発達障がいの論文を読む:ASD を中心に
August20-2
ASD の early signs に興味があるので、読む論文に偏りが出てくることは、ご容赦くださ い。また、古い論文も含まれます。
Gong, L. et al. Abnormal gait patterns in autism spectrum disorder and their correlations with social impairments. Autism Res., 13:1215-1226, 2020.
この論文は 4-6 y の ASD(低/高機能)と TD で、歩行時の足底の圧力測定により、その 特徴を明らかにした。また、歩行の特徴と社会的機能の障がいの関係を明らかにした。この テーマは『期待 80』の Teitelbaum ら、『今月の認知神経科学 4 月』の Lidstone でもとり上 げた。参加者は 6 m の足底圧力マットの上を、好きな速度で 10 回歩行した。 上図は A が低機能 LFA、B が高 機能 HFA ASD, C が TD の足底圧 力の例で、黒い線は足圧中心 CoP の移動の軌跡である。 下図は結果で、図 A は最初の接 地の CoP の Y 軸方向の位置であ る。TD は ASD より足の後ろの方 で設置していた。TD と HFA には有意差があった。図 B, C はそれぞれ左足、右足の CoP の移動距離 CoPy である。左右いずれの足でも、TD は両 ASD よりも CoPy が長い。図 D は足前部 Forefoot の接地時間で、両 ASD は TD よりも接地時間が長い。
最初のピークは群間に差がないが、第 2 のピークの時間が、両 ASD は TD よりも有意に早 かった。図 B, C は、第 2 のピーク時の圧力を、足後部 Hindfoot と Forefoot に分けて分析 した結果である。両 ASD は TD よりも、第 2 のピーク時に、Hindfoot の圧力が強く、Fore-foot の圧力が弱かった。これらは ASD が flat-の圧力が強く、Fore-footed pattern の歩行をすることを示した。 図、表はないが、Y 軸方向の CoP の左右の足の相関を求めると、両 ASD は TD よりも、 相関が低かった(LFA は有意、HFA は傾向)。また、Forefoot の圧力に関しても、両 ASD は左右の相関が、TD よりも有意に低かった。ASD は TD よりも、左右非対称の歩行をし ている。
下の表 3 は Step-to-Step の相関の変動性で、CoPy, Cop の Y 軸上の最初の位置、接地の 長さ、Hindfoot のピーク時間、2 番目のピークの時間、Forefoot の 2 番目のピークの圧力、 Forehoot の最初の接地時間の変動が ASD よりも TD の方が小さい。
上の表 4 は、接地のタイミングと Forefoot の圧力の変動と、Autism Spectrum Quotient, AQ と Social Responsiveness Scale, SRS との相関である。全参加者を対象にした場合、大部 分の項目で有意な相関がみられた。歩行の変動が大きいと、ASD の症状が重篤だった。
Esposito, G. et al. Analysis of unsupported gait in toddlers with autism. Brain Dev., 33:367-373, 2011.
この論文は ASD(14 mo), 発達遅滞 DD(13 mo), TD(13 mo)の初期の歩行のビデ オ記録を、Walking Observation Scale, WOS と Positional Pattern for Symmetry during Walk-
ing, PPSW で分析し、各 群の参加者の歩行の特 徴 を 明 ら か に し た 。 WOS は左の表にあるよ うに 11 項目よりなる。 文字が読めるように、表 の向きを変えました。 PPSW は 2 項目よりな る。その説明は論文を参 照ください。評点は 1-100 で、値が大きくなる ほど atypical な歩行を 意味する。値の横に下付 き文字 a, b, c があるが、 群間の有意差を示す。 左の表が結果だが、 WOS の多くの項目で、 ASD は TD, DD と有意 な歩行の違いを示した。 また、PPSW では、ASD は、TD, DD よりも、 asymmetry な歩行を行 うことが分かる。 前の Wong らの論文 は圧力を測定し、この論 文は歩行のビデオ記録 を解析した。結果は同じ 方向を示しているが、両 方のアプローチが必要 だろう。
Travers, B.G. et al. Motor difficulties in autism spectrum disorder: Linking symptom severity and postural stability. J. Autism Dev. Disord., 43:1568-1583, 2013.
