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FPなら知っておきたい相続のABC (加筆版)

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FP なら知っておきたい相続の ABC

相続・争族・争続 誰にでもやってくる相続。しかし、その後で親族がもめてしまっては文字通り元も子もなく してしまうことになりかねません。そうならないためにも、私たち FP は日頃から税制に関する 情報や知識の修得に励まねばなりません。 本稿では相続税の知識と共に、よくある事例から知っておけば役に立つ情報を織り交ぜ て説明していきたいと思います。 タイトルの通り、「そうぞく」という漢字には財産等の承継と親族間の争い、さらに相続後 もそれを引きずるまでが含まれています。よく、「うちに限ってもめるなんてことは・・・」のよう に楽観的に考えておられる方も多いようですが、こと相続に限って事前に対応しているか否 かが後々大きな差を生む事象もそう多くはありません。では、なぜもめるのでしょうか? 財産の多寡や相続人間の取り分の争いは想像に難くありませんが、昨今のような少子 化に加え超高齢化社会では生死の順番も年齢順とは限りませんし、病気や障害、介護とい った扶養の問題も頭をもたげてきます。100 歳以上の人数は 6 万人を超え、90 歳を迎える 率も男性で約 25%、女性で約 49%(厚生労働省の平成 27 年簡易生命表より)と、なかな か次世代への相続が進展しない状況も、争いに拍車をかけているようです。 しかし、相続はもめるだけでは収まりません。もめると当然に遺産分割は不成立となり、 その際には相続税の特例措置である配偶者の税額軽減と小規模宅地の評価減の規定の 両方の特典が利用できなくなってしまうのです。つまり、「もめない」対策は節税にもつなが るのです。 相続のスケジュール 図をごらんください。相続は被相続人の死亡に伴って開始されます。そして、一番右に あるように、それより 10 ヵ月以内に相続税の申告、納付をおこなわなければなりません。 その間には、図左より赤字の注意事項が時系列に発生します。相続税の申告上、債務と して被相続人死亡後も控除できるのが葬式費用です。通夜・葬儀にかかった費用と、最 近では葬式と初七日を同日に行うことも増えてきたので、分割困難な初七日の費用もこれ に含まれます。 その後、戸籍謄本等を取り寄せ、法定相続人を確定し、年金や生命保険金等の請求、 預貯金等の名義変更の手続きを行うことになります。特に生命保険金は受取人固有の財

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産ですが、被相続人の死亡によって受給できることから、相続税 法では「みなし相続財 産」として相続財産に加算することとされています。 詳しくは相続税のところでお話しますが、相続にあってはなにも積極的財産、つまりプラ スの財産ばかりが残っているとは限りません。場合によっては債務の方が多い場合や、債 務の額さえ不明なこともあるようです。そんな時に、相続人だからといって自らの生活を犠 牲にしてまで返済しなくても済むように、相続人の意思で「相続放棄」や「限定承認」の申 し立てを家庭裁判所に行うことができます。相続の放棄は相続人が単独で各々が申請で きますが、これは相続財産のすべて、つまり、プラスもマイナスも相続しない、という宣言で す。これに対し、限定承認は相続人全員の同意が必要で、マイナスの財産はプラスの財 産の範囲内で返済はするが、それを超える場合には返済を免れる、という申請です。これ らはいずれも相続開始後 3 ヵ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりませんので注意 が必要です。 また、被相続人のその年の所得、つまり、亡くなった年の年金や不動産、事業等の収入 があった場合には、通常の確定申告時期とは異なり、相続開始後 4 ヵ月以内に申告・納 付することが定められています。これを準確定申告と呼んでいます。これによって相続人 の未払い税額を確定し、相続財産から控除するわけです。こうして相続財産が確定すると、 次は相続人各人の相続分の確定です。総額をただ金額で按分するなら簡単なことなので すが、それぞれ固有の財産には土地や建物等の不動産や株式、債券等の有価証券、現 預金や会員権等々、資産の評価の時点(亡くなった時と分割する時期での時価の差)や 個人の思い入れによる好き嫌い等の感情が入り混じり、簡単にはまとまらないことが多い ようです。 各人の相続する財産が確定し、それを書類にしたものが「遺産分割協議書」です。 遺産分割協議 財産分割の方法には相続財産をそのままの形で分ける「現物分割」、財産の一部また は全部を売却し、その代金を分ける「換価分割」、特定者が被相続人の遺産を取得し、そ の代わりに自分自身の財産(代償財産)を支払う「代償分割」があります。 遺産分割協議にあたっては事前の準備が重要です。協議がまとまった後で新たな財産 が発見されて協議をやり直さないといけなくなっては大変ですから、しっかりと遺産を確認 しておきましょう。預貯金では、相続人名義の口座がないかどうかを金融機関に問い合わ せ、口座がある場合には残高証明書を発行してもらいましょう。株や投資信託などは証券 会社等からの運用報告書がありますから合わせて確認しましょう。不動産については、他 人と共有しているものがないか、登記簿謄本で名義を確認しておくことが大切です。非上 場会社の自社株式であれば、どのような評価方法によって評価するのかという問題も重

