中学野球選手におけるステップ脚膝関節および股関節の力学的仕事量と肩関節トルクの関係
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(2) 76. 理学療法学 第 45 巻第 2 号. の重要な役割であると考えられる。. 球速を測定した。. ステップ脚の下肢関節動作が投球動作中に及ぼす影響. 対象者には 10 分間のウォーミングアップの後に,全. を投球障害予防の観点から生体力学的な比較検討を行っ. 身に 49 個の赤外線反射マーカー(直径 12 mm)を貼付. た報告の中で,小学生群と高校生群の投球動作を比較し. した。マーカーの貼付位置は頭頂,頭部前方・後方,第. た報告では,球速の速い高校生群では肩関節にかかる力. 7 頸椎,第 10 胸椎,胸骨柄,剣状突起,仙骨,右肩甲. 学的負荷は高値を示したが,その値を球速で除した球速. 棘中央,左右の肩峰,肘関節内側上顆および外側上顆,. 比負荷では小学生群が高値を示しており,上肢関節に依. 尺骨茎状突起,橈骨茎状突起,第 3 中手骨頭,上前腸骨. 存した投球動作不良が球速比肩関節負荷を増大させる因. 棘,上後腸骨棘,大転子,膝関節内側上顆および外側上. 子になったと報告している. 7). 。すなわち,球速による影. 響を除外した検討を行うことで,投球動作不良と投球時 に上肢関節に加わる力学的負荷の関係を明らかにするこ. 顆,足関節内果および外果,踵骨,第 1 中足趾節関節, 第 2 中足趾節関節,第 5 中足趾節関節,第 2 末節骨,大 中央外側(膝関節外側上顆と大転子の中央),下. 中. とができると考えられる。. 央外側(足関節外果と膝関節外側上顆の中央)とした。. また,先に述べた如く,ステップ脚の役割は FC から. 測定の取り込み周波数は 250 Hz とし,測定動作として,. BR の区間においても前後半それぞれに別の役割がある. 対象者に 5 メートル先のネットに向けてフォースプレー. ことから,その区別をした検討方法も重要であり,この. ト上で 4 球の全力投球を行わせた。すべての対象者に対. ような視点から下肢関節動作の役割を検討することは運. し,「試合同様にストレートを全力投球するように」口. 動連鎖に着目した投球動作の評価や投球障害肩に対する. 頭で指示し,その中で最高速度を記録した試技を解析に. 理学療法の介入方法を明確にする一助になると考えら. 使用した。. れる。. データ解析はモーション・キャプチャー・システムに. そこで,本研究は投球中の球速比肩関節トルクが高値. よって得られたデータから筋骨格モデル動作解析ソフト. を示すものは FC 以降の下肢関節動作の制御や下肢関節. nMotion(nac 社製)で被験者の身体寸法に合わせてス. での力学的エネルギーを産出する能力が低い投球動作を. ケーリングされた筋骨格モデルを作成し,逆運動学解析. 行っていることから,膝関節および股関節の力学的仕事. を行いモデルの各身体部位の座標位置や各関節角度を算. 量は低値を示すという仮説に基づき,ステップ脚膝関節. 出した。さらに,逆動力学解析を行い,床反力計から得. および股関節の力学的仕事量と肩関節トルクとの関係を. られた外力データから,筋骨格モデルの関節トルク. 明らかにすることを目的とした。 対象および方法. (Joint Torque:以下,JT)を算出した。 対象者の群分けとして,体格や球速は肩関節に加わる 力学的負荷を反映する指標であることから,それらの影. 対象は当院が主催するメディカルチェックに参加した. 響を除外するべく,投球側肩関節内旋トルクの最大値を. 中学野球選手の投手 35 名であった。除外基準は左投げ,. 身長・体重・球速で除して正規化した値(Normalized. 疼痛により全力投球困難なもの,肩関節・肘関節の手術. Shoulder Internal Rotation Torque:以下,nSIRT,Nm/. 歴があるもの,サイドスロー・アンダースローのもの,. 7)8) ,nSIRT の平均値から標 cm*kg*km/h)を抽出し. ステップ脚の接地位置が過度にインステップやアウトス. 準偏差の ‒1/2 を超えて低いものを Low Group(以下,. テップを呈するものとした。なお,インステップは FC. LG) ,標準偏差の 1/2 を超えて高いものを High Group. 