Title
中央ヨーロッパにおける市場経済化の進展と地域構造の変
化( はしがき )
Author(s)
小林, 浩二
Report No.
平成8年度-平成10年度科学研究費補助金 (国際学術研究・学
術調査 課題番号08041053) 研究成果報告書
Issue Date
1998
Type
研究報告書
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/53
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Ⅰ.はじめに
ドイツの統合,旧ソ連の崩壊にはじまる旧東ヨーロッパの変化は,政治的変化が地域構造を大きく変化させたとい う点においてきわめて注目される出来事だった。旧東ヨーロッパ諸国では,それまでの計画経済に代わって市場経済 が導入された。国営や組合の経営体の民有化,価格や貿易の自由化,補助金の撤廃等が実施されたのである。このよ うな市場経済化の進展は,旧東ドイツでは旧東ドイツが旧西ドイツに統合・併合されたことできわめて短期間に達成 されたし,旧東ヨーロッパ諸国においても急速に進行しつつある。後者の旧東ヨーロッパ諸国についてみると,市場 経済化は,とりわけゲイシュグラード諸国(ポーランド,チェコ,スロヴァキア,ハンガリー)で著しくなっている。 旧東ドイツやゲィシェダラード諸国では,市場経済化の進展やそれに伴う政治・経済・社会システムの変化が地域構 造を大きく変化させるようになっておりt社会主義時代の地域的特性は著しく変化してきた。 本研究では,・市場経済化が達成された旧東ドイツならびに市場経済化の進展が著しいゲィシェダラード諸国を研究 対象地域に選定し,つぎの2点を明らかにすることを試みた。1)市場経済の進行に伴って,地域構造(地域を構成 する自然・経済・社会的各要素の特質ならびにそれら各要素の結びつき)はどのように変化してきたのか。2)新た に形成されっっある地域構造の特質は何か。そして,以上の2点の考察を通してこの地域のかかえている問題点なら びに課題を解明することにした。 第1図は,研究対象地域を特色づける地域を構成する諸要素ならびにそれらの結びつきを示したものである。東西 冷戦構造の崩壊によって,それまで東西両ブロックを隔てていた「壁」は低くなり(消滅し),西側諸国の資本が急速 かっ大量にこれらの地域に流入してきた。同時に,既述したように計画経済から市場経済へ転換するための諸施策が 実施された。こうした過程で,地域を構成している人口,産業,インフラ,集落などの各要素の特性は大きく変化し てきたが,それととともに,それら各要素の結びつきの程度にも変化がみられるようになった。こうして,研究対象 地域の地域システムは大きく変化してきたが,新たに形成された地域システムは,外国資本の流入,市場経済化を促 進するための施策をはじめとする地域発展政策を再び規定するようになっている。 本研究では,こうした枠組みを念頭において研究を進めることにした。具体的な研究方法としては,アンケート調 査,聞き取り調査,土地利用・景観調査をできるがぎり実施し,地域の実態を詳細かっ具体的に把握することに努め た。その際,各種の地図,統計書,行政体が発行している年幸軋各種の報告書等を利用したことはいうまでもない。 旧東欧諸国における計画経済から市場経済への大転換,それに伴う政治・経済・社会システムの大きな変化は,ト ランスフォーメーション Transformation あるいはトランスフォーメpションプロセス Transformationprocess と呼ばれているが,その過程は端的にいえば「居住環境重視」への変化であるといえようが1),その過程で,"勝者 と敗者"が生まれていることが今日の特色となっている2)。具体的にいえば,社会的に富裕層と貧困層がより明瞭に なっていること,地域的にみると発展地域と発展から取り残された地域一問適地域-が明確になり,地域格差がより 大きくなっていることだろう。本報告書は,トランスフォーメーション期のこうした過程を明らかにしたものである。 