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介護通所施設利用者における口腔機能低下予防体操の効果(3) ―6ヵ月間の介入によるQOL, 口腔機能の変化―

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介護通所施設利用者における口腔機能低下予防体操の効果(3)

6ヵ月間の介入による QOL,口腔機能の変化

高 橋 美砂子, 橋 本 由利子

要 旨 【目 的】 ポピュレーションアプローチとしての口腔体操が通所施設利用者の ADL, QOL, 口腔機能の向上 に効果があるのかどうかを介入研究によって明らかにする. 【対象と方法】 自 で歯磨きをし, 聞き取り調 査に答えられる通所施設利用者を介入群 (n=15) と非介入群 (n=10) に け, 事前・事後調査 (基本属性, ADL,GOHAI,うつ状態,口腔機能,口腔衛生等)を行った.介入群 (n=15)には,事前調査後 6ヵ月間,口腔体 操を実施した. 両群の変化量を t検定 (対応のない) で検討した. 【結 果】 ADL については両群に差はな かった. QOL は「毎日話す」について, 有意差がみられた. 口腔機能は唾液湿潤度, 頰の膨らまし (両頰, 左 頰), 舌の下方への動きについて, 有意差がみられ, 他の項目においても介入群は向上傾向, 非介入群は低下傾 向が示された. 【結 論】 これらのことから, ポピュレーションアプローチとして口腔体操を行うことは QOL や口腔機能向上に一定の効果があったといえる.(Kitakanto Med J 2010;60:243∼249)

キーワード:口腔体操, 口腔機能向上, ADL (Activities of daily living), GOHAI (General oral health assessment index), 通所施設利用者 は じ め に 口腔機能には, 食物を嚙み砕く, 飲み込む, 唾液を 泌 する, 言葉を発する, 表情を表す等, 様々な働きがある. 食べることや人と話をすることは高齢者にとって楽しみ なことであり, 康な生活を営むための原点ともいえる. わが国の高齢人口の急激な増加に伴い, 2000年から介 護保険制度がスタートした. その 5年後には介護が必要 であると認定された高齢者が 2倍強に増加し, 中でも比 較的介護の必要性が低い高齢者の伸びが大きいことがわ かった. そこで, 2006年の介護保険制度の見直し時には 「予防」を重視する改正が行われ, 介護予防サービスが 導入された. 介護予防の目的は自立高齢者が要介護状態 になることを防ぐことと, 要介護者がそれ以上状態を悪 化させないことであり, 口腔機能を維持向上させること がその目的達成に効果があると認められ, 介護予防サー ビスのひとつとして導入された. こういった社会的背景 を受けて, 多くの高齢者施設等で口腔ケアに対する関心 が高まり, 口腔清掃はもとより, 口腔体操が始められる ようになった. 口腔清掃 (特に専門的口腔ケア) に関し ては, 入所施設での高齢者を対象とした研究報告が多数 あり, その効果が明らかにされている. 現在,様々な口 腔体操が 案され, 実施されているが, 集団で行われて いる口腔体操に関してはその効果を明らかにした研究報 告は少なく,「実施しているもののどういった効果がある のかわからない」という現場からの声も聞かれ, 口腔体 操の取り組みを継続させていくためにも, 効果を明らか にする必要性があると感じた. 本調査は, 介護予防を視野に入れ比較的自立度の高い 高齢者が集う介護通所施設の利用者に焦点をあて, 集団 的に取り組む口腔体操が口腔機能の向上と QOL にどの ような効果があるのかを明らかにすることを目的に, 介 入研究を実施したので, その結果を報告する. 1 群馬県みどり市笠懸町阿左美606-7 桐生大学医療保 学部 2 群馬県伊勢崎市山王町2020-1 東京福祉大学社会福祉学部 平成22年5月26日 受付 論文別刷請求先 〒379-2392 群馬県みどり市笠懸町阿左美606-7 桐生大学医療保 学部 高橋美砂子

