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都市近郊における集落住民の猿害対策意識に関する研究

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Academic year: 2021

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Title

都市近郊における集落住民の猿害対策意識に関する研究( 内

容と審査の要旨(Summary) )

Author(s)

中村, 大輔

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(農学) 甲第608号

Issue Date

2013-06-28

Type

博士論文

Version

ETD

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/46776

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

[2] 氏 名(本(国)籍) 中 村 大 輔 (大阪府) 学 位 の 種 類 博士(農学) 学 位 記 番 号 農博甲第608号 学 位 授 与 年 月 日 平成25年6月28日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第3条第1項該当 研 究 科 及 び 専 攻 連合農学研究科 生物環境科学専攻 研究指導を受けた大学 岐阜大学 学 位 論 文 題 目 都市近郊における集落住民の猿害対策意識に関する 研究 審 査 委 員 会 主査 岐阜大学 教 授 荒 井 聡 副査 岐阜大学 教 授 松 本 康 夫 副査 静岡大学 教 授 山 下 雅 幸

論 文 の 内 容 の 要 旨

サルによる被害(猿害)は,中山間の農村部から地方都市近郊においても顕在化しつつあり, 対応策が急がれている。本研究は,猿害が激しく定住人口が増加しつつある都市近郊,山梨 県富士山北麓の3 市町村の集落を対象として綿密な土地利用調査,住民の猿害対策意識に 関するアンケート調査(2006 年と 2010 年)を追跡実施し,集落立地環境や社会的条件からみ た住民の被害対策意識の相違,また生態学的な動物行動圏に基づく立地環境に応じた猿害 リスクと住民意識の関係,さらに近隣集落で実施された猿害対策による被害の軽減効果が集 落住民に与えた意識変化という3 側面から効果的な猿害対策を検討したものである。 本論文は全5 章から構成されており,第 1 章では,わが国における獣害対策の現状を概観 するとともに,既往の研究成果を整理している。第 2 章では,猿害について山梨県環境科学 研究所が継続実施したサルの加害群の生態調査結果から被害が深刻な対象集落を適確に 選定し,猿害激甚地である対象集落の概況とサルによる被害状況について整理した。第3 章 では,農家が減少しつつある都市近郊の混住化集落では,営農環境に劣る林縁を発端として 農地の耕作放棄が発生しており,猿害と集落土地利用の関係に注目して集落の遊休農地, 農地の物理的防除の実態を詳細に調べるとともに,選定した集落環境と住民の猿害対策意識 を検討し,被害に対する集落住民の対策や意識の相違を明らかにした。第4 章では,都市近 郊の被害実態を検討する前提として,サルの行動圏に応じた生態学的知見に基づく猿害リス クモデルを設定し,回答者の居住立地環境と猿害対策意識との関係を分析した。第5 章では, 猿害の偏在性と被害の軽減に伴う住民の被害認識や対策意識の心理的変化に注目し,近隣 で実施された NPO による加害群の追い払いによる被害軽減効果が対象集落の住民意識に 与えた影響を分析し,野生動物管理における新たな視点からの問題提起をおこなった。 本論文で得られた成果を具体的にあげると,次の4点が挙げられる。

(3)

1.集落環境と住民の被害対策意識については,農地の遊休地化が進み,集落住民による 防除対策も散発的であり,長年定住している古参住民と転入してきた新規住民との間で被 害内容や対策意識に顕著な差が生じており,新旧住民間の被害対策意識のギャップが住 民共通の猿害対策に取り組む障壁となっていることを指摘した。新規住民が地権者の手放 しやすい林縁の土地に居住する傾向があり,山際に遊休農地が発生しやすいこととあいま って遊休農地管理を集落住民協働で実施する必要性があることを提起した。 2.加害群の行動圏解析による生息地利用の生態学的手法により科学的指標として猿害リス クモデルを設定して,猿害のリスク偏在性を考慮した住民意識の空間的相違を分析すると, 猿害リスクと住民の被害対策意識の間には明確な関係があり,猿害リスクが高い立地環境 (加害群のコアエリア)では,集落住民はサルに対して強く嫌悪する傾向があり,猿害リスク が中もしくは低いエリア(林縁から 300m)においては,猿害対策や意向に関して住民間で 意識差がみられた。住民間の対策意識に対するギャップが,協働活動を要する猿害対策の 阻害要因であり,住民主体の対策行動につながらず,農林業サイドのみではなく,一般住 民が対象となる社会教育サイドなどの横断的な行政支援が不可欠である。 3.猿害リスクと集落住民の意識構造に注目してSEM による最適モデルを構築すると,猿害 リスクは集落住民の被害意識にのみ直接的な影響を与えており,被害意識がサルに対する 印象や捕獲への要望,主体的な対策に向かう動機づけの強弱につながる。 4.猿害対策には,住民の被害意識の軽減が重要であり,被害が激化した地域における NPO 等,専門家による被害軽減の成功事例を周知啓蒙することにより住民の被害意識を 緩和できる可能性があるが,専門家集団のみによる被害軽減対策が住民の対策意欲を損 なう可能性も秘めていることに配慮しなければならない。 本研究による一連の成果から,都市近郊のように住民の集落意識や協働体制が失われつ つある地域において今後の猿害対策を展開するためには,柵の設置などの住民協働的な防 除手法が難しく,住民による主体的な対策を期待するという発想から専門家集団に対策を委 託するという発想転換が必要であることを提起した。現在,専門家による野生動物管理は全国 的に関心を集めており,一度,個体数管理に成功すると住民の被害意識が軽減されるような 事例がみられるようになった。今後,集落住民の主体的な意欲を高揚しながら専門家集団が 支援する体制が不可欠であり,それぞれの役割分担を考える必要がある。さらに専門家は,被 害対策のみならず個体数管理とともに集落環境管理に精通した担当者(民間もしくは行政)が 望ましく,現状では獣害問題に対応できる専門家集団はきわめて限られており,信頼できる専 門家の育成を図ることが急務である。 本論文で得られた知見は,計2報の基礎論文に公表されており,今後,都市近郊のように 集落機能が失われつつある地域における獣害対策を展開する上で,農村計画学的に貴重な 成果である。

