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Cultural Diversity at the Workplace:Benefits and Challenges-Multicultural Companies in Japan-(職場における文化的多様性の利点及び課題-日本における多文化企業-)

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Academic year: 2021

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全文

(1)

Cultural Diversity at the Workplace:Benefits

and Challenges-Multicultural Companies in

Japan-(職場における文化的多様性の利点及び課題-日本における多文化企業-)

著者

GURITA LUMINITA CARMEN

7

学位授与番号

98

(2)

グリツァ

ル ミニツァ

カルメン

GURITALUMINITACARMEN

学 位 の 種 類

士(国 際文化)

学 位 記 番 号

国博

第98号

学位授与年月 日

平 成20年9月3日

学位授与の要件

学位規則第4条 第1項 該当

研 究 科 ・専 攻

学 位 論 文 題 目

論 文 審 査 委 員

東北大学大学院国際文化研究科(博 士課程後期3年 の課程)

国際文化言語論専攻

CulturalDiversityattheWorkplace:BenefitsandChallenges -MulticulturalCompaniesinJapan-(職 場 に お け る 文 化 的 多 様 性 の 利 点 及 び 課 題 一 日 本 に お け る 多 文 化 企 業 一)

(主査)

准教授

論 文 内 容 の 要 旨

本 研 究 に つ い て 現 在 の世 界 は 国際 的 な 投 資 や 商 品取 引 、 コ ミ ュニ ケ ー シ ョン 、 人 的 交 流 等 に 見 られ る グ ロー バ ル 化 に よ っ て 絶 え ず 変 化 を 続 け て い る。 外 国 か らの 影 響 は 経 済 、 金 融 、 観 光 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン 、 文 化 の よ うな 様 々 な 分 野 に 見 られ 、 さ ら に は 労 働 力 の 管 理 の 分 野 に も見 られ る。 い くつ か の 国 々 に お い て は 、 あ る 状 況 が さ らに 労 働 力 の 管 理 や グ ロ ー バ ル 化 の 受 容 性 に 影 響 を 与 え て お り、 そ の 状 況 とい うの は 、 人 口構 成 の 変 化 、 つ ま り高 齢 者 の 数 の 増 加 や 出生 数 の 減 少 で あ る。 そ う した 国 々 と同 じ よ う に 、 労 働 力 に お け る人 口構 成 の 要 素 は 日本 に も大 き な影 響 を 与 え て い る。 こ こ で 、2つ の 問 題 が 生 じ る。1つ は 、 変 容 す る現 在 の 世 界 と 日本 が ど う付 き合 うか 。 も う1つ は 、 労 働 力 の 流 入 に 対 す る、 日本 の 立 場 は どの よ うな もの か 。 80年 代 の終 わ りか ら90年 代 の 初 め に か け て 、 労 働 力 が不 足 し南 ア メ リ カ、 特 に ブ ラ ジル や ペ ル ー一

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か ら 多 くの 日系 人 が 日 本 に 移 動 した 。 様 々 な 研 究 者 た ち(Fuchigami,1995,lgarashi,2000, Okuda,2000)が 日 系 人 た ち を 対 象 に 日 本 文 化 ・社 会 と 外 国 人 の 接 触 に つ い て の 研 究 を 行 っ た 。 職 場 に お い て 、 上 級 の 日 本 語 能 力 を 要 求 さ れ な い ブ ル ー カ ラ ー と違 い 、 オ フ ィ ス ワ ー カ ー ・ホ ワ イ トカ ラ ー ・会 社 員 に と っ て は 、 職 務 の 遂 行 に 日本 語 能 力 は 欠 か せ な い 。 本 研 究 に お い て は 、 多 文 化 の 職 場 に 勤 め る 外 国 人 オ フ ィ ス ワ ー カ ー に 焦 点 を 当 て る 。 言 語 の 上 達 と文 化 に 対 す る 理 解 は 密 接 に 関 連 し て い る こ と か ら(Corson,1995,Eisenberg,inSchieffelin&Ochs(Eds.), 1999)、 本 研 究 は 異 な る 文 化 背 景 が 職 場 で の 人 間 関 係 や コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 す る 。 つ ま り、 本 研 究 は 同 じ 職 場 で 働 い て い る 外 国 人 と 日 本 人 の 文 化 的 適 応 を 調 査 ・分 析 す る も の で あ る 。 こ の ト ピ ッ ク は 外 国 人 オ フ ィ ス ワ ー カ ー 、 日本 人 オ フ ィ ス ワ ー カ ー の 双 方 が 直 面 す る 課 題 を 明 確 に す る こ と に も つ な が り、 興 味 深 い も の で あ る と考 え ら れ る 。 多 文 化 の 環 境 で 働 く こ と は 、 外 国 人 で あ れ 、 日 本 人 で あ れ 、 同 じ 価 値 観 や 習 慣 を 持 つ 同 僚 し か い な い 職 場 と 同 じ よ う に は い か な い だ ろ う。 文 化 的 パ タ ー ソ や 行 動 に 関 す る 知 識 の な い 異 な る 文 化 的 背 景 の 下 で 毎 日 働 く場 合 に 、 ス ト レ ス が た ま る の は 当 然 で あ る 。 実 際 、 文 化 間 の 対 立 は1つ の 文 化 内 の 対 立 以 上 に 解 決 が 困 難 で あ る と 言 わ れ て い る(OhbuchietaL,1999)。 文 化 的 に 多 様 な チ ー ム は 、 十 分 な 時 間 を か け て チ ー ム を 確 立 し た 場 合 に は 、 一 元 的 な チ ー ム よ り も革 新 的 な 解 決 を 見 出 す こ と が 明 ら か に な っ て い る(FernandezandBarl,1993,Thomas, 1999,VanderZeeetal.,2004)。 さ ら に 、 う ま く組 織 さ れ た 多 文 化 チ ー ム の 活 動 の 利 点 は 、 メ ソ バ ー の 目的 が 一 致 し た 時 に 、 よ り顕 著 と な る 。 労 働 力 の 変 遷 の 中 で 、多 文 化 チ ー ム の 利 点 や 多 文 化 チ ー ム の 性 質 を 研 究 す る 意 義 は 明 ら か で あ る 。 多 文 化 チ ー ム に 関 し て は 、 そ の 多 様 な 側 面 を 検 討 す る 研 究 は 少 な く、 本 研 究 は 多 文 化 の 環 境 で 働 く オ フ ィス ワ ー カ ー に つ い て の さ ら な る 理 解 を 示 す も の と な る 。 本 研 究 の 結 果 本 研 究 の 分 析 か ら得 た 結 論 を 、 日本 人 勤 労 者 の 中 で 描 か れ た 外 国 人 像 と、 外 国 人 勤 労 者 の 中 で 描 か れ た 日本 人 像 とい うか た ち で提 示 した い 。 1.同 じ職 場 の 日本 人 勤 労 者 の 中 に描 か れ る外 国 人 勤 労 者 像 出 身 国 に 関 係 な く、 一 般 的 な外 国 人 の 明 る い イ メ ー ジ は 、 異 文 化 へ の 適 応 が で き、 柔 軟 な 考 え を 持 ち 、 好 き嫌 い は 勿 論 、 自分 自身 の 意 見 を は っ き り述 べ 、 多様 性 を 受 け 入 れ 、 オ ー プ ン な考 え を も つ 人 々 で あ る 。 日本 人 が 好 む 外 国 人 の 特 徴 は 、 そ の 考 え方 、 周 りに対 す る もの の 捉 え 方 、 周 囲 との コ ミ ュニ ケ ー シ ョソ 能 力 や 価 値 観 、 優 しさ や ユ ー モ ア の セ ン ス で あ る。 外 国 人 が 自 らの 母 語 や 文 化 を 日本 人 に対 して 伝 え よ う と努 め る こ とで 、 彼 らは さ ら に 高 く評 価 さ れ る 。