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方 法 1.対象の選定 介護通所施設 (3ヵ所) の利用者で, 1) 口腔清掃 (歯磨 き)を自 でしている, 2)日常会話に問題がなく聞き取 り調査が可能な人を担当職員から紹介してもらった. 3ヵ所の施設のうち, 2ヵ所の利用者 (20名) を介入群, 1ヵ所の利用者 (20名) を非介入群とし, それぞれ同じ内 容で事前・事後調査を行った. 2.介入の手順 介入群には事前調査終了後からおよそ 6ヵ月間, 口腔 体操を実施し, その後事後調査を行った. なお実施施設 間で介入内容に差が生じないように, 本研究のための介 入プログラムとして「みんなのお口の体操」を作成した. 実施に当たり, 担当職員に事前教育を行い, 実施すると きは利用者の見えるところに出て, 指導モデルになって もらった.CD をかけ,順番がわかるように写真付き大型 ポスターを用いて, 昼食前の 10 間, 毎日行ってもらっ た (毎日実施するが, 利用者は通所施設利用日のみの参 加となる). 6ヵ月間実施後, 事後調査を行った. 非介入群 にも事前調査から約 6ヵ月後に事後調査を行い, その後 に「みんなのお口の体操」を指導した. (図 1) 3.介入プログラム「みんなのお口の体操」の内容 モーツァルトのきらきら星変奏曲に合わせて, 1) は じめの歌 2) 深呼吸 3) 肩の体操 4) 首の体操 5) 目と口の開閉 6) 口 (アイウエオ) の運動 7) パ タカラで歌う 8) 頰の運動 (膨らませ, へこませる) 9 ) 舌の運動 (上下左右) 10) かみかみ運動 (臼歯の咬 合) 11) 唾液腺マッサージ 12) 深呼吸 を約 10 間 行う. その内容に合わせて, CD, ポスターを作製した. 4.調査内容 1)対象者の属性 性別, 年齢,服薬の有無,同居家族の有無,介護度は,職 員から情報を得た. 残存歯数, 義歯装着の有無は歯科医 師が調査した. 2)聞き取り調査の項目 事前・事後調査の共通項目として, ADL, 口腔関連 QOL, うつ関連質問, 補足質問を行った. ADL は Barthel Indexの階段昇降 (殆どの人が日常経験していない)の項 目を除いた 9 項目 (食事, 椅子,整容,トイレ,入浴,歩行, 着替え, 排 ・排尿コントロール), 口腔関連 QOL は GOHAI (General Oral Health Assessment)日本語版 Ver. 1.0 の 12項目, うつ関連質問は厚生労働省が老年期うつ 病の一次アセスメントツールとして採択した藤澤らが開 発した 5項目, および補足質問の 5項目 (歌が好き,会話 が好き, 毎日誰かと話す, 食事が楽しい, 食欲がある) と むせ自覚について聞いた. 聞き取り方法は, 対象者のプ ライバシーが確保できる場所にて, 質問内容をゆっくり 読み上げ, 該当する答えを大きな文字で記した用紙を い, その中からもっとも近いと思われるものを選んでも らった. ADL は聞き取り調査に加えて, 一部行動観察に よって行った. 3)口腔機能および口腔衛生状態の調査項目 歯科医師と歯科衛生士により, 開口量, 唾液湿潤度, 口 唇閉鎖力,咬合力,頰の動き,舌の動きについて調査した. 開口量は開口量測定器を 用した. 唾液湿潤度は KISO サイエンス社製の KISO-Wetを用い, 舌尖 1 cmのとこ ろにキソウェット紙をのせ 10秒間測定した. 口唇閉鎖 力はオーラルアカデミー社のリットレメーターを 用 し, 2回連続測定したうちの多いほうの値を採択した. 咬 合力は長野計器社製のオクルーザルフォースメーターを 用い, 左右の臼歯部で測定したうちの高いほうの値を採 択した.頰の動きは「両頰同時」「左頰のみ」「右頰のみ」 を膨らませることができるかどうかを, 舌の動きは舌を 「上」「下」「左」「右」に動かすことができるかを視診で 判定した. 口腔衛生状態については歯科医師が視診で判 定した. 5.倫理的配慮 東京福祉大学倫理審査委員会および協力施設の倫理委 員会の審査を受け, 承認された内容を遵守した. 施設長, デイサービス担当職員, 利用者および家族に文書と口頭 で説明し, 署名で同意を得た. 途中で協力をやめても不 利益にならないこと, プライバシーの配慮 (話の内容が 他人に聞こえない工夫), 得られたデータは ID 番号で管 理し研究以外の目的で 用しないこと等を約束した. ま た, 口腔衛生状態の結果は本人に書面で知らせ, 緊急に 図1 調査手順

