国際司法裁判所の「基本的組織原理」に関する考察(四・完)
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(2) 第三章 ICJ組織枠組に関する若干の論点. f﹁ICJ改革論﹂の検討を中心にしてー 第一節ICJ改革問題と諸国の対応 第二節 ﹁ICJ改革論﹂とICJ組織枠組の変革. 第四章 ICJの﹁基本的組織原理﹂と国際司法制度の特質. 第一節現代国際社会の多元的権力構造とICJの﹁基本的組織原理﹂構造 第二節 国際司法制度の内在的虚構性と実像 結びにかえて ︵以上本号︶. 第三節 ICJの﹁基本的組織原理﹂構造の把握. 一 ICJは現代国際社会に実在する世界的規模の国際司法機関であるが、ICJの基本構造についてはどのような特. 質を有するものとして把握することがでぎるであろうか。この点について検討するに際しては、国際社会や国際法の歴史. 的発展過程における今日的な問題状況を解明し、それを前提にして、国際司法制度ないしICJの全体系にかかわる制. 度・機能上の諸問題を広範な視角から総合的に解析し検討することを必要とする。だが、ここでは、そのような検討の必. 要性を認めながらも、きわめて限定された範囲内においてであるが、さしあたり、ICJの﹁基本的組織原理﹂構造をど. のように把握することができるかという点について、それにかかわる法的・政治的関連要素の分析を通じて若干検討して. みたい。そのためには、関連の検討作業として、ICJの基本枠組に基づく裁判運営の態様や司法機能の局面についても. 併せ検討することを必要とし、その重要性は看過されえないが、ここではまた、本章の第一、二節ですでに検討してぎた. PCIJおよびICJの組織枠組の確定過程を顧みるなかで、ICJの﹁基本的組織原理﹂構造の把握を試みることに限. 一84一. 説 論.
(3) 国際司法裁判所のr基木的組織原理」に関する考察(四・完)(牧田). 定しておきたい。. 前の二節では、国際司法機関の組織枠組上の特質を明確化する試みの予備的作業の意味あいにおいて、とくにPCIJ. およびICJそれぞれの基本的組織枠組に関する若干の関連諸規定の起草確定過程を概観してきた。そこでは主に、裁判. 所︵裁判機関︶の構成や管轄権上の若干の問題に関してどのような論議が行われ、その結果、どのような枠組が最終的に. 確定されるに至ったかという点について、論議の展開状況に留意しながら概括的にフォ・1してきた。裁判所の構成面に. 関連しては、とくに裁判官数、裁判官選任方法、国籍裁判官制度を、また管轄面に関連しては強制的管轄権を検討の対象. 事項としてとりあげてきたが、これらの事項はいずれも、前節で述べたように、国際司法機関の基本的組織枠組の明確化. を試みるうえで不可欠の関連要素であると捉えたからである。ところで、これらの諸点に関連するPCIJおよびICJ. の基本枠組ほ、それぞれの枠組確定過程における様々な論議や、その背景に存在した歴史的状況の違いなどに伴って若干. の相違点を内在するとはいえ、包括的な視点からみれば、ほぼ共通の路線と基盤の上に構築された構造上の特質を保持し. 共有するものであると把握することがでぎる。つまり、ICJの基本枠組を規定するICJ規程は、若干の点を除き、P. CIJ規程を実質的に踏襲する形で確定されるに至ったが、とくにその背景に注視するとき、PCIJ規程の場合と同様. に、ICJ規程は国際協調ないし諸国間の互譲精神に基づく妥協の所産であると同時に、より根源的な一面においては、. 国際社会の多元的権力構造のもとで、そしてまた大国支配原理が優位的に作用する国際関係の政治的現実を如実に反映し. ながら、それらの要素を枠組の基底に内在する形で構築されたものである。さらに、国際社会の多元的権力構造のもと. で、とくに国際関係における大国相互間あるいは大国と中小国間の権力闘争や対立抗争状況を背景にして、国際司法機関. たるPCIJおよびICJの基本枠組が、法的観点よりもむしろ政治的観点を基軸にして構築されたものであるという点. に特徴的な様相をみることがでぎる。このことは、前に触れたように、国際社会における一つの社会的・法的制度として. の国際司法制度ないし国際司法機関が、その存立基盤である国際社会の多元的権力構造や所与の時期の歴史的諸状況と本. 一85一.
(4) 質的にどのような関連性をもって存立するか、あるいは国際社会や国際法の発展状況と国際司法制度のそれとがどのよう. な相関要因によって規律される関係にあるか、といった点について考察するうえでも看過されえない論点である。以下、. これらの諸点に留意しながら、ICJの﹁基本的組織原理﹂構造を把握する試みとして、まず、前の二節で検討してきた. PCIJおよびICJの組織枠組確定過程における若干の主な論点を想起し、とくに裁判所の構成面に関する問題の再吟 味を基礎にして論を進めたいと思う。. 二 裁判所の構成問題は、国際司法機関の存在価値ないし存在理由にも本質的にかかわる重要問題である。つまり、こ. の問題の核心は、国際紛争の第三者処理機関として、紛争当事者から独立した立場にあって、客観的・公正な審理に基づ. く司法決定を下し、当該紛争の終局的解決を図ることができるような国際司法機関の構成をいかなる理念と原則に基づぎ. 確定するか、という点に関係する。この点に関連しては、PCIJおよびICJの組織枠組の確定過程においても、国際. 社会の多元的権力構造や国際関係における政治的現実を背景としながら、国際司法機関の司法的任務と独立性をいかに保. 障し確保すべきかという観点から真剣な論議が展開されてきた。だが、そうした論議の展開過程において、多くの場合、. 法的観点に基づく論議よりもむしろ政治的・政策的観点に基づく論議がかなり強い調子でもって優位的に展開されてきた. ことに注目すべぎである。その傾向は、裁判所の構成問題に関する若干の論点︵裁判官数、裁判官選任方法、国籍裁判官 制度などに関する論点︶をめぐる論議状況のなかで顕在化したのであった。. まず、裁判官数の確定に際しては、一般的に、国際司法機関の活動・機能面における効果的な裁判運営を確保するため. にも、最適規模の裁判機関を何名の裁判官でもって構成すべきかという点が重要な検討事項となる。この点に関する論議. は、ある程度、法的観点からアプ・ーチすることが可能であったと思われるが、実際には、政治的観点あるいは政治的配. 慮が優位する形で推移したのであり、とくにそれは、すでにみてきたように、PCIJ組織枠組の確定過程における初. 期の段階での論議に如実にあらわれた。すなわち、一九二〇年の法律家諮問委員会におけるこの問題に関する論議は、安. 一86一. 説 論.
