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河川水中の水質、特に陰陽イオンから見た千曲川・信濃川流域の自然と環境 利用統計を見る

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(1)

河川水中の水質、特に陰陽イオンから見た千曲川・

信濃川流域の自然と環境

著者名(日)

西山 勉

雑誌名

東洋大学紀要. 自然科学篇

51

ページ

133-152

発行年

2007-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00002528/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

河川水中の水質,特に陰陽イオンから見た千曲川・信濃川流域の自然と環境 133

河川水中の水質、特に陰陽イオンから見た

     千曲川・信濃川流域の自然と環境

西 山 勉*

Quality of River water−Nature and Environment of

River Chikumagawa−Shinanogawa particularly as Seen

       from Anion and Cation Ions 聴utomu Nishiyama Abstract   Based on the allion and cati皿ion concentrations of water in the lower reach, the river Chikumagawa・Shinanogawa from its upper reach to lower reach has been divided into three areas.This enabled us to study the nature and environment of the basin of the river. The river starts floWing through granite district and廿len reaches the basin where vegetables are being grown on a large scale. The river血rther goes through the basin Sakudaira after being affected by active volcano and reaches the area where ion concentration of the river water is on the increase due to unnatUral口1且uence such as increasing population density as it goes further downstream.   After this comes the basin Ueda having a hinterland of light precipitation, where a large city like city Ueda exists and the river further goes downstream with its high ion concentration kept as it is.   The last is the high snowfall area deep in mountains existing between points Iiyama and Tsunan, but from the city Ojiya, the river goes through the plain Echigo of granary covering the cities Nagaoka and Niigata respectively, the former being affected by human activities and the latter by sea as it is located at the mouth of the river. Namely, the water with high ion concentration is kept diluted by water abundantly supplied from snoWy area, but雄er血e river goes into the plain Echigo, where the river water is affected by human activities and sea.   The river Chikumagawa−Shinanogawa flows through cold district and area of heavy *東洋大学経済学部社会経済システム学科,〒112−8606 東京都文京区白山5−28−20  Department of Social Economic Systems, Faculty of Economics, Toyo University 5−28−20,  Hakusan, Bunkyo−ku, Tokyo 112−8606, Japan

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134 西 山  勉 snowfall where enormous amount of thawing chlorides are being used in winter thus contributing to the lower Na/CI values recorded in FebruaryApril than those in September− November. 1.はじめに  河川水は上流から下流に流れる.地表に降水した水は一旦地表流あるいは地下水となる が,やがて低いところに集まり河川となり,河川を河川水はさらに下流する.水は接触し ている物質を溶かす.特に無機物質を溶かす力は強い.降水した水は河川水となるまでに 流域の自然環境下にある岩石・土壌など地表物質を溶解し,河川水となる,  今日の人の活動は地球表面で顕著で,岩石・土壌・生物との関わりを強くし,また水資 源を含めた地下資源の利用と破棄に伴う物質的関与は著しく,自然と環境についての人為 的な影響は大きくなっている.  信濃川は本州中央部を流れる河川で,長野県川上村の甲武信岳に水源があり,新潟市に て日本海に出る.信濃川の流路長は367㎞で本邦第1位となり,流域面積は11900㎞2 で利根川16840㎞2,石狩川14330㎞2に次いで3f立となる.ここでは信濃Illの河川水が 下流に伴い変化する水質,特に陰陽イオンの濃度変化と,信濃川流域にみられる自然と環 境との関係について人為的な負荷を考慮しながら考察した.  信濃川は上流から中流域の長野県では千曲川と呼び,中・下流域の新潟県側を信濃川と 呼ぶのが一般的である.ここでは千曲川と信濃川とを区別したところと,区別せずに信濃 川とした部分がある.  なお,本研究は東洋大学国内特別研究(平成18年度)期間中にてまとめた. 2.採水地点、採水時期、採水方法と分析方法  今回調査した信濃川の流路と採水地点は図1に示した.千曲川・信濃川での採水場所は 上流より長野県南佐久郡川上村樋沢新田橋(図1,表1中の番号1,図表本文中では川上 と略す),南佐久郡小海町馬流橋(2,小海),佐久市中込・野沢橋(3,中込),小諸市・戻 り橋(4,小諸),上田市大屋・大屋橋(5,大屋),上田市上田・上田橋(6,上田),千曲 市屋代・千曲橋(7,屋代),長野市松代・松代大橋(8,松代),飯山市南町・綱切橋(9, 飯山),新潟県中魚沼郡津南町・信濃川橋(10,津南),北魚沼郡川口町・西倉橋(11,川 口),小千谷市・旭橋(12,小千谷),長岡市長岡・大手大橋(13,長岡),新潟市大野・ 信濃川大橋(14,新潟)の計14ヶ所である.なお,信濃川大橋では信濃川と中ノロ川の 河川水を採水したが,両河川は上流で分岐し下流で合流するので,中ノロ川を支流とせず に,新潟(14)での信濃川の水質は両試料の分析値を平均して求めた.  千曲川・信濃川で採水した年月日は2003年9月2−3日,2003年11月2−4日,2006年 2月22−25日,2006年4月23−26日の計4回である.ただし川上,大屋,松代では2006 年4月のみの採水である.  また調査した支流は千曲川・信濃川の上流から湯川(海尻,湯川橋,図1,表1での地 点番号15),相木川(小海,相木川橋,16),滑津川(滑津,滑津橋,17),湯川(北中込, 18),依田川(大屋,東郷橋,19),犀川(長野,丹波島橋,20),裾花川(長野,裾花橋,

(4)

   河川水中の水質,特に陰陽イオンから見た千曲川・信濃川流域の自然と環境  135 21),浅川(豊野,小瀬橋,22),鳥居川(豊野,鳥居橋,23),魚野川(川口,川口橋, 24)の10河川であり,いずれの採水場所も千曲川・信濃川への合流点近くである.採水 は2006年4月の信濃川での採水時に行い,魚野川では2003年9月と11月,2006年2月 時にも行った.  採水は各地点の橋の上から流水のほぼ中央あるいは最流速部で行った.採水は2回行い

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   40km 糸 B本海 上越

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  令’  駒ゲ、岳    }   ,−l  t .J   沼 山   ミ    肇    R    o  前橋 図1  ヨ  憲  25  、  N  ,  i 菓毒  △x   、   φ一〆  ’、   1   }  t  r  ‘

   駒咋.1      △ 千曲川・信濃川の流域,流路と河川水の採水位置,図中の地点番号は表1中の番号に一致する.

(5)

136 西 山

試料を平均化した.水温とpHの測定はその場で行った.採水試料は実験室に持ち帰り, 濾紙とメンブランフィルター(0.2μm)で濾過後,陽・陰イオンはイオンクロマトグラフ

にて分析した.分析した陽イオンはLi+, Na+, NH4+, K+, Mg2+, Ca2+,陰イオンはF−,

Cr, NO2− C NO3−C SO42一ナある.なお,採水と化学分析に関する詳細は西山(1992)に

記した.また以降のイオン種の表記はイオン電荷を省略した. 3.結果と考察   3.1 千曲川・信濃川の異なる採水時期での水質について   千曲川・信濃川の各採水地点における河川水の陰陽イオンの濃度,pH,水温, 刻を採水時期別に表1に示した.表中での採水地点は上流から下流に向け示した. 採水時 下流に        表1 千曲Jl十信濃川とその支流の河川水の水質 表中の番号は図1中の地点番号と.一致する.また試料Noは採水年番号を示す,たとえば03090201は 2003年9月2日採水1番目となる, 千曲川・ g川(2003 9 ) 化子  ( m

番号 試料N。 採水地点 橋 Li Na NH4 K Mg Ca F CI NO2 NOa SO4 TotaI pH ℃ 時刻 2 03090201 小海 馬1橋 0,DO3 576 0.10 1.69 2.64 10.42 0.04 5.56 ODO 5.56 21.59 53.36 774 20.5 12’10

3 03090202 中込 野沢橋 0,000 5.16 0.09 |.36 2.54 9.91 0.00 5.19 0.DD 6.04 1128 41.57 8.41 209 13:20 4 03090203 小諸 戻り橋 D,OD2 13.09 o.08 2.フ1 599 17.91 0.田 15.]3 D.oo 4.〈o 23.99 83.03 9.2D 24.0

