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システムの構築過程は図 1 に示すとおりで 衛生管理方針及び目標を決定後 HAC CP システムの構築から着手し その後マネジメントシステムに関わる内容を整備した 1 HACCP システムの構築本農場の衛生管理方針は 農場 HACC P の推進により 高い安全性と信頼を構築し 従業員と一体となって

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Academic year: 2021

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大規模酪農場における農場HACCP認証取得への取り組みと

有用性の検証

上川家畜 保健衛生 所

○清水 稚恵 太田 瑞穂 足立 力

はじ めに

我が国における農場HACCPの認証制度は、平成 21 年8月に農林水産省が公表した「畜 産農場における飼養衛生管理向上の取組認証基準(農場HACCP認証基準)」に基づき実 施されており、平成 23 年 12 月に認証審査の申請が開始された。 家畜保健衛生所(以下、家保)では、これまで認証取得に取り組む農場に対して、技術的 な支援を行ってきた。 今回我々は、国内初となる大規模酪農場における認証取得を支援するとともに、農場HA CCPの有用性の検証を行ったので、その概要について報告する。

農場 の概 要

本農場は、乳用牛約 500 頭を従業員 12 名で管理する管内でも有数の大規模酪農場であ る。 農場の組織体制は、搾乳、生産及び環境の3部門からなり、各部門とも1名の責任者 と数名の従業員が配置されている。 生産物の出荷は、生乳を主体に自家製チーズの製造や牛の個体販売も行っている。 生乳の年間生産量は約 3,400t で、全て一元集荷されており、このうち約 6t が自家製 チーズの製造に供されている。 なお、牛の個体販売は、子牛、育成及び初妊牛を年間約 200 頭出荷している。

認証 取得 への 取り 組み

我が国の農場HACCPは、HACCPシステムにマネジメントシステムの要素が取 り入れられて おり、その土台には 、生産者としての法令・規則の遵守があり、特に家畜 伝染病予防法の飼養衛生管理基準の遵守 は重視されている。 本農場では、平成 22 年6月から認証取 得を目指し、経営者自らがHACCPチ ーム責任者となり、従業員、コンサルタ ント獣医師及び家畜保健衛生所と共に延 べ 19 回の検討会により、認証基準に適合 した衛生管理システム(以下、システム) を構築した。 システムの構築にあたっては、農場H ACCPに精通するコンサルタント獣医 師が牽引役となり、家保は法令・規則に 関する指導を行い、専門的立場から支援 した。 図 1 衛 生 管 理 シ ス テ ム の 構 築 過 程

(2)

