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Ⅰ. 感染症発生時の外来診療の流れ 外来には 診断がついていない潜在的な感染症患者が来院することで感染症の二次感染を起こす危険性が高い そのため 感染症を疑った診察医 看護師 医療関係者は 標準予防策 感染経路別予防策を遵守し 速やかに優先診療 ( トリアージ ) することが病院感染防止上重要である

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日

9 章 感染症発生時の対応

Ⅰ. 感染症発生時の外来診療の流れ 1. 外来トリアージ対象感染症 2. 対象感染症を担当する診療科 3. 対象感染症疑い患者が急激に増加した場合、あるいは感染対策上重要な感染症 が発生した場合 4. 救急外来処置室の運用 5. 受診の流れに沿った各窓口・各部署の対応 6. 患者の動線 7. 感染症患者の対応と届出 Ⅱ. アウトブレイク発生時の対応 1. アウトブレイク発生時の対応 2. アウトブレイク発生時の具体的対応 3. 重大な感染事例発生時の具体的対応 Ⅲ. 高病原性鳥インフルエンザ A(H5N1)について 1. 疫学 2. 診療について Ⅳ. 新型インフルエンザ対策 1. 流行のレベルに応じた具体的な対応(レベルⅣ・Ⅴ・Ⅵ) 1) レベルⅣ(フェーズ 4、5、6:海外においてヒトからヒトへ感染発生時) 2) 新型インフルエンザの感染予防策 3) レベルⅤ(フェーズ 4 :国内においてヒトからヒトへ感染発生時) レベルⅥ(フェーズ 4,5:県内において感染発生時) Ⅴ. SARS 発生時の対応 1. 疫学 2. 病院感染対策 SARS 可能性例等に対する病院感染対策の流れ Ⅵ. 食中毒 1. 食中毒とは 2. 食中毒発生時の対応 3. 二次感染予防策

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 Ⅰ. 感染症発生時の外来診療の流れ 外来には、診断がついていない潜在的な感染症患者が来院することで感染症の二次 感染を起こす危険性が高い。そのため、感染症を疑った診察医・看護師・医療関係者 は、標準予防策、感染経路別予防策を遵守し、速やかに優先診療(トリアージ)すること が病院感染防止上重要である。 下記にあげる疾患については、原則として救急外来除染室、あるいは診察室 3 で診 療を行う。(④⑤に関しては、必ず除染室を使用する。) 1. 外来トリアージ対象感染症 ① 結核(空気感染) (詳細は、「第 5 章結核対策」参照) ② 麻疹(空気感染ときに飛沫感染) (詳細は、「第 6 章 3.麻疹」参照) ③ 水痘(空気感染・接触感染) (詳細は、「第 6 章 2.水痘・帯状疱疹」参照) ④ 鳥(H5N1)・新型インフルエンザ (空気感染・飛沫感染・接触感染) ⑤ 重症急性呼吸器症候群:SARS (空気感染・飛沫感染・接触感染) 下記の疾患は、他の外来患者と接触する可能性がある場合に救急外来診察室3 で診療 を行う。 流行性耳下腺炎(飛沫感染) (詳細は、「第 6 章 5.流行性耳下腺炎」参照) 風疹(飛沫感染) (詳細は、「第 6 章 4.風疹」参照) 百日咳(飛沫感染) (詳細は、「第 7 章 4.百日咳」参照) 感染性胃腸炎(経口感染:接触感染) (詳細は、「第 6 章 8.ノロウイルス」参照) 2. 対象感染症を担当する診療科 (1) 時間内の新来患者は、連絡を受けた外来看護師長が、症状に応じて担当診療科 に振り分ける。 (2) 時間外の新来患者は、救命救急センターが診療を行う。 (3) 再来患者については、担当医が対象感染症を疑った場合、当該診療科が診療を 行う。 (4) 小児患者で対象感染症の可能性を疑った場合は、原則として小児科が診療を行 う。(小児患者は小児科隔離室、あるいは診察室 3 で診療を行う) (5) 感染対策室への報告  SARS および鳥・新型インフルエンザ: 疑った時点で、速やかに感染制御部感染対策室(内線:3058)へ報告する。  結核、麻疹、水痘、流行性耳下腺炎、風疹、百日咳、感染性胃腸炎: 時間内受診は当日感染制御部感染対策室へ報告する。 時間外受診の場合は、緊急の場合を除き、平日時間内(翌診療日)に感染制御 部感染対策室へ報告する。  時間外に感染制御部感染対策室に緊急報告が必要な場合:

