110 香川大学農学部学術報告 キゥリの半促成栽培における土壌の蒸気消毒について 犬 伏 貞 明 Ⅰ緒 ロ キクリ栽培では,連作による生産の低下が栽培を重ねるにつれ著しい..近年のように,ビニ・−ルハウスが 大型化し,固定化すると,連作障磐の防止対策が,とくに重要となるい そのため,各種薬剤による土壌伝染性病舎の防除や,接木栽培によるその回避が実用化された..しかしな がら,連作障害は土壌伝染性病書だけにもとづくのでほなく,また薬剤による土壌消毒は,その効果が不確 実である。 蒸気による土壌消毒は,我国では,まだ実験的段階であり,実際的場面での検討は不充分であるり 本実験は,連作3年目の半促成キウリ栽培において,蒸気消毒と薬剤消毒(メチルブロマイド,クロルピ クリン)の防除効果を比較検討したものである.. 本実験は,本学花井研究室狩野邦雄教授の御指導のもとに行なわれ,本稿の御校閲を戴いた..諾しんで謝 意を表します.また実験に際して,終始御懇篤な御教示を受けた同研究室小西国義助教授に深く感謝いたし ます.最後に,調査や肥培管理に協力された本学附属農場森俊夫,伊藤博充両技能員に厚くお礼申し上げる.. 本稿の要旨は,1966年度園芸学会秋期大会で発表した. ⅠⅠ実験材料及び方法 実験は本学附属農場で,過去ニカ年,津促成キウリが栽培されたどこ∴−リレハウスで行なった.ビニ−ルハ ウスの内部を二等分し,一・方は全面蒸気消毒をおこない,両方の区をそれぞれ三等介し,他方に薬剤処理区 と無処理区を設け,各区135m2になるようにした.蒸気消毒は,1966年1月20日にホジソンパイプを,探 さ20cm,間隔30cmごとに埋め,表面をカバー・したシ・−・トが完全に脹れるまで蒸気を通した(蒸気区).. 薬剤処理は,1月26日におこなったりクロルピクリンは30センチ平方当り,3ccを1・5cmの深さに注入した (クロルピクリン区)‖ メチルブロマイドは,13・5m2当り500gを処理した(メチルブロマイド区).. 品種は松のみどりを用い,1月8日に播種し,常法に従い育苗し,2月21日に各区とも4‘7本あて定植した〃 生育,雑草発生数,病苦発生,および収量について調査をおこなった. ⅠⅠⅠ実 験 結 果 1.生育調査 定植時の各区の草丈,および実験終了時の6月30日における生育状態は第1表の通りであった巾 6月30日における調査でほ, 草丈,節数,茎葉重とも,無処 理区と蒸気区の差はほとんどみ られなかったが,薬剤処理区は やや劣った.この劣った原因は, 他の区との土の混合を防ぐため に,耕起が充分でなく,したが って,ガス抜きが不完全であっ たためと考えられる.. 2雑草発生調査 定植後25日目の3月1‘7日に, 第1表 定植時の草丈および土壌消毒が半促成キウリの生育 におよぼす影響 調査項目 茎葉重毎 処理区 (注)各区とも15個体の平均値を示す.
