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目 次 1 計 画 策 定 の 目 的 と 背 景 管 理 すべき 鳥 獣 の 種 類 計 画 の 期 間 管 理 が 行 われるべき 区 域 管

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第 1 期

石 川県 ニホンザ ル 管 理 計画

平 成 2 7年 5 月

石 川 県

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目 次

1 計画策定の目的と背景 -------------- 1 2 管理すべき鳥獣の種類 ------------- 2 3 計画の期間 ------------------ 2 4 管理が行われるべき区域 ------------ 2 5 管理の目標 ------------------ 3 (1)現状 ① 生息状況 ② 生息環境 ③ 農作物被害の状況 ④ 被害防止対策の状況 (2)管理の目標 6 管理の目標達成に向けた基本指針 -------- 14 (1)目標を達成するための施策の基本的考え方 (2)管理指針 7 管理のための具体的取り組み ---------- 17 (1)群れに対する対策 ① 群れの状況と評価 ② 群れ区分に応じた保護管理対策 ③ 具体的な保護管理の方法 (2)生息環境の保護及び整備の対策 8 その他管理のために必要な事項 --------- 22 (1)モニタリング等の調査研究 (2)計画の実施体制 (3)普及啓発等

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1 1 計 画 策 定 の 目 的 と 背 景 ニ ホ ン ザ ル は 我 が 国 の 固 有 種 で あ り 、 特 に 白 山 に 生 息 す る 個 体 群 は 豪 雪 地 に 生 息 す る ニ ホ ン ザ ル と し て 注 目 さ れ 、 継 続 的 な 調 査 研 究 と 保 護 が 図 ら れ て き た 。 し か し 、昭 和 50 年代 後 半 から 、白山 麓で ニ ホ ンザ ル によ る農 作 物 被害 が 発 生 す る よ う に な り 、「 有 害 鳥 獣 駆 除 制 度 」に よ り 、そ の 都 度 駆 除 申 請 を 行 う 形 で 追 い 払 い 等 が 行 わ れ て き た 。 ま た 、 当 時 は ニ ホ ン ザ ル の 生 息 状 況 の 把 握 や 被 害 の 要 因 に つ い て 十 分 検 討 さ れ る こ と が な か っ た こ と か ら 、 人 と 野 生 動 物 が 共 生 す る 方 策 を 具 体 化 し て い く た め の 科 学 的 、 計 画 的 な 保 護 管 理 を 進 め る 必 要 性 が 指 摘 さ れ て い た 。 県 で は 、 こ れ ら の 状 況 を 改 善 す る た め 、 ニ ホ ン ザ ル と ツ キ ノ ワ グ マ を 対 象 に 、 分 布 、 個 体 数 、 生 息 環 境 、 被 害 状 況 等 を 把 握 し 、 科 学 的 な 根 拠 に 基 づ い た 保 護 管 理 を 目 指 し て 、 任 意 計 画 と し て 「 石 川 県 野 生 動 物 保 護 管 理 計 画 」 を 策 定 し 、 平 成 12~13 年 度の 2 カ 年間 の 試行 を実 施 し た。 平 成 13 年度 に は 、鳥 獣 の 保護 及 び狩 猟の 適 正 化に 関 する 法律 (平 成 14 年 法 第 88 号 )に 基 づく「 石 川県 特 定鳥 獣保 護 管 理計 画 」(第1期 )を 策 定 し て 保 護 管 理 に 取 り 組 み 、 さ ら に 平 成 18 年 度 に は 、「 第 2期石 川 県 ニホ ン ザ ル 保 護 管 理 計 画 」 を 策 定 し 、 関 係 市 町 等 と 連 携 ・ 協 力 し て 保 護 管 理 の た め の 施 策 を 展 開 し て き た 。 平 成 24 年度 に は、農 作 物 被害 の 減少 や個 体 数 、群 れ 数の 増加 の 抑 制、 分 布 域 拡 大 の 抑 制 な ど 一 定 の 成 果 が 認 め ら れ た が 、 常 習 的 に 農 産 物 に 依 存 す る 群 れ が 見 ら れ る こ と や 、農 作 物 被 害 が 継 続 し て 発 生 し て い る こ と 、 個体数が漸増していることな ど か ら 、「 第 3 期 石 川 県 ニ ホ ン ザ ル 保 護 管 理 計 画 」 を 策 定 し 、 サ ル と 人 と の 共 生 の た め の 各 種 施 策 を 推 進 し て き た 。 平 成 26 年 、鳥 獣 保 護 法 が 改 正 さ れ 、鳥 獣 の 保 護 及 び 管 理 並 び に 狩 猟 の 適 正 化 に 関 す る 法 律 ( 平 成 27 年 5 月 29 日 施 行 予 定 ) に 名 称 変 更 す る と と も に 、従 来 の「 特 定 鳥 獣 保 護 管 理 計 画 」が「 第 一 種 特 定 鳥 獣 保 護 計 画 」 と 「 第 二 種 特 定 鳥 獣 管 理 計 画 」 に 区 分 さ れ た 。 本 県 に お い て は 、 ニ ホ ン ザ ル に よ る 農 作 物 被 害 の 発 生 、 分 布 域 の 拡 大 が み ら れ る こ と か ら 、 ニ ホ ン ザ ル を 管 理 す べ き 鳥 獣 と し 、「 第 1 期 石 川 県 ニ ホ ン ザ ル 管 理 計 画 」を 策 定 し 、 サ ル と 人 と の 適 切 な 関 係 の 構 築 を 推 進 す る 。

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2 保 護 管 理 す べ き 鳥 獣 の 種 類

ニ ホ ン ザ ル ( Macaca fuscata fuscata)

3 計 画 の 期 間 平 成 27 年 5 月 29 日 か ら 平 成 29 年 3 月 31 日 上 位 計 画 で あ る 第 11 次 鳥 獣 保 護 管 理 事 業 計 画 の 計 画 期 間 に 合 わ せ る が 、 期 間 内 で あ っ て も 特 定 鳥 獣 の 生 息 状 況 等 に 大 き な 変 動 が 生 じ た 場 合 は 、 必 要 に 応 じ て 計 画 の 改 定 等 を 検 討 す る も の と す る 。 4 保 護 管 理 が 行 わ れ る べ き 区 域 下記の市町を対象地域とする。 市町 名 所管 す る農林 総 合 事務 所 名 小 松 市 南 加 賀 農 林 総 合 事 務 所 白山市 石 川 農 林 総 合 事 務 所 金 沢 市 県 央 農 林 総 合 事 務 所

