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国際経済理論における社会的無差別曲線と貨幣-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

国際経済理論における社会的

無差別曲線と貨幣

宮 田 亘 朗 Ⅰ.国際経済学において通常使用している社会的無差別曲線に関するま とめ.ⅠⅠ.貨幣の需要を含めたときの社会的無差別曲線の導出. ⅠⅠⅠ.むすび〃 Ⅰ 以下,われわれほ,貨幣を含む交換経済の分析1)を国際経済に.拡張する場合 に必要な社会的無差別曲線の考察を行う。社会的無差別曲線に関する最近の研 究2)についてほ,特にここでは立ち入らない。ざて,通常の国際経済理論におけ る社会的無差別曲線ほ,次のように構成される。 いま,二働彗(↓=1・2)を需要し価格巧と初期の保有所得Ⅰからなる予 算制約式∑pi∝‘=Ⅰの下で効用函数U=U(ズl,ズ2)を極大とする個人を考え る0この場合,完全競争市場での極大行動の結果叫/∂∝J=スp↓となり,二財 の限界代替率とそれらの価格比が均等となる(∂り∂ズ1)/(∂り∂ズ2)=pl/旬2 の関係が得られる。そこで単純にα,あの二人のみからなる社会を考える。この とき,上記の関係は,その社会にトおけるパレート最適を表わす関係式 = −  ̄両㌃ ̄ 一 によって置き換えられてくる。この(1)式の関係を図示したものが第1図の例え ばQ点である。′すなわち,第1図のボックス・ダイヤグラムにおいて,個人α の無差別曲線は原点0。より措かれ個人あの無差別曲線は原点0ぁより転倒した 形で措かれている。したがって,両者の接点Qで上記(1)の関係が成立してくる。 個人αに閲しその原点並びに無差別曲線U。を不変に保持し,他方で個人あに関 1)拙稿「貨幣交換経済に関する覚書」香川大学経済論螢 第53巻第4号 昭和56 年3月 2)例えば,三枝義清「集計的需要函数について」 農業総合研究 第31巻3号 昭和52年3月

(2)

ー⊥〟)− 香川大学経済学部 研究年報 21 J9 β2

してその無差別曲線UムをこのUαに接しながら移動させるとき,右上端の原点

0ゐの描く軌跡をみる。この軌跡U。+ムは,当該α,占の二人のみからなる社会 を集計した一層の社会的無差別曲線となる。すなわち,いわゆるシトフスキー

の等高線(Scitovskycontour)である3)。シトフスキー等高線U。+bの点Ob

における接線の勾配ほ,ボックス・ダイヤグラム内のQ点の接線の勾配に等し 第1図 第2 図 い0社会全体の二財の需要変化d∝lとdズ2ほ,無差別曲線U∂を無差別曲線Uα に接したまま左上方へ移動するとき,その社会が需要する二財の個別需要変化

の合計として求められる。個人αの需要変化はズ1財の増加d増とズ2財の減少

d増であり,同様に個人あの需要変化も∝1財の増加d蛮と∝2財の減少鹿皇

である。したがって,等高線Uα+ゐの点0ゐにおける接線の勾配−dズl/dズ2は,

Q点においてdポ/飯箸=血レ血雪が成り立つことを考慮すれば,_血1/dズ2

=−(dxT+dxP)/(dxg+dxき)=−(d増/d蛸)(1+dxレdxT)/(1+dx告 .瑠璃)=−dポ/dポとなる。

3)Scitovsky,T・,AReconsideration of the′meor・y OfTar・iff,R.E. ぶfαd・侮1・2,194ト1942pp・89−110(虎eαd£花gS∠花fんerんeorγ0/ム加er

(3)

