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今回は 新たに病原体のビルレンス ( 毒力 ) などの要因と感染についてみてみます (1) 病原体の持つ感染性 病原性 病原体のビルレンス ( 毒力 ) などの要因 感染全体に関する 3 つの要因 ( 病原体 生体防御 感染経路 ) 病原体 :B 型肝炎などのウイルス O-157 などの

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感染のしくみ 2 病原体の強さと感染 感染と感染性廃棄物のABC 第 22 回 感染の基礎 その 2 前回の 21 回より感染と感染性廃棄物の本題に入り、感染の基礎のその 1 として、 2.感染とは-感染のしくみ- 2-1.感染するまでの経緯 について解説をし“感染” がどのようにして成立するかの過程を示しました。 これは、感染性廃棄物の法的定義で、下記の表のように、 “感染”の部分についての解 説をしたものです。 このように法的な定義に医学的な意味づけを関連してご理解いただければと思います。 今回は、 “感染”に続く、 “病原体”について説明を加えます。 定義では、 “感染するおそれのある病原体”となっておりますが、どのような病原体で あるかについては全く触れておりません。 今回は、病原体が感染の過程でどのように関与するかをみて、次々回以降で、病原体 の種類などにも解説を加える予定です。 表 廃棄物処理における感染性廃棄物の定義 感染性廃棄物の定義と法的位置づけなどについては、前回の「廃棄物処理法における 感染性廃棄物の定義」に続き、「感染性廃棄物の法的位置づけ」についてさらに解説をい たします。法的には、感染性廃棄物については“感染のおそれ”などという表現が使わ れていますが、具体的な感染についての定義はされておりません。 感染のしくみの後に、前回の続きとして、感染性廃棄物の法的位置づけについて、そ の他、排出事業者責任などにも関連した感染性廃棄物の分別・WDS(データシート) などの重要なテーマについても解説をします。環境省が策定の「廃棄物処理法に基づく 感染性廃棄物処理マニュアル」に示される定義は次回以降に触れたいと思います。 2.感染とは-感染のしくみ-(続き) 前回は、感染のしくみとして、感染は病原微生物(病原体と呼んでいます)との接触 から起きますが、 病原体によって決して一方的に起こるものではないこと、 すなわち 「病 原体の接触」即、感染するわけではないということについて解説をしました。 今回は、感染のしくみとして、病原体の強さと感染の関係について解説をします。 2-2.病原体の強さと感染 感染は、 感染者から出た細菌やウイルスなどの病原体と次に感染する相手である生体、 “感受性宿主”の関係によって起こるとし、感染の経緯について解説しました。

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今回は、新たに病原体のビルレンス(毒力)などの要因と感染についてみてみます。 (1)病原体の持つ感染性・病原性・病原体のビルレンス(毒力)などの要因 感染全体に関する3つの要因(病原体・生体防御・感染経路) ① 病原体:B型肝炎などのウイルス、O-157 などの細菌、狂牛病などのプリオン 等々の病原体の種類や感染性・病原性・毒力など病原体の要因があります。 ② 生体防御:病原体が感染する相手の“感受性宿主”の丈夫な皮膚・咳などの自然 免疫やワクチンによる獲得免疫といった生体防御という要因があります。 ③ 感染経路:病原体と生体防御を持つ“感受性宿主”の両者の間の接触感染、飛沫 感染、空気感染などの感染経路という感染の仕方の要因があります。 今回は3つの要因の内、病原体の要因と感染の関係です。その種類が異なれば自ら 感染力や病原性の強さなどが当然異なります。 病原体の種類は次々回以降の予定です。 病原体の要因(感染性・病原性・病原体のビルレンス・毒力) 病原体などの強さをみると “感受性宿主” の関係で感染の成立・不成立に分かれます。 もし感染が成立すれば感染症発症となるわけです。これらを図により解説します。 感染性という言葉や病原性という言葉があり混乱しますが、この他に初めて出てきた 一口で言えば病気の感染と病気の程度を含めた、 病原体の毒力 (ビルレンス;virulence) といわれるものがあります。これは、感染症を引き起こす能力、重症化させる能力とも いえます。同じ病原体であればその量の多少で感染の成立が異なることは当然です。 感染性:病原性、感染性、病原体の毒力(ビルレンス)と似たようで判別しにくい言 葉が出てきましたが、読んで字の如く感染性は、前回解説したように病原体が他の、こ こではヒトという生体(感受性宿主)に接触し、侵入・増殖、炎症性変化と感染が成立 しますが、この力があるかどうかです。感染は受け手によっても異なります。動物のウ イルスで植物には感染しない場合は、非感染性、あるいは感染性無しなどといいます。 病原性:病原性は、病気を引き起こす可能性があるかどうか、最近では、高病原性な どその程度までをいう場合もあります。 例えば、サルモネラ属菌は、通常ニワトリなどの体内にあって、鶏卵や鶏肉を介して ヒトの消化管に感染すると食中毒などを引き起こします。このような場合は、ヒトから みれば病原性がありといえます。ニワトリには病原性は無いというように使います。ま たインフルエンザウイルスは、カモは体内に持っていても病原性はありません。これが ニワトリの間で感染を繰り返している内に、ニワトリ自身も感染すると死んでしまうほ どの高病原性を持ったというようにも使われています。この高病原性インフルエンザを 強毒性インフルエンザというように使っている場合もあります。 ビルレンス・毒力:最も分かりにくいのが、今回初めて出てきた“ビルレンス” 、毒力 といわれるものです。 「感染症を引き起こす能力、重症化させる能力」としましたが、もしその病原体が感染 した時どのくらい感染症を引き起こし易いか、また発病した時にはどのくらい重症化し 易いか、というような病原体の力の強さを示すもものです。

