしなけ

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ればならないという状況などが,ますますコミュニティづくりの困難性を高めたと指摘してい る.  このように,被災者の居所について一定の生活環境を整え供給することは,当然のことながら 行政の役割である.一方,居住環境を整え生活できるようにしただけでは,被災者にとって十分 な支援であるとは言い難い.特に仮設住宅や災害公営住宅等では,見守りや相談支援を目的とし た訪問活動を通じて被災者との人間関係を構築しつつ,被災者の生活課題を見出し,関係機関と 連携して解決に向けた取り組みを行うほか,仲間づくり,居場所づくりなどコミュニティの再構 築に向けた息の長い関わりが不可欠と考えられる.具体的には,社会福祉協議会(以下,社協) やNPO など,専門職を有する民間組織にそうした継続的な支援活動を委ねることが現実的であ り,既に多くの被災地域で実践されている.  行政と民間組織それぞれの役割は災害が発生する度に明確化されてきているが,協働の方法や 内容については未だ課題も多い.そこで,本稿ではまず,被災者の居所に係る法令等の規定を概 観することで,居住環境を整備するための法的枠組みを捉えることとする.次に,近年の大災害 において,被災者,中でも特段の配慮を必要とする者の生活を支えるために創設・適用された各 種制度と,民間組織が実施した見守り体制の整備やコミュニティづくりのための取り組み内容を 整理することで,被災者の福祉的支援の現状について考察する.そして最後に,行政と民間組織 がそれぞれ担うべき役割を踏まえながら,双方の協働に基づく被災者の居住を支える仕組みづく りの意義と課題を明確にしたい.  (2)研究方法  本稿は,被災者の居住を支える福祉的支援について,今後の発災時の備えとして行政の役割や 民間組織との協働を行う上での課題を明らかにしようとするものである.よって研究方法として は,関連法制度を整理することとともに,既存の資料から,これまでの自然災害時に展開されて きた行政・民間組織それぞれの実践内容の確認と分析を行うことが中心となる.具体的には,下 記の方法により整理・分析に必要な情報を収集する. ・被災者支援に係る法制度 ・・・ 内閣府「防災情報のページ」および文献 ・災害復興に係る施策や検証資料,実践事例の内容 ・・・ 自治体や社会福祉協議会,NPO 等の ホームページ,防災白書 ・近年の自然災害に係る福祉的支援を論じた論文 ・・・CiNii Articles  なお本稿では,福祉的支援活動の内容を分析するにあたり,近年の自然災害のうち特に被害が 甚大であったものとして,阪神・淡路大震災(1995),東日本大震災(2011),熊本地震(2016), 平成30 年 7 月豪雨(2018)をとりあげることとする.  (3)先行研究  仮設住宅や災害公営住宅における見守り等の福祉的支援の必要性について盛んに論じられるよ

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うになったのは,阪神・淡路大震災以降である.伊藤(2018)は,阪神・淡路大震災の被災者 が,居所を移動する過程において震災前の地域コミュニティが分断されたことによる問題を抱え ていることを,災害復興公営住宅の入居者に対するヒアリング結果から明らかにした.また,大 塚ら(2003)は,被災者が仮設住宅から災害復興公営住宅等の恒久住宅へ移転しても,コミュニ ティ形成の問題や健康不安,孤独死の多発などの問題を感じており,仮設住宅の解消が住まいの 復興とは言えないことを指摘している.本間(2018)は,東日本大震災において,災害公営住宅 のコミュニティづくりに被災住民自らが自発的に生活支援員として従事している例をとりあげ, 当事者性を持った支援が地域社会再編の一助となることを示唆している.  行政と民間組織・住民との協働に関しては,地域安全学や土木学の観点から,地域防災に焦点 を当てた研究が多くみられる.大山ら(2011)は,災害に強い地域を作るために住民と行政が協 働して地域防災力の向上に取り組む必要性とその方法を論じた.同様に菅野(2016)は行政と NPO・NGO が災害時に連携するために,平時から相互のあり方の差異を理解し,発災時の情報 共有や役割分担,活動内容を共有するネットワークを構築しておくことの必要性を指摘してい る.また峯本(2013)は,防災対策と福祉対策の交錯や連携の課題を検証すると同時に,減災の ために自治体が地域コミュニティとの協働を進めていく重要性をとりあげている.  このように,先行研究では被災者の居所の移動に伴う課題に着目し,その支援の必要性を指摘 するものや,防災・減災の観点から行政と民間組織の協働の意義と手法を述べているものが多 い.  一方本稿は,被災者の居所をいわゆる「住まい」(居住環境)と「暮らし」(生活)という2 つ の側面からとらえ,前者は行政が,後者は民間組織が中心となって支えるとともに,その両者が 協働することにより包括的に被災者の居住を支える仕組みを考察している点が特徴的だといえ る.  