国際経済理論における社会的無差別曲線と貨幣 −Jノブ− Q点を通る契約曲線は,0αQOムで表わされる。そして,Q点以外の契約曲 線上の点,例えばQて魚での個人αと個人あの無差別曲線の接線の勾配は,Q点 における接線の勾配と異なる。ゆえに,Q二魚において,個人らの無差別曲線を 個人αの無差別曲線に接したまま移動させるとき生じるボァクス・ダイヤグラ ムの端点0るの軌跡ほ。以前のQ点で生じたUα+ろと接線の勾配を異にし互■.に交叉 するけ線のようなシト7スキー等高線を描く。契約曲線上の点は,す点以外に 無数に存在する。したがって,0る点で交叉するシトフスキー等高線も無数に存 在することに.なる。このように交叉するシトフスキー等高線は,Q点とQ篭の ように,その社会の構成員の間に分配される所得の違い,より正確に言えば, 個々人の満足水準の違いから生じたものであるといえる。このことをサミュエ ルソソほ,第1図と第2図の関係で把える。すなわち,第1図で契約曲線(㌔Q Oゐ上の各個人の効用水準を求め,それをUαおよびUムを軸とした効用平面にプ ロットすると,例えば第2囲のBB線を得る。このBB線上のQ点およびQT,点 は,第1図のQ点とQ焦に対応している。そこで,第1図のシト7スキ・一等高 線上の一点0ムほ第2図ではBB線上の無数の点を表わし,他方逆に第2図のB B線上の一点Qほ第1図では・一つの等高線U。+ム上の無数の点を表わすことにな る。 以上のように社会の各構成員の分配される所得の撞いは,互に交叉する無数 の1ントフスキー等高線を導出する。したがって,このようなシ1、フスキー等高 線を,その社会の集計された無差別曲線として理論分析に用いることは,不可 能である。そこで,無数に存在するシトフスキ・−・等高線のうちからただ一つの 等高線を有効なものとして取り出すか,あるいはただ一つの等高線しか得られ ないケ・−・スに分析を限定するかする以外にないこととなる。通常,挙げるケー スは,次のようなものである5)。すなわち,(1)一人の居住者のみからなる社会, (ii)慈悲深い独裁者または各居住者の選好を統一・的に反映しうる中央集権的絶対 4)Samuelson,P.A.SocialIndifference Cur.ves,Q.)小E”Vol52,nO, 1,Feb.1956.. 5)Heller,H.R..In(”rM(LOnL7[71r<7d亡,−7YLt,Or!I・1nd EmpErL((7II;tlL(kn(C.196さ 木村滋・村上教訳「H。R.へラー 国際貿易論」ダイヤモンド社 昭和46年L。 76−78頁。

(4)

香川大学経済学部 研究年報 21 J9β2 −JJヱー 主義社会,(町同一所得と同一噂好せ持つ個人から′なる社会,(きV)同次無差別 曲線と同一噂好を持つ個人からなる社会,(Ⅵ同次無差別曲線と同一所得を持つ 個人からなる社会,(〉i)最適所得再分配すなわち所得の最後の1ドルの社会的 効用(厚生)がすべての個人に対し等しくなるように所得の再分配がなされる 社会である。 これらのケ・−スのうち,(りと川)は自明であり説明を要しない。ケー・ス㈹は, その社会のすべての個人が同じ所得でかつ同じ噂好を持ち,したがっていずれ か−一\人の無差別曲線に.よってその社会を代表させることができる場合であり, 交叉しないただ−一 つの社会的無差別曲線を導出することカミできる。また,ケ・− ス(i〉)ほ,同じ噂好を持ち個人的な特定の財への好みがなくかつ同一・の相対価格 に直面するときに個人の各財に対する購入割合が全く同じになる場合に相当し, 上記のボックス・ダイヤグラムにおいて対角線0α0ゐに契約曲線が−・致するケ −スにあたる。ゆえに,得られるシトフスキ、一等高線はただ一つである。さら に,ケ・−ス(Ⅵほ,第1図に示したような契約曲線上で各個人の所得水準が等し ぐなる一点を選び出すこととなり,ただ一つのシトフスキー等高線のみが有効 となる。最後に,ケーIス㈹は,社会的効用(厚生)函数W=W(Ua,Ub)がわ 第4図 ガ2

(5)

国際経済理論における社会的無差別曲線と貨幣 −JJ3− かっており,所得がつねに各個人の受取る1ドルの限界的な社会的効用(厚生)

を等しくする(宗綜=謡 鍔)6)ように分配される状態を表わし

ており,第2図に.おいて社会的厚生が極大となるようなBB線上の一点を選び 出すことを意味する。いま,サミュエルソソにしたがいBB線を描く第2図の

効用平面に社会的効用(厚生)W(Ua,Ub)=COnSt.を示す曲線群を書き加え

ると,第3図が得られる。第3図におけるBB線上の接点eで社会的厚生は榛

大となり,JJ曲線の勾配−(∂V/∂u。V(∂v/∂ub)とBB曲線の勾配dUb/

dUα=−(∂ぴ/如き)/(∂uシ勺∝き)=一入ろ/入αが−激する7)。したがって・

(∂彗旬uα)(∂tり旬Ⅰり/(飢%ぴ)(∂uシ狛)=1となり,各個人の受取る所

得の最後の1ドルが表わす社会的限界効用は均等となる。かくして,各個人の 所得の社会的限界効用を均等とする分配を行うとき,ボックス・ダイヤグラム で示されるパレ・−ト最適は維持され,ただ一山つのシト7スキ・一等高線が選択さ