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日本 人 勤 労 者 が 外 国 人 勤 労 者 に対 して抱 く暗 い イ メ ー ジ は 、 外 国 人 の社 会 との 結 び つ き方 や 、 他 者 へ の 配 慮(外 国 人 の 身 な りか ら、 香 水 を つ け る習 慣 ま で 、 多 岐 に わ た る)か ら、 時 間 に つ い て の 捉 え方 ま で様 々 で あ る。 ま た 、 強 す ぎ る 自己 主 張 や 過 度 な 意 見 の 主 張 、 独 立 性 を強 調 し過 ぎ、 外 国 人 の立 場 か ら見 る と、 日本 人 も ま た外 国 人 で あ る、 とい う こ と を認 め な い こ と を挙 げ た 。 さ ら に 、 外 国 人 が 日本 人 の 生 活 様 式 を正 し く認 識 して い な い こ とを 非 難 して い た 。 2.同 じ職 場 の 外 国 人 勤 労 者 の 中 に描 か れ る 日本 人 勤 労 者 像 注 意 す べ き 点 は 、 こ の カ テ ゴ リー に お け る 外 国人 か らの 意 見 の 中 で仕 事 に 関 連 した もの は 多 くな い、 と い う こ とで あ る。 外 国 人 勤 労 者 の 回 答 か ら見 出 さ れ る、 彼 ら が 日本 人 勤 労 者 に対 して 抱 く好 意 的 な イ メ ー ジ は 、 日本 人 が 会 社 の ル ー ル に 則 り行 動 し、 そ の ル ー ル を 守 っ て い る点 で あ る 。 集 団 の 力 を よ く理 解 して 、 日本 人 勤 労 者 は 職 場 で 決 定 した こ と に あ る程 度 貢 献 して 、 そ の 決 定 に 明 確 に 応 じ る。 日本 人 勤 労 者 は よ く働 き、 生 活 が で き る給 料 を も ら う こ と で満 足 す る、 と捉 え て い る。 次 に、 上 述 した 日本 人 勤 労 者 に対 して 抱 く好 意 的 な イ メ ー ジ の 裏 に潜 む 、 影 の 部 分 を ま とめ て み る。 仕 事 に 対 して 柔 軟 な 対 応 を せ ず 、 自 ら の 直 感 を 働 か せ る こ とを しな い 日本 人 勤 労 者 は 、 長 時 間 職 場 に こ も り(そ こで 睡 眠 を と りさ え す る)、 周 りの 期 待 に 応 え よ う とす る が 、 効 率 性 が 高 い わ け で は な い。 こ れ は 、 周 り との コ ミ ュニ ケ ー シ ョン不 足 や透 明性 の 欠 如 に よ る も の か も しれ な い 。 仕 事 に お け る決 定 プ ロ セ ス も、 既 に決 定 した こ との 変 更 に は 時 間 が か か り、 関 係 者 す べ て の 同 意 が 必 要 で あ り、 こ れ らが 会 議 で 行 わ れ る こ とは な い 、 とい う。 本 論 文 の 構 成 本 論 文 は 、49人 の 外 国 人 と65人 の 日本 人 、 合 わ せ てll4人 か ら得 た ア ン ケ ー トの 回 答 結 果 を 中 心 に 分 析 を 行 っ た 。 論 文 は 全7章 で 、構 成 は 以 下 の通 りで あ る。 第 一 章:序 論 第 二 章:本 研 究 の 前 提 条 件 第 三 章:ア ソ ケ ー トの 質 問 や ア ン ケ ー ト用 紙 の構 築 ・デ ー タ収 集 ・ター ゲ ッ ト と して い る人 口集 団 に 関 す る説 明 第 四 章:あ る質 問 に対 す る 回 答 の 統 計 的 分 析 第 五 章=3つ の 自 由 回 答 式 質 問 に お け る外 国 人 と 日本 人 回 答 者 の 回 答 の 分 析(上)-3つ の 回 答 の 分 類 。 分 析 を可 能 に す る方 法 の 確 立 第 六 章=3つ の 自 由 回 答 式 質 問 に お け る外 国 人 と 日本 人 回 答 者 の 回 答 の 分 析(下)一 あ る仮 定 を 検 証 。 同 僚 か ら見 た 外 国 人 ・日本 人 の オ フ ィ ス ワ ー カ ー の表 象 第 七 章:結 論