6 03090204 上田 上田楕 D,002 9.偶 D.07 2.07 4.08 13.45 0.02 10.2‡ o.oo 433 17.36 61.03 8.95 23.0 15:05 7 03090205 屋代 千曲橋 O,002 旧.98 0.06 2.34 4.38 】4.51 0.03 1τ.87 口.oo 4.62 20.41 69.20 926 25.2 16715 9 03090301 飯山 綱切橋 0,009 9.90 0.03 1.91 313 13.10 0.08 10.67 0.00 343 20.77 63.03 7.46 21.7 |0二55 10 03090302 津南 信濃川橋 0,006 7.52 0.12 1.50 2.39 9.82 0.05 7.95 0.00 325 14.98 47.59 7.65 21.1 11 03090304 川ロ 西倉橋 0,002 5.06 0.12 1.43 1.69 531 O.04 5.47 0.00 1.99 8.27 29.38 7.25 21.6 13;50 12 D3090305 小千谷 旭橋 0,003 6.2] o.04 1.37 1.95 766 0.06 6.76 0.00 2.05 |2.06 38.↑6 7.39 20.7 1520 13 03090306 長岡 大手大橋 0,003 5.22 0.07 |.12 1.60 5.82 004 5.73 0.00 1.76 9.32 30.68 7.39 20.5 16:10 ↑4 03D90307 ご 信温川大橋 0,001 7.40 o.09 1.48 2.09 7.21 003 ア92 o.oo 297 }216 4135 702 20.8 17・50 曲川・工 川(2003年11月) 化   ( m)

番号 試料N。 採水地点 橘 L‘ Na Nト転 K Mg Ca F CI NO2 NOコ SO4 Tota| pH ℃ 時刻

2 03T↑0201 小 馬 0,002 8.21 0.00 2.36 3.11 12.02 0,078 6.23 0.00 3.37 26.62 62.00 8.59 13.4 12:13 3 031]0202 中込 野沢橋 0,000 5.57 0.06 1.44 2.87 9.53 0,054 4.78 0.00 5.69 11.48 41.47 8.22 13.} †3:40 4 03110203 小諸 戻り橋 0,003 14.08 0.0? 2.80 8.34 21.49 0,054 16.47 0.00 6.89 27.82 98.0〈 9.15 13.8 |4:55 6 03110204 上田 上田橋 0,003 12.84 0.03 2.19 5.20 15.66 D.058 14.OG 0.DD 5.33 23.46 78.79 9.89 13.7 15:50 7 03110301 屋代 千曲橋 0,003 11.71 0.07 2.33 5.76 |5.97 D,040 12.38 D.00 6.33 21.64 76.22 ?.43 ∼2.5 9.19 9 03110302 飯山 綱切橋 0,ひD9 14.44 0.|0 2.43 424 ↑5.96 巳.〒05 15.94 D.OG 7.26 27.04 8フ.52 7.59 〒3.4 1’:32 ∼0 03110303 津南 信濃川橋 0,007 T2.05 0.03 2.08 3.54 13.80 0,063 !2.93 0.00 4.73 20.29 69.53 8.14 13.3 15DD 1] 03110401 川ロ 西倉橋 0,003 川.38 0.00 2.03 3.84 13.07 0,055 〒2.35 0.00 4.04 18.07 64.82 7.46 143 8:05 12 03η〔叫03 小千谷 旭橋 0,007 t2.09 002 2.03 3.44 13.22 0,053 12.98 0.00 4.9∫ 2D.97 69.71 7.69 13.6 9145 13 03刊0404 長岡 大手大橋 0,003 9.79 ODD 1.58 2.90 10.30 0,033 10.95 0.DD 3.29 15.52 54.37 7.57 13.9 ‘1:30 14 03†10405新潟〔甲ノロ川}信工川大橋 0,005 13.64 OD3 2.05 3.67 12.77 0,052 16.05 0.00 429 20.06 72.63 7.26 14.6 14 03】10406新渇(信湛川)信工川大橋 0,004 11.83 0.00 1.90 3.27 1141 OO36 1288 000 374 ヲ739 6244 フ19 143 15・50 曲川・一濃川2ひ06 2 ) ヒ学組成( m)

番号 試料No 裸水地点 橋 已 Na NH4 K Mg Ca F Cl NO2 NO3 SO4 Tot日1 PH ℃ 時刻

2 06022202 小 馬眺 一 5.10 0.03 1.05 2.84 10.65 0,000 6.52 0.00 8.88 13.69 48.75 7.39 5.| 11:3D 3 06022201 中込 野沢橋 一 5.29 0.05 1.14 2.95 10.74 0,000 7.58 0.00 6.93 11.23 45.91 7.47 5.8 9ゴ0 4 06022203 小諸 戻り橋 『 11.72 0.05 1.98 6.84 20.08 0,000 19.49 0.00 8.14 24.21 92.52 7.99 7.4 |2.55 6 06022204 上田 上田橋 一 11.11 0.07 1.8] 531 16.63 0,000 18.00 0.00 7.09 20.93 80.95 8.21 8.6 1生20 7 D602230† 屋代 千曲橋 一 12.05 0.D9 1.99 5.63 17.97 0,000 18.57 0.21 7.98 23.83 88.33 ア.33 6.7 9 D6022302 飯山 綱切橋 一 14.22 o.07 196 5.09 1887 0,089 19.82 0.24 7.90 3].5? 99.81 7.33 6.5 12:30 1D 06022401 津南 信濃川橋 一 8.66 0.00 129 3.00 12.54 0,000 13.39 0.00 4.38 20.64 83.91 7.40 5.3 1140 11 06022402 川ロ 西倉橋 一 10.13 0.00 ↑.43 3.68 ∼3.14 0,037 15.58 0.00 5.20 20.00 69.21 7.25 6.0 13:15 12 06022405 小千谷 旭橋 一 9フ6 o.03 1.24 3.45 1197 0,000 τ5.19 0.00 4.8↑ 18.59 65.04 7.18 6.0 16:40 13 06022404 長岡 大手大橋 一 9.57 0.05 1.23 3.12 10.86 C,000 1526 0.00 4.53 17.51 62.14 7.16 5.5 |5:17 ↑4 06022501 新潟〔中ノロ川信漕川大橋 一 10.37 o|2 136 3.31 11.18 0,000 】669 0.00 4.37 16.75 64.τ4 7.]3 54 14 06022502新潟(信濃川 信直川大橋 一 906 003 1†4 268 847 0000 1441 000 3フ0 1433 5382 698 54 ]1』45 千 川・ 9川(2DO6 4 〕 ヒ   ( ml

番号 試料No 採水地点 橋 ] Na NH4 K Mg c8 F CI NO2 NO3 SO4 To恒1 pH 1」C 時刻 1 06042304 川上 岳沢新田橋 一 2.11 0.06 0.97 1.39 7.01 003 2.14 000 6.43 4.62 24.76 7.48 9.7 14・03 2 06042302 小海 馬流橋 一 5.67 0.08 3.13 2.83 10.91 0.D9 6.41 0.00 2.95 2206 54.14 7.68 119 12:40 3 06042401 中込 野沢橋 一 3.75 012 1.85 2.29 8.70 0.D4 4.44 000 4.84 10.65 36.70 6.85 10.3 10.05 4 06042301 小諸 戻り橋 一 †0、↑6 013 363 6.80 1923 0.D5 15.26 0.DO 5.66 23.82 84.74 7.84 99 10.40 5 06042404 大屋 大屋橋   7.86 0.10 2.94 4.60 14.35 o.03 1121 0.38 516 1)59 64.23 7.95 12.2 ↑2125 6ア 06042406 上田 上田橋   716 0.06 2.68 3.82 12.35 0.05 10.01 0.19 4.49 1615 56.95 8.19 13.7 1525 06042501 屋代 千曲橋 } 838 D.02 2.91 4.02 13.06 0.04 11.63 0.32 5.34 19.02 54.73 5.98 9.9 9105 8 06042502 松代 千曲橋 一 9.04 0.07 3.20 4.3] 14.37 0.05 12.47 0.42 5.44 2|.51 70.87 ハ.12 9.8 ID:00 9 D6042507 飯山 綱切橋 一 8.52 0.08 2.56 3.30 T2.90 007 10.99 o.29 3.97 22.62 65.31 7.14 10.3 15.10 10 06D42508 津南 信濃川橋 一 5.11 0.10 1.65 2.02 8.12 0.05 7.20 0.00 3.03 12.75 40.02 7.26 7.5 17;50 11 06042601 川ロ 西倉橋 一 4.92 0.04 1.74 2.D6 736 004 7.32 0.00 2.80 1T49 3778 6.90 69 9:00 12 06042603 小千谷 旭橋 一 4.30 0.12 1.26 1.64 5.58 0.00 6.62 0.00 2.37 9.02 30.90 6.73 6.9 10:10 13 06042604 長岡 大手大橋 一 5.04 0.15 1.43 1.87 5.98 D.05 7.59 0.00 2.85 1176 3773 6.73 82 12.40 】4 06042605 新渇(中ノロ川 信漉川大橿 一 5.87 0.25 1.70 1.99 661 D.03 9.42 000 2.90 10.74 39.50 6.67 85 ↑6:30 14 06042606 新潟(信漠川 信濃川大橋 一 540 017 172 168 519 00, 825 ODO 244 9フ1 3456 652 91 15115 千曲川・ 測llの支流 化当  ( ml