れる。さて,社会に.存在し需要されるこ財の総量が変化する場合を考えよう。

このとき上記ボックス・ダイヤグラムの大きさ,すなわち縦軸および横軸の長

さは変化し,それにつれてそれぞれ−・つづつの社会的厚生を極大とするシトフ

スキー等高線が選ばれてくる。そこで,これら等高線を結び合わせると,第4

図で示されるシトアスキ1一等高線の包括線が導かれる。この包括線こそ,この ケースでサミュエルソソが社会的無差別曲線(socialirdiHerence curve)

と呼んだものである。なお,この議論で社会的厚生函数の存在が予め仮定され

ている。しかしながら,このことは,サミュエルソソによれはそれほど奇異な ものでないという。すなわち,数人から構成される家族ほ,その総所得を予め 6)Ⅰα・Ⅰゐは個人α,ふの所得を表わす。 7)BB曲線の接線の勾配dU%uは,Ua=Ua(頑,X夢),Ub=Ub(可,Xf) をそれぞれ全教分して得た値の比をとり,d埠=−d∝告,dx冒=一d夷であること, 並びに(師彷埠)/(∂リソ明)=(叫旬)/(紬シ∂魂)・であることに注

意して整理すれは,dU%ua==−(∂u%x2)/(∂uシ勺x晋)を得る。この場合,

ラグランジュ乗数入α,入∂とすると・それらは,各々の所得Ⅰα,Ⅰムの限界効用

dU%Ia・dU%Ibを現している。そこで,dU%ua=−(∂uシ毎夕)/(∂ua

/も賃)=一入机αであり,各々の所得の限界効用の比に等しくなってくる。

(6)

香川大学経済学部 研究年報 21 −ヱヱ4− J9 β2 各成員に割り当でて,互に独立な意志決定を行いながら,あたかも統合された 家計の厚生を極大にする如く行動する。これと同じよう守こ一・社会でも,各個人 に所得を配分し自由に.行動しながら,全体の社会的厚生を棲大化することを考 え.うる。しかも,ここに考察するような単純で完全競争を仮定するモデルでほ, 社会的厚生を仮定し各個人の所得の最適配分を導出したとしても,それほど異常 なこととはいえないであろう。しかしながら,もし社会的な最適所得配分が得 られず,それから離反するならば,そのとき利得者から損失者へ補償支払いを 行い,社会的無差別曲線の上を常に動くよう修正されねばならないことになる。 ⅠⅠ 以下,われわれは,前節で考察した社会的無差別曲線の分析を,貨幣を含む 交換経済に適応しその問題烏をさぐることとする。単純化のために二財のみを 仮定する。先ず,′くティソキンのモデルほ次のようになるの。貨幣Mおよび貨

幣価格pl・p2が効用函数に導入されU=U(Xl・X2・M,pl,p2)とさ 2

れる。そして,予算制約条件亨p£(ズ‘−ズ‘)十M一両=0の下にその効用函数を

極大化する個人を考える。Uは,周知の連続性の仮定をもち,微分可能であり, 凹条件を満しているものとする。さらに,、貨幣の機能からして,M,p−,p2 に関してゼロ次同次であると仮定される。∝i,∝£は第i財の初期保有量とそ の需要量であり,両とMは期首貨幣ストックの保有量と期末保有量である。極 大となるための必要条件ほ,制約条件式以外に 些 _ ∂ズ1 ∂U 一入pl=0 一入p2=0 入 =0 が加わる。貨幣価格pMは,その計算単位としての磯能よりして1である。当 然のことながら,この/くティソキンのモデルと前節の貨幣を含まないモデルと

の差異ほ,、貨幣所得Ⅰ=両+pl云l+p2琵2が二財の支出に向けられるだけで

8)Patinkin,D.,Moneγ,Interest,and丹ices,1965

(7)

国際経済理論における社会的無差別曲線と貨幣 一ヱJ5− なく期末の貨幣ストックの保有として留保される点に.ある。(2)式から p‘, −=】,2

を得る。前節において(∂りあ2)/(∂th∝1)ほ,当該個人の無差別曲線の

勾配を表わしていた。これに対し,本節の(3)式ほそうでほない。効用函数U= U(xl,X2,M。Pl,p2)の無差別曲線の勾配ほ,この函数をU=COnSt. の下で全教分して得る値 =+豊 − 2 (4) である0すなわち,所与の価格pi,p2の下で・ある一小定水準の満足を与え・る 二財ズ1,∝2および貨幣Mの組み合せは,第5図のように直交する三軸からな る三次元空間に.おいて原点0に対し凸である無差別曲面ABCを形作る。そし て,上記の(4)式によって示された勾配−dズJl./旬∝2は,この無差別曲面を任意の 平面(必ずしも∝10∝2平面と平行でない)で切った切り口の曲線(例えばIK 曲線)に関する接線の勾配によって表わされる。したがって,この勾配ほ,貨

