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攻撃は 選手の意識も共有され FWの連動からバイタルエリアを突き チャンスを多くつくっていた しかし 中央の攻撃にこだわりすぎることもあり カウンターを受けることもあった 中と外を使い分ける攻撃をしなければいけない アタッキングエリアでのプレーは課題が多い 特にサイドを突破した後のクロスの質は低い

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Academic year: 2021

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概要

 2010年に開催されたFIFAワールドカップ南アフリカ大会。その開催 地で8カ国のU-19代表チームが集まり、「SAFA CAPE TOWN U20 International Tournament」が行われた。日本もアジアを代表して参加 した。11月からのAFC U-19選手権(FIFA U-20ワールドカップアジア 最終予選)に向けて、世界の強豪国と対戦した成果と課題を報告する。 日程:5月21日〜6月5日 場所:南アフリカ・ケープタウン 気候:日中は20度前後、夜は15度前後。乾燥している 時差:日本時間よりマイナス7時間 参加国:8カ国 アフリカ5カ国(南アフリカ、ガーナ、ナイジェリア、 ケニア、カメルーン)     南米2カ国(アルゼンチン、ブラジル)     アジア(日本) 大会形式:4チームずつの2グループで総当たりのリーグ戦(グ ループリーグ)を行い、上位2チームが準決勝進出。 決勝、3位決定戦を行う。 大会結果:優勝 ブラジル、2位 アルゼンチン、3位 南アフリ カ、4位 日本

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成果と課題

(1)切り替え ・守備から攻撃の切り替えは、これまでの積み重ねをプレーできていた。 ただ、チームとして前線の高い位置で奪いに行くのか、中盤にブロック を形成し、守備組織を整えて奪いに行くのかの判断が遅い。

南アフリカ遠征

(SAFA CAPE TOWN U20 International Tournament)

【報告者】吉田靖

(U-19日本代表監督)

U-19日本代表

 また、攻守の一体化と言われているように、攻撃をしているときに自分た ちのバランスを悪くしていると、リスク管理ができなくてカウンター攻撃を 受けることになった。南アフリカ、アルゼンチン、ブラジルには身体能力 が高く、個人のスピードで突破できる選手がいた。そういった選手にカウ ンターをしかけられ、ピンチになる場面や失点につながった。奪われた 後の切り替えは少しずつ積み上がっているが、攻撃しているときのリス ク管理は課題であった。 ・攻撃から守備の切り替えは、自分たちが主導権を握り、試合を進められ るゲームでは、奪ってから優先順位を意識したDF背後への飛び出しな ど、速い攻撃をしかけることができていた。しかし、アルゼンチン、ブラジ ルなど主導権を握る攻防が続くゲームになると、奪ってから速い攻撃を しかけることが少なくなった。ボールを奪った瞬間は相手の守備組織が 整っていないので、DF背後へ飛び出し、速い攻撃をしかけることは必 要不可欠である。そのための運動量、状況判断は課題であった。もち ろん、ゲーム状況(点差、時間など)を判断することも必要である。 (2)攻撃 ・切り替えの部分でも挙げたが、奪ってからの速い攻撃はさらに質を上 げることが必要である。特にインターセプトしたときなど、前向きにボール を奪ったときは人数を掛けながらスピードを落とさずに、相手ゴールへ向 かってしかけるプレーの精度を上げたい。 ・ビルドアップは、相手にプレッシャーをかけられても落ち着いてボールを 動かし、自陣から組み立てることができていた。アルゼンチン、ブラジル にも、コンセプトであるFW、ボランチ、サイドを起点にしてボールを進め、 崩すことができた。しかし、ゲームの流れを判断できず自陣でのミスで失 点し、リズムが崩れることもあった。常に相手状況、ゲーム状況を判断 することが課題である。 ・中盤でのポゼッションは、ビルドアップからの流れでボールを動かし、流 動的に人とボールが動いていた。特にサイドからバイタルエリアを狙う