Ⅱ.被災者の居所の整備

 先述のとおり,災害発生時に自宅にとどまることが危険と判断された場合,もしくは自宅が損 壊し居住が困難となった場合,被災者は,その居所を自宅外へ求めざるを得ない.その居所につ いては,発災後の時間的経緯とともに,(1)避難所,(2)応急仮設住宅,(3)災害公営住宅また は再建した住宅,と推移すると整理できよう.  それぞれに係る法令等の規定,生活環境,開設(供与)期間等は以下のようになっている.  (1)避難所  1)設置等に係る法令等の規定  「災害救助法」は,第4 条第 1 項第 1 号で救助の種類の一つとして「避難所及び応急仮設住宅 の供与」を定めている.

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 避難所は,「災害対策基本法」(以下,災対法)第49 条の 7 に基づく,災害が発生した場合に 被災者等が一時的に滞在するための施設のことであり,市町村長が基準に適合する公共施設その 他の施設を指定避難所として指定することとなっている.避難所は原則として指定避難所を利用 することとなっているが,「災害救助事務取扱要領」(以下,要領)では,指定避難所だけでは受 入施設が量的に不足する場合には公共施設等を利用すること,それでもなお不足する場合は民営 の旅館またはホテル等を借り上げて設置することも(内閣府と連絡調整を図れば)実施できるこ ととなっている.  そして福祉避難所は,高齢者,障害者のほか,妊産婦,乳幼児,病弱者など,避難所生活にお いて何らかの特別な配慮を必要とする者(以下,要配慮者)が避難する施設として整備されるも のである.福祉避難所には,要配慮者の円滑な利用の確保,要配慮者が相談し,又は助言その他 の支援を受けることができる体制の整備その他の要配慮者の良好な生活環境の確保が求められて いる(災対法施行令第20 条の 6 第 5 号,災対法施行規則第 1 条の 9).  2)生活環境  災対法第86 条の 6 では,避難所に係る必要な安全性及び良好な居住性の確保,食糧,衣料, 医薬品その他の生活関連物資の配布,保健医療サービスの提供など,避難所に滞在する被災者の 生活環境の整備の努力義務が規定されている.  福祉避難所については,要領で,(災害救助法が適用された場合において)要配慮者が生活し やすい環境整備に必要である仮設設備や機械又は器具等の借り上げに必要な経費,紙おむつやス トーマ用装具等の消耗機材等の購入費,概ね10 人の対象者に 1 人以上の相談員等の配置に必要 な費用について,国庫補助の対象となると規定されている.さらに,福祉避難所において要配慮 者の相談等に当たる職員は,避難者の生活状況等を把握し,他法により提供されるホームヘル パーの派遣など,避難者が必要な福祉サービスや保健医療サービスを受けられるよう配慮するこ ととされている.  3)開設期間  要領では,避難所の開設期間は災害発生の日から7 日以内で定めることとなっているが,定め られた期間内に避難所を閉鎖できない場合は,内閣総理大臣と協議の上延長することとなってい る.  一方,福祉避難所の設置期間については,対象者の特性からできる限り短くすることが望まし いことから,福祉仮設住宅等(後述)への入居を図るほか,高齢者世話付き住宅(シルバーハウ ジング)への入居や社会福祉施設等への入所等を積極的に活用し,早期退所が図られるように努 めることとされている.  (2)応急仮設住宅  1)設置等に係る法令等の規定  応急仮設住宅は,避難所と同様,「災害救助法」第4 条第 1 項第 1 号で,その供与が救助の種