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3 5 管理の目標 (1)現状 ① 生息状況 ア 現在の分布と生息個体数 平成 23 年(2011 年)2月現在、ニホンザルの群れは白山市の手取川流域 を中心に 28 群約 1,100 頭が、金沢市南部犀川源流部に 2 群約 100 頭が生息 し、約30 頭のハナレザルを含めて合計 30 群約 1,200 頭が生息しているもの と見られる。(図1) イ 生息個体数の変遷 大正 12 年(1923 年)に東北帝国大学の長谷部言人博士により、全国のニホ ンザルの生息分布のアンケート調査が実施され、石川県内のニホンザルの分 布は、現在の白山市の白山麓(旧石川郡)で12 か所、現在の金沢市で2か所 の合計14 か所であった。(三戸 1989) その後調査が実施されることはなかったが、昭和41 年(1966 年)から 44 年 (1969 年)までの4年間、白山スーパー林道の開設計画を契機に、自然保護の ための現況調査の一環として日本自然保護協会中部支部白山学術調査団によ る調査が実施され、旧尾口村と旧吉野谷村の尾添川流域に8群と瀬波川流域 に3群の合計11 群 300~350 頭の生息が確認された。大正 12 年に生息が確 図1 石川県のニホンザルの群れの分布 ○:H19~22 (分布の拡大地区)

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4 認されていた金沢市二俣や旧尾口村東二口アシガ谷、旧鳥越村左礫、鳶巣ノ 山、旧白峰村桑島地内小嵐谷、大嵐谷、百合谷などの地域では、昭和44 年当 時すでに群れが消滅していた。これは、この地域で盛んに行われてきた焼き 畑出作り耕作における農作物被害に対する有害捕獲や狩猟により、多くの個 体が捕獲されてきた結果で(水野 1990)、白山のニホンザルの分布が最も狭め られ、個体数も減少していた時期である。 昭和44 年(1969 年)からは、石川県の委託による白山自然保護調査研究会ニ ホンザル班の調査や白山自然保護センターにおいて、群れ数、個体数につい ての継続的な調査が実施された。平成2年(1990 年)までは、10~14 群、3百 数十頭と大きな変化はなかったが、平成2年から平成6年までの4年間に、 群れ数が1.7 倍の 24 群に、個体数では 2.7 倍の 1,000 頭に急激に増加した。 その後、平成19 年頃までは大きな変化はなかったが、平成 20 年頃から漸増 し、平成23 年2月現在 30 群約 1,200 頭となっている。(図2) 図2 ニホンザルの群れ数と個体数、捕獲数の変遷 11 12 14 17 24 28 28 21 25 30 30 30 30 31 30 30 30 30 30 325 363 700 1000 1018981 1018 103110419749861015 1079 11421177 1246 0 0 0 7 0 0 0 0 0 0 94 22 14 33 31 31 105 53 71 21 54 55 63 20 104 51 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1,000 1,100 1,200 1,300 1,400 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 S44 (1969) S55 (1980) H2 (1990) H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10H11H12 (2000) H13H14H15H16H17 (2005) H18H19H20H21H22 (2010) H23H24H25 頭 群 群数 個体数 捕獲数 第1期計画 第2期計画 第3期計画

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5 ウ ニ ホ ン ザ ル の 分 布 拡 大 昭 和 41 年 (1966 年) か ら 現在 ま での 分布 の 拡 大の 様 子を 見る と 、 手 取 川 の 支 流 尾 添 川 流 域 と 瀬 波 川 流 域 か ら 下 流 に 向 か っ て 分 布 を 広 げ 、 平 成 元 年 (1989 年 )に は 手 取川 を渡 り 、 ま た、 一 部の群 れ は さ ら に 大 日 川 流 域 に 分 布 を 拡 大 し て い っ た 。分 布 を 拡 大 し は じ め た 当 時 は 、冬 期 間 だ け に 見 ら れ た 集 落 周 辺 で の 分 布 も 、数 年 の う ち に そ の う ち の 一 部 が 分 裂 し て 、集 落 周 辺 に 定 着 す る よ う に な り 、こ れ に 伴 い 個 体 数 と 群 れ 数 が 一 気 に 増 加 し た 。 特 に 、尾 添 川 上 流 に 生 息 し て い た タ イ コ 群 は 昭 和 46 年 (1971 年 )に タ イ コ A 、 B の 2 群 に 分 裂 し 、 そ の う ち の タ イ コ A 群 は 昭 和 53 年 (1978 年 )12 月 に は一 里 野 温泉 ス キー 場付 近 ま で移 動 し、 さら に 昭 和 60 年 (1985 年 )に は瀬 戸 集 落に ま で移 動し た 。 その 後 も増 加と 分 裂 を 繰 り 返 し 、 現 在 で は こ の 群 れ か ら 派 生 し た 群 れ は 、13 群 合計 約 500 頭 以 上 と こ の 地 域 に 生 息 す る 群 れ の 40% 以 上 を占 め てい る。 タ イ コ B 群 に つ い て は 、現 在 4 群 に 分 か れ て い る が 、す べ て 保 全 群 と な っ て い る 。 ま た 、瀬 波 川 流 域 に 生 息 し て い た ク ロ ダ ニ 群 は 瀬 波 川 を 離 れ 、手 取 川 本 流 の 農 耕 地 に 進 出 し 、 個 体 数 を 増 加 さ せ 、 平 成 13 年 (2001 年 ) に は 150 頭 以 上の 巨大 な 群 れに な った 。 その後、この群れも分裂し、現在はクロダニA、B、Cの3群120 頭前後 となっている。また、これらの下流の集落周辺に進出した群れは、農作物を 選択的に食べ、被害をもたらしているが、特に晩秋から冬の集落内外に残さ れたカキなどの果実類が群れを誘因し、定着化を促進しているものと考えら れる。また、栄養的にも優れた農作物を摂取することにより、体力が向上す るとともに、冬季の餌条件の悪い季節でも、体力の消耗が少なく、その分翌 春の繁殖も順調に進むなどの要因が加わったことから、個体数が急激に増加 していったものと考えられる。 金 沢 市 南 部 犀 川 源 流 部 に 生 息 す る ア ゲ ハ ラ 群 に つ い て は 、近 年 、同 市 寺 津 町 周 辺 で 徐 々 に 目 撃 情 報 が 増 え て お り 、行 動 域 が 拡 大 傾 向 に あ る と 考 え ら れ る 。ま た 、平 成 22 年か ら平 成 23 年に か けては 、同市 湯 涌 町 や 市 瀬 町 で 農 作 物 被 害 と 目 撃 記 録 が あ り 、対 策 が 必 要 と な っ て い る 。 一 方 、 山 に 残 っ た 群 れ は 、 夏 に は 標 高 1,000m 以上 の ブナ 林帯 で 過 ご し 、秋 か ら 晩 秋 に か け て 次 第 に 低 標 高 地 に 移 動 し 、冬 期 間 に は 雪 崩 が 発 生 す る谷間の急傾斜地(600m)に降りてくるという従来からの生活パ ターンを守っている。このため、個体数には増減が無く、分布域の大きな変 動も見られない。(図3)

