大 阪薬科 大学・ 製剤設計学研 究室 大阪薬科大学 製剤設計学研究室 准教授 門田 和紀 共同研究者 大阪薬科大学 製剤設計学研究室 教授 戸塚 裕一 助教 内山 博雅 1998年 同志社大学 工学部
2004年
同志社大学大学院 工学研究科 博士課程後期2007年
エーザイ株式会社2013年
大阪薬科大学 製剤設計学研究室 講師2018年
大阪薬科大学 製剤設計学研究室 准教授 を経て現職超高齢化社会の多様 なニーズに適応 した
テー ラーメイ ド型機能性ゼ リー剤 の開発
1.研
究 の 背 景 と 目的 日本 国民の平均寿命は,医
療技術の進歩 に伴い飛躍的に伸び,世
界一の長寿大国へ と成 長 した.そ
の反面,高
齢者人 口の増加 に伴い医療費増大は、 日本国内において非常に深刻 な問題 であ り,さ らに平均寿命 と健康寿命の拡が りによって,QOLQualityoflife)の 低下が 引き起 こされている0.高齢者 に対す る健康増進 を促進 し,医療費削減 を実現するために, 個人 レベル での機能性食品やサプ リメン トを活用 したセル フメデ ィケーシ ョンが近年注 目 を集 めてい る。自身の健康を 日々管理 し,生活習慣病 を予防できれば医療費高騰を抑制 し, 健康寿命 を延 ばす ことが期待 され る。 しか し,こ
れ らの製品に対す る消費者は若年者か ら 高齢者 まで幅広 く,味
の好みだけでなく,咀
唱や廉下能力 も異なる.そ
こで,個
人の嗜好 や能力 に応 じた製剤設計が実現できれば,味
や食感を楽 しみなが ら日々の健康管理 を行 う ことができる。一方で,健
康食品やサプ リメン トに含まれている機能性成分のポ リフェノ ール類は,抗
酸化作用以外に も様 々な効果が報告 されてお り の,既
に多数の製品が開発 さ れている。 しか し,こ
れ らポ リフェノール類 には水への溶解性が低 く,消
化管においてほ とん ど吸収 されない ことが問題 として挙げ られ る め. 申請者 らは,こ
れ までに難水溶性のポ リフェノール類化合物に対 して,機
能性食品添加 物(ヒ して用 い られ る糖転移 化合物 (糖転移 ステ ビア (SteviaC),糖 転移ヘ スペ リジ ン「
ヽmespe五
dn_G)及
び糖転移ルチン ●utin‐G))を用いて,様
々な手法により溶解性および吸 収性 を改善 した機能性粉体の作製 に成功 してきた4-つ.特 にポ リフェノール類の一種であ り 難溶 性を示すCllrcllmin(CtJR)に ついて,溶
解性お よび吸収性 を劇的に改善 したCLIRナノ 複合体の設計に成功 している め。また,紅
藻類か ら抽出 され るKC―
geenan中 にCLIRナ ノ複合体を均一分散 した経 ロゼ リー剤 についても報告 している".ゼ
リー剤 については, 錠剤や顆粒 といつた他の剤形に比べて,消
費者の多様なニーズに応 じた機能性製剤 の設計 が可能である.本
研究では,高い溶解性 を示す CllRナ ノ複合体を含有 し,さ らにテクスチ ャ調整のため金属塩Nacl,KCり
を添加 したK―camgeenan処方ゼ リー剤 を調製 し,ゼ
リー 剤 のテクスチャ及びゼ リー剤か らのCLIR放出性への影響 を検討 した.2.調
製 方 法 CllR300 mgをエタノール 180 mLに,糖
転移 ステ ビア(Stevia‐G)お よび糖転移ヘスペ リジンαespe五din_G),PolyVhyいyrOlidone K…30(PVP)または糖転移化合物/PVPを一定の割合 で水 180 mLに 溶解 させ混合 し
,混
合溶液 を調製 した。その後,混