時に軸足第 2 末節骨のマーカーよりステップ足踵骨の. (以下,HG)として二群に群分けした。つまり,投球時. マーカーが前方(三塁側)に接地することとし,アウト. に生じる肩関節への球速比負荷が小さい群を LG,その. ステップは FC 時にステップ足第 2 末節骨のマーカーが. 負荷が大きい群を HG として群分けを行った。. 軸足踵骨のマーカーより後方(一塁側)に接地すること. 次に,nMotion から抽出された股関節の矢状面・前額. と定義した。そして,すべての対象者の保護者および指. 面・水平面上の運動方向および膝関節の矢状面上の運動. 導者に本研究の目的,個人情報の保護等について口頭お. 方向における関節角度を時間微分することで関節角速度. よび文書で説明し,文書にて同意を得た。なお,本研究. (Joint Angular Velocity:以下,JAV)を算出し,それ. は藤田整形外科・スポーツクリニック倫理委員会の承認. ぞれの JAV と JT の内積から関節トルクパワー(Joint. (151127-1)を得て行われた。. Torque Power:以下,JTP)を算出した。そして,FC. 投球動作の測定は屋内実験室で行い,上方に 6 台,下. から BR の時間軸を 100%(単位:%pitch)として各対. 方に 4 台の合計 10 台の赤外線カメラを備えたモーショ. 象者の JAV,JT,JTP を規格化し,それぞれのパラメー. ン・キャプチャー・システム(Motion Analysis 社製,. ターの変化を各群別に平均化して,比較検討した。. MAC3D system)および床反力計(Kistler 社製)を用. さらに,JTP を数値積分することで力学的仕事量を. い,マルチスピードテスターⅡ(SSK 社製)によって. 算出した。なお,それぞれの符号は股関節では屈曲・内.
(3) 中学野球選手の膝・股関節の力学的仕事量と肩関節トルクの関係. 77. 図 1 投球フェーズの分割方法. 表 1 各群の背景比較 LG (n=10). HG (n=10). p. Age (years). 13.7 ± 0.5. 13.5 ± 0.4. n.s. Height (cm). 167.0 ± 5.7. 159.9 ± 7.0. <0.05. Weight (kg). 57.1 ± 11.1. 49.2 ± 10.0. n.s. Ball Speed (km/h). 99.9 ± 7.0. 91.7 ± 12.1. n.s. 転・内旋を正,伸展・外転・外旋を負とし,膝関節では. 行った。統計学的有意水準は 5% とし,効果量として. 屈曲を正,伸展を負とし,JT および JTP は体重で除し. Cohen’s d を算出し,d = 0.2 は効果量小,d = 0.5 は効. 9). た値を解析に使用した 。 JTP の解釈として,阿江ら. 果量中,d = 0.8 は効果量大として解釈した 10). は JT および JTP など. のパラメーターを動作と関連づけて解釈する場合には,. 11). 。. 結 果. 大きさの他にその正負を考慮する必要があると述べてい. 各群の人数は 10 名ずつとなり,LG は平均年齢 13.7. る。たとえば,膝関節では JT が負(伸展トルクの発揮). ± 0.5 歳, 平 均 身 長 167.0 ± 0.5 cm, 平 均 体 重 57.1 ±. であり,JAV が正(屈曲角速度の増大)であれば,そ. 11.1 kg, 平 均 球 速 99.9 ± 7.0 km/h,HG は 平 均 年 齢. れらの内積により JTP は負となるが,この場合には,. 13.5 ± 0.4 歳,平均身長 159.9 ± 7.0 cm,平均体重 49.2. 膝関節伸展筋群が遠心性筋活動によりパワーを発揮して. ± 10.0 kg,平均球速 91.7 ± 12.2 km/h であり,身長の. いると解釈される。一方で,JT が負(伸展トルクの発. み有意差が認められた(表 1)。Phase1 および Phase2. 揮)であり,JAV も負(伸展角速度の増大)であれば,. の境界である MER は 54.6 ± 13.4 %pitch(平均値±標準. JTP は正となるが,この場合は膝関節伸展筋群が求心. 偏差)であった。. 性筋活動によりパワーを発揮していると解釈することが. 