番号 試料No 河川 採水地点 楕 Na NH4 K Mg Ca F C| NO2 NO3 SO4 Tot●1 pH ℃ 時刻 15 06042305 湯川 海尻 湯III 1197 o.ll 4.44 4.29 12.71 0.00 23.65 000 0.95 7]51 V2962 4.84 9.5 16135 1606042303 相木川 小海 相木III橋 316 o.13 1.46 2.26 ↑↑.40 0.05 3.80 000 3.24 10.41 35.92 フ.86 12.4 12「55 1706042402 滑津川 滑津 滑津橋 565 014 2.00 3.50 12.54 0.02 8.67 0.DO 4.93 旧.75 56.19 7.39 11.2 10:55

1806042403 湯川 北中込 1730 OD8 544 10.96 24.78 o.08 25.45 0.OO 3.81 4357 131.48 7.69 13 11二38 ]905042405 依田川 大屋 東郷橋 5.53 0.09 1.62 1.61 6.85 O.03 7.35 0.00 1.72 ]1.62 36.44 8.22 14.7 14二15 20 06042503 犀川 長野 丹波島橋 7.60 0.11 247 3.12 |310 O.|3 8.93 0.19 3.40 2023 59.29 6.98 1|.5 1030 21 06042504 裾花川 長野 裾花橋 4.5] 010 0.ga 1.94 6.58 0.00 3.90 0.00 1.88 11.62 3|.55 7.19 6.5 τ0:45 22 06042505 浅川 豊野 小瀬橋 1∼.89 0.2| 3.1D 5.8ア 20.07 0.03 1829 0.OO 2.83 23.01 85.31 7.io 97 1155 2306042506 烏居川 豊野 鳥居橋 7.75 0.03 2.00 2.31 7.79 000 14.72 O.OO 2.53 3.36 40.50 7.25 7.3 12:35 24 03090303 魚野川 川ロ 川口橋 0000 3.22 0.07 0.93 o.88 2.64 3.58 000 1.03 4.07 1642 7.30 201 13:25 24 03110402 魚野川 川口 川ロ橋 0,001 624 011 0.96 1.70 5.53 7.24 000 1.51 B27 3157 707 131 8’30 2406022403 魚野川 川ロ 川口橋 D.OOG 7.09 0.03 0.62 1.93 5.56 13.47 0.00 226 9.oo 39.96 7.02 5.0 13140 24 06042602 魚 川 川ロ 川ロ 3.22 014 0.86 117 374 000 528 000 182 528 215】 681 56 91|5

(6)

河川水中の水質,特に陰陽イオンから見た千曲川・信濃川流域の自然と環境  137 伴う水質変化が容易に分かるように図2にグラフ化した.グラフの横軸は採水地点を左か ら右に上流より順に配し,縦軸は各採水地点での河川水中のイオン濃度をppmで示した.  各採水時期毎に河川水のイオン濃度をppm単位で比較すると,2003年9月の採水では 全地点でほぼSO4》Ca>C1≧Na》Mg=NO3>K>NH4の関係があった.ただし新潟では Cl≧Na≧Caとなり,また小海と中込でNO3は高くなりClに近いか超えた.2003年11

月は9月とほぼ同じだが,小海でのNO3濃度はMg程に低くなる.2006年2月ではSO4

》Cl≧Ca》Na》NO3>Mg>K>NH4の関係となり,9月,11月に対しCl値はCaを超え, さらにNO3はMgより高くなるという違いがあった.2006年4月では3採水地点川上, 大屋,松代を新たに加えた.結果は最上流地点の川上ではSO4が極度に低く, NO3は高 い値を示したが,大屋,松代を含めて小海から新潟までは9月と11月の様子に類似した.  各成分別に下流に伴う濃度の変化は図3に示す.各成分毎に下流に伴う濃度変化の4回 平均をグラフ化すると,それらは全く重なるわけではないが,主成分となるSO4, Ca, Cl, Naはかなり類似した変化がみえる.またK Mgでも中込で濃度が減少し小諸で濃 度が高くなり上田で減少するなど共通するパターンがあった.NH4, NO3は中込で減少の ない異なるパターンを示し,また採水時期による違いが大きかった. 3.2 千曲川・信濃川の支流のクラスター分析と因子分析 採水した千曲川・信濃川の支流の水質は表1に示した.これら10河川についてNa, 千曲川・信濃川2003.9.2−3

050ロ∨OC∨03り﹂211

一◆−Na

+NH4

 K

→←Mg →←Ca +Cl −←−NO3 −■−rO4 千曲川・信濃川2003.11.2−4

050505︵U

︵d221’ー

一◆−Na

+NH4

 K

→←Mg

十Ca

−●−Cl −+−NO3 −一一rO4 小海  小諸  屋代  津南  小千谷  新潟 小海  屋代 小千谷 千曲川・信濃川2006.2.22−25

50505050

33り乙211

小海  小諸  屋代  津南  小千谷 新潟

+Na

−■トNH4

 K

→←Mg

+Ca

−◆−Cl 一トーNO3

−SO4

千曲川・信濃川2006.4.23−26

05050﹁∨O

nd2211

川上大屋飯山長岡 一◆−Na

+NH4

 K

→←Mg

+Ca

+Cl

−←−NO3 −−rO4 図2 千曲川・信濃川の下流に伴う陰陽イオン濃度の変化   横軸はいずれも表1の採水地点順となる.

(7)

138 西 山  勉       千曲川・信濃川 Nall

乍6      ‘=:c漂4

計         苗222.25

 志雫♪爾騨《き鯵縛

      千曲川・信濃川 NH4 1:;:〉

 wや夕鰯⑭㌣鯵齪

一◆一’039.2−3 +’03112−4  ’06.222−25 +’06423−26       千曲川・信濃川 Kgi9

τ19      =器!1;14

 w雫♪窃弾障鯵縛

      千曲川・信濃川 Mg 82:: ;::

 志や躍鰺㌣帰縛

+‘03.9.2−3 +’03.t1.2−4  ℃6222−25 −)F’O6.4.23−26       千曲川・信濃川 Ca;:        +dO3.92−3

81:     +:㌶:15

 謙や㌢嫡注《叉禽争

      千曲川・信濃川 Cl

il

81:  :

 w雫㌢嫡⑭櫓鯵弾

+シ03.92−3 +’O3.11.2−4  ’062,22−25 −→←一’O6.4.23−26 1:

91

 : 千曲川・信濃川 NO3 小海 小諸 屋代 津南小千谷新潟 +’03,9、2−3 +℃3112−4  ’062.22−25 −x−’O6423−26       千曲川・信濃川 SO4 1;・ 宅 ;1 3㍑  言

 wや躍弾苓勅縛

‘+’03.92−3 −■卜一’03.112−4  ℃6.2,22−25 −x−’064,23−26 図3 千曲川・信濃川の各陰陽イオンの下流に伴う濃度の変化 N且4,KMg, Ca, Cl, NO3, SO4の主要8成分を用いてクラスター分析と因子分析を行っ た.クラスター分析ではクラスター化が最適となるように市街地距離を試料間距離とし, 群平均法にて行った(西山,1992).結果はデンドログラムとして図4に示したが,二つ の湯川は他の支流と大きく異なり,また浅川が次に分岐された.  湯川(海尻)は河床が赤焼けをした河川であり,pH4.84と酸性で,主要8成分の濃度 の総和は129.6ppmと10河川中2番目に高い. Na/Cl値は0.51と測定した支流中で最も 低かった.また湯川(北中込)は汚れが感じられる河川であり,濁りもあった.8成分の 濃度の総和は131.4ppmと最も高い河川であった.浅川は黄褐色の汚れのある河川水で, 8成分の濃度の総和は85.3ppmと3番目に高い河川である.  因子分析の結果は表2に,相関行列の固有値と寄与率の大きな説明因子の固有ベクトル

(8)

河川水中の水質,特に陰陽イオンから見た千曲川・信濃川流域の自然と環境  139 9 8 7 6 5 4 3 2 1

        ‖§‖§§§8涜雪塑

       海  北        尻  中        )  込 図4 千曲川・信濃川支流について河川水の化学成分を用いたクラスター分析によるデンドログアム        縦軸は異なりの程度で、高いほど類似度が低いことを示す. そして各河川の因子の得点を示した.相関行列の固有値に4つの寄与率の高い固有値があ り,その固有ベクトルは第1因子;Na;1.01, K;O.96, Cl;0.95, Ma;0.88, Ca;0.83, SO4;0.76,第2因子;NO3;0.84, Mg;0.51, Ca;O.51,第3因子;NH4;0.86, Ca;0.26, 第4因子;SO4;O.47, K;0.29となった.各河川の因子の得点から第1因子の高い河川 は湯川(北中込)と湯川(海尻)そして浅川であった.第1因子のマイナスとして大きかっ た河川は相木川,魚野川そして裾花川であった.第2因子では相木川,湯川(北中込)そ して滑津川であった.第2因子のマイナスの大きかった河川は湯川(海尻),裾花川,魚 野川そして依田川であった.第3因子では浅川,相木川そして裾花川であり,マイナスの 大きいのは鳥居川,湯川(北中込),依田川そして犀川であった.第4因子では相木川, 湯川(海尻)そして魚野川であり,マイナスの大きいのは裾花川,浅川そして鳥居川であっ た.  3.3 千曲川・信濃川の河川水の下流に伴う水質変化にみる自然と環境  3.1で見たように千曲川・信濃川の小海より新潟までの下流に伴う水質変化は各イオン 間の濃度関係だけでなく,異なる採水時期でも類似するパターンを示すイオンが多い.た とえばイオン濃度が中込で低く小諸で高くなること,また飯山で高く津南から川口で低く なることなどである.西山(2004)は,河川水の水質が下流に伴い変化する様子について, イオン濃度を直接用いず,濃度の順位関係を基に平均順位数を定義して,一般的に整理す る方法を示した.すなわち試料数をmとしてn成分について各成分で濃度の低い試料か ら高い試料へと順に順位を1,2,3,_,mと与えたとき,河川水Aのn成分について与 えられた順位数の和を河川水Aの総順位数とし,その和を成分数nで割った値を河川水 Aの平均順位数とすると,平均順位数は1からmの間に入る.平均順位数が大きい試料 ほど高い濃度のイオン種が多いことを示すこととなる.