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 当直師長から感染対策看護師へ連絡を行う。(小児科患者の報告については、 集団発生や感染対策上重要な感染症の場合を除き小児科定点報告書等で代用 する。) (6) 感染対策室から、サーベイランス結果の報告を病院各部署へ E メールで行う。 (不定期) 3. 対象感染症疑い患者が急激に増加した場合、あるいは感染対策上重要な感染症が発生 した場合 (1) 感染対策室が現場での情報確認を行うと同時に初期の伝播防止のための対策 (飛沫感染・空気感染対策)を実施する。 (2) 感染対策室長は情報確認の結果を病院長へ報告し、必要に応じて臨時の感染対 策室室員会議、および感染制御委員会を開催し、対応(診療体制、終息までの対 策など)を検討する。 (3) 外来診療体制については、病院長と感染対策室長にて担当診療科を決定し、協 力を依頼する。 (4) 感染対策室は、医学部総務課と協力し、感染制御委員会で審議・決定された事 項に関して、速やかにE メール、文書および電話連絡で医学部・病院職員へ通 知を行う。 4. 受診の流れに沿った各窓口・各部署の対応 (1) マスクの着用 空気・飛沫感染症疑いの患者には、サージカルマスクを着用させる。 職員は、空気感染症疑い患者の対応時は N95 微粒子マスク、飛沫感染症疑 い患者の対応時は、サージカルマスクを着用する。 (2) 感染症疑い患者の早期確認と待機  外来看護師長または担当看護師: 対象感染症が疑われる場合、患者に説明を行い救急外来診察室 3、あるいは 除染室に患者を誘導する。担当診療科に連絡し、診療の調整を行う。  外来受付窓口: 対象感染症が疑われると判断した場合は、外来看護師長に相談する。  各診療科外来窓口: 受付カウンターで受診の目的を確認の際、対象疾患の疑いがないか確認する。 疑いがある場合は、医師または看護師に連絡する。医師が問診後患者に一時的 な隔離待機、マスクの着用など院内伝播防止について説明する。 (3) 診療場所と優先診療 すでに患者が各診療科外来で診察を受け始めている場合など、患者を移動さ せることの方が病原菌を拡散する可能性がある場合の診察の続行は、各診療科 外来で判断する。 感染症疑い患者の診療は、出来る限り優先的に対応する。

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 (4) 検査 血液検査や培養検査を行う場合は、救急外来診察室 3、あるいは除染室で採 血、検体採取を行い看護師が検査部に搬送する。 X 線検査は、放射線部に連絡し、できるだけポータブル撮影を行う。 放射線部での検査が必要な場合は、連絡後に検査体制が整ってから患者を移 送する。(一般患者と接触させない配慮が必要である。) (5) 料金精算と支払い 対象感染症が否定されれば通常どおりに行う。 否定できない場合は、債務確認書に記入し、後日振込用紙を患者に送付する。 (6) 薬剤の受理(処方は原則として院内処方とする。) 対象感染症が否定されれば通常どおり行う。 否定できない場合は、担当した診療科外来で対応する。調剤室に連絡し、優 先的に調剤終了後、看護師が薬剤部で薬を受け取り患者に渡す。 (7) 救急外来診察室 3、あるいは除染室使用後の環境整備 感染症 環境清掃 結核 1 時間以上外換気後に日常清掃 麻疹 1 時間以上外換気後に日常清掃 水痘 1 時間以上外換気後、手の触れた箇所を消毒用エタノール で拭き、その後日常清掃 風疹 日常清掃 流行性耳下腺炎 日常清掃 インフルエンザ 日常清掃 百日咳 日常清掃 感染性胃腸炎 0.1%次亜塩素酸ナトリウムで清拭 SARS 1 時間以上外換気後、手の触れた箇所を消毒用エタノール で拭き、その後日常清掃 5. 患者の動線 救急外来診察室3、あるいは除染室で診療が必要な患者が発生した場合は、外来看護師 または医事課職員が感染症(疑い)患者誘導経路(図 1)に従い患者を誘導する。 その際患者にはサージカルマスクを着用させ、誘導者は空気感染のおそれがある場合 はN95 微粒子マスク、飛沫感染の場合はサージカルマスクを着用する。 以下の診療は、前述の「5) 受診の流れに沿った各窓口・各部署の対応」に準ずる。 6. 感染症患者の対応と届出 (1) 結核の場合は、原則として結核病床を有する専門治療施設(高松医療センター、 香川県立中央病院)に転院とする。 (2) 結核患者で当院における専門的治療が必要な場合は、南病棟の陰圧個室(493、 593、693、783)、西・東病棟の場合は簡易式陰圧装置を取り付けた陰圧個室 に隔離する。

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 (3) SARS(疑い)患者、および鳥インフルエンザ(疑い)患者が発生した場合は、直ち に東讃保健福祉事務所(電話:0879-29-8261)へ報告を行い、対応に関する指示を 受ける。患者の受け入れ先が決定し搬送の体制が整うまでの間、患者を救急外 来除染室で待機させる。 SARS 入院対応医療機関 医療機関名 住所 電話番号 香川県立白鳥病院 東かがわ市松原963 0879-25-4154 三豊総合病院 三豊郡豊浜町姫浜708 0875-52-3366 香川県での感染症に関する公的相談窓口(平日 8 時 30 分~17 時 15 分) 機関名 電話番号 東讃保健福祉事務所 0879-29-8261 小豆総合事務所 0879-62-1373 中讃保健福祉事務所 0877-24-9962 西讃保健福祉事務所 0875-25-2052 高松市保健所 087-839-2871 香川県庁薬務感染症対策課 087-832-3303 (4) 麻疹、水痘の患者で入院診療が必要な場合は、原則として陰圧個室、あるいは 簡易式陰圧装置を取り付けた陰圧個室に隔離する。麻疹、水痘抗体陽性の職員 が対応する。 (5) 上記以外の感染症で、飛沫感染および接触感染で周囲を汚染する可能性がある 場合は、原則として個室隔離を行う。 (6) 対応の詳細については、感染制御部感染対策室と協議して実施する。

