第
13
章
解析接続
13.1
解析接続
正則関数の定義域の拡張 ある領域Dで正則な関数 f (z) があるとする。Dと共通部分をも つ領域 D1 を考えると,共通部分 D∩ D1 と和集合 D∪ D1 はともに領域である。このとき, D∩ D1 で f (z) と同じ値をとり,しかも D1 で正則であるような関数 f1(z) が存在する場合, 関数f1(z)をf (z) のD1 への 解析接続 であるという。 例 (i) 無限級数 f (z) = ∞ ! n=0 (−1)nzn= 1− z + z2− z3+· · · は| z | < 1で正則な関数である。右辺の級数は | z | < 1で絶対収束し,| z | > 1で は発散する。 (ii) 次の積分で定義される関数を考える。 f1(z) = ∞ 0 e −t(1+z)dt 右辺の積分は Re z >−1 のとき収束するので,Re z >−1 で定義される正則関数 である。このとき, f1(z) = −e−t(1+z) 1 + z ∞ t=0 = 1 1 + z ( Re z >−1 ) である。| z | < 1 で f (z) に一致することは,Taylor 展開によって確かめられる。 よって,f1(z) はf (z)の解析接続である。 (iii) 分数関数 f2(z) = 1 1 + z は点 z = −1 を除いて正則である。これは Re z >−1 で f1(z) に一致し,さらに Taylor展開は | z | < 1 でf (z) に一致する。すなわち,f2(z)は f1(z)の解析接続 であり,f (z)の解析接続でもある。 円鎖法 解析接続の一般的な方法として,関数をべき級数で表し,その収束円を鎖状につなげ る方法がとられる。これを 円鎖法 という。 135領域 Dで正則な関数f (z)があるとする。Dの境界に近い点z0 を選び,f (z)をz0 を中心 にして Taylor 級数展開する。この級数は z0 を中心とするD に含まれる最大の円C0 の内部 で収束し,f (z)を表す。しかし,同じ z0 を中心とするもっと大きな円 C1 の内部でも同じ級 数が収束することがある。このとき,この級数はC1 の内部で正則関数f1(z)を表し,C0 の内 部で f (z)と一致する。すなわち,f1(z) はf (z)の解析接続になっており,DとC1 を合併さ せた領域D1 に延長されたことになる。この操作を繰り返すことができれば,より広い領域へ の延長が次々と可能になる。
D
z
0C
0C
1 図13.1: 円鎖法 このようにして得られる拡張された関数 f (z) が一意的であることは次の定理が保証して いる。 定理 13.1 一致の定理 2つの関数 f1(z) と f2(z) が共通の領域 D でいずれも正則であるとする。さらに,D のある部分 D(D⊂D)で f1(z) と f2(z) が一致するものとする。D は D の部分領 域でも,曲線の一部でも,また集積点を有する無限点列でも良い。このとき,f1(z) と f2(z) は D のすべての点で一致する。 証明 D の任意の点z0 を中心としてD に含まれる最大の円C を描く。(D が集積する点集 合の場合は,z0 を集積点にとる)f1 とf2(z)はいずれも z0 を中心とするTaylor級数で 表すことができ,円C 内で収束する。この2つの級数はD 内のすべての点で同じ値を とるから,べき級数の一致の定理により,2つの級数は円C 内で一致する。よって,関 数f1(z) とf2(z)は円 C 内で一致する。 次に,C の内部で境界に近い点z1 を選び,上の手順を繰り返す。このように,次々と収 束円を鎖状につくる操作で,領域Dのすべてがおおわれる。よって,領域 D の内部で f1(z) = f2(z)が成り立つ。13.1 解析接続 137 注意:1 この定理は,解析接続が局所的に一意であることを意味している。この定理によ り,領域 D で正則な関数 f (z) の D1 への解析接続 f1(z) は一意的に定まる。しかし, f1(z) の領域 D2 への解析接続f2(z) が存在して,D2∩ D が空集合でないとき,この共 通部分において f2(z) = f (z)は必ずしも成り立たない。 注意:2 円鎖法では,関数は最初の定義域をはみ出して,より大きい領域へ拡張される。し かし,これが常に可能というわけではなく,解析接続できない境界もある。このような 境界を 自然境界 という。 例:関数 f (z) = z + z2+ z4+· · · + z2n+· · · は,| z | < 1で収束する。