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市場開放後における農民経営の展開過程と農村女性の就業改善の課題 : スリランカの中部水田農業地域を対象として

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Academic year: 2021

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Title

市場開放後における農民経営の展開過程と農村女性の就業

改善の課題 : スリランカの中部水田農業地域を対象として(

内容の要旨(Summary) )

Author(s)

KANKANIGE ERANGA HASANTHI

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(農学) 甲第520号

Issue Date

2009-09-09

Type

博士論文

Version

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/33661

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

名(本(国)籍)

主 指

導 教

員 名 学

の 種 類 学 位 記 番 号

学位授与年月

学位授与の要件

研究科及び専攻

研究指導を受けた大学

論 文 題 目

査 委

会 皿GEERANGAHASANTHI

(スリランカ民主社会主義共和国)

岐阜大学

教授

今 井 健

博士(農学)

農博甲第520号

平成21年9月9日

学位規則第3条第1項該当

連合農学研究科

生物生産科学専攻

岐阜大学

市場開放後における農民経営の展開過程と農村女性

の就業改善の課題-スリランカの中部水田農業地域

を対象として一

主査

岐阜大学

井 副査

岐阜大学

井 副査 信州大学

授 佐々木 副査

静岡大学

授 小 嶋 聡 健 隆

睦 論 文 の 内 容 の

旨 スリランカは1948年にイギリス植民地から独立し、ゆがんだ植民地経済から脱却するために、主食 である米の自給を目指して、農業・農村開発を積極的に推進し、水田農業基盤を整備して米の自給率 の向上を図るとともに、創設農地を土地なし農民に配分するなど、経済の民主化を推進してきた。し かし1977年から市場開放経済体制に転換し、外国資本の導入による工業などを主軸とした経済発展を 目指した。その結果、国の経済成長は著しく向上し、都市地域の経済水準が高まったが、農業生産の 発展を基とした農村経済は後退している。 本研究の目的は、スリランカの経済開放政策下における農業近代化の過程を具体的に調査・分析し、 市場開放後における水田農民経営の展開と経済近代化過程における農村女性の就業実態と改善の陳層 を解明することである。 スリランカの米生産土の6割は、比較的気象状況の安定した乾燥地域から得られており、今回の研 究対象地城は、北中部に位置し国際的農業開発地域となり最大の米生産土のあるANURADHAPURA地区の EPPAWALA村である。同村には400戸ほどの水田経営農家が存在するが、1997年の85戸、2004年65 戸および2006年の57戸の3回にわたる農家調査結果を用いて、この間の農家経営、就業構造の変化 を分析した。 1.農家1戸当たりの平均土地所有面耕は約4エーカー(1.62ha)であるが、この10年ほどの間に農家 世帯員の就業、農業経営は大きく変化した。①全体として農家の経営面積は、農地開発や政府配分に よって増加し、またトラクターなどの大型農作業機械の導入、准漑股備の改修などにより拡大してい る。②しかし、農家経営での稲作専業農家は激減し、農外との兼業経営が一般化している。比較的大

(3)

-8-きな農家は、村内の小規模農家からの農地購入によって農地面稚を拡大したが、同時に金貸しやその 他の「サイドビジネス」等の複合経営となっている。③農民の農地所有と貸借関係について、この間

に大きな変化が見られ、伝統的な地主小作関係である「アンデ」が解消され、あらたに土地担保金融

の1種である「ウカス」という農地の貸借関係が増加し、このことが大規模農家の経営規模の拡大の 要因ともなっている。④また小規模農家は、縫製業などの新規に立地した農村工場への通勤兼業など、 さまざまな貨労働兼業に従事する世帯員が増加し、水田経営面積の縮小や、部分作業委託が見られる ようになった。 2.同村で最大の経営規模拡大を実現してきた事例について、1985年から今日までの20数年間の経営 発展と資本蓄積の過程を実証的に分析し、以下のような特徴を明らかにした。①水田地域でも経営の発 展には、自作水田の拡大にとどまらず、伝統的耕種経営→耕畜複合経営→機械作業受託という農業経営 の変化が要因となっている。②農地集耕の方法は高利貸しとも言うべき土地担保金融による③近代化過 程における都市の市場形成とその拡大にあわせた農業経営の転換、および農産物販売などの農業関連事 業の導入、そして④政府補助金の授受や食品企業との契約など、地域における信用や情報の「独占」と も言うべき条件である。 3.農家の経営規模と農業所得の相関は高いこと(R2=0.7761)は当然としても、同時に農家の総 所得でも経営規模との強い相関関係(R2=0.8095)が確認された。農村内の経営規模間の経済的格差 が一層拡大しているといえる。 また、農業の近代化が進行する中で、農村女性の社会的・経済的な自立や、農民経営の安定と確立 が重要な課題となっている。農村でも非農業部門の産業が発展して、農村女性の間でも兼業就業が一 般化している。調査地域における農村女性の副業等の就業形態は、伝統的な農業関係の副業から近代 的な農村工場での常勤労働まで、多様である。また農家の経営規模と一の関係では、自家の農作業の少 ない小規模農家の女性ほど農外就業の割合は質tともに高いといえる。そして農家収入に占める女性 の副業等からの収入の割合は、平均で20%、とくに小規模農家では43.9%と最大の収入部門となって いる。しかし働く場所があっても女性の生活向上は図られないことが多く、女性の家庭内での発言権 などの地位は依然として低位な状況にある。 4.以上のようにスリランカの主要な水田農業地域では、この10年ほどの間に、伝統的な農民経営 が、農業生産における「緑の革命」による農業経営の変化、農村への市場経済の浸透、農村工業化な どによって変化した。その結果、稲作農業の停滞と商品作物の導入による経営変化とともに、従来の 農民経営は、2極に分解し、上層農家は商品作物生産とサイドビジネスとの兼営形態、下層農家は貸労