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 感染症に対する診療体制の流れ(周知システム) 時間内 時間外 《診療の実際》 外来患者 医事課外来係 (内線:3021) 外来看護師長 診療科担当医 感染対策室(内線:3058) 感染症などの情報収集 病院長へ報告 病院長と感染対策室にて担当診療科の決定 病院長不在時は診療担当副病院長 各診療科長 各医局・部門 各病棟医長 各外来医長 看護部長 検査部、放射線部 薬剤部長 事務部長 等々 時間外当直 (内線:3031) 救命救急センター 診療担当医  感染対策室に緊急報告が必要な場合は、 当直師長から感染対策看護師へ連絡  緊急性がない場合は、平日時間内へ報告 報告 サーベイランス結果の報告 感染対策室からのE メール(不定期) 感染症などの情報収集 病院長 各診療科長 各病棟医長 各外来医長 看護部長 薬剤部長 事務部長 検査部 放射線部 等々 特定感染症の急激な増加、病院として の対応が必要と判断した場合 東 讃 保 健 福 祉 事 務 所 へ報告 病院長命による協力体制の指示 来院時の対処方法 少数の場合→受診された診療科で担当 大量の場合→病院長と感染制御部長と相談 の上、診療協力を求める 救急外来処置室の使用:患者誘導・待機・診察 検査依頼(放射線部内線:3605、検査部内線:3670) 薬剤処方(薬剤部内線:3075) 料金精算(外来係内線:3024) 債務確認し、後日振込み

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 感染症(疑い)患者誘導経路(図 1) 平成26 年 10 月 1 日 患者誘導ルート① 患者誘導ルート② 玄関ホール 渡 り 廊 下 ( ホ ス ピ タ ル ス ト リ ー ト ) 救命救急センター 医事課 受付 受付(内科) 内科外来 正 面 玄 関 出 入 り 口 がん 相談室 ライトコート 受付(脳神経、 整形、形成) 患者 患者 地域 連携室 治験管理 センター 地域 連 携室 階段 WC 薬剤部 CT 室 放射線部 血管 受付X-TV 室 撮影室 予約室 乳房・頭部 撮影室 CT 待合 腫瘍 センター 救 急 外 来 出 入 り 口 EV ホール 業務用EV ホール 除染室 前室 診 察 室 2 診 察 室 1 診 察 室 3 時 間 外 受 付 外 側 入 り 口 スタッフエリア 他の患者との接触が少ないと思われる方を誘導者が選択する 家族控え室 放射線部(PET)

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 Ⅱ. アウトブレイク(集団発生)発生時の対応 アウトブレイクとは、一定期間内に特定の細菌や耐性菌の分離率が上昇、またそれ らによる感染症の患者が通常の症例数を超え複数発生した状態のことである。アウト ブレイクを防止するためには、日常的なサーベイランス、感染症報告体制を充実させ、 早期に拡大の制御を実施することが重要である。 病棟等においてアウトブレイクが発生した場合は速やかに感染制御部感染対策室 へ報告を行う。 1. アウトブレイク調査開始の基準 (1) 薬剤耐性菌は下記基準を満たした場合に、院内伝播の有無やアウトブレイクの 可能性を検討する。 MRSA 単一部署における新規検出数(持ち込みを除く) (コアグラーゼ型、GM、TSST、ET のタイプを参考にする) ESBL 産生菌 単一部署における新規検出数(持ち込みを除く) ≧3 例/月 メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌、MDRP、VRE、多剤耐 性アシネトバクター 等 新規に検出された場合 (2) 上記以外の菌(クロストリジウム・ディフィシル、セラチア、食中毒起因菌、ア スペルギルス、レジオネラ等)では、感染制御部感染対策室が調査の必要性を判 断、院内伝播の有無やアウトブレイクの可能性を検討する。 (3) ウイルス(流行性角結膜炎、麻疹、水痘、流行性耳下腺線、インフルエンザ、肝 炎ウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス等)や原虫(疥癬、シラミ)では、病棟・ 診療科からの情報に基づき、調査の必要性を判断し院内伝播の有無やアウトブ レイクの可能性を検討する。 (4) 重大な病院感染事例(死亡例、大規模な集団感染に繋がる可能性が高い病原体、 公衆衛生学的に問題となる病原体、等)の場合、院内伝播の有無やアウトブレイ クの可能性を検討する。 ★アウトブレイクを疑う基準★ 医政指発0617 第 1 号平成 23 年 6 月 17 日「医療機関における病院感染対策について」参照 一例目の発見から4 週間以内に、同一病棟において新規に同一菌種による感 染症の発病症例(以下の 4 菌種は保菌者を含む:バンコマイシン耐性黄色ブドウ 球菌(VRSA)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多 剤耐性アシネトバクターが計3 例以上特定された場合、あるいは、同一機関内 で同一菌株と思われる感染症の発病症例(抗菌薬感受性パターンが類似した症 例等)(上記の 4 菌種は保菌者を含む)が計3 例以上特定された場合を基本とする こと。