一・区15mBのこ区制で調査した 結果を第2表に示した. 予想されたことでほあった が,蒸気区の雑草は非常に少な い小 またメチルブロマイド区も 少なかったのは,上と同様ガス の影響によるものであろう. 第2表 土壌消毒が雑草発生におよぼす影響 本/1‖157好
第一・区l第二区i 計
3.病害調査 第3表に病気によって枯死した株数を示した.病微からみて,主として−,つるわれ病によるが,各区とも 生育後期にとくに被害を受けた.第3表 各区の病害枯死株数
3 月l4 月!5 月 L 6 月i 計 】定植数】 %
土壌消毒は,この病気の防除のために,おこなわれたが,顕著な効果は得られなかった. 4収盈調査 収穫開始日の3月15日から6月30日までの時期別収意および総収盈は,第4表の通りであった 第4表によると,蒸気区の収量は全期間を通して多く,次いで,無処理区,クロルピタリン区,メチルブ 第4表 土壌消毒が半促成キウリの時期別収鼠におよぼす影響烏ダ/区 4月下旬 5月上旬 5月中旬112 香川大学農学部学術報告 第4表 つ づ き
蒸 気 区 j 与。・舌ド還
等 級l 無 処 理 区 ロマイド区の順となった 次に無処理区の収盈を100として,各区の時期別収盛を比較すると,第1図のごとくなり,蒸気区の初期 収蕊の増加が著るしかった.また,全体では,蒸気区+9%,クロルピクリン区−4%,メチルブロマイド 第1図 無処理区を100とした各区の時期別収孟指数区−18%の増減となった. ⅠⅤ 考 察 土壌消毒は,土壌伝染性病害の防除手段としておこなわれるが,栽培者にとって必要なことば,土地の生 産力の回復である.. 蒸気消毒が土壌の物理化学的性質におよぼす影響として,福島等(1)により,容水盈の減少,全孔隙畳,非 毛管隙造の増加,団粒構造の促進,無機成分と置換性石灰の増加,燐酸吸収係数の低下が認められている. またLAWRENCE(8)も同様な変化を認め,それら可溶性物質の作物による吸収も多くなると報告している. 本実験で蒸気区の収孟増加,とくに初期収量の増加の著しいのほ,上記の事実で説明できる.しかし LAWRENCEはまた,ある種の物質は他のものより多く可溶性になり,それは熱の盈や土壌の種類によって 異なることを指摘した.. 多義施肥で生産を維持してきた施設栽培では,塩類の蓄棍も著るしく,蒸気消毒による土壌の潜在養分の 必要以上の可吸態化や,そのアンバランスが,かえって生産力を低める結果にもなりかねない.したがって,
適正時間の消毒と元肥と早期の追肥には充分な注意が必要になろう.
薬剤処理区が,生育,収畠の点で無処理区と差がみられない(クロルピクリン区)か,かえって劣る結果 が得られたが,ガス抜きの不完全によるものであろう. 病気防除では,各区とも,所期の成果が得られなかったが,メチルブロマイドはこの種の病気に対して無 力であるから当然としても,クロルピクリンほ低温(70C以下)では効果がない(LAWRENCE)とも云われ るが,一・方平野等は冬期の使用でも有効なデータを示している.しかし蒸気区でも11%の被舎を受けている から,この原因は育苗中の感染によるものか,同一・ハウス内にかなりの面積の末消毒部分を残したためと考 えてよい. MoRRIS(4)によると大部分の病原菌は‘71つCで死に,トマトモザイク病のようなきわめて高い温度まで耐 えられる菌でも93◇Cでは死滅する(LAWRENCE)から,蒸気を通した土壌は,完全に殺菌されると考えられ, その後の病原菌の侵入と増殖の対策が,先に述べた施肥方法の改善とともに対処されるならば,蒸気消毒に よる土地の生産力の回復は充分期待できる. Ⅴ 摘 要 キウリの半促成栽培の連作障審の【坊止に対して,蒸気による土壌消毒と薬剤消毒(クロルピタリン,メチ ルブロマイド)の効果を比較検討した.結果は以下のごとくであった. 1 実験終了時の草丈,節数,および茎葉重は,触処理区と蒸気区の間では,差はみられなかったが,タ ロルピタリン区とメチルブロマイド区は劣った. 2 蒸気消毒区においては,雑草の発生ほ非常に少なく,触処理区やクロルピクリン区は多かった1. 3.病審はすべての区で発生がみられた..これは育苗中の感染によるものか,実験上の不備によるものと考 えられる. 4蒸気区の収鼠は,他の区に比較して,著しく増し,とくに初期収盈が増加した.. 文 献 (3)LAWRENCE,W,J,C:SoilSterilization・George Allen&UnwinL,T,DLondon,(1956) (4)MoRR7S L,G.:The Steam Sterilization.Na・Jio花αg九血納げ4画励椚=毎ぬ如唱和細, No14,(1952) 引 用 (1)福島与乎,増井正夫:温室土壌の蒸気消毒に関 する研究,園芸学研究集録,8,126′)131(1957)・ (2)平野寿−・,本橋楕」・:クロ・−リレピタリンによる つる割病の防除Ⅲ,関東束LLけ再審虫研究年報, 12,36(1965)
香川大学農学部学術報告 E仔ectsofthesteamster・ilizationofsoilonsemi−fbrIClng