各群の膝関節・股関節の JAV,JT,JTP の変化を比. できる。このように,JT が同じ符号を示す場合でも,. 較検討した図を示す(図 2,3)。図 2 は FC を 0%,BR. JAV の符号の違いにより,対象となる筋群の活動様式. を 100% としたピッチングサイクルにおける膝関節の. は変化しており,JTP は大きさのみに着目するのでは. JAV,JT,JTP を各群別に平均化したものであり,実. なく,その正負に着目する必要がある。. 線は LG の平均値,破線は HG の平均値を示している。. 最後に,FC から BR までにおける下肢関節の力学的. まず,JAV において LG は FC 直後に屈曲角速度が最大. 仕事量を詳細に分析するべく,各対象者の肩関節外旋. 値を示した後,約 40 %pitch まで徐々に屈曲角速度を減. 角度が最大値を示すフレームを肩関節最大外旋位. 少させる波形であったが,HG は約 20 ∼ 40 %pitch の. (Maximum External Rotation:以下,MER)と定義し,. 区間で軽度の屈曲角速度の増大がみられるのみであっ. FC から BR を 100% としたピッチングサイクルにおいて,. た。約 40 %pitch 以降は両群ともに BR まで伸展角速度. FC から MER までの区間を Phase1,MER から BR まで. を増大していく波形であった。次に,JT は両群ともに,. を Phase2 として二つに区別し(図 1) ,Phase1・Phase2. ほぼすべての区間において伸展トルクの発揮がみられ. それぞれの区間における膝関節・股関節の力学的仕事量. た。最後に,JTP は 0 %pitch ∼約 40 %pitch の区間に. (正仕事量・負仕事量)の平均値を群間比較した。なお,. おいて明確な相違があり,LG は FC 直後の負パワーの. 群間比較には対応のない t- 検定を用い,すべての解析は. 発揮がみられたが,HG は正パワーの発揮がみられた。. エクセル統計 2010(社会情報サービス社)を使用して. 図 3 は同様の方法で股関節の JAV,JT,JTP を各群.
(4) 78. 理学療法学 第 45 巻第 2 号. 図 2 膝関節における JAV,JT,JTP の変化(正:屈曲,負:伸展,実線:LG,破線:HG). 図 3 股関節における JAV,JT,JTP の変化(実線:LG,破線:HG). 別に示したものである。股関節の JAV,JT,JTP は矢. ており,良好な投球動作を獲得するうえでステップ脚の. 状面,前額面,水平面上のすべての運動方向で両群とも. 占める役割は大きいと考えられる。. 同様の波形を示していた。. さらに,膝関節動作に着目した報告として,伊藤ら. そして,表 2,3 は力学的正仕事量・負仕事量の平均. は小学生から大学生までの幅広い年代の選手の投球動作. 値の群間比較の結果を示したものである。正仕事ではす. をビデオカメラで撮影し,映像解析ソフトでその動作を. べてのパラメーターで両群に有意な差は認められなかっ. 解析したところ,技術的レベルの低い小学生では FC 以. たが,負仕事量では Phase1 における LG の膝関節屈曲. 降にステップ脚の膝関節屈曲角度が増大する投球動作を. −伸展の力学的仕事量が有意に低値を示し,高い効果量. 呈している選手が多く,その動作が一般的に「膝の縦割. も検出された。. れ」と表現される未熟な投球動作である可能性が示唆さ. 13). れている。. 考 察. また,松尾ら. 投球動作におけるステップ脚の役割は諸家により報告 12). 14). は熟練指導者や元プロ野球選手を対. 象に半構造化面接形式で投球動作指導における知識を引. は足関節から股関節にかけて効. き出し,指導上の着眼点を整理したところ「FC からボー. 率よく連動された下肢運動は上肢関節へ依存しない投球. ルリリースにかけてのステップ脚への加重」が頻出項目. されており,宮下ら. 動作につながることと述べている。また,島田ら. 9). は. であったと述べていることから,スポーツ現場において. 股関節伸展・内転トルクにより,体幹や投球腕を支持す. もステップ動作の重要性は周知されている。. ることや体幹の回転運動を維持する役割があると報告し. しかしながら,その調査では「加重」という肉眼で確.