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以 下 は 、 第 一 章 か ら第 七 章 の 概 要 で あ る 。 第 一 章=序 論 本 章 で は 、 日本 に 対 す る外 国 の 影 響 に関 す る議 論 や 、 日本 に お い て 外 国人 労 働 力 の 必 要 性 を高 め て い る要 因 に つ い て 検 討 す る。 要 因 と して は 高 齢 者 数 の 増 加 や 出 生 数 の 減 少 と共 に グ ロー バ ル 化 な どが あ る。 日本 で は 、 日本 の 大 学 を 卒 業 した 留 学 生 を雇 用 す る企 業 が増 え て き て い る。 そ う した留 学 生 た ち は 日本 語 と共 に 日本 文 化 の 勉 強 を して き た わ け だ が 、 社 員 と して 働 く際 に は 、 様 々 な 問 題 に 直 面 す る こ と と な る。 文 化 の 違 い は 、 最 大 の 要 因 で あ るた め 、 本 研 究 に お い て は 個 人 主 義 文 化 ・ 集 団 主 義 文 化 とい う分 類 を して い る。 本 研 究 の 結 果 は 、 著 者 の 構 成 した ア ン ケ ー トの 質 問 に対 す る 114人 の 回 答 者 の 回 答 に 基 づ い て い る。 第 二 章=本 研 究 の 前 提 条 件 第 二 章 で は 、 本 研 究 の 基 本 的 な説 明 を行 う。 最 初 に 本 研 究 の 概 念 に つ い て 説 明 す る 。 そ の 概 念 と は 「文 化 」 とい う一 般 的 な もの か ら、 「文 化 」 の 複 雑 な 定 義 の 進 化 に つ い て で あ る 。 第 二 に 、 文 化 を 中 心 に扱 っ た 論 文 で頻 繁 に 参 照 さ れ る、 文 化 の様 々 な キ ー ・コ ンセ プ トを 紹 介 す る 。 三 番 目に 、 文 化 の 相 互 作 用 に つ い て の 様 々な 論 述 に 触 れ た 後 、 文 化 的 視 点 か ら見 た 、 様 々 な 社 会 で 生 じる相 互 作 用 の 分析 に つ い て 説 明 す る。 四 番 目に 、 グ ロー バ ル 化 が 進 行 す る 日本 の 状 況 を よ り明 確 に 説 明 す る た め 、 日本 や 他 国 の 人 口統 計 ・社 会 ・文 化 的 な デ ー タ を使 用 し、 特 に 日本 の 労 働 力 と関 係 が あ る 点 を 中 心 に 説 明 す る。 グ ロ ー バ ル 化 が 顕 著 に進 行 して い る 日本 の 状 況 を 検 討 した 後 、 日本 で 受 け 入 れ られ る外 国 人 勤 労 者 の 重 要 性 につ い て説 明 す る。さ ら に 、本 研 究 の 重 要 な 点 に つ い て説 明 を 行 う。 文 化 や 言 語 の 相 違 に つ い て の 説 明 が 必 要 で あ るた め 、 本 章 の 最 後 で は 「オ フ ィス ワ ー カ ー 」 の 地 位 や 意 味 の 類 似 点 や 相 違 点 に つ い て 説 明 す る。 第 三 章=ア ン ケ ー トの 質 問 と ア ン ケ ー ト用 紙 の 構 築 ・デ ー タ収 集 ・夕一 ゲ ッ トと して い る人 ロ集 団 に関 す る説 明 第 三 章 で は 、 本 研 究 で 使 用 した デ ー タ収 集 の 道 具 と、 ア ン ケ ー トや デ ー タ を収 集 した 人 口集 団 に つ い て 説 明 す る。 冒頭 で は 、ア ン ケ ー トで 使 用 した 質 問 や ア ン ケ ー ト作 成 過 程 の 説 明 を す る。次 に 、 デー タ収 集 の 過 程 と、 本 研 究 の ア ン ケ ー トの 回 答 を 得 る こ との で き た 企 業 、 回 答 を得 られ な か っ た 企 業 、 回 答 を依 頼 した 全 て の 企 業 か ら作 成 した 統 計 デ ー タ に つ い て 説 明 す る 。 最 後 に 、 本 研 究 に 参 加 した サ ン プ ル 集 団 の 全 体 像 を 説 明 す る た め 、 回 答 者 の 出身 国 の 文 化 等 につ い て の 説 明 を行 う。 ま た 、 他 の 概 念 に つ い て も説 明 す る。 例 え ば 、 個 人 主 義 や 集 団 主 義 に つ い て の レベ ル で あ り、 そ の 概 念 を使 用 して 本 研 究 に 参 加 した 回 答 者 を特 徴 づ け る。そ の 後 、客 観 的 な 変 数 に つ い て 説 明 す る。

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そ れ は 、 外 国 人 の 日本 で の 滞 在 期 間 と 日本 人 の 外 国 で の 滞 在 期 間 で あ り、 そ れ ら に よ っ て 回 答 者 た ち を い くつ か の カ テ ゴ リー に 分 類 す る。 第 四章=質 問 に 対 す る 回答 の 統 計 的 分 析 第 四 章 で は 、49人 の 外 国 人 と65人 の 日本 人 、 計114人 の 回 答 者 か ら得 た 回 答 を 、 統 計 学 的 手 法 を 用 い て 処 理 し、 そ の デ ー タ を 統 計 学 的 に 分 析 す る。 本 研 究 で 回 答 は 多項 選 択 式 の 形 式 を採 用 した 。 本 章 で 使 用 す る デ ー タは 人 口学 的 情 報 、 つ ま り性 別 、年 齢 、 個 人 の 文 化 的 背 景 と異 な る文 化 圏 で の 滞 在 期 間 等 、 で あ る。 多 項 選 択 式 で は な い 質 問 項 目に つ い て は 第 五 、 六 章 で 述 べ る。 最 初 に 本 章 で 用 い る 質 問 項 目に つ い て 述 べ る。 何 故 な ら、 質 問 の 全 回 答 を 本 章 で 分 析 す る の で は な く、 第 五 、 六 章 に分 析 が ま た が っ て い る た め で あ る 。 本 章 で は 回 答 者 の 基 本 情 報 に つ い て の 質 問 か ら得 られ た 回 答 を 中 心 に 分 析 す る。3つ の 自 由回 答 式 質 問 に つ い て の 詳 細 な 分 析 は 、 第 五 、 六 章 で 行 う。 質 問 票 の 作 成 に あ た っ て は 、 様 々 な 手 法 を取 り入 れ た 。 例 え ば 、 質 問 に 関 す る 回 答 の 選 択 肢 と し て 、 リ ッカ ー ト尺 度 を 援 用 し、 程 度 を 示 す5つ の 副 詞(い つ も ・ほ と ん どい つ も ・よ く ・そ の よ う な こ とは ほ とん どな い ・そ の よ うな こ とは 全 くな い)や 、 頻 度 を 表 す5つ の 数 字(行 か な い ・年3 回 以 下 ・年4∼10回 ・年10回 以 上)を 選 択 肢 と して設 け た 。 ま た 、 質 問 に 関 す る 回 答 方 法 と して 、 「は い 」 か 「い い え」 を選 択 す る 、 二 者 択 一 の 方 式 も採 用 した 。 本 章 で 質 問 票 の 中 で 採 用 した 選 択 肢 は 、 以 下 の 次 の4つ で あ る。 1つ 目の 回答 の 種 類 一 リ ッカ ー ト尺 度(5つ の 選 択 肢) 非 常 に そ う思 う そ う思 う どち らで もな い そ う思 わ な い 全 くそ う思 わ ない 2つ 目の 回 答 の 種 類 頻 発 タ イ プA(5つ の 選 択 肢) い つ も ほ と ん と い つ も よ く そ の よ うな こ とは ほ とん どな い そ の よ うな こ とは全 くな い 3つ 目の 回 答 の 種 類 頻 発 タ イ プB(4つ の 選 択 肢 一 数 字) 行 か な い 3回 以下 4∼10回 10回 以 上 4つ 目の 回 答 の 種 類: は い いい え

