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水銀法食塩電解における微量バナヂンの影響 III : 水素發生状態の顯微鏡による観察 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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(1)

水銀法食塩電解における微量バナヂンの影響 III

(水素發生状態の顯微鏡による観察)

In fluence of Trace Vanadium on the Mercury Cell Process

SatoshiMotoo  The evolution of hydrogen on mercury cathode under the influence of traec vanadium salt was investigated. Trace vanadium in sodium chloride solution is reduced to form thin film of vanadium compound on the cathode, and hydrogen evolution occurs. IIydrogen evolution docs not occur on the surface of the film, but on the boundary of the film and mercury. The film is broken to pieces by the action of hydrogen bubble, and boundary line on which the evolution of hydrogen bubble occurs increaces. 1 緒 言  著者はさきに微量バナヂン塩を含む食塩水溶液を水 銀陰極を用ゐて電解した際における水銀陰極の電解電 位の時間的変化を調べた。1)その結果によると水素発 生に先立つて、ナトリウムアマノレガムの生成の過電圧 が異常に大きくなる事を知つた。ナトリウムアマルガ ムの生成の過電圧の異常はバナヂン塩の還元生成物が 電極表面を覆ひ、電極へのナトリウムイオンの移動の 障害となるためと思われる。 そこで著者は水銀陰極面における還元生成物の析出の 有無を確め、還元生成物と水素発生位置との関聯を調 べた。  還元生成物は水銀表面に薄膜状になつて生成し、水 素気泡は薄膜の周辺から発生し、薄膜表面からは発生 して居らない事を見出した。

2 実 験 法

 電解槽はFig 1のような形状の硝子製のものを用ゐ た。Aは水銀陰極室で下部に白金のリ…一ド・ワイヤー が備えてある。Bは陽極室でGのグラス・ブイノレター で連絡されて居る。  顕微鏡の操作及び撮映時の振動が水銀面に伝わるこ とをふttぐために、電解槽は陽極室の垂直部を支持し 顯微鏡との接触をさけた。  電解液は飽和食塩水にバナヂン酸アンモンを0.5M 加えて薄膜生成に用ゐ、水素発生の観察には食塩の飽 和水溶液を用ゐた。  使用した食塩は保証付のものを蒸溜水で洗塩後、溶

9

T●一一「

 A

G

B

Fig.1 Electrolyiccell for observation     A mercury cathode

    B anode compartment

    C  GIass filter 解して用ゐた。バナヂン酸アンモンは一一一級試薬を用ゐ た。

3 実験結果及び考察

 バナヂン酸アンモンを含む食塩水溶液を水銀陰極と 白金陽極で水素の発生及びアマルガムの生成の起らな い程度の浴電浴で電解すると陰極表面に次のような変 化がおこる。時間の経過とともに水銀表面に膜状の物 質が生成し、全面を覆ふ。表面は一様に淡褐色を呈す る。硝子棒で撹伴すると、膜に裂け目が入り膜の存在 が明らかになる。又膜の薄い間は表面に附着した小気 泡の動きが停止するので判る。更に長時間電解を続け ると、膜に自然に裂け目が出来て、水銀面から剥離し、

(2)

昭和35年12月

山梨大学工学部研究報告

第11号

 液中に浮遊して来る。これを取り出して透過光で見る  と黄褐色である。この膜状物質を顯微鏡で撮映したも  のがPhoto 1である。   次いで浴電圧を上げると水素の発生が起る。   還元によつて生じた薄膜状の物質と水素発生位置の 関係を調べるために、実験法の項で述べた検鏡用の電 解槽で先づ1・3ボノレ1・の浴電圧で0.5mMのバナヂン酸 アンモンを含む飽和食塩水を約1時間電解した。その 後、静かに電解液を純食塩水溶液と入れかえた。これ はもしそのまX水素発生させると、薄膜の生成が進行  し観察を妨げるからである。  この様にして生成せしめた薄膜を細い硝子棒でつつ き、適当な大きさの断片に砕いた状態をPhoto 2に 示す。薄膜の断片は水銀面に密着して浮いて居る。

