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豪ドル:中国経済の懸念が重し
対ドルで2016年安値が意識される展開も
要旨 ・豪州経済は緩やかな拡大が続くもインフレは低く、乏しい利上げ観測 ・上値重い豪ドル相場とその背景 ①金利はITバブル期以来の「米国>豪州」で投資魅力に欠ける ②中国経済の先行き懸念、中国株市場が下落 豪州経済は緩やかな成長続く 豪州経済は緩やかな拡大が続いている。4~6月期の実質GDP(国内総生 産)成長率は前期比+0.9%、前年同期比+3.4%となった。資源関連を 除いた設備投資、公共投資、資源輸出が牽引している。但し、GDPの半 分以上を占める消費については、回復基調ながらもRBA(豪準備銀行)は 「不透明感が残る」と懸念している。所得の伸びが緩やかなうえ、住宅価 格の上昇で家計債務が積み上がっていることが不安視されている。 (図 1)豪州、実質 GDP 成長率 豪州、実質GDP成長率 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 (図 2)豪州、失業率と賃金上昇率 豪州、失業率、賃金上昇率 (出所)Bloomberg・RBAのデータをもとにMUMSS作成 0.9% 3.4% 4~6月期 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 前期比(左目盛) 前年同期比(右目盛) (%) (%) 2.1% 4~6月期 2.9% 18/8 5.3% 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 豪州:賃金コスト指数(前年同期比・左目盛) 参考:米国:平均時給(前年同月比・左目盛) 豪州・失業率(右目盛) (%) (%) 國方 智子: シニア投資ストラテジスト低インフレ・乏しい利上げ観測 労働市場に目を向けると、8月の失業率は約6年ぶりの低水準となる5.3% に低下した。雇用者数も伸びており、一部では技術者不足の声も聞かれ る。RBAは今後数年、失業率は自然失業率とされる5.0%を目指して低下 が続くとの見方を示している。ただ、賃金の上昇率は、4~6月期が前年同 期比+2.1%と、鈍い状態にある。RBAは、経済の改善で中期的には上昇 が見込まれるとの見解を示しているが、それでも緩やかなペースに留まろ うとも付け加えている。米国の8月の時間当たり賃金が前年同月比+ 2.9%だったことと比べると、出遅れ感は否めない。 低い賃金上昇は物価を抑制している。RBAは、来年・再来年に向けて物 価は現状よりは上昇するとの見方だが、8月に公表した「金融政策報告」 では、一時的な要因としながらも2018年末のインフレ率予想を下方修正し た(従来は前年同期比+2.25%→今回は同+1.75%)。表1にあるように、 消費者物価指数(CPI)のインフレ予想は2020年末でもインフレ・ターゲッ ト(2~3%)の下限を若干上回る程度に過ぎない。RBAは、9月の会合で も、低金利が経済を支えようと述べ、過去最低水準の政策金利を容認す る姿勢にある。表2にあるように、市場参加者の金利先高観も乏しい。 現在の米国のFF金利は1.75~2.00%、豪州の政策金利は1.5%と、 (図 3)政策金利とインフレ率 豪州、政策金利とインフレ率 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 (表 1)RBA の経済見通し RBAの経済見通し (2018年8月時点) (単位)%、(出所)RBA「金融政策報告・18/8」をもとにMUMSS作成 1.5% 2.1% 4~6月期 0 1 2 3 4 5 6 7 8 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 政策金利 消費者物価指数(前年同期比) (%) RBAのインフレ・ターゲットは2~3% 18/6予 18/12予 19/6予 19/12予 20/6予 20/12予 GDP成長率
3.0
3¼
3¼
3¼
3.0
3.0
失業率5.5
5½
5¼
5¼
5¼
5.0
インフレ率(CPI)2.1
1¾
2.0
2¼
2¼
2¼
米国が豪州を上回っている。この様な状態は、豪州経済がアジア危機の 影響を受けた一方で、米国でITバブルが盛り上がった2000年前後以来と なる。これは豪ドルの重しと考えられよう。 (表 2)政策金利の確立 金利先物に見る豪州の政策金利の確率(9/19) 注:シャドウ部分が現状 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 (図 4)豪州、米国の政策金利 豪州と米国の政策金利 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 (図 5)金利差、豪ドル相場 豪州と米国の金利差、ドル/豪ドル相場 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 1.5% 1.75% 2% 2.25% 2.5% 10/02 99.5% 0.5% 0.0% 0.0% 0.0% 11/06 98.6% 1.4% 0.0% 0.0% 0.0% 12/04 95.8% 4.1% 0.0% 0.0% 0.0% 2019/2/5 93.1% 6.8% 0.2% 0.0% 0.0% 03/05 85.2% 14.1% 0.7% 0.0% 0.0% 04/02 77.0% 20.9% 2.0% 0.1% 0.0% 05/07 77.0% 20.9% 2.0% 0.1% 0.0% 06/04 70.0% 26.0% 3.7% 0.3% 0.0% 政策決定 会合日程 政策金利 0 1 2 3 4 5 6 7 8 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 18 豪州政策金利 米FF金利 (%) -2.0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 18 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70 0.80 0.90 1.00 1.10 1.20 ドル/豪ドル(右目盛) 10年債金利差(豪-米・左目盛) 政策金利差(豪-米・左目盛) (ドル/ 豪ドル) (%) 豪ドル高 豪ドル安