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7 エ 群 れ 外 の オ ス グ ル ー プ 及 び ハ ナ レ ザ ル の 状 況 メ ス は 、 基 本 的 に 一 生 群 れ に 留 ま っ て い る の に 対 し 、 オ ス は 、 5 、 6 歳 以 上 の 年 齢 に 達 す る と 群 れ を 離 れ 、1 頭 あ る い は 2 、3 頭 以 上 の グ ル ー プ を 作 っ て 、群 れ の 動 き と は 関 係 な く 気 ま ま に 生 活 す る よ う に な る 。多 く は 群 れ の い る 地 域 や そ の 周 辺 に い る が 、中 に は 、金 沢 市 北 部 、野 々 市 市 、白 山 市 北 部 の 市 街 地 、加 賀 の 平 野 部 、遠 く 能 登 半 島 へ 出 掛 け て い く も の も い る 。このようなハナレザルは、白山麓周辺では 30 頭程度が確認されている。 オ 季節移動の状況 白山のニホンザルの群れの多くが季節移動をすることは、1960 年代からの 調査で分かっており、夏にブナ帯から亜高山帯に上がり、秋に麓に下りてく ることを確認している。 発信器を付けたタイコA4-2群の例をみると、2006 年9月から 2009 年 12 月の行動域が図4のようであったことが明らかになった。 冬期には、標高 200m~300m の集落近くで過ごしているが、夏期には 2,160m の亜高山帯の森林に移動していた。標高差 1,960m を、直線距離で最 大約23km 移動し、3年間を合わせた最大の行動域の面積は約 73 ㎢となった。 春から夏の季節移動は、雪解けと共に芽吹く柔らかい木の芽や草など、秋 から冬の季節移動は、ブナや柿などのニホンザルの主要な食物の分布状況と 一致していると考えられる。 図4 タイコA4-2群の 2006 年9月~2009 年 12 月の行動域 白山 手取川ダム 0 6km

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8 ② 生 息 環 境 ニ ホ ン ザ ル の 群 れ の 生 息 は 白 山 市 南 部 、一 部 白 山 市 に 接 す る 小 松 市 東 部 及 び 白 山 市 の 直 海 谷 に 接 す る 金 沢 市 南 部 犀 川 上 流 地 域 に 限 ら れ て い る 。 特 に ニ ホ ン ザ ル の 生 息 の 多 い 白 山 市 南 部 の 旧 1 町 5 村 の 人 口 は 約 30,000 人 で あ る 。 ま た 、 ニ ホ ン ザ ル に よ る 被 害 地 と な っ て い る 旧 吉 野 谷 、旧 尾 口 、旧 鳥 越 、旧 河 内 の 4 村 の人 口 は 約 6,000 人で、高 齢 化 と 過 疎 化 が 進 行 し て き た 地 域 で あ る 。 旧 1 町 5 村 の 森 林 の ほ と ん ど は 天 然 林 で 、多 く は 、集 落 の 近 く で は コ ナ ラ 、ミ ズ ナ ラ 、奥 山 は ブ ナ を 主 と す る 広 葉 樹 天 然 林 と な っ て い る 。 ③ 農 作 物 被 害 の 状 況 昭 和 50 年代 の ニホン ザ ル によ る 被害 の多 く は、ハ ナレ ザ ルに よ る も の が ほ と ん ど で 、群 れ に よ る 被 害 は 秋 の 一 時 期 だ け に 限 ら れ て い た 。 地 域 も 旧 吉 野 谷 村 と 旧 尾 口 村 の 最 奥 の 集 落 地 の 畑 で 、被 害 作 物 も 大 根 と 豆 類 に 限 ら れ て い た が 、現 在 で は 、白 山 市 の 吉 野 谷 支 所 、鳥 越 支 所 、 尾 口 支 所 、河 内 支 所 の 4 支 所 管 内 に 拡 大 し て い る 。ま た 、金 沢 市 の 南 部 で も ニ ホ ン ザ ル に よ る 被 害 の 発 生 が 拡 大 し て い る 。(図5) 図5 ニホンザルによる農作物被害の推移(市町別) H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 計 4,913 3,291 3,189 2,618 1,510 2,380 1,472 2,091 5,288 1,455 638 2,350 1,367 1,583 763 白山市 4,913 3,291 3,189 2,618 1,510 2,380 1,472 1,841 5,288 1,355 438 1,300 77 521 125 金沢市 0 0 0 0 0 0 0 250 0 100 200 1,050 1,290 1,062 638 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 (千円)

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9 平 成 11 年 か ら 25 年ま で の 被害 を 受け た農 作 物 の品 目 別の 被害 面 積 及 び 被 害 金 額 は 図 6 の と お り で あ る 。 被害が報告されている農作物は、野菜、稲が多く、その他果樹、いも類、 豆類、雑穀等と多種類に及び、作付けされているほとんどの農作物に対し年 間を通して被害が発生している。 被害面積は、平成17 年に大幅に減少してからは、平成 19 年を除き、低い 水準で推移している。 被害金額は、平成17 年までは減少傾向が見られたが、平成 18 年以降は、 増減を繰り返している。 なお、数字で表れるもののほかに、再三に渡り収穫間際に被害を受けるこ とによる心理的な打撃は大きく、そのために生産意欲を喪失し、農耕放棄に つながるような事例も考慮する必要がある。