(9)

140 西 山  勉

表2 千曲川・信濃川支流の因子分析

(A)相関行列の固有値

 5.122    1.276 0.733 0」89 0.036 一〇.008   −O.Ol4   −0.025

(B)寄与率の大きい説明因子の固有ベクトル

変数 a(1) a(2) a(3) a(4) Communanties

Na

tO11 0,067 一〇.040 一〇.077 1,024

NH4

一〇.018 0,090 0,860 0,013 0,749 K 0,963 0,106 一α063 0,291 1,027

Mg

0,883 0,394 0,034 一〇.003 0,936

Ca

0,826 0,505 0,254 0,022 1,002 Cl 0,952 一〇.074 一〇.071 0,094 0,926

NO3

0,051 0,839 0,081 一〇.042 0,715

SO4

0,762 一〇.251 0,093 0,474 0,877 (C)各支流の因子の得点 番号 言濃川 流 因子(1) 因子(2) 因子(3) 因子(4) 15 湯川(o尻)

tO39

一1.634 0,171

t630

16 相木川 一1.517 1,828 0,736 2,371 17 滑津川 一〇.487 0,744

0410

一〇」64 18 湯川(北中込) 1,891

t258

一〇.871 0,343 19 依田川 一〇.342 一〇.576 一〇.814 0,327 20 犀川 0,379 0,071 一〇.485 一〇.009 21 裾花川 一〇.637 一〇.832 0,626 一2.815 22 浅川 0,915 0,065 2,027 一1.594 23 鳥居川 一〇.239 一〇」68 一1.379 一1.033 24 魚野川 一tOO1 一〇.756 一〇.421 0,945  各採水時にみられた千曲川・信濃川の下流に伴う平均順位数の変化の様子を図5(A) に示した.4回の採水時期のいずれも平均順位数は中込《小諸〉上田の関係があり,また 小諸から飯山までと津南から新潟までとは平均順位数の変化する様子(パターン)が異な るようで,前者で下流に伴い高く,後者で下流に伴い低くなる関係が認められる.さらに 小海,小千谷では採水時期による平均順位数の変化が大きい.そこで図5(B)に4回の 異なる採水時期での平均順位数の平均を取ってグラフ化した.図5(B)と採水地点の多 い図5(A)中の4月のグラフを基にして千曲川・信濃川の下流に伴う水質変化の全体像 を見ると,次のような3つの区間に整理できそうである.まず上流域の川上から小諸まで が下流に伴い平均順位数が増加する区域,つぎが小諸から飯山まで平均順位数が変動はあ るが高いままに保たれる区域,そして飯山から下流では下流に伴い平均順位数が低下する 区域である.そこでこれら3区域について順にそれら区域の流域での自然と環境について 考察を進める.  川上から小諸にかけての流域は千曲川の上流部にあたり,秩父山地から流れ出た千曲川 が佐久盆地に入り,小諸が佐久盆地の出口部に位置する.この流域は西に蓼科山(2530m) から八ヶ岳連峰(赤岳,2899m),南に瑞暗山(2230m)・金峰山(2595m)・国師岳(2592m)・ 甲武信ヶ岳(2483m)と連なる秩父山地,東に三国山(1828m)・御座山(2112m)・荒船

(10)

河川水中の水質,特に陰陽イオンから見た千曲川・信濃川流域の自然と環境  (A)

        千曲川・信濃川 平均順位数

12 P0

W6420

 無坦巫=宴時

642086420

  蒸担堅珂肝

12 P0

W6420

 蒸担些=珂時

\.

志榊〆ず議《ξ

   友彦 平均順位数,

♪講

+2003.9

+2003.11

  2006.2   2006.4 千曲川・信濃川 2006.4

ぷ謙雫浮〆ず譜舗《寒欠晴講

千曲川・信濃川平均順位数の4時期の平均

き詑当タず’穿せ反彦〆講

図5 千曲川・信濃川の平均順位数(A)と平均順位数の4時期の平均(B) 141

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142 西 山  勉 山(1423m)・鼻曲山(1654m)そして浅間山(2542m)・■帽子岳(2066m)へとつなが る関東山地に囲まれている.千曲川の川上より上流の最上流部は梓川とも言われ秩父山地 に水源がある.水源地となる甲武信岳・金峰山の連峰は花闇岩類からなり,続く千曲川の 流域は秩父帯南帯の中古生層が小海付近まで分布している.以降の地質関係の記述は主に 長野県の流域については長野県地質図(編集長野県地学会)および20萬分1長野県地質 図説明書改訂版(長野県地質学会編著,1962),また新潟県の流域については新潟県地質 図(2000年版)および新潟県地質図説明書(2000年版)(新潟県,平成12年3月)を参 考にした.千曲川は花闇岩地帯から中古生層地帯へと流れることから,下流に伴いイオン 濃度は低いが若干高まることが予想できる.2006年4月の川上でのSO4が4.62ppmと他 採水地点比べ低いことは川上流域の千曲川がそのような地質環境を反映しているのだろ う.だがNO3は6.43ppmと下流の小海の2.95ppmより倍以上の値となり,平均順位数が 川上で1ではなく3.3となった一つの要因である.川上での千曲川流域は川上村に等しく, その総土地面積に対する森林の割合は,表3に示したが,85%,耕地は9%である.耕地 (1870ha)の74%がレタス栽培(平成10年:「長野県農林業市町村別統計書」)となる. レタスの栽培は4月から始まるようで施肥もあり,また耕地での残留窒素成分が雪解け水 の畑地・土壌への浸透・下流により河川水への溶出もあろうから,NO3が高くなる要因 の一つとなろう.人口密度は0.23人/haでありその影響は少ないかと思われる.  川上から小海で4月の平均順位数はいきなり7.8に上がる.小海を最上流とした平均順 位数で小海は1ではなく5.2であり,小海で多種のイオン濃度が高いことが分かり,事実 表1の分析結果でSO4, Ca, NO3は下流の水質に比べてかなり高い値となっている. JR 小海線の海尻駅近くで河床が赤焼けした河川を過る.支流の湯川であり,西方に位置する 八ヶ岳の硫黄岳(2760m)一根石岳(2603m)の東部を水源とする河川で,上流には日本最 高所にある野天風呂(2100m)として知られる本沢温泉がある.湯川の水質は先節で述べ たがpH4.84と酸性で, Na 1197ppp, K 4.44ppm, C123.71ppm, SO471.51ppmと高く,火 山(温泉など)の影響を強く受けた河川で,今回採水した10支流での平均順位数7.4で3 番目に高い値を示した.その河川水の混入は小海で千曲川のSO、を高くし,平均順位数 を上げる要因の1つとなろう.  小海から中込で平均順位数は少し低くなる.この低下は小海と中込の間に流入する相木 川によるようだ.相木川は南相木村を水源とし,小海の採水地点より500m下流で千曲川 に流入する.相木川は10支流中での平均順位数は3.9と比較的低い.表1にみるように 小海での千曲川に比べ相木川のイオン濃度が低く,またその流域も比較的広く千曲川の水 質に影響しよう.合流前後でのNaとClの濃度変化から両河川の混合比率を求めると相 木川:千曲川=3.24,3.09とそれぞれなり,平均で3.17となる.合流後の水質は中込での 河川水であり,その間に相木川以外に大石川,抜井川などの合流がある.それら河川が相 木川と類似する水質ならば,支流からの流入で千曲川の水量は小海から中込までに4倍と なり,平均順位数は支流の合流による希釈効果で下がったと説明できよう.  小海から中込間の環境変化は人口密度でみると0.29から0.40人/haとやや増加し,林 野面積は81から82%,耕地面積は11から9%と大きな変化はないが,耕地に占める田の 割合が川上で3%であったのが小海から中込で6%から18%に増加し,牧草地の割合も川