しかし,収束円| z | = 1の上には,発散する点が無限に多く稠 密に分布している。従って,この関数は単位円は自然境界とする関数である。 定理 13.2 鏡像の原理 2つの領域 D1 と D2 が互いに接して存在し,その共通の境界の曲線を C とする。関 数 f1(z) は D1 で正則,関数 f2(z) は D2 で正則とし,両関数は C まで連続で C 上で f1(z) = f2(z) が成り立つとする。このとき,f1(z) と f2(z) は,結合した領域 D = D1∪ D2∪ C で正則である。 証明 D1 と D2 を合成した領域D で関数f (z) を次のように定義する: f (z) = f1(z) z∈ D1 f2(z) z∈ D2 次に,D における閉曲線 C をとり,f (z) をC に沿って積分すると Cf (z) dz = C1f1(z) dz + C2f2(z) dz = 0 となる。ここで,C1 は曲線 C のD1 内の部分に一致し,さらに境界 C に沿う曲線 L を加えた閉曲線であり,同様に,C2 は曲線C のD2 内の部分に一致し,さらに境界C に沿う曲線L を加えた閉曲線である。L に沿う積分は C1 と C2 では逆向きであるので 打ち消し合い,最初の等号が成り立つ。2番目の等号は,f1(z) とf2(z)の正則性の結果 である。Morera の定理により,上の結果は,f (z)がDで正則であることを示している。 上の定理で D1 とD2 の境界が実軸であるとき,次のように表現することができる。
定理 13.3 Schwarz の鏡像の原理 領域 D が,実軸上の線分を含み,実軸に対して対称な形をしていて,関数 f (z) が D で正則であるとする。 この線分上の点x でf (x) が実数であるならば,D の任意の点 z に対して f (z) = f (z) (13.1) が成り立つ。 逆に,(13.1)が成り立つならば,実軸上の値 f (x)は実数である。 証明:後半 f (z) = u(x, y) + iv(x, y)とおくと,
f (z) = u(x,−y) − iv(x, −y)
であり,一方,(13.1)の複素共役から
f (z) = f (z)
が成り立つ。実数z = x + i0 に対して,両式から
u(x, 0)− iv(x, 0) = u(x, 0) + iv(x, 0)
よって,v(x, 0) = 0,すなわち,f (x)は実数である。 証明:前半
まず,f (z)が Dで正則であることをf (z)の正則性から示す。
F (z) = f (z) = U (x, y) + iV (x, y)
とおくと,f (z) = u(x,−y) − iv(x, −y) から
U (x, y) = u(x, t) V (x, y) =−v(x, t) ( t =−y )
である。
f (x + it) = u(x, t) + iv(x, t)は x + it の正則関数であるから,その実部u(x, t) と虚部
v(x, t) は D で連続な1階偏導関数をもち,Cauchy-Riemann の方程式をみたす。ここ で,u(x, t) = U (x, y), v(x, t) =−V (x, y) の関係式を用いると, ∂U ∂x = ∂u ∂x = ∂v ∂t = ∂V ∂y ∂U ∂y =− ∂u ∂t = ∂v ∂x =− ∂V ∂x となる。これはU (x, y)とV (x, y)に対する Cauchy-Riemannの方程式である。U , V の 偏導関数はu, vの偏導関数で表されるので,Dで連続である。よって,関数F (z) = f (z) はDで正則である。
13.1 解析接続 139
次に,仮定より f (x) = u(x, 0) + iv(x, 0) は実数だから,v(x, 0) = 0であり,すなわち,
f (x) = u(x, 0) である。よって,
F (x) = U (x, 0) + iV (x, 0) = u(x, 0)− iv(x, 0) = u(x, 0) = f(x)