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類の一つとして定められている.応急仮設住宅は,住家が全壊,全焼又は流失し,居住する住家 がない者であって,自らの資力では住家を得ることができないものに供与される.  2)生活環境  応急仮設住宅の基準は,内閣総理大臣告示に定められている.設置にかかる費用や規模につい て,地域の実情や世帯構成等に応じて設定される.  また,高齢者等であって日常の生活上特別な配慮を要する者を数名以上入居させるため,老人 居宅介護等事業等を利用しやすい構造・設備を有する福祉仮設住宅を設置することも可能とされ ている.阪神・淡路大震災では,神戸市の提案により高齢者・障害者向けの地域型仮設住宅(福 祉仮設住宅.通称:ケア付き仮設住宅.生活援助員による生活支援あり)が県下4 市に建設さ れ,後に発生した東日本大震災の被災県における設置の参考にされた.  3)供与期間  「建築基準法」第85 条第 3 項及び第 4 項の規定により,建設型応急住宅(建設し供与するも の),賃貸型応急住宅(民間住宅等を借り上げて供与するもの)のいずれも,完成の日から3 か 月とされている.ただし,供与を継続する必要がある場合には特定行政庁の許可を得ることで2 年以内とすることができ,さらに1 年を超えない期間ごとに延長が可能となっている.  (3)災害公営住宅または再建した住宅  1)公営住宅  公営住宅は,「公営住宅法」(以下,法)に基づき,地方公共団体が,建設,買取り又は借上げ を行い,低額所得者に賃貸し,又は転貸するための住宅及びその附帯施設である(第2 条第 1 項 第2 号).災害により滅失した住宅に居住していた低取得者等に賃貸する公営住宅(災害公営住 宅)については,通常の公営住宅の建設等に要する費用よりも国の補助率が高く設定されている (法第8 条).大規模災害においては,被災市街地復興特別措置法第 21 条の規定により,当該災 害により滅失した住宅に居住していた者及び都市計画事業等の実施に伴い移転が必要となった者 については,発災日から起算して3年を経過するまでの間は,公営住宅の入居が可能とされてい る.  2)再建した住宅  被災者の住宅再建にあたっては,「被災者生活再建支援法」第3 条に基づく被災者生活再建支 援金を受給するほか,住宅金融支援機構の融資制度を利用することができる.  一方,市町村の土地区画整理事業が実施される際は,事業が終了するまで住宅再建に着手でき ないため,行政には土地所有者の住民の理解を得ながら迅速に事業を遂行することが求められ る.  このように,被災者の居所についてはそれぞれ関係法規に基づき開設・供与・建設等がなさ れ,生活環境が整えられ,避難所・応急仮設住宅については一定期間の滞在・居住が認められて

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いる.これは行政が行う「住まい」(居住環境)の整備である.  しかし,そうした「住まい」(居住環境)の整備だけでは十分対応できないニーズも存在する. 次章ではそれらに対応してきた活動の例をみていくこととする.

 Ⅲ.支援活動の例

 Ⅱでみてきたように,要配慮者を含む被災者は発災後,緊急一時的に避難所へ避難し,その後 応急仮設住宅,災害公営住宅(もしくは再建した住宅)へと居所の移動を余儀なくされる.長年 住み慣れた自宅や地域を離れ,数か月から数年にわたり慣れない居住環境や人間関係の中で生活 をすることにより,身体的および精神的に不具合が生じたり,社会環境的に孤立を招いたりして いることが想定される.仮に自宅のあった場所に住宅を再建することができたとしても,従前の ようなコミュニティ機能が復活するには相応の時間を要すると思われる.  こうした状況に対応するため,過去の大災害発生時には様々な対応が試みられてきた.中で も,高齢者などの要配慮者に対しては,見守り体制の整備やコミュニティづくりを通じてその 「暮らし」(生活)を支援するために,行政と民間が協働して多くの取り組みを実践してきたので ある.  本章では,これまでの中でも特に被害が広範囲かつ甚大であったと考えられる災害において展 開された取り組みの実践例をみていくこととする.  (1)阪神・淡路大震災における「シルバーハウジング」の供給とコミュニティ支援  シルバーハウジング・プロジェクトは,1987 年の国土交通省(旧建設省)と厚生労働省(旧 厚生省)の合同通知に基づく事業である.バリアフリー化した住宅に緊急通報装置や水量セン サーを取り付けた公営住宅等と,LSA(生活援助員)による日常生活支援サービスの提供を合 わせて行うことで,高齢者に安心・安全な住宅を提供しようとするものであった.  阪神・淡路大震災では,応急仮設住宅を解消するに当たり,入居者の高齢化率が高いことや健 康状態を勘案し,シルバーハウジング(高齢者世話付住宅)を重点的に整備してLSA による公 的な見守り支援を行うこととなった.  LSA の活動内容は「生活指導・相談」「安否確認」「一時的な家事援助」「緊急時の対応」「関 係機関等との連絡」「その他日常生活上必要な援助」と多岐にわたるが,兵庫県においてLSA 業務にコミュニティ支援がふくまれていたことは特筆すべき点といえる.住民個々に対する支援 に加え,新たな居住環境において住民同士の結びつきやコミュニケーションを媒介する役割を果 たし,民生委員やボランティアと協力し,関係機関との連携を形作ることで,LSA はコミュニ ティ支援という機能をも担っていたのである.  その後,1997 年に配置された生活復興相談員を前身として,2001 年度からは SCS(高齢世帯 生活援助員)がシルバーハウジングのない災害復興公営住宅の高齢者を対象にLSA に代わるも