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10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 計 1,260 1,384 1,376 670 1,090 1,730 91 111 529 166 44 137 56 151 28 稲 800 600 608 17 600 721 2 20 0 51 1 81 1 35 1 豆類 22 24 28 27 28 24 7 2 10 7 2 0 1 6 1 雑穀 0 0 0 0 0 10 0 13 0 0 0 5 0 0 2 果樹 7 16 35 207 128 58 3 1 15 64 6 7 8 34 1 野菜 373 735 693 411 321 916 69 62 440 36 8 43 45 75 20 いも類 58 9 12 8 13 1 10 13 44 7 27 1 1 1 3 その他 0 0 1 0 0 0 0 1 20 2 0 0 0 0 0 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 (a) 被害面積 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 計 4,913 3,291 3,189 2,618 1,510 2,380 1,472 2,091 5,288 1,455 638 2,350 1,367 1,586 763 稲 800 150 215 203 125 280 16 173 0 652 18 1,048 6 393 6 豆類 264 300 333 261 231 202 126 236 820 52 12 3 1 208 1 雑穀 0 0 0 0 1 4 0 0 0 0 0 10 0 0 46 果樹 117 496 222 1,019 179 303 7 35 0 184 64 27 25 153 1 野菜 3,052 2,025 2,176 1,048 877 1,560 926 1,135 2,947 433 215 1,248 1,328 826 663 いも類 659 270 213 87 74 6 396 498 1,241 123 329 15 7 6 46 その他 21 50 30 0 24 24 0 14 280 11 0 0 0 0 0 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 (千円) 被害金額 図6 ニホンザルによる農作物被害の推移(品目別) 資料:石川県農林水産部農業安全課

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11 ④ 被害防止対策の状況 ア 市 、 地 域 に よ る 被 害 対 策 ニ ホ ン ザ ル の 生 息 地 で あ る 白 山 市 南 部 の 旧 1 町 5 村 で は 、 平 成 11 年 に 白 山 麓 鳥 獣 害 対 策 協 議 会 を 設 置 し 、 平 成 12 年度 か ら被 害 を 軽 減 す る た め の 方 策 と し て 、被 害 地 と な っ て い る 旧 4 村 で 約 6 名 の 動 向 調 査 員 を 配 置 し 、 さ ら に 平 成 16 年 度 から は 協 議会 に 1名 の鳥 獣 害 防 止 対 策 専 門 員 を 配 置 し 、住 民 に 対 す る 防 護 ネ ッ ト の 張 り 方 や 追 い 払 い の 方 法 の 指 導 等 を 行 っ て き た 。 市 町 村 合 併 後 は 白 山 市 全 体 で 、 ま た 平 成 23 年 度 には 野 々市 市 も 加 わ り 広 域 的 な 協 議 会 と し て 被 害 防 止 対 策 を 進 め て い る 。 ま た 、常 に 加 害 群 の 動 向 を 捉 え る こ と が で き る よ う 、加 害 群 1 群 あ た り 2 頭 の メ ス 成 獣 に 発 信 器 を つ け 、接 近 通 報 シ ス テ ム を 導 入 し て き た 。調 査 員 は そ れ ぞ れ 1 台ず つ 受信 機 を持 ち 加 害群 の 追跡 を行 い 、加 害 群 が 集 落 に 接 近 し て い る 場 合 に 、集 落 関 係 者 に 連 絡 し 、サ ル の 追 い 払 い 等 の 被 害 防 除 に あ た っ て い る 。ま た 、一 部 の 集 落 で は 、受 信 機 を 設 置 し て い る 。 こ れ ま で に 41 頭 に発 信器 を 装 着し て 放獣 して き て お り 、 現 在 加 害 群 の う ち 9 群 13 頭 を追 跡し て い る。 な お、 発信 器 装 着 等 作 業 に つ い て は 白 山 自 然 保 護 セ ン タ ー が 、麻 酔 、計 測 等 の 作 業 を 分 担 し て い る 。 そ の ほ か 、白 山 市 で は 住 民 自 ら が 追 い 払 い を 実 施 で き る よ う 、威 嚇 用 に 動 物 駆 逐 用 煙 火 や 爆 竹 を 支 給 す る と と も に 、普 及 用 広 報 紙 を 各 戸 に 配 布 し 、サ ル の 動 向 、防 除 ネ ッ ト な ど 防 護 柵 の 張 り 方 、被 害 に 遭 わ な い 作 物 の 配 置 方 法 な ど の サ ル 対 策 を 住 民 あ げ て 実 施 で き る よ う 支 援 を 行 っ て い る 。 イ 捕 獲 等 の 状 況 被 害 が 出 始 め た 昭 和 50 年 (1975 年 )当時 は 、防 除方 法 に確立 さ れ た 手 法 が 無 く 、超 音 波 や 捕 獲 隊 に よ る 威 嚇 発 砲 な ど が 試 み ら れ 、追 い 払 い が 実 施 さ れ て き た 。 昭 和 58 年(1983 年)に は 旧 吉野 谷 村 で初 め て「 捕獲 許 可 申請 」が 出 さ れ 、平 成 3 年(1991 年 )に初 め て7頭 が 捕 獲さ れ た。その 後 、平 成 9 ~10 年( 1997~1998 年)ご ろか ら 旧鳥 越 村 と旧 河 内村 に被 害 が 拡 大 し た 。 ニ ホ ン ザ ル に 対 す る 対 応 は 、 平 成 9 年(1997 年 )ま で は 有 害 鳥 獣 捕 獲 を 許 可 し た 上 で 、銃 に よ る 追 い 払 い を 主 に 実 施 し て お り 、捕 殺 は 少 な か っ た 。し か し 、農 作 物 被 害 が 増 加 し た た め 、翌 年 に は 方 針 を 転 換 し 、 銃 に よ る 殺 処 分 が 実 施 さ れ る よ う に な り 、 平 成 12 年 (2000 年 ) か ら は 、 任 意 計 画 の 範 囲 内 で の 有 害 鳥 獣 捕 獲 が 実 施 さ れ た 。 特 定 鳥 獣 保 護 管 理 計 画 が 実 施 さ れ た 平 成 14 年 度 から は 、個 体 数 調 整 捕 獲 は 、 白 山 麓 鳥 獣 害 対 策 協 議 会 が 、 ま た 、 平 成 17 年 (2005 年 ) の 合 併 後 は 白 山 市 が 追 い 払 い や 捕 獲 対 策 を 実 施 し て い る 。 平 成 14 年 か ら 18 年 の 5年 間で の 捕 獲数 は 、291 頭 、 平 成 19 年か ら 23 年 の 5 年 間 の 捕 獲 数 は 213 頭 で あ った 。