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質 問 票 の 作 成 に あ た っ て 多様 な 手 法 を 用 い る こ とに よ っ て 、 様 々な 結 果 を得 る こ とが 可 能 に な っ た 。 本 研 究 で 行 う複 数 の トピ ッ クの 分 析 の こ とを 考 え た 際 、1つ の 種 類 の 回 答 方 法 を 用 い る の で は な く、 様 々 な 回 答 方 法 を設 け る こ とに よ っ て よ り広 く、 深 い デ ー タ の 把 握 が 出 来 る の で は な い か、 と考 え た 結 果 で あ る。 ア ン ケ ー トの 質 問 に 対 す る回 答 の 種 類 に 従 っ て 、 統 計 分 析 で も様 々な 方 法 を採 る べ き で あ る 。 例 え ば 、5つ の 選 択 肢 が あ る リ ッ カ ー ト尺 度 を 使 用 す る 際 、 回 答 者 た ち に は様 々 な 文 化 的 背 景 が あ る た め 、 統 計 に イ ソ プ ヅ トす る前 に 、 ま ず 回 答 の 標 準 化 を 行 う必 要 が あ る。 リ ッカ ー ト尺 度 以 外 を 質 問 項 目で 使 用 した 回 答 結 果 を統 計 分 析 で 用 い る際 は 、ア ン ケ ー ト用 紙 の デ ー タ を そ の ま ま使 用 す る。 リ ッ カー ト尺 度 を 用 い た 選 択 肢 の デー タ を 分 析 す る際 に も、 様 々 な統 計 手 法 を用 い た 。 例 え ば 、 four・wayANOVA(4要 因 の 分 散 分 析)を 用 い て 、2つ の 手 順 で 進 め て い っ た 。 ま ず 、2つ の 大 き な カ テ ゴ リー 、 つ ま り外 国 人 と 日本 人 を比 較 す る 。 次 に4つ の カ テ ゴ リー 、 日本 人 、 中 国 人 、 韓 国 人 、 そ して 西 洋 人 を比 較 す る 。 他 の 回 答 との 相 関 関 係 を探 るた め に、 様 々 な 統 計 学 的 手 法 を1 つ 目の 回 答 の 種 類 の 質 問 と併 せ て 行 っ た 。 上 記 以 外 の 選 択 肢 を有 す る 質 問 、 つ ま り2つ 目か ら4つ 目の 回 答 の 種 類 の 質 問 で は 、 回 答 数 の 割 合 を 算 出 した 。 回 答 は、 系 統 化 さ れ た 質 問 を 念 頭 に 置 きな が ら分 析 した 。 質 問 項 目の 分 析 の 最 後 に は 、 特 定 の テ ー マ に 関 す る質 問 の 分 析 を 行 っ た 。 第 五 章=3つ の 自 由 回 答 式 質 問 に お け る外 国 人 と 日本 人 回 答 者 の 回 答 の 分 析(上)-3つ の 回答 の 分 類 。 分 析 を 可 能 に す る 方 法 の 確 立 第 五 章 で は 、3つ の 自 由 回 答 式 質 問 の 回 答 を 分 析 す る。3つ の 自 由 回 答 式 質 問 の 回 答 の 分 析 が 本 章 で の 最 初 の部 分 と な る。3つ の 自 由 回 答 式 質 問 の 回 答 の 分 析 は 膨 人 な 作 業 とな る た め 、2つ に分 割 した 。 本 章 で は そ の 前半 部 分 を 、 次 章 で は後 半 部 分 に つ い て述 べ て い く。 分 析 の た め 、 回 答 者 を2つ の 大 きな グ ル ー プ に 分 割 した 。1つ 目の グ ル ー プ は 、 自 由回 答 式 質 問 を1つ で も回 答 した 回 答 者 で あ る。 も う1つ の グ ル ー プ は 、 自 由 回 答 式 質 問 に 回 答 しな か っ た 回 答 者 の グ ル ー プ で あ る。 本 研 究 で は 、 外 国 人 回 答 者 を 日本 滞 在 期 間 、 日本 人 を外 国 で の 滞 在 期 間 に よ っ て 、5つ の グル ー プ に 区 別 した 上 で 解 答 の 分 析 を行 う。 こ れ らの 点 を考 慮 して 、 先 ほ ど区 分 した5つ の 回 答 者 グ ル ー プ の 回 答 の 中 に 出 現 した トピ ック を、[評 価 な し]、[プ ラ ス 評 価]、 そ して[マ イ ナ ス評 価]と い う 3つ の カ テ ゴ リー に 区 分 す る 。 ま た 、 トピ ッ ク を 検 討 す る 際 、 あ る トピ ック が 以 前 の 回 答 者 グ ル ー プ で も述 べ られ た か ど うか 、そ れ と も本 グ ル ー プ の 回 答 者 が 初 め て そ の トピ ッ ク を 述 べ た か ど うか 、 そ の 点 に つ い て も説 明 す る。 特 殊 な 回 答 が あ る 場 合 は 、 そ れ は 「特 殊 な 回 答 」 と い うカ テ ゴ リー に 区 分 す る 。 本 研 究 の 調 査 で