合溶液 をエバポ レーシ ョン処理 し残液が 9は2 mLとなるよ う溶媒 を留去す ることでCtlR溶液 を調製 した。得 ら れ たCtIR溶液に各種金属塩Nacl,KCり
を所定濃度 となるよ う添加 し,Kcarrageenan l%(w/vuを添加後,加熱溶解 し
,冷
所で一晩保存 じCLIRゼ リー剤 を調製 した.3.評
価 方 法 調製 したCLIR溶液に関 して,金
属塩添加前後でのCLJR溶解量変化について測定 した。 ゼ リー剤については調製時に,加
熱 (75°C,15 min)が必要であるため,そ
の条件下におけ るCllR溶液の物理的安定性 を評価 した。CLIRゼ リー剤 の品質を評価す るため,ゼ リー中 に含 まれ るCllRの
含量均一性試験お よび離水率の測定を行 つた。また Texture Pro■L
AnJyJsに
よるテクスチャ測定を行 つた.さらに 日本薬局方に従い溶出試験 を行い,溶
出 速度 とゼ リー硬度 との関連性 を評価 した。4.結
果 ① 製剤の処方最適化検討 各種添加剤を用い調製 した試料のCLIR溶
解量を測定 した結果を Table lに 示す。本検 討 で用いた添加剤中では,糖
転移化合物 (St宙a―G,HespeHdn‐G)を2成
分 日として用いた場 合に大幅な溶解性改善が認められた。なかでもStvia‐
Gを
添加 した製剤でCtlR溶
解量 の増加 は顕著であ り,CIJRに
対 し 10倍量のSt宙a‐Gを
添加す ることで約 10,OC10倍にまで増加 した (CLIRの水 に対す る溶解度:0.3 Hg/mL)。 しか し
,CtlRと
Ste宙卜Gの
2成
分で 形成 され る過飽和状態は非常に不安定であ り,CLIR溶
解量は1日後,7日
後では経時的に 減少 した.以
前の報告で,過
飽和系に対 して水溶性高分子 を添加 することで,相
互作用や 複合体形成 によ り過飽和状態 を安定化す ることが知 られている り。本検討では,3成
分 目 の添加物 として,CllRと の相互作用の形成が報告 されている高分子であるPVPを
添加 し,CIRの
過飽和状態安定化を試みた。処方にPVPを
追加 した結果,St宙
a‐G単
独 と同等量 の CIIRが 溶解 してお り,さ
らに1日 後,7日
後における溶解量はCtJR溶液調製直後の値 と.しヒ較 し,減
少 は認 められなかった。以上の結果 を踏まえ,今
後の検討 では CUR/S“ 宙a‐ G/1PVP(1:10:5)で調製 し,評
価 を実施 した。Table I The amount of dissolved curcumin (CI-rR) in solution after preparation
Sample name
CI-IR solubility in aqueous solution (pglml-)
after preparation after I day at 4
oC
after Tday at 4 oCCIJR/Stc宙a―G(1:5) CUR/Ste宙aG(1:10) CllR/Hcspσidh‐G(1:10) CtlR/PVP(1:1) CUR/PVP(1:5) CUR/StcvittG/PVP(1:10:5) 20924■54 32438± 127 1687.7±647 310■ 140 8939■ 802 1921.3± 16.8 31268±8.2 1671.6±30.1 19.5± 1.7 8529=L143.5 11727±659 2149.8±106.7 17113±24.4 241±4.2 862.OJヒ424 32409■74 32846■427 33128± 105 ② 金属塩添加 がCIIR溶解 に及 ぼす影響 金属塩
Nacl,KCDを