 浴電圧をあげて、徐々に水素を発生せしめると

Photo 3の状態になる。水素の気泡が発生して居る。 次いでPhoto 4の状態になる。  これらの写真及び直接の観察結果から次のことが判 る。水素気泡の発生は水銀上又は薄膜表面上から起つ て居るのではなく、薄膜の周辺部から起つて居る。す なはち水銀、薄膜、液の境界線から起つて居るのであ る。又電解の進行に伴い薄膜に多くの裂け日が出来て 来る。そのため膜は細い断片に分割されて行く。それ らの断片の周辺部から水素気泡の発生が起る。水素気 泡の発生部位が増加して行くものである。  Photo 5に膜の下から水素気泡の発生して居る状態 をポした.気泡の膜の下にある事は気泡の膜の張力の 不均等により変形して居る事から判る。Photo 6及び 7には膜の下に気泡が発生した状態及び膜を破つて脱 出した後の状態を示した。水溶液は膜にある細孔を通 して水銀陰極と接して居る。溶液中から膜を通してナ トリウムイオンが移動し放電するが、水銀極界面のナ トリウムイオンは欠乏し、水が分解されるに到るもの であらう。かくて生成した水素気泡が膜を破つて脱出 し、膜は漸次小断片になつて行くものと思われる。こ の現象からも、薄膜状の物質は金属の状態にまで還元 されて居るものではないと考える方が妥当である思わ れる。  もし金属状態にまで還元さaて居るとすると金属バ ナヂンは水素過電圧が水銀よりも大きい事になる。又 Lingane等2)のポーラロクラフによる研究においても バナヂンは水溶液中で水銀滴下極によつて2価までし か還元が進まないことを述べて居る。薄膜を取出し て、両端にアルミニウムを蒸着して電気伝導度を測つ た結果は不良導体である事が分つた3)。化学分析の結 果もバナヂンの含有量は第一表に見られる如く薄膜が Photo 1 Photo 2 Photo 3 Photo 4

40

(3)

水銀法食塩電解における微量バナヂンの影響V Photo 5 Photo 6 Photo 7 金属状態でないことを示して居る4).  顯微鏡の観察結果は水素気泡の発生位置に関するも み. のであるが、薄膜が金屈状態でないならば放電によつ て水素原子の生成する位置もやはり液、膜、水銀の境 界境であらう。薄膜が水銀と接する事によつて低水素 過電圧部分が構成される事になる。  溶液中に溶存するバナヂンが水素発生機構に与るも のでない事は酸性電解液では水素発生が抑制される 事5)及び中性電解液の場合にかなりの誘起期間のある 事から分る。  薄膜が水銀と接する事によつて低水素過電圧部分が 構成される機構には慎重な考慮を必要とする。バナヂ ン以外の微量不純物の協力も考へ得られる。又は電子 構造から説明し得るものかも知れない。実験事実の集 積を待つ段階であらう。  微量バナヂン塩を含む食塩水溶液を水銀陰極を用ゐ て電解し、水素が発生する迄の過程を考えて見ると次 の様な過程をたどるものと思われる。水銀陰極上に先 づ薄膜が生成する。然し直ちに水素がその膜上で発生 するのではない。膜の生成の初期にはナトリウム・イ オンの放電が主反応である。膜の生長に伴つて膜中の 細孔を通してのナトリウム・イオンの放電は困難にな る。膜の生成した部分の水銀と液の界面ではナトリウ ム・イオンが欠乏し、水分子が還元され生成した水素 気泡によつて膜は小断片となる。液、膜、水銀の境界 類に低水素過電圧部分が構成され、水素発成が盛に起 るに到る。 4 結 語  微量バナヂン塩を含む食塩水溶液を水銀陰極で電解 した際に水銀表面に薄膜状の還元生成物が生成する事 を認めた。水素気泡の発生は薄膜と水銀と電解液の境 界線で起る事を認めた。

   バナヂン 含有量

mg  重量%

文 献

試料  採取量

1 1 3 4 5 16 50 56 34 34 61.1 61.0 62.5 63.4 63.1

1.本尾  哲山梨大学工学部研究報告5,9,

2.Lingane J.Am. Chem.Soc 67・182(1945)

3.本尾  哲未発表

4.河 西 正 隆 山梨大学卒業論文

5.本尾  哲 河西正隆電気化学協

 会講演会 昭和34年

6.本尾  哲山梨大学工学部研究報告

第一表 薄膜分析結果④

4

参照

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