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表 れ る 特 殊 な 回 答 と は 、 同 じ集 団 の 回 答 者 の 回 答 よ り も、 よ り文 化 的 意 識 を 帯 び た 回 答 で あ る 。 ま た 、 回 答 者 が 自 由 回 答 式 項 目 の 空 欄 を 埋 め て い な い 場 合 に は 、 そ れ を 「特 に な し」 と 大 体 同 じ 意 味 を 表 す も の と し て 考 え た 。 そ れ ら は 、 回 答 者 た ち が 質 問 に 対 し て 特 に 意 見 や 考 え を 持 っ て い な い 、 と い う 回 答 で あ る 。 そ の た め 、 各 集 団 の 分 析 の 最 後 に は 、 こ れ ら に つ い て の も う1つ の カ テ ゴ リ ー が 存 在 し て お り 、 そ れ は 「特 に な し」 と い う種 類 の 答 え で あ る 。 同 時 に 本 章 で は 、 自 由 回 答 式 質 問 に1つ も 回 答 し て い な い 回 答 者 グ ル ー プ の 分 析 も行 う 。 具 体 的 に は 、 回 答 し て い な い 回 答 者 の 数 と そ の 割 合 、 そ し て 可 能 で あ れ ば 、 回 答 し て い な い 回 答 者 が そ の 状 況 下 で と る と考 え られ る パ タ ー ソ を も 推 測 し 、 説 明 す る 。 A.本 章 で 分 析 す る 第58問 、 第67問 、 そ し て 第68問 の3つ の 自 由 回 答 式 質 問 第58問:外 国 人 向 け の 第58問 の 質 問 文 は 、"Thi皿gsthatIfeeldifferentfrommyhome countryareforexample"で あ り、 日 本 人 に 対 し て は 、 「自 分 自 身 の 文 化 と の 違 い を 感 じ る こ と は 以 下 の 通 り で あ る 」、 で あ っ た 。 本 間 の 質 問 意 図 は 、 回 答 者 が 異 国 の 人 物 と 接 す る と き に 、 そ の 人 物 と の 文 化 的 差 異 を 感 じ る か ど う か 、 の 確 認 で あ る 。 第67問:第67問 の 質 問 文 は 、 外 国 人 回 答 者 に 向 け た も の が"(Giveexamplesof)Thingsto learnfromtheJapanese"で あ り、 日本 人 回 答 者 へ は 「外 国 人 か ら 学 べ る こ と は 次 の 通 り で あ る 。」 で あ っ た 。 第67問 の 目 的 は 、 様 々 な 性 格 を も っ た 他 者 を 称 賛 ・受 容 す る か ど う か 、 回 答 者 の 他 者 に 対 す る 感 度 を 見 極 め る こ と で あ る 。 ま た 、 お 互 い が 他 者 の どの よ う な 性 格 を 称 賛 し て い る か 見 つ け る こ と も 、 本 問 の 目的 で あ る 。 第68問:外 国 人 に 向 け た 第68問 の 質 問 内 容 は"(Giveexαmρlesof)Thingsthatitisbetter nottodointhewaytheJapanesedo"で あ り、 日本 人 に 対 し て は 「外 国 人 の 違 う行 動 や 習 慣 で 不 快 に 思 っ た 点 は 何 で す か 。」 で あ る 。 本 間 の 目 的 は 、 不 快 に 感 じ る 外 国 人 の 文 化 的 側 面 を 確 認 す る こ と で あ る 。 上 記3つ の 質 問 に 対 して は 、 あ ら か じ め 設 定 し た 回 答 項 目 で は な く、 意 図 的 に 自 由 回 答 の 様 式 を 採 用 し 、 回 答 者 か ら の 生 の 声 を 収 集 し た 。 こ れ に よ り、 回 答 者 か ら直 接 、 不 変 且 つ 固 有 の 意 見 を 引 き 出 す こ と が で き た 。 B.質 問 の 回 答 に つ い て 異 文 化 圏 で の 滞 在 期 間 を 基 準 と し て 、 回 答 者 を5つ の グ ル ー プ に 分 け た た め 、 こ こ か ら の 分 析 で も 同 様 の 基 準 を 用 い 、 滞 在 期 間 の 長 短 が 、 他 者 と 自 分 自 身 に ど の よ う に 影 響 を 与 え る か を 分 析 し て い く。 注 意 す べ き こ と は 、 回 答 者 が 第58問 で 回 答 し た こ と が 、第67、68問 と 重 な っ て い る ケ ー ス で あ る 。 ま た 、 第58問 で 回 答 し た こ と を 、 第67、68問 で 繰 り返 し て い る ケ ー ス も あ る 。 更 に は 、 各 質 問 に 対 す る 回 答 が 互 い に 補 完 し あ い 、 精 緻 化 した コ メ ン ト と な る ケ ー ス も あ っ た 。 こ れ ら の 理 由 か ら 、 分

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析 の 際 は3つ の 質 問 に 対 す る 回 答 を 同 時 に 検 討 す る。 他 者 に 対 して の 質 問 の 回 答 を 分 析 す る 際 は 、 「称 賛 ・批 難 ・称 賛 で も批 難 で も な い 」 と い う意 見 を 、 区 別 す る必 要 が あ る。 第58問 以 降 の 外 国 人 と 日本 人 回 答 者 の 回 答 を 見 る と、 そ れ ぞ れ が 好 意 的 、 否 定 的 立 場 を 形 成 して い る こ とが 分 か る。 この 二 者 関 係 が 現 れ る と外 国 人 回 答 者 た ち は 、 あ る こ と に 関 す る意 見 を、 外 国 に 対 して 日本 で は こ うで あ る、 とい う記 述 を し、 日本 人 回 答 者 た ち は 、 日本 に対 して 外 国 で は こ う で あ る 、 とい う記 述 を す る。 少 数 の ケ ー ス だ が 、 外 国 人 、 日本 人 が お 互 い に 自分 た ち との 類 似 点 を 見 出 す ケ ー ス もあ る。 ま た 、 外 国 人 が 持 ち込 ん だ 文 化 的 特 徴 が 日本 人 に評 価 さ れ た り、 外 国 人 が 日 本 特 有 の文 化 を 好 意 的 に 受 け 入 れ た りす る ケ ー ス も あ る。 つ ま り、 外 国 人 と 日本 人 回 答 者 の 回 答 傾 向 は 、 本 研 究 の ア ン ケ ー トの 質 問 項 目で 使 用 した 「プ ラス 評 価 」 対 「マ イ ナ ス評 価 」 を支 持 して い る。 そ の た め 、 他 文 化 に 対 す る好 意 的 、 も し くは 否 定 的 な 受 け 取 り方 が 、 第67、68問 に回 答 す る 前 に、 第58問 に 回 答 す る際 に 回 答 者 に 想 起 さ れ る。 3つ の 自 由 回 答 式 質 問 の 回 答 を 、 以 下 の2つ の 点 を考 慮 に 入 れ な が ら整 理 す る。 分 析 の 第 一 の 特 徴 は 、 回 答 者 の 質 問 に対 す る 回 答 に 焦 点 を 当 て 、 回 答 者 の 認 識 の 程 度 を 測 る こ とで あ る。 も う1つ は 、 回 答 者 た ち が あ る話 題 を繰 り返 した 頻 度 で あ る。 著 者 は 特 定 の トピ ッ ク の 表 出 に 目を 配 った 。 そ れ 故 、 あ る トピ ック が 各 グル ー プ の 以 前 の 回 答 者 集 団 か ら現 れ た もの か 、 そ れ と もそ の 集 団 か ら 初 め て現 れ た もの で あ る の か を 区 別 す る。 そ の た め に 、 そ れ ぞ れ の 集 団 の3つ の 自 由 回 答 式 質 問 の 回 答 を 、 各 集 団 の そ の 以 前 の 集 団 か らの 人 々の 回 答 と共 に チ ェ ッ ク す る(最 初 の 集 団 か らの 人 々 は 除 外 す る)。 日本 、 も し くは 国 外 で の 滞 在 期 間 が どれ 程 長 け れ ば 、 回 答 に表 れ る話 題 が 拡 人 した り 深 くな っ た りす る の か を 確 認 す る。 最 後 に 、 特 定 の 集 団 の 回 答 者 た ち が 、 特 定 の 文 化 に つ い て 言 及 す る こ とが 多 い 場 合 に は 、 そ の 国 ・文 化 に つ い て の 、 一 見 して す ぐ理 解 で き る話 題 か ら、 よ り深 く 理 解 す る こ とが 必 要 な 話 題 ま で を ま とめ る作 業 を行 う。 基 本 的 な 区 分 は 、 「一 般 的 な話 題 」 で あ る か 、 「仕 事 と 関 係 が あ る話 題 」 で あ る か 、 で あ る 。 回 答 者 の 意 見 を 、 更 に3つ に 区 分 す る 。 例 え ば 、 好 意 的 な 「プ ラ ス評 価 」 の 回 答 は 「ポ ジ テ ィブ 評 価 」 へ と組 み 込 み 、 否 定 的 な 「マ イ ナ ス 評 価 」 の 回 答 は 「ネ ガ テ ィブ 評 価 」 に組 み 入 れ る 。 最 後 に 、 称 賛 で も批 難 で も な い 回 答 の 場 合 は 、 「評 価 な し」 と し、 別 項 の 「記 述 式 回 答 」 とす る。 こ の 「記 述 式 回答 」の 項 に は 、外 国 人 や 日本 人 の 外 見 や 飲 食 物 、 そ の 食 し方 に つ い て の コ メ ン トが あ る。 「記 述 式 回 答 」 に は 、 外 国 人 と 日本 人 の 行 動 様 式 に つ い て の 一 般 的 部 分 に つ い て の 回 答 も含 ま れ て い る。 外 国 人 や 日本 人 の 、 仕 事 と関 係 した 回 答 は 少 な い 。 そ れ らの 回 答 は 、 好 意 的 な 話 題 で も、 否 定 的 な 話 題 で も な い 。 回 答 に表 れ た トピ ック の 枠 組 は 、 表1に 示 さ れ て い る通 りで あ る。