幣の需要Mが一定不変でdルれズ2=0とならない限り,前節の勾配(∂tレb∝2)

/(∂tれ∝1)から(4)式の右辺第二項(dツ毎2)(∂γ∂M)/(∂り∂∝1)だけ異な

ることになる0他方,予算制約式㌍l+p2∝2+M=Ⅰは・上記の三次元空間

において平面DEFに.よって表わされる。そこでこの平面DEFと上の無差別曲

面ABCの接点Qは・所与の価格pl,p2の下での効用極大の点を表わしているo

第5図において,無差別曲面ABCを,角HIGが

=+

一 (5)

となる三角形△GHIを含む平面9)で切った切り口は,.JK曲線となる。また,

予算制約平面DEFを切った切り口は,直線HIとなる。そこで,上記の効用

9)この平面はdM/旬医2ニ0でない限り,平面∝10∝2に・平行とならない。

(8)

香川大学経済学部 研究年報 21 J9 β2 ーJJ6一

(9)

国際経済理論における社会的無差別曲線と貨幣 −JJ7一 極大点Qは,このHI直線とJK曲線の接する点であると言い換えうる。ちな みに,無差別曲面の切り口の接線の勾配を表す(4)式に,極大条件式(3)を代入す ると,(5)式と同じ値を得る。なお,無差別曲面ABCほ,原点から速いほど, より高い満足水準を表わしている。 無差別曲面の切り口JK曲線と予算制約平面の切り口HI直線とを,平面ズ1 0∝2に.投影し,第6図のUα曲線とhh直線を得る。そこで,第6図のtん曲線 およびhh直線は・所与の価格pl・p2の下での当該個人め虻19∝2ニ財や貨幣 Mの間の無差別曲面と予算制 約を平面ズ10∝2に移しかえた にすぎないものである。そこ で,両線の接点qほ,第5図 のQ点に対応し効用が極大と なる点を示しており,二財の 需要を陽表的に表示するだけ でなく,その背後で暗に貨幣 の需要をも表示しているとみ なければならない。なお,第 5図の無差別曲面ABC並び 第 る 図 に.=く曲線は・価格p},p2 の値如何に依存して変化する。 したがって,その第5図から導出されるUα曲線の形状も,価格pl,p2の変動 につれて変化する。ゆえに,第6図のUα曲線は,ある特定の価格pl,p2に対 する無差別曲線であるといいうる。 前節と同じように,α,b二人からなる社会を考える。各個人の効用函数を

Ua=Ua(増,X!,Ma,pl,p2),Ub=Ub(紘x皇,呵pl,P2)とし,予算制約

式をplX7+p2X3+Ma=Ia,plXb+p2Xb+Mb=Ibとする◇ただし,Ia 雲pl頚+p2鶉+両竺Ib…pl対+p2胡+扇島である。各個人につきその効用を 極大化し,上の(2)式の関係 一刷=0,

(10)

香川大学経済学部 研究年報 21 ノ ダβ2 −JJβ−

∂ug 高評 ̄りPl=0,

∂uぞ 一 ∂Mg 一入ゼ =0, を得る。そこで,前節の(1)式と同様に, (ゼ=α,ゐ) (6) =入α, =入∂ を導出しうる。(8)式よりラグランジュ乗数入α,入みほ,各個人の貨幣ストック の限界効用を表わす。また,それほ,各個人の貨幣所得の限界効用でもある。

すなわち,例えば個人αについてその貨幣所得の限界効用dUシ匂Ⅰαをみると,

それは効用函数と予算制約式の全微分の比で表わされる。そこで,(6)式の関係

を用いれば,dUシaIα=入αを得る1の。

上記(8)式の関係ほ,縦軸に交1=元号+封をとり横軸に.交2=琴+交身をと

った第7図のボックス・ダイヤグラムで次のように表わされる。すなわち,第 7囲のUα曲線ほ,第6図のUα曲線と同じものであり,個人αに閲しある特定

10)dUa._(∂uシ竃xT)dxF+(∂uソ∂堵)dx夢+(dUa/∂Ma)dMa

pl 他方,(6)式より,

∂uα 1 ∂uα 1 ∂uα

∂増 pl=∂稽 p2=∂Mα

(ii)式の分母,分子に同じものを乗じ

÷・ニ

d堵 憲dMα ・ (川) .  ̄

p−dxT

p2dx夢 dMa したがって,(iii)式より,各等式の分母の和と,分子の和をとり,その比を・求めれ

ば,(i)式の右辺を得る0そして,その値は(ii)式に等しい0ゆえに,票芝=入α

なる。

(11)