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要になってきます。 また分割にあたっては、残された遺産だけを法定相続分で公平に分割するのではなく、 事情に応じた配慮も検討する必要があります。たとえば被相続人から生前に贈与を受け ていた場合や他の相続人より多くの生活費をもらっていた相続人がいる場合もあります。 このような時は生前の贈与分を相続財産の前渡しとして相続財産に加算して分割協議を するということも必要でしょう。あるいは、被相続人の財産の維持や増加に貢献したり、療 養や看護にあたって他の相続人に比較して多くの負担があった相続人がいるのであれば その分も検討する必要があります。いずれにせよ、このような場合には相続人間で認識が 異なることが多く、客観的な評価が求められます。 遺産分割が成立すると遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、誰がどの 財産を引き継ぎ、各々全資産の何割を取得したのかが明確になるように記載されます。こ うすることで相続人全員の遺産が相続人の個人の所有になり、各人は思い通りに使用・ 処分する事ができることになります。また、相続人全員の合意があれば遺産分割協議書 の書き換えも可能です。 遺産分割協議書は法律上、定まった期限や書式はありませんが、相続人全員の署名・ 実印による押印が必要です。代償分割で財産の交付を受けた者は贈与と区別するため に遺産分割協議書に代償分割である旨を明記しておく必要があります。不動産の登記の 際の原因証書や、金融機関等の相続による名義変更の際にもこの書類が必要となりま す(各相続人の実印、印鑑証明書も必要)。 そして、これらの分割割合に応じて 10 ヵ月以内に相続税額を確定し、納付するわけで す。 法定相続人と法定相続分 ではここで誰が相続するのか、を確認しておきましょう。 法律で決められた相続人のことを法定相続人といいますが、誰が法定相続人になるか は民法の規定により確定します。また、民法では被相続人との血縁の深い者を優先的に 法定相続人とするように規定すると共に、被相続人の財産形成に寄与したことを考慮して、 配偶者を他の相続人と常に同順位で相続人とすることにしています。具体的には次の順 番で法定相続人を確定していきます。まず、第 1 順位は「子」で、配偶者とともに常に法定 相続人となります。第 2 順位は被相続人の「直系尊属(父母など)」で、被相続人に子がい なかった場合に配偶者とともに法定相続人となります。第 3 順位は兄弟姉妹で、被相続 人に子も父母もいなかった場合に配偶者とともに法定相続人となります。 では、たとえば被相続人には子がいたが、被相続人より先に亡くなっていた場合はどうな るのでしょうか。この場合、その子の子(被相続人から見た場合は孫)が相続人となります。