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目指せ

世界のトップ

U-19日本代表 南アフリカ遠征より

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・アタッキングエリアでのプレーは課題が多い。特にサイドを突破した後 のクロスの質は低い。また、中に入る人数は増えてきたが、タイミングが 悪く、シュートをうてる場面は少なかった。ペナルティーエリア付近からの シュート、ミドルシュートの精度も低く、課題であった。ブラジル、アルゼン チンはゴール前の守備が堅く、そこを崩すには冷静に落ち着いて状況 を観て判断し、正確なプレーが求められる。プレッシャーが厳しくなるエリ アで落ち着いて正確なプレーをすることは課題であった。 ・セットプレーは相手の隙を突き、クイックで始めてチャンスをつくってい た。また、得点にもなったが、キックと中の選手の入り方は良くなってい る。しかし、相手にも分析されるので、質を高めることとバリエーションを 増やすことが必要である。 (3)守備 ・攻撃しているときのリスク管理は課題であった。切り替えの意識は高く なったが、バランスが悪い状態でボールを失うと、世界の強豪国は一 気に攻撃をしかけ、個人で突破できる選手がいる。しっかりとリスク管 理ができていれば、ピンチになることは少なかった。 ・自分たちの守備組織が整うと、前線から制限し、意図的にボールを奪う ことができていた。アプローチも速くなり、間合いも詰めていたが、奪い 切るまでのコンタクトスキルがなかった。個人で奪い切る技術は課題で ある。 ・チャレンジ&カバーは意識されてきた。ボールホルダーへのファースト DFの決定からカバーのポジションはとれるようになってきたが、人につ き過ぎたり、つられる場面もあった。人を観ながら、スペースも観ることを できずに、ずるずるラインを下げてピンチになっていた。リスク管理にも つながるが、課題である。 ・ゴール前の守備は、身体を張ってGKと連動した守備ができていた。 ・セットプレーは素早い組織づくりをして相手のプレーに対応していた が、2次攻撃への対応が悪く失点になった。クリアの方向、場所など流 れを切ることや、ポジションの修正などで守り切るようにしたい。

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まとめ

 今回の遠征では、ブラジル、アルゼンチンなど世界の強豪国と真剣勝 負ができたことが大きな成果として考えられる。また、アフリカの国々は中 東の国々のスタイルと似ているので、アジア最終予選に向けて中東のイ メージをつかめた大会だった。  開催国の南アフリカのホスピタリティーもすばらしく、ピッチ以外の部分 でも大きなストレスを感じずに過ごすことができた。大会を通して、チームコ ンセプトが浸透し、積み上がってきた。ゲームの中でわれわれ日本の戦い 方が通用する部分が多く出たが、勝負を決めたのはパスミスや一瞬の隙 など「ちょっとした差」だった。中1日のハードスケジュールで90分間を戦 い切るタフなチームになっていかなければいけないと強く感じた。  また、決勝戦のブラジル対アルゼンチンで、最後に勝負を決めたのはブ ラジルの個の能力であった。われわれ日本も個の能力を高め、全体的に チーム力を上げていきたい。そしてアジア最終予選をなんとしても突破し、 もう一度、世界の舞台で強豪国と戦いたいと思う。各チーム、関係者の 方々には今回もご理解とご協力をしていただき、感謝しています。

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概要

 スロバキアで行われた「TIPOS Slovakia Cup 2012」に、昨年に引 き続き参加した。今回は1994年以降生まれの選手が対象で、参加8カ 国の国際大会だった。試合の中日には観光があり、歴史あるお城を見学 に行った。  大会結果は8チーム中6位で、閉会式での表彰でフェアプレー賞をい ただいた。大会を通しての成果と課題を報告する。 日程:4月20日〜29日 場所:スロバキア 気候:気温20度前後、湿気がなく過ごしやすい 参加国:スロバキア、ウクライナ、デンマーク、クロアチア(Aグループ) 日本、ノルウェー、チェコ、ポーランド(Bグループ) 大会方式:各グループで総当たりのリーグ戦(グループステージ)の後、 順位決定戦を行う。試合時間は40分ハーフの80分ゲーム

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大会

集合日  4月20日の夜に集合し、翌日の朝に出発した。現地到着後に、ミーティ

スロバキア遠征

(TIPOS Slovakia Cup 2012)

【報告者】吉田靖

(U-18日本代表監督)

