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滋賀大学保健管理センター 〔2003.12〕重症急性呼吸器症候群(SARS)について
本年初めから春にかけて、北京や香港などを 中心に大流行した新規感染症SARS は、2003 年 8 月 7 日までに全世界で、症例数 8,422(その内 医療従事者は1,725)、死亡数 916(死亡率 11%) が報告されています。日本でも大きな話題とな り、またSARS に罹患した台湾人医師が関西地 方を旅行した際に大きなパニックを惹き起こし たことも記憶に新しいところです。 厚生労働省は2003 年 11 月以降「重症急性呼 吸器症候群(SARS)関連情報 今冬の SARS 対策について」を発出し、注意を呼びかけてお り、特に、「新たに流行地域が指定された場合は、 流行が起きている地域から帰国された方は、帰 国後10 日間は朝夕の体温測定を実施し、各人の 健康状態を確認してください。また、帰国後、 10 日間以内に発熱、せき、呼吸困難の症状が現 れた方は、最寄の保健所に相談するか、感染地 域からの帰国であることをあらかじめ告げてか ら医師の診察を受けてください。(その際は、マ スクを着用してください。)」と強調しています。 本年10 月に朝日新聞社の主催で「SARS 対策 緊 急 セ ミ ナ ー Severe Acute Respiratory Syndrome –香港・トロントの現地に学ぶ-」が開 催されました。香港・トロント・ベトナムの現 場からの報告は、病原微生物が不明であった時 期の生々しい情報を含み、示唆に富むものです ので、その一部を紹介します。 (1)診断基準 SARS は病原体が特定される以前から、WHO により疫学調査のための診断基準が示されてい ます。すなわち、①発症前10 日以内に SARS へ の暴露歴(SARS 患者と濃厚な接触があったか、 SARS 伝播地域への旅行、居住歴がある)、②38℃ 以上の発熱、③せきまたは呼吸困難、という3 つの基準を満たす場合が「疑い例」、さらに胸部 X 線検査上肺炎像を伴う場合が「可能性例」と されます。近い将来SARS ウイルスに特異的な 検査成績に基づいた基準が作成されるでしょう。 (2)臨床症状 SARS は健康な成人(25∼70 歳)に多く発症 し、15 歳以下の症例は比較的少なく、潜伏期間 は2∼10 日とされています。通常 38℃以上の発 熱で発症し、悪寒、戦慄、頭痛、倦怠感、筋肉 痛などの症状を伴います。一部の症例では、病 初期から軽度の呼吸器症状を認めるようです。3 ∼7 日後に乾性咳、呼吸困難などの下気道症状が 出現します。症例の10∼20%は重症呼吸不全に 陥り、人工呼吸管理が必要となります。一方、 その頻度は不明ですが、典型的な発熱反応を伴 わず、不元気、食思不振、消化管出血、意識障 害などの症状を示す非典型例も報告されていま す。SARS 重症化の要因として、高齢、糖尿病、 慢性肝炎などが挙げられており、死亡率も年齢 と共に増加します(24 歳未満では 1%以下)。 (3)感染対策 流行の初期には、この疾患の感染経路が全く 不明であり、院内感染の形で医療従事者や患者 間での感染が多発しました。しかしその後、厳 密な感染対策を行えば、医療スタッフなどへの 院内感染を制御できることが示されています。 最近の知見では、SARS の主な感染経路は飛沫感染と接触感染であるとされていますが、空気 感染も完全には否定されず、また、気道分泌物 や便、尿からも3 週間以上ウイルスが検出され るため、これらに対しても厳密な感染対策が必 要とされます。また、一般社会生活においては、 手洗いの励行、不潔な手で目や鼻をこすらない といった配慮が必要であり、SARS 伝播確認地 域への不要不急の渡航を避けることをアドバイ スすべきであるとされています。 今冬のSARS 流行の行方は不透明ですが、以 上のような事情を考えると、常に最新の諸情報 を確認すること、治療法が確立していない現状 では、感染の機会をできる限り持たないように 心掛けることが重要と考えられます。 なお、国立大学等保健管理施設協議会エイ ズ・感染症特別委員会から、「SARS HAND BOOK 2004 サーズ・パニックを防ぐために」 が発行されました。併せて熟読してください。 また、同委員会から渡航者向けに「海外へ行く ときの感染症対策HANDBOOK」も発行されて います。 SARS の情報は以下のホームページに掲載され、随時更新されています。