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 2. アウトブレイク発生時の具体的対応 (1) 感染制御部感染対策室は、診療情報の収集、および感染経路に関する疫学的調 査を開始する。診療科・病棟に調査開始時点で報告し、病原体に応じた適切な 感染対策の徹底を指導する。 (2) 調査内容を感染対策室室員会議、および感染制御委員会へ報告し、必要に応じ て遺伝子タイピング(PFGE)による感染経路の推定を行う。 (3) 疫学的にアウトブレイクが疑われると判断した場合、感染対策室室員会議、お よび感染制御委員会を開催し、1 週間以内を目安にアウトブレイクに対する感 染対策を策定かつ実施する。 (4) アウトブレイクが収束するまで、感染制御部感染対策室による監視を継続する。 (5) 疫学的調査結果、タイピング結果、監視培養を随時診療科・病棟にフィードバ ックし、感染対策上の強化項目を伝え遵守を勧告する。 (6) 調査の中で汚染された器具および環境等感染対策上の不備が発見された場合 は、速やかに対策を実施するとともに、他部署の病院職員(診療科長・病棟医長・ 外来医長・看護師長・リンクドクター・リンクナース等)への周知を行い、感染 対策の徹底を依頼し再発防止に努める。 (7) 感染予防策遵守に必要と考えられる環境整備など、予算的な措置を必要とする 対応は感染対策室で検討を行う。 3. 重大な感染事例発生時の具体的対応 (1) 疫学調査の開始と同時に診療科・病棟への報告を行い、病原体に応じた適切な 感染予防策の徹底を指導するとともに今後の対応について協議する。 (2) 感染事例の発生が判明後、病院長へ報告し、速やかに臨時の感染対策室室員会 議および感染制御委員会を開催し、事実関係の確認および対応を協議する。 (3) 症例定義を行い、診療記録の調査などによる積極的症例探査を実施する。 (4) 必要に応じて入院患者および医療従事者の保菌調査ないし、血清検査、遺伝子 検査等による無症候性感染者の発見および隔離等の感染予防策の徹底を行う。 (5) アウトブレイクの早期収束に向けて、診療制限(新規入院の制限、感染リスクの 高まる医療行為の中止・延期、他)の必要性を検討協議し、適宜実施する。 (6) 香川県東讃保健福祉事務所、および関係機関への報告を行う。 ★報告の目安★ 医政指発0617 第 1 号平成 23 年 6 月 17 日「医療機関における病院感染対策について」参照 医療機関内での病院感染対策を講じた後、同一医療機関内で同一菌種による 感染症の発病症例(VRSA、MDRP、VRE、多剤耐性アシネトバクターは保菌者 を含む)が多数にのぼる場合(目安として10 名以上)、または当該病院感染事案と の因果関係が否定できない死亡者が確認された場合は、管轄する保健所に速や かへ報告すること。また、このような場合に至らない時点においても、医療機 関の判断の下、必要に応じて保健所に連絡・相談することが望ましい。

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 (7) 新規発生がないことおよび適切な感染対策が実施出来ていることを確認後、診 療制限の解除を行う。 (8) アウトブレイク収束後も一定期間重点的にサーベイランスを継続し、予防策の 評価を行う。 (9) アウトブレイクに対する感染対策を実施した後、新たな感染症の発病症例を認 めた場合、院内での感染対策に不備がある可能性が有ると判断し、速やかに地 域のネットワークに参加する医療機関等の専門家に感染拡大の防止に向けた 支援を依頼する。 例)県内の場合→香川県立中央病院、高松赤十字病院、高松市民病院 国立大学病院感染対策協議会へ改善支援依頼 《重大な感染事例発生時の対応》 重大なアウトブレイク発生 アウトブレイク収束 新規事例がないことを確認、再発防止策の評価、環境整備 症例を定義し、積極的な症例 探査を行う 疫学調査開始 症例を定義し、積極的な症 例探査を行う 東讃保健福祉事務所 関係機関への報告 感染対策室・感染制御委員会による発 生要因の解明と今後の対応を検討 感染予防策の実施、 および発生状況の確認 感染予防対策の見直し・徹底 診療(入院)制限の実施 患者・家族への説明 調査に基づく感染予防対策の 見直し、徹底、再発防止策 診療(入院)制限の解除 【感染対策室の対応】 【診療科・病棟の対応】

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 Ⅲ. 高病原性鳥インフルエンザ A(H5N1)について 1. 疫学  病原体は、H5N1 亜型鳥インフルエンザウイルスである。感染動物は、鳥類(主に 水禽類)である。潜伏期は、1~10 日(多くは 2~5 日)である。  ヒトは、感染した鳥やその排泄物、死体、臓器などに濃厚に接触することによって まれに感染することがあるが、日本では発症した人は確認されていない。  世界での発生状況: 鳥類では東南アジアを中心に、中東・ヨーロッパ・アフリカの一部地域などで感 染が確認され、ヒトでの症例はアジア、中東、アフリカを中心へ報告されている。 最新の発生情報:http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/en/引用 2. 診療について (1) 問診 ① インフルエンザを疑う患者には、来院時早期にサージカルマスクを着用させ る。 ② インフルエンザ症状のある患者に、以下の 2 点を確認する。  鶏や他の鳥、あるいは体液・排泄物などとの接触歴やそれに関連した職業  最近の海外渡航歴(鳥インフルエンザの流行地域への海外渡航の有無)および