審 査 結 果 の 要 旨

本論文は,猿害が激しく定住人口が増加しつつある都市近郊に立地する集落を対象と して綿密な土地利用調査,住民の猿害対策意識に関するアンケート調査(2006 年と 2010 年)を追跡実施し,集落立地環境や社会的条件からみた住民の被害対策意識の相

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違,また生態学的な行動圏に基づく立地環境に応じた猿害リスクと住民意識の関係,さ らに近隣集落で実施された猿害対策による被害の軽減効果が集落住民に与えた意識変 化という3 側面から効果的な猿害対策を検討したものである。 本論文で得られた成果は,次の4点に要約される。 1.集落環境と住民の被害対策意識については,農地の遊休地化が進み,集落住民によ る防除対策も散発的であり,長年定住している古参住民と転入してきた新規住民との間 で被害内容や対策に顕著な意識差が生じており,新旧住民間の被害対策意識のギャップ が住民共通の猿害対策に取り組む障壁となっていることを指摘した。新規住民が地権者 の手放しやすい林縁の土地に居住する傾向があり,山際に遊休農地が発生しやすいこと とあいまって遊休農地管理を集落住民協働で実施する必要性があることを提起した。 2.加害群の行動圏解析による生息地利用の生態学的手法により科学的指標として猿害 リスクモデルを設定して,猿害のリスク偏在性を考慮した住民意識の空間的相違を分析 すると,猿害リスクと住民の被害対策意識の間には明確な関係があり,猿害リスクが高 い立地環境(加害群のコアエリア)では,集落住民はサルに対して強く嫌悪する傾向が あり,猿害リスクが中もしくは低いエリア(林縁から300m)においては,猿害対策や 意向に関して住民間で意識差がみられた。住民間の対策意識に対するギャップが,協働 活動を要する猿害対策の阻害要因であり,住民主体の対策行動につながらず,農林業サ イドのみではなく,一般住民が対象となる社会教育分野などの横断的な行政支援が不可 欠である。 3.猿害リスクと集落住民の意識構造に注目してSEM による最適モデルを構築すると, 猿害リスクは集落住民の被害意識にのみ直接的な影響を与えており,被害意識がサルに 対する印象や捕獲への要望,主体的な対策への動機づけの強弱につながる。 4.猿害対策には,住民の被害意識の軽減が重要であり,被害が激化した地域における NPO 等,専門家による被害軽減の成功事例を周知啓蒙することにより住民の被害意識 を緩和できる可能性があるが,専門家集団のみによる被害軽減対策が住民の意欲を奪う 可能性を秘めていることにも配慮しなければならない。 本研究による一連の成果をもとに,今後の猿害対策を展開するための提言をおこなっ た。都市近郊のように住民の集落意識や協働体制が失われた地域においては,柵の設置 などの協働的な防除手法が難しく,住民による主体的な対策を前提とした発想から専門 家集団に対策を委託するという選択が必要であり,現在,専門家による野生動物管理は 全国的に関心を集めており,一度,個体数管理に成功すると住民の被害意識が軽減され るような事例がみられるようになった。今後,集落住民の主体的な意欲を高めながら専 門家集団が支援する体制が不可欠で,それぞれの役割分担を考える必要がある。専門家 については,被害対策のみならず個体数管理とともに集落環境管理に精通した担当者 (民間もしくは行政)が望ましく,現状では獣害問題に対応できる専門家集団はきわめ て限られており,信頼できる専門家集団の育成を図ることが急務であることを力説して いる。本論文で得られた知見は,計2報の基礎論文に公表されており,今後,集落機能 が失われつつある地域における獣害対策の展開を計る上で,農村計画学的に貴重な提言 となる成果である。 以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位論

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文として十分価値あるものと認めた。 基礎となる学術論文 1.中村大輔,吉田洋,松本康夫,林進:ニホンザル被害に対する集落住民の対策意識 -混住化集落の場合-,農村計画学会誌26,317-322(2007) 2.中村大輔,吉田洋,松本康夫:都市近郊における猿害リスクと対策意識の空間分布, 農村計画学会誌,印刷中(2013)

参照

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