すなわち,D 内の実軸の線分上の点z に対して,F (z) = f (z) = f (z)が成り立つ。 以上により,領域 Dにおいて,F (z) = f (z)は正則であり,また,その内部の実軸の線 分上でF (z) = f (z) = f (z) で成り立つことがわかった。よって,一致の定理により,D の任意の点においてF (z) = f (z) が成り立つ。すなわち,f (z) = f (z) が成立する。 円に関する鏡像の原理 鏡像の原理は,円に関して対称な点 という概念を導入すると,一般化 される。 半径R の円 C があり,2点P1 と P2 が円C に関して対称であるとは,P1, P2 が円の 中心を端とする同じ半直線上にあり,中心 O から各点までの距離 r1, r2 の積が r1r2 = R2 を満たすときである。このとき,この2点を通る円Cを描き,C とC の交点(の一つ) をQとする。上の関係式,及び幾何学の「方べきの定理」により,半径 OQ は円C の 接線となる。従って,円 C と 円C は直交する。すなわち,円 C に関して対称な2点 を通る円の族は,円C に直交する一群の円からなる。 関数 f (z)が円 Cの弧 ABの片側で正則で,弧ABの上まで連続であるとする。さらに, 弧AB は写像ω = f (z) によって ω 平面の円 C1 の弧A1B1 に写像されるとする。 z の1次分数変換によってC を実軸上に写し,ω も別の1次分数変換によって円C1 が 同じ実軸上に写されるとする。 z1 = az + b cz + d ω1 = aω + b cω + d このとき,新しい関数f1(z1) がω1 = f1(z1) によって得られ,実軸上のある区間Lの片 側で正則で,この区間の上まで連続で,その上で実数値をとる。この関数は区間L を越 えて解析接続され,実軸に関して対称な点では複素共役値をとる。変数 z及び ω = f (z) に対して行った2つの1次分数変換は,対称な点を対称な点に写すので,関数f (z)が円 弧ABを越えて解析接続され,円C に関して対称な点では,円C1 に関して対称点(値) をとる。
13.2
Riemann
面
多価関数に対して,その定義域を制限することによって,1価関数が定義できる。いま,こ のように制限された定義域である複素平面を何枚か特別な方法でつなぎ合わせ,多価関数を新 たにそこで定義された1価関数であるように解釈することができる。このとき,このように拡 張された定義域のことをRiemann面 という。Riemann面で新たに定義された関数は1価関 数であるので,1価関数の理論が適用できる。一般的に,関数 f (z)のRiemann面は,z 平面 における f (z) の分岐点を結ぶように切れ込みを入れ,その切れ込みに沿って1つの複素平面 を別の複素平面につなぎ合わせて作られる。 1◦ logz のRiemann面 対数関数ω = log z = log| z | + i arg z
は無限多価関数である。無限にあるlog zの値は,z の偏角の多価性に由来し,虚部の値 に2πの整数倍の違いがある。 複素平面を無限枚用意して,それぞれに,次のように番号をつける。 · · · R−2 上の z に対しては −4π ≤ arg z < −2π R−1 上の z に対しては −2π ≤ arg z < 0 R0 上の z に対しては 0≤ arg z < 2π R1 上の z に対しては 2π≤ arg z < 4π R2 上の z に対しては 4π≤ arg z < 6π · · · Rk 上におけるlog z の値は
log z = log| z | + i arg z ( 2kπ≤ arg z < 2(k + 1)π )
であるから,複素平面 · · · , R−2, R−1, R0, R1, R2,· · ·は,ω 平面の帯状領域 · · · , −4π ≤v <−2π, −2π ≤v <0, 0≤v <2π, 2π ≤v <4π, 4π ≤v <6π, · · · の上にそれぞれ1対1に写される。そこで,各平面 Rk(k = 0,±1, ±2, · · ·)の実軸の 正の部分(分枝せっ線)を切り離し, Rk の分枝せっ線の上岸を Rk+1 の分枝せっ線の下岸とつなぎ合わせる。 このようにしてつなぎ合わせた無限枚の複素平面Rk (k = 0,±1, ±2, · · ·)は連結した 1つの複素平面R となる。