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歯科治療が必要な場合は, その旨を伝えた. 調査は対象者が通所施設利用時間内に実施したので, 対象者がサービス享受の不利益にならないように配慮し た. 6.調査期間 調査期間は,2008年 2∼ 9 月.事前・事後調査は利用者 が通所施設利用日に出向き, 午前中の 10:00∼11:00に 調査を行い, それぞれ 10日間要した. 7. 析方法 各項目について対象者個人の介入前後の変化量を求 め, 介入群と非介入群間の t検定 (対応のない) で比較検 討した. 結 果 1.対象者の属性 介入群は女性 11名, 男性 4名で, 非介入群は女性 6名, 男性 4名であった. 平 年齢は介入群 82.3 (±7.7) 歳で, 非介入群は 76.3 (±9.5) 歳であった. 薬は両群とも約 9 割の人が服用していた. 家族同居者は両群とも 7割程度 であった. 残存歯数は介入群では平 9.2本, 非介入群は 平 12.9 本であった. 2005年に厚生労働省が実施した 歯科疾患実態調査 の結果と比較すると, 介入群は同年代 の平 歯数とほぼ同じで, 非介入群の平 歯数は 2本程 度多かった. 事後調査時には介入群では 3名が 1∼ 2本 の歯を喪失したため平 8.9 本となり, 非介入群では 1 名が 1本喪失し, 平 12.8本となった. 義歯は両群とも 約 8割の人が装着しており, 介入前後で義歯装着の変化 はなかった (表 1). 2.ADL,QOL,うつ状態に関する変化量