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12 第 1 期 、第 2 期の 特定 鳥 獣 保護 管 理計 画で は 、捕 獲に あ たって 、群 れの加害レベルにより捕獲数に強弱を持たせるとともに、群れの個体数の増 加と分裂による群れ数の増加を抑える目的で、メスの成獣に対して捕獲圧を 強めてきた。 第 1 期 計 画 で の 捕 殺 数 は 250 頭 で 、そ れ以 前 の 5年 間 の 163 頭 と 比 較 し て 増 加 し て い る 。こ れ は 、常 習 的 に 農 作 物 被 害 を 与 え る 群 れ の 繁 殖 抑 制 を 主 目 的 と し た こ と や 、被 害 を 与 え る 個 体 を 集 中 的 に 捕 獲 し た こ と に よ る も の で あ る 。 第2期計画の平成23 年度までの5年間の捕殺数は 191 頭と、第1期の平均 値と比較すると若干減少している。 第 3 期 計 画 の 平 成 25 年 度 ま で の 2 年 間 の 捕 殺 数 は 144 頭 で あ り 、 第 1 期 、第 2 期 の 平 均 と 比 較 し て 増 加 し て お り 、被 害 軽 減 の た め 加 害 群 の 管 理 を 進 め て き た こ と に よ る も の で あ る 。 ま た 、単 独 で 集 落 周 辺 を 徘 徊 し 、農 地 に 継 続 的 に 被 害 を 与 え る 雄 の ハ ナ レ ザ ル に つ い て も 捕 獲 を 実 施 し て い る 。(図7、表1) 94 22 14 33 19 25 93 51 62 21 45 51 57 17 99 45 12 6 12 2 9 9 4 6 3 5 6 0 94 22 14 33 31 31 105 53 71 21 54 55 63 20 104 51 0 20 40 60 80 100 120 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 頭 発信器放獣 捕獲(駆除) 図7 ニホンザルの捕獲数

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13 (2)管理の目標 平成 14 年度から 18 年度の第1期特定鳥獣保護管理計画により、農作物被 害の減少や分布拡大の抑制など一定の成果があったと認められる一方で、今な お常習的に農産物に依存する群れの分布の拡大が認められ、農作物被害が起き ている。 石川県に生息するニホンザルは、人間生活とは全く関係なく、1年を通して 山中で生活を完結させ、人間に被害を与えることなく自然の中で暮らしている 「健全な」群れと、人間生活の領域に進出し、農作物を専ら食することで人と の軋轢を増やし、「被害を与える」群れに分けられる。 一方、これまでに行ったニホンザル被害についての住民アンケート調査の結 果では、住民の多くは「被害がなければ、サルがいてもかまわない」と回答し ており、白山の自然遺産の構成員の一つであるニホンザルを後世に継承するこ とは現代を生きる我々の使命であるとの認識のもと、被害を無くすることを保 護管理の目標としてきた。このため、第2期の保護管理目標を、「被害を軽減 するため加害群を適切に管理する」並びに「健全なニホンザルの生息環境を保 全し、個体群を維持する」こととしているが、金沢市域においても被害拡大が あるなど、計画対象地域における保護管理の目標達成に至っていない。そのた め、第3期においても、引き続き、第2期の保護管理目標を掲げ、目標の達成 を目指してきた。 第1期石川県ニホンザル管理計画においては、長期的な観点から、地域個体 群を安定的に維持しつつ、管理を図ることにより、人とサルとの適切な関係を 構築するという目標の達成を目指すこととする。 表1 ニホンザルの捕獲数の内訳 区分 H9 H10 H11 H12 H13 H9~H13 捕獲(駆除) 0 94 22 14 33 163 発信器放獣 0 0 0 0 0 0 計 0 94 22 14 33 163 区分 H14 H15 H16 H17 H18 H14~H18 捕獲(駆除) 19 25 93 51 62 250 発信器放獣 12 6 12 2 9 41 計 31 31 105 53 71 291 区分 H19 H20 H21 H22 H23 H19~H23 捕獲(駆除) 21 45 51 57 17 191 発信器放獣 0 9 4 6 3 22 計 21 54 55 63 20 213 区分 H24 H25 H24~H25 H9~H25 捕獲(駆除) 99 45 144 748 発信器放獣 5 6 11 74 計 104 51 155 822

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14 6 管理の目標達成に向けた基本指針 (1)目標を達成するための施策の基本的考え方 本来、白山麓に生息するニホンザルの行動様式は、夏季には標高の高いブナ 林を中心とした地域で暮らし、冬には多雪と食糧不足に耐えるため、少しでも 暖かく餌となる食物の多い低標高地に季節移動して冬を過ごし、春になると木 や草の芽生を追って山の斜面を登るのを繰り返す季節移動が基本であった。 しかし、現在では、人間生活とは全く関係なく、1年を通して山中で生活を 完結させ、人間に被害を与えることなく暮らしている「健全な」群れと、人間 生活の領域まで進出し、農作物を食することで「被害を与える」群れに分けら れる。 また、被害を与える群れを分類すると、季節移動し、限られた季節に被害を 与えている群れと、通年的に集落の農地周辺を主な行動域として農地に強く依 存している群れが見られる。さらに、その中間段階の群れも見られることから、 これらの行動様式を十分観察した上で、群れの状況に応じた保護管理を行う必 要がある。 すなわち、季節移動し、限られた季節に被害を与えている群れに対しては、 被害発生時期に追い払いをかけることにより、本来の田畑の食物に依存しない 群れに戻すことが求められる。一方、より依存性の強い群れに対しては、群れ の中の田畑や集落周辺の果樹等への執着の強い個体を除去するなど、群れ全体 が集落や田畑への執着をなくす方策が必要である。さらに、田畑や集落周辺の 果樹等が一年を通じて群れの遊動域と重なるような集落依存型の群れに対し ては、学習困難な場合が多く、強度の捕獲圧をかけ、最終的には群れを除去す る方向での対応も考慮に入れる必要がある。 このため、本計画では被害発生状況を調査解析することにより、群れ毎に加 害レベルを判定し、(2)管理指針に基づいて、適切な管理対策を実施するこ とにする。