13.2 Riemann面 141 対数関数log z が,複素平面R で定義されるとみなすと,関数ω = log z はzとω を1 対1に対応させる。この複素平面 R をlog z のRiemann面という。 2◦ z1/2 のRiemann面 関数 ω = z1/2 ( z = r eiθ) は2価関数であり,その値は z1/2 =√r eiθ/2 arg ω = θ 2 である。0≤ θ < 2π の場合,0≤ arg ω < πであり,z 平面全体がω 平面の上半分と1 対1に対応する。2π≤ θ < 4π の場合,π≤ arg ω < 2π であり,z 平面全体がω 平面の 下半分と1対1に対応する。すなわち,2枚のz平面とω 平面全体が1対1に対応する。 そこで,2枚の複素平面 R0 と R1 を用意して,それぞれに実軸の正の部分に切り込み をいれる。そして, R0 の切り込みの上岸とR1 の切り込みの下岸をつなげ, R0 の切り込みの下岸とR1 の切り込みの上岸をつなげる. このようにすると,連結した1つの面R ができる。 R0 上の点zが円 | z | = r上を正の向きに動くとき,実軸の正の部分に到達したらR1 に 入り込み,さらに原点を1周して R1 の実軸の正の部分にきたら,次は R0 にはいり z にもどる。このように,zが原点を2周したとき,z の像はω = 0のまわりを1周する。 関数 ω = z1/2 はRで定義された1価正則関数になる。これは,R0 上で定義された関数 をR に解析接続したのとおなじことである。 関数 ω = (z− z0)1/2 のRiemann面は,z0 から出る半直線に沿って切り込みを入れた複 素平面を2枚用意し,ω = z1/2 の場合と同様につなげればよい。z0 は分岐点である。 3◦ (z2− 1)1/2 のRiemann面 (1) 関数ω = (z2− 1)1/2 の性質: 関数f (z) = (z2− 1)1/2 は,指数関数と対数関数の性質により, f (z) = (z− 1)1/2(z + 1)1/2 である。いま,領域D1 で定義される(z− 1)1/2 の分枝をf1(z),領域D2 で定義される (z + 1)1/2 の分枝をf2(z)とすると,2つの積f (z) = f1(z)f2(z)は,領域D1∩ D2 にお いて定義される (z2− 1)1/2 の1つの分枝である。ここで, f1(z) =√r1eiθ1/2 ( r1=| z − 1 | > 0, 0 < θ1= arg (z− 1) < 2π ) f2(z) =√r2eiθ2/2 ( r2=| z + 1 | > 0, 0 < θ2= arg (z + 1) < 2π )
とすると,2つの積は f (z) =√r1r2ei(θ1+θ2)/2 ( rk > 0, 0 < θk< 2π : k = 1, 2 ) となる。
x
y
z
1
P
1θ
1r
1-1
P
2θ
2r
2 図13.2: ω = (z2− 1)1/2 の性質 f (z)は x 軸上の x≥ −1を除いて定義される。この部分は r2 ≥ 0,θ2 = 0である。実 軸の x <−1はθ1 = π, θ2= π, θ1+ θ2 = πとして定義される。 しかし,(z2− 1)1/2 の1つの分枝として上で定義した関数 f (z)は実軸上の−1 ≤ x ≤ 1 を除いて正則な関数 F (z) =√r1r2ei(θ1+θ2)/2 ( r k> 0, 0≤ θk< 2π : k = 1, 2 ) に拡張できる。なぜならば,F (z) は関数 G(z) =√r1r2ei(θ1+θ2)/2 ( rk> 0, −π < θk< π : k = 1, 2 ) と第1象限で一致し,しかも,G(z)は実軸の正の部分で正則である。関数G(z) は関数 F (z)の,実軸の正の部分を越えて第4象限への解析接続である。 点z が線分P1P2 を横切って上から下へ動くとき,F (z)の値は i√r1r2 ( θ1 = π, θ2 = 0 ) から − i√r1r2 ( θ1 = π, θ2= 2π ) へとぶから,F (z) は線分P1P2 上で連続ではなく,従って,正則ではない。 また,写像としてみると,θ1とθ2 が0からπまで動くとき,ωの偏角arg ω = (θ1+θ2)/2 は0 からπ まで変化するので,z 平面の上半分はω 平面の上半分に写される。θ1 とθ2 が π から 2π まで動くときは,arg ω = (θ1+ θ2)/2 は π から 2π まで変化し,z 平面 の下半分は ω 平面の下半分に写される。実軸上の線分 P1P2 は ω 平面の虚軸上の線分 −1 ≤ v ≤ 1に写される。 (2) (z2− 1)1/2 のRiemann面:13.2 Riemann面 143 点 z が,線分 P1P2 を横切らずに,P1P2 のまわりを1周して元の位置に戻るとき,θ1 と θ2 はともに 2π だけ増えるので,arg ω = (θ1 + θ2)/2 も 2π だけ増える。よって, (z2− 1)1/2 の値は変わらない。また,z が点z = 1 またはz =−1 のまわりを2周する と,θ1 または θ2 は4π 増えるので,やはり,(z2− 1)1/2 の値は変わらない。 