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これを代襲相続といい、この場合の孫のことを代襲相続人といいます。孫が代襲相続人 の場合は子と同じように扱われますので法定相続人となります。実の子や孫などを直系 卑属といいますが、直系卑属の場合は再代襲、再々代襲と続きます。兄弟姉妹が法定相 続人であったが被相続人より先に亡くなっていた場合にも、その兄弟姉妹の子(つまり甥 または姪)が代襲相続人となります。甥または姪は兄弟姉妹と同じように扱われますから、 被相続人に子も直系尊属もいなかった場合には配偶者とともに法定相続人となりますが、 兄弟姉妹については甥、姪までしか代襲相続は認められていません。 また、民法では相続人でありながら相続人の資格を失う場合も定められており、その制 度には欠格と廃除の 2 つがあります。欠格とは相続人が相続の争いにより被相続人を殺 そうとしたり、遺言書を詐欺、脅迫により偽造したというような、相続人としてふさわしくない 行動をとった場合に、法律的な特別の手続きをとることをせずとも自動的に相続人として の資格を失うことです。一方の廃除とは欠格に比較して社会的な犯罪性は認められない ものの、被相続人に対して虐待や侮辱を与えたりした場合には、相続人としての資格を失 わせることができることです。この場合には被相続人が生前に家庭裁判所に申し立てるこ とによって相続人から相続権を剥奪することになります。また遺言でその意思を明示する ことも可能です。 では、相続人が複数いる場合に各相続人が遺産を相続するわけですが、どのような配 分で遺産を相続するのでしょうか。 それぞれの相続人が相続する割合を相続分といいますが、相続税法では民法の相続 分の制度を踏襲しています。そこには次の 3 つのケースが書かれています。 図の上「子および配偶者のケース」を見てください。被相続人に子どもがいる場合には、 子どもと配偶者が相続分を 2 分の 1 ずつ分けます。子どもが複数いる場合には、子どもの 数で等しく按分します。 下図の「直系尊属および配偶者のケース」は、被相続人に子どもがいないケースです。 その場合には配偶者が 3 分の 2、直系尊属である父母が 3 分の 1 を等分します(つまり、 2 人とも健在の場合には 6 分の 1 ずつ)。なお、この図にはありませんが、被相続人に子も 直系尊属もいない場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続することになります。その場合 の相続分は配偶者 4 分の 3、兄弟姉妹が 4 分の 1 で、兄弟姉妹各人の相続分はこの場 合も同様に等分です。 法定相続分と遺留分 遺留分とは、一定の相続人に与えられた相続財産の最低保障割合のことで、被相続 人が自らの意思によって自分の死後の財産等の処分を決めた場合(通常は遺言書を書く ことによってその意思を伝達します)であっても、侵害することができない相続人の権利の

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ことです。 遺留分権利者(遺留分を請求できる権利がある相続人)とは、配偶者、第 1 順位である 子、第 2 順位の直系尊属(両親等)であり、兄弟姉妹には遺留分がありません。また、遺 産総額に対する遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人の場合に被相続人の遺留分 算定の基礎財産の 3 分の 1、それ以外は 2 分の 1 となっています。遺留分算定の基礎財 産とは相続開始時の財産、相続開始前 1 年以内の贈与財産、一定相続人への特別受 益の合計額をいいます。 遺言等により遺留分が侵害された時、遺留分権利者は「遺留分減殺請求」により、遺 留分に相当する財産を受け取ることができます。しかし遺留分減殺請求権は①遺留分の 侵害を知ってから 1 年、②相続開始から 10 年の間に行使しないと時効により権利が消滅 します。また、遺留分権利者は家庭裁判所の許可により、相続の開始前に遺留分を放棄 することができます。相続を放棄するとはじめから相続人でなかったものとされるのに対し、 遺留分を放棄しても相続人であることに変わりはありません。 前述のとおり兄弟姉妹には遺留分がありません。すなわち、被相続人が兄弟姉妹以外 の人を相続人として指定する遺言書を書いている場合には、兄弟姉妹は相続権を主張す ることができなくなってしまうのです。このことは、争いを避ける意味でも、実務的なケース としても十分に留意しておきたい点です。 相続税とは 相続等によって財産を取得した者は、そのことにより担税力(税金を負担する力)がある とされるため相続税が課税されます。被相続人から相続した財産は、相続税が課税され る財産とそうでない財産にそれぞれ分けられています。相続財産には被相続人が持って いた一切の財産、たとえば土地や建物などの不動産や預貯金、有価証券などのプラスの 財産から住宅ローンや借金などのマイナスの財産まで含みます。しかし、会社の社長とし ての地位や弁護士というような資格は相続の対象になりません。 これら被相続人の財産のうち、どこまでが相続税の課税対象としての相続財産なのか、 どの部分が相続税の課税対象とならない財産なのかを確認しておきましょう。相続のスケ ジュールのところでも触れましたがここではもう少し詳しくみていきましょう。 まず被相続人の本来の財産として、死亡時点で所有していた現預金、株式、土地や建 物など有形無形を問わずおよそ金銭に見積もることができるものがあります。これには住 宅ローン、借金など債務(マイナスの財産)も含まれます。これらの相続財産は被相続人 の本来の財産ですが、相続税の手続きにおいては、被相続人の本来の財産でないもの の、被相続人の死亡により受け取ることで、結果として増えたとみなされる財産があります。 これをみなし相続財産といいます。生命保険金や死亡退職金・弔慰金、さらに生命保険