国際経済理論における社会的無差別曲線と貨幣 −JJクー の価格pl,p2の前提の下に背後に貨幣ストック需要Mαを含むこ財の需要蝿 ∝夢 を原点0。から描いたものであり,またそのl♪曲線は個人あに閲し同じ価

格の前提の下に.暗にその貨幣ストック需要Mゐを含む二財の需要ぜ,適を原

点0古から転倒した形で措いたものである。両曲線の接点nは,特定された価格 p・1・ちに・おける各個人の効用をそれぞれ棲大とする二財の需要(呼・ズダ)

(頑,房)並びに貨幣スト

ック需要(Mα,Mりを与え.る。 第7 図 そして,そのn点では,ポ +頑=烹∴好+∝ク=盃2, Mα+Mる=南が成立していなけ ればならない。ただし,∝1= uα+占 守+交P。交2≡堵+反身,房 …藤+由るである。そこで,所 得の分配Ⅰα,Ⅰ占を変え,こ のような個人α,bのこ財の 需要の和および貨幣ストック 需要の和をそれぞれ交1,交2, 0α ∬2

元とし・かつ特定の価格pl,

p2を前提として生じる両人の無差別曲線Uα,ぴの接点を求めると,第7図の

0αnOム線を得る。これは,その所与の価格の下で得られる貨幣ストック需要 を含む二財ズ1と∝2に関する一・種の契約曲線であるといえ.る。第1図の場合と

同じように,t♪曲線を固定しそれに.接しながらt♪曲線をずらして導出された

原点0るの軌跡をUα+古曲線とする。この曲線は,価格を特定したときの一・種の

シトフスキー等高線である。そして,そのUα+る曲線は,Uαおよびl♪の両曲線

の和を意味するから,その背後に暗に各個人の貨幣ストック需要Mα,Mゐを含む

と解すべきである。Uα+古曲線の点0ゐにおける接線の勾配は,n点における接

線の勾配(上記の(5)式)に等しい。さて,所得の分配Ⅰα,Ⅰムを変化させ,その

ときの契約曲線上の点,例えがn′点に閲するシトフスキー等高線を措く。すなわ

ち,Uめ−∂′曲線である。このシトフスキー等高線Uα1ゐ′と所得分配変化以前の

シトフスキ・一等高線Uα+ふとは,ともに伺じ価格pl,p2の下で描かれていること

(12)

香川大学経済学部 研究年報 21 J9β2 −J20−

を注意せねばならない。勿論,U♂十〝曲線は,Uα+み曲線と交叉し,その接点0ぁ

の接線の勾配は異なっている。 前節のサミュエルソソの分折と同じように,社会的効用(厚生)函数W=W

(Uα,ぴ)を仮定し,それを極大とすることを考える。この場合,各個人の

貨幣所得の社会的限界効用は均奪化される(=,ただし Ⅰα,Ⅰろの定義は以前と異なる)。そこで,この最適所得分配の点をnとする。 そのとき,このn点に対してただ一・つのシーフスキ・一等高線が導かれる。さて,

社会全体の貨幣ストック両を所与のままとし,二財の総供給(総需要に等しい)

すなわち云1=ズ㌢+扉とあ=頑+諺のみを変化させるものとする。この場合,

社会的効用Wを極大とするシ十フスキー等高線Uα+ムを求めると,各々の烹1,烹2 1

に.対してそれぞれ一つづつの等高線が得られ,そしてそれらをつなぐ包括線カご

得られる。この包括線は,貨幣ストックの保有を認めたときのサミュエルソソ

型の社会的無差別曲線であるといいうる。このサミュエルソソ型の社会的無差

別曲線ほ,第4図のものに類似しているけれども,次の諸点でそれと異ってい

る。すなわち,第一・に,それは特定の価格pl,p2を予め前提として描かれてお

り,したがってその価格が変化すればその形状を変え.る性質を持っている。そ

して,その形状の変化は,価格変化が各個人の効用に与える影響に依存するこ

とになる。第二に,それほ貨幣の総供給Mとともに変化するものである。すな

わち,このサミュエルソソ型の社会的無差別曲線は,第7図の貨幣を含むシト

フスキー等高線にもとずいて措かれており,しかもその等高線の導出には左1

ニポ十扉,ちこ蛸+粛 だけでなくM=Mα+M∂の均等式が成立すること

を必要としている。したがって,貨幣総量扇が変動すれば,各個人の貨幣スト

ックの需要Mα,Mムも変動せねばならず,各個人の無差別曲線Uα,ぴの勾配お

よび予算制約を表わすhh線の勾配を変化させ11),契約曲線0αnOゐの形を変

えることとなるからである。第三に,それは一定効用の下での二財∝l,ズ2の 間の選択だけでなくその背後に貨幣ストックの保有に関する個人の選好をも含 んでいる。したがって,たとえ二財に関する好みに変動がないとしても,貨幣 11)上掲の(5)式および(6)式の右辺第二項のdりd∝2の値は,各個人の保有する貨幣ス t・ツタ如何に.依存して変化すると考え.られる。