llXl mMとなるよ うCtJR溶液 に添加 した際のCtJR溶解量につい て も大きな変化はな く,7日 保存後 も維持 していたことが確認 された。金属塩濃度 20,40,60,80 mMの
CLIR溶液 に関 して も同様 に 7日 後まで初期の高い溶解量を維持 していた。CLIR溶液 を75。
Cで
15分加熱 し,室温 に戻 るまで放熱 した後 の CtlR
溶解度 をFig。
1に
示す.CUR/S“宙a‐ G(1:10)溶液 は,この操作 を繰 り返すに つ れCLJRの析 出 が 認 め られ,CLIR 溶解度 は劇 的 に減 少 した。一方 で
PVPを
添力日した CUR/Stevia―G/PVP0 1 2 3 1 5 (1:105)溶
液では 5回加熱冷却 した後1lc`lting and c●oling
も溶解度 は維持 していた。 さらに,
Fig。l Change in CLIR solubility after heating and CllR/Stevia― G/PVP(1:10:5)溶 液 に c∞ling,CuV〕tevia‐G/PVPc1/10/5)■
,withNaCt NaCl及
びKClを
添 加 loo mMと な ◆,with KCI;●,withoutsalt O,CUR/Stevia‐G
るよ う添加 した溶液 を調製 し,上
記(1/10) と同 じ操作 を行 つた ところ,CtlR溶 解度 に大 きな変化 は認 め られ なか った。 ③
CURゼ
リー剤 の含量均一性お よび離水率の評価 調製 したCURゼ
リー剤の品質を評価す るため,ゼ
リー剤 中のCIIR含
量を測定 した。 離水が認 め られ るものに関 しては離水率, さらに離水 中に含 まれ るCUR含
量を測定 した ∈lble 3).すべての処方において,ゼ
リー剤 中お よび離水中において もCITRが
均一であ ることが確認 された。離水率は どちらの金属塩 を添加 した場合 においても40 mMに
おい て最大であった.こ
れは,添
加金属塩のカチオンとKc―
geenanの硫酸基 との相互作用に おいて,40 mMま
ではKく― geenanの 相互作用部位数が優位であ り,カチオンの数的不足 に よリゲルネ ッ トワーク構造に隙間や偏 りが生 じたためと考えられ る。60 mM以
降では, カチオン数が増加 し,硫
酸基 との相互作用が多 く構成 され ることによ リグル外部へ と流出 する離水量が低下す る。Na十はK・と比ベイオン半径 が小 さく,水
和イオン半径が大きい こ とが報告 されている。つま りNa・イオンの周囲は強 く水和 した水分子が整然 と配列 した構 造を形成 してお り,密
に配列す るためイオン周囲の密度は著 しく高い と同時に,粘
性 も増 大 してい ることが推察 され ることか らK・と比較 し離水量が少ない と考 えられ る。一方で で はNa・と比ベイオン半径 が大 きく,水
和イオン半径 が小 さい。つま りK・と水分子の水和 はNa・よ りも弱 く,周
囲の水分子の配向は大きく乱れた構造であることが予想 され ること か ら,金
属塩濃度が同量であつてもK・添加 時の離水率が高かつた と推察 された。 0 0 0 0 0 8 6 4 2 一 NaCl(100 nlヽ1) 一 KCl(100m卜I) ︵っ 一〓 ヽ , 一 一 〓 E 一 っ 〓 〓 ア ︶ 0 こ ︶ 〓 一 〓 ︶ ア ︶ ^ 〓 〓 一 3 〓 ︶′ ﹂ 0 っ ¨ 嘔 ヽ 〓 一 ︶Table 3 CUR content in the jelly formulation and syneresis rates from jelly formulations.