しかし,zが点z = 1またはz =−1のまわりを1周だけするときは,θ1 またはθ2 は2π だけ増えるので,(z2− 1)1/2 の値は符号が変わる。よって,zが点 z = 1またはz =−1 のまわりを1周だけするとき,その始点と終点は別の点と考えないと (z2− 1)1/2 を1価 関数とみなせない。そこで,線分P1P2 に切り込みを入れた複素平面を2枚用意し,P1P2 を横切るときは他方に入るとすれば,始点と終点を別の点とみることができる。 すなわち,2枚の複素平面 R0, R1 を用意して,線分 P1P2 に沿って切り込みを入れ, R0 のP1P2 の上岸をR1 の P1P2 の下岸と, R0 のP1P2 の下岸をR1 の P1P2 の上岸とつなぐ ことによって得られる連結した面を R とすると,R が (z2− 1)1/2 のRiemann 面であ る。R0 とR1 はともにω 平面全体と1対1に対応し,R 上で,ω = (z2− 1)1/2 は1価 正則である。z =±1はともに分岐点である。
13.3
Γ
関数,
B
関数,
ζ
関数
13.3.1
ガンマ関数
定義 Γ 関数 実数 t についての次の積分を解析接続して得られる,複素変数 z = x + iyの関数 Γ (z) をガンマ関数という。 Γ (z) = ∞ 0 e −ttz−1dt ( Re z > 0 ) (13.2) 右辺の積分は,| tz−1| = tx−1 であることを用いると 0∞e−ttz−1dt≤ ∞ 0 e −ttx−1dt (13.3) の関係が成り立つが,下限t = 0 では積分が収束するためにx = Re z > 0が必要である。 解析接続 ガンマ関数は Re z < 0 の領域へ次のようにして解析接続することができる。定義 式(13.2)を部分積分すると(z= 0) ∞ 0 e −ttz−1dt =1 ze −ttz∞ 0 + 1 z ∞ 0 e −ttzdt (13.4) となる。右辺の第1項は 0 である。第2項の積分は Re (z + 1) > 0 で収束する。すなわち, z = 0 を除くRe z >−1の領域で収束して, Γ (z) = 1 zΓ (z + 1) (13.5) が成り立つ。部分積分を繰り返し用いると,Γ 関数の定義域は拡張され,次の式が得られる。 Γ (z) = Γ (z + n + 1) z(z + 1)· · · (z + n) (13.6) 正則性と特異点 ガンマ関数はz =−n (n = 0, 1, 2,· · ·)で1位の極をもち,留数は lim z→−n(z + n) Γ (z) = (−1)n n! (13.7) である。それ以外のz では正則である。また,1/Γ (z)は | z | < ∞で正則である。 無限乗積展開 Γ (z) = 1 z ∞ * n=1 1 + 1 n z 1 + z n (13.8) 1 Γ (z) = z e γz *∞ n=1 1 + z n e−z/n (13.9) Γ (z) = lim n→∞ (n− 1)! nz z(z + 1)(z + 2)· · · (z + n − 1) (13.10)13.3 Γ 関数,B 関数,ζ 関数 145 ここで,γ はEuler の定数 γ = lim n→∞ 1 + 1 2+ 1 3 +· · · + 1 n − log n = 0.57721 56649 01532 86060 · · · (13.11) である。 特別な点での値 n = 1, 2,· · · とする。 Γ (1) = 1, Γ (n + 1) = n! (13.12) Γ (1 2) = √ π, Γ (n +1 2) = (2n− 1)!! 2n √ π, Γ (−n +1 2) = (−1)n2n (2n− 1)!! √ π (13.13) | Γ (iy) | =+ π y sinh πy y は実数 (13.14) 関数等式 Γ (z + 1) = z Γ (z) (13.15) Γ (z) Γ (−z) = − π z sin πz Γ (z) Γ (1− z) = π sin πz (13.16) Γ z + 1 2 Γ 1 2 − z = π cos πz (13.17) Γ (2z) = 2 2z 2√π Γ (z) Γ z +1 2 (13.18) 漸近展開 | z | → ∞のとき, Γ (z) ∼ √2π e−zzz−(1/2) 1 + 1 12 z + 1 288 z2 − 139 51840 z3 − 571 2488320 z4 + 163879 209018880 z5 + 5246819 75246796800 z6 − 534703531 902961561600 z7 +· · · (13.19) z = n + 1 として上の式の第1項をとると Stirlingの公式が得られる。 n!∼√2πn nne−n (13.20)