U-18日本代表

ングで映像を使って基本的なチームコンセプトを伝え、トレーニングを行 い、試合に臨んだ。選手には、チームとしての共通理解を持ちながら個人 の特長を出すように伝えた。 グループステージ 第1戦 vs U-18ノルウェー代表 △1-1  試合開始から積極的な守備でボールを奪い、ビルドアップして攻撃を 組み立てていたが、相手守備を崩すまでの攻撃ができなかった。前半に 相手のロングフィードに対して、一瞬カバーリングが遅れ、GKと1対1の場 面をつくられて失点。その後もピンチをつくられたが、なんとかしのぎ、後半 を迎えた。  後半はサイドを突破し、クロスからの攻撃でチャンスをつくった。CKから 同点にしてからはポゼッションも良くなり、ボールを動かしながら相手ゴール を狙ったが、勝ち越すことはできずに引き分けで終了した。 第2戦 vs U-18チェコ代表 ●0-1  チェコは大柄な選手が多く、テクニックもあり、試合開始から主導権を 握られる展開が続いた。日本は相手との間合いやコンタクトの強さ、アプ ローチの違いに戸惑っていた。ビルドアップでは、自陣エリアでボールを失 い、ピンチになっていた。後半はビルドアップでボールを速く動かし、サイ ド、ボランチがボールを受けられるようになり、相手ゴール前までボールを

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運ぶことが増えた。しかし、決定的なチャンスは少なく、ゴールを奪えないま ま終了した。 第3戦 vs U-18ポーランド代表 ○1-0  3戦目になると、日常の相手との違いにも慣れ、自分たちがどのようにプ レーしなければいけないのかを身体でも感じてプレーできるようになってい た。ゲームは攻守に主導権を握り、相手ゴールに迫るが、ゴールをなかな か奪えない展開が続いた。カウンターを警戒していたものの、何度か奪わ れ方が悪くピンチになったが、失点にはならなかった。後半にゴール正面 でFKを獲得し、直接決めて先制。そのまま逃げ切り勝利した。最後まで 集中したゲームだった。

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成果と課題

(1)切り替え  攻守の切り替えはかなり習慣化されてきたように思う。攻撃から守備 への切り替えは速くなっていた。しかし、素早く切り替えても、状況によっ ては前線から奪いに行けない状況もある。そのような状況が起きたとき に、チームとしてまとまって守備の戦術行動をとれない場面があった。 FWだけが奪い返しに行ったり、ディフェンスラインが押し上げていないた めに、中盤にスペースが空いてしまったりする場面があった。素早く切り 替え、ポジションをとることからチームとして前線から奪いに行くのか、少し 下がってブロックを形成するのかの判断を速くしなければいけない。これ には状況判断と決断、コミュニケーション能力が必要であり、この部分は 課題だった。  守備から攻撃では、攻撃の優先順位を意識したDF背後への動き出し とそこへのパスが何本か通り、チャンスになったが、選択肢がそれだけに なってしまい、攻撃が単発で終わってしまう場面もあった。オフの選手が 多くの選択肢をつくるポジションをとり、ボールホルダーが状況判断して、 優先順位を意識しながらプレーすることが必要である。 (2)攻撃 ①パスの質  ビルドアップのときに、ショートパスをディフェンスラインで回すだけでは 攻撃を組み立てることは難しくなっている。素早く、1つ飛ばしたパスが必 要である。そのためのパスの質(ミドル、ロング)は課題である。 ②ポゼッション  FW、ボランチ、サイドを起点に組み立てていくことの理解はできていた。 しかし、ボランチ同士が下がり過ぎて、FWとの距離が空き過ぎる。また、サ イドMFが外に張り過ぎるなど、全体を観てポジションをとれないことがあっ た。センターDFのくさびのパスの意識は高かったが、判断が遅く、狙われ ることもあった。前線からプレッシャーをかけられたときに、1つ飛ばした前 方の選手を観れないことも課題である。 ③運動量  攻守において運動量は多くなっている。動きながらのプレーの必要性 も、海外の選手とゲームをすることで選手自身が感じて、ゲームをする中 で改善に向かっていたことは成果である。切り替えが速くなり、攻撃でDF 背後への飛び出しもあった。守備でもポジションをとるところまでは速く なった。さらに状況判断を含めた動きの質を高めていく必要がある。攻守 にハードワークすることは、世界のスタンダードを越えなければいけない要 素である。 (3)守備 ①1対1の対応  今回のゲームでも課題として挙げるべき部分である。コンタクトプレー は重心を低くして、コンタクトしたときには五分五分のプレーができていた が、最初は相手に当てられてバランスを崩すことが多かった。また、ボール を持った相手に対しての間合いが広く、もう一歩詰めた間合いで対応す ることが課題である。 ②ボールを奪いに行く・行かないの判断  切り替えのところでも述べたが、状況が変化する中で、チームとして守 備ができなければいけない年代である。チームコンセプトを実践しながら 状況判断し、チームで戦術行動するための個人戦術の理解と実践、そし てコミュニケーションが足りなかった。 ③チャレンジ&カバー  相手のロングフィードに対して、常にチャレンジ&カバーをやり続けなけ ればいけない。試合開始から終了まで、一瞬の隙も与えないように緻密 (ちみつ)なポジション修正を繰り返し、プレーできなければ失点してしまう。 今回の大会も一瞬の隙で失点した。チャレンジ&カバーも引き続き、取り 組む課題である。 ④高さ、スピードへの対応  センターDFに高さがあったので、最初の競り合いは対応できていた。し かし、周りの選手のセカンドボールの準備、予測は課題である。また、ス ピードに乗った選手に対して簡単に飛び込み、抜かれることもあった。 ⑤リスクマネジメント  攻撃しているときのリスクマネジメントが甘く、相手のFWに起点となる 縦パスを通されてカウンターを受けることがあった。人数はそろっているの に、誰がマークをしているのかがはっきりしていなかった。