(5) 国際司法裁判所のr基本的組織原理」に関する考察(四・完)(牧田). 達委員やフィリモーア委員の主張に示された如く、裁判所の構成面における国家代表性の確保、とくに国際関係における. 大国の優越的立場を反映した大国の恒常的代表性︵℃R旨欝Φ昌器冥89㌶跡一身︶を確保することを企図した主張をめぐっ. て、政治的側面からの論議の形をとってク・ーズ・アップした。そうした論議は、裁判官数の確定問題を法的観点から扱. うのではなく、国際政治状況を直接反映させた形で裁判官席の政治的配分をどのように確定するか、という点をめぐる確執. のもとできわめて現実的な様相を呈したが、そこでは、とくに、大国主導型の構成原理の導入を企図した主張と、これに対. 抗した形で表明された国家平等原則に基づく主張とが明白に対峙していた。もっとも、国際関係における大国の優越的立. 場を考慮した主張を多少とも吟味すれば、それを全く横暴な主張であるとばかりきめつけて捉えることはできない。つま. り、一面では、そのような主張は、国際社会の多元的権力構造や国際関係における現実の力関係︵政治的.軍事的.経済. 的等の力学的作用︶のもとで、国際司法機関を実効的な国際紛争処理機関とするために、裁判所の構成面における裁判官. 数や裁判官席の配分などをどのような見地から確定すべきかという重要な論点を包含するものであったからである。この. ことは、安達が表明した﹁裁判所の生存能力﹂︵冨誌筈臣ま留﹃OO貫︶をいかに考慮し﹁生きた司法機構﹂︵琶Φ需あo,. 目①冒は島βΦξ昏ざ︶をいかにして創設すべきかといった考え方、あるいはフィリモーアが表明した﹁実質的なカ﹂. ヨロ ︵きの︷R8ヨ舞含亀Φ︶をもつ裁判所をいかにして創設すべきかといった考え方に例示される。だが、そうした主張は本. 質的に国際司法機関の構成を極度に政治化する危険性をはらむものであり、また当時の国際関係における五大国の一員た. る自国の立場を有利に作用させようとする意図を余りにも露骨に表示した主張であって、その主張内容は国家平等原則に. 基づく裁判所の構成を強調した中小国側の委員達によって決して容認されうるものではなかった。結局、法律家諮問委員. 会は、﹁ルート・フィリモーア案﹂を基礎にして、一五名の裁判官︵二名の裁判官と四名の予備裁判官︶から成る裁判. 所の構成を定めた草案を採択し、この草案は、その後、連盟理事会および連盟総会での審議を経てその骨子の点につきほ. とんど修正なく最終的に確定されたのであった︵確定されたPCIJ規程三条では、裁判官一五名、予備裁判官六名に増. 一87一.
(6) 員することができる旨定めてもいた︶。この最終的に確定された裁判官数と関連の明文規定を一見する限りでは、それを. 大国の優越的立場を直接反映したものと断定的に捉えることは必ずしもできないが、明白なことは、そうした立場に基づ. く主張と国家平等原則を前面に押し出して中小国側の立場を強調した主張との妥協の所産であるということである。だ. が、そのように捉える場合でも重要な点は、確定された枠組の本質は、大国支配原理に基づく政治的・政策的論理とそれ. に対抗した形で提示された国家平等原則に基づく論理とを高度な政治的・政策的観点から調整し、その結果つくり出され. た妥協の所産であったという点にある。その本質的な様相は、ICI組織枠組の確定過程における裁判官数確定問題に関. する論議状況とその結果についてみても、皮相的には多少の違いがあるが、基本的には何ら異なるものではなかった。. ICJ組織枠組の確定過程における裁判官数確定間題に関する論議については、一連の諸会議のなかでも、とくに連合. 国法律家委員会での論議に注目すべきである。そこでの主な論議は、フィツモーリス委員が裁判官数を従来の一五名︵一. 名に削減すべき旨の提案を行ったことに関連して、裁判官数一五名を維持すべきか、あるいはそれを削減すべきかという. 九三〇年の裁判官選挙以降、裁判官数は一一名から一五名に増員され、またその後一九三六年に予備裁判官の制度は廃止された︶から九 ハ ロ. 点をめぐって展開した。削減論の主な論拠は、効果的な裁判運営を図るために、また有能な国際裁判官を選出するために. も裁判所の構成をより小規模なものにすべきであるといった点にあった。これにたいし、反対論︵現状維持論︶は、裁判. 官数を削減すれば裁判所の威信の低下を招来し、また裁判所の規模の縮小は裁判所の構成面における中小国の代表性の機. 会を少なくする、あるいはPCIJの裁判官数が当初の二名から一五名に増員されたのは実際上の必要と同時に諸国の. 感情に対処するためであったことなどを理由として、一五名の裁判官数維持を主張した。こうした裁判官数の削減または. 現状維持をそれぞれ求める対立した見解と論議に関して注目すべきは、一五名の裁判官数維持を主張したのは主に中小国. 側の委員達であったという点であり、それは、前記の論拠のほかに、裁判所の構成面における世界の主要法系の適正な代. 表、換言すれば裁判官席の適正な地理的配分を強調するものであった。こうした主張は、究極のところ、裁判官数の削減. 一88一. 説 論.
(7) 国際司法裁判所のr基本的組織原理」に関する考察(四・完)(牧田). ︵裁判所規模の縮小︶によって裁判所の構成面における中小国側の代表性を確保する機会が大幅に制約されることを危惧. し、そうした事態を回避するために表明された主張であって、この意味では、裁判官席配分のバランス論の点において、. 法的観点からの主張であるというよりも、むしろ政治的観点に基づく政治的主張としての性格をもつものであった。連合 ハ ロ 国法律家委員会は、結局、一五名の裁判官数を維持することを結論的に採択し、それはその後のサンフランシスコ会議に おいても修正されることなく最終的に確定されたのであった。. 次に、裁判官選任方法に関する論議を顧みれば、その論議は裁判官数の確定︵実際には裁判官席の配分︶をめぐる論議. と連動するものであったが、その特徴は、裁判官数確定問題に関する論議以上に、より直戴的な形で政治的観点に基づく. 論議が終始かなり強い調子で展開された点にみられる。その理由は、裁判官選任方法をいかに確定するかという問題は裁. 判所の構成問題の中核をなす重要問題であるという一般的認識のほかに、実際には、国際関係における政治的現実のもと. で、自国の政治的立場や国家的利益を具体的な形で反映させ確保しうる手段にかかわる重要なことがらであるといった認. 識に関連した心理的要素が介在したことにも起因するといえよう。そうした状況のもとで、この問題に関する論議の中心. は、必然的に、大国の優越的立場に基づく主張と、それに対抗した形で示された中小国側の立場に基づく主張︵国家平等. 原則を強調した主張︶とがここでも対立し、両者の相互調整を踏まえた具体策を結論的にどのように確定するかという点. にあった。これらの諸点に留意しながら、裁判官選任方法の確定過程を再度フォ・1して、若干の論点に言及してみた い。. 一九二〇年の法律家諮問委員会におけるPCIJ裁判官選任方法に関する論議の過程で、この問題に関する総論的観点. から、アルタミラ委員は、国家平等原則の尊重が裁判官選任間題を解決するための指針となる重要原則であって、裁判所. の権威は大国に属する裁判官の数によってではなく、連盟構成諸国の世論から派生する旨強調し、またハーゲルップ委員. は、法領域における不可欠な原則は国家平等原則であり、﹁国家平等原則は小国のマグナ・カルタである﹂とさえ論じ、. 一89一・.