ADL は barthel Indexの 9 項目を「できない」∼「でき る」で判定し, 0, 5, 10, 15点で評価し, 90点を満点とし た結果, 介入群の事前 81.7 (±10.3) 点, 事後も 81.7 (± 10.1) 点, 非介入群は事前 69.5 (±15.9) 点, 事後 70 (± 16.5) 点で, ともに殆ど変化がなかった. 口腔関連 QOL (GOHAI)は,12項目の質問を「いつも そうだった」(1点) から「全くなかった」(5点) までを 5段階で回答してもらい, 満点は 60点である. GOHAI の 2005年に算出された 70∼79 歳の国民標準値 (80歳以 上は算出されていないが, 年齢が上がるほど数値が低く なる) の平 値は 50.8 (±8.8) である. 介入群は事前 49.8点から事後 50.4点と若干向上し, 非介入群は事前 48.3点から事後 46.7点に低下したが, 両群間に統計的な 差はみられなかった. その他 QOL に関する 5つの補足 質問は,「はい」(3点),「ふつう」(2点),「いいえ」(1点) で回答してもらった.介入群では「歌が好き」以外は,多 少の向上傾向がみられた. 非介入群ではすべての項目で 低下傾向がみられた.「毎日話す」の項目では介入群と非 介入群の間に有意な差がみられた (p<0.01) (表 2). 藤沢らのうつ関連質問 5項目は,「はい」(1点),「いい え」(0点)で回答してもらい,「はい」が 2つ以上あった 場合, うつ陽性と評価される. うつ陽性は, 介入群の事後 調査で 1名, 非介入群の事前調査で 1名いたが, 他の調 査対象者にうつ傾向はみられず, 事前事後の変化もな かった. 表1 対象者の基本属性 介入群 非介入群 n=15 (%) n=10 (%) 性別 女性 11 (73.3) 6 (60) 男性 4 (26.7) 4 (40) 年齢 (歳) 82.3 (SD±7.7) 76.3 (SD±9.5) 服薬中 14 (93.3) 9 (90) 家族 あり 11 (73.3) 7 (70) なし 4 (26.7) 3 (30) 残存歯数 9.2 (SD±9.48) 12.9 (SD±8.78) 義歯 あり 12 (80) 8 (80) なし 3 (20) 2 (20) 事前調査時の date 表2 ADL, QOL 関連項目 のスコアの変化量 介入群 (n=15) 非介入群 (n=10) t 検定 事前 (SD) 事後 (SD) 事前 (SD) 事後 (SD) P 値 ADL 81.7 (10.3) 81.7 (10.1) 69.5 (15.9) 70 (16.5) n.s. GOHAI 49.8 (4.95) 50.4 (5.20) 48.3 (5.92) 46.7 (9.34) n.s. うつ状態 0.3 (0.48) 0.3 (0.59) 0.2 (0.63) 0.1 (0.31) n.s. 歌が好き* 2.7 (0.59) 2.4 (0.73) 1.6 (0.84) 1.4 (0.51) n.s. 会話が好き* 2.5 (0.51) 2.6 (0.63) 2.5 (0.53) 2.3 (0.63) n.s. 毎日話す* 2.4 (0.73) 2.7 (0.45) 2.5 (0.52) 2.3 (0.67) P<0.01 食事が楽しい* 2.8 (0.41) 2.9 (0.35) 2.8 (0.42) 2.6 (0.52) n.s. 食欲あり* 2.6 (0.63) 2.7 (0.45) 2.5 (0.53) 2.3 (0.48) n.s. ADL : 9 項目の合計 90点満点 GOHAI : 12項目の合計 60点満点 うつ 5項目の合計「はい」1点「いいえ」0点 *はい : 3点 ふつう : 2点 いいえ : 1点 n.s.: not significant