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まとめ

 日本国内では海外選手とのゲームがなかなかできないため、日常との 違いに戸惑っている選手が多くいた。日本でもリーグ戦が整備され、各カ テゴリーで能力別、複数チームの参加OKによる公式戦出場機会が増え た。そして、年間で質の高いゲームが増えてきたことは間違いない。しか し、世界をスタンダードにした場合に、テクニックや持久力は世界を上回ら なければいけない要素であり、さらに質を追求し続けなければいけない。  また、日常からハイプレッシャーの中でプレーする環境が必要だと感じ た。日本人の特長で世界を上回る要素をさらに高め、課題も改善に向け て取り組んでいかなければいけない。  U-18年代のリーグ戦が開幕し、公式戦がある中で、多くの関係者のご 協力をいただいてこの遠征ができたことを感謝しています。

目指せ

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活 動 報 告

U-18日本代表 スロバキア遠征より

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日時・場所

<カタール/アゼルバイジャン遠征> 5月25日〜6月6日/カタール・ドーハ、アゼルバイジャン・バクー <ラオス遠征> 5月29日〜6月10日/ラオス・ビエンチャン

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チームの目指す方向性

Dream【夢】世界で舞う! 〜2016リオデジャネイロオリンピック&2018ロシア&2022カタールワー ルドカップへの序曲〜 ※94・95・96・97年生まれで世界を取る! Goal【目標】ファイナリストになる! ・決定機(90%以上の得点確率の雰囲気をつくる) ⇒ ゴールする ・ボールを奪う(できるだけ前で&速くボールを奪う) ⇒ ゴールを守る Plan ⇒ Style【方法⇒やり方】トータルフットボール 〜全員攻撃全員守備・いつでもどこでも誰とでもコンパクトに数的優位を 保つ〜 Plan ⇒ Concept【方法⇒あり方】共鳴=イメージを合わせてアクション を起こす! 〜チームで想像し共鳴して、積極的な行動をとる〜 Base【根底=基礎】考える力、自己決定力、向上心、好奇心、プラス思 考、明るさ、心遣いや思いやり Vector【方向性=行き先】自立&自律

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2012 年活動の流れと狙い(テーマの流れ)

 9月22日から行われるAFC U-16選手権を『横綱相撲』で突破し、世 界大会への切符を獲得することを目指す。そのために「2012年の志」と して、横綱相撲のイメージ=『勝率がトップクラスということ』『何があっても しっかり適応し、受け止めることができるということ』『雰囲気は圧倒・風 格・落ち着きの言葉が当てはまるということ』『誰からもリスペクトされる存 在であるということ』などを共有し、各活動を展開する。  1月のUAE遠征では「適応力①」として、中東の生活環境やピッチ環 境、そして対戦相手への適応力を測った。4月のモンテギュー国際大会で

ラオス遠征

(AFF U16 Preparatory Tournament 2012)