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15 (2)管理指針 目 標 ・健全なニホンザルの生息環境を保全し、個体群を維持する。 ・被害を軽減するため加害群を適切に管理する。 方 策 ・地域個体群における群れを、保全群、調整群A、調整群B、排除 群に区分して保護管理を行う。 ・良好な生息地の環境の保全と適正な捕獲数管理による個体群維持 に努める。 具体的 な方策 1 季節移動を行ない、一時期に被害を発生させている群れについ ては、接近通報システム等による追い払いを徹底する。 2 捕獲・個体数調整 ・作物生育期の6~11 月の間、加害する群れについては、表2の「加 害レベル判定基準」及び表3の「群れの加害レベルと被害対策の 選定基準」にしたがって対応するものとする。 ・個体数調整にあたっては、繁殖数を抑制するため、主に成獣雌及 び亜成獣雌を捕獲するものとする。単独で被害を与える雄(いわ ゆるハナレザル)については積極的に捕獲する。 ・個体数調整を実施しようとする市町は、事前に農林総合事務所と 協議する。(*) 報 告 捕獲調書及び標本を提出する。 *農林総合事務所は、白山自然保護センターと事前調整をする

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16 表2 加害レベル判定基準 レベル 出没場所 人に対する反応 農林作物等の被害状況 1 ○人家や農地に近い 山林内で頻繁に見か ける。 ○人の姿を見ると逃げ る。 ○林縁部に自生するカキやクリを 食べる。 ○林縁部にあるホダ場のシイタケ を食べる 2 ○数頭が、まれに収穫 後の農地に一時的に 出没する。 ○人の姿を見ると逃げ る。 ○林縁部に自生するカキやクリを 食べる。 ○林縁部にあるホダ場のシイタケ を食べる。 ○造林木の食害をおこす。 3 ○群れ全体が、農地に 季節的に出没する。 ○数頭が、まれに人家 の庭先にも出没する。 ○人の姿を見ても逃げ ない場合がある。 ○人や車を見ても、追 い払わない限り逃げな い。 ○主に畔の草本類や落ち穂を食べ る。 ○庭先のカキなどの果実を食べ る。 ○果樹、野菜、稲などの農作物を 食べる。 4 ○群れ全体が、農地に ほとんど通年出没す る。 ○人家に侵入する。 ○人を威嚇する行動を 見せる。 ○果樹、野菜、稲などの農作物を 食べる。 ○人の肩などに乗り、持ち物を奪 う。 ○かみついたりひっかくなど人身 被害をおこす。 表3 群れの加害レベルと被害対策の選定基準 区分 加害 レベル 被害防除 個体の捕獲 環境整備 保全群 0 ○人慣れを起こさないよ う、餌付けしない ○生息地の保全 調整群A 1 ○追い払い ○しいたけのホダ場は 囲うか、人家周辺に移動 ○林縁部に自生するカキ やクリの除去または早期 収穫 ○農地周辺のヤブの除去 2 ○追い払い ○簡易柵の設置 ○加害個体の捕獲 ○ 造 林 地 で の 被 害 は、群れの捕獲も検 討 ○放棄した農作物の除去 ○取り残しの農作物の除 去 ○庭の果樹の除去または 早期収穫 調整群B 3 ○組織的な追い払い ○重要な農作物または 大規模な農地は、恒久柵 の設置 ○加害個体の捕獲 排除群 4 ○群れの捕獲 特定鳥獣保護管理技術マニュアルを参考に作成

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17 7 管 理 の た め の 具 体 的 取 り 組 み ( 1 ) 群 れ に 対 す る 対 策 ① 群 れ の 状 況 と 評 価 県 内 に 生 息 す る 30 群 に つ いて 、前掲 表2 の 加 害レ ベ ル判 定基 準 に 基 づ き 、 農 地 等 へ の 出 没 状 況 、 人 に 対 す る 反 応 、 農 作 物 被 害 等 の 発 生 状 況 や 群 れ の 個 体 数 の 増 加 率 、 季 節 移 動 の 状 況 な ど を 総 合 的 に 評 価 し 、 一 つ 一 つ の 群 れ に つ い て レ ベ ル を 判 定 し た 結 果 、 現 状 は 次 の と お り で あ る 。(図8、表4) ・加 害 レ ベ ル 0 の 群 れ は 、14 群 約 470 頭 で 、県内 に 生息 する ニ ホ ンザ ル の 約 半 数 は 、 今 も 人 と の 関 わ り が ほ と ん ど な い 良 好 な 状 態 で 、 健 全 に 生 息 し て い る 。 ・ 加 害 レ ベ ル 1 ~ 2 の 群 れ は 、 9 群 約 470 頭 で 、あ る 程度季 節 移 動が 見 ら れ 、 一 時 的 に 被 害 を 与 え る 群 れ で あ る 。 ・ 加 害 レ ベ ル 3 程 度 の 群 れ は 、 7 群 約 280 頭 で 、集 落 周辺に 定 着 しあ ま り 季 節 移 動 を せ ず 、 農 作 物 へ の 依 存 度 が 高 い 状 態 が 見 ら れ る 。 ・ 加 害 レ ベ ル 4 と 明 確 に 判 断 で き る 群 れ は 、 現 状 で は 認 め ら れ な い 。 ・ こ の 他 に ハ ナ レ ザ ル と し て 群 れ に 属 さ ず 、 群 れ の 周 辺 や 県 下 各 地 に 出 没 す る も の が 30 頭 程 度 存在 す ると みら れ る 。 ② 群 れ 区 分 に 応 じ た 管 理 対 策 保 全 群 、 調 整 群 A 、 調 整 群 B 、 排 除 群 の 区 分 毎 の 管 理 の あ り 方 は 次 の と お り と す る 。( 表 3 ) ア 保 全 群 良 好 な 状 態 に あ る 群 れ で あ り 、今 後 と も 、良 好 な 生 息 環 境 の 維 持 に 努 め る と と も に 、観 光 客 等 の エ サ や り な ど で 人 慣 れ が 進 ま な い よ う に 留 意 す る 。 イ 調 整 群 A 一 定 の 対 応 策 を 講 じ れ ば 、良 好 な 関 係 に 戻 せ る 可 能 性 の あ る 状 態 で あ る 。季 節 移 動 し 、限 ら れ た 季 節 に 被 害 を 与 え て い る 群 れ に 対 し て は 、 被 害 発 生 時 期 に 追 い 払 い を か け る こ と に よ り 、本 来 の 田 畑 の 食 物 に 依 存 し な い 群 れ に 戻 す こ と を 原 則 と す る 。 ウ 調 整 群 B 加 害 レ ベ ル 1 ~ 2 の 状 態 へ 誘 導 で き る か 、レ ベ ル 4 の 状 態 へ 移 行 し て い く か 、現 状 で は 判 断 で き な い 状 態 の も の も あ り 、レ ベ ル 4 へ の 移 行 が 懸 念 さ れ る 群 れ に 対 し て は 、組 織 的 な 追 い 払 い を 強 化 す る と と も に 、群 れ の 中 の 田 畑 や 集 落 周 辺 の 果 樹 等 へ の 執 着 の 強 い 個 体 を 除 去 す る な ど 、群 れ 全 体 が 集 落 や 田 畑 へ の 執 着 を な く す 方 策 な ど 、的 確 な 捕 獲 管 理 も あ わ せ て 実 施 し て い く こ と に よ り 、レ ベ ル 4 へ 移 行 し て い く こ と な く 、レ ベ ル 2 へ 段 階 的に 移 行す るよ う 努 める 。ま た 、被 害 防 止 柵 の 設 置 な ど 、 効 果 的 な 対 策 を 継 続 し て い く も の と す る 。