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 現地での鳥や体液、あるいはインフルエンザ症状を有する人との接触歴 (2) 診察 ① 外来診療で高病原性鳥インフルエンザを疑う場合は、救急外来処置室へ患者 を誘導し、診察を行う。(当章「感染症発生時の外来診療の流れ」を参照) ② PPE(個人防護具)の使用 診察の際は、感染症対策防護キット(N95 微粒子マスク、未滅菌手袋、ゴー グル、ディスポガウン)を適切に着用する。 1. ガウンを着る。 2. 帽子をかぶる(毛髪部分と耳は帽子で覆う)。 3. N95 微粒子マスクを装着する。 4. ゴーグルを装着する。 5. 手袋を着用する。 6. N95 マスクのフィットチェックを行なう。 ③ 診断 疑いのある患者にはインフルエンザ診断キットによる迅速診断を行う。 ④ 診察後 PPE を外し廃棄後、手指衛生を行う。 PPE は、診察室で脱いでから外に出る。 汚染したPPE をつけたまま周囲環境に接触しない。 《迅速診断キットによる診断》 (3) 届出 「鳥インフルエンザ発生届」に記入し、感染制御部感染対策室へ提出する。 感染対策室より東讃保健福祉事務所へ連絡する。(TEL:0879-29-8261) 入院が必要な場合は、収容施設の指示を保健所から受ける。 ・鳥インフルエンザに感染している又はその 疑いのある(家禽、水禽)や体液・排泄物等 との接触歴を有する者。 ・鳥インフルエンザが流行している地域へ旅 行し、鳥(家禽、水禽)や体液・排泄物等と の濃厚な接触歴を有する者。 鳥インフルエンザ 否定 A 型陽性 いいえ A 型 B 型ともに陰性 陽性 B 型陽性 鳥インフルエンザ疑い例として診療 はい

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 (4) 患者管理 当院で治療が必要と判断された場合は、入院管理とする。入院に際しては空 気・飛沫・接触感染防止対策を実施する。 ① 入院病室  原則として個室に入室する。  入室前に、簡易式陰圧装置を設置し、病室を陰圧室にする。 ② PPE の使用  医療従事者は、入室時に N95 微粒子マスクを着用する。  飛沫に曝露する可能性があるため、未滅菌手袋、ディスポガウン、ゴーグル などを適切に使用する  汚染した PPE は使用後病室内で廃棄容器に廃棄し、手指衛生後退室する。 ③ 手指衛生  入室前後は手指衛生を徹底する。  一処置ごとに手指衛生を徹底する。 ④ 患者が検査等でやむを得ず病室外に出るときは、サージカルマスクを着用さ せる。 (5) 診療した医療従事者の予防内服 鳥インフルエンザ疑い例を診察した場合、診療時に接触した医療従事者は、 呼吸器内科医師と相談のうえ自己決定で、抗インフルエンザウイルス薬(タミフ ル○Rによる予防内服:1 日 1 回 1 錠を 7~10 日間)の内服を行う。抗インフルエ ンザウイルス薬(タミフル○R)は、感染対策室保管用を使用する。

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 Ⅳ. 新型インフルエンザ対策 医療機関の役割 新型インフルエンザ等による健康被害を最小限にとどめる観点から、医療機関は、新 型インフルエンザ等の発生前から、地域医療体制の確保のため、新型インフルエンザ等 患者を診療するための病院感染対策や必要となる医療資器材の確保等を推進することが 求められる。また、新型インフルエンザ等の発生時においても医療提供を確保するため、 新型インフルエンザ等患者の診療体制を含めた、診療継続計画の策定及び地域における 医療連携体制の整備を進めることが重要である。 1. 流行のレベルに応じた具体的な対応(レベルⅣ・Ⅴ・Ⅵ) 1) レベルⅣ(フェーズ 4、5、6:海外においてヒトからヒトへ感染発生時) 鳥インフルエンザウイルスが徐々にヒトの適応し、ヒト-ヒト感染も小規模ながら 見られるようになると、このウイルスは「新型インフルエンザ」と改称され、WHO のフェーズは 4 となる。さらにヒトへの適応が進み、効率よくヒト-ヒト感染が起こ るようになるとフェーズは5、6 と進む。このうち、フェーズ 4、5、6 は、まだ日本 国内では患者が発生しておらず、患者の早期発見とウイルスの封じ込めが求められる 時期である。 フェーズ4 以降、本疾患は、感染症法による「指定感染症」に政令指定され、二類 感染症相当の扱いとなり、入院診療においては感染症指定医療機関もしくは第一種感 染症指定医療機関に入院させることが原則となる。香川県には、第一種感染症指定医 療機関が設置されていないため、第二種感染症指定医療機関を4 医療機関指定してい る。また、SARS 入院対応医療機関である 4 医療機関を確保している。 香川県内で新型インフルエンザが発生した時の入院診療施設 第二種感染症指定医療機関 内海病院 4 床 さぬき市民病院 4 床 高松市民病院 6 床 三豊総合病院 4 床 坂出市立病院(整備予定) 4 床 SARS 入院対応医療機関 香川県立白鳥病院 4 床 三豊総合病院 4 床 香川大学医学部附属病院は、SARS 対応医療機関に指定されているため、要請によ り外来診療を行わなければならない。 当院で新型インフルエンザ(要観察例)が発生した場合は、東讃保健福祉事務所 (TEL:0879-29-8261)へ速やかに報告し、対応や患者移送等に関して協議を行う。