(5) 中学野球選手の膝・股関節の力学的仕事量と肩関節トルクの関係. 79. 表 2 正仕事量の群間比較 LG (n=10). HG (n=10). P. E.S.. Knee Flex-Ext (Phase 1). 2.52 ± 2.21. 1.81 ± 1.30. 0.40. 0.38. Knee Flex-Ext (Phase 2). 6.40 ± 2.40. 5.56 ± 3.76. 0.55. 0.27. Hip Flex-Ext (Phase 1). 3.66 ± 4.00. 1.95 ± 1.90. 0.23. 0.55. Hip Flex-Ext (Phase 2). 3.54 ± 2.46. 3.95 ± 1.78. 0.67. 0.19. Hip Add-Abd (Phase 1). 4.80 ± 2.90. 7.64 ± 3.64. 0.06. 0.86. Hip Add-Abd (Phase 2). 1.03 ± 1.95. 0.64 ± 1.34. 0.61. 0.23. Hip IR-ER (Phase 1). 0.12 ± 0.21. 0.14 ± 0.18. 0.80. 0.11. Hip IR-ER (Phase 2). 0.07 ± 0.10. 0.08 ± 0.18. 0.89. 0.06. 平均±標準偏差,単位:J/kg. 表 3 負仕事量の群間比較 LG (n=10). HG (n=10). P. E.S.. Knee Flex-Ext (Phase 1). ‒ 2.62 ± 2.50. ‒ 0.86 ± 0.86. 0.04. 0.94. Knee Flex-Ext (Phase 2). ‒ 0.01 ± 0.04. ‒ 0.04 ± 0.09. 0.38. 0.40. Hip Flex-Ext (Phase 1). ‒ 8.31 ± 7.10. ‒ 12.29 ± 6.26. 0.20. 0.59. Hip Flex-Ext (Phase 2). ‒ 7.19 ± 7.03. ‒ 6.20 ± 4.59. 0.71. 0.17. Hip Add-Abd (Phase 1). ‒ 1.34 ± 2.73. ‒ 0.35 ± 0.43. 0.27. 0.50. Hip Add-Abd (Phase 2). ‒ 3.56 ± 4.55. ‒ 2.75 ± 2.22. 0.62. 0.22. Hip IR-ER (Phase 1). ‒ 2.36 ± 1.62. ‒ 1.82 ± 1.24. 0.41. 0.38. Hip IR-ER (Phase 2). ‒ 1.46 ± 1.61. ‒ 1.17 ± 1.17. 0.64. 0.21. 平均±標準偏差,単位:J/kg. 認できないものの良否の識別は難しく,指導者間でもそ. 以降に大. の賛否が二分する評価項目であったと述べられている。. HG では JT は負(伸展トルクの発揮) ,JAV も負(伸. さらに,投球動作指導には「下半身を使って投球する」. 展角速度の増大)であり,JTP が正パワーの発揮がみ. などといった非常に曖昧な表現が用いられることも多. られることから,FC 直後に大. く,ステップ脚の下肢関節動作を定量的に分析し,良好. が生じていたと解釈することができる。さらに,FC か. なステップ動作の特徴を明らかにすることは投球動作の. ら BR までの区間を分割し各群の力学的仕事量を比較し. 評価や指導ポイントを明確にするための一助になり得る. たところ,LG は HG と比較して FC から MER までの. と考えられる。. 区間である Phase1 は膝関節屈曲−伸展の負仕事量が有. そこで,本研究では投球時の球速比肩関節トルクの大. 意に大きかったことが示され,LG は HG と比較して. きさで対象者を二群に群分けし,ステップ脚膝関節およ. FC から MER までは膝関節伸展筋群の遠心性筋活動に. び股関節の動作を定量的に検討したところ,nSIRT が. よる伸展トルクの発揮が有意に大きかったと解釈するこ. 