抗菌性物質の残留  工  程 異常牛治療への出荷禁止解除の手続き  危  害 抗生物質  管理手段 休薬期間の遵守 ①休薬期間の遵守 ②乳汁の抗生物質残留検査で陰性  モニタリング    何を 休薬期間と残留検査を    どのように ①牧場日誌の抗生物質使用欄で休薬期間が経過して   いることを確認 ②乳汁の抗生物質残留検査で陰性を確認    頻度 休薬期間明け    担当者 哺乳担当 : 繁殖担当 : 搾乳担当 :   責任者 不適合品の管理 【修正措置】 修正、是正措置 ①抗生物質がバルク乳に混入した疑いがある場合   バルク乳の抗生物質残留検査を実施する ②検査終了時まで、集乳しないように、農協担当者に 連絡する ③陰性の場合:出荷、陽性の場合:廃棄 【是正措置】 HACCP会議を開催し、原因究明の上、是正措置を 検討する 検  証 クーラーステーションからのクレーム報告がないこと ①治療記録(牧場日誌)②乳汁の抗生物質残留検査   記録との照合 月に1回検証を実施する  許容限界 注射針の残留  工  程 ワクチン接種、ホルモン剤注射、異常牛治療  危  害 注射針の残留  管理手段 注射後の注射針の目視確認  許容限界 注射筒に注射針が装着されていること  モニタリング    何を 注射筒に注射針が装着されていること    どのように 目視確認、声出し確認(針アリ・OK)    頻度 接種毎    担当者 哺乳担当 : 、繁殖担当 : 、搾乳担当 :   責任者 不適合品の管理 【修正措置】 修正、是正措置 ①接種後、注射針が牛体に残留した場合、   注射針残留記録表に記載する ②出荷時に注射針の残留報告書を市場申し込み書に   添付し、農協担当者に連絡する ③出荷後、注射針残留記録表に出荷記録を記載する 【是正措置】 HACCP会議を開催し、是正措置を検討する 検  証 と畜場からの残留針のクレーム報告がないこと 注射針管理簿と在庫本数、廃棄本数の確認(月2回)  システムの構築過程は図1に示すとおりで、衛生管理方針及び目標を決定後、HAC CP シス テム の構 築か ら着 手し 、そ の後 マネ ジ メン トシ ステ ムに 関わ る内 容を 整備し た。 1 HACCPシステムの構築 本農場の衛生管理方針は、農場HACC Pの推進により、高い安全性と信頼を構築 し、従業員と一体となって、国際競争に負 け な い 乳 製 品 を 生 産 す る こ と を 目 標 と し た(図2)。 HACCPシステムの構築は、まず全て の原材料、資材及び作業工程を調査し、全 生産工程 97 項目についてフローダイアグ ラムを作成した。 次に、全生産工程について危害要因 分析を行い、各危害に対する管理手段 を決定するとともに、併せて作 業マニ ュアル、手順書、衛生管理規定書及び 記録表計 172 を作成、整備した。 危害要因分析はシステム構築の根幹 を成す重要な作業であるが、酪農場の 場合、使用する原材料や資材が多く、 作業工程も複雑且つ多岐にわたること から、この作業には多大な労力と時間 が費やされた。 各危害に対する管理手段は、ほとん どが一般的衛生管理プログラム で管理 することとし たが、抗菌性物質及び注 射針の残留については、畜産物の安全 性確保のため厳格な管理が必要とされ る必須管理点 とし、HACCP計画で 管理することとした。 これら2つの危害のHACCP計画 では、許容限界、モニタリング、修正・ 是正措置及び検証方法を設定した(表 1、2)。 2 マネジメントシステムの構築 マネジメントシステムの構築は、シ ステムを運用する人や組織の管理とし て従業員の教育やシステムの継続的な 改善を円滑に行うための体制を 整備し た。 従業員の教育は、教育・訓練プログ ラムや力量評価方法を決定し、継続的 改善システム については、システムが 効果的且つ有効に運用されていること を定期的に確認するための検証方法や 迅速な改善を図る体制を整備した (写真1、表3)。 図2 衛生管理方針(抜粋) 表1 HACCP計画 表2 HACCP計画

(3)

評価、改善及び衛生管理システムの更新規定書 対  象 内部検証 衛生管理システムが妥当であるか、効果的に実施され、  改善を要する事項が、更新されているかを検証する 規 こと 1 内部検証は内部検証計画書を作成し、実施する (1)内部検証計画書には、経営者から指名された検証員 定    が明記されること (2)内部検証は年2回実施すること (3)内部検証では、衛生管理システムの運用状況を 事 検証する (4)内部検証の結果は、内部検証報告書として文書化し、 経営者及びHACCPチームに報告する 項 2 内部検証報告書に基づく是正計画と是正措置は 課題の見直し表を活用し、衛生管理システムの更新を図る 記録・マニュアル ①内部検証計画書 ②内部検証報告書 衛生管理規定 内部検証 3 システム構築から認証取得 本農場では、システムを構築しなが ら、実際に運用し、平成 23 年 12 月に 全ての衛生管理文書を完成させた。 その後、内部検証を受け、指摘され た観察事項を 検討し、システムの見直 し及び更新を行った。 本農場はこれらの過程を経て、平成 24 年1月に農場HACCP認証審査を申請し、 文書及び現地審査を受け、同年4月に全国初の認証取得農場となった。

農場 HA CC Pの 有用 性の 検証

本農場において、認証取得後「安全な畜産物の生産」と「生産性向上」の面から農場 HACCPの有用性を 検証した。 検証方法は、従業員 12 名へのアンケートと文書及び記録の点検を行った。 1 安全な畜産物の生産 安全な畜産物の生産の検証は、HACCP計画の励行に着目した。 従業員のHACCP計画の理解は、アンケート調査の結果から、その内容を概ね理解 していることを確認した。 また、HACCP計画の実施も、記録簿の記帳状況の調査から、着実に行われている ことを確認した。 更にアンケート調査において、これら2つの残留に関して、作業中にヒヤッと感じた ことが「けっこう」もしくは「たまに」あるとの回答が、認証取得前は従業員の約 3割 でみられたのに対し、取得後はみられていない 。 以上のとおり、HACCP計画が着実に実施された結果、本農場では、現在まで抗菌 性物質及び注射針の残留事例の発生は認められず、安全な畜産物が安定的に生産されて いる。 2 生産性向上 生産性向上に対する検証は、具体的な向上が現段階では認められない ため、生産性向 上に繋がる従業員の意識及び行動の変化とシステムの活用状況に着目し検証した。 (1)従業員の意識及び行動の変化 アンケート調査から、認証取得後、自他ともに意識及び行動が変化したことを認め る結果が得られた(図3)。 具体的な変化としては、責任感や衛生意識の向上などが認められている。 特に責任感の向上は、各部門の 責任者に顕著に認められ(図4)、搾乳部門では、 写真1 従業員教育 表3 評価、改善及び衛生管理システムの 更新規定書