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18 エ 排 除 群 い か な る 対 策 を 講 じ よ う と 、人 と 良 好 な 関 係 に 戻 す こ と は ほ と ん ど 不 可 能 と 考 え ら れ る 状 態 の 群 れ で あ る が 、現 状 で は 、明 確 に こ の 区 分 と 判 定 さ れ る 群 れ は な い と 考 え ら れ る 。田 畑 や 集 落 周 辺 が 1 年 を 通 じ て 遊 動 域 と 重 な る よ う な 集 落 依 存 型 の 群 れ に 対 し て は 、学 習 困 難 な 場 合 も あ り 、強度の捕獲圧をかけ最終的には群れを除去する方向での対応も考 慮するものとする。 オ ハ ナ レ ザ ル 新 た に 群 れ を 離 れ 、放 浪 す る 個 体 に つ い て は 被 害 が 一 過 性 で 、繰 り 返 し 被 害 が 発 生 す る こ と は な い と 考 え ら れ る が 、 一 か 所 に 定 着 し て 、 継 続 的 に 被 害 を 与 え る 個 体 に つ い て は 、積 極 的 に 捕 獲 す る も の と す る 。 な お 、 第 2 期 計 画 策 定 時 よ り 個 体 数 が 約 200 頭 増加 し てい る こ と や 、金 沢 市 で も 被 害 が 新 た な 地 域 に 拡 大 し た こ と に 鑑 み 、群 れ の 加 害 レ ベ ル 等 に 応 じ て 、 個 体 数 調 整 の 強 化 を 図 る も の と す る 。 ③ 具体的な管理の方法 ア 捕 獲 ・ 繁 殖 数 を 抑 制 す る た め に 、 主 に 成 獣 メ ス お よ び 亜 成 獣 メ ス を 捕 獲 す る 。 ・ 単 独 で 被 害 を 与 え る ハ ナ レ ザ ル に つ い て は 、積 極 的 に 捕 獲 す る 。 ・ 個 体 数 調 整 を 実 施 し よ う と す る 市 町 は 、 事 前 に 農 林 総 合 事 務 所 と 協 議 す る 。 イ 追 い 払 い 接近 通報 シ ス テム に よる 効率 的 な 追い 払 いを 推進 す る 。

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19 表4 石川県のニホンザルの群れの状況と評価 (H19-23) 吉野谷 クニミA 0 中 不明 季節移動 吉野谷 ガラダニ 0 中 不明 季節移動 金沢 タカサブロウ 0 中 不明 季節移動 吉野谷 カムリ A1 0 大 ↑ 季節移動 吉野谷 カムリ A2 0 中 → 季節移動 吉野谷 カムリA3 0 小 不明 季節移動 吉野谷 カムリA4 0 不明 季節移動 消滅 吉野谷 カムリ C 0 中 不明 季節移動 吉野谷 カムリ E 0 中 ↑ 季節移動 吉野谷 カムリ F 0 小 ↓ 季節移動 吉野谷 カムリ? G 季節移動 消滅 吉野谷・尾口 タイコ B1 0 中 → 季節移動 吉野谷・尾口 タイコB2-1 0 中 ↑ 季節移動 吉野谷・尾口 タイコB2-2 0 中 ↓ 季節移動 吉野谷・尾口 タイコB2-2SG 0 小 → 尾口 タイコA3 0 小 ↓ 季節移動 吉野谷・尾口 タイコA2-1 2 大 ↑ 季節移動 吉野谷・尾口 タイコA2ー3 1 大 ↑ 季節移動 尾口・鳥越 タイコA4-2 1-2 中 → 季節移動 河内・吉野谷 クロダニC 1 小 不明 季節移動 金沢 アゲハラ 1 中 不明 季節移動 吉野谷・尾口 カムリ D 2 大 ↑ 季節移動 吉野谷 オダニA 1 大 ↑ 季節移動 吉野谷 オダニB ? 中 ↑ 季節移動 吉野谷 オダニCorカムリD-SG ? 小 不明 季節移動 鳥越 アテ ? 消滅 吉野谷・鳥越 タイコA1-2 3-4 中 → 定着 吉野谷 タイコA1ー1a 2-3 中 → 定着 H19年度調整群Aより 吉野谷・鳥越 タイコA1ー1b 3 中 不明 定着 尾口・鳥越 タイコA4ー1 3 小 ↓ 定着 吉野谷・尾口 タイコA2ー2 3 中 → 定着 H22年度調整群Aより 河内・吉野谷 クロダニA 3 大 ↑ 定着 河内・吉野谷 クロダニB 3 中 ↑ 定着 ハナレオス 30 合計 1,246  ・個体数、群れ数は、平成23年2月滝澤らの調査による。    オダニ(雄谷)、クニミ(国見山)、クロダニ(黒谷)、ガラダニ(ガラ谷)、    アテ(阿手)、タカサブロウ(高三郎山)、アゲハラ(揚原山)  ・本評価は平成23年3月現在のものである。  ・個体数レベルは次の通り 小:10-25頭,中:26-50頭 大:51-100頭、特大:101頭  ・個体数の増減は次の通り ↑:増加,→:変化なし ↓:減少  ・群れの名称の由来:カムリ(冬瓜山(カムリ山)、タイコ(太鼓壁という岩壁の名前)、 備 考 保全群 14群 約470頭 調整群A 9群 約470頭 調整群B 7群 約280頭 区分 生息地域 (旧市町村) 群れの名称 加害 レベル 個体数レベル (H23.・2月) 個体数 の増減 移動