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先のサルモネラ属菌でいえば、食中毒を起こすサルモネラ菌もあれば、同じ仲間でも チフス菌と呼ばれるものもあります。このチフス菌は、腸チフスという重篤な病気を引 き起こし、食中毒との間には疾患の重さではかなりの差があります。この程度をビルレ ンスという言葉で表しています。先の新型インフルエンザで出てきた高病原性や強毒性 は、ビルレンスが強いということです。 (2)病原体の種類・量、感染性・病原性・ビルレンスなどと感染の関係 病原体が感受性宿主に感染して病気を起こすかどうかは、その病原体と感受性宿主の 持つ免疫など防御力の関係によって決まると解説しました。 病原体の力を決定する要素としては、 感染した病原体の数という量的な因子の他には、 その感受性宿主に対して · 感染性の有(強・弱)・無 · 病原性の有(高・低/強・弱)・無 · ビルレンス(virulence)の強・弱(高・低) などの質的な因子によって感染が成立するかどうかが決まってきます。 この関係は図1、2 に示すとおりで、病原体そのもの種類が最も重要であるといえま す。 病原体によってその持っている強さ、 毒力 (ビルレンス) ・感染力も決まってきます。 具体的に考えるならば、食中毒で出てくるノロウイルスやユッケの牛生肉で話題をま いたO-111 のようにわずかの量であっても感染力が強いものもあります。しかしこの2 つの病原体の毒力を比べるなら、 O-111 はノロウイルスに比べて毒力は強いといえます。 下図(図1)のように、通常、そのほとんどは生体防御が勝り感染は起きていません。 図1:病原体と生体の防御の関係:① 感染無し

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先のように、もちろん病原体の量も多ければ多いほど感染性は高くなるといえます。 このようなバランス関係は、図のようにシーソーで表してみました。 下図(図2)のように、病原体の種類により感染力など強くて生体の防御に勝てば感 染が起こります。 図2:病原体と生体の防御の関係:② 感染成立 前回、病原体と免疫など生体防御のせめぎあいとしましたが、ここでのシーソーの図 は、まさにその関係を表したものです。このようなことが組み合わされて、実際には、 接触、即感染ということはなかなか起こりにくいということです。 言い換えれば、病原体も他の生体に感染するためには、自然免疫・獲得免疫など生体 防御のいくつかの条件をクリアーしなければ成立しないということです。 自分自身で気がつきませんが、身体の表面でも鼻や口や気管支内などあらゆる見えな いところでも、このような病原体と自然免疫との戦いは日常茶飯事のこととして起きて おり、これがシーソーで表された図で、われわれの身体を外敵である病原体の感染から 守ってくれています。 次回は、感染しても症状が出ない場合は、感染したといえるのか? といった問題など や感染経路などの感染に関する概念のいくつかについて解説の予定です。 1-2.感染性廃棄物の法的位置づけ(前回・第 21 回 1の続き) 前回も、『本シリーズの第 1 回で、「難解であれ、矛盾していても、法令は存在してい