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河川水中の水質,特に陰陽イオンから見た千曲川・信濃川流域の自然と環境 143 上の5%が19%から15%と増加している(表3).この流域は山地から佐久盆地へと移行し, 水田も増えはじめ,自然環境への人的影響が増しつつある地帯と理解できる.  なお,相木川は上流で南相木川と栗生川に分岐し,その南相木川上流に南相木ダム (1532m)が最近完成している.ダム湖である奥三川湖は2005年9月28日に満水した. 南相木ダムは利根川水系神流川の最上流部の上野ダム(群馬県上野村)と地下トンネルで 結ばれる揚水式発電の上部ダムとなり,その最大出力282万Kwは国内最大で,平成17

年12月に1号機47万Kwが運転開始するようだ(財団法人日本ダム協会のHP,

2006.10.2検索).このことは信濃川と利根川の河川水が相互交換されることであり,河川 の地域特性とその水質に人が大きくかかわる事例の1つとなる.  小諸での平均順位数は10.3と極めて高い値を示し,それは今回の信濃川全採水地点中 の最高値となる.中込から小諸にかけて千曲川の流域を見ると,千曲川西側よりも東側で 流域面積は広い.西側流域は巾8−4㎞に中新世の小諸層群と火山灰と火山砕屑物が分布 している.東側は群馬県との県境となる荒船山・ノK風山(1315m)までの巾16−14㎞の 流域とさらに北側に鼻曲山まで進み西に転じて浅間山に至り,浅間山から南南東に下って 小諸で囲まれた丁度北佐久郡の全体となる.東側の前者はほぼ滑津川の流域に当たり,そ こには礫岩・砂岩及び粘板岩からなる古第三系の北相木層と固結度の高い泥質岩からなる 新第三系の内山層および新第三系の緑色凝灰岩と紫蘇輝石安山岩が分布している.また後 者は岩屋で千曲川と合流する湯川の流域で北佐久郡全体の20万haであり,活火山であ る浅間山と鼻曲山は両輝石安山岩からなり,その裾野は広く火山灰と火山砕屑物が分布し, 温泉もみられ,全体に火山活動と関係する地域である.最近では2004年9月1日に比較 的大きな浅間山の噴火があり,火口から約2㎞の範囲に火山弾が飛散し,火山灰は北軽 井沢,中之条,沼田,郡山,さらに大平洋岸の相馬市にまで降った.浅間山は現在日本で 最も噴火の危険性のある火山の一つである.  滑津での滑津川は河床が黒ずみ,その河川水の平均順位数は10支流中で6.6とやや高 かった.また北中込で採水した湯川は現在も活動中の浅間山火山とその安山岩質火山噴出 物が堆積する地域を流れ,小瀬,星野などの温泉もあり,その河川水に可溶性成分が多い ことが推測できる.先節で述べたが,湯川は今回採水した10支流で最も高い平均順位数 8.8を示した.  小諸流域の人口密度は表3に示したが1.26人/haと中込までの3倍と増し,林野面積 は73%で9%減少し,耕地面積は9%であるが,その内の田の割合は39%と倍増している. 佐久盆地に入ると土地利用が変わり,またヒトの活動が増すことが分かる.工業活動の目 安として製造品出荷額を総土地面積で除して製造出荷額等の程度としてみると中込での 0.24百万円/haが小諸では2.89百万円/haと1ケタ以上に増加する.このように小諸で は人口,土地利用,工業活動の増加が,先に述べた活火山浅間山の流域という自然環境に よる平均順位数の高まりを,さらに押し上げたと考えられる.また湯川上流は避暑地とし て有名で年間800万人の観光客が訪れるという軽井沢であり,また小諸も訪れる人の多い 観光都市であり,このことも千曲川の水質に負荷をかけていよう.  次に小諸から飯山にかけての千曲川について考察する.小諸で高くなった平均順位数は 上田で若干低下する.それは大屋で南から合流する依田川に因る様だ.合流地点近くの東

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144 西 山  勉 表3 千曲川・信濃川流域の人口密度、土地利用率、および製造出荷等の程度 (A) 流域 総人ロ i人) 総土地面 マ(ha) 可住地面 マ(ha)  市計画 謌譁ハ積 @(ha) 市街化区 譁ハ積 @(ha) 耕地面積 @(ha) 林野面積

@(ha) 田(ha) 畑(ha)

普通畑 iha) 樹園地 iha) 牧草地 iha)     製 品出作付延べ     荷額等面積(ha)    (百万円) 備考 川上 4908 20961 3060 1870 17901 47 1820 1730 一 93 3320    373 小 |1,429 39981 7.46 1,804 0 4,308 32,520 268 4,040 3282 1 762 6,311 5566 ). 相木川 14,038 52,2↑0 8870 1804 0 4793 43340 350 4443 3β85 1 762 6810 5795 込 30,640 76732 13736 3,608 o 6,591 62996 1204 5385 4,503 77 809 8,300 18609 小’ ‡83328 145,547 39409 29,649 0 16,010 106138 6,259 9754 8,182 517 1062 16839 420178 3 上田 298β00 184,762 53762 45245 0 21,605 131,001 9099 12,517 10,D78 1123 1319 21,569 799984 4 田川 33705] 214,387 62,22B 501〕2 0 25071 152160 ‘0,784 14298 11,318 1,448 f533 2424寸 912340 .5, 屋代 506,651 265044 78,493 70,272 0 30β20 186,551 13650 |6,984 12,594 2,635 1756 29121 1540299 6 犀川 982,321 5202f9 151,332 142,961 5,202 55982 368550 30211 25811 18,556 5,217 2,035 52318 248808] 公て 982,321 520,219 151,332 142,961 5202 55982 368,550 30211 25,811 18556 5217 2,035 52,318 2488081 飯山 |,521,894 68f,003 205,787 206,102 12200 74,983 474436 35,908 39128 23634 13139 2,272 68542 2775097 8‘ 津 1,573,464 736,627 22604B 20a405 12200 83,603 534,312 40976 42,670 26,736 13235 2625 68542 2834040 川ロ川 1β38,497 795834 245」15 227950 12,200 91,083 574452 47,526 43587 27562 13,280 2,671 68,542 2842347 1,758,505 984,709 284829 288ρ43 12200 101775 723β13 57197 44613 28,484 13,329 2726 68,542 2978994 小千谷 1,800,146 1,000,22f 293,597 297,950 12,200 105,235 730357 60,167 45τ11 28938 13332 2,767 68542 3書38325 長岡 1.943716 ’.042265 31510苛 313,849 14496 114535 750,898 68667 45876 29,628 13370 2805 68,542 3774378 紅9. 潟 1↓,小海市丁一タは1/2 ②小海       のアータは1/2③小’市のアーターは1/2 D旧武石村,旧丸子町,旧真田町のデーターを欠き,旧北御牧村のデーターが入る⑥上田市のデーターは1/2 G製造品出荷額等に長野市のデータ含まず⑨長岡市のデーターは↑/2 ④旧望月町,旧北御 村のアータを欠き,小諸市と上田市のアーターはそ   1/2 @       ⑦製造品出荷額等に松本市、大町市のデータ含まず 「平成17年度国勢調査全国・都道府県・市区町村別人ロ(要計表にる人ロ)」(財団法人日本統計協会、2006D及び「わがマチ・わがムラー市町村の姿一ICインターネット.2006.91検索)を加工 (B) 流域 人口 i人/ha) 可  面 マ㈹   哀画謌譁ハ積  H区譁ハ積㈲   面   面 面 製造畠辻荷口尋の 田(旬 畑㈲ 通畑㈲ 園地㈲ 地(旬  、 べ ハ積(勤 程厘’百万円h垣. 備考 川上 0.23 1460 0.00 0.00 8.92 85.40 2.51 97.33 9505 一 511 1584 0.02 小 0.29 18.66 4.51 0.00 10.78 81.34 6.21 93.77 81.24 0.01 18.85 15.78 0.14 ﹁1 相木川 027 16.99 3.46 000 9.零8 83.01 7.29 92.69 8294 0.01 1714 13.04 0.i1 込 040 1790 4.70 0.00 8.59 82.10 18.27 81.70 83.62 143 15.02 10.82 0.24 / 「 小’ 126 27.08 20.37 0.00 11.00 7292 39.09 60.92 83.88 5.30 10.88 11.57 2.89 ‘3 上田 }.61 29.10 24.49 000 1169 70.90 42.12 57.94 80.51 897 10.54 11.67 4.33 「4 田川 157 2903 23.37 0.00 11.69 7097 43.01 57.03 79.16 10.13 10.72 1131 4.26 屋代 1.91 2962 26.51 0.00 11.55 70.38 44.58 55.47 74.15 15.51 10.34 10.99 5.81 6, 犀川 189 29.09 27.48 1.00 10.76 7085 53.97 46.11 71.89 20.2] 7.88 10.06 4.78 、 公代山 1B9 29.09 27.48 1.00 10.76 70.85 53.97 46.11 7].89 20.21 7.88 10.06 4.78 2.23 30.22 30.26 179 ]1.01 6967 47.89 52.18 60.40 33.58 5.81 10.06 4.08 ‘8 津 2.14 3069 28.29 1.66 1ま35 72.53 49.01 5104 62.66 31.02 615 9.30 3.85 川ロ 2.06 30.80 2864 153 1144 72.|8 52.18 47.85 6323 30.47 6.t3 8.61 357 魚 川 1.79 28.93 29.25 1.24 10.34 73.48 5620 43.83 63.85 29.88 6、n 6.96 3.03 小午谷 180 2935 29.79 1.22 10.52 73.02 5717 42.87 64.15 29.55 6.13 6.85 3.14 長岡 1.86 30.23 30.11 139 1099 72.04 59.95 4005 64.58 29.14 611 6.5B 3.62 9 潟 ・1小海市アータはレ2②小 D旧武石村,旧丸子町,旧真田町のデーターを欠き, G製造品出荷額等に長野市のデータ含まず 市の丁一タは1/2③小諸市のアーターは1/2④旧 @     ⑨長岡市のデーターはレ2       月町,旧北御牧・の丁一タを き,小諸市と上田市のアーターはそれ 喧k御牧村のデーターが入る⑥上田市のデーターは1/2⑦製造晶出荷額等に松本市、大町市のデータ含まず れ1/2 「平成17年度国勢調査全国・都道府県・市区町村別人ロ(要計表にる人口)」(財団法人日本統計協会20061)及び「わがマチ・わがムラー市町村の姿一」(インターネVト,2006.9.1検索)を加工 郷橋で依田川の水質は清流であって,支流10河川で平均順位数3.4と3番目に低く,ま たNO3は最も低く1.72ppmであった.依田川の流域は大屋から南に蓼科山そして霧が峰(車 山),三峰山,茶臼山,美ヶ原,王ヶ頭,武石峰と2000mほどの山々が連なる筑摩山地か ら大明神岳(1232m),独鈷山(1266m)を経て大屋方向に閉じる.流域は両輝石安山岩, 石英閃緑岩一花闇閃緑岩,緑色凝灰岩それと下流部流域に新第三系の地層が分布する.な お流域は旧小県郡の南部地域と全く重なったが,現在は最近の市町村合併で誕生した長和 町と上田市の一部になり,流域と行政区割り (地名)は一致していない.河川流域と市町 村の境界との変遷は,人の河川とのかかわり,自然と人の生活・社会との関係を考察する 際に重要な内容をもつだろう.最近の市町村合併では行政区割りが流域境界からずれる例 が多いようで,先の例以外にも信濃川流域でもあり(表3の備考に一部見られる),人の 生活にとって河川の存在感が希薄化して行くひとつの現われなのだろう.  理科年表(2006年版)によると長野の年間降水量901.2mm(1971−2000年平均値)は 網走の801.9mmに次いで日本で降水量の少ない地域となる.なお支流犀川の流域にある 松本は1018.5㎜で帯広の920.4mmに次いで4翻に少ない.小諸から長野の千曲川西 側の筑摩山地にかけては特に降水が少なく,依田川は降水量の少ない地域を流れる.依田 川は4月の測定でpHは8.22とアルカリ性である.山田で千曲川は9月,11月,2月,4 月でpHが8.95,8.89,8.21,8.19といずれも高い.これは依田川のpHが高いことと関 係しよう.また降水量が少ないことはイオンの濃縮度を上げる.このように依田川の水質