(8) イレ 国家平等原則に基づく裁判官選任方法の確定の重要性を強調したのであった。他方、このような所説にたいして、安達や. フィリモーアは、すでにみてきた裁判官数間題に関する主張と同様な脈絡のもとで、大国の優越的立場あるいは強国たる. 自国の立場を強く反映させる意図をもった主張を行い、裁判所の構成面における大国の特権的地位の確保を強調した。と. くに、フィリモーアは、﹁平和は正義よりも重要である﹂と論じ、また裁判所の実効的機能と大国のイソタレスト確保との らマ. は、究極的には、﹁平和は正義よりも重要である﹂といった思想と、このほかにデカン委員が言及した﹁正義と平和は共. 連関を強調し、それは世界のポリシーであるとさえ断言したのであった。こうした対立した主張状況のなかで、委員会. 存する﹂といった思想とに留意して、いずれを選好し重視すべきかという点をも含めて、国際司法機関の構成上の基本原. へ ロ. 則をいかに確立すべきかという基本問題に直面した。この点に関連し、デカンは、議長としての立場から、裁判所の構成. 的対応によるよりもより穏当な改革的態度でもって裁判所の組織枠組の検討をなすべきである旨提言したが、この提言. 面に国家平等原則と大国の実効的代表性とを共に反映させ確保することが必要であると論じ、この点につき急進的な革命 ハ ロ. は、右の二つの思想を単に折衷し妥協的に処理するものであったとはいえ、裁判官選任方法に関する具体的方策の探求に 際して、一つの方向づけを示唆する実際的価値をもつものであった。. 裁判官選任方法の具体的な確定に際して、実際上の難間は、裁判官の選出機関や選任手続をいかなる理念と基準に基づ. き確定するかという点にあった。この点に関連して、ルート委員は、かつて自らが直接関与した一九〇七年の仲裁司法裁. 判所設置構想が挫折した理由は、中小国側が強調した国家平等原則とこれに対峙する大国側の主張とを調整できなかった. ことに起因したことに言及した後、PCIJの裁判官選任に際しては、連盟の政治的機関とPCIJとを組織的に結合さ. せること、つまり連盟の総会と理事会に裁判官選挙権を与えることにより解決策を図るべきことを提案し、この考え方の. 実際的効果は、総会において多数を占める中小国側のインタレストを保証すると共に、理事会において優越的立場にある. 大国側のイソタレストを保証することにある旨付言した。このルート提案はきわめて現実的な意味をもつ提案であった. レ. 一90一. 説 論.
(9) 国際司法裁判所のr基本的組織原理」に関する考察(四・完)(牧田). が、国家平等原則を強調した他の委員達によってそう簡単には容認されず、かえって批判論の展開を招来した。たとえ. ば、リッチ・ブサッチ委員は、PCIJと連盟との関係について、PCIJは全体的には連盟と関係するとはいえ、PC. IJは司法機関であって行政機関と区別されなければならない点を強調し、この観点から、ルート提案にみられるところ. のPCIJが連盟の政治的機関に擬制される組織面を批判した。またラプラデール委員は、ルート提案が一面では国家平. 等原則を否定している点を批判し、理事会は執行機関であるがPCIJは審理機関であるゆえに通常の平等観念から逸脱. しえないと論じた。そして、このような論議の脈絡のなかで、・∼デル委員は裁判官選挙機関を連盟総会とする提案を、. パリロ. リッチ・ブサヅチは常設仲裁裁判所とする提案を行った。裁判官選任方法をめぐるこれらの論議は、さらにまた、国際関. ハゆロ. 係における政治的現実のもとで、いかにして政治的影響を排除しながら国際司法機関の組織枠組を確定すべきかという論. 点を包含すると共に、より困難な点として、大国と中小国のそれぞれ異なる立場とインタレストをいかに調整するかとい. う間題をも含んでいた。とくに、そうした点に関する政治的考慮の脈絡のもとで、裁判官選任方法に関する一つの基準と. して提示されたのが、﹁主要文明形態・主要法系﹂基準であった。この点に関する論議の過程で、安達は裁判所の構成面. に﹁あらゆる異なる文明﹂が反映するよう考慮すべきであると主張したが、その内実は当時︵第一次大戦後︶の国際関係. れり. における日本の立場、すなわち欧米に対する日本、アジアの他の諸国に対する日本という関係のもとで、いわば二重構造. 論的観点を基礎とした自己主張でもあった。このほか、問題の所在をより明確な形で提示したのはデカンであって、彼は. 裁判所の構成面に﹁世界の主要法系﹂r実際には主要国の法系iが代表されるよう確保することの必要を論じ、そう. はレ した主要法系を代表する裁判官の選任を考慮することによって、国家平等と大国の代表性とを確保する方策を求めた。こ. のように、﹁あらゆる異なる文明﹂とか﹁世界の主要法系﹂を裁判官選任手続過程における考慮すべき基準として導入す. ることの意義は、それ自体を一つの法的基準として厳格に適用する場合に内容上の不明確性に伴う問題が残存しそれを払. 拭することはできないが、それにもかかわらず、実際的には、裁判官選任方法の確定に際して政治的あるいは政策的な観. 一91一.
(10) 点を基軸とした妥協的な解決策を具体化するための便宜的要素としての重要な価値をもつものであった。こうしたいく. つかの難題を包含した裁判官選任方法の確定間題に関する論議の後、法律家諮問委員会は、結局、﹁ルート・フィリモー. ア案﹂を基礎として、常設仲裁裁判所の国別裁判官団による裁判官候補者の指名、連盟の政治的機関である総会および理. 事会双方における裁判官選挙という二段階の選任手続方式を採用し、また、裁判官選挙に際しては﹁世界の主要文明形態. および主要法系﹂が裁判所の構成面に代表されるよう留意すべきことを確認した。法律家諮問委員会の結論は、その後、. 連盟理事会および連盟総会の審議に付され、そこで若干の修正案が提示されたが、実質的な変更をすることなく最終的に 確定されたのであった。. 裁判官選任方法に関する問題は、ICJ組織枠組の確定過程においても主要な論議対象となったが、とくに連合国法律. 家委員会において、PCIJ規程に基づく当該のシステムを維持すべきか否かにつき種々に論議された。そこでは、主. に、裁判官候補者の指名方法に関しては、各国政府による直接的指名方法と常設仲裁裁判所の国別裁判官団による間接的. 指名方法とのいずれを選択するか、また裁判官選挙方法に関しては、総会と理事会による選挙というシステムを維持すべ. きか否かという点をめぐって論議されたが、そうした論議の根底には、裁判官選任手続面からいかにして政治的影響を排. 除するか、いわば選任手続の非政治化をどのようにして具体化すべきかという難問が存在していた。こうした点に関する論 パおレ. 議の経緯のなかで注目すべきは、同法律家委員会の小委員会レベルでの結論である。つまり、小委員会では、まず指名方. 法に関して、イギリス提案に示された各国政府による直接的指名方法を採択すべきか、それともPCIJ規程に定めるよ. うな国別裁判官団による間接的指名方法を採択すべきかという点をめぐって論議し、結局、各国政府が自国民から裁判官. 候補者一名を指名するという方法を採択すると共に、その論拠として、指名手続の簡素化のほかに、指名手続における政. 治的介入を最小限にしうるという点を示した。もっとも、この論拠については、一般に解される如く、直接的指名方法よ. パサマ. りも間接的指名方法のほうが政治的影響を少なくしうると理解すればやや奇異に感じられるが、しかし、右の論拠は、従. 一92一. 説 論.