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 <新型インフルエンザ要観察例、患者(確定例)の判断基準> この症例定義は、現段階の知見をもとに定めたものであり、暫定的なものである。 実際に新型インフルエンザが発生した場合は、その感染性や病原性の状況により、 症例定義を修正することになる。 (1) 要観察例 新型インフルエンザの罹患が疑われ、調査が必要と考えられる者。 法令上は入院勧告等の対象とはならないが、医学的、公衆衛生学的には他者 との接触は控えることが望ましいと考えられる。 下記①または②に該当する者であり、かつ、38℃以上の発熱等インフルエン ザ様症状がある者、又は原因不明(注 1)の肺炎や呼吸困難、若しくは原因不明(注 1)の死亡例。 ① 10 日以内に、ヒトへの新しい亜型の A 型インフルエンザウイルスに感染し ている、又はその疑いがある鳥(鶏、あひる、七面鳥、うずら等)、若しくは 死亡鳥(注 2)との接触歴(注 3)を有する者。 ② 10 日以内に、ヒトへの新しい亜型の A 型インフルエンザウイルスに感染し ているインフルエンザ患者(疑いを含む)との接触歴(注 3)を有する者。 (注 1)原因不明とは、RS ウイルスやアデノウイルスなどのウイルス性肺炎、マイ コプラズマやクラミジアなどの細菌性肺炎、誤嚥性肺炎などの鑑別診断(喀 痰、血液検査など)をした上で、原因がわからない場合を想定。 (注 2)死亡鳥とは、大量に死んでいる場合を想定。 (注 3)接触歴とは、1m ないし 2m の範囲の濃厚な接触。 (2) 患者(確定例) 38℃以上の高熱および急性呼吸器症状がある者のうち、以下のいずれかの方 法によって病原体診断がなされたもの。 ① ウイルス分離・同定による新しい亜型の A 型インフルエンザウイルスの検出。 ② ウイルス遺伝子検査による新しい亜型の A 型インフルエンザウイルスの検 出。 2) 新型インフルエンザの感染予防策 (1) 感染経路と予防策 現在までに得られているインフルエンザの感染経路は、飛沫感染と接触感染 が主体である。また、便中にもウイルスが含まれる可能性が示唆されており、 患者の排泄物の取扱いにも十分な対策が必要である。 平素より、咳・発熱等の呼吸器感染症状を有する患者の診療においては、咳 エチケットを指導する。また、すべての患者に対して標準予防策を徹底する。

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 (2) ウイルスの消毒 インフルエンザに用いる消毒液と方法は、次のとおりである。消毒する対象 に応じて、適切に使用する。 <器材> ・80℃、10 分間の熱水消毒 ・0.05~0.5w/v%(500~5,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムで清拭又は 30 分間浸漬 ・消毒用エタノールで清拭又は浸漬 <環境> ・0.05~0.5w/v%(500~5,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムで清拭 ・消毒用エタノールで清拭 <手指消毒> ・速乾性手指消毒剤を使用 (3) 検体採取と感染防止 患者から、検査検体を採取する場合には、咽頭拭い液を用いる。患者咽頭を 擦過した綿棒は、溶液入り試験管に浸漬し、密封の上、できるだけ速やかに検 査に供す。保存する場合は、低温(4℃程度の冷蔵庫、保冷庫など)で行う。咽頭 擦過時、患者の気道飛沫等を浴びる可能性があるので、手袋、N95 微粒子マス ク、ゴーグル、ガウンの着用など感染予防策を確保した上で検体採取を行う。 (4) 移送における感染防止 患者を移送する場合は、人権や患者の精神的不安に配慮し、移送従事者は、 十分な感染対策を行う。 ① 患者への対応 患者には、サージカルマスクを着用させる。呼吸管理を行っている患者に は、医師が付き添う。自力歩行可能な患者に対しては、歩行を許可し、車い す、ストレッチャーは適宜使用する。使用する車両等の内部をできるだけ触 らないようにする。 ② 移送従事者の対応 移送従事者は、手袋、N95 微粒子マスク、ゴーグル、非透過性ガウンを着 用する。移送中は、周囲の環境を汚染しないように配慮し、手袋は汚染した らすぐ新しいものに交換する。使用後の防護具は、感染性廃棄物として処理 する。

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 3) レベルⅤ(フェーズ 4 :国内においてヒトからヒトへ感染発生時) レベルⅥ(フェーズ 4,5:県内において感染発生時) <外来での対応> (1) 外来トリアージ 患者から電話による事前連絡があった場合は、担当医師が要観察例と判断し た場合に、入院受け入れ施設への受診を勧める。 患者が来院後、要観察例と判明した場合は、他の患者と接触しないよう配慮 し、救急外来処置室へ誘導し、診察を行う。速やかに東讃保健福祉事務へ報告 し、指定医療機関への搬送を検討する。(感染症発生時の診療の流れ参照) (2) マスク・眼の防御 患者に速やかにサージカルマスクを着用してもらい、患者に対応するスタッ フは、N95 マスクを着用する。診療を行うスタッフは、N95 マスクとゴーグル を着用する。 (3) 手指衛生 石けんと流水による手洗いおよびアルコール擦式消毒剤を使用する。 (4) 手袋・ガウン・キャップの着用 血液、体液、分泌物、粘膜に接触するような場合は、手袋・ガウン・キャッ プを着用する。 (5) 患者に使用した器具 聴診器、血圧計、体温計などの器具は適切に消毒する。 (6) 環境整備 分泌物等で汚染された箇所や患者が手で触れた場所は、消毒用エタノールで 清拭消毒を行う。清掃を行うスタッフは、N95 マスク、手袋、ゴーグル、ガウ ン、キャップを着用する。 (7) 患者の同伴者 患者の同伴者については、要観察例と判断された時点で同伴させないように する。小児等同伴者の付き添いが必要な場合は、N95 マスク、手袋、ゴーグル、 ガウン、キャップを着用させる。 (8) 対応した職員、医療従事者 要観察例の患者に接触した職員は、接触後7 日間毎日定期的に体温を計測し、 発熱が認められたら、感染制御部感染対策室(内線:3058)に連絡し、指示を受け る。