Samples
CUR content
in jelly formulation (7o)
CUR
content
Syreresis ratesin syneresis
(7o)
(Y,)without salt 20mM 40nM NaCl 80 mM 97.0■0.4 90.2±1.3 877■ 15 95.9■0.7 95.8■0.8 890■0.3 867±03 93.0■0.5 96.3■0.6 ND 6.9■ 01 82■01 2.7±03 21±03 10.4■ 10 132■1.2 9.0± 04 51■16 ND 61±01 68■02 22±02 17±02 8.7■06 10.8■ 1.0 73±01 42■ 13 llXl mM 20 mM 40 mM KCl 80 mM 100 mM 垂
OCURゼ
リー剤 の硬度評価 1宣径40m,高
さ15 nlmのステンレス 製 シャー レに充填 した試料 を,直
径 20 nllln,高 さ8 mmの
樹脂製 円柱型プラン ジャーを用いてク リアランス5 mm(変
形 率66.6%),プ
ラ ンジ ャー速度 10 nlllげsecで試料中心部を二回圧縮 し測定 した。CLIRゼ
リー剤の硬度測定の結果 を示す(Fig。2).金 属塩Nacl,KCD添
加 により,硬度の増大が認められた。NaCl 添加では,添加濃度間において硬度に大 きな差 は認 め られなかった。一方で, 0 50 100 Concentration of salt(mM)Fig.2 Change in hardness ofielly follllulations.
■,with NaCI;◆,with KCI
00 00 00 00 00 00 00 0 00 00 00 00 00 00 00 7 6 5 4 3 2 1 ︵N 日 ヽZ ︶ ∽∽ o 目 ● ﹄ “ 〓
KCl添
加では,添
加濃度増加に伴い硬度の増加が認められた。これ らの結果は,水
和イオ ン半径によるもの と推察 され る。NがはK・と比ベイオン半径が小 さく,水
和イオン半径が 大 きい ことが報告 されてお り,水
和イオン半径が大きいためにグルネ ッ トワーク構造の細 部 まで行 き届かず,Iccarageenanの 硫酸基 との相互作用が不十分 とな り,硬
度の増加が認め られなかつたことが考えられ る
.一
方で K+はNa・と比ベイオン半径 が大きく,水
和イオ ン半径が小 さいために,ゲ
ルネ ッ トワーク構造の細部にまで到達可能であ り,NaCI添
加 と 比 べ,よ
り多 くの硫酸基 とイオン間相互作用を形成 し,硬
度の増加が認 め られ るものだ と 推察 した。o CURゼ
リー剤 の溶 出試験 製剤化によるCtlRの
溶解性改善およびゼ リー剤か らの CtlRの 放出性 を評価す るため, 調 羨液 として水 を用いた溶出試験 を実施 した (Fig.3)。 その結果,CLIR原
末を含有 したゼ リヽ一剤は,180分
間の試験でほ とん ど溶出 しなかつたが,CUR/Stevia‐G/PVP(1/10/5)ゼリー 剤は,試験開始5分
にてゼ リー剤 中に含有 したCllR量(15mDを
ほぼ10o%(約16 μg/mL), すなわちCtlR溶
解度の約50倍
の溶解度を示 した。ピレンを用いた蛍光プローブ法によりStevia―G/PVP(10/5)の 臨界 ミセル濃度 (CH● cal micelle concentration:cmc)を測定 した とこ
ろ,15.3 mg/mLであつた (data not shown).溶出試験 中のStevia‐
G濃
度は約 0.16 mg/mLであ り
,cmcを
大 きく下回る値であるにもかかわ らず,ほ
ぼ100%の
CLIRが 溶出 していた。この結果か ら,Ste宙a‐
G/PVPを
用いた CLIRナ ノ複合体は,希釈 され る条件下において もナノ複合体構造を維持 していることが示唆 された
.NaCIを
添加 したゼ リー剤は,開
始 15分 にてほぼ10o%の
溶出が認 め られ,NaClを
添加 していないCLJRゼ リー剤の溶出プロファ イル と比較すると,溶出速度の減少が認 められた。しか し,NaCI添加濃度を変化 させても, その挙動に大きな変化は認められなかった。一方で,KClを
添加 した ctJRゼ リー剤は,添
100 100 20 0 0 0 0 8 6 4 2 ︹ ぶ し ぼ つ り ●o の “ 2 o ぼ0 15 30
Time(min)
Fig.3 Dissolution pro■le ofjelly follllulations.
0 30 60 90
Time(min)
(のwith NaCI;(b)With KCI
120 80
加濃度増大に伴い溶出速度に減少が認められた10. お わ りに 本研究では