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河川水中の水質,特に陰陽イオンから見た千曲川・信濃川流域の自然と環境 145 は流域の降水量が少ないという特異な自然環境を反映し,その環境を千曲川に伝えたと理 解できよう.ただ,活火山の浅間山が千曲川に及ぼした平均順位数を引き上げた力に対し て,降水量の少ない地域の特質が依田川に与えた力が弱かった結果として,上田で平均順 位数が下がることになったようだ.なお,支流10河川の因子分析で依田川は第1;−0.34, 第2;−0.58,第3;−0.81,第4;0.33となり,魚野川と同じ正負の因子関係にあり,浅川 の因子とは符号が全く異なり,魚野川とは類似関係にあり,浅川とは異種の関係となるよ うだ.  上田盆地で千曲川の西北側にある上田市の旧市街地周辺は河岸段丘がよく発達し,また 南西側では塩田平の隆起扇状地と千曲川の氾濫原がある.隆起地で乾燥地でもある塩田平 では農業用水の確保にため池が灌慨用に多く作られている.  上田盆地からの千曲川の出口は断崖地形で,北側は塩尻の塩尻岩鼻そして南側は半過の 半過岩鼻が850mほどに狭まる.その出口を千曲川は流れまた風が流れる.2006年4月 24日の大屋・大屋橋上は立つのがやっとという強風だった.大屋から犀川との合流地点(長 野市)にかけては川風の強風地帯で,特に上田市の塩尻は川風が強く,養蚕業にとって悩 みとなるきょう蛆(ウジバエ)害を避ける歩桑の生産に適し,江戸中期以降の蚕種製造の 先進地となったという (市川,2005).今日の上田市の経済的基礎につながる千曲川の風 を体感したことになる.  屋代で平均順位数が高いのは,支流による希釈効果が働かないことによるようだ.また 上田市の人口16.6万人による人的活動も千曲川の平均順位数を高める影響を与えるよう だ.屋代での人口密度は1.91/haとなり,林野面積は70%,耕地12%の内45%が田となる. また製造出荷額等の程度をみると小諸での2.89百万円/haが屋代では5.81百万円/haと なりほほ倍の工業活動となり,水質への負荷が加わろう.  上田から屋代にかけては断層崖をもつ幅広な谷があり,その平地に戸倉・上山田温泉が ある.泉質は単純硫黄泉で,明治中期から開け現在旅館・ホテル数,規模とも長野県下一 といわれ,千曲川への影響はSO4の増加など,松代で平均順位数を上げる要因の1つと なる.  屋代手前あたりから千曲川の流れは90°右旋し,長野盆地に入り大きく蛇行しながら北 東方向へと進む.長野盆地内で長野市市街地の南東方向5㎞先で支流の犀川が勅より 合流する.長野市街地の3kmほど南の丹波島橋力・らみる犀川は,その南5㎞ほどの松 代大橋から見る合流しようとする千曲川よりも水量があり,河川敷が広く,犀川が本流か と思うほどだが,合流後の河川名は千曲川である.犀川の流域面積は3055㎞2であり, 合流前の千曲川流域より広いといわれる.同じような観察は福島県南部の棚倉町近くの久 慈川とその支流川上川にて経験した(西山,1995).  犀川の水質は丹波島橋でpH6.98と弱酸1生であり, SO4は20.23ppmと高い.調査した 支流10河川で犀川は平均順位数6.6と滑津川と同程度の比較的高いイオン濃度であった. しかし犀川の合流で千曲川の平均順位数は下流の飯山で少し下がった(図6(A),4月). 合流前後のNaとClの濃度変化から両河川の混合比を単純に求めると0.57,0.71平均0.64 となり,千曲川1に対し犀川の河川水が0.64の割合となり,千曲川で水量が多い,先と は逆の結果となった.河川水は覆流水・地下水との交換混合や,先節で述べた浅川のよう

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146 西 山  勉 (A) 千曲川・信濃川 (Na/Cl)  1.4  1.2 a1・O go・8 ぎ o・6  0.4  0.2  0.0 〉 ’ │1 〉  ’ 吟 ÷ ÷ 真ン @び ス㍉ ’ ’ 、  ・ム∨、 一 一  「一〉 @ 一 鼈鼇h .一一・ 〉 1 一・’} 一、、 一 ・ ’ ← 一一 吼 ’1 ’ ’、 @     〔 一 亡 、已 ン @、o’< 小海 上田 津南 長岡 ‘+’03.9.2−3 −■F−’03.11.2−4   ’06.2.22−25 −→←一℃6.4.23−26 (B) 千曲川・信濃川支流 Na/Cl 2006.4  1.4  1.2  1.0 ミo・8 芝o.6  0.4  0.2  0.0

湯川A

滑津川 依田川 裾花川 鳥居川 (C) 千曲川・信濃川ion/Clに対する平均順位数の4時期平均       ll      き・      tL 2      じト2        0          小海   小諸   屋代   津南  小千谷  新潟 図6 千曲川・信濃川のNa/Cl値(A)と支流のNa/C1値(B)および千曲川・信濃川のion/CI平均順位   数の4時期平均(C)   横軸はいずれも表1の採水地点順((B)は河川順)となる.

