成 膜 大 学 理 工 学 研 究 報 告 J.Fac.Sci.Tech.,SeikeiUniv. Vo1.53No.1(2016)pp.35-38 (研 究 速 報)
オ ー プ ンデ ー タ とQGISを
用 いた 災 害 避 難 支 援 シス テ ム の 提 案
村 田 寛 奈*1,栗 林 伸 一*2DisasterEvacuationsupPortsystemwithopenDataandQGIs
KannaMURATA*landShin-ichiKURIBAYASHI*2 (April30,2016) 1.は じ め に 地 震 な どの 災 害 時 、 従 来 の 地 図 ア プ リを用 い た 場 合 、 津 波 浸 水 や 土 砂 崩 れ の 危 険 性 が あ る区 域 を通 る避 難 ル ー トを 表 示 す る可 能性 が あ り、 土 地 勘 の な い 非 定 住 者 は 危 険 区 域 を 通 っ て しま う危 険 が あ る。 そ こで 、本 研 究 で は 、非 定 住者 を対 象 に 、地 震 な どの災 害 時 に津 波 浸 水や 土砂 崩 れ な どの2次 災害 が発 生す る危 険性 の あ る区 域 を避 けた 避 難 ル ー トの 選 択 法 を明 らか に す る。2次 災 害 の危 険 区域 デ ー タや 避難 所 デ ー タに つ いて は 公 開 され て い る オ ー プ ンデ ー タ[1]とそれ を 可 視 化 す る Gls(今 回 はQGIs(QuantumGeographicInformationsystem) [2])を用 い る こ と を前 提 とす る。 また 、今 回 は 、安 全 ・防 災 関 連 の オ ー プ ンデ ー タが 多 く公 開 され て い る北 海 道 室 蘭 市[3]を対象 とす る。 さ らに 、災 害 の 規模 が大 き く避 難 所 に避 難 す るケ ー ス を想 定 し、緊急 避 難 場所 に一 時 的 に避 難 す る だ けの ケ ー ス は除 く。な お 、本 論 文 は文 献[5]を発 展 さ せ 、検 討 結果 を と りま とめ た もの で あ る。 2.避 難 ル ー トの 特 定 法 2.1使 用 す る オ ー プ ンデ ー タ 室 蘭 市HPで 公 開 され て い るオ ー プ ン デ ー タ[3]の中 か ら、 今 回使 用 した 主 な もの を 表1に 示 す 。2次 災 害 の 発 生 区 域 、避 難 ル ー トを 特 定 す るた め に 避 難 所 、 道 路 情 報 な どが含 ま れ る。今 回 、オー プ ンデ ー タ(CSVフ ァイ ル) をKMLフ ァイ ル に 変 換 し、危 険 区域 や 避 難 所 の 座 標 を取 得 した。津 波 浸水 深 さ、洪 水 浸水 深 さ(一 部)、 都 市 計 画 現 況 図 平 成23年 版 道 路 はKMLフ ァイ ル に うま く変 換 で き な か っ た た め 、 市 販 ツ ー ル を用 い て 手 動 で 座 標 デ ー タ *1:情 報 科 学 科4年 生 *2:情 報 科 学 科 教 授(kuribayashi@st .seikei.ac.jp) を 作 成 し た 。 表1今 回 使 用 す る主 な オ ー プ ンデ ー タ 卍濫 避 難 場 所 一 2014/6/23 津波 浸水 深さ 2013/8/30 洪水 浸水 深さ 2013/8/30 土砂 災害 警戒 区域(急 傾 斜地) 2013/8/30 土砂 災害 警戒 区域(土石流) 2013/8/30 土砂 災害 警戒 区域(未指定 急傾 斜地) 2013/8/30 土砂 災害 特別 警戒 区域(急傾斜 地) 2013/8/30 土砂 災害 特別 警戒 区域(土石流) 2013/8/30 土砂 災害 特別 警戒 区域(未指 定急傾 斜地) 2013/8/30 が け崩れ 危 険 区域 2013/8/30 土石 流危 険 区域 2013/8/30 都 市計 画 現況 図平 成23年 版(道 路) 2013/12/11 2.2危 険 区 域 を 経 由 す る ル ー トの 特 定 法 現 在 地 か ら避 難 所 ま で の 避 難 候 補 ル ー ト上 に 津 波 浸 水 や 土 砂 崩 れ な ど の 危 険 区 域 な ど が あ れ ば 、 そ の ル ー ト を 避 難 候 補 か ら 除 外 す る 必 要 が あ る。 