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金に関する権利や定期金(年金)を受け取る権利が該当します。これらに被相続人が死 亡する 3 年以内に贈与された財産を加えたものを相続税の課税財産といいます(ケース によっては後述する相続時精算課税制度による贈与財産も加えます)。そして課税財産 から税法上課税されない財産(相続税法上の非課税財産)、借金や葬式での費用をマイ ナスするわけです。相続税では残された遺族が今後も継続して生活できるように最低限 の生活保 障として一 定 の非課税 枠が設けられており、これを「基礎 控 除」と呼んでいま す。 「相続税は高い」とか「相続が 3 代続くと身上がつぶれる」といわれたりするようですが、 実際はどうなのでしょう?図の下の黄色の部分をご覧ください。この部分が先ほど述べた 相続税の基礎控除で、これ以上の相続財産がある場合に相続税が課税されるのです。 例で説明しましょう。相続人がいるので相続が発生するわけですから、「法定相続人の 数」のところには最低「1」が入ります。つまり、「3,000 万円+600 万円×1」となり、最低でも 相続財産が 3,600 万円以上ある場合にだけ相続税が課税されることになります。4 人家族 の場合、1 人が亡くなると 3 人が残りますので、4,800 万円以上の相続財産がある場合に 相続税が課税される、ということになるわけです。なお、相続税を計算する場合は相続の 放棄があっても放棄がなかったものとした場合の相続人の数を法定相続人の数とします。 また被相続人に養子がいる場合には法定相続人に算入できる養子の数に制限が設けら れています。ただし、①特別養子縁組により養子となった者、②配偶者の実子で被相続 人の養子となった者、③代襲相続人で被相続人の養子となったものは相続税法上、実子 とされ養子の数の制限の対象外です。 亡くなった時に存在する被相続人名義の財産が一定額以上(つまり、基礎控除以上)あ れば相続税を課税する、ということであれば、誰しも思いつくことはそれまでに相続人にや ってしまおう、ということでしょう。そこで相続税法では生前に相続人に財産を無償譲渡し た場合には相続税の事前納付の意味で『贈与税』を課税することとしています。したがっ て、税法には贈与税法というのはありません。相続税法の中の税目として贈与税を規定し ているのです。 また、図の相続税が課税される範囲ですが、相続は無論のこと、遺贈や死因贈与にも 相続税が課税されます。遺贈とは遺言による財産の無償譲渡のことで、死因贈与は停止 条件つき譲渡、といわれています。つまり、「死んだら○○をやる」という条件が付く譲渡の ことです。では、ここで何度もでてくる「贈与」の定義とはいったい何でしょうか。 贈与とは 図をご覧ください。贈与とは、個人から個人に対する財産の無償譲渡に関する『契約』の ことをいいます。つまり、個人から法人に対する無償譲渡や、法人から個人に対する無償

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譲渡には贈与税は課税されないのです。ちなみに、前者の場合には利得を得る法人に対 して法人税が、後者の場合には同じく利得を得る個人に対して所得税(一時所得となりま す)が課税されます。 ここで最も重要なことは、贈与が『契約』である、ということです。契約ですから、複数の当 事者間における約束事をいうわけですが、これは口頭でもかまいません。贈与者(贈与す る人のこと)と受贈者(贈与を受ける人のこと)の合意があれば書面がなくてもよいのです。 しかし、民法では口頭契約は取り消せることになっていますので、通常の契約は当事者間 の合意が無いと取り消すことのできない文書による契約(契約書)によって成されます。前 項の「相続税とは」で出てきた遺贈、死因贈与ですが、「死因贈与」は『贈与』とあるように 契約なのですが、「遺贈」は遺贈与と言わないように、遺言による契約ではなく、遺言によ る一方的な贈呈なのです。つまり、一方的に取り消したり、受け取りを拒否できたりするわ けです。借金などマイナスの財産が多く含まれた相続財産だとすると、多くの人は借金を 引継ぎたいとは思いません。また法定相続人の中には相続人同士の争いや揉め事には 関わりたくないと考える人もいます。したがって、遺言によって財産(プラスのみならずマイ ナスも考えられる)の承継が指定されていても、その受領を拒否(相続放棄)することがで きるのです。仮に相続放棄をすると、その相続人ははじめから相続人ではなかったことに なります。相続の放棄をするためには、相続の開始を知ったときから 3 ヵ月以内に家庭裁 判所に申し出なければなりません。また被相続人の財産の全部または一部に手をつけた ものは相続放棄できません。 相続税同様、贈与税にも基礎控除があります。これは図の右下にあるように 110 万円 で、暦年ごと、つまり、毎年 110 万円を超える贈与がある場合にのみ、贈与税の申告と納 付が発生するのです。 贈与税の配偶者控除 贈与税の基本について述べてきましたが、ここからは例外的特例について述べていきま す。図は贈与税の配偶者控除ですが、この内容を説明する前に、若干前の法定相続人 のところを思い出してください。配偶者は常に相続人となりますが、これは配偶者が婚姻を 機に夫婦で財産(人生)を共有していくことを約束したものであり、婚姻関係が終了する (死亡または離婚)までの間の財産については、その名義のいかんにかかわらず、夫婦で 共有すると考えているからです。余談ですが、離婚の際にも財産を分割しますが、この場 合も基本は折半です。しかし、何らかの原因によって離婚するわけですから、その原因と なった事実いかんによって分割割合に変更が出てくるわけです。さらに、傷害保険や慰謝 料と同様に、心身にダメージを受けた場合の利得には課税しないこととなっていますので、 離婚の際の財産分与は受け取った側にも贈与税等は課税されません。