豪ドル、中国経済懸念で下落 従来豪ドルは、最大の輸出品目である鉄鉱石価格との連動傾向が見られ た。しかし足元はこのトレンドが崩れている。むしろ中国の上海総合指数と の連動傾向が見られる。中国経済の景気の先行き懸念が強く意識されて いると捉えられる。尚、中国経済の不透明感が商品市況に影響を与えて いないわけではない。商品市況のインデックスのひとつであるCRB工業原 材料価格指数(銅やスクラップ鉄など)は中国株と連動して下げている。 (図 6・7・8)豪ドル、中国株、商品市況 豪ドル、鉄鉱石、上海総合指数、CRB工業原材料価格指数 2500 2700 2900 3100 3300 3500 3700 3900 4100 4300 4500 0.67 0.69 0.71 0.73 0.75 0.77 0.79 0.81 0.83 0.85 15/01 16/01 17/01 18/01 19/01 ドル/豪ドル(左目盛) 上海総合指数(右目盛) ↑豪ドル高 ↓豪ドル安 (ドル/ 豪ドル) (ポイント) 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0.67 0.69 0.71 0.73 0.75 0.77 0.79 0.81 0.83 0.85 15/01 16/01 17/01 18/01 19/01 ドル/豪ドル(左目盛) 鉄鉱石(右目盛) ↑豪ドル高 ↓豪ドル安 (ドル/ 豪ドル) (ドル /トン) 2500 2700 2900 3100 3300 3500 3700 3900 4100 4300 4500 380 400 420 440 460 480 500 520 540 560 580 15/01 16/01 17/01 18/01 19/01 CRB産業資材指数(左目盛) 上海総合指数(右目盛) (ポイント) (ポイント)
鉄鉱石価格は、中国の大気汚染対策がサポートとなってきた。しかし、中 国政府が電炉を重視していること、またより純度の高いブラジル産鉄鉱石 へのシフトも生じており、豪州産鉄鉱石価格の上値は重くなりつつある。 中国経済の減速は鮮明に 中国経済は減速が鮮明となっている。貿易戦争の影響を受ける輸出、低 迷が長期化する消費など、中国経済の下支え役はインフラを中心とする 投資のみといった状態にある。それでも固定資産投資は鈍化している。 習近平政権は、インフラ投資に注力せざるをえないが、経済全般を引っ ぱるほどの力はない。 豪ドルの目途 従来から2018年下期の豪ドル相場については、ドルに対して0.68~0.80 ドルとし、2016年の安値(0.6827ドル・2016/1/15)が意識される展開を予 想してきた。足元の豪ドルは0.72ドル近辺で、2016年安値を (図 9)中国の経済指標 中国、実質GDP成長率、固定資産投資(前年同期・月比) (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 (図 10)豪ドル相場(対円・対ドル) 豪ドル相場(対円・対ドル) (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 5.3% 18/8 6.7% 4~6月期 0 2 4 6 8 10 12 14 16 0 10 20 30 40 50 60 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 固定資産投資(左目盛) 実質GDP成長率(右目盛) (%) (%) 0.50 0.60 0.70 0.80 0.90 1.00 1.10 1.20 50 60 70 80 90 100 110 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 円/豪ドル(左目盛) ドル/豪ドル(右目盛) 豪ドル高 豪ドル安 (円/ 豪$) ($/ 豪$) 円/豪ドル相場=円/ドル相場×ドル/豪ドル相場
上回っているが、上海総合指数は既に2016年の安値に接近しつつあり、 豪ドルの調整リスクは増している。これらの点を踏まえ、当面の円/豪ドル 相場について、71~87円での推移を予想する。米国の利上げにもかかわ らず、円/ドル相場の膠着感が強いことも、円/豪ドル相場での豪ドルの重 しとして働こう。 短期的には米中間選挙後に、トランプ政権が保護主義姿勢を緩和し、中 国経済の先行き懸念が後退した場合は、豪ドルの反発につながると見 る。しかし、2020年に大統領選挙を控えるトランプ政権が態度を緩めるか どうかは余談を許さない。そして中期的な豪ドル相場の持ち直しには、豪 州経済の持ち直しで金利先高観が浮上することや、米利上げに一巡感 が生じることも必要と考える。 (図 11)円/豪ドル相場見通し 豪ドル相場見通し(対円) (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 50 60 70 80 90 100 110 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 (円/ 豪㌦) 豪ドル高 豪ドル安 107.87 (07/10/31) 55.13(08/10/24) 71.90 (10/5/21) 72.06 (11/10/4) 105.43 (13/4/11) 72.533 (16/6/24) 90.307 (17/9/21)
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