(11) 国際司法裁判所のr基本的組織原理」に関する考察(四・完)(牧田). 来の間接的指名方法は政治的要素の介在を排除しきれなかったという捉え方を基礎とするものであった。他方、裁判官選. 挙方法については、高度な政策上の問題は別として、法的間題についてのみ検討するという方針が確認されたにもかかわ. らず、実質審議をほとんど行うことなく、PCIJ規程に基づく方式︵総会と理事会双方による選挙システム︶を維持す. ることを確認したにとどまった。右の小委員会の結論は法律家委員会の全体会議における審議に付されたが、そこでは裁. 判官候補者の指名方法に関して、小委員会が否定した国別裁判官団による指名方法が大多数の委員によって支持され、そ. の論拠も小委員会のそれと全く逆の論理の形をとって、裁判官候補者の指名はできる限り政治的配慮から解放されるべき. であるが、各国政府による直接的指名は多分に政治的影響を受けやすいことを強調するものであった。もっとも、この点. おレ. については、国別裁判官団による指名が政治的影響を全く受けないという観点からではなく、少なくともそうした影響は. 各国政府が直接指名する場合と比べて相対的に少ないという判断に基づくものであった。法律家委員会では、続いて総括. 的にPCIJ規程に基づく裁判官選任方法︵指名・選挙システム︶を維持すべきか否かという点について表決した結果、. 可否同数となり、結局委員会としての統一見解をまとめることがでぎず、関連規定のオールタナティブ・テキストを起草 し、サンフランシスコ会議での審議に付託せざるをえなかった。. サンフランシスコ会議では、裁判官指名方法に関する法律家委員会草案がオールタナティブ・テキストの形で提示され. ていたことにかんがみて、これをめぐる白熱した論議の展開が予想されたが、しかし実際には、フランス代表が国別裁判. 官団にょる指名方法を支持する見解を表明した後、ほとんど審議することなく直ちに表決に付され、その結果、右の指名. 方法がいとも簡単に採択されてしまった。他方、裁判官選挙方法については、国連総会のみにおける選挙方法と国連総会. パおレ. および安全保障理事会双方における選挙方法のいずれを選択すべきかという点をめぐって論議された。この点に関連し. て、若干の代表は、国家平等原則の尊重を強調して総会のみにおける選挙方法を支持する旨主張すると共に、安全保障理. 事会常任理事国の関与のあり方に疑義を表明したが、他方では、総会および安全保障理事会双方における選挙方法を支持. 一93一.
(12) する見解も若干の代表によって表明された。こうした論議状況のもとで、論議の焦点は裁判官選挙に際しての安全保障理. 事会の表決手続間題、つまり裁判官選挙に関する安全保障理事会の表決は五常任理事国の同意投票を要するか、それとも. 常任理事国と非常任理事国の投票を区別せず絶対多数決によるべきかという論点に移行した。この点については、結局、. 総会および安全保障理事会双方を裁判官選挙機関とするが、安全保障理事会における裁判官選挙に関する表決は常任理事. 国と非常任理事国を区別することなく絶対多数決によって行われるべきことが総括的に確認されるに至った。このように. ハレロ. して最終的に確定された裁判官選任方法に関する基本枠組は、一九二〇年に確定された枠組をほぼ踏襲したものであり、. 諭議過程における主要事項でもあった裁判官選任方法の﹁非政治化﹂ーそれは主に大国と中小国間の利害対立に伴う政. 治的影響の排除、とりわけ大国の政治的な権力的介入の排除と本質的にかかわる論点であった を必ずしも具体的な形. で実現しうるものとはならなかった。もっとも、論議過程においてそうした﹁非政治化﹂が究極的に何を意味するかにつ. いては必ずしも十分な形で明確に認識されていたとはいえないが、それを主に国際社会の多元的権力構造のもとで展開さ. れる大国の優越的立場に基づく権力的な支配・介入の排除という要素を内容とするものと捉えるとき、ぎわめて限定的で. 制約的な形ではあるが、安全保障理事会常任理事国による拒否権行使の機会を裁判官選挙に関する限りでは許容しないと. いう枠組を確定したことによってそれを若干具体化しえたともいえよう。しかしながら、この点については、ICJの全. 体的な組織枠組の中でさらに吟味することなしに、余りにも積極的に評価することは本質的な把握に連結しないといえよ うQ. この外さらに、国際司法機関の組織枠組に内在する特質を明確化するうえで看過されえない重要な論点の一っに、国籍. 裁判官間題がある。この問題の核心はまた多分に法的・政治的要素を包含するために、すでにみてきた如く、PCIJ組織. 枠組の確定過程においてかなり慎重に検討された。法律家諮問委員会での論議過程で、一方では、安達、フィリモーア、. ルートなどは国籍裁判官の制度化を積極的に主張し、その主な論拠として、世界の異なる地域に属す諸国によって付託さ. 一一94一. 説. 論.
(13) 国際司法裁判所の「基本的組織原理jに関する考察(四・完)(牧田). れる事件に関する審理の完全性を図り、また訴訟当事者間の平等性を確保するために、あるいは外国人裁判官から成る裁 パぼレ. 判所にたいする不信感を除去するために、国籍裁判官︵とりわけ臨時裁判官︶の法廷への出席権を認めるべきことを強調. した。他方、・ーデルなど若干の委員は右のような考え方に批判的な見解を示し、国籍裁判官は仲裁裁判の観念を包含す. るものであって司法裁判の観念と相容れず、またとくに臨時裁判官といった一時的に任務に就く裁判官を裁判所の構成に. 導入することは、最良の裁判官から成る裁判所を創設するという目的にかんがみても好ましくない旨強調した。このよう. ねレ. に、国籍裁判官制度の導入に関して対立した考え方が表明されたが、結局、法律家諮間委員会は結論的にその制度化を認. めたのであった。この点に関連して、法律家諮問委員会の報告書は、国籍裁判官制度の導入に際して種々の要素を考慮し. た旨示しているが、裁判所の構成上・裁判運営上の間題、ことに国際裁判所の特性をなす﹁主要文明形態・主要法系﹂要. 素の代表性、審理面における係争当事国の主張に関する当該国家の立場を考慮した慎重な審理とそれに基づく判決の確定. などの諸点に留意したこと、またこれらの考慮は仲裁裁判所により類似した形をとるものであるが、国籍裁判官制度の導. 入によって国際裁判所︵帥9自叶び①導①魯ω聾霧︶の特質を具体化するメリットをもつことに言及した。こうした法律家. ︵20︶. 諮問委員会の結論に関しては、その後の連盟理事会における審議過程で、批判的観点に基づく若干の修正案が提示され. た。たとえば、ノルウェー修正案は、国籍裁判官制度はPCIJをその一般的性格において仲裁裁判所に類似させるとい. う欠陥をもつと指摘するとともに、紛争当事国の一方のみが裁判所に代表されている場合に他方の当事国が臨時裁判官を. 選任することによって確立される当事者間の平等は、その性質上、実質的ではなく単に形式的なものにすぎず、そのよう. な平等性の確保は裁判所の威信を弱化させる要因の∼つとなることを強調した。またスェーデン修正案は、国籍裁判官制. 度の導入によって構成される裁判所は、法的性質の原則以外のものに依拠して行動しうる仲裁裁判の特性を再現すること ︵21︶ になり、法領域外のナショナル・インタレストを審理面に導入する危険性をもつことを指摘した。しかし、結局、こうし. た修正案の趣旨は認められず、法律家諮問委員会の草案は連盟理事会および総会での審議を経て最終的に確定された。. 一95一.