は「適応力②」として、世界基準のサッカー環境、世界基準のチームへの われわれの適応力を試すことを試みた。

 今回は、『質への適応力』としてカタール/アゼルバイジャン&ラオス遠 征にて、スタッフからの要求や精神的なトランス状態への適応力を高める ことを目的とした。今後は、AFC U-16選手権(FIFA U-17ワールドカッ プアジア最終予選)への方向性を決めると同時に、6月の東西ラージキャ ンプ『質への適応力』(5月に同じ)⇒7月『準備①』⇒8月『準備②』と計 画している。

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トピック(ゲーム内容から)

<カタール/アゼルバイジャン遠征> グループリーグ 第1戦 vs U-16ウズベキスタン代表 ●0-2  9月のアジア最終予選で対戦(世界切符決定戦)の可能性がある宿 敵との初戦は、今後を占う点において興味深いゲームであった。90分間 を通じて、相手の球際での強さやパスの飛距離の差に戸惑いながらも、 昨年5月の初対戦よりボールを支配できたことは評価できる。しかし、後 半になり、相手ディフェンスラインが高くなったことや、センターDFが中盤 に出て、ディフェンスラインが3人になっていること等を感じ、適応できな かった。  また、ゴール前の堅い守りを崩し切れず、逆に相手のロングキックとドリブ ルを中心とした攻撃を淡々とはじき返す、粘り強く背後をとられない1対1な ど、やるべきことを繰り返し、無失点に抑えることができなかった。今後は相 手ディフェンスライン背後のスペースとバイタルエリアを適宜使いながら、 ゴールへのイメージを共有し、選択肢を増やす中で決定機をつくりたい。 第2戦 vs U-16グルジア代表 ●3-6  立ち上がりの15分間、われわれの1-4-3-3に対し、相手の配置が低い 位置での1-4-2-4で、ボール保持のときには自然と組み手に分があり、シ ンプルに2-0とリードできた。前半のボールの動きや保持率では、3-0や 4-0の流れであった。しかし、終わってみれば、確率の低い攻撃イメージや 無理なプレーからのエラー、攻撃時における守備者の緩慢なマーク、相 手の意図を感じない思考力低下で、3-2にてハーフタイムを迎えた。  後半になり、相手の前線が高い位置に変化した1-4-2-4となり、相手 の素早いロングキックと力強いドリブル突破を駆使したダイレクトプレーか ら立て続けに失点し、3-6となった。われわれも試合終盤には多くのチャン スをつくったが、ゴールネットを揺らすことはできなかった。僅差のスポーツ というサッカーの特性を生かし、リードしてから何もなかったかのようにフェー ドアウトできる大局観を持ちたい。 第3戦 vs U-16トルコ代表 ○2-1  相手は昨年の大会覇者でもあり、他力ではあるが勝てば2位以内の 可能性も残るグループリーグ最終戦という入りではあったが、ゲームに向 かうバスの中で熟睡する選手が数人いたり、用具等の忘れ物をしたりと、 日本選手の自立度の低さをスタッフの経験値でカバーしたという内容で あった。  先取点を相手に与えることは改善点ではあるが、劣勢をはね返せる96 ジャパンの良さは健在で、特長として挙げられる。課題は、ボールを受ける 前に相手の状況を確認し、仲間と相談しながら、ボールの状況で適切な U-16日本代表 カタール/アゼルバイジャン遠征より