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3.口腔機能と口腔衛生状態の変化量 口腔機能のそれぞれの項目および口腔衛生状態は高橋 らの基準 により 1∼ 3点でスコア化して評価した (表 3). 唾液湿潤度は, 柿木の基準 を参 にすると 3.0mm以 上が正常であり, 本調査のスコアでは 2点以上が正常と なる. 介入群は事前 2.2点から事後 2.7点と向上, 非介入 群では事前 2.4点から事後 2.0点と低下し, 介入群と非 介入群の間には有意な差がみられた (p<0.05). 開口量 は, 両群とも良好で変化がなかった. 口唇閉鎖力は成人 の正常値が 1.0kg で, 両群とも約 6割の人が 0.9kg 以下 (1点) と低い値であるが,両群とも若干向上している.咬 合力は, 成人では 30kg f以上 (3点) が正常とされてい る が, この基準を超えるものは事前調査では介入群で 1名, 非介入群で 2名のみだった. 事前事後の変化は殆ど なかった. 頰の膨らましは, 介入群は両頰, 左, 右すべて で向上し, 両頰と左は非介入群に比べて有意な差があっ た (p<0.05, p<0.01). 舌の動きについても, 介入群は上, 下, 左, 右すべてで向上し, 下方への動きにおいては非介 入群に比べて有意な差がみられた (p<0.01).むせ自覚に ついては, 著明な変化がなかった (表 4). 1日の平 歯磨き回数は, 介入群では殆ど変化がなく, 非介入群では減少傾向だったが, 両群間に統計的な差は みられなかった. 口腔衛生状態は介入群では事前より事 後のほうが衛生状態は向上し, 非介入群の方では低下傾 向であったが, 両群間に統計的な差はみられなかった. 察 今回の調査は, 日頃の歯磨きを自 でしており, 日常 会話ができ, 聞き取り調査が可能な通所施設利用者を対 象者とし, 対象者が通常どおりに生活している中での口 腔体操の効果を明らかにしようと えたものである. QOL に関する項目については「毎日話す」は,介入群 は非介入群に比べて有意な差があった. 他の項目につい ては統計的な差こそ認められなかったものの, 介入群に おいてはすべての項目で若干の向上がみられ, 反対に非 介入群では殆どの項目で低下した. このことは皆で口腔 体操をすることによって話すことや食べることをポジ ティブに捉えられるようになってきているためと えら れる. 個々人の取り組みは本人次第ということになって しまうが, ポピュレーションアプローチゆえの集団力と して相乗効果が期待できるといえる. 口腔機能調査の項目においては, 唾液湿潤度, 両頰の 膨らまし, 左頰の膨らまし, 舌の下方への動きについて, 表3 スコアの基準表* 1点 2点 3点 唾液湿潤度 2.9mm以下 3.0∼4.9mm 5.0mm以上 開口度 29mm以下 30∼39mm 40mm以上 口唇閉鎖力 0.9kg 以下 1∼1.4kg 1.5kg 以上 咬合力 9.0kg f以下 10∼29kg f 30kg f以上 頰の動き (両頰, 右, 左) 不良 まずまず良好 良好 舌の動き (上, 下, 右, 左) 不良 まずまず良好 良好 口腔衛生状態 不良 まずまず良好 良好 *高橋らの基準 表4 口腔衛生と口腔機能項目のスコアの変化量 介入群 (n=15) 非介入群 (n=10) t 検定 事前 (SD) 事後 (SD) 事前 (SD) 事後 (SD) P 値 歯磨き回数 (1日) 1.5 (1.13) 1.5 (1.13) 1.9 (0.87) 1.6 (1.01) n.s. 口腔内衛生状態 1.9 (0.74) 2.3 ( 0.8) 1.8 (0.79) 1.6 ( 0.7) n.s. 唾液湿潤度 2.2 (0.94) 2.7 (0.59) 2.4 (0.84) 2 (0.94) P<0.05 開口度 3 ( 0) 3 ( 0) 2.8 (0.63) 2.8 (0.63) n.s. 口唇閉鎖力 1.5 (0.74) 1.8 (0.66) 1.5 (0.53) 1.8 (0.79) n.s. 咬合力 1.5 (0.64) 1.4 (0.63) 1.6 ( 0.7) 1.8 (0.92) n.s. 頰の膨らまし (両) 2 (0.85) 2.8 (0.41) 2.5 ( 0.7) 2.6 (0.84) P<0.05 (右) 1.9 (0.91) 2.4 (0.82) 2 (1.05) 2 (0.82) n.s. (左) 1.8 (0.86) 2.3 ( 0.9) 2 (0.94) 1.9 (0.99) P<0.01 舌の動き (上) 1.9 (0.83) 2.8 (0.41) 1.9 (0.88) 1.8 (0.79) n.s. (下) 2.9 (0.35) 3 ( 0) 2.9 (0.32) 2.7 (0.48) P<0.01 (右) 2.9 (0.35) 3 ( 0) 2.7 (0.68) 2.7 (0.68) n.s. (左) 2.9 (0.35) 3 ( 0) 2.6 (0.7) 2.7 (0.48) n.s. むせ自覚なし* 2.8 (0.81) 2.8 (0.43) 2.2 (1.03) 2.1 (0.87) n.s. *「はい」3点 「ふつう」2点 「いいえ」1点 n.s.: not significant