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河川水中の水質,特に陰陽イオンから見た千曲川・信濃川流域の自然と環境  147 な特異な河川の合流など,新たな自然理解への展開がそこから開かれよう.  犀川には裾花川が丹波島橋の北側から合流する.4月にみた裾花川の河川水は特徴的な 黄褐色の泥濁流であった.ろ過後の河川水は10支流中2番目に低く平均順位数3.0であり, 泥濁水から想像するほどイオン濃度は高くない.東北地方青森県の平川で同様な体験をし た.「濁っている河川と濁りのない河川とでどちらが溶存イオンが多いかについて,直感 的には濁った河川で溶存イオンが多いと思えるが,ここ(平川・平川橋)では濁っている 流れの方で溶存イオンは少なかった.」(西山,2000).泥濁流の河川水は降水等による増 水の希釈効果,または表面電荷を持つ粘土粒子による吸着効果によって溶存陰陽イオンは 意外と低いのだろう.裾花川とその隣の土尻川流域には第三系の脆弱な泥岩,砂岩及び酸 性凝灰岩が分布し,長野県下でも有数の地すべりの発生地帯となる.泥岩・砂岩の互層で 硫化物を多く含む地層では地下水が強い酸性を示すという.裾花川の特徴的な泥濁流は流 域での積雪・融解・豪雨などに伴う土砂崩れや侵食作用による河川への土砂流入の常習性 を物語っているようだ.  北アルプス(飛騨山脈)の槍ケ岳(3180m)を水源とする犀川は,糸魚川一静岡構造線 に沿って大町市から塩肺にか1ナ南北50㎞以上に伸びた松本盆地内を流れて,盆地中央 の穂高町から北北東に向けて,直線距離35㎞ほどを蛇行しながら山地を削り,さらに 25㎞ほど西に向きを変えながら土励ll,裾花川流域へと進んで来る.  糸魚川一静岡構造線沿いの河川について調査した折,犀川水系となる中綱湖,木崎湖, 穂高川,高瀬川の水質を調べた.いずれも穂高町より北側で松本盆地内の河川水と構造湖 の湖水である.高瀬川ではi93.10.30,,94.11.10, t95.11.12の3回の平均値を示すと pH6.64, Li O.016, Na 7.19, NH40.06, K 2.13, Mg 1.14, Ca 14.13, F O.26, Cl8,40, NO35.04, SO414.02ppmであった(西山,1998).今回の長野市での犀川の分析値と比べると高瀬川 では酸性であり,Na, K Ca, Clの値は近いが, Mg, NO3, SO4は低いことが分かった.  犀川流域の人口密度は1.79人/ha,林野面積71%,耕地面積11%,その内田は54%, 製造品出荷等の程度4.78百万円/haである.千曲川の屋代下流域の様子に類似する.た だし犀川の製造品出荷等の程度には松本市と大町市の資料を欠いており,実際はこの値よ り高いだろう.千曲川(屋代)と犀川のイオン濃度を比較すると,千曲川に対して犀川の 濃度比は次の様になる.

2006年4月

Na

NH4

K

Mg

Ca

Cl

NO3

SO4

犀川/千曲川(屋代) 0.91 6.69 0.85 0.78 1.00 0.77 0.64 1.06  Na, Ca, SO4はほぼ等しく, K, Mg, Cl, NO3は犀川で低く,NH4は犀川で6倍以上 となった.両流域で人の活動が等しいとすれば,この差は地形・地質・気候・植生などの 差異が寄与することになる.  犀川の下流部の傾斜は1/4700だがそれを受け入れる千曲川は1/10000と倍ほどのゆる やかさでさらに北東に進み,豊野町にて流れを狭めて,蛇行を繰り返しながら,峡谷を刻 んで飯山方向に向かう.豊野にて浅川と鳥居川の採水をした.浅川は長野盆地の北西側を 流れる流路長20㎞ほどの河川であり,鳥居川は黒姫山(2005m)・戸隠山(19004m)と

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148 西 山  勉 飯縄山(1917m)の間を西に流れ出て,飯縄山を回るように南下して千曲川に合流する河 川である.  浅川の河川水は黄褐色を呈し,その平均順位数8.3は10河川の内2番目に高い.淺川 は長野盆地内を流れ,また長野市市街地近郊をも流れ,都市河川特有の汚れが感じられた. その水質は表1に示したようにNa, Cl濃度が高く,また図6(B)に示したようにNa/Cl 値は0.65と低い.0.65は食塩組成NaClのNa/Cl値に等しい.海水のNa/Cl値はO.55で ある.長野市の都市の人為的なかかわり,また採水場所近くに化学工業の建物があって工 業活動的関わりなど,2月の採水時に急に開かれた視界に入った白い雪山の遠望との対比 から,自然と環境そして人為的影響について浅川は意識させる.現左浅川は上流部でのダ ム建設の是非が話題となっている.  鳥居川は支流10河川中で平均順位数は4.4であった.Na/Clは0.53と支流の中で2番 目に低く海水の値に等しい.  犀川と合流した千曲川は大河となっている.浅川は平均順位数を高める水質だが採水時 の水量は極めて少なかった,鳥居川は平均順位数を低める水質だが,実際の飯山の総イオ ン数は増加していた.長野市と長野盆地からの関与と千曲川東岸の中野市からの負荷があ り、さらに志賀高原を源流とする河川は,角間川に熊の湯などが,横間川に地獄谷温泉, 渋温泉などがあり,両河川が合流した夜間瀬川には湯田中温泉などがあり,概して塩化物 泉だが硫化水素泉,含食塩一石膏泉,亡硝泉,単純泉などの温泉が加わり千曲川に入る. しかし,4月はまだ志賀高原に雪が残り,雪解け水は夜間瀬川を希釈している.飯山にて 松代より平均順位数が低くなっている.夜間瀬川がどの程度の影響を千曲川に与えるか興 味ある事項である.  飯山で流域の人口密度は2.23人/haと最も高くなり,それより下流流域では人口密度 は逆に減少する.林野面積は70%と最低となり,耕地面積は11%と下流域では変らないが, 田の割合は48%と若干増してさらに下流でその割合を増す.製造出荷額等の程度は長野 市のデータを欠いて4.08百万円/haであって,実際はもっと高いだろう.すなわち飯山 にて人の活動に伴う水質への負荷の現われが考えられ,平均順位数を高める要因の一つと なろう.  大屋から飯山にかけての2006年4月試料ではNO2が測定され,この区域の有機物汚染 の影響が他地区より強いことがうかがえる.  最後に飯山から新潟までの信濃川について考察する.  飯山から津南,十日町,川口,そして小千谷にかけては日本有数の豪雪地帯である.JR 飯山線は信濃川に沿って走るが長野県から新潟県に移る手前の森宮野原駅は鉄道駅での積 雪最深記録7m85cmを記録している.2月の調査時の森宮野原駅は積雪でその記念柱の記 録線に迫るほどであった.気象庁が2005−2006年の大雪を「平成18年豪雪」と「昭和38 年1月豪雪」から43年ぶりに命名をしたほどで,4月の調査時でも上信越高原国立公園 の山々は雪で白かった.飯山で酒酒と流れていた緑白色の10.3℃(15:10)の河川水は, 森宮野原駅から直線距離で7㎞ほど新i烏県に入った津南では激流に変りその水温は7.6℃ (17:50)と下がった.雪山からはまだ雪解けの冷たい水が盛んに信濃川に補給されたこ とが良く分かる.雪解け水は冷たく周囲の物質を溶解する力が低く,その流れは溶質が少

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河川水中の水質,特に陰陽イオンから見た千曲川・信濃川流域の自然と環境  149 なく,イオン濃度は低い.また雪山はダムのように長期にわたって貯水し信濃川のイオン 濃度を希釈する.飯山から津南で測定した全イオン種が4採水時期のいずれでもイオン濃 度は低下し,年間を通じての豪雪地帯の水環境がもたらす信濃川への影響の力強さが理解 できた.すなわち平均順位数が1以上実際には3.4もの差となった.その傾向は下流側の 採水地点の川口においても1.1,次に下流の小千谷でも引き続き0.1ほど平均順位数は下 がった、なお飯山から津南下流にかけての流域は南側に越後山脈に向かう上信越高原国立 公園の安山岩類の火成岩が分布する奥深い豪雪地帯があり,その豪雪地帯から樽川,池澤 川,釜川,中津川が,そして津南より下流では清津川が水を集めて信濃川へと流す.清津 川を過ぎると右岸の流域は魚沼丘陵により狭められ川口まで合流する大きな河川はない. 津南を通るあたりから信濃川は流れをゆっくりと北に向ける.北上する信濃川は川口で一 旦くびれて,東から流れ来る支流魚野川と合流する.  支流魚野川は豪雪地帯を後背地とする十日町盆地を流れる河川で,犀川に次ぐ大河でそ の流域面積は1504㎞2となる.犀川とイオンの濃度を比較すると,次の表にみられるよ うにNH4を除く全イオン種で魚野川は犀川の0.26−O.59倍と低い. 魚野川/犀川