(13)

国際経済理論における社会的無差別曲線と貨幣 −J2ブー ストックの保有に関する好みが変われは,その形状を変え七くることとなる。 すなわち,各個人の貨幣ストックに対する好みの変化は,暗に貨幣を含む第7 図の個人の無差別曲線を変動させ,それによって社会的無差別曲線に影響を与 えるのである。 以上の社会的無差別曲線に関する三つの差異は,そのままその社会的無差別 曲線を用いる分析への批判にもなる。そのうち,第一のものは,パティンキソが なしたように・12),各個人の効用函数を単純化しU=U(∝1,ズ2,隼/p)と置 くことによって,ある程度まで回避することができる13)。すなわち,この場合, 相対価格の変化の影響は,効用函数に及ばないからである。しかしながら,第 二および第三の点については,批判をまぬがれるこ七ができない。すなわち, 貨幣供給量の変化や貨幣ストックに対する各個人の保有選好の変化は,財に対 する好みの変化に関係なく,社会的無差別曲線の形状を変える。したがって, 貨幣を含む国際貿易の分析において,社会的無差別曲線の形状を所与とするこ とは,誤った結論に導くことになるといえる。 以前,われわれは,クラウァー・と共にパティソキンのモデルについて,有効需 要の源泉としては貨幣も財も区別し得ず,各個人の貨幣の賦存最(供給量両α9 再る)の変化も財の賦存畳の変化も全く同じように貨幣所得の増加として取扱わ れていると指摘しキ14)。たとえば,/くティソキンのモデルでは,各個人につい て, ∂ズェ 百す ∂M  ̄ 丁 =−∂旦山 , 〟=∝↓のとき∂=p∠,

Dn+2,n+1〝=再のとき∂=1,

(9) = _∂ D

J=1 ・

n

となり,貨幣の賦存畳Mが変化するときと財の賦存畳もが変化するときとで,

その需要に与える効果に,根本的な差異が見出されない(ただし,Dは,当該 個人の効用函数に関する縁付きの二次偏徴係数からなる行列の行列式である)。

12)パティソキンは,ゼロ次同次効用函数の特殊ケースとしてU=U(ズl,∝2,里々)

と置いている。 13)Pは一・般物価である。 14)拙稿 上掲論文

(14)

香川大学経済学部 研究年報 21 ーJ22− J9β2 このことは,上記第7図のボックス・ダイヤグラムにおいて契約曲線上を移動 する場合に・各個人の貨幣所得の変化が各個人の財の賦存畳義ヂ(ゼ=β,b,∠

=1,2)から生じたものであるか各個人の貨幣の賦存畳Mぞから生じたものか

全く区別せずに措いていることを考えれば充分理解しうるところである。 そこで,われわれは,このパティソキンのモデルを修正して,次のようなモ

デルを設定した。先ず,個人の効用函数をU=U(Xl,…”笹1,M,m,pユ,

・,pn)とし,貨幣ストックのみならず貨幣フロ、−・の需要(M,m)を導入

し,かつそれをゼロ次同次と仮定した。次に,、制約条件についてβ−m=元一 Mと置き,当期の貨幣支出gから当期の貨幣収入(売上)mを差引いたものが, 期首の貨幣ストック両と期末の貨幣ストック保有Mの差に等しくなるものとし た。そして,各個人の決意は,貨幣の受取mと貨幣のストック需要Mに閲し行

われる。したがって,効用函数を制約する条件ほ,市場で購入する財(ちいよ

=1,…,h)につき h 亨pよ(彗−ノズヱトm+M一両=0 また市場へ供給する財(巧,∠〒h+1,‥・・・,n)につき n 惑.pよ(勘一箱)=m となる。これら二つの制約条件の下で効用を極大化した結果ほ,

一スIp↓=0,∠=1・・・h

(川) (11)

一入2p2=0,よ=h+1,・…,n

(12) 型 ∂M 型 ∂m 一 入1=0, 一 入2+入1=0 である。いま,第1番目の財を市場で購入する財,第2番目の財を市場へ供給 する財と仮定し,n=2の場合を考える。(12)式から 些 . ∂∝−

∂ズ2 _L旦」 入2p2 (13)