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話は逸れましたが、配偶者以外の相続人の第 1 順位の「子」と第 2 順位の「父母」には、 被相続人が扶養義務を負っている、と考えられます。つまり、子どもの成長と教育にかか る資金の拠出や、父母が病気などになった場合の保護が不可能となってしまうという事実 にかんがみ、法定相続人に指定しているわけです。しかし、父母がいない場合の直系尊 属である祖父母や、兄弟姉妹、孫等には被相続人に対する扶養義務はありません。そこ で、相続税法ではこれらを次のように規定しています。「配偶者および 1 親等の血族(つま り、父母と子)以外のものが相続する場合には相続税額に百分の二十(2 割)を加算する」 とし、担税力に応じた課税をおこなっているわけです。 上記のことからもわかるように、配偶者は特別な存在です。婚姻により財産を共有する、 とはいっても、たとえば不動産の場合には「登記」という事実が存在します。登記名義は第 三者に対する法的対抗要件になりますので、不動産登記の事実が所有権と同一視され るわけです。しかし、夫婦の財産は共有・・・この矛盾の一部を回避する意味でも(というよ うな理由は付されてはいませんが)このページにある贈与税の配偶者控除が設定されて いると解されます。 さてその内容ですが、通常の贈与税の基礎控除である 110 万円に加え、一定の要件に 該当する配偶者に対して居住用不動産または居住用不動産を購入(増改築を含む)する 資金を贈与する場合には、2,000 万円の配偶者控除を認める、というものです。贈与する 居住用財産の価格が 2,000 万円未満の場合は、その居住用財産の価格が限度となりま す。また店舗併用住宅の場合は居住用部分のみ対象になりますが、居住用部分の割合 が 90%以上である場合は、全体が居住用不動産として控除の対象となります。 配偶者の要件としては、婚姻期間(入籍期間)が 20 年以上あり、過去にこの規定の適 用を受けていないこととされています。また、この規定は同一の配偶者に対する規定です ので、将来において他の配偶者とも同様の要件に該当すれば受けることは可能です(ま れではありますが・・・)。ただ、ここで注意しておかなければならないのは、同一の配偶者 間では一度しかこの規定を受けられない、という件です。当初に 2 分の 1 ずつにしようと 1,500 万円を利用したが、価値が上がったので、さらに残りの 500 万円分の適用を受ける、 ということはできません。なお、この制度の適用に際してはたとえ贈与税額が発生しなくと も、贈与税の申告が必要となることにも注意が必要です。 贈与と税金 実際に贈与の例で確認してみましょう。図の上部は贈与税の基礎控除の意味を図解し たものです。贈与税は財産を無償で受け取った人(受贈者=利得者)に対して課税される のですが、この 110 万円は暦年 1 年間の受贈者単位の合計金額ですので注意が必要で す。つまり、図のように父から 50 万円、母から 30 万円、祖母から 50 万円の贈与を受けた