低い LG は FC 直後の膝関節屈曲−伸展 JTP の負パワー. とができる。. の発揮がみられたが,nSIRT が高い HG は正パワーの. これらの結果を実際の動作に置き換えると,FC 以降. 発揮がみられた。なお,肩関節内旋トルクは球速に関連. に LG では重心移動で得られた投球方向への加速度をス. する因子であるが,本研究の LG と HG は球速には差が. テップ脚の大. みられなかったことから,HG は LG と同様のパフォー. とができていた一方で,HG では大. マンスを示しているものの,上肢関節に強い力学的負荷. 縮により膝関節を伸展方向へ角度変化させることで投球. が加わっている投球動作であると解釈することができ,. 方向への加速度を減少させる体重移動を呈していたこと. 本研究で用いた球速比肩関節トルクでの群分けは投球時. が推察される。. の力学的負荷を反映した群分けになっていると考える。. すなわち,LG は一般的に良好とされる「ステップ脚. 図 2 に示す如く,LG は約 40 %pitch まで JT は負(伸. へのスムーズな体重移動」が行われていたが,HG は「ス. 展トルクの発揮) ,JAV は正(屈曲角速度の増大)であ. テップ脚に乗れていない」と表現される,上肢関節優位. り,JTP が負パワーの発揮を示していたことから,FC. の投球動作を呈していたと考えられ,LG の投球動作は. 四頭筋の遠心性筋発揮がみられた一方で,. 四頭筋の求心性筋活動. 四頭筋の遠心性収縮によって支持するこ 四頭筋の求心性収.
(6) 80. 理学療法学 第 45 巻第 2 号. 我々が感覚的に「良好」と判断している投球動作に近い. 大. ものであった可能性が示唆された。. ことや投球障害発生率を高める一因であることを報告し. 一方で,股関節動作における JAV,JT,JTP の変化. ていることから. は各群間での相違はみられなかった。小学生の投球動作. 学療法や予防における基礎データとして意義のあるもの. の習熟過程を検討した報告では,学年が進むにつれ,体. であったと考えられた。. 幹の回転運動など水平面上の動作を習得していくと述べ られており. 15). ,中学生と大学生の投球動作中の関節運. 四頭筋の筋力不足が肩関節トルクの増悪因子になる 21)22). ,本研究の結果は投球障害肩の理. 結 語. 動と手加速度の相関を分析した報告では,大学生ではス. 投球時の球速比肩関節トルクが低い群(LG)と高い. テップ脚股関節内転角速度との相関がみられた一方で,. 群(HG)の FC 以降におけるステップ脚膝関節および. 中学生は上肢運動が強調される傾向にあったことを報告. 股関節の JAV,JT,JTP を比較検討し,それぞれの力. 16). 。これらのことから,今回の対象であっ. 学的仕事量を比較した。LG は FC 直後の膝関節屈曲−. た中学生は複合的な運動が求められる股関節動作の習熟. 伸展 JTP の負パワーの発揮がみられた一方で,HG は正. 度合いにばらつきがあったことが肩関節トルクの大きさ. パワーの発揮がみられた。さらに,LG は HG と比較し. とステップ脚股関節動作の間に関連がみられなかった一. て FC から MER までの区間である Phase1 は膝関節屈. 要因であると考えられた。. 曲−伸展の負仕事量が有意に大きかったことが示され. 以上のことから,投球時に肩関節に加わる力学的負荷. た。以上のことから,投球時に肩関節に加わる力学的負. を軽減させるには,FC 直後の膝関節動作を制御するべ. 荷を軽減させるには,FC 直後にステップ脚の大. く,大. 四頭筋の遠心性筋発揮によってステップ脚への. 筋遠心性筋活動により身体を固定することが重要である. 加重を支持することが重要であると考えられた。した. と考えられ,投球障害肩に対する理学療法やその予防に. がって,投球障害肩の理学療法やその予防として投球動. おいて,FC 以降のステップ脚膝関節動作に着目した投. 作指導を行う場合にはステップ脚の膝関節動作に着目す. 