(15)

国際経済理論における社会的無差別曲線と貨幣 −J23−

=入1,告=ス2一入1

(1A) を得る。したがって,入1ほ貨幣ストックの限界効用を,入2は貨幣ストックの限

界効用と貨幣フローの限界効用の和(入2=∂tレ如+∂り/∂M)を,それぞれ表わ

すことになる。この場合の貨幣所得(Ⅰ=pl勘+p2£2+M)の限界効用dり

dIは,p2霊2=−dmの関係が成立するときのみ・貨幣ストックの限界効用入1に 等しい15)。他方,無差別曲線の勾配d霊1/句ズ2ほ,U=COnSt・の下で効用函数 を全微分し, = ・

告+

(15) となる。効用の極大点に.おける勾配をみるために.,(12)式の関係を導入し,極大 点で(11)式の制約からp2d£2=−・dmの成立していることを考慮すれほ,

一=十

(16) が得られる。この(16)式ほ,制約式(10)および(11)から得る勾配と同値である。 かくして,効用極大点で無差別曲線と予算線ほ,財平面∝10ニC2へ投影した第

8図のn点のように.,互に接していなければならないことになる。 d∝2=

二 _∴

n点における勾配は,たとえ価格が不変にとどまったとしても・貨幣ストック

の需要Mと貨幣フP・−の需要mの倍加何によって変イヒするといいうる0

直交する四つの軸ズ1,ズ2,m,Mからなる四次元空間に,価格pl,p2を所与

としU=COnSt。としたときの効用函数と制約式を描く。(11)式および(10)式に それを代入した(10′)式,すなわち 2 字p£(£‘一義g)+M一房=0 −p2(£21一義2)=m 15)前出の脚注10)と同様に,効用函数と制約式をそれぞれ全教分し,比を求め,(12) 式の関係を代入し整理すれは導出される。

(16)

香川大学経済学部 研究年報 21 −J24− J夕β2 の二つの制約式を使用する。そして,以前と同様に四次元空間から二次元の財

空間ズ10ズ2へ投影する。先ず,(10′)式と効用函数から,ほぼ第7図に類似し

たものが得られる。しかしながら,この場合の無差別曲線Uαは,単に陽表的に

表わされた二財∝l,父2の間の選択だけでなく,暗に含まれる貨幣ストックMと

貨幣フロ㍉−mの両名の選択保有をも表わしていると解釈される。 次に.,この

(10)式の上に(11)式の制約が加妄.られなけれはならない。したがって,貨幣の

フロ・一需要m>0, すなわら第2番目の 財の需要ほそ−の賦存 畳より小となること (ズzく左2)が必要 とされる。そこで, これを越える範囲の 無差別曲線および予 算線を除去する。 さて,個人α,ゐ ノ からなる社会を考え る。その社会の個人 は,それぞれその効 第8図 用函数と二つの制約

式,(1の式と(11)式を持っているものとする。そのとき,共通の価格pl,p2

の下で各個人の効用を極大とし,かつ云1=好+粛,ズ2=媚+適∴両=Mα

+Mゐとなる点を求める。そして,これらの点を結び,第8図の契約曲線QnOる

を導出する。この契約曲線のうち,破線で示された部分は,各個人に課せられ た(11)式の制約によって除去され無効とされる部分である。ただし,この場合,

各個人の(11)式は,−p2(ポー弼)=mαおよび

−pl(勇一封)=mゐとな る○したがって,効用棲大点のうち有効な部分は,原点0ると原点0αで囲まれ たボックス・ダイヤグラムの中で,四角形r・StVの内側にあるもののみである。

すなわち,この内部では,個人αほ,∝1財を市場で購入し,∝2財を市場へ供給

する。また,個人もは,賞1財を市場へ供給し,ズ2財を市場で需要することにな

(17)

国際経済理論における社会的無差別曲線と貨幣 −J25− るからである。そして,もしこの四角形の外へ出た場合ほ,mα,mムは共にゼ ロとなり,全くパティソキンのモデルと同じことに帰す。なお,当然のことで

ぁるが,各個人について入1≠入2であり,また入レ入冒≠入レ舟である限り

′一ハ、

(12)