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場合、各々からの贈与は 110 万円以下であっても、年間の合計金額が 110 万円を超えて いると課税されるわけです。例の場合は年間合計金額は 130 万円となりますので、130 万 円(年間贈与合計金額)-110 万円(贈与税基礎控除額)=20 万円となり、贈与税の税率 は 200 万円まで 10%ですので、20 万円×10%=2 万円となります。 しかし年間を通して 110 万円では、たいして財産を子孫に移転することはできません。ま た、将来の相続を見越して租税回避に走る、という構図も見え隠れしてきました。そこで 「相続時精算課税制度」なるものができたわけです。この制度は、読んで字のごとく「相続 の時」に贈与税を「精算」して課税するという制度です。下図をご覧ください。相続時精算 課税制度は図の例でいうと、父と子の一対一に対して個別に申請して適用される制度で す。つまり、それ以外の人からは依然として通常の贈与税の基礎控除が適用されるわけ なのです。逆に言うと、父との間にはもう 110 万円の贈与税の基礎控除は適用できなくな るのです。相続時精算課税制度の適用を申し出ると、生涯を通して 2,500 万円までの贈与 については課税されません。この 2,500 万円の贈与は一度に使っても良いし、分割して利 用することもできます。たとえば 500 万円ずつ 5 年に分けて贈与することも可能ですし、毎 年 100 万円を 25 年間贈与することもできます。しかし、それでは通常の贈与税の基礎控 除である 110 万円を利用する方が有利です。なぜなら、相続時精算課税制度で 2,500 万 円分を無税で贈与しても、相続発生時には当該贈与分を贈与時の価格で相続財産に加 算して相続税の計算(精算)をしなければならないからです。したがって、いずれの制度を 活用すべきかは、贈与者、受贈者の年齢や環境等の要件も十分に考慮して検討すること が重要になってくるといえるでしょう。 相続時精算課税制度と贈与制度の比較 ここで通常の贈与税の制度(非課税枠 110 万円)と相続時精算課税制度(非課税枠は 2,500 万円)の内容を比較してみましょう。表をご覧ください。前項で相続時精算課税制度 と通常の贈与の非課税枠の違いを説明しましたが、相続時精算課税制度は一度適用す るともう通常の贈与税の基礎控除の適用はできなくなってしまうのです(だから、一対一対 応なのです)。また、通常の贈与が贈与者や受贈者に何の制限も加えていないのに対し、 相続時精算課税制度では贈与者は「60 歳以上の父母・祖父母」に、受贈者は「20 歳以上 の子・孫」に限定されています。この場合、年齢は贈与の年の 1 月 1 日時点で判定されま す。贈与者と受贈者ごとに選択が可能で、それぞれが上限 2,500 万円となっています。ま た、通常の贈与では基礎控除を超えなければ申告の必要はありませんが、相続時精算 課税制度ではたとえ税額がなくても贈与の事実があるたびに贈与税の申告が必要です。 なお、相続時精算課税制度で非課税枠を超えて贈与した場合にはどうなるのでしょうか? この場合には一律超えた部分に対して 20%の税率で贈与税が課税されることになります

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(通常の贈与では累進税率が適用されます)。 相続時精算課税制度の税額計算 実際に相続時精算課税制度における贈与税の額を計算してみましょう。図をご覧くださ い。被相続人から相続人へ生前に 3,000 万円の贈与があった場合の事例ですが、簡単に するために法定相続人を 1 人にしています。相続時精算課税制度を適用しますので、 3,000 万円の贈与に対する税額は、3,000 万円-2,500 万円(非課税枠)=500 万円となり、 一律 20%の税率ですので、500 万円×20%=100 万円となります。被相続人が亡くなり、 その時点での相続財産の額が 1,600 万円であったとすると、相続人は 1 人ですので、相続 税の基礎控除は 3,000 万円+600 万円×1 人で 3,600 万円となり、本来なら相続税は発 生しないことになります。しかし、相続時精算課税制度では生前贈与をすべて加算します ので、1,600 万円+3,000 万円=4,600 万円となり、4,600 万円-3,600 万円=1,000 万円で、 相続税の基礎控除額を超えることになります。 しかし、この場合の相続税率は 10%ですので 1,000 万円×10%=100 万円となり、「相続 の時に精算して課税する制度」ですので、生前贈与時の納付税額との精算により 100 万 円(相続税額)-100 万円(納付済贈与税額)=0 となり、相続税の納付税額は 0 となるの です。 相続時精算課税制度の活用 それでは、相続時精算課税制度の活用事例を確認してみましょう。図の左をご覧くださ い。中古マンションを一棟所有していた被相続人(60 歳以上の父)が、相続時精算課税制 度を利用して長男(20 歳以上)に当該マンション(建物)を贈与する場合を考えてみましょ う。時価 5,000 万円のマンションの固定資産税評価額が 3,000 万円だとします。相続、贈 与の際の建物の時価は固定資産税評価額を使用しますので、当該マンションの贈与税 の計算の際にはこの 3,000 万円が建物の時価となります。しかし、当該マンションには住 人が居ますので、貸家としての評価減(借家権 30%で計算)が 900 万円ありますので、贈 与税の課税標準は 2,100 万円となります。 したがって、図の右上の例、まず通常の贈与で 5,000 万円を現金贈与した場合の贈与 税額は、5,000 万円-110 万円(基礎控除)=4,890 万円となります。直系尊属から 20 歳以 上の子への贈与に該当しますので、特例税率※が適用され、贈与税率 55%、控除額 640 万円ですので、4,890 万円×55%-640 万円=2,049.5 万円となります。次に通常の建物 贈与の場合ですが、建物時価(相続税評価額)2,100 万円-110 万円(基礎控除)=1,990 万円となり、こちらも特例税率が適用されますので、贈与税率 45%、控除額 265 万円で計