13.3.2
ベータ関数
定義 B 関数 実数 tについての次の積分を解析接続して得られる,2変数p, q の関数B(p, q) をベー タ関数という。 B(p, q) = 1 0 t p−1(1− t)q−1dt ( Re p > 0, Re q > 0 ) (13.21)上の積分は次のように表すこともできる。 B(p, q) = ∞ 0 tp−1 (1 + t)p+q dt = 2 π/2 0 cos 2p−1θ sin2q−1θ dθ ( Re p > 0, Re q > 0 ) (13.22) ガンマ関数による表示 B(p, q) = Γ (p) Γ (q) Γ (p + q) = B(q, p) (13.23) により,ガンマ関数の公式を用いてベータ関数の公式を導くことができる。 B(p, 1− p) = π sin πp B(p, q) B(p + q, r) = B(q, r) B(q + r, p) (13.24) 1 B(n, m) = m n + m− 1 n− 1 = n n + m− 1 m− 1 ( n, m = 1, 2,· · · ) (13.25)
13.3.3
不完全ガンマ関数
定義 不完全ガンマ関数 次の積分で定義される,複素変数zの関数を,それぞれ第1種不完全ガンマ関数,第2 種不完全ガンマ関数という。 γ(z, p) = p 0 e −ttz−1dt ( Re z > 0 ) (13.26) Γ (z, p) = ∞ p e −ttz−1dt ( Re z > 0 ) (13.27) 関数等式 Γ (z, p) + γ(z, p) = Γ (z) (13.28) γ(z + n, p) = Γ (z + n) Γ (z) γ(z, p)− e−ppz n−1! r=0 pr z(z + 1)· · · (z + r) (13.29)13.3.4
ツェータ関数
定義 ζ 関数 次の級数を解析接続して得られる,複素変数z の関数ζ(z) をツェータ関数という。 ζ(z) = ∞ ! n=1 1 nz ( Re z > 1 ) (13.30)13.3 Γ 関数,B 関数,ζ 関数 147 正則性と特異点 ツェータ関数はz = 1で留数が1である1位の極をもち,それ以外zでは正 則である。また,z =−2, −4, −6, · · ·を1位の零点とし,その他の零点はずべて0 < Re z < 1 の中にある。 関数等式 ζ(z) Γ z 2 = πz−(1/2)ζ(1− z) Γ 1− z 2 (13.31) ζ(1− z) = 21−zπ−zζ(z) Γ (z) cosπz 2 (13.32) 特別な点での値 ζ(0) =−1 2, ζ(2) = π2 6 , ζ(4) = π4 90 (13.33) ζ(2n) = 2 2n−1π2nBn (2n)! , ζ(1− 2n) = (−1)nBn 2n (13.34) ここで,Bn はBernoulli の数で, x ex− 1+ x 2 − 1 = ∞ ! n=1 (−1)n−1 Bn (2n)!x 2n (13.35) で定義される。nが小さいときの具体的な値は B1 = 1 6, B2= 1 30, B3= 1 42, B4= 1 30, B5= 5 66 B6 = 691 2730, B7 = 7 6, B8 = 3617 510, B9 = 43867 798 , B10= 174611 330 (13.36) である。 級数 ζ(z) = 1 1− 2−z ∞ ! n=1 1 (2n− 1)z ( Re z > 1 ) (13.37) ζ(z) = 1 1− 21−z ∞ ! n=1 (−1)n−1 nz ( Re z > 0 ) (13.38) 無限乗積展開 1 ζ(z) = * p 1− 1 pz ( Re z > 1 ) pはすべての素数にわたる (13.39) 積分表示 ζ(z) = 1 Γ (z) ∞ 0 tz−1 et− 1dt ( Re z > 1 ) (13.40) ζ(z) = 2 z (2z− 1)Γ (z) ∞ 0 ettz−1 e2t− 1dt ( Re z > 1 ) (13.41) ζ(z) = 1 (1− 21−z)Γ (z) ∞ 0 tz−1 et+ 1dt ( Re z > 0 ) (13.42)