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るので、法律的な解釈についてもポイントは復習を兼ねて触れるようにします。」と触れ ましたが、特に医療機関関係の方々には、この法的位置づけと定義について十分な理解 と認識を持っていただきたいと思います。 』としました。感染性廃棄物が、法的に規制さ れて運用されている以上は、法についての理解は当然しておかなければなりません。 ここでは、まず法的な感染性廃棄物の位置づけについて示します。 (1)廃棄物処理法における感染性廃棄物、特別管理産業廃棄物、産業廃棄物の 位置づけ 1970(昭和 45)年の新たな廃棄物処理法制定により、新たに産業廃棄物の概念が生ま れ、廃棄物の扱いは大きく変わりました。 廃棄物は、表にあるように産業廃棄物と一般廃棄物に分かれます。正しくは、「産業廃 棄物以外を一般廃棄物とする」という規定のされ方です。産業廃棄物は、法律と政令で 計 20 の品目が決められています。 したがって、 この品目以外は一般廃棄物となる訳です。 表 廃棄物処理法における感染性廃棄物の位置づけ 一般廃棄物は、いわゆる一般家庭から排出される生活ごみが中心で、この処理の責任 は市町村にあります。一方産業廃棄物は、事業活動に伴って発生するものなので量に関 係なく、すべて事業者が自ら処理するとなっております。 しかしダイオキシン類の関係から、従来のように医療機関などが病院内に焼却炉をお いて処理することは、焼却炉自体がダイオキシン類の基準に満たないなどの理由で、自 ら処理することは事実上不可能となりました。この解決には、基準を満たす新たな焼却 炉を備えた処理業者に委託をせざるを得ません。そして法的にも自らの処理には、許可 を持つ処理業者に委託して処理してもらっても良いことになっております。しかし、あ

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くまで処理の責任は、排出する事業者、すなわち医療機関なりに責任があるとしており ます。これがいわゆる排出事業者責任といわれているもので、年々厳しいものとなって きております。 医療機関はこの自覚を持って適正処理に臨むことが重要です。 〔なお、排出事業者責任については、 「産業廃棄物処理業者の第三者評価制度 東 京都」について 8 感染と感染性廃棄物のABC 第 19 回 処理業者の情報につい て その 11 http://www.tgn.or.jp/tokyorp/documents/kansen1103.pdf を参照〕 市町村によってやや異なりますが、事業系一般廃棄物というものがあります。これは 事業活動に伴って発生しますが、産業廃棄物の品目にないもので、例えば、会社で廃棄 される紙や布など、医療機関でいえば、未使用のガーゼ、書類などが該当します。 (2)新たな特別管理(産業・一般)廃棄物、感染性(産業・一般)廃棄物の 概念誕生 1991(平成 3)年の廃棄物処理法の改正で、産業廃棄物、一般廃棄物の中に、新たに 「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康または生活環境に係る被害を生ずるおそれが ある性状を有するもの」と有害な特性をもつものを特別管理廃棄物として区分し、産業 廃棄物、一般廃棄物とは別に、さらに厳しい処理基準が決められ、処理業の許可も別途 取得することとなりました。 この中に感染性廃棄物も含まれる訳で、廃棄物が、産業廃棄物と一般廃棄物とに分け られているので、特別管理廃棄物も産業廃棄物と一般廃棄物に区分されております。こ のため感染性廃棄物も、感染性産業廃棄物と感染性一般廃棄物に分けられています。 法的には前述の通り、感染性産業廃棄物は、事業者が委託を含めて自ら処理しなけれ ばなりません。医療機関から排出されても感染性一般廃棄物は市町村に処理の責務があ ります。市町村で異なりますが、感染性産業廃棄物か、感染性一般廃棄物かで、医療機 関で処理の上で、排出先が変わるなど関連してきます。 特別管理産業廃棄物には、この他に燃焼性の廃油、腐食性の高い廃酸・廃アルカリ、 そして、PCB関連、アスベストといわれる石綿関連、ダイオキシン類、水銀、カドミ ウムなどの有害物質などの種類が含まれます。 1-3.感染性廃棄物の分類に伴い生ずる分別、WDS、使用容器などの問題について (1)感染性廃棄物の分別と使用容器の問題 医療機関で誤解されている点が、感染性廃棄物の分別と使用容器の問題があります。 これは簡単に触れるような問題ではなく、7 月 22 日には、有害・医療廃棄物研究会の第 30 回研究講演会のメインテーマとして、環境省、医療機能評価機構、横須賀共済病院、 日本シルバー等の参加予定でシンポジウム「医療機関が排出する廃棄物の分別(ふんべ つ)ある分別(ぶんべつ) 」が開催されるほどの重要な課題です。 (プログラム・案内等 は、 http://www.jmwra.jp/news/110722.html 参照して下さい。 ) 感染性廃棄物は特別管理産業廃棄物の中の 1 つの分類です。このため、感染性廃棄物 については独自の判断基準がフローとして示されております。ところが感染性廃棄物の