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のとして新たに設けられた.SCS は巡回訪問を主な業務としていたが,平成 16 年度からは「コ ミュニティサポート支援事業」を開始し,住民相互の見守り活動グループの育成を促進すること でコミュニティ支援の一端を担うこととなった.  既存の見守り資源としては自治会や民生委員,老人クラブ,ボランティアなどがあったが,見 守り資源となる人々自身が被災者であること,高齢化率の高い災害復興公営住宅ではコミュニ ティが希薄であり自治組織活動が低調であること,民生委員のなり手が少ないことなどもあり, 活動内容に限界が生じていた.こうした中,公的な制度によるLSA,SCS が見守り支援やコ ミュニティ支援の役割を果たしたことは大きな意義があったといえるだろう.  (2)東日本大震災における民間支援団体の活動と行政との協働  東日本大震災の復旧・復興の特徴の一つとして,阪神・淡路大震災を契機として推進された NPO などの民間支援団体やボランティアが,行政や他団体と連携しつつ,発災直後から活発に 活動したことが挙げられる.  「地域コミュニティ復興支援事業」は,東日本大震災の影響により弱体化した地域のコミュニ ティを再構築し,地域で孤立する恐れのある方への生活相談や交流の場,居場所づくり,見守り 等の支援を面的に行うため,被災地や避難先の自治体に対する補助事業として実施されたもので ある.市町村が実施主体となり,①ニーズ把握,総合相談及び交流場所などのサービス提供,② 見守り等の支援体制の構築,③社会福祉協議会,自治会,NPO 等の関係者間の総合調整に基づ く要配慮者の継続的な支援の実施,を柱として一体的に実施し,地域内の面的支援を行い,地域 コミュニティの復興支援を図ることとされた.この事業により配置された生活支援相談員によ り,仮設住宅における戸別訪問等による声かけ,相談や,仮設住宅での住民同士の交流事業等が 実施された.  また,被災地内外の人材を復興支援員として委嘱し,一定期間以上,被災地域に住み込んで住 民の見守りやケア,集落での地域おこし活動の支援等と併せて,見守りやコミュニティ活動の支 援等も行われた.  こうして国の被災者支援対策事業の一部として生活支援相談員,復興支援員らが見守りやコ ミュニティ支援活動を行うと同時に,NPO やボランティア等,民間支援団体も多く活動してい る.仮設住宅入居者も含めたコミュニティづくりのきっかけとするために町内会が中心となって 環境美化活動を行った例,NPO 法人が遊びやスポーツの場の提供を通じて地域活性化を行った 例など,住民や民間支援団体が中心となった活動のほか,応急仮設住宅,借り上げ公営住宅等の 入居者への見守り活動をNPO 法人と市が協働事業で実施したり,NPO 法人が市の業務委託を 受けて訪問事業を実施するなど,行政と民間団体が連携して取り組む活動も散見される.このよ うに行政がNPO 等の活動と協働したりその活動を支援する取り組みを行ったりしたことで,よ り効果的な活動となったと考えられる.

