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文献検討のその先―情報を読み解き伝える力―

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Academic year: 2021

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巻 頭 言

文献検討のその先

―情報を読み解き伝える力―

Ahead of literature review

— Ability to interpret and communicate information —

遠 藤 亜貴子(Akiko ENDO)

* (日本助産学会編集委員) 平成も残すところ5か月となりました。この30年で 大きく変化を遂げたことの一つに,インターネットの 普及による情報環境が挙げられます。今年1月に発表 されたレポートによれば,いまや世界人口の53%(40 億人以上)がインターネットを利用し,68%(51億人 以上)が携帯電話を使用しているといいます(We Are Social and Hootsuite, 2018)。インタ-ネット上の情報 交換の場であるツイッターや SNS などのソーシャル メディアの情報が世論や政治にも影響を及ぼし, フェイクニュースという言葉も頻繁に耳目に触れるよ うになりました。 リテラシー(識字能力)という言葉は,読み書き能 力を指すものと思っていましたが,リテラシー調査の 定義に,文章を読解する能力である「機能的リテラ シー」という分類があることを最近知りました。この 機能的リテラシーが低い状態にあると,それぞれの単 語の意味は分かっていても文意が取れないということ になります。日本では,1955年を最後に公的な識字率 調査は行われていないそうですが,その時点ですでに 10~15%程度が機能的非識字者に分類されていたよう です(斉藤,2012)。高い識字率に比べて機能的識字 率は意外に低い,という日本の状況は今に至るまで続 いているようです。昨今,web 上で発信内容(ツイー トや記事)を理解していないのではと思えるコメント を目にする機会が多く不思議に感じていましたが,機 能的リテラシーの問題なのかもしれないと思い至りま す。この数十年という短い期間で大きく情報環境が変 わり,情報格差も顕在化してきています。情報を読み 解く力が,今一人一人に問われていると思います。 研究者にとってのリテラシーといえば,学術情報リ テラシーと呼ばれる文献の適切な活用が挙げられま す。研究論文を執筆するには,情報を読み解くにとど まらず,自身の文脈に落とし込み,読み手に伝える高 いリテラシーが必要になります。投稿される論文原稿 の語りに目を凝らしていると,時に研究者の発する言 外のノイズをキャッチすることがあります。裏付けの 乏しさは,躊躇いや断定となって行間にノイズを漂わ せ,読み手に違和感を抱かせます。文献検索や批判的 吟味のスキル自体は訓練である程度高めることができ ますが,情報の取捨選択と活用においては,技術だけ でない,研究者のテーマへの向き合い方や読み手に対 する意識,が影響してきます。伝える力は,単に文章 力の問題ではないのでしょう。 「査読」は「ピアレビュー」と英訳されますが,ここ でいう「ピア」は「仲間うち」を意味しているわけでは ありません。ピアレビューは,対等な者同士がお互い に批評し合う,相互評価の仕組みです。査読者は,分 野の知見を有する第三者であって,研究テーマを共有 している仲間ではないということになります。熱量の 異なる第三者に向けて,自身の研究(すなわち思考の  2018年12月25日公開

東邦大学看護学部(Faculty of Nursing, Toho University)

日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 32, No. 2, 83-84, 2018 https:// doi.org /10.3418/ jjam.foreword-32-2

(2)

プロセス)を説得力をもって語り,価値ありと認めさ せるには,主観を排した研究者としての冷静な眼差し が求められます。良い論文は,緻密さと俯瞰性を備 え,論理的な語りで読み手の懐疑を解いてくれます。 その前提に,裏付けとなる学術情報の適切な選択と活 用があります。 昨年度の日本助産学会学術集会では,文献検討を テーマに編集委員会主催のワークショップを行いまし た。今後も機会を得て,文献検討のその先へと研究を 進めるためのワークショップを企画していく予定で す。日本助産学会誌が,助産学の研究者にとって信頼 される情報源かつ発信の場であり続けられるよう, 2019年も査読委員のお力を得て編集委員一同努めて まいります。新しき年が,本誌の読者の皆様にとっ て,また助産学にとって,発展をもたらす節目の良き 年となりますようお祈り申し上げます。   斉藤泰雄(2012).識字能力・識字率の歴史的推移: 日本の経験.国際教育協力論集,15(1),51-62. We Are Social and Hootsuite (2018). Digital in 2018. https:// wearesocial.com / blog /2018/01/ global-digital-report-2018 [2018-11-20]

参照

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