である。 個人α,ぁの無差別曲線Uα,U占の和として一・種のシトアスキー等高線Uα+ゐ が得られる。このUα+ゐ曲線は,その成立過程からして,ある特定の価格p‥p2 を所与とし,背後に暗に貨幣ストックの需要Mと貨幣フP・−の需要m、を含む∝1 と∝2の二財に関する無差別曲線であるといえる。そこで,パティソキンの場合 と同じように,社会的効用(厚生)函数W=W(Ua,Ub)を設け,それを極大 とするUα,Uゐを求める。その結果は,上のシトフスキ・一等高線Uα+ふを包括する 曲線の導出となる。これが,このケースでの社会的無差別曲線である。 既にのべたように上記の貨幣を含むモデルでは,パティソキンの場合と異な り,賦存畳の変化が与える影響ほ,市場から購入する財(∝k,k=1,…,h) に関して,貨幣の賦存量が変化した場合に等しいけれども,市場へ供給する財 (∝k,k=h+1,い,n)に関して異なってくる。すなわち, ∂∝£ Dn+3, k=1,…,β (13) k=ゼ+1,…,n (14) (15) ニ= ̄pk ̄「∋ 蝕k Dn+4,i =  ̄pk

也_ Dn+3,i

∂M D である(ただし・ここでDは,効用函数U=U(Xl・ち,m,M,pl,P2)に関する 縁付きの二次偏徴係数からなる行列の行列式である)。この差異ほ,第8図の 個人αについてみると次のように考えることができる。市場へ供給する財の賦

存畳ぢ(個人bのときは左P)の変化は,(11)式の関係d彩=dnp/p2+d瑠

を通じmαを変化させ,それが無差別曲線Uαの形状を変えることによってUα+ろ に影響を与え,ひいては社.会的無差別曲線を変化させることに.なる。すなわち,

(18)

香川大学経済学部 研究年報 21 ブ タβ2 −J26− 第8図の無差別曲線Uαの背後に.は貨幣のストアク需安Mαだけでなくフロ・一需 要mαが結合して存在している。したがって,そのうちnやが変化すればUα= const.とする二財堵とぜおよび貨幣Maの組み合せに影響を与えることにな るからである。さらに,この盃晋の変化は,第8図において有効な範囲を区切る 直線ht(個人bでは直線vt)をシフトさせ,契約曲線0。nObのうちの実線部 分を変え,社会的無差別曲線に・影響を与えることになる。このような弼の変 化に対し,個人αが市場で購入する財の賦存量弼(個人占では左曽)の変化は, 貨幣の賦存畳扁αが変化する場合と較べて特に異なる彩響を与えるものではない。 このことほ,既に上記のパティソキンのモデルにおいて考察したことから明か である。以上のことよりして,第8図の契約曲線上でn点から他の点へ移動す る場合に,その原因となる各個人の所得分配の変化が,肇や讃の変化によっ て生じるか,あるいは両や窄,云告の変化によって生じるか,によって全く違っ た結果をもたらすことが理解されることとなろう。 かくして,貨幣を含むわれわれのモデルにおける社会的無差別曲線は,既述 の/くティソキンのモデルの考察において指摘した三つの点以外に,次のような 問題点を持っている。すなわち,第四として,その社会的無差別曲線は,一定 効用の下での二励ズ1,ズ2の間の選択だけでなく,その背後に貨幣ストックの需 要Mと貨幣フローの需要mに関する各個人の選択を含んでいる。したがっ七, たとえ二財並びに貨幣ストックに関する好みに変化がなくても,貨幣フロー・m に.関する好みが変れば,社会的無差別曲線の形状は変化してくる。第五として, 社会的無差別曲線ほ,市場へ供給する財の初期賦存量の変化によって,貨幣の 初期賦存畳や市場で騎入する財の初期拭存最の変化する場合と異なる彩響を受 ける。すなわち,それは,各個人の無差別曲線の形状の変化,したがって契約 曲線の形状の変化を通じて影響されるだけでなく,契約曲線の有効な部分を変 えることに.よって影響されるのである。 ⅠⅠⅠ 以上,われわれは,貨幣を含む交換経済の分析を国際経済の分析に拡張する に際し必要となる社会的無差別曲線について考察してきた。その結果,サミュ エルソソや通常の国際経済学で導出する社会的無差別曲線は,一・旦貨幣を含め

(19)

国際経済理論における社会的無差別曲線と貨幣 −J27− ると非常に不安定な分析用具となることを見出した。すなわち,社.会的無差別 曲線ほ,各個人の財に・対する選好や貨幣のストックおよびフロ1一に対する選好 が変化する場合には,当然影響されてくる。しかし,それ以外に各個人の市場 へ供給する財の初期賦存畳が変化する場合や貨幣ストックの供給量融,再ゎが変 化する場合にも,影響されてくる。特に,このうち,各個人の貨幣ストックの 変化に影響されるという結論ほ,注目に値する。すなわち,実際の経済では, 貨幣ストックの供給ほ,常に変化していると考えるべきであるからである。い ずれにせよ,貨幣を含む場合に,通常のように社会的無差別曲線を与えて分析 することは,注意を要することに.なる。

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