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 (3)熊本地震における「地域支え合いセンター」の設置  熊本県では,復興庁所管の被災者支援総合交付金のメニュー事業の中の「被災者見守り・相談 支援事業」として「地域支え合いセンター」が設置されている.熊本地震の被災者が生活再建に 向けて安心した日常生活を送ることができるよう,生活支援相談員等が応急仮設住宅や在宅を巡 回訪問し,被災者の見守りや相談対応を行うほか,集会所でのサロン活動などのコミュニティ・ 交流の場づくりの支援などを行い,生活再建を総合的に支援している.  センターの運営は各市町村の社会福祉協議会(以下,社協)などが担い,地域の状況に応じた 活動を展開しているほか,県社協に「熊本県地域支え合いセンター支援事業所」が設置され,各 市町村センターの運営支援を行っている.  同センターの役割には「(被災者の)課題の把握と専門機関へのつなぎ」が位置付けられてお り,訪問活動等により把握された課題や相談内容に応じ,地域リハビリテーションセンター(生 活不活発病防止等のための専門職派遣)やこころのケアセンター(被災者の心のケアのための専 門職派遣),地域包括支援センターなどの各種専門機関等と連携するとされている.  また,民生委員・児童委員,社会福祉法人,NPO 法人,ボランティア団体等の民間組織等と の連携・協力も想定されている.例えば益城町の地域支え合いセンターでは,町社協がNPO と 協働で巡回訪問による見守り・相談・生活支援・地域交流の促進・介護予防などの総合的な支援 活動を展開している.さらに,ボランティアを募集し,地域のコミュニティづくりにつながるボ ランティア活動・イベントの開催支援を行っている.  地域支え合いセンターの運営を市町村社協が行うことにより,途切れない支援が実施でき,当 該地域の被災者の状況に応じた活動を行うことが可能となっていると思われる.  (4)平成 30 年 7 月豪雨(西日本豪雨)におけるボランティア・NPO 等による支援  地震だけでなく,豪雨による水害により住宅に被害を受けた被災者もまた,応急仮設住宅へ入 居するなど,被災前とは大きく異なった環境に置かれ,生活の再建に向けて様々な課題を抱える こととなる.このため,西日本豪雨においても熊本地震の時と同様に,孤立防止等のための見守 り,相談支援,住民同士の交流の機会の提供等を行う「被災者見守り・相談支援事業」が被災地 である岡山県,広島県,愛媛県において実施された.  そしてこの時の対応において特筆すべきは,ボランティア・NPO 等による生活再建に向けた 支援である.  社協により立ち上げられた災害ボランティアセンター(以下,災害VC)におけるボランティ ア活動者数(延べ人数)の累計は,2019 年 3 月の段階で 265,213 人に上っている.災害 VC で はボランティアの受付・登録,ボランティアに対するオリエンテーション,被災者のニーズ把 握,活動先とのマッチング,活動に必要な資機材の管理などが行われ,作業内容は家屋からの家 具等の運び出し,土砂の搔き出し・運搬などが中心となった.さらに,広島県では住民主体の災 害VC が立ち上げられ,住民自らが地区内でボランティアを募り,活動を開始したものであっ

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た.これは,市区社協が区域内に避難指示が解除されていない地域があることから災害VC セン ターが開設できないという事情があったためであるが,社協スタッフが毎日助言や必要な資機材 の調達などの後方支援を行うことで活動が円滑に進んだ面があった.また,中央共同募金会に設 置されている「災害ボランティア活動支援プロジェクト会議」(支援P)が,発災直後に先遣隊 を派遣し,関係機関や各支援団体と綿密に連携し情報収集を行いながら,被災地の社協等と協働 して災害VC 設置を支援したほか,災害 VC の運営を行う人材派遣などを行い,活動団体間の連 携,協働を支援した.  NPO についても,避難所の運営支援,災害 VC と連携した土砂撤去などの技術的な支援(岡 山県倉敷市)や,在宅避難者のニーズ把握調査(岡山県岡山市,広島県坂町)など,その専門性 を活かした支援が展開された.  こうした行政,ボランティア,NPO 等の支援活動を連携のとれたものとするため,それら三 者が参加して被災者のニーズや支援活動の情報共有・調整を行う「情報共有会議」が被災県で定 期的に開催された.さらに全国域で「平成30 年 7 月豪雨に対応する全国情報共有会議」が平成 30 年 7 月に立ち上げられ,一つの府県内では対応できない課題,解決のための力を全国規模で 募りたい課題,問題の所在を全国に発信したい課題などについて情報共有や意見交換が行われ た.