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ポジションをとるという、至って基本的な個人戦術にあった。また、人工芝 という「止める・蹴る」には最適な条件にもかかわらず、フリーな状態でもエ ラーを繰り返す成熟度の低さは大きな改善点である。 順位決定戦 vs U-16キルギス代表 ○3-0  「もう5分あれば得点できたのに、自分の特長を出せたのに……」など のコメントは残さないことを大前提で試合に臨んだ。今回のテーマでもある 『個人でも、チームでもマークを外す』実践をした。タイミングを相談し、ワン タッチパスでマークを外す、ワンツーパスでマークを外す、3人目の動きで マークを外す、サイドステップやバックステップからのチェックの動きでマー クを外す等を局面の随所で表現してほしかったが、その数は少なかった。 また、相手の変則的なマンツーマンに適応できず、チームで問題を解決す るどころか相手の状況すら把握できていなかった。  アジア最終予選は、「自分たちのやりたいことと相手の嫌がることを一 致させる」大局観を持ちながらゲームを進めたい。その目標達成に向け、ト レーニングにおいても、チームで問題解決する場面を増やす必要性を強 く感じた。 <ラオス遠征> グループステージ 第1戦 vs U-16オーストラリア代表 △1-1  オーストラリアのピッチを広く使ったビルドアップと、ワイドに張ったスピー ドのある選手に1対1をしかけられてしまうことで、コンパクトフィールドを形 成して試合を運びたい狙いとは逆に、それぞれの選手の距離間を広げら れてしまう立ち上がりだった。そのため、ボールを奪ったとしても各選手の 距離が遠いため、効果的にボールを動かすことができなかった。前半途中 から相手CBへプレッシャーをかけ始めてからは、縦、横をコンパクトに保つ ことができて、守備を安定させることができた。  攻撃は相手ディフェンスライン背後を狙うミドルパスからラインを下げさ せ、中盤にスペースができると、ある程度ボールを動かすことができた。先 制点もこの流れからこぼれ球を拾い、ゴールすることができた。  しかし、オーストラリアの個人のしかけへの対応が悪く、1対1の場面が ゴール前で多く見られ、その結果、前半から簡単にファウルを繰り返してし まっていた。後半3分に同点に追いつかれたFKも、サイド突破されたこと が原因であった。  集合してから2回の練習だけにもかかわらず、連動してボールをどこで奪 うか、またリスク管理などの良い部分は出たが、1対1の対応、チャレンジ& カバー、クロスの守備、サイドバックの攻撃参加、ビルドアップ時のパス コースをつくる動き直し等が課題に残る試合となった。 第2戦 vs U-16タイ代表 ○3-0  決勝に進出するには勝点3が必要になるゲームであった。しかも、この 日は気温35度、湿度75%の悪条件で、ゲームをコントロールすることが 必要であった。運良く開始1分にゴール前の壁パスの抜け出しからゴール が生まれたが、先制しているにもかかわらず、攻め急ぎと、状況を把握し、 常にチームでパスコースをつくれないため、パスミスから相手にゴール前ま で来られていた。  後半になり、「選手の距離感=バランス」「パスしたら動く」「2列目MF の飛び出し」を繰り返しできるようになり、3点目はここから生まれた。ゲー ムの流れを読む(大局観)、ワンタッチパス、ゴール前の質、チームとしてパ スコースをつくること等が課題に残った。 第3戦 vs U-16ラオス代表 ○3-0  ゴール前を固める守備からカウンターを狙うラオスに対して、試合開始 から後方ではボールが動かせるものの、効果的にバイタルエリアにボール を入れることができず、なおかつゴール前を攻略するところまで行けずに、 前半を0-0で終えた。  後半に入り、相手ディフェンスラインが高くなった背後を狙うことで、相 手が間延びし始め、左右にボールを振れるようになった。それと同時に相 手の体力も消耗してきたこともあり、ゴール前でプレーする回数が増え始 めた。その結果、残り15分で3得点した。90分間を通して、焦れずに相手 を動かし続けることの大事さを再確認したゲームであった。しかし、コンパク トな相手を意図的に広げる立ち位置の質が課題であった。 決勝 vs U-16オーストラリア代表 ○3-1  前回の対戦と同じようにCKから失点する展開になり、選手の距離間 を広げられ、1対1の個人で突破される状況をつくられたが、今回は守備で の集結(チャレンジ&カバー、挟み込みDF)が早く、粘り強い守備対応が できた。人数を掛け、ゴール前を固く守れることは日本の特長が出ていた と感じる。  オーストラリアの守備戦術(マンツーマン、4-2-4)に対応が遅れるが、 背後を狙うようになったら容易にカウンターをしかける場面が増え、終了 前に得点を奪うことができた。しかしながら、まだまだこの変化に対応でき る選手は限られている。チーム全体が一丸となりつかんだ優勝であった が、この時期にチームの一体感を経験できたことが大きな成果であった。