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算すると、1,990 万円×45%-265 万円=630.5 万円となります。最後に相続時精算課税制 度での計算ですが、2,100 万円<2,500 万円(非課税枠)となりますので、贈与税額は「0 (ゼロ)」となるわけです。 さらに、当該マンションからの年間家賃収入(図左下参照)の 1,800 万円は、贈与時以降 は長男に帰属することになります。したがって不動産所得が 1,000 万円で、当該税額が 400 万円とありますので、キャッシュ・インは 600 万円となり、実質的にはこの金額が毎年 長男に無償で贈与されたのと同じ効果を生むことになるのです。 ※平成 25 年度税制改正により、暦年課税の場合において、直系尊属(父母や祖父母な ど)からの贈与により財産を取得した受贈者(財産の贈与を受けた年の 1 月 1 日において 20 歳以上である者)については、「特例税率」を適用して税額を計算することとされました。 平成 27 年 1 月 1 日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用されてい ます。 相続対策の基本 ここまでは一般に相続時精算課税制度の説明がわかりにくかったり、利用の仕方が今 ひとつ理解し難いという側面に焦点を合わせて説明してきましたが、ここで全般的な「相続 対策」(相続税対策ではありません)についてまとめておきましょう。 冒頭で紹介した相続でもめるケース、つまり「争族・争続」になる最も大きな要因は「誰 に」「どの財産」を渡すのかが明確になっていないことに起因しているのです。それが相続 人に判然としないので、相続人が各々の主張を通すこととなり、結果的にもめることになっ てしまうのです。財産が分割できない状態(不動産がほとんどの場合)や、特定の財産(非 上場株式)を特定の相続人(事業継承者)に相続させたい場合など、その他の相続人に 対して代替資産を準備しておくことは非常に重要です。 代替資産、特に金銭による差額補填的効果は大きいので、生命保険金の活用は常道 です。ただ、生命保険の契約はしたが、受取人を複数記載されるケースが散見されます。 たとえば 1,000 万円の保険金の受取人に長男、長女の 2 名の氏名を記載し、各々2 分の 1 の受け取り指定をしている場合です。この場合には相続発生後に保険金の受け取り請 求をする際には、相続人代表口座に合計額で入金されるため、相続人がもめた場合には その授受に関してもひと悶着ある可能性は払拭できません。さらに、被相続人の意思を明 らかにしておくためにも、遺言書の作成は不可欠です。本人の意思を明確にしておくことで 防ぐことのできる争いは枚挙にいとまがないほどです。 また、これまで述べてきた生前贈与による節税を兼ねた財産分与は場合によっては非 常に有効でしょうし、資産の相続税評価額を引き下げる対策(不動産等の時価との差を