 Ⅳ.考察

 被災者の居住を行政と民間組織が協働して支えるために求められる点について,以下のように 整理したい.  (1)行政の役割にも民間組織の協力を求めること  本稿では,被災者の居住を支えるにあたり,行政の役割を制度の創設・運用の面からみてきて おり,具体的には関係法規に基づき一定の「住まい」(居住環境)を整え供給すること,つまり 居所の整備として整理した.しかし,Ⅱでみたように,避難所については指定避難所や公共施設 等を利用してなお不足する場合は,民営の旅館またはホテル等を借り上げて設置することも可能 とされている.特に要配慮者の避難にあたっては,福祉避難所の設置が十分でない場合には旅館 やホテルを活用することが有効と考えられる.同様に,応急仮設住宅についても行政が建設する 建設型応急住宅だけでなく,民間住宅等を借り上げる賃貸型応急住宅を供与することも可能と なっている.  このように,発災時の居所の整備については,行政が自ら指定したり建築したりすることにこ だわらず,民間の建築物の活用も視野に入れ,発災時に活用可能な建築物について平時から民間 事業者の協力を仰ぎながら把握しておく必要がある.

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 (2)民間組織の多様な専門性を活かした活動を支援すること  被災者に対する見守り,相談支援,コミュニティ支援などで「暮らし」を支えることは,継続 した関わりにより形成される支援者と被災者の信頼関係をもとに展開するとよく,これまでにも 社協やNPO などの民間組織が中心となって活動してきた経緯がある.特に高齢者をはじめとす る要配慮者についての見守り活動は多くの被災地で実践されており,孤立防止のための訪問活動 や住民同士のつながり支援では多くの成果が報告されている.  一方,要配慮者以外で訪問活動による関わりが必要な被災者の存在も忘れてはならない.例え ば,経済的に困窮している人,他者との接触を好まず引きこもりがちな一人暮らしの人などがあ げられる.避難所は無償で利用できるが,応急仮設住宅では光熱水費や食費などが,さらに災害 公営住宅では所得に応じた家賃も必要となることなどによって経済的に生活が成り立たない状態 に陥っているケース,コミュニティへの関わりが希薄でSOS の発信を把握しづらいケースなど については,特に丁寧な訪問活動により信頼関係を少しずつ構築していくという息の長い支援が 求められる.その他,子どもや思春期の学生などについても,高齢者等とは異なるニーズを持っ ていることが懸念され,学童期をはじめとした子どものニーズを汲み取ることのできる専門職の 関わりが求められるところである.  行政は被災者のもつ多様なニーズに気付き支援につなぐことができる専門職の派遣のほか, NPO をはじめとした様々な専門性を持った民間団体が活動できるよう,活動に必要な研修の実 施や財政的支援を講じる必要があるといえる.  (3)きめ細かな情報共有の機会を設けること  Ⅲ(4)で述べた情報共有会議のように,被災者支援にあたっては行政と民間組織との情報共 有の機会を設けることが不可欠である.平成30 年 7 月豪雨の際は,行政,ボランティア,NPO それぞれの支援活動を連携のとれたものとし,支援の質を高めることを目指して,被災三県で被 害状況,被災者のニーズ,支援活動等の情報共有が図られた.これは,行政の行き届かない部分 をどのように民間組織が担うべきか,逆に民間組織が活動するにあたり行政の支援が必要なこと は何なのかなど,相互の強みと限界を確認し,それぞれが果たすべき役割の共有ができる点から しても意義ある機会といえる.  一方,今後も繰り返されるであろう大規模災害の被災市町村が,こうした機会を持つことの重 要性をどれほど認識できるのかは未知数である.今後,実施経験のある県がその意義についてふ りかえりと検証を丁寧に行い,情報発信を行うことでその効果を周知し,それぞれの市町村が地 域に応じた行政と民間組織の協働のあり方を構築していくことが期待される.

