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エージェントシミュレーションを用いた災害時の避難に関する研究文献レビュー

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Academic year: 2021

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(1)Vol.2018-IS-143 No.8 2018/3/6. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. エージェントシミュレーションを用いた 災害時の避難に関する研究文献レビュー 畑山満則†1 東日本大震災を受けて、低頻度ではあるが被害の大きい L2 災害の考え方が取り入れられた。L2 災害は、ハード対 策による安全の確保を無理に行わず、ソフト対策である避難で命を守ることとし、その被害に関しては国全体で取り 組むことを想定している。これにより避難計画の重要性が増し、計画を策定するための避難方策を検討するシミュレ ーションが積極的に行われるようになった。特に、人工知能の研究の1つの成果であるエージェント技術を用いた手 法を用いた検討が多く行われている。本発表では、このようなエージェントシミュレーションを用いた災害時に避難 に関する論文を体系的にレビューすることを目的とする。. 1. はじめに. することを試みた石田らの研究. 4)は、心理学の知見とエー. ジェントシミュレーションの親和性の良さを示す例となっ. 物理法則などの基本的な法則に還元して理解する要素. た。これ以前にも、群衆行動を取り扱うマイクロレベルの. 還元主義的なアプローチは、すべての現象を説明できる手. シミュレーションは存在したが、多くは人の動きを粒子の. 法ではなく、適応に限界がある。要素還元主義的なアプロ. 振る舞いと捉え、粒子同士の力学的インタラクションとし. ーチの適用が困難な系は、20 世紀後半のカオスの発見によ. て数理モデル化する手法がとられていたのに対して、石田. り複雑系(complex system)として体系化されることとなる。. らはでのこの研究において、プログラムにより人の行動を. 複雑系は、構成要素間の相互作用により全体として、なん. 規定する計算モデルによりエージェントを設計しており、. らかの性質(あるいはそういった性質から導かれる振る舞. さらに杉万らの実験結果を検証材料とすることで、行動モ. い)を見せる系であり、人間系を内包する社会システムも. デルの妥当性を示している。. その一つと考えられている。複雑系を取り扱う際の主要な. 別途行われた実験を再現するように人間行動をモデル. 課題の1つとしてシミュレーションの困難さが挙げられる. 化する手法は、以降も多くみられるが、さらにフィールド. が、その一つの実現手法として、1990 年代後半からエージ. ワークやサーベイリサーチから心理分析を行いモデル化す. ェントベースシミュレーション(agent based simulation)に. る手法も取り入れられている。このような計算モデル作成. 注目が集まっている。エージェントは、人工知能の研究に. 手法の検討に加えて、いくつかの汎用的なシミュレーショ. おいて自律知能や分散知能の構成要素として捉えられ、研. ン基盤が構築・提供されたことで、エージェントベースシ. 究対象とされてきた 1)が、近年ではこれを拡張し、 「環境の. ミュレーションの適応事例が増えている。. 状態を知覚し、行動を行うことによって、環境に対して影. 本発表では、災害時の避難についてエージェントシミュ. 響を与えることのできる自律的主体」と考えられている。. レーションによるアプローチで考察した論文を、考察の視. エージェントベースシミュレーションは、エージェントを. 点から整理し、体系的な文献レビューを行うものである。. 「相互作用を引き起こす基本単位」として構成されるシス テム(マルチエージェントシステム(multi-agent system)). 参考文献. を用いて協調や交渉などの相互作用の分析を行うものであ. 1) 石田亨:エージェントを考える,人工知能学会誌, Vol.10,No.5,pp.663-667(1995) 2) 秋山孝正:知的情報処理を利用した交通行動分析, 土木 学会論文集 No. 688/IV-53, pp.37-47(2001) 3) Sugiman, T. and Misumi, J.: Development of a New Evacuation Method for Emergencies: Control of Collective Behavior by Emergent Small Groups, Journal of Applied Psychology, Vol. 73, No. 1, pp. 3-10 (1988) 4) 村上陽平,石田亨,河添智幸,菱山玲子:インタラクシ ョン設計に基づくマルチエージェントシミュレーション, 人工知能学会論文誌,18 巻 5 号 E,pp.278-285(2003).. る。個々のエージェントを、計算モデルを用いて認知心理 学の視点から設計することが可能なため、人間行動のミク ロな部分に焦点を当てた分析には親和性が良いと考えられ ている。. 2. エージェントシミュレーションと避難 心理学の知見を取り込んだエージェントベースシミュ レーションは、交通行動分析の新たな手法として検討され 2)、避難行動の評価や計画策定への応用事例として多くみ. られるようになった。特に、グループ・ダイナミクス(group dynamics)の分野で杉万らが行った避難誘導に関する実験 3)を、マルチエージェントとして計算モデルで記述し、再現. †1 京都大学 防災研究所 Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 1.

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