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日本の食糧事情とその問題点 (特別講演会要旨)

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昭 和34年12月(1959) 一79-一 一

特 別講 演会要 旨

日 本 の 食 糧 事 情 と そ の 問 題 点

講 師 東京 大学教授 食糧 研究所 長 農 博 学 会 の 恒 例 の 講 演 会 は10月30日 東 京 大 学 教 授 兼 食 糧 研 究 所 所 長 で あ る桜 井 芳 人 博 士 に お い で を 願 つ て こ日 本 の 食糧 事 情 とそ の 問 題 点 。 に つ い て 約2時 間 にわ た り催 され た 。 現 在 の 食糧 問 題 は ど うで あ るか,改 善 は ど うな され るべ きか 等 を 極 め て 平 易 に 説 明 さ れ 今 後 の 食 糧 問 題 に 対 し て 私 達 の 取 る べ き方 向 を 示 され た。 こ の こ とは 食物 学 に 関 係 す る 私 達 に とつ て は 大 き な 収 穫 で あ つ た 。 講 演 要 旨 は 次 の 通 りで あ る。 日本 の 食 糧 事 情 は 諸 因 つ ま り国民 の 所 得 高,農 産 物 の 生 産 状 況,各 個 人 の 食 習 慣 等 に よつ て 左 右 され る 。現 時 の 国 民 の 所 得 高 は 徐 々に 上 昇 し,こ こ10年 間 で2倍 の 増 加 を み せ.1年 間 に 約5∼6°oの 増 加 を 示 し て い る。 この 国 民 の 所 得 の 増 加 は 今 まで の 澱 粉 質 系 の 米, い も 類 の 食 物 か ら獣 肉 類,乳 製 品,果 物 等 の 消 費 弾 力 係 数 の 低 い 良 好 な る 質 の 食物 を 摂 取 す る よ うに な りそ の 食 事 形 態 を 変 化 さ せ て い る。 ま た 農 業 の 進 歩 及 普 及 特 に 稲 作 技 術 の 進 歩 に よ り米 の 収 穫 高 は 大 戦 前 よ り2 ∼2.5割 の増 大 を 示 し今 後 も 増 大 の 傾 向 あ り と推 定 さ れ る。 一 時 粉 食 奨 励 が 盛 ん に な され て い た が そ れ は 昭

和23∼28年 頃 世界 的 に 小 麦 が 増 産 され 世 界 の 市 場 で 余 りそれ に 反 し て 米 は 不 作 とな り米 食 国 で 奪 い 合 い とな つ た。 そ れ で 米 は 割 高 と な るの で 米 を 輸 入す る よ りも 小 麦 の 輸 入 の 方 が 安価 と な る とい う理 由 で 厚 生 省 は 大 い に 奨 励 し た 。 しか し 昭 和28∼29年 に な る と米 が 余 つ て き て30年 以 降 は 米 と小 麦 と どつ ち を 輸 入 し て も経 済 的 に は あ ま り差 が な か つ た の で 国 民 の 嗜 好 に 合 う米 食 を奨 励 す る よ うに な つ た 。 この 意 味 か ら も粉 食奨 励 は 意 義 が な くな つ た 。 他 の 理 由 と し て ビ タ ミンBコ の 不 足 に よつ て起 る 脚 気 を 防 ぐ意 味 で 小 麦 がBi含 有 量 の た め 粉 食奨 励 を 行 つ た が 現 在 は 工 業 的 に 生 産 され る 強 化 米 を 食す る こ とに よ りこの 問 題 は 解 決 され る と こ ろ とな つ た。 また パ ン食 は 副 食 摂 取 とい う利 点 が あ る 。 しか し 小 麦 消 費量 は 昭 和25年 が 最 高 で それ 以降 は だ ん だ ん と下 降 し,小 麦 の 一 用 途 で あ る 食 パ ンの 消 費 量 は減 り菓 子 パ ンの 消 費 量 が 増 加 し て い る 状 況 で あ る。 牛 乳5倍 肉 類2。5倍に 反 し 小 麦 の 摂 取 量 は 増 加 し て い な い の が 現 況 で あ る 。 そ れ で 今 年 発 表 さ れ た 栄 養 白 書 を み て み る と 日本 人 の 栄 養 の 摂 取 状 態 は