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表1.ト ピ ッ ク の 枠 組 あ る集 団 の 以前 の集 団 が既 に述 べ た話 題 あ る集 団 の 回 答者 が述 べた 話 題 → 一 般 的 な 話 題 → 仕 事 に関 係 の あ る話 題 → 一般 的 な 話 題 → 仕 事 に関 係 の あ る話 題 →記 述 式 回答 →好 意 的 評 価(プ ラス 評 価) →否 定 的 評 価(マ イナ ス評 価) →記 述 式 回答 →好 意 的 評 価(プ ラ ス評 価) →否 定 的 評 価(マ イナ ス評 価) →記 述 式 回答 専好 意 的 評 価(プ ラ ス評 価) → 否定 的 評 価(マ イナ ス評 価) ・記 述 式 回答 →好 意 的 評 価(プ ラ ス評 価) ・否 定 的 評 価(マ イナ ス評 価) もち ろ ん 、 回 答 者 が サ ブ カ テ ゴ リー に 関 す る 質 問 に 回 答 して い な い場 合 、 サ ブ カ テ ゴ リー に つ い て の 質 問 は 表 示 さ れ て い な い 。 第 六 章:三 つ の 自 由 回 答 式 質 問 に お け る 外 国 人 と 日本 人 回 答 者 の 回 答 の 分 析(下)一 あ る仮 定 を 検 証 。 同 僚 か ら見 た 外 国 人 ・日本 人 の オ フ ィス ワー カ ー の表 象 ア ン ケ ー トの 中 の 第58問 、 第67問 、 そ して 第68問 とい う三 つ の 自由 回 答 式 質 問 に つ い て の 分 析 の 後 半 部 分 を扱 った の が 、 本 章 で あ る。 本 章 で は 上 記 三 つ の 自 由 回 答 式 質 問 か ら得 た 回 答 の 分 析 を 行 う。 本 章 で は こ の 分 析 か ら導 き 出す こ との で き る 仮 定 に つ い て 検 討 を 行 う。 第 一 の仮 定 と して は 、 外 国 で の 滞 在 期 間 が長 け れ ば 長 い 人 ほ ど、 文 化 の 受 容 が 容 易 とな る(仮 定1)。 この 仮 定1か ら、 次 の 仮 定 が 導 き 出 さ れ る 。 人 は 文 化 変 容 に積 極 的 に な れ ば な る ほ ど、 自分 自身 に つ い て も、 他 人 に つ い て も正 確 な評 価 や 判 断 が 出 来 な くな る(仮 定2)。 も う一 つ の 仮 定 は 、年 齢 が 低 け れ ば低 い ほ ど、他 者 に対 して オ ー プ ン で あ る(仮 定3)。 最 後 に 、 も っ と も打 ち 解 け た 関 係 は 外 国 人 女 性 と 日本 人 女 性 の 関 係 で あ り、 も っ と も う ま くい か な い 関 係 とは 外 国 人 男 性 と 日本 人 男 性 の 関 係 で あ る 、 とい うMarch(2000,pp.42・44) の 議 論 を 参 考 に 仮 定 を 立 て て み る。 最 後 の 仮 定 は 、 女 性 の 方 が 男 性 よ り も他 者 との 間 で 緊 張 の 少 な い関 係 を構 築 で き る(仮 定4)。 これ らの 仮 定 を最 初 か ら単 純 且 つ 明 快 に捉 え検 討 す る こ とは 困 難 で あ る と考 え られ る。 例 え ば 、 仮 定1を この ま ま考 え た 際 、 あ る 人 が 、 異 な る文 化 社 会 と接 す る 事 は 人 生 を 豊 か に す る た め の 経 験 で あ る と考 え て も、 そ れ は 人 に よ って 捉 え方 は異 な る。 他 者 とオ ー プ ソ に接 す る人 もい れ ば 、 そ う で な い 人 もい る。 例 え ば 、 日本 で の 滞 在 期 間 が長 い か ら とい っ て 、 外 国 人 は す っか り受 容 的 に な る だ ろ うか 。 滞 在 期 間 が 短 い人 と長 い 人 と を比 較 して 、 質 問 に 対 す る 回 答 に差 異 が 生 じ る だ ろ うか 。 自 国 か ら他 国 へ 赴 き、 どれ ほ どの期 問 異 な る文 化 圏 に 滞 在 す れ ば 、 そ の 国 の文 化 を受 容 す る と考 え られ る だ ろ うか 。