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中にそれ以外の特別管理産業廃棄物に該当するものなどを混入して医療機関が排出する という困った問題が起きています。それらの中には廃棄物処理法違反のものもあります が、このことに関してあまり医療機関は認識がないようです。 例えば、試薬類や検査に用いる標本関係薬品である有機溶剤など、あるいはフォルマ リンなど医療で用いられますが、本来的には化学物質であり、感染性廃棄物以外の特別 管理産業廃棄物、 あるいは産業廃棄物などの分類のものです。 ところがマニュアルでは、 「検査室で検査に使用された後に排出されたものは、感染性廃棄物である(一部省略) 」 などの記述がされているために、これらを感染性廃棄物と一緒に同じ容器の中に混入し て排出してしまっているということです。 これは、特別管理産業廃棄物は、表に示すとおり産業廃棄物の中から、爆発性、毒性、 感染性のある廃棄物となっており、産業廃棄物よりさらに有害性が高いものを取り出し たものです。特別管理産業廃棄物の中の分類であるからといっても、感染性廃棄物とそ の他の特別管理産業廃棄物などは、各々特性の異なる別の分類の廃棄物です。 これを一緒に混在して廃棄して良いということでは決してありません。 医療機関から排出の感染性廃棄物の中に、水銀を用いた体温計・血圧計が混入されて いるなどのケースです。 産業廃棄物が品目ごとに許可も取り、扱いが異なっているのですから、さらに有害性 の高い特別管理産業廃棄物は当然、品目ごとにとり扱いが異なり、分別して排出すべき ものです。 感染性廃棄物はその中では特殊であって、感染性産業廃棄物として扱えば、感染性一 般廃棄物の混在や要するに感染性に類していれば、感染性産業廃棄物の中へ、混在が認 められております。この点を医療機関では誤解して、感染性廃棄物とその他の特別管理 産業廃棄物を混在しているなども考えられます。しかしいずれにしても、非常に危険で 処理業者の安全確保の上で問題が多いといえます。 早急に改めなければなりません。 (2)WDS(廃棄物データシート)活用の課題 前述の感染性廃棄物の混在は、分別の問題であると同時に、いわゆるWDSという廃 棄物データシートにも関わる課題です。 医療機関がどのような特性・性状の廃棄物をどのような容器を用いてどのくらい排出 するかということは、法的には委託契約前に、排出事業者である医療機関が処理業者に 文書を持ってあらかじめ示さなければならないということが規定されております。いわ ゆるWDSという廃棄物データシートを用いていない、あるいは用いたとしても、WD Sに記載のとおりの排出をしていないという、基本的に考えるならば、廃棄物処理法に も抵触する主として排出事業責任にもかかわってくる課題です。 この辺りの重要な事項を医師・看護師・薬剤師等は、特別管理産業廃棄物管理責任者 の指定講習会受講はしなくても良いと特別措置を厚生省(当時)がとったため、医療機 関のほとんどは知る機会がないといえます。 そればかりではなく産業廃棄物等の処理業は、業種別の労働者死傷災害発生状況をみ ても発生率が全業種平均 1.7 度数率に比べて廃棄物処理業は 13.43 度数率(H14)と非