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独自の定期会議を開催するなど自発的な 行動がみられている。 (2)意識及び行動の変化に対する外部評価 (牛舎環境管理共励会の成績向上) 牛舎環境管理共励会(管内5市町村 58 戸の酪農場を対象)の成績は、牛舎内及 び生乳処理室の衛生管理の得点が、認証 取得前より上昇した(表4)。 これは、従業員一人一人の衛生意識が 向上し、牛舎内や生乳処理室の清掃を入 念に行うなど自主的な 行動の変化が起こ り、それが外部からも評価されたものと考える。 (3)システムの積極的な活用事例 本農場では、平成 24 年4月からバルク乳の体細胞数が増加し、ピーク時には 28 万 /ml に達したが、搾乳部門が中心となり、システムを積極的に活用し、この問題解決 に取り組んだ。 まず、修正(応急)措置として、乾乳期の乳房炎牛と牛群検定成績により体細胞数 の高い搾乳牛を把握し、治療した。 同時に課題分析表を活用し、多角的に原因を分析することにより、問題点を明確化 した。 その結果、主な問題点として、牛舎環境の著しい悪化(積雪による乾乳牛舎倒壊) に起因した乾乳牛の乳房炎の増加、牛群検定成績の確認不足による体細胞数の高い搾 乳牛の見落とし及び治療の不徹底、不十分な乳頭清拭方法などがあげられた。 これらの分析 結果をもとに、従業員は問題解決に向けた検討に積極的に参加し 、是 図3 アンケート調査 図4 アンケート調査 表 4 牛 舎 環 境 管 理 共励 会 成 績

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正措置を決定した。 決定された主な是正措置として、敷料の頻回交換、乳房炎治療方針の見直し、毎日 のバルク乳の体細胞数のモニタリング、診療獣医師を講師とした延べ5回にわたる勉 強会での乳頭清拭方法や搾乳手順の見直しを行った。 その後、従業員がこれらの是正措置を確実に実施し、作業を統一化した。 その結果、バルク乳の体細胞数は漸減し、7月に 20 万/ml 以下となり、9月には 15 万/ml に減少した。 現在、この数値を安定化させるために対策を継続している。 以上のとおり 、認証取得後、従業員の問題点に対する改善意欲の向上もみられ 、積 極的な取り組みがなされている。 これらの取り組みは、農場HACCPの認証取得が従業員の意識を向上させる起爆 剤となり、システムを積極的に活用するなど自主的な行動の変化が引き起こされたた めと考えられ、今後、生産性の向上も期待 される。

まと め

本農場は平成 22 年6月から認証取得を目指し取り組みを開始し、平成 24 年4月に全 国初の認証取得農場となった。 取り組み開始からわずか1年 10 カ月で認証が取得できたことは、経営者主導体制の もと、農場HACCPに精通するコンサルタント獣医師が牽引役となり、従業員も積極 的に参加したことが有効であったと考える。 また、農場HACCPの土台となる生産者として遵守しなければならない法令・規則 に関する事項については、家保が専門的立場から支援することによって、補完すること ができた。 本農場の事例をとおして、システムを円滑かつ速やかに構築するには、経営者のシス テム構築と認証取得に対する強い意志と積極的 な参画が必要 である ことが再確認され た。 特に大規模農場の場合は、システムを運用するにあたって、従業員の農場HACCP に対する十分な理解と確実な励行及び積極的な参加が不可欠であると考える。 一方、今回実施した農場HACCPの有用性の検証では、農場HACCPは、安全な 畜産物の安定的な 生産や生産性向上に繋がる有 効なシステムである ことがあらためて 確認されたが、この有用性をより発揮するには、システムを積極的に活用していく 必要 があると考える。 農場HACCPは、認証取得が到達点ではなく、システムを活用し、これを継続的に 改善しながら、農場の運営に役立てていくことが重要である。 今後、家保は生産者に対し、農場HACCPの基礎となる適切な飼養衛生管理の励行 や法令・規則の遵守の指導を通して、 普及の一翼を担っていきたい。 稿を終えるにあたり、終始ご指導、 ご 協 力 い た だ き ま し た 西 村 獣 医 科 ク リニック西村雅明先生、(有)藤井牧場 藤 井 社 長 及 び 従 業 員 の 方 々 に 深 謝 い たします。

参照

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