中学校における f行動の記録jの評価に関する調査研究
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行動の状況j欄の項目評価に対する教師と生徒の意識を中心に一
学 校 教 育 専 攻
学 校 改 善 コ ー ス
吉 本 一 之
1. 研究の目的
「行動の記録Jについて、教育課程審議会中
間まとめ (2000年 10月)にわ・『生きる力』
の育成のため、行動の記録の評価は一層充実す
ることが必要である。行動の記録については、
行動の状況を項目ごとに評価する現行の方法を
維持することが適当である。Jと述べられている。
しかし、学校現場の状況から考えると、教育
課程審議会答申 (2000年 12月)が、信頼性の
根拠として述べてしも“評価する人、評価され
る人、それを利用するものが互いにおおむね妥
当であると判断できる"評価に「行動の記録j
がなっているとは思えない。この評価を改善す
るためには、評価に関する状況を明確にするこ
とが必要であると思われたが、調べた範囲の先
行研究には、見いだすことができなかった。
そこで、本研究は、教師と生徒の意識から、
f行動の記録j を維持することが適当といえる
状態であるかについて検討し、「行動の記録jの
在り方について示唆を得、心の教育、道徳教育
に役立つ評価の方向性を探ることを目的とする。
2. 研究の課題
(1)
r
行動の記録jの評価が適当といえる状態で
あるかについて項目ごとに明らかにする。
(2)評価の方向性を探るために、従来からの教師
主体の評価方法の効果について検討する。
3. 研究の方法(本研究の主な調査)
(1)教師と生徒に対し、評価に関する指導の状況、
指導教員 佐 竹 勝 利
評価の信頼性、教育上の必要性、調査書に記
載する必要性に関するアンケート調査を行う。
(2)アンケート調査を行った学級から、信頼性
が高いと思われる学級、趣旨に沿った評価に
なっていると思われる学級を抽出し、学級担
任に対し、評価への取り組み状況や、アンケ
ート調査に関するインタビュー調査を行う。
(3)
r
行動の記録Jの評価記録から、学級ごとの
実際の評価の状況を調査する。
(の教師主体の「行動の記録Jの評価法に取り
組んで、いるS中学校の教師と生徒に対して、
評価に関する指導の状況、評価の信頼性、教
育上の必要性、調査書に記載する必要性に関
するアンケート調査を行う。
3. 研究の結果と考察
(1)指導の状況と評価の信頼性に関する結果
「行動の記録Jに関する教師、生徒の意識を
調査した結果をもとに、指導の状況、信頼性に
ついて評価項目を分類した結果、 S中学校にお
ける指導の状況の「思いやり・協力J以外、多
くの教師、生徒がともに妥当であると判断する
項目はなかった。また、インタビュー調査から
は、「行動の記録jの評価が非常に困難である状
況がうかがえ、日常的に観察できないと感じて
いる項目の存在も明らかになった。さらに、実
際の評価からも、学級による差、教科の成績の
影響などが確認され、客観性の面でも問題があ
ることがわかったD これらのことから「行動の
-40-記録j全項目について、現状が適当といえない
状況であることが確認されたといえよう。特に
「創意工夫J
r
生命尊重・自然愛護」については、
信頼性において、教師、生徒ともに妥当である
と判断している割合が低かったD
(2)評価の教育上の必要性に関する結果
「行動の記録Jに関する教師、生徒の意識を調
査した結果をもとに、教育上の必要性について
分類した結果、教師、生徒がともに必要である
と判断している割合の高い項目はなかった。な
お、評価が教育上必要であると考えている教師
が少なくないことはわかったが、問題はその理
由である。特に
6
校の調査からは、教師が評価
を必要としている大きな理由が、生徒に反省を
促すためと、生徒の問題点を保護者に伝えるた
めであるということが確認されており、生徒の
よさに気づき、よさを伸ばすことを意識してい
る様子はなかった。
(3)調査書に記載する必要性に関する結果
「行動の記録Jに関する教師、生徒の意識を調
査した結果をもとに、調査書へ記載する必要性
について分類した結果、教師、生徒がともに必
要であると判断している割合が高い項目はなか
った。また、この領域については、教師の妥当
であると判断している割合の低下が目立った。
インタピュー調査からは、調査書への記載には、
客観性の面で問題があることを危倶しているこ
とや、生徒の人間性を伝えたいとしづ気持ちが
あることが確認できた。
(4)教師主体の評価方法の効果と定着について
数年前、学校全体で「行動の記録」に取り組
んでいたS中学校への調査の結果、現在は、学
校全体で取り組んでいるとはいえない状況であ
ることがわかった。よって、教師主体の評価方
法への取り組みを現状の学校で目ざしても、学
校全体としての取り組みにすることは難しく、
定着しない可能性が高いと思われる。また、 6
校と S中学校の信頼性の差は、「創意工夫jを除
き、ほとんどの項目においてなかった。学級ご
とに見た場合、 6校のA学級を上回る信頼性を
示す学級が3学級存在したが、それらの学級で
もほとんどの項目について信頼性が高いとはい
えない結果で、あった。
(5)考察
調査結果から、中学校における現状は、「行動
の記録jを維持することが適当といえる状態で
はないということが明らかになったといえよう。
中学校で「行動の記録Jに関する指導を行う
必要があり、評価を行う必要があるならば、学
校における指導と観察の機会や方法を明確にし、
継続的な指導や観察が可能な状況にすることが
必要である。もし、それが不可能ならば、「行動
の記録j 自体を改善する必要があり、特に信頼
性が低い項目である「生命尊重・自然愛護J
r
創
意工夫jなどの項目については、教師主体の項
目評価を行うかたちを改めるべきである。また、
調査書に記載する内容は、中学校、高校で必要
とされることで、客観的に把握できることだけ
にすることが必要であるといえようD
4.本研究の成果と今後の課題
中学校の現状が「行動の記録jを維持するこ
とが適当といえる状態ではないことを示すこと
については、ある程度達成することができたと
思う。明らかになった問題点を改善するために
今後は、心の教育、道徳教育に役立つ評価を見
いだすとともに、生徒の生きる力を育成するた
めに、教師主体の「行動の記録jから、生徒の
自己評価を主体とした「行動の記録jへの変換
を目的とした研究を行い、実践に取り組むこと
が課題である。