(14) 国籍裁判官制度に関する問題は、また、ICJ組織枠組の確定過程においても、この制度を存続させるべきか否かとい. う観点からとりあげられ種々に論議された。連合国法律家委員会における論議過程で、アッパス委員は、﹁裁判所を徹底. 的に公正なものとするためにも国籍裁判官を廃止すべきである﹂と強く主張したが、しかし、多数の委員達は、ハックワ. ハゑレ. iス委員の見解に例示される如く、一般に諸国は自国が関係する事件において自国の考え方や立場を十分に説明しうるう. ヘ23︶. えで国籍裁判官を裁判所に有することのメリットを支持していると思われ、また諸国が自国民を有しない裁判所に事件を. 付託することを応諾するかどうか疑問であるといった点を考慮し、現実的観点から国籍裁判官制度の維持を肯定的に評価. した。こうした連合国法律家委員会での肯定的評価に基づき、結局、サンフランシスコ会議において、国籍裁判官制度の 存続が最終的に確定されたのであった。. 三 以上、裁判所の構成問題に関する若干の基本問題とその論点をとくにとりあげ、論議の展開状況と確定された枠組. について概括的にフォ・1してきたが、さらにこれらの作業を前提にして、若干敷衛的な形で論及してみたい。ICJの. 組織枠組は、その前身たるPCIJのそれと必ずしも同一でなく若干の点において相違するが、枠組の根底をなす基本路. 線とその背景に存在する論理と思想に留意すれば、歴史的諸状況の変化に伴う関連要因の多少の変動にもかかわらず、本. 質的にはPCIJのそれと軌を一にするものである。したがって、ICJの組織枠組上の特質は、PCIJのそれを踏襲. し保持する形で確定された枠組上の実質的要素にかんがみ、一貫した脈絡のもとで捉えることがでぎるものである。. ICJの﹁基本的組織原理﹂、つまりICJの組織枠組上の特質は、その基本枠組に内在する法的・政治的関連要素の. 有機的な結合のもとで、国際司法機関としての法的側面と国際機関特有の政治的側面とが複雑に絡みあって形成された独. 特のモザイクのなかに見い出されうる。すなわち、一方では、国際紛争を国際法に基づき公正かつ客観的に処理すべき国. 際司法機関を創設するために、裁判所ないし裁判官の独立性を保障し、またその国際性を確保することが重視され、さら. にそれに伴い、政治的影響を排除するための必要な法的措置を講ずる工夫が試みられた。しかし他方では、そうした論理. 一96一. 説 論.
(15) 国際司法裁判所の「基本的組織原理」に関する考察(四・完)(牧田). の帰結において当然に排斥されるべき国家代表性や政治的関連要素︵国際関係における政治的現実のもとで展開される諸. 国間の権力闘争や対立・抗争に伴う政治的要素︶の否定あるいはその排除は、組織枠組の基底をなす基本構造面において. 十全な形でなされておらず、むしろそうした要因がかなり弾力的に作用しうる余地を残存させることによって、国際司法. 機関の組織枠組の確定がなされてきたという状況を直視するなかで、組織枠組上の特質を明確化し把握すべきである。こ. うした視点に基づき、すでにみてきたPCIJおよびICJの組織枠組確定過程における若干の論点に関連し、その組織. 枠組に内在する特質を明確化し把握するために、さらに総括的な検討を試みたいと思う。とくにここでは、裁判官選任方. 法と裁判機関の構成面において、裁判所ないし裁判官の独立性の保障、換言すれば、この点に関する政治的影響の排除あ. るいは非政治化を図るための諸措置が、法的・政治的関連要素が複雑に絡みあうなかで、どのような形で具体化されてい. るか、それは実際にはどのような意義と効果をもつものであるか、といった点について批判的に論及しておきたい。. 裁判官選任方法に関する重要な論点は、裁判官候補者の指名と裁判官選挙システムにかかわるものであったが、それは. とくに選任手続過程における非政治化との関連で問題が存在してきた。ところで、裁判官選任手続において第一に注目す. べきは、裁判所規程二条に定められる裁判官の被選資格と規程九条に定められる条件︵選挙人の留意事項︶との関連性に. ついてである。規程二条に定められる人格的・専門的要件︵爵Φ需屋8巴き飢冥9の邑oロ巴器2冨日⑦旨︶は国際裁判官. たるための基本的要件を明示した自明の理ともいうべきものであって、さほど多くの論議の対象とはなりえない。もっと. も、ある意味では、前者の人格的要件は形式的なものにすぎず、実質的には後者の専門的要件に重点が置かれていると解. することができよう。後者の要件については、﹁各自の国で最高の司法官に任ぜられるのに必要な資格を有する者、また. は国際法に有能の名のある法律家﹂という択一的な形で資格要件が定められているが、これは元来英米法系諸国と大陸法 ︵餌︶. 系諸国の異なる法制上の事情を反映したものであるにすぎず、要するに国際法を適用して国際紛争を処理する国際司法機. 関の裁判官として最適の専門家を確保するための基本要件を表示したものであって、このことの外に格別な政治的意味を. 一97一.
(16) 包含するような規定であるとは思われない。だが、裁判官の選任手続過程においては、右の要件のほかに、規程九条に定. められるところの﹁裁判官全体のうちに世界の主要文明形態および主要法系が代表されるべきものであることに留意しな. ければならない﹂という要件が作用することになるのであり、この﹁主要文明形態・主要法系﹂要件︵魯Φ.、8H臣弩α. 碕器霧、、8ρ巳おヨの暮︶が裁判官選任手続の全体的なシステムのなかでどのような意義をもつかという点について考慮す. る必要がある。この要件が当初のPCIJ規程案に採択されるに至った経緯と意義についてはすでに若干触れたが、主要. な点は、裁判所の構成面における大国の恒常的代表性を確保することを企図した主張とこれに対抗して提示された中小国. の国家平等原則に基づく主張とを調整するために、そうした要件を導入したことであった。このことは、右の要件の概念. がきわめて不明確であるにもかかわらず採択された背景に、実際の裁判所の構成面における政治的配慮とそれに基づく裁. 判官席の配分を重視するといった意図が存在していたことを表示する。それは、必ずしも裁判官席の公正な地理的配分を. 意味するのではなく、本質的には国際関係における大国の優越的な政治的立場を裁判官席の恒常的確保のために十全な形. で反映させる意図を具体化し、それに対抗する中小国側の反論を一定のチャンスを付与し容認することによって緩和さ. ゐレ. せ、形式的に妥協的対応を迫るといった政治的意味をもつものとして捉えることができる。したがって、実際、裁判官の. 選任手続過程においては、規程二条の要件は一応の理念的な基本要件として作用するが、右の要件に併行して、否むしろ. 優位的に、規程九条の要件、とくにその文言の背景に潜在する政治的意図とその具体的作用が重要な意味をもつといえよ うo. 第二に注目すべきは、裁判官選任手続における指名・選挙システム自体についてである。まず裁判官候補者の指名方法. についてみれば、確定された枠組において、裁判官候補者の指名を常設仲裁裁判所の国別裁判官団の手に委ねることによ. って、諸国政府の直接的指名による場合に比べ、より政治的影響を排除しうるという効果が企図された。また、この指名. ︵26︶. 方法は、国家代表ではなく、個人的資格において活動する常設仲裁裁判所の裁判官団という非政治的な法律専門家グルi. 一98一. 説 論.