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図8 各群れの分布(冬期)と評価 (カタカナは群れの名称を示す)

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21 (2)生息環境の保護及び整備の対策 次の地域区分により、適切な生息環境の保全を図るものとする。 ア 保 護 地 域 : 白 山 鳥 獣 保 護 区 を 準 用 ・ 保 護 地 域 は 、 本 来 の 野 生 動 物 の 生 息 地 と し て 厳 正 に 保 護 す る 地 域 で あ る 。 ・ 人 間 活 動 を 一 定 の 範 囲 で 規 制 す る 。 ・自 然 環 境 の 原 始 性 を 維 持 、更 新 で き る よ う に 配 慮 し 、野 生 動 物 の 良 好 な 生 息 環 境 の 維 持 に 努 め る 。 イ 緩 衝 地 域 : 保 護 地 域 と 排 除 地 域 を 除 く 地 域 ・ 緩 衝 地 域 は 、 野 生 動 物 と 人 間 の 活 動 が 混 在 す る 地 域 で あ る 。 ・ 野 生 動 物 の 生 息 地 の 保 全 を 目 的 と す る 地 域 で は 現 状 の 維 持 に 努 め る 。 ・ 被 害 地 、 農 地 、 集 落 地 に 近 い 部 分 で は 、 こ れ ら の 地 域 に ニ ホ ン ザ ル が 容 易 に 侵 入 す る こ と を 抑 制 す る た め に 、 市 町 等 と 連 携 協 力 し な が ら 間 伐 や 除 伐 な ど の 里 山 林 整 備 に 取 り 組 む も の と す る 。 ウ 排 除 地 域 : 集 落 及 び そ の 周 辺 の 農 地 ・ 排 除 地 域 は 野 生 動 物 を 排 除 し 、 円 滑 な 人 間 活 動 を 確 保 す る 地 域 で あ る 。 ・ 農 林 業 被 害 等 を 抑 制 で き る 地 域 づ く り の た め 、 県 、 市 町 、 関 係 団 体 、 地 域 住 民 等 が 連 携 協 力 し て 、 下 記 の 事 項 等 の 推 進 に 努 め る 。 ○ 隠 れ 場 と な る 休 耕 田 や 耕 作 放 棄 地 等 の 荒 廃 地 の 整 備 に 努 め る 。 ○ ニ ホ ン ザ ル を 農 地 や 集 落 に 誘 引 す る カ キ 等 の 果 樹 の 早 期 の 摘 果 や 収 穫 放 棄 野 菜 、農 業 廃 棄 物 な ど の 誘 因 食 物 の 管 理 を 徹 底 す る 。 ○ 農 地 等 へ の 侵 入 防 止 の た め の 電 気 柵 等 の 設 置 な ど の 方 策 を 講 じ る 。

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22 8 その他管理のために必要な事項 (1)モニタリング等の調査研究 県 は 、 市 町 等 と 連 携 協 力 し て 、 効 果 測 定 や 経 過 追 跡 の た め モ ニ タ リ ン グ を 行 い 、 そ の 結 果 を フ ィ ー ド バ ッ ク し て 、 検 討 を 行 い 、 随 時 、 計 画 の 見 直 し を 行 う も の と す る 。 調 査 内 容:個 体 群 動 態 調 査( 個 体 数 、分 布 、繁 殖 状 況 、栄 養 状 況 な ど ) 被 害 調 査 ( 被 害 の 種 類 、 量 、 季 節 な ど ) (2)計画の実施体制 県は保護管理対策の結果を正確に評価し、次年度あるいは次期計画にフィード バックしていくために、図9の保護管理体制を持続させるものとする。 (3)普及啓発等 県 は 、 市 町 等 と 連 携 協 力 し て 、 本 計 画 を 推 進 す る た め に 、 ニ ホ ン ザ ル の 生 息 状 況 、 被 害 状 況 、 本 計 画 の 趣 旨 ・ 内 容 な ど の 普 及 啓 発 に 努 め る 。 白 山 国 立 公 園 や 白 山 一 里 野 県 立 自 然 公 園 、手 取・獅 子 吼 県 立 自 然 公 園 、 ま た 、 白 山 ス ー パ ー 林 道 等 で の 餌 づ け 防 止 キ ャ ン ペ ー ン や 、 い し か わ 自 然 学 校 等 と 連 携 し た 普 及 啓 発 、 ボ ラ ン テ ィ ア 等 に よ る カ キ も ぎ や ヤ ブ 刈 り 等 の 保 全 活 動 等 の 充 実 強 化 を 図 る 。 また 、保護 管 理に関 す る 技術 、知識 の習 得 を 目的 に 、関 係機 関 に 対す る 研 修 を 実 施 す る も の と す る 。 (県)案の公表・関係機関協議 検討会・公聴会等の開催 公表 県・関係市町 ・ワーキング会議の開催 ・被害対策協議会開催 ・普及啓発と研修会の実施 白山自然保護センター 林業試験場等 (調査の経過・結果の発表) 石川県特定鳥獣管理計画 検討会の開催 管理計画案の作成 管理計画の策定(確定) 管理対策の実施 モニタリングの実施 環境審議会への諮問・答申 評価検討会の実施 フ ィ ー ド バ ッ ク 図9 計画の実施体制

参照

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