Na

NH4

K

Mg

Ca

Cl

NO3

SO4

2006年4月

0.42 1.33 α35 0.37 0.29 0.59 0.54 0.26  魚野川のイオンの濃度を合流前の信濃川と比較すると次のようにNH4を除く全イオン で魚野川は信濃川の038−0.86倍と低い. 魚野川/信濃川

Na

NH4

K

Mg

Ca

Cl

NO3

SO4

2003年9月

Q003年11月

Q006年2月

Q006年4月

0.64 O.55 O.70 O.65 0.56

│−3.63

0.65 O.47 O.43 O.49 0.52 O.44 O.52 O.57 0.50 O.42 O.42 O.51 0.65 O.59 O.86 O.72 0.52 O.38 O.43 O.65 0.49 O.46 O.45 O.46  合流地点近くの川口で水温は9月に1.5℃,11月に1.2℃,2月に1.0℃,4月に1.3℃と いずれも魚野川で低く,またpHは9月では信濃川7.25,魚野川7.30,11月では7.46,7.07, 2月では7.25,7.02,4月では6.90,6.81と9月を除いていずれも魚野川で低かった.だ が魚野川が合流した小千谷での信濃川は,9月と11月で平均順位数が予想に反して小千 谷で川口より高かった.  川口から小千谷に掛けての流域は狭く,また流域は段丘堆積物の礫・砂・泥の堆積物と 鮮新世・更新性の泥岩・砂岩泥岩互層・黒色泥岩であり,流域の地質自体が信濃川の水質 を変えた要因とは考え難い.小千谷市市街地周辺からの人為的影響が考えられる.  9月の調査日は飯山から下流に移動中に激しい降水となり,津南での信濃川は泥濁流で あった.11月の採水時も津南にて降水があり,信濃川は濁った流れだった.そこで考え られるのは降水により増水した両河川水の合流で底床までかく乱されてイオン濃度が高く

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150 西 山  勉 なったのか.河岸段丘堆積物地帯の地下水の影響があったのか.9月・11月は2003年の 採水で,2月・4月は2006年の採水で,その間の2004年10月に新潟県中越地震があり, この地域では山腹の崩壊などが多数発生した.小千谷・旧山古志村には棚田を利用した錦 鯉の養魚場が多くあり,地震による被害が大きい.そのような地震によって生じた地形的・ 内部構造的変化がこの水質変化と関係したのか.加えて小千谷は越後平野が日本海に向 かって扇状に開くその要の位置にあり,信濃川は小千谷からその平野を流れていて,越後 平野の影響,また日本海からの影響がある.いずれにしても川口から小千谷で平均順位数 が高まる理由は今後も考察したい事項である. 小千谷から次の採水地点長岡まで18㎞{まどある.その間に渋海川が西方から流入する. 渋海川は東頸城丘陵の中を信濃川の日本海側に沿って流れる,森宮野原の北部に当たる旧 松之山町を上流域とする河川であり,この地帯も豪雪地帯であって,その流れは信濃川の 平均順位数が下げる働きをしよう.  長岡を過ぎた信濃川はそのまま筑後平野を北に向い,やがて分岐する.一方はそのまま に大河津分水路を通って新信濃川となって日本海に出る.他方は東に一旦向きを変え,さ らに2つの流れに分岐しながら北進する.中ノロ川は燕市を通り西側を,信濃川は三条市 を通り4−5㎞離れて東側を流れる.信濃川は途中で阿賀野川の分水を受けてから再び大 野にて中ノロ川と合流する.二つの流れは直線距離で28㎞ほどである.合流後信濃川は 新潟市の市街地を通って日本海に出る.新潟市での採水は合流手前の大野にて行った.  長岡から新潟で平均順位数は3.5から4.5に上がる.越後平野は穀倉地帯であり耕作な どの人的影響が加わることと,長岡市,三条市,燕市,加茂市,そして新潟市などの人的 影響を受けること,そして日本海に近づき海からの海水の影響を受けることなどが,新潟 でのイオン濃度を高めているだろう.新潟市大野の信濃川大橋にて中ノロ川と信濃川のイ オン濃度を比較すると信濃川の方でイオン濃度が常に低かった(表1).信濃川へ分水前 の新津で阿賀野川の化学組成(2006.6.3採水,図1中の採水地点番号25)を新潟大橋での 中ノロ川と信濃川(2006.4.24採水)と合わせ下に示したが,阿賀野川でいずれのイオン 種も濃度が低く,阿賀野川の合流が信濃川のイオン濃度を低めていることが分かる. 化学成分(ppm) 河川 採水場所

Na

NH4

K

Mg Ca

Cl

NO3

SO4

信濃川 ?mロ川 「賀野川 新潟市・信濃川大橋 V潟市・信濃川大橋 V津市・阿賀浦橋 5.40 T.87 R.17 0」7 O.25 O.03

t72

P.70 O.57 1.68 5.19 P.99 6.61 O.95 3.71 8.25 X.42 S.18 2.44

Q90

P.01 9.71 P0.74 U.63  河川水中の陰陽イオン濃度の平均順位数から千曲川・信濃川を3つの区域に分けてその 自然と環境について考察してきた.飯山から新潟の区域は飯山から小千谷と小千谷から新 潟とにさらに分けてもよいようだ.ここでの考察は川上から新潟間の14採水地点と,河 川水中の8種の陰陽イオン濃度が主な拠り所となる.西山(1994)は「自然の理解は自然 を切り刻んで,その個々について見てゆくことだという立場もある.自然理解における分 析的手法である.この場合,分析はあくまでも分析としての機能であって,分析する方向

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河川水中の水質,特に陰陽イオンから見た千曲川・信濃川流域の自然と環境  151 からは総合的認識には至らない.分析を総合に結びつけるには,選択という恣意行為にお いてである.このことは認識とは分類において要素の選択が不可欠であるという渡辺慧 (1978)の「醜い家鴨の仔の定理」が明らかにしている.」としたが,今回は平均1頂位数を 分析から総合に向けて意識して議論の中に据えた.もちろん14地点と8イオン種が選択 の始まりであり,その選択が千曲川・信濃川の自然と環境を理解するのことの恣意となっ た.選択する要素にかかわる構造と内容を既に自然は内包している存在であり歴史であり, さまざまな姿・様子として自然と環境は私達に認識されよう. Na/Cl値からみた自然と環境  小林(1960)は1944.4.28−1945.2.26にかけての信濃川の小千谷での水質をNa 6.4mg/1, Cl 5.4mg/1と測定している.今回の測定した平均値Na 8.09mg/1, Cl 10.39mg/1と比べる とClが今回で高い.その原因の一つに近年凍結防止に塩化物が使用されることが考えら れる.財団法人塩事業センターの機関紙「Salt21」によると,平成3年4月,スパイクタ イヤの使用が禁止されて以降,凍結防止剤の使用量は年々増大し,平成10−12年の融氷 雪用の塩(塩化物)消費量は年間250∼350千トンになるという.  日本の河川へのCl起源として菅原(1961)は(1)落下風送塩の洗い込,(2)岩石土壌 成分の溶出,(3)温泉鉱泉水の添加,(4)農業に使用の塩化物肥料,(5)家庭生活に使用 の食塩,(6)鉱工業に伴うNa及びCl化合物の廃棄を考慮した議論を行い,(3),(4),(5) の人的活動の廃棄物は145万トンのCl量とし,それは本邦河川へのCl供給の31%にな るとした.凍結防止剤としてエンカル(CaCl2・2H,O)を使用したとすると,平成12年 の年間消費量中のCl量は192千トンになる.凍結防止剤のCl量が全て河川水中に入ると, 本邦河川のC1濃度は4.1%増加することになる.千曲川・信濃川流域は寒冷地でありまた 豪雪地帯もある.したがって凍結防止剤の使用は全国平均より高いだろう.その影響は冬 季から春季にかけて現れると推測できる.千曲川・信濃川のNa/Cl値が図6(A)で見る ように2月と4月で9月と11月より低くなることは凍結防止剤の使用によるとしても矛 盾はないようだ.小諸より上流ではNa/Cl値が高くなり,その影響は上流で少ないようだ. 先の19441945年の小千谷での値は1.19であるが,今回のNa/Clの平均値は小海1.01, 小千谷O.79となり小海でも影響が現れることが分かった.Naは大地の成分でClは大地 の成分としては少ない.そこで大地の風化が夏に高まることから,9月と11月が2月と4 月より高いNa/Clの中にこの効果も働いているだろう.だが図3に示したようにNaは9 月で2月ほど高くない.  Naを含め主要イオンのCl比(ion/Cl)を求め,その値の平均順位数について4時期の 平均を縦軸とし,横軸に上流から下流の採水位置を配してグラフ化して図6(C)に示した. 図から上流から下流に向けて(ion/Cl)の平均順位数の4時期平均が下がることが分かる. このことは大きく見ると大地の岩質が風化で溶出される無機成分(ion)は上流から下流 に流れ,一方海水成分(Cl)は河口から上流に向け影響が及び.この両者の結果がここに 現れていると解釈できまいか.

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