今 回 、 避 難 候 補 ル ー ト と危 険 区 域 を 複 数 の 直 線 か ら な る と 考 え 、 避 難 候 補 ル ー トの 直 線 と危 険 区 域 の 直 線 が 交 差 し た 場 合 に`危 険' と判 定 す る こ と と し た 。 ま た 、 避 難 所 の 候 補 も複 数 考 え られ 、 現 在 地 周 辺 で 所 要 時 間 が 最 も短 い 順 に 選 択 す る。 図1に 示 す ケ ー ス を 例 に 、 具 体 的 な 交 差 判 定 手 順 を 説 明 す る 。x軸 を 経 度 、y軸 を 緯 度 と し、 点 は 経 度(ax1,ax2 ・;bx1,bx2…)、 緯 度(ay1,ay2…;by1,by2…)か ら 成 形 さ れ る も の とす る 。 〈 ス テ ッ プ1>避 難 候 補 ル ー トの 区 間 をLa1,La2,La3の 順 に 特 定 し 、 危 険 区 域 と の 交 差 判 定 を 行 う。 <ス テ ッ プ2>避 難 候 補 ル ー トの1区 間 ご と に 、 危 険 区 域 の 区 間(Lb1,Lb2,Lb3,Lb4,Lb5,Lb6,Lb7の 順)と の 交 差 を 判 定 す る 。 1)危 険 区 域 の1つ 以 上 の 区 間 と 交 差 し た ら 、そ の 避 難 候 補 ル ー トを 除 外 し 、 次 の 避 難 候 補 ル ー ト を 対 象 に 同 様 の 交 差 判 定 を 実 施 す る。 一35一成 践 大 学 理 工 学 研 究 報 告 Vol.53No.1(2016.6) a1(ax1,ayl}
画
b1〔b翼画'
b7{b¥7,bv7r画 …
b4{bx4,by4} a4⊂a罵4ρav4⊃ 画 b5⊂b翼5,by51圖
図1避 難 候 補 ル ー トと危 険 区 域 の 例 2)危 険 区 域 の 全 て の 区 間 と 交 差 し な か っ た ら 、避 難 候 補 ル ー トの 次 の 区 間 の 交 差 判 定 を 同 様 に 実 施 す る 。 3)避 難 候 補 ル ー トの 全 て の 区 間(今 回 の 例 で は Lal,La2,La3)で 交 差 し な か っ た ら 、 そ の 避 難 候 補 ル ー ト を 避 難 ル ー ト と し て 採 用 す る 。 と こ ろ で 、1つ の 避 難 候 補 ル ー トに 対 し、 全 て の 危 険 区 域 の 交 差 判 定 を 実 施 す る こ と は 無 駄 で あ る た め 、交 差 判 定 を 行 う危 険 区 域 を 制 限 す る 。 具 体 的 に は 、x軸 を 経 度 、y軸 を 緯 度 と し 、避 難 候 補 ル ー トの 最 大 経 度(xmax)、 最 小 経 度(x _min)、 最 大 緯 度(y_max)、 最 小 緯 度(y二min)か ら 判 定 区 域 を 求 め 、そ の 判 定 区 域 に 全 体 ま た は 一 部 で も含 ま れ る 危 険 区 域 の み 交 差 判 定 を 実 施 す る 。 図2の ケ ー ス で は 、 塗 りつ ぶ され て い る 危 険 区 域 の 交 差 判 定 の み を行 う。 yr鰍 L /\ 「1 1/危
険判定する危険区i
1 ノ/…//
● ymin風
∠L
●
∠
xmin ixmax ● 図2交 差 判 定 を行 う危 険 区域 の選 択 3.評 価 結 果 と 考 察 現 在 地 は非 定住 者 が 多 く訪 れ る観 光 地 とす る。 対 象観 光 地 は 室 蘭観 光 協 会[41から観 光 地 自体 が 危 険 区域 内 に属 さ な い こ と、避 難 所 に指 定 され て い な い こ と、を条 件 に10 ケ所(表2参 照)選 定 した。 表2観 光 地 と避 難 ル ー ト特 定 法 の 効 果 現 在 地(観 光 地)特定法の効果