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利用)も有効でしょう。ただ最も重要なことは、相続対策が相続税対策であってはならず (制度変更等によるリスクもあります)、相続人間の家族構成や資産状況、被相続人のラ イフプラン等を総合的に勘案した上での対策をどう検討するかであり、決して本末転倒に なるような結果にならないように注意する必要があるでしょう。 制度を活用 図は生命保険金の税金について説明したものです。1、2、3 の 3 つのケースが書かれて いますが、これらの違いは「誰が保険料を負担」し、「誰が保険金を受け取った」のか、とい うことです。本来、保険料を支払った人が保険金を受け取るのが当然なのですが、本人が 死亡していた場合には相続人が受け取ることになります。このことを前提として考えると良 くわかるのですが、1 は当然に自分が払い、自分が受け取るので所得税(一時所得)とな ります。2 は 1 と同様になるハズなので、いったん自分が受け取ったものを B に贈与した、 とみなされてしまうのです(贈与税)。3 は支払い者本人が死んでしまったので、相続税が 課税されるわけです。 ここで注意したいのが可処分額。所得税+住民税の最高税率は 55%、贈与税、相続税 の最高税率も 55%と 1,2,3 はすべて一緒なのですが、所得税だけは一時所得となるので、 課税所得は最高 50 万円の特別控除を控除後、さらに 2 分の 1 にしたものになりますので、 結果的に税率は 2 分の 1 になることになります。つまり、どの税金が課されるかによって、 税引き後の受け取り金額に差が出てくることになるのです。 そこで、右図上の一般の生命保険の例を見てみましょう。父を被保険者とする生命保険 を契約し、父が保険料を支払い、受取人を子にすると、死亡時の保険金受け取り時には 左のケース 3 に該当し、相続税が課税されます。もし、これより 1 のケース(つまり、一時所 得)の方が税額が低くなる場合には、右図下のように父が保険料相当額を子に贈与し、 子が被保険者を父とする保険契約をした場合には、父の死亡時の保険金の受け取りは 1 のケースになりますので、2 分の 1 課税の適用が受けられることになるわけです。つまり、 契約のやり方によって税金が変わることの重要性を理解しておくことで、キャッシュフロー が変わるということなのです。 おもな遺言の種類 最後に、相続(争族)対策の要である遺言について説明しておきたいと思います。まず 遺言書を作成できる人の要件は、遺言書を作成するときに満 15 歳以上であること、意思 能力があることと民法によって規定されており、この 2 つの要件を満たさずに作成された 遺言書は無効になります。また、遺言はいつでも全部または一部を自由に撤回することも

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できます。仮に複数の遺言があった場合は、先に作成された遺言内容と異なる部分だけ が撤回され、それ以外の部分は有効となります。撤回するために作成した遺言書は前回 と違う種類の遺言方法でも可能です。 遺言は遺言者の死後の財産分割や法律関係にかかる最終的な意思を実現させるた めに行う意思表示です。たとえば相続人の資格の有無に関することとして「認知」がありま す。認知とは、正式な婚姻関係にない男女の間で生まれた子と父親の間で法律上の親 子関係を発生させることです。遺言書で認知をするときは、遺言者は遺言書にその旨を 記載し、相続が発生したときに遺言執行者が役所への認知届等必要な手続きを行いま す。法律上では婚姻関係のある男女の間で生まれた子のことを嫡出子といい、婚姻関係 にない男女の間で生まれた子のことを非嫡出子といいます。非嫡出子は、認知されて初 めてその父親に関する相続権が発生し、それまでは法的に相続権はありません。実子と 非嫡出子はどちらも第一順位の相続人ですが、非嫡出子の法定相続分は実子の 2 分の 1 となります。 次に遺言書の種類を見てみましょう。図のように、普通遺言としては全文を直筆で書く 「自筆証書遺言」があります。これは特に手続きも必要なく費用もかかりません。また、秘 密保持の面でも他言さえしなければ誰も知り得ることはできませんが、反面、必要事項に 漏れがあると遺言自体が無効になってしまう可能性もありますので、注意が必要です。し たがって、通常は公証役場において証人が 2 人同道し、公証人の面前で口授することに よって作成される「公正証書遺言」を利用します。これだと後々トラブルにならずに遺言の 存在と適法性が担保されますが、この場合には当然ながら有償で作成することになり、た とえば相続財産が 1 億円なら 43,000 円、2 億円なら 69,000 円の手数料と、証人に対する お礼が普通は必要となります。あと、遺言の内容を誰にも知られたくない場合に「秘密証 書遺言」を作成するケースもありますが、公証役場で作成されても中身の適法性が担保さ れるわけでもないので、自筆証書遺言と共に家庭裁判所による検認手続が必要とされま すので、あまりお勧めできません。 以上のように相続については民法や相続税法、税目としての贈与税の内容と応用、不 動産の登記や売買に関する知識など、その周辺知識の修得と、何より命の次に大切とさ れるお金のことを包み隠さず聞き出す必要がありますので、顧客との信頼関係の醸成(リ レーションシップ)が不可欠であり、ある意味カウンセリングマインドの重要性が増すともい えるでしょう。したがって、より顧客サイドに立った、かつ、6 Steps の確実な理解と実践こ そが重要となりますので、これからも益々の研鑽が望まれるところです。 *本資料は平成 29 年 3 月時点における法令等に基づいた内容です。

参照

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