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成果と課題

 前回の課題でもあった、コンセプトである「共鳴」を実現するためにも、 「相談する」ことに取り組んだ。カタール/アゼルバイジャン遠征メンバー は、徐々にボールが来る前に相談できるようになり、同じパスコースに人 が重なることは少なくなったものの、技術的エラーが多く、効果的な展開 は少なかった。しかし、大会を通じてボール保持はできたと言える。  一方、ラオス遠征メンバーは立ち位置をとることはできたが、相手の変 化に対応して「相談する」ことができなかったために、バイタルエリアで決 定的な場面をつくるタイミングを計るボール保持ができなかった。  結局は両チームの課題は同じであり、ゴールから逆算したボールの動か しや人の動き、相手の変化等をイメージし、共有するという相談までには 至らなかった。  96ジャパンのストロングポイントでもある粘り強い守備の発揮は、トレー ニングやゲーム、ミーティングを繰り返すことで徐々に質が上がっていっ た。個人で対応するのではなく、チームとして連動し、囲い込む守備は良 かった。さらに90分間を戦い抜く持久力は他国と比べても、より勝ってい る日本の特長であった。しかし、クロス対応やシンプルにはね返すクリアに はまだまだ課題が残った。

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まとめ

 アジア最終予選を3カ月後に控え、大まかなメンバー決定をし、チーム の和を徐々につくっていかなくてはならないこの時期に、2つのチームに 海外遠征を体験させることができたのは非常に有益であった。そのため 参加人数も増え、多くの初招集選手に刺激を与えることができた。初招 集の選手はチームに残り、アジア最終予選に出たいという心から「今日の プレーはどうだったのか?」ということを気にする姿が多々見られた。しかし、 96ジャパンの合言葉でもある『今日のチームはどうでしたか?と尋ねる個 人にする』『練習は本気で、本番は遊び心でプレーする』には、まだまだ近 づけない。日本人の特長である「協調性や我慢強さ、犠牲心や器用さ」、 そして日本文化である「世間体・島国根性」を基に、『協調性のある想像 力』や『好奇心ある強気なプラス思考』へと高めたい。そのために、スタッ フ一同が『手綱を緩めたり強めたり、引っ張ったり押したり』しながら日本 人の特長をアピールする方向を目指したい。  最後に、リーグ戦や大会において大切な時期に選手を派遣していただ き、各チーム関係者には、心より感謝しています。今後ともよろしくお願い します。

目指せ

世界のトップ

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活 動 報 告

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日時・場所

<西日本> 6月17日〜20日/大阪府・J-GREEN堺 <東日本> 6月21日〜24日/神奈川県・しんよこフットボールパーク、千葉県・秋津 運動公園サッカー場

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チームの目指す方向性

Dream【夢】世界で舞う! 〜2016リオデジャネイロオリンピック&2018ロシア&2022カタールワー ルドカップへの序曲〜 ※94・95・96・97年生まれで世界を取る! Goal【目標】ファイナリストになる! ・決定機(90%以上の得点確率の雰囲気をつくる) ⇒ ゴールする ・ボールを奪う(できるだけ前で&速くボールを奪う) ⇒ ゴールを守る Plan ⇒ Style【方法⇒やり方】トータルフットボール 〜全員攻撃全員守備・いつでもどこでも誰とでもコンパクトに数的優位を 保つ〜 Plan ⇒ Concept【方法⇒あり方】共鳴=イメージを合わせてアクション を起こす! 〜チームで想像し共鳴して、積極的な行動をとる〜 Base【根底=基礎】考える力、自己決定力、向上心、好奇心、プラス思 考、明るさ、心遣いや思いやり Vector【方向性=行き先】自立&自律

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2012 年活動の流れと狙い(テーマの流れ)

 9月22日から行われるAFC U-16選手権を『横綱相撲』で突破し、世 界大会への切符を獲得することを目指す。そのために「2012年の志」と して、横綱相撲のイメージ=『勝率がトップクラスということ』『何があっても しっかり適応し、受け止めることができるということ』『雰囲気は圧倒・風 格・落ち着きの言葉が当てはまるということ』『誰からもリスペクトされる存 在であるということ』などを共有し、各活動を展開する。  1月のUAE遠征では「適応力①」として、中東の生活環境やピッチ環 境、そして対戦相手への適応力を測った。4月のモンテギュー国際大会で は「適応力②」として、世界基準のサッカー環境、世界基準のチームへの われわれの適応力を試すことを試みた。  カタール/アゼルバイジャン&ラオス遠征では『質への適応力』として、 スタッフからの要求や精神的なトランス状態への適応力を高めることを目 的とした。今回も、選手層を厚くするという目的のもと、『大まかな適応力 育成』を目的とした。今後はAFC U-16選手権(FIFA U-17ワールドカッ プアジア最終予選)への方向性を決めると同時に、7月イラン遠征『準備 ①』(アジア最終予選シミュレーション遠征)⇒8月『準備②』(豊田国際 ユースサッカー大会と国内キャンプ)を計画している。