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常に高い業種です。 その内訳は、「火災と爆発」 が 50%、 「ガス発生」 17%、 「中毒・薬傷等の人身事故」 9%、 「漏洩」9%などなっており、いずれも大変危険な死傷災害といえます。 そしてその原因をみた調査では、「排出される産業廃棄物の性状等の情報不足」 が 53% と圧倒的に多いです。いかにWDSが重要な役割を果たしているかが窺えます。 ついで「排出事業者における不完全な安定化処理」35%、 「分別・表示不足」33%、 「容 器の形態不良」8%など、いずれも排出事業者の認識不足に起因しているといえます (p8 図3・円グラフ参照) 。 このような実情からWDSについては、全国産業廃棄物連合会(以下、全産連といい ます)でも過去から重要な課題とし取り上げております。 環境省も 2006(平成 18)年にWDSについてのガイドラインを作成して、その普及に 努めております。 東京産業廃棄物協会でもWDSの活用に着目しており、感染性廃棄物等の適正処理の ための差し迫った課題として、近々検討を加えるものと思われます。 感染性廃棄物は、その廃棄物の種類・性状などから、密閉した容器を用い、一度蓋を したら開けられない構造になっています。したがって医療機関は、WDSを正確に記載 して、分別と使用容器を処理業者に説明し、話し合いを持って相互の理解の下に適正処 理を進めるべきです。 この両者の関係は、本シリーズの第 17 回から 19 回に詳しく解説しました。 図3:産業廃棄物処理過程における死傷災害の原因 感染性廃棄物にもし特別管理産業廃棄物などの1品目でも混在していた場合は、受け

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た処理業者がその品目についての業の許可を持っていなければ、医療機関が、許可が無 く、処理業者が取り扱えない廃棄物を依頼したという委託違反となります。これは単に 法的な違反ばかりでなく、安全適正処理の上から中間処理ができない廃棄物を渡すこと になり、先の死傷災害に繋がることになりかねません。 例えば、WDSの上では産業廃棄物である廃酸(pH2.0 を越えるもの) 、あるいは廃ア ルカリ (pH12.5 未満のもの) を排出となっておりますが、 実際に排出されているものは、 特別管理産業廃棄物に該当する廃酸(pH2.0 以下のもの)、あるいは廃アルカリ(pH12.5 以上のもの)が排出されているというような、内容物が未確認のままであるということ もあります。当然、これは廃油についても産業廃棄物か特別管理産業廃棄物か不明であ るものもあり、分析すると特別管理産業廃棄物であるということもあります。 これ以外にも、内容物が不明な試薬類や有機溶媒などのいくつかが混在されて感染性 廃棄物のプラ容器に入れられているケースもあり、もしこれが割れたりすれば大きな事 故に繋がります。原則、固形物の廃棄物に液状のものを混在することは避けなければい けません。 液状物が混ざり合った場合の化学反応などによっては事故に繋がってきます。 医療機関は、排出事業者責任という観点からも、処理業者の協力の下にまずWDSを 正確に記載していただきたいと思います。そしてこれを基に処理業者と分別方法・使用 容器について対等の立場で話し合い、廃棄物を受ける立場を考えて、処理業者側の意見 も尊重して排出方法を決定し、廃棄物処理法に遵法した安全で正確な適正処理の継続を 目指していただきたいと思います。 そしてこれらの遂行のためには、排出事業者である医療機関と処理業者は十分な信頼 関係を持っていなければなりません。 このような良い関係を持ったパートナーとして、ぜひ処理業者側も医療機関に適切な アドバイスをしていただきたいと思います。 (3)感染性産業廃棄物と感染性一般廃棄物の法的区分と分別について 感染性廃棄物については、法令上は、感染性産業廃棄物と感染性一般廃棄物に分かれ ておりますが、この区分が難しいという声が多いです。これは、区分が医学的な根拠よ りも法令上の規定によるものであり、単純に解釈しないと難解になります。 p5 の 表 にあるとおり、単に廃棄物が、産業廃棄物と一般廃棄物に分かれているの で、特別管理廃棄物も、産業廃棄物と一般廃棄物に分けたということです。このため、 特別管理産業廃棄物には、感染性産業廃棄物が属し、特別管理一般廃棄物には、感染性 一般廃棄物が属するというように、感染性廃棄物も産業廃棄物と一般廃棄物との法的な 品目の区分で分けられることになってしまいました。 この区分には “感染性” という特性は考慮されておりません。 これが混乱の原因です。 特別管理産業廃棄物である血液は、感染性産業廃棄物として規定されております。そ してプラスチック類、ゴムなどの産業廃棄物があり、例えばプラスチック類に血液が付 着すれば、感染性+産業廃棄物 で、感染性産業廃棄物となります。布、紙などの一般廃 棄物に血液が付けば、感染性+一般廃棄物 で、感染性一般廃棄物となるという、医学的 なものではなく、法的な区分です。 医師から質問されると一番困る点は、何故血液が感染性産業廃棄物であるのに、これ