働兼業や零細な自営兼業と、いずれも兼業農業化し、水田作農業の発展が見られない。

水田瀧漑施設の整備と維持管理の組射ヒ、農産物販売のための農村地域での市場整備、農村金融の 近代化などにより、主食となっている米の安定的な生産条件と経営の確立を計る必要がある。 またスリランカの農村女性は、家の農業や家事・育児にも従事しながら、副業などによって家計を 支えている収入を得ているにもかかわらず、その労働は家庭内でも正当に評価されているとはいえな い。また農村女性を対象として、技術習得機会や起業のための資金壊助制度一層の整備が必要とされ ている。 審 査 結 果 の 要 旨

本研究では、戦後独立した開発途上国の1つであるスリランカの中部乾燥地帯の農村地域

を対象として、経済開放政策下における水田農民経営の展開と経済近代化過程における農村

女性の就業実態と改善の課題を解明した。

(4)

-9-1.この10年ほどの間に、伝統的な鹿家経営である稲作専業農家は激減し、比較的大きな

農家は農地面積を拡大したが、同時に金貸しなどの「サイドビジネス」等の兼業経営となっ

ている。他方小規模農家は、縫製業などの新規に立地した農村工場への通勤兼業化が著しい。

以上のように各階層とも経営や就業の兼業化が進行し、また農業生産では稲作が相対的に縮

小し、高級野菜などの市場向けの新しい商品作物の栽培が増加している。

2.経営規模拡大を実現した鹿家の経営記帳分析では、この20数年間の資本蓄横の過程を分

析し、伝統的耕種経営→耕畜複合経営→機劇作集受託という農業経営の変化や、都市の市場形

成とその拡大にあわせた高級商品作物の導入などへの経営転換、および農産物販売などの農業

関連事業の導入が経営発展の特徴となっていることを解明した。

3..農家の経営規模と農業所得の相関(R2=0・7761)は高く、同時に農家の総所得でも経営

規模との強い相関関係(R2=0.8095)が確認され、大規模鹿家は副業などへの投資によ

って収入を増やすことができるため、農村内の経営規模間の経済的格差が一層拡大する要因 となっている。

また、農村女性の副業等の就業形態は多様であるが、′j、規模農家の女性ほど農外就業の割

合は質立ともに高く、鹿家収入に占める女性の副業等からの収入割合は平均で20%、とくに

小規模農家では43.9%と最大の収入部門となっている。しかし女性の家庭内での発言権など

の地位は依然として低位な状況にある。

4.今後の課題として、水田漕漑施設の整備と維持管理の組織化、農産物販売のための農

村地域での市場整備、農村金融の近代化などの条件整備、さらに農村女性の地位向上と、技 術習得機会や起業のための資金援助制度の整備などの課題を明らかにした。

以上について,審査委貞全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位

論文として十分価値あるものと認めた。

[博士論文の基礎となる学術論文]

1.カンカーニゲ ェランガ・ハサンテイ カンカーニゲ

ラール・今井健

経済近代

化過程における農村女性の就業実態と改善の課題-スリランカの中部水田地域を対象と

して一

度相生活研究5l-l、28-36、2007.11.

2.カンカーニゲ ェランガ・ハサンテイ カンカーニゲ

ラール・荒井聡・今井健

場開放下における伝統的な稲作鹿家の変容過程と課題-スリランカ中部の水田地帯を対

象として一

食農資源経済論集59-2、S5-93、2009.3.

[その他の既発表学術論文]

1.LalThilakarathne,KenImai,SatoshiAraiandErangaThihkarathne:IncomeDistributionof Rice FarmersUsingModemAgriculturalProcessesintheDryZoneofSriLanka-Acaseof

AnuradapuraDistrict,EppawelaArea-.農業・食料経済研究47-1,42-57,2000.

2.LalThilakaratlme,KenImai,SatoshiAraiandErangaThilakaratlme:EconomicConditionsof RiceFamersUsingModernAgriculturalProcessesintheDryZoneofSriLanka-Acaseof

AnuradapuraDistrict,EppawelaArea-・農業市場研究9-1,34-45、2000.

参照

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