(17) 国際司法裁判所のr基本的組織原理」に関する考察(四・完)(牧田). プがその専門的立場から判断して行う裁判官候補者の指名を、常設仲裁裁判所とPCIJあるいはICJとの間の相関関. 係における法的な機能的作用として捉えられうるものとしたといえる。だが、この裁判官候補者の指名方法が政治的影響. パガレ. をどの程度排除しうるかという点についてみれば、なお依然として問題が残存する。この点に関連して、この方法が採択. されたのは、右の点に関する相対的評価、つまり諸国政府にょる直接的指名方法に比べ政治的影響をうける可能性が相対. 的に少ないであろうという認識によるものであって、決して絶対的評価に基づくものであったからではないことを看過す. べぎでない。次に、裁判官選挙方法は、連盟期には連盟の理事会と総会において、国連期には国連の安全保障理事会と総. 会において、事務総長が作成した裁判官候補者リストをもとに各別に選挙を行うという形で確定されたが、選挙方法に関. しては、裁判官選挙機関をそうした政治的機関とすることの妥当性について、また右の理事会構成国のみにいわば二重選. 挙︵投票︶権を与えることの是非をめぐって問題視されてぎた。そしてまた、こうした問題の帰結は、確定された裁判官. 選挙方法が、その確定過程から明らかなように、連盟期においても国連期においても、理事会における大国の優越的立場. と総会において多数を占める中小国の立場とを調整した妥協的所産であるという点に内在的な本質をもつといえよう。こ. へぬロ. の裁判官選挙方法に関する評価として、﹁近代政治の粋である代表制度の原則﹂を基盤として形成されたものと捉える評. 価もあるが、これとは別に、この方法が、本質的に、大国の優越的立場を国際司法機関の構成面に反映させ、それを基軸. にして国際司法機関の存立を図るという政治的・政策的意図を具現するものであったことを看過すべきでない。この点に. 関連して、裁判所ないし裁判官の独立性の保障、あるいは裁判官選任手続の﹁非政治化﹂の具体化という点においても、. パぬレ. この選挙方法は国際関係の政治的現実のもとで存在する多様な政治的影響や力学的作用を回避することはできず、その根. 源的要因として、裁判官選挙方法の政治的妥協性ーその背景に存在する大国支配原理の優位性1を指摘することがで ぎるであろう。. 第三に、国際司法機関の構成上の特徴をなす国籍裁判官制度に注目すべきである。この制度の特質は、制度化の経緯か. 一99一.
(18) らも明らかなように、法的・政治的関連要素が複雑に交錯するなかで、政治的要素が枠組の基底にょり顕在的な形で包含. され、制度化された点にみられる。国籍裁判官制度は、法的要素との関連からみれば、当事者間の平等性の確保と、裁判. 運営上の技術的・実際的側面からの必要性に応じて導入され制度化されたという一面をもつ。だが、訴訟当事者間の平等. 性確保を裁判機関の構成面に反映させることの前提には、自国籍裁判官あるいは臨時裁判官を自国の代表者として捉える. 観念、あるいは自国に有利な作用を及ぼす裁判官として捉える観念が介在しており、したがって、こうした観念や考慮に. 基づく国籍裁判官ないし臨時裁判官の国際司法機関の構成面への導入は、純粋な法的観点から肯定されうるものではな. く、また、それは必ずしも法的な平等原則の反映あるいはその具体化と直結するものとはいえない。それはむしろ、裁判. 機関の構成面に訴訟当事者双方のナショナル・インタレストを確保するための方策を具現するといったきわめて高度な政. 治的意味をもつといえる。こうした点からも、この制度は規程二条の規範内容に抵触する意味あいをもつが、より重要な. 点は、規程九条との関連でみるとき、裁判機関の構成面における大国の優越的立場の反映とその具体化といった側面に加. えて、さらにより明白な形で政治的影響をそれに増幅的に作用させることになるという点である。これまでも国籍裁判官. 制度にっいては多様な評価がなされてきたが、この制度の本質は、究極的に、国際社会の多元的権力構造や大国支配原理. レ. を基調とした国際関係における政治的現実を如実に反映したものであると捉えることによって明確化されうるであろう。. 以上、ICJの﹁基本的組織原理﹂構造がどのようなものとして把握されうるかという点につき、その明確化を試みる. ために、PCIJおよびICJ組織枠組の確定過程を再度概括的にフォ・1し、若干の点に関する論点と確定された枠. 組上の特質について論及してきた。その検討作業を踏まえて、右の点に関するこの節での結論を次のような形で要約して. おきたい。すなわち、ICJの基本枠組はPCIJの基本枠組をほぼ踏襲した形で確定されたものであり、その組織枠組. 上の特質は、国際司法機関の司法的任務との関係で、国際社会における権力主体︵個別の主権国家、とりわけ国際関係に. おいて優越的立場にたつ大国︶にょる政治的介入を排除し、裁判所ないし裁判官の独立性の保障を具現するための理念的. 一100一. 説 論.
(19) 国際司法裁判所のr基本的組織原理」に関する考察(四・完)(牧田). な観点からの措置ーそれは多くの場合、法的観点に基づく国際司法機関の枠組確定を指向する脈絡のなかで試みられて. きたーと、他方では国際社会の多元的権力構造のもとで完全に回避することが不可能であった政治的影響を伴ういくつ. かの制度上の措置とが混在するなかで把握することができる。この点に関連して、国際社会における社会的・法的制度の. ↓つである国際司法制度ないし国際司法機関の存立は、その前提条件として、国際司法機関の独立性を保障するために国. 際社会の構成上の基本単位である個々の主権国家、とりわけ大国の政治的な権力的介入を排除することによって確保され. なければならない。しかし、確定された基本枠組の根底には大国の優越的立場の反映ないし大国支配原理の導入が排除さ. れておらず、むしろそれを導入することによって国際司法機関の存立を可能としたといえる。こうした脈絡のなかで、I. CJの﹁基本的組織原理﹂構造は、国際社会の多元的権力構造あるいは国際関係における政治的現実のもとで、本質的に、. 大国支配原理を主軸として形成された国際システムの所産たる特質を内在的に保持するものであると捉えることができ. る。それは、国際司法機関の創設に関する法的理念とそれに逆行する形で反作用し乖離する政治的現実に根源をもっ要因. とが複雑に交錯するなかで、究極的には、現実的側面における﹁力の論理﹂が優位する形で国際司法機関の﹁基本的組織. 原理﹂構造の内実が規定され構築されたという特徴的な様相を表示する、ということができる。. ︵1︶ この点に関する安達の見解については、勺8審甲くo旨磐図づマ鵠−NPフィリモーアの見解についてはま凌こ℃℃レ9山ま参照。 ︵2︶ q20一ρ<o一●図H<鳩℃℃’謡甲謡9. ︵3︶ 連合国法律家委員会の結論、とくに中小国側の委員達が強調した裁判官数一五名を支持する多数意見の論拠を、委員会︵また小. 委員会︶の報告書は明示している。Hび置こbサ這o。矯8S. 安達の見解にっいては、ぎ置こ℃窟鵠あPδど昌。。︸旨望旨ρ♂9フィリモーアの見解については、一び一儀こ唱﹂9−89一謡. 一9参照。. ︵4︶ アルタ、三フの見解については、男3審甲ぎ旨讐き℃質ε卜o山8弘這ム8●またハーゲルップの見解については、一び置こ唱μ8−. ︵5︶. 参照。. 一101一.