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介入群と非介入群の間には有意な差が認められた. 口腔 体操によって舌や頰がよく動くようになり, さらにその ことによって唾液の 泌量が増加したものと えられ る. 口腔内の衛生状態については介入群と非介入群の間に 統計的な差は認められなかったが, 介入群においては向 上傾向がみられた. 橋本ら は口腔衛生状態と口腔機能 とは関連していると述べているが, 口腔体操により口腔 機能が向上し, 口腔機能が向上することによって, 口腔 内の食物残 が減少し口腔衛生状態も良好になっていく ものと える. また逆に, 歯磨きなど口腔衛生をしっか り行うことは口腔内の刺激になり, そのことが口腔機能 にもよい影響を及ぼすことも えられる. 口唇閉鎖力は, 食べこぼしと関連する動作である. 今 回は介入群と非介入群の間に統計的な差はみられなかっ たが, 介入終了後に職員から「利用者の食べこぼしが少 なくなった」という感想が聞かれた.今後,食事摂取の状 況等について詳しく調査し検討したい. また, 咬合力に ついても, 今回は介入群と非介入群の間に統計的な差は 認められなかった. 両群ともに残存歯数は少なく, 義歯 用者が多いため, 今後, 義歯の安定性を図る必要があ ると える. 飲み込み状態を把握する調査は, 対象者の 負担軽減を 慮し, むせ自覚の有無を聞き取りで行った. 事前事後ともに「むせる」と答えた人は殆どいなかった が, 介入後の職員の感想には「むせが少なくなったよう だ」との記載があり, 本人の自覚と職員の観察にずれが あると感じられた. このことは, 本人の聞き取りだけで は不十 であることが示唆されたので, 対象者の負担が 少ない調査方法を検討し, 導入する必要がある. 今回の調査では対象者数も少なく, 対象者の割付は, 集団で口腔体操を実施してもらう関係上, 無作為とはい かず, 結局施設を単位として介入群と非介入群に けた. そのため, 人数の配 や対象者の条件が異なってしまっ たことは否めない. また, 介入群の参加回数のばらつき は, 対象者の施設利用回数によるものであり, 参加回数 による変化量の検討を行なうべきであったが, 対象者数 が少ないことから今回はできなかった. 介護保険法改正に伴い, 関心が高まった口腔機能向上 プログラムではあるが, 普及, 浸透は他の介護予防事業 に比べて, やや困難であることが指摘されている. その 理由として, 口腔機能の向上は, 直接介護状態の改善に 結びつくというよりもむしろ間接的に寄与するためでは ないかと える. つまり,「高齢者のためになると思って 取り組んでいるが, どういった効果があるのか知りた い」という現場の声からもわかるように結果が見えにく い. 今回の調査においても, ADL の変化は顕在化されな かった. 調査期間をもっと長くするか, あるいは詳細な 変化を掬いとれる調査方法を検討する必要があるかもし れない. しかしながら, 介入群と非介入群の両群間において有 意な差が認められた項目がいくつかあったこと, また, 非介入群では QOL や口腔機能が低下していく傾向であ ることが確認されたことより, 高齢者の QOL や口腔機 能の維持向上のためのポピュレーションアプローチとし ての口腔体操は, 一定の効果があると えられる. さら に口腔内の衛生状態や義歯の状態をきちんと管理してい くことなどによって, 口腔体操の効果は高まっていくの ではないかと える. 口腔機能向上のための様々な取り組みを普及, 浸透さ せるため, また日々取り組んでいる施設職員のモチベー ションを向上させるためには, 効果の検証を積み上げて いくことが重要である. 集団的な取り組みは指導する職 員の「やる気」が効果を左右する場合があるので,利用者 と職員の相互作用による効果や集団力による相乗効果を 期待したい. 本研究によって, 双方への継続支援の根拠 となるデータのひとつが示せたのではないかと える. 謝 辞 本研究に協力してくださった介護通所施設利用者の皆 様, 忙しい業務の中「お口の体操」を実施指導してくだ さった職員の皆様に心から感謝申し上げます. また, 本 研究は社団法人至誠会岡本糸枝学術助成金の援助を受け て実施しました. 文 献 1. 植田耕一郎 : 口腔機能の向上マニュアル. 厚生労働省口 腔機能の向上についての研究班報告書. 2006: 3 2. 高橋美砂子, 橋本由利子 : 群馬県内の介護通所施設にお ける口腔ケア取り組みの実態調査.桐生大学紀要 2008; 19 : 79-82. 3. 米山武義, 吉田光由, 佐々木秀忠ら. 要介護高齢者に対す る口腔衛生の誤嚥性肺炎に対する予防効果に関する研 究. 日本歯科医学会誌 2001; 20: 56-68. 4. 才藤栄一, 園田 茂, 鈴木美保ら. 康な心と身体は口腔 から―口腔の 康が高齢障害者の生活の質を高める―. 日本歯科医学会誌 2005; 24: 21-29. 5. 藤中高子. 専門的口腔ケアの導入と義歯の歯科医療介入 による要介護高齢者の QOL の改善. 日本 衆衛生雑誌 2008; 55: 381-387. 6. 内藤真理子, 鈴鴨よしみ, 中山 夫ら. 口腔関連 QOL 尺 度 開 発 に 関 す る 予 備 的 検 討―General Oral Health Assessment Index (GOHAI) 日本語版の作成―日本口腔 衛生学会誌 2004; 54: 110-114.