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がガーゼなどの布に付いたら感染性一般廃棄物になるのかという点で、全く理解に苦し むといわれます。医学的根拠からかけ離れているために分かり難いといえます。 (4)感染性廃棄物の分別・使用容器・WDSに関連する問題点のまとめ 先の感染性廃棄物の分別も含め、現在困っている問題点をまとめてみました。 ① 感染性廃棄物とその他の特別管理産業廃棄物などを混在して排出することは、 大変 危険な上、廃棄物処理法に違反している場合もあります。 ② 特別管理産業廃棄物などは、通常単品ごとに廃棄することが規定されており、特性 が異なるもの、中間処理の方法が異なるものなどを混在することはできません。 ③ WDSなどに記載内容と異なることなく排出すること。 記載内容と異なる分別や内 容物は、事故に繋がるだけではなく、廃棄物処理法上も違法の場合もあります。 ④ 特別管理産業廃棄物など、あるいは産業廃棄物の一部であっても、必ず品名を明ら かにしないと取り扱い上危険な品目が多いです。これらの品目の排出の際には、廃 棄物の内容は、容器添付用ラベルを用いるなど明記して、事故を避けるよう配慮す べきです。 等々のいくつかの注意が重要です。 これらの前提には、WDSシートの正確な記載とその励行が必要です。これらは医療 機関任せでは、なかなか処理業者にとっても安全処理を行うことは難しいです。例えば アンケート形式にするなどの工夫をして、医療機関からあらかじめ排出されると思われ る廃棄物のリストを用意します。そして危険度合いの高い品目については、見落としが ないような簡便ですが、確実な方法を確立して、排出事業者、処理業者が、一致協力し てWDSの活用推進を進めなければなりません。 これらが第 17 回~19 回までに解説してきた排出事業者と処理業者業者は、対等でよ り良きパートナーであり、車の両輪の関係が理想的というものです。 これらの問題も感染性廃棄物についての定義、分別がややあいまいである点に起因し ているともいえます。このように廃棄物処理法では、感染性廃棄物と規定しながらも、 感染性そのものについては触れていません。そして、感染性廃棄物については、複雑で あるために感染性廃棄物が医療廃棄物といわれていた旧厚生省時代から、「医療廃棄物の ガイドライン」が作られており、現在は「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニ ュアル」と替り、2 回目の改訂がされたところです。 その中では、感染性廃棄物という表現で統一されており、感染性産業廃棄物と感染性 一般廃棄物に分けて考え、処理することは避けているように受け取れます。また感染性 一般廃棄物は市町村に処理責任があることも関係しているかもしれません。 皆さんがご存知のように感染性一般廃棄物も感染性産業廃棄物として扱えば一緒に取 り扱えるので、実際にはこれらの事情を余り知ることもなく、一本化して感染性産業廃 棄物として扱っている医療機関が多いと思えます。 この分別やWDS活用の問題等は、今後も機会ある度に触れて行きたいと思います。 本シリーズをきっかけとして、 医療機関と処理業者が協力して、 WDSの見直しなり、 分別の再考なりが進められるなら幸いです。

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〔参考・引用文献等〕 1.ICHG 研究会編:標準予防策実践マニュアル(これからはじめる感染予防対策)、 南江堂、p19、2005 2.氏家幸子監修、泉キヨ子編:急性期にある患者の看護1、成人看護B(第2版)、 広川書店、2001、p244 3.小林秀光・白井淳:微生物学、化学同人、2003 4.環境省監修、日本医師会・日本産業廃棄物処理振興センター、平成 20 年度 医療 関係機関等を対象にした特別管理産業廃棄物管理責任者に関する講習会テキスト、 第1章 原田担当部分、2008 5.環境省環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部:廃棄物処理法に基づく感染性 廃棄物処理マニュアル、2009(平成21)年5月 6.環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部:廃棄物情報の提供に関するガイドラ イン-WDSガイドライン-(Waste Data Sheet ガイドライン)2006.3

http://www.env.go.jp/recycle/misc/wds/main.pdf

参照

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