(20) 一び置‘唱●嵩9. 規程二条と九条との関連につき、とくに規程九条を﹁裁判所の構成に特定の国家ないし国家群の恒常的代表を確保することを指向. ︵25︶. この点に関して注目すべきは、すでに触れたように、﹁非公式連合国委員会﹂の報告書に示された捉え方である。つまり、裁判所. ぎδ旨彗一8巴冒の菖8”一逡甜︾に9田岡良一、国際法学大綱上、二一西頁。. 。op↓冨勺R目琶①旨08昌o団 寄o圧ユ︸↓冨男Rヨきo旨Oo畦δo協H讐og豊8巴甘ω識8しΦNρ℃﹄。。嚇竃●O出&。. 回び置‘マ以ω’. d290鴇<o一●図一<︸bや一一ω矯一一①。. ノルウェー修正案については、Uo8目①筥9署・も。ゲω餅スェーデソ修正案にっいては、旨箆4署・器6刈参照。. 一び箆こづ℃●認○も旨σ. たとえば、ローデルの見解一ぴ箆こマ認廿リッチ・ブサッチの見解ま箆こマ認Nなどの批判論が展開された。. 安達の見解については、寄8駐・話旨窪〆℃︾8︸旨ρまc。・フィリモーアの見解については、一げ置こマ一$参照。. 一げ置こ唱b●8ω占OP. o山co9 q20HOu<o一●図H一ン℃℃・嵩o. Hび置こづや這一−一8●. 嵜箆こ℃℃。8PミOーミ①。. q20HO︸<o一。図H<︶づb。ω一やω嶺。. Hび箆こリサ一一〇ムお・. 一び置こb℃●一GoO山ω9. ローデルの見解については、一三血こもマ一鴇山謡●リッチ・ブサッチの見解については、一び箆こbヤ嵩下憲G。参照。. リッチ・ブサヅチの見解については、旨建こ署﹂嬉山鵠。ラプラデールの見解については、ま置4づ︾に?一8参照。. 害三こ唱︾一〇〇〇山8.. 一び置こりも●一一〇山旨︸嵩Qo山NP一ωゲ一ωω●. 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 ((((((((((((((((((( ))))))))))))))))))). 委=器αOO目琶禅8①OけけゲΦ閃ロ酔ロ吐①9けげO憎R目斡ロ0昌けOOq旨9一旨けRロ讐δb巴一ρ警皆ρ勺鋤輔φ鴇る9昌㌣“9このほ. したシステム﹂であると解し、この規定の存在理由と効果を批判的に捉えていることである。如90昌9夢ΦH旨a唐巴一導9,. ・一屡02一. 説 論.
(21) 国際司法裁判所の「基本的組織原理」に関する考察(四・完)(牧田). か、趣旨をやや異にするが、考慮すべきものとして、田中耕太郎博士の次のような見解がある。すなわち、規程九条は﹁裁判官の. 地位の適正な地理的分配の要望以上の意味をもっていない﹂とし、そうであれば、﹁問題となるのは、この地理的分配の考慮自体. づくものであり、全世界から最適任者を選定する立場と相容れないことは前に一言したごとくである。しかし選定に一国から二人. が果たして国際司法裁判所の充実のために維持されなければならぬものかどうかである。この地理的分配の配慮が政治的意図に基. 出すことがでぎない原則︵ω鼠言$三条一項︶に関連して述べたごとく、できるだけ多数の国家を満足させるという政治的考慮を 法の理論山、三八七、三八九頁。. 度外視でぎないとすれば、地理的分配はやむを得ない妥協として承認せざるを得ない﹂といった見解である。田中耕太郎、続世界. この点につぎ、田岡博士は﹁常設仲裁裁判所裁判官の国別団に指名権を与えたのは、若し常設国際司法裁判所裁判官候補者が直. 接政府に依って指名せらるる時は、其行動につき政府の影響を受くる事多かるべきを恐れたが為である﹂と説明される。田岡良一、. ︵26︶. 前掲書、ニヨニ頁。. この点に関連して、立作太郎博士は次のような捉え方を示されている。﹁海牙の常設仲裁裁判所の裁判官をして常設国際司法裁. ︵27︶. の裁判官は政府より任命して総名簿中に記入されたるものであるから、此等裁判官が常設国際司法裁判所の裁判官を推薦するに当. 判所の判事の推薦に当らしめ、此点に於て二種の仲裁裁判所裁判官間に連絡を付けたるは、注意すべき点である。常設仲裁裁判所. って間接に政府の意思が行はれ得べきであろう。併しながら推薦すら政府の名に依りて行ふにあらずして、選任に至りては連盟総. の任命せる裁判官は特に総ての事件に関係するを定めんとせる提案の如ぎに比すれば大蓬庭があると言はねばならぬ﹂と説明され. 会叉連盟理事会が之を行ふべぎなるを以て、海牙の第二平和会議に於ける常設仲裁裁判所の裁判官を各国政府より任命し、八大国 ている。立作太郎﹁常設国際司法裁判所﹂、国際法外交雑誌第十九巻四号、六頁。. たとえば、この点につき横田博士の次のような捉え方をとりあげることができる。すなわち、とくにPCIJの裁判官選任方法. ︵28︶. い・原則としていずれにおいても絶対多数の投票をえたものをもって当選者とされる︵規程第四、第八、第二条︶。これは近代. に関して、﹁裁判官は、国際連盟によって選任される。国際連盟の機関である連盟総会と連盟理事会において、別別に選挙を行な. 政治の粋である代表制度の原則によるものであって、代表制度が被代表者全体の意思に基づき、被代表者全体を代表するものと見. ればならぬ。もとより、それは一つの擬制である。しかし、われわれは、このような擬制に基づく代表制度の採用を、近代政治の. なされると同様に、この場合にも、常設国際司法裁判官は、国際連盟全体の意思に基づき、国際連盟全体を代表するものと見なけ. 上に、いな、広く近代生活一般の上に、余儀なくされるのである。また、これによって、裁判官個個の行為が実際において常に必. 一103一.