7. 藤原大介 : 高齢者のうつ病.大野 裕 (編) 第 2章 高齢 者のうつ病の診断. 東京 : 金子書房, 2006: 21-27. 8. 歯科疾患実態調査報告解析検討委員会編.解説平成 17年

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歯科疾患実態調査. 東京 : 口腔保 協会 2007: 117-119.

9. 高橋美砂子,橋本由利子.介護通所施設利用者における口 腔機能低下予防体操の効果 (1) ―通所施設利用者の口腔 機能と QOL―. THE KITAKANTO MED J 2009 ; 59(3) : 241-246. 10. 柿木保明.唾液 泌検査の新しい試み,ドライマウスの臨 床. 斉藤一郎監修. 東京 : 医歯薬出版, 2007: 90-94. 11. 岩 素子, 五十嵐直子, 河野正司ら. 義歯の装着と咬合力 および嚙める食品との関係. 新潟歯学会誌 2004; 34 (2): 213-218. 12. 橋本由利子,高橋美砂子.介護通所施設における口腔機能 低下予防体操の効果 (2)―通所施設利用者の口腔内状況, 口腔衛生および口腔機能. THE KITAKANTO MED J 2010; 60(1): 9-15.

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Effects of the Oral Functional Exercise

in Day-Care Users (3)

Changes in the QOL and Oral Function After 6-month Intervention

Misako Takahashi

and Yuriko Hashimoto

1 School of Health Care, Kiryu University, 606-7 Azami, Kasakake-machi, Midori, Gunma 379-2392, Japan

2 School of Social Welfare, Tokyo University of Social Welfare, 2020-1 Sanoucho, Isesaki, Gunma 371-0831, Japan

Objective: An interventional study was performed to examine whether oral exercise as a population approach is effective for improving the ADL, QOL, and oral function of day-care users. Subjects and methods: Day-care users who could brush their teeth by themselves and answer an interview survey were divided into intervention (n=15) and no-intervention (n=10) groups, and pre-and post-intervention surveys (basic characteristics, ADL, QOL, depression, oral function, state of oral hygiene, etc.) were performed. The intervention group practiced oral exercise for 6 months after the pre-intervention survey. The changes observed after the intervention were compared between the two groups by the t-test (unpaired). Results: No change was observed in ADL. A significant difference was noted in the QOL concerning speak everyday . Regarding the oral function,significant differences were observed in oral dryness, cheek inflation (bilateral, left), and downward tongue movement. The parameters examined generally tended to improve in the intervention group but to deteriorate in the no intervention group. Conclusion : The results suggest that oral exercise is effective for improving the QOL, oral function.

(Kitakanto Med J 2010;60:243∼249)

Key Words: Oral exercise,improvement in oral function,activities of daily living (ADL), general oral health assessment index (GOHAI), day-care users

参照

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