球動作指導を行うことやステップ脚の大. ること,さらにトレーニングの介入方法として大. 四頭. 性筋発揮向上およびそこから求心性筋発揮に筋活動を切. 筋の遠心性筋力の強化およびスプリットスクワットや. り替えることを目的としたトレーニングを行うことが重. フォワードランジなどを行うことによって大. 要であると考えられた。. されている. 四頭筋の. 遠心性筋発揮から求心性筋発揮へ筋活動を切り替える機 能を向上させることが良好な下肢関節動作の獲得に寄与 する可能性が示唆された。 がみられた。これまで同年代の野球選手を対象に体格の 違いと投球動作の関連を定量的に示した報告はなく,こ の身長差が投球動作に影響を及ぼしたかは明らかでな い。しかし,本研究の群分けに用いた nSIRT は身長も 調整因子として用いているため,身長差は本研究の結果 に影響を与えていないと考えられる。 また,投球動作中の膝関節の生体力学的検討は高校生 や大学生を対象に球速などのパフォーマンスとの関連を みたものが多いことから,そのような投球動作の習熟度 が高い選手を対象とした場合にも今回と同様の結果が得 られるか検討することは今後の課題として挙げられる。 本研究の限界として,肩関節トルクに影響するステッ プ脚以外のパラメーターが交絡因子に挙げられることで ある。我々は FC 時の軸脚股関節屈曲角度が骨盤の早期 17). ,その骨盤の早. 期回旋は肩関節トルク増大因子であることも報告されて いる. 18)19). 。さらに,いわゆる肘下がりとされる投球側. 肩関節外転角度も上肢関節トルクとの関連が報告されて おり. 四頭筋の遠心. 利益相反 申告すべき利益相反はない。. 今回は LG と HG の身体的特徴として,平均身長に差. 回旋に影響することを報告しており. 四頭. 20). ,今後は軸脚の動作や上肢関節動作を統合した. 検討も必要であると考えられるが,我々はステップ脚の. 文 献 1)Glenn SF, James RA, et al.: Kinetic of baseball pitching with implications about injury mechanisms. Am J Sports Med. 1995; 23: 233‒239. 2)岩堀裕介:成長期の投球障害への対応とアプローチ.臨床 スポーツ医学.2012; 29: 67‒75. 3)Kirkendall DT, Garrett WE Jr(編) :スポーツ運動科学 バイオメカニクスと生理学(スポーツ科学・医学大辞典). 西村書店,東京,2010,pp. 482‒494. 4)Campbell BM, Stodden DF, et al.: Lower extremity muscle activation during baseball pitching. J Strength Cond Res. 2010; 24: 964‒971. 5)蔭山雅洋,鈴木智晴,他:大学野球投手における下肢関節 の力学的仕事量と投球速度との関係.体育学研究.2015; 60: 87‒102. 6)阿江通良,藤井範久:スポーツバイオメカニクス 20 講. 朝倉書店,東京,2002,pp. 119‒130. 7)田中正栄,西野勝敏,他:三次元投球動作解析から見た成 長期野球選手の投球動作の特徴についての検討.J sports Injury.2013; 18: 23‒26. 8)Oyama S, Yu B, et al.: Effect of excessive contralateral trunk tilt on pitching biomechanics and performance in high school baseball pitchers. Am J Sports Med. 2013; 41: 2430‒2038. 9)島田一志,阿江通良,他:野球のピッチング動作における 体幹および下肢の役割に関するバイオメカニクス的研究..
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