第1図 研究対象地域を特色づける地域を構成する要素およびそれらの結びつきわれわれの調査は,平成8年度(1996年度)∼平成10年度(1998年度)の3年日射こわたったが,比較的順調に進ん だといってよいだろう。これは,何よりも多くの人々ならびに関係語機関から暖かい援助を受けたからにほかならな い。われわれは,研究対象地域の農業省などの各省庁をはじめ関係諸機関を頻繁に訪れたが,対応してくれた関係者 は変革期で多忙であったにもかかわらず例外なく的確かっ親切に対応してくれた。おかげで彼らから貴重な資料や情 報を入手することができた。アンケート調査や聞き取り調査の際には,一般市民の方々からも多大の援助・協力を得 ることができた。調査に協力してくれた一人一人の顔が,今もって私の脳裏に焼きっいてはなれないが,彼らのおか げて調査がどれはどはかどったことか,とても言葉に言い表すことはできない。また,私自身,彼らとの接触を通し て多くの楽しい思い出を残すことができた。調査に協力していただいた方々ならびに関係諸機関に対して,心から感 謝の意を表したいと思う。 私は,佐々木 博(目白大学人文学部),森 和紀(三重大学教育学部),加賀芙雅弘(東京学芸大学教育学部),山 本 充(埼玉大学教養学部),中川聡史(国立社会保障・人口問題研究所),呉羽正昭(愛媛大学法文学部)の各氏と 共同で調査をしたが,彼らから教えられることが多かった。何よりも楽しく有意義な議論・調査ができたことが大き な収穫だった。また,現地ではマイヤー(Prof.Dr.J6rg MAIER),モイスプルガー(Prof.Dr.Peter MEUSBURGER),ヴォルコプフ(Dr・MeikeWOLLKOPF),タイロー(Dr.ZbigniewTAYLOR),ジフ(Pr。f. Dr・Franti菖ek,ZICH),ムラーデク(Prof.Dr.Jozef,MLÅDEK)の各氏にひとかたならぬお世話になった。彼 らは,現地調査に同行してくれたほか,各省庁との交渉や通訳を率先して引き受けてくれた。貴重な助言を与えてく れた0彼らとの交流を通して,調査の仕方や地域のとらえ方など教えられることも多かった。さらに,調査を通して, チズ(Prof・Dr・Teresa CZYZ),Prof.Dr.Ⅰvan BIeIKホフマン(Dr.JiYi,HOFMAN),イェジェック(Dr. Jiデi,JEZEK),スレビチカ(Dr・Alois,SIEPIeKA),フラバンコヴァ(Ing.Magdalena,HRABANKOVÅ),スピ シアク(Dr・PeterSPISIAK),デイトマイヤー(Dipl.Geogr.Volker,DITTMEIER)氏など,多くの研究者とも 知り合いになれたが,彼らは調査対象地域の情報提供や通訳など調査の便宜をはかってくれた。そのうえ,彼らの多 くは報告書にも寄稿してくれた。このような共同研究者ならびに研究協力者がいなかったとしたら,実りある調査・ 研究はできなかっただろう。12人の共同研究者および研究協力者に対しても心からお礼の言葉を申し添えたいと思う。 今後とも,研究対象地域が大きく変化することは間違いないだろう。ゲィシェダラード諸国のEU加盟などが現実 味を増しているおり,これまで以上に大きな変化をとげることになるかも知れない。それだけに,現状を正確にとら えることが今日ほど重要になっている時はないだろう。われわれは,調査対象地域の実態調査をひき続いて実施して いくとともに,調査対象地域を含む旧東欧諸国の動向をヨーロッパというグローバルな視点からとらえてみたいと思っ ている。 本報告吾が少しでも旧東欧諸国を理解する手がかりになれば,われわれにとって大きな喜びというほかはない。 暖かい春の日差しを迎えた岐阜の地で 平成11年(1999年)3月 小 林 浩 二 注) 1)小林浩二1998・『21世紀のドイツー旧東ドイツの都市と農村の再生と発展-』大明堂. 2)Fassmann・H・Hrgs・1997・DieR竜ckkehrderRegionenBeitr左gezurregionalenTransformation
Ostmitteleuropa.Wien:Verlag der6sterreichischen Akademie der Wissenschaften.