(22) ず真に国際裁判官たるの実あるものであることを保障することをえない。その裁判官の本国が紛争当事国である場合には、このお 横田喜三郎、国際法論集1、コ壬ハi二二七頁。. それは、たんなる杷憂にとどまるものともいい難い。しかし、それは運用の間題であって、制度の問題ではない﹂と論じられる。. ﹁裁判官の独立﹂にっいて、山田三良博士は、﹁国内裁判所に於て裁判の公正を期するが為めに裁判官の独立を保障し擁護するの. 必要あるが如く、国際司法裁判所に於ても亦裁判官の独立を保障することは一層必要にして且一層困難であると言はねばならぬ。. ︵29︶. 何となれば国際司法裁判所に於ては蕾に紛争当事者たる国家に対して独立することを要するのみならず、其の所属する本国政府に. 三種の独立を擁護するが為に左の三様の規定を掲げてゐる﹂と述べ、e係争当事国に対する独立、⇔本国政府に対する独立、㊧国際. 対しても独立し、更に其の選任老たる国際連盟に対しても亦独立することを要するからである。而して国際司法裁判所規程は此の. 連盟に対する独立について論じられている。山田三良﹁常設国際司法裁判所に就て﹂、立教授還暦祝賀論文集、一二ー二四頁。. 国籍裁判官制度については、制度化の当初から批判的見解が示されてぎた。たとえば、山田博士は﹁斯の如きは徒らに機械的公. ︵30︶. である﹂といわれ︵山田三良、前掲論文、二四頁︶、織田萬博士も﹁そもく国籍裁判官は、自国の利益を代表するものとして選. 平を保たんとするものであって、自国裁判官を忌避の原因と為すに足らざることを認むる根本思想に背馳するの識を免れざるもの. 定されると視るの外はないが、さすれば此の制度は、前に述べた裁判官の職務上の制限に関する規定と相矛盾するものである。裁. 更に回避の制度を設けて、当事国の裁判官には審判に與かることを遠慮させるぐらゐにするのが寧ろ当然だらう。然るにかxる制. 判官の職務上の制限は、裁判、冨をして自国の利害の外に超然たらしむる精神に出でたものだとすれば、その精神を貫徹するには、. 度を設けないどころか、却って国籍裁判官を加へることにしたのは、すべての裁判官が同じく自国の代表者たることを暗々裏に認. むるゆえんであって、その結果、職務上の制限を定めた精神までも破壊されてしまったと謂はねばならぬ﹂と論じられる︵織田. ﹃国際性﹄に、一つの欠点を残したものといわなければならぬ﹂と批判的評価を示されている︵横田喜三郎、前掲書、二二九頁︶。. 萬、常設国際司法裁判所、三七頁︶。また、横田博士も国籍裁判官制度について、﹁完全であるべきであった常設国際司法裁判所の. このように、国籍裁判官制度については批判論が多々示されるが、これとは別に、国籍裁判官制度にっき﹁国内裁判所と異り紛争. 裁判官と同様の権限を與へて裁判に参與せしむる方法。筆者注加︶を採用するの外はなかった﹂︵田岡良一、前掲書、コニ七頁︶、. 付託が原則として随意なる世界法廷に於ては、当事国をして自ら進んで裁判所に向はしむる為には第四案︵&ぎ。裁判官に他の. る。国際法社会の特殊の構造に基づく特異な制度であると同時に、司法裁判に仲裁裁判の要素を部分的にせよ加味するものであ. あるいは﹁なお国際裁判では、このような制度を認めなくては、政治的心理的に国家に裁判を利用させるようにでぎないのであ. 一/04一. 説 論.
(23) 国際司法裁判所のr基本的組織原理」に関する考察(四・完)(牧田). る﹂︵高野雄一、国際法概論下︵新版︶、二六四ー二六五頁︶といった捉え方も示される。こうした諸論を総論的に捉えるならば、. 田畑博士の次のような指摘に注目すべきである。すなわち、﹁このように、当事国の国籍をもっ国籍裁判官や当事国が選んだ臨時. いるといってよいであろう。裁判は、もともと厳正公平な第三者の立場からなされるべきものであって、この建前からするなら. 裁判官を出席させることが認められているのは、国際裁判が仲裁裁判を出発点として発展してきたという歴史的背景にもとづいて. ば、このように当事国となんらかの関係をもつ裁判官の出席を認めることには、議論の余地がないとはいえない。しかし、国籍裁. しているとみられており、そうした裁判官が審理過程に参加することは、裁判所へ当事国が紛争を付託することをなに砥どか促進. 判官や臨時裁判官は、当事国の利益代表として参加するものではないにしても、すくなくとも当事国の立場をあるていどよく理解. ないであろう﹂という論である︵田畑茂二郎、国際法講義下、九七ー九八頁︶。. する効果をもっているといえるであろう。したがって、国際裁判の実情からみて、かならずしも否定されるべきものとのみはいえ. 第三章 ICJ組織枠組に関する若干の論点. f﹁ICJ改革論﹂の検討を中心にしてー. ﹁ICJ改革論﹂は、とくに近年の国連や学界レベルにおいて展開されてきたICJ再検討論議を通じてク・iズ・ア. ヅプした重要な基本的論題の一つであり、それに伴って、これまでICJの全体系にかかわる種々の改革案も提示されて. きた。そうしたICJ改革論の展開やICJ改革案提示の基調は、ICJの現状をICJ凋落化と捉え、いかにしてIC. J活性化への具体策を求めるかという点にあったが、そこではとくにICJの制度面での改革に基づく機能上の拡大強化. 等を探求することが強調された。ところで、ICJ再検討の究極的な目的は、単にある特定の制度改革案をまとめること. に尽きるのでなく、むしろICJの現状分析を起点として、国際司法制度の包括的再検討を行うことにあった。換言すれ. ば、国際社会あるいは国際法の現状を直視して、ICJの現状︵ICJ凋落化︶の諸要因を広範な視角から解明し、それ. に基づいてICJの現状打開策あるいはICJ活性化の方策を探求することが最も重要な課題であった。それはまた、現. 一105一.
(24) 代国際社会の多元的権力構造や国際関係における政治的現実を直視し、現代国際法の形成・深化過程における諸問題に留. 意しながら、国際司法制度ないし国際司法機関の基本枠組をどのように捉え、現代国際社会に妥当する国際司法機関の基. 本構造をいかなる理念と原則に基づき再構築すべきかという、きわめて重要な国際法上の問題でもあった。以下、この章. では、まず、ICJ改革問題にたいする諸国ないし諸国グル㌧フの対応がどのような一般的アプ・ーチに基づくものであ. ったか、それはどのような論理構造をもつものであったかという点につきICJ組織枠組との関連において概観し、その. 後で、それを前提にして、ICJ改革論はICJの組織枠組に内在する根源的問題をどのように捉え、その克服・解決の 方策をどのように提示しているかという点について若干検討してみたいと思う。. 第旧節ICJ改革問題と諸国の対応. ICJ改革論をその基本的視角と内容の点から大別すれば、成法論的観点に基づくアプ・ーチと立法論的観点に基づく. アプローチとに分けることができるが、前者は国連憲章やICJ規程に基づく現行制度の基本枠組を肯定的に評価し、そ. れを保持することを前提にして、一定の内在的問題点を指摘し、それにかかわる改革案を提示するという形をとるもので. あり、他方、後者は現行制度の基本枠組を否定的・批判的に評価し、現行制度のもとでの内在的問題点が制度自体に根源. 的にかかわることを明確化し、それに関する実質的変革を図るべきことの重要性を強調するものである。さらに、成法論. 的観点に基づくアプ・ーチの場合には、現行制度の範囲内におけるICJの全体系にかかわる内在的間題点に関連した現. 状分析を踏まえて、全体的な改革を図ろうとするものと、部分的な改革を図ることにとどまるものとがあり、そうした改. 革に際しても、現行制度そのものの実質的変革へ結びつく場合と、単なる技術的・手続面での形式的改革にとどまる場合. とがある。これに対して、立法論的観点に基づくアプ・ーチの場合には、現行制度の範囲内における単なる形式的修正や. 制度内での拡大強化策の域をこえて、現代国際社会における新たな外在的諸要因に留意しながら、現行制度自体の大幅な. 一106一. 説 論.
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