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一80一 ① 蛋 白 質 が 少 い ② 脂 肪 の 理 想 摂 取 量 は30∼359で あ る が 現 状 は 209で あ る。 ③ 炭 水 化 物 こ とに 澱 粉 が 多 す ぎ る。 ④ ビ タ ミン類,無 機 質 類 が 少 な い。 で あ る。 し た が つ て 栄 養 改 善 の 方 向 が 問 題 とな つ て く るの で あ るが そ の 改 善 策 とし て,① の た め に農 業 的 方 面 か ら畜 産 物,大 豆 の 増 産,消 費 面 か ら は 安 い大 豆 製 品 で 摂 取 す る。 ② の た め に畜 産 物 の 摂 取 を 増 加 す れ ば 自然 脂 肪 は 摂 取 せ られ る。 また 脂 肪 源 に は 畜 産物 の 他 に 植 物 油 を 多 量摂 取 す る よ うにご種 々調 理 上 研 究 の 余 地 が あ る。 ③ の た め に 澱 粉 類 は総 カ ロ リーの75∼76° °を 占 め て い る の で70°o以 下 に 下 げ る よ うに す る 。④ の た め に ビ タ ミン類 は 加 工 貯 蔵 調 理 に よつ て そ の含 有 量 は 大 き く違 つ て くる が 食 物 を ま づ く し て まで もそ の栄 養 を 保 つ よ り,食 品強 化 を 行 うこ と に よ り ビ タ ミン類 を 補 うよ うに す る。 また 無 機 物 特 に 日本 人 に 不 足 しが ち なCaも ビタ ミ ン と同 様 食 品 強 化 と し て摂 取 す る方 法 を取 る 。 以上 述 べ た こ とは 日本 全 体 の 平 均 傾 向 で あ るが 食 物 食物学 会誌 ・第7号 摂 取 状 況 は 地 方 や所 得 $'よつ て も相 当 異 る も の で あ る。 大 都 会 の 中流 家 庭 以 上 で は 栄 養 の 取 りす ぎ に よ る 障 碍 が 起 る程 で改 善 の 必 要 は な い が,農 村,低 所 得 階 層,労 働 者 階 層 は ま だ ま だ 澱 粉 系 の 食 物 が 主 流 で 肉 ,,牛 乳,果 物 の 摂 取 量 が 少 な い の で もつ と栄 養 改 善 を要 す るの で あ る。 そ こ で 各 食 品 の100カ ロ リー 当 り の 価 格 を 示 す と,穀 類 一3円,砂 糖 一一5∼6円 食 用 油 一5∼6円 畜 産 物 一15∼20円 野 菜,果 物 一20円 とな り穀 類 が最 も安 い の で ど うし て も 多 く取 る とい うこ と に な つ て し ま うの で あ る。 とい うの は 穀 類 や 砂 糖 は 国 内=増産 と輸 入 増 加 に よ り過 剰 状 態 に あ るか らで あ る。 し か し個 人 の 所 得 が 増 加 す れ ば 澱 粉 系 の 食物 は 減 り畜 産 物 が 増 加 す る の が 世 界 的 徴 候 で あ るが 日本 で は 白米 の 旨 さが 原 因 し て そ れ が あ て は ま ら な い 。 現 在1人1 年 間 の米 の 摂 取 量 は9斗 で 総 カ ロ リーの50%を 占 め て い る。 故 に 今 後 の 栄 養 改 善 の 方 向 は畜 産 物 の 増 産 に務 め, 所 得 の 上 昇 に よ る 食 物 の 質 の 上 昇 と 国民 間 へ の栄 養 知 識 の 普 及 を 待 た ね ば な ら な い 。 (大 食 三,川 崎 晃 子,西 田 幸 子,宮 崎 明子 記)

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