この論文は、通常の IQ の ASD と TD の若者、若い成人で、ニンテンドーの Wii balance board を利用して、両足/単足、開眼/閉眼条件で立たせ、姿勢を検討し、それと ASD の症 状の関係を検討した。上図は Wii によるデータの収集と測定値である(論文参照)。 ま ず 、 Balance Time, すなわち、 立っていられる時 間。両足では、群、 開眼/閉眼で差は ない。下図は左が 左足、右が右足、 上が開眼、下が閉 眼時の、生存プロ ットである。この 場合は、群、眼、足 で有意な差がみら れた。開眼では多 くの参加者が「生 き残る」が、閉眼では、ASD の生存率が悪く、それは左足で立った時がその傾向が強い。 Balance Time Drift Waver Asymmetry
次に Drift だが、両足では群、眼の条件で差は ない。左の上図は、片足で、開眼の条件での、 Drift の結果である。左が左足、右が右足の結果 である。右足で立った時に ASD は TD よりも Drift が大きかった。姿勢の維持に foot shifting が必要なのだろう。足間、交互作用には有意な 差はない。 Waver についてだが、両足ではどの条件間、 交互作用に差はない。片足で、左右の足に有意 な差がみられた。 両足の場合の Asymmetry だが、開眼/閉眼い ずれの場合も ASD の方が非対称性が大だが、 有意な差はなかった。
最後に、姿勢と ASD の症状の関係だが、症状は Social Responsiveness Scale, SRS と Re-petitive Behavior Scale-Revised, RBS-R で測定した。閉眼で両足で立った時の非対称性と RBS-R の間には正の相関があった。下図は姿勢の安定性と症状の関係で、左が SRS, 右が RBS-R と開眼時の両足で立っている時の Waver との関係で、いずれも有意な背の相関がみ られた。 この論文も、最初の Gong らの論文も、圧力を測定している。これをもっと幼い幼児の這 い這いを含む、姿勢や運動に利用できないだろうか。このような方法は、今年 4 月の Lidstone らの論文の紹介で、提案した。わたしが在職していた霊長類研究所では、サルの二足歩行の 研究で、圧力の測定を行っていた。
Dziuk, M.A. et al. Dyspraxia in autism: association with motor, social, and communicative deficits. Dev. Med. Child Neurol., 49:734-739, 2007.
この論文は、10 歳半ばの Asperger syndrome を含む ASD と TD で、他動詞的行為、自動 詞的行為を命令 command(GTC)と模倣(GTI)で行わせ、また、道具を与えてその使用 をジェスチュアでおこなわせた(GTU)。なお、参加者の知能を WISC-III の Full-scale IQ スコアを WISC-Ⅳに変換した。また、参加者の基礎的な運動スキルは、Physical and Neurological Assessment Subtle Signs (PANESS) で測定した。Dyspraxia は統合運動障害で あるが、apraxia が成人に使われるのに対し、発達障がいの児童に使われるようである。 表 1 は行為と基本的運動スキ ルの結果で、ASD は行為のエラ ーが多く、基本的な運動スキル が TD よりも劣る。次に、行為 の障がいと基本的な運動スキル の関係を階層的回帰分析で検討 した。年齢、FSIQ. PANESS の
repetitive total score, 最後に ASD/TD の群を導入した。その結果、行為の障がいをすべて 基礎的な運動スキルで説明することはできなかった。
左の上図は行為の障がいの程度(x 軸)と ADOS-G による ASD の症状の程度(y 軸)の関 係で、有意な正の相関がみられた。 なお、この論文のもとになった論文がある。 ASD の行為障がいは、模倣に限ったものではな いことを明らかにした、Mostofsky らの 2006 年 の論文である。下図はその論文からの引用である。左 から、GTC, GTI, GTU で、すべてで、TD の方が有 意に成績がよい。
Mostofsky et al. J. Int. Neuropsychol. Soc., 12:314-326, 2006.