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仮 定2に 対 して は 、 例 え ばMilestein(2005,PP.271-218)の 、 異 な る 国 の 文 化 に 対 して 受 容 的 に な った 方 が 、 自 国 の 文 化 に つ い て も異 な る文 化 に 対 して も更 に深 い 理 解 が 出 来 る よ う にな り、 他 者 を も深 く理 解 出 来 る よ うに な る、 と い う意 見 が あ る。 これ に 関 連 し て 、 異 国 の 他 者 を よ り 深 く理 解 す る た め に は 、 どの く らい の 滞 在 期 間 が 必 要 とな るだ ろ うか 。 質 問 に対 す る 回 答 に 、 正 解 や 最 高 得 点 は あ る だ ろ うか 。 異 文 化 に 対 す る発 言 は よ り鋭 くな るの だ ろ うか 。 仮 定3に 関 して 、 著 者 は 人 生 経 験 の 少 な い若 者 よ り も人 生 経 験 の 長 い 人 の 方 が 他 者 に 対 して オ ー プ ン な の で は な い か 、 と考 え る 。 著 者 の 見 解 が 正 しい の か 、 仮 定3の 方 が 正 しい の か 、 さ らに 検 討 を行 う。 最 後 に、Marchの 研 究 を 基 に し た 仮 定4で あ る が 、 こ れ は あ くま で 一 対 一 の 、 個 人 と個 人 の 関 係 か ら論 じ られ た もの で あ る。 本 研 究 の 目的 は 、 個 人 間 の 関 係 を説 明 す るの で は な く、 も っ と人 人 数 の 集 団 に お け る関 係 性 を論 じ る こ とで あ る。 先 述 した 仮 定1か ら4に つ い て は 、 無 視 す る こ とが 出 来 な い 微 妙 な 差 異 も存 在 して い るた め 、 本 章 で は上 記 の 仮 定 を 更 に深 く検 討 す る 。 第6章 で の三 つ の 自由 回 答 式 質 問 の 分 析 の 後 に 、 仮 定 に つ い て の 結 果 を述 べ て い く。 仮 定1に よ っ て 、 外 国 で の 滞 在 期 間 が 長 け れ ば 長 い 人 ほ ど、 文 化 の 受 容 が 容 易 とな る とい う こ と は 、 特 に驚 くこ とで は な く、 正 しい と考 え られ る。 日本 滞 在 期 間 の 長 い 外 国 人 は 記 述 式 の 回 答 に 対 して評 価 な し とす る 傾 向 が あ り、 そ れ は 日本 人 の コ メ ン トの 仕 方 を 真 似 して い る よ う に も見 え る 。 日本 人 回 答 者 の 場 合 に は 、 外 国 の 滞 在 期 間 と関 係 な し、 とす る コ メ ン トが 多 い 。 外 国 人 回 答 者 の場 合 は 、第4と 第5の グ ル ー プ(日 本 で の 滞 在 期 間 が2年 ∼5年 や5年 以 上)が 最 も好 意 的 な 評 価(プ ラ ス評 価)を して い る。 日本 人 回 答 者 の 場 合 に は 、好 意 的 な 評 価(プ ラス 評 価)は 第2グ ル ー プ(外 国 で の 滞 在 期 間 が6ヵ 月 ま で)に 最 も多 く見 られ た 。 最 も多 く否 定 的 評 価 を示 した の は 日本 滞 在 期 間 が5年 以 上 の 外 国 人 回 答 者 や 外 国滞 在 期 間 が2年 ∼5年 の 日本 人 回 答 者 で あ っ た 。 仕 事 と関 係 が あ る コ メ ン トは 、 日本 滞 在 期 間2年 以 上 の 外 国人 回 答 者(グ ル ー プ 第4と 第5)や 外 国滞 在 期 間6 ヵ月 ま で の 日本 人 回 答者(グ ル ー プ2)か ら 多 く寄 せ られ た 。 ま た 、 日本 滞 在 期 間 が 長 くな る と と も に 外 国 人 回 答 者 の 回 答 の 中身 も濃 い もの とな っ て くる。 し か し、5年 以 上 の 日本 滞 在 期 間 の 回 答 者 か ら思 い が け ず 非 常 に希 薄 な コ メ ン トもあ った 。 日本 人 回 答 者 に 注 目す る と、 一 つ の 要 点 が 明 らか に な っ た 。 日本 人 回 答 者 の 回 答 を 見 る と、 一 番 短 い 外 国滞 在 期 間 の 人 か ら一 番 長 い 外 国 滞 在 期 間 の 人 ま で 外 国 語 や 外 国 文 化 に興 味 を持 っ て い る こ とが わ か る 。 仮 定1に 関 す る意 外 な考 察 は 、 日本 人 回 答 者 の 外 国滞 在 期 間 の長 さ が 回 答 に影 響 を与 え て い な い とい う こ と で あ る。 人 は文 化 変 容 に積 極 的 に な れ ば な るほ ど、 自分 自身 に つ い て も、 他 人 につ い て も正 確 な 評 価 や 判 断 が 出 来 な くな る とい う仮 定2に 関 す る検 討 か ら、 正 し くな い こ とが 明 らか に な っ た 。 実 際 に は そ

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の 逆 で あ る。 「特 殊 な 回 答 」 と い う カ テ ゴ リー に 答 え た 回 答 者 とは 別 に 、 外 国 人 回 答 者 た ち は 日本 文 化 につ い て も、 そ して職 場 と関 係 が あ る ・関 係 が な い 出 来 事 や 争 点 に つ い て も例 を挙 げ られ る し 批 判 的 な所 見 が で き る。 外 国 人 回 答 者 が 回 答 す る際 に 日本 風 の 評 価 な しの コ メ ン トを使 用 して も、 日本 人 か ら学 ぶ こ と に つ い て の 説 明 を求 め た 時 や 、 特 に 日本 人 の 真 似 を した くな い こ と に つ い て 聞 か れ る時 に は 、 評 価 な しの コ メ ソ トを止 め て 、 自 分 自身 の 意 見 を は っ き り述 べ る。 同 じ よ う に、 日 本 人 回 答 者 も外 国人 か ら学 ぶ こ とや 外 国 人 の 真 似 を した くな い 点 を 聞 か れ た 時 に は 、 自分 自身 の 意 見 を は っ き り述 べ る。 外 国 人 と 日本 人 の 回 答 の 違 い を探 す と、 日本 人 は 内容 が 抽 象 的 よ り、 具 体 的 な 話 とな って い る。 年 齢 が低 け れ ば 低 い ほ ど、 他 者 に 対 して オ ー プ ン で あ る とい う仮 定3に つ い て は 、 部 分 的 に正 し く、 部 分 的 に誤 りで あ る こ とが わ か っ た。 つ ま り、 日本 人 に 関 した 仮 定 は 、 人 生 経 験 の 長 い 人 の 方 が 文 化 の 異 な る 他 者 に 関 して オ ー プ ン で あ り、 特 に40代 以 上 の 人 が 文 化 の 違 い を 容 認 す る。 日本 人 回 答 者 の 中 で 最 も高 い 年 齢 層 で は 、 否 定 的 評 価(マ イナ ス 評 価)と して 何 も述 べ て い な い。 外 国 人 に つ い て は 、 明 確 な結 論 は 確 認 で きな い。 一 つ の 理 由 は 、 本 研 究 で 協 力 を 得 た 外 国 人 回 答 者 の 中 に あ る大 き な 文 化 的 な違 い で あ ろ う。 外 国人 回 答 者 た ち の 様 々 な 文 化 的 背 景 は 、 年 齢 の 影 響 の 検 討 に は 人 き な 障 害 とな っ た 。 女 性 の 方 が 男 性 よ り も他 者 との 間 で 緊 張 の 少 な い 関 係 を 構 築 で き る と い う仮 定4に つ い て 、 本 研 究 の 情 報 か ら結 論 は 明確 で あ る。 第 七 章:結 論 本 章 で は 、 第4章 ∼ 第6章 の 分 析 の す べ て の 結 果 を ま と め て い る 。 本 研 究 の 回 答 者 の114人 は 日 本 に あ る 日本 企 業9つ と外 国企 業35に 勤 め て い る。 そ の 企 業 の 業 種(国 籍 別)は 次 の 表 に 書 か れ て い る。 表2.回 答 を得た企業 とそ の業種* 企業 企業業種 米企業 中 国企 業 オ ラ ン ダ 企業 韓 国企業 仏企業 独企業 日本企 業 ス ウ ェ ー デ ン 企 業 計 算 2 1 1 3 2 7 1 2 6 1 19 4 1 1 6 1 1 1 3 7 3 6 9 8 2 2 10 1 1 Il 1 1 2 16 2 2 19計 算 1 2 1 4 4 7 1 16 4 2 9 1 44 *企 業業 種 を表 示 す る数 字 は表3に 説 明 さ れ て い る