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トピック(96 語録より)

 コンセプトである『共鳴』(=イメージを合わせて積極的なアクションを起 こす)を達成するための手段として、96ジャパンではいくつかのシステムを 採用している。システム自体はただの数字の組み合わせであり、数字の

東西ラージキャンプ

【報告者】吉武博文

(U-16日本代表監督)

U-16日本代表

羅列に過ぎない。また、WVS(ダブル・ブイ・システム)は身も心も賢くなる アイテムであることを前置きし、96ジャパンだけで通用する「96語録」=シ ステムをUAE遠征に続き紹介する。 攻撃時の配置  基本的にはWVS(1-4-3-3)であるが、配列や配置は見方によってさま ざまである。  WV(ダブル・ブイ)とは、3人の中盤の選手と3人の前線の選手が、V の字に並ぶのでそう命名した。前線の3人は中央の選手を中心に左右 に大きく開いたVの字となる。ゼロトップやトップレスという言い方もある が、96ジャパンでは中央の選手をフリーマンと呼んでいる。  中盤の3人の選手は鋭角に開いたVの字となる。1ボランチ・2オフェン シブやセンターMF・2シャドーなどの言い方もあるが、96ジャパンではアン カーと左右のフロントボランチと呼んでいる(ポジションの呼び名は次回 以降に紹介する)。 <攻撃時のWVS変化例・見え方例> ●4人のDFと3人の中盤、3人の前線という構成で、1-4-3-3 ●2人のDFとディフェンスラインの前のスペースを埋めながら組み立てる 3人の中盤、ゴールに直結するプレーを演出する3人のジョイント役割、 いわゆるゴールを挙げるFWという構成で、1-2-3-3-2 ●2人のDFと6人の中盤、2人のトップという構成で、1-2-6-2 ●2人のDFと1人のスペースマーカー、5人の中盤と2人のゴールゲッ ターという構成で、1-2-1-5-2 ●2人のDFと1人のスペースマーカー、2人のワイドな選手と2人の組み立 て役、1人のフリーマンと2人の点取り屋という構成で、1-2-1-2-2-1-2  ……等々かなり流動的である。育成年代ということもあり、システムは 「誰々が何々したら、自分はどこどこに位置する」という共鳴を実現するた めのメソッドであると捉えている。

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まとめ

 96ジャパンにとって、2012年の最大の目標であるアジア最終予選を 3カ月後に控え、7月に現地イラン(テヘラン)にてシミュレーション遠征を 予定している。今回の東西ラージキャンプでは、そのシミュレーション遠征 に参加する選手発掘が大きな目的であった。  キャンプの冒頭に、「この中から3〜4人の選手をピックアップしたい」こ と、「状況に応じてポジションをとれる選手を求めている」こと、「攻守のイ メージを持ち、仲間と共鳴する心を持っている選手を目指してほしい」こと を伝えた。さらに、それぞれのポジションにおける求人特性をGK=ビルド アップ力、DF=粘り強くねちっこい守備力、MF=ゴール方向を狙いなが らも展開する判断力、FW=ゴールへ向かって走る・止める・蹴る力を持っ ている選手が理想像であることも併せて伝えた。  スタッフは、50人ほとんどの選手が3泊4日の短い期間で「ギラギラ」し て自分をアピールする姿をイメージしたが、『草食系でさらっと系の現代っ 子』の縮図を払拭する選手が少なかったのは残念である。それに比べ、 一緒にキャンプを行ったU-16年代のカタール(アスパイヤー)の選手たち は、2022年のFIFAワールドカップ開催を控え、『意欲と気迫』があった。 2002年にはあった活気を常識に、そして日常にしたいものである。  最後に、各種全国大会予選や地域大会のある中、チームづくりには欠 かせない大切な時期に選手を派遣していただき、各チーム関係者には心 より感謝しています。今後ともよろしくお願いします。

参照

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