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 <入院> (1) 入院患者が要観察症例となり、入院受け入れ施設に搬送する場合 ① 東讃保健福祉事務所の指示のもとに指定医療機関に搬送する。 ② 院内の搬送時に他の患者と動線が重ならないようにする。 ③ 同室者、診療、看護、検査にあたった職員は、最後の接触から 1 週間は健康 観察を徹底し、1 日 2 回の検温および健康異常について報告させる。不完全 な感染防御の実施に対しては、抗インフルエンザ薬の予防内服を1 週間行う。 新型インフルエンザの前兆候が見られた場合は、直ちに抗インフルエンザ薬 による治療を行う。 ④ 接触した職員は、毎日定期的に体温を計測し、発熱が認められたら感染制御 部感染対策室(内線:3058)に連絡し指示を受ける。 (2) 院内で発症した場合でも、治療上の理由で感染症指定病院に移送が困難な場合 ① 病室は可能ならば独立換気の陰圧個室とする。患者が多い場合には診断確定 例はコホート管理を行い、疑い例は個室あるいは飛沫感染管理を行う。  入院中の移動制限: 必要時以外は部屋から出てはならない。検査等で部屋から出る場合はサー ジカルマスクを着用させる。  面会制限: 面会は原則として禁止する。やむを得ず面会が必要な場合、面会者はN95 マスク、手袋、ゴーグル、キャップ、ガウンを着用する。  隔離解除: インフルエンザ患者は症状改善後も気道からウイルスの排泄が数日間に わたり続くとされている。WHO は、インフルエンザウイルス(H5N1)の排 泄期を、成人は解熱後最長7 日間、小児は発症後最長 21 日間としている。 ② 患者は検体(呼吸器サンプル、および血液)を採取したのち抗インフルエンザ ウイルス薬による治療を開始する。 ③ 診療にあたる医療従事者には、入手可能であれば入手後速やかにプレパンデ ミックワクチンを接種する。 ④ 診療を行なう医療従事者は、N95 マスク、手袋、ゴーグル、キャップ、ガウ ンを着用する。 ⑤ 診療にあたった医療従事者は、抗インフルエンザウイルス薬の予防内服を、 診療期間中と診療を終了後1 週間行なう。

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 Ⅴ. SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome:重症急性呼吸器症候群)発生時の対応 1. 疫学 [病因]  SARS コロナウイルス(コロナウイルス科の新種) [病像]  潜伏期:2~10 日間(最高 13 日)。感染力はほとんどない。無症状。  前駆症状期:1,2 日間。発熱、筋肉痛、乾性咳嗽、頭痛等の初期症状を呈する。感 染性は低い。  下気道症状期:4 日以降 。痰を伴わない咳、息切れ等。感染率はきわめて高い。 約6,7 病日以降、約 90%の症例は改善を示すが、約 10%のケースは急速に悪化し、 重症呼吸不全に至る。致死率は4~7%である。(死亡率については、時期、地域に よって異なっており、ウイルスが変異によって病原性を変化させていることが推 測されている。) 胸部X 線、胸部 CT 写真では、初期には小さな巣状の間質性浸潤影を示す。進行 するにつれて全体に斑状の間質性浸潤影を示す。 採血上、白血球減少、血小板減少、肝機能障害を示すことがある。(腎機能は正常 に保たれる。) [治療]  現時点で有効性のある治療法は証明されていない。  重症例においてコルチコステロイドとリバビリンが使用された例もあったが有効 であるとのエビデンスはない。  他の肺炎起因菌(非定型性肺炎も含む)をカバーし得る、入院時よりの抗菌薬投与が WHO より推奨されている。  肺炎になった者の 80~90%が1週間程度で回復傾向になるが、10~20%が ARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome)を起こし、人工呼吸器などを必要 とするほど重症となる。  致死率は 10%弱であるが、年齢や基礎疾患、地域によって異なる。 2. 病院感染対策  SARS の病院感染対策は、標準予防策に加えて「接触感染+飛沫感染+空気感染」 対策を行う。  外来での対応については、この章の「感染症発生時の外来診療の流れ」に準ずる。

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 SARS 可能性例等に対する病院感染対策の流れ (電話) 患 者 等 総合案内・医療相談窓口・時間外受付 救急外来処置室に誘導 患者はサージカルマスクを着用 職員はN95 微粒子マスクを着用 現病歴を確認し記録 発熱、呼吸器症状、渡航歴、接触歴等 呼吸器内科医師に連絡 ※救急車にて来院の情報あれば 救命救急センターに連絡要 小児の場合は、小児科医師に連絡 救命救急センターへSARS 疑い例患 者が救急車で来院する旨連絡 診察、胸部X-P、血液検査 放射線部下記に事前連絡要 時間内:3220(放射線部受付) 時間外:5881(当直技師) 香川県立白鳥病院 0879-25-4154 三豊総合病院 0875-52-3366 問合せ先 時間内(医事課外来係): 087-891-2056 時間外(事務当直): 087-891-2334 (受診予約) (来院) (一般外来・救急外来) (受診) (否定) マスク着用 手洗い励行等 ① ② ③ ⑤ ④ (肺浸潤陰有り) 病院紹介、転院 電話 患者動線