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表2の 企 業 業 種 を 表 示 す る数 字 が 次 の表3に 説 明 され て い る。 表3.企 業 業 種 を表 示 す る数 字 の 説 明* 企業業種 を表示す る数字 2 3 4 6 7 8 IO 11 16 19 企業業種 鉱業 製造業 電 気 ・ガ ス ・熱 供 給 建設 卸 売 ・小売;車 販 売 及 びオ ー トバ イの 修 理 郵 送 ・倉庫 情報通信 金 融 ・保 険 教育 そ の 他 の サー ビ ス *国 際 連 合 の 統 計 よ りの 分類 第4章 ∼ 第6章 で 行 っ て い る統 計 的 や コ ン テ ソ ツ の 分 析 の 結 果 に 基 づ く最 も簡 潔 な 結 論 を述 べ る とす る と、 次 の とお りで あ る。2年 ∼5年 間 、 自分 の 文 化 ・社 会 と違 う文 化 ・社 会 に 住 ん だ経 験 の あ る 人 が ア ン ケ ー トの 質 問 に も っ と もオ ー プ ソ に回 答 す る傾 向 が あ る。 外 国 人 の 中 で 、 日本 文 化 ・ 社 会 に 最 も慣 れ て い るの は5年 間 以 上 過 ご した 人 で あ る。 一 方 で 、 外 国 に5年 間 以 上 住 ん で い た 日 本 人 は 外 国 人 の 考 え方 ・文 化 に 同 じ よ うに は 適 応 して い な い た め 、 この 傾 向 は 日本 人 、 外 国 人 の 双 方 で 共 有 さ れ る もの で は な い 。

論 文 審 査 結 果 の 要 旨

本 論 文 は 、 グ ロ ー バ ル 化 と人 口の 高 齢 化 の 中 で 、 労 働 力 と して 外 国 人 を受 け 入 れ る よ うに な っ た 日本 に お い て 、ホ ワ イ ト ・カ ラー 層 の 外 国 人 勤 労 者 と 日本 人 勤 労 者 が 一 つ の 職 場 で 働 い て い く上 で 、 相 互 に どの よ う に文 化 適 応 を 行 っ て い る か を 、 ア ン ケ ー ト調 査 を 用 い て 実 証 的 に 研 究 し、 多 文 化 的 職 場 の 利 点 を 明 らか に し、 問 題 点 解 決 の 手 が か りを 与 え よ う とす る もの で あ る。 本論 文 の 著 者 は 、 自 ら切 り開 い た様 々 な 方 法 に よ り多 数 の 日本 企 業 お よ び 在 日の 外 国 系 企 業 と接 触 し、 日本 企 業9社 と外 国 系 企 業35社 で 外 国 人 と共 に働 い て い る 日本 人65名 及 び 日本 人 と共 に 働 い て い る 外 国 人49名 に ア ン ケ ー ト調 査 を 行 っ た。 質 問 項 目は 、CPQと い わ れ る 各 人 の 文 化 的 傾 向 を 探 る既 成 の 質 問 と、 著 者 独 自の 質 問 の 多 岐 に わ た っ て お り、 選 択 式 回 答 と 自 由 記 述 式 回 答 の もの が あ る。 質 問 項 目は 、 パ イ ロ ッ ト調 査 に よ り、 精 度 が高 め られ て い る。 本 論 文 に お い て は 、 こ れ まで の 日本 文 化 論 の蓄 積 を ふ ま え、 日本 文 化 に 代 表 さ れ る集 団 主 義 文 化

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と欧 米 文 化 に代 表 さ れ る個 人 主 義 文 化 の 対 比 が 前 提 とさ れ て い る。 た だ し、 外 国 人 回 答 者 の 中 に は ア ジ ア 系 な どの 日本 文 化 に 相 対 的 に近 い文 化 的 背 景 を 持 つ 者 と欧 米 系 の 両 方 が い る た め 、 日本 人 と 外 国 人 を単 純 に 二 分 して検 討 した もの とは な らな か っ た。 文 化 的 区 分 に 関 して は 、 サ ソ プ ル 数 の 制 約 の 中 で は 、 十 分 検 討 さ れ て い る とい え る。 他 文 化 へ の 適 応 に 関 して は 、 外 国生 活 ・外 国 経 験 の 長 短 や 年 齢 の 違 い や 男 女 差 に よ る適 応 度 の 大 小 に 関 す る仮 説 が 立 て られ た が(外 国 生 活 等 が 長 い ほ ど適 応 度 が 高 い、 年 齢 が 若 い ほ ど適 応 度 が 高 い 、 女 性 の 方 が 適 応 度 が 高 い)、 こ の 中 で 、 一 義 的 に 実 証 さ れ た 仮 説 は 男 女 差 に よ る もの だ け で あ っ た。 日本 人 に お い て は 、 仮 説 に反 して 、 年 齢 が高 い ほ ど適 応 度 が 高 い とい う結 果 が 現 れ た 。 この 点 に 関 して は 、 世 代 と して の 特 微 な ど別 の 観 点 か ら も検 討 が必 要 で あ ろ う。 以 上 の よ うな 指 摘 は あ った もの の 、 本 論 文 は 、 費 用 ・時 間 等 の 制 約 の 中 で考 え られ る限 りの 手 段 を用 い て 、 最 大 限 の 調 査 を実 施 し、21世 紀 初 頭 の 日本 に お け る 日本 人 勤 労 者 と外 国 人 勤 労 者 の 相 互 関 係 を生 き生 き と描 き 出 した 独 創 的 な 研 究 で あ り、 多 文 化 共 生 社 会 と して の 日本 の 在 り方 を 示 す 重 要 な 貢 献 で あ る 。 この こ とは 、 著 者 が 自立 して 研 究 活 動 を 行 う に 必 要 な 高 度 の 研 究 能 力 と学 識 を 有 す る こ とを示 して い る。 よ っ て 、 本 論 文 は 、 博 士(国 際 文 化)の 学 位 論 文 と して 合 格 と認 め る 。

参照

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