勝
鬘
経
の
研
究
ー
特
に
如
来
蔵
思
想
を
中
心
と
し
て
ー
一 、 序 論 二 、 ビ ブ リ オ グ ラ フ ィ ー 三 、 空 、 不 空 の 如 来 蔵 四 、 如 来 蔵 と 法 身 五 、 煩 悩 論 六 、 衆 生 論 七 、 如 来 蔵 染 浄 依 持 説 八 、 如 来 蔵 の 五 蔵 義 九 、 実 践 論 十 、 結 論 一 仏 教 々 理 を 最 も 簡 単 に 要 約 し て 言 う な ら ば 、 煩 悩 に 充 て 勝 鬘 経 の 研 究香
川
孝
雄
, る 現 実 の 世 界 か ら 目 覚 め て ﹁ 覚 す る し こ と で あ り 、 又 ﹁ 覚 せ し め る ﹂ こ と で あ る 。 覚 者 た る も の は 阿 耨 多 羅 三 藐 三 菩 提 を 成 就 し 、 智 慧 、 慈 悲 が 満 足 せ ら れ て 一 切 の 繋 縛 よ り 解 脱 せ る 彼 岸 の 理 想 者 で あ る が 、 そ れ に 対 し て 衆 生 は 、 貧 欲 に 満 ち 、 そ の た め に 苦 悩 に あ え ぐ 此 岸 の 現 実 者 で あ る 。 こ の 両 者 の 関 係 の 間 に 仏 教 は 成 立 つ て い る 。 此 岸 の 衆 生 を い か に す れ ば 彼 岸 の 覚 者 た ら し め 得 る か 、 ▽ ︿、 覚 者 た り 得 る か 、 こ れ こ そ 釈 尊 出 家 の 一 大 契 機 で あ り 、 二 千 五 百 年 の 仏 教 々 理 史 も 実 に こ の 課 題 追 究 へ の 歴 史 で あ つ た と 言 つ て も 過 言 で は な