の 有 無 A1 ○ A2 ○ A3 × A4 × A5 ○ A6 × A7 × A8 × A9 ○ A10 ×(注) 0!艇 差ξの蘇 あ ク、xノ 綻 差ξの螺 な し 働 ≦会での灘 ノ〃一 んが)鹸 畷 を遍 る。 3.2評 価 結 果 と考 察 2.2節 で提 案 した 避 難 ル ー ト特 定 法 を用 い る こ とに よ り、どれ だ け危 険 区域 を避 け る こ とが で き る か評 価 した。 図3は 現在 地(観 光 地A1)か ら避 難 所Bま で の避 難 ル ー トで あ る。 避 難 ル ー ト上 に危 険 区域 と交 差 す る場 所 が あ り、危 険 と判 定 され る。 図4は 避 難 ル ー ト特 定 法 を使 用 した場 合 の観 光 地A1か らの避 難 ル ー ト(避 難 所C)で あ り、危 険 区域 と交差 す る場 所 が な い た め 安 全 に避 難 で き る こ とが わ か る。 同様 に 、 図5お よぶ 図6は 現在 地 が観 光 地A2の 場 合 の 例 を 示 す 。 図6に 示 す 避 難 所Eま で の避 難 ル ー トで安 全 に避 難 す る こ とが で き る。 この 例 で は避 難 時 間 が3分 か ら6分 に長 くな る。 そ の他 の対 象 観 光 地 も含 め た全 体 の評 価 結 果 を表2に 示 す 。 避 難 ル ー ト特 定 法 を使 用 す る こ とに よ り効 果 が 得 られ る観 光 地(最 短 経 路 が 危 険 区域 を通 る場 合)は"○"、 効 果 が得 られ な い観 光 地 は"×"で 示 す 。この 結 果 か ら、 室 蘭 市 の特 定観 光 地 か ら避 難 す る場 合 、避 難 ル ー ト特 定 法 を使 う こ とに よ り、土地 勘 の な い非 定住 者 で も約45% の ケ ー ス で危 険 区域 を避 け 、安 全 に避 難 す る こ とが で き る こ とが わ か る。 さ らに 、2.2節で提 案 した避 難 ル ー ト特 定 法 を も とに 危 険 区域 を避 け た避 難 ル ー トを表 示 す るプ ロ グ ラム を内 製 し、現 在 地 を入 力 す る と安 全 な避 難 ル ー トの座 標 デ ー タ が 出力 され る こ とを確 認 した。 3.1評 価 条 件 今 回 は 、土地 勘 が な い非 定住 者 を対 象 と して い る た め 、 一36一成 践 大 学 理 工 学 研 究 報 告 Vol.53No.1(2016.6) 4.む す び 本 論 文 で は 、オー プ ンデ ー タ の利 用 を前 提 に、地震 な ど の 災害 発 生 時 に2次 災害 の危 険 性 の あ る 区域 も避 け る避 難 ル ー トを表示 す る災 害 時避 難 支 援 シス テ ム を提 案 した。 北海 道 室 蘭 市 の 特 定観 光 地 か ら避 難 す る こ とを想 定 した 評 価 例 で は、避 難 所 まで の 最短 ル ー トの約40%が 危 険 区 域 を通 る可能 性 が あ り、提案 方 式 に よ りそれ ら危 険 区域 を 通 らない 安 全 な避 難 ル ー トを表 示 で き る こ とを確 認 した。 今 回 は 災 害 の 規模 が 大 き く、 避 難 所 に 避 難 す るケ ー ス を想 定 した 評価 を 主 に 行 っ た が 、 緊 急 避 難 場 所 に一 時 的 に避 難 す るだ け の ケ ー ス に お い て も同様 に2次 災 害 の 危 険 が あ る区 域 を 通 る危 険 性 が あ る こ と も合 わ せ て 確 認 し て い る。 今 後 、 ナ ビゲ ー シ ョン との 連 携 、 今 回 は 手 動 で 取 得 し た避 難 候 補 ル ー トの座 標 デ ー タ 自動 取 得 、 な ど を検 討 す る必 要 が あ る。 ま た 、今 回 は 全 て の2次 災 害 の 危 険 区域 を 通 らな い 前 提 で 評 価 した が 、 震 度 や 震 源 地 な ど に よ っ て は2次 災 害危 険 区域 を通過 で き る可 能性 もあ り、 そ れ を考 慮 した避 難 ル ー トの選 択 法(避 難 時 間 が よ り短縮 可 能)も 検 討 して い く必 要 が あ る。