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 Ⅵ. 食中毒 1. 食中毒とは 食中毒原因微生物には、表に示すように国が指定する16 種類の食中毒原因菌と 3 類感染症の細菌性赤痢、コレラ、腸チフス、パラチフス、さらにウイルスのロタウイ ルス、ノロウイルスがある。食中毒菌は発生機構によって、感染侵入型、感染毒素型、 生体外毒素型の3 つに分類できる。前 2 者は、細菌が体内に入って食中毒を起こす もので、「感染型」と総称され、発熱、腹痛、嘔吐、下痢などの臨床症状がある。後 者は細菌の毒素によって食中毒を起こすもので、「毒素型」と総称される。毒素型の ボツリヌス菌は複視、発語障害、呼吸障害などの神経症状がみられる。 また、腸管出血性大腸菌感染症では、溶血性尿毒症症候群と脳症に注意を要する。 2. 食中毒発生時の対応 (1) 院内で食中毒が疑われたら、直ちに対策本部を設置し、直ちに保健所に届出す る。原因の究明、厨房の消毒、使用停止、再開などについては保健所の指示に 従う。 (2) ほとんどの食中毒は患者排泄物からの二次感染はないが、少量の菌量(数~数百 個)で感染が成立する細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症および感染力が強い ノロウイルス、ロタウイルスおよび腸チフス、パラチフスは排泄物から二次感 染が起こりうるので、予防対策を行う。 3. 二次感染予防対策 (1) 接触予防策を遵守する。 (2) 複数の患者が発生すれば、1 つの病室に集めてケアする(コホーティング)。 (3) 医療従事者および入院患者は、患者のケアの前後、排便後と食事前に石けんと 流水で十分に手洗いを行う。 (4) 糞便と吐物は、手袋、マスクおよびディスポエプロンを着けて処理する。 (5) 排泄物が付着していないリネン類は通常の処理でよい。排泄物が付着している リネン類は熱水洗濯(80℃10 分間)するか、低レベル消毒薬に約 30 分浸漬した のち洗浄する。 (6) 糞便と尿は水洗トイレに流して良い。 (7) 洋式トイレの便座、フラッシュバルブ、水道蛇口、ドアノブは、使用後 0.02~ 0.05%次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。金属部分は、次亜塩素酸ナトリウム で清拭後十分に水拭きで拭き取りを行う。 (8) 便器やポータブルトイレを使用する際は、便器の処理はベッドパンウォッシャ ーで熱水消毒を行う。 (9) 食器は通常の処理でよい。

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香川大学医学部附属病院感染制御部 平成 26 年 10 月 1 日 食中毒の原因微生物 原因微生物 発症機構 主な分布 潜伏期 主な感染源 黄色ブドウ球菌 A ヒト鼻咽喉 3 時間 食品全般 ボツリヌス菌 A 土壌 10~40 時間 嫌気性食品(瓶、 缶詰) 腸炎ビブリオ B 海産魚介類 5~20 時間 海産魚介類 サルモネラ C 動物・ヒト(腸管) 10~72 時間 卵、肉 セレウス菌 B 土壌 5~24 時間 肉、乳製品 ウェルシュ菌 B 土壌、動物、ヒト(腸管) 8~24 時間 肉 下痢原性大腸菌 腸管侵入性大腸菌 C 動物・ヒト(腸管) 12~72 時間 食品、飲料水 (腸管)毒素性大腸菌 B 動物・ヒト(腸管) 12~24 時間 食品、飲料水 腸管病原性大腸菌 B 動物・ヒト(腸管) 2~9 日 食品、飲料水 腸管出血性大腸菌 B 動物・ヒト(腸管) 不明 肉、飲料水 腸管凝集付着大腸菌 B 動物・ヒト(腸管) 12~24 時間 肉、飲料水 エロモナス・ヒドロフィ ラ B 河川・淡水魚介類 12~24 時間 河川、淡水魚介類 エロモナス・ソブリア B 河川・淡水魚介類 2~7 日 河川・淡水魚介類 カンピロバクター・コリ B 動物・ヒト(腸管) 2~7 日 鶏肉、飲料水 カンピロバクター・ジェ ジュニ B 動物・ヒト(腸管) 12~24 時間 鶏肉、飲料水、 生牛乳 プレシオモナス・シゲロ イデス B 河川・淡水魚介類 5~24 時間 河川、淡水魚介類 ナグビリオ B 海産魚介類 5~24 時間 海水、海産魚介類 ビブリオ・フルビアーリ ス B 海産魚介類 5~24 時間 海水、海産魚介類 ビブリオ・ミミカス B 海産魚介類 5~24 時間 海水、海産魚介類 エルシニア・エンテロコ リチカ C 動物・ヒト(腸管) 1~7 日 豚肉、ペット動物 細菌性赤痢 C ヒト(腸管)・水系 1~3 日 サラダ、飲料水 コレラ B 河川・淡水魚介類 7~14 日 河川、淡水魚類、 貝類 腸チフス・パラチフス ヒト(腸管) 24~48 時間 飲料水、肉、 患者便 ノロウイルス 5~24 時間 二枚貝、患者便 ロタウイルス 12~48 時間 患者便 A:毒素型(生体外毒素型) B:感染毒素型(生体内毒素型) C:感染侵入型

参照

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