 Ⅴ.おわりに

 本稿では,被災者の居住を支えるにあたり,行政と民間組織が協働する意義と課題を考察し

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た.被災者の生活は,主に行政が行う「住まい」(居住環境)の整備と,孤立を防ぐための見守 りや相談支援,コミュニティ構築など,主に民間組織が担う「暮らし」(生活)の支援が揃って 初めて成り立つものである.両者が協働する必要性は改めて論じるまでもないが,その方法は近 年発生した災害の被災地における多くの取り組みを通じ,常により良い形が模索され続けてい る.今後確実に発生すると予測されている南海トラフ地震をはじめ,ここ数年繰り返されている 豪雨災害など,わが国は常に発災時の備えを求められており,被災者の居住を支えるための行政 と民間組織の協働のあり方を考え,仕組みを整える時間は多く残されているとはいえない.過去 の教訓に学び,実践に基づく経験値を糧にして,全国の自治体が地域特性に応じた支援の仕組み を官民一体となって整え,来るべき災害に備える必要があるといえる. 参考・引用文献 田嶋香苗(2019)「災害時における福祉避難所の機能と利用に関する考察」『日本福祉大学社会福祉論集』 第141 号,pp.59-70 立谷秀清(2017)『東日本大震災 震災市長の手記』近代消防社 伊藤亜都子(2018)「阪神・淡路大震災の復興過程における災害復興公営住宅のコミュニティ形成と課題」 『社会学年報』№47, pp.37-47 大塚毅彦・松本滋(2003)「阪神・淡路大震災における仮設転居層の住宅・生活復興に関する研究」『住宅 総合研究財団研究年報』№29, pp.313-323 本間輝雄(2018)「被災者が担い手になった生活支援員(LSA)とコミュニティづくり-宮城県南三陸町 被災者支援の事例から-」『社会学年報』№47, pp25-35 大山勲・秦康範・鈴木猛・佐々木邦明・三井あゆみ(2011)「地震災害を対象とした住民・行政協働によ る地域防災力向上に関する取り組み」『土木学会論文集F5(土木技術者実践)』vol.67, № 2, pp116-129 菅野拓(2016)「行政・NPO/NGO 間の災害時連携のために平時から備えるべき条件」『地域安全学会論 文集』№29, pp.115-124 峯本佳世子(2013)「災害福祉政策と地域コミュニティの課題」『甲子園短期大学紀要』31, pp45-53 佐々木昌二(2017)『最新 防災・復興法制 東日本大震災を踏まえた災害予防・応急・復旧・復興制度 の解説』第一法規 内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(被災者行政担当)『災害救助事務取扱要領』平成30 年 4 月 「災害救助法による救助の程度,方法及び期間並びに実費弁償の基準」平成25 年 10 月 1 日内閣府告示第 228 号 「東日本大震災に係る応急仮設住宅について」平成23 年 4 月 15 日厚生労働省社会・援護局総務課長 「シルバーハウジング・プロジェクトの実施について」昭和63 年 2 月 15 日建設省住建発第 8 号・厚生省 老振第7 号(建設省住宅・厚生省社会局連名通知) 復興10 年総括検証・提言報告 第 3 編[1]健康福祉分野 5「高齢者の見守り体制整備」(https://web. pref.hyogo.lg.jp/kk41/wd33_000000126.html 取得日:2020 年 9 月 6 日) 厚生労働省「社会・援護局関係主管課長会議資料」平成26 年 3 月 3 日 「復興支援員」の推進について(通知)」平成24 年 1 月 6 日総行人第 60 号(総務省人材力活性化・連携 交流室長) 宮城県「東日本大震災における被災者生活支援取組事例」 (https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/hohusom/jirei.html 取得日:2020 年 9 月 27 日) 熊本県「地域支え合いセンターの活動について」 (https://www.pref.kumamoto.jp/kiji_17270.html 取得日:2020 年 9 月 27 日)

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益城町地域支え合いセンター (https://www.mashiki-saigai.info/sasaeai 取得日:2020 年 9 月 27 日) 内閣府『防災白書 令和元年版』2019 年 7 月 全社協被災地支援・災害ボランティア情報 (https://www.saigaivc.com/20190607/ 取得日:2020 年 10 月 12 日) おかやまNPO・ボランティアサイト つながる協働ひろば (http://www.okayama-tbox.jp/kyoudou/s/pages/15094 取得日:2020 年 10 月 12 日) 社会福祉法人広島市社会福祉協議会「平成30 年 7 月豪雨災害広島市・区社会福祉協議会活動記録―地域 の自主的な活動の支援に向けて-」2020 年 3 月 支援P 公式サイト(https://shienp.net/343 取得日:2020 年 10 月 12 日) 内閣府(防災担当)普及啓発・連携担当「平成30 年 7 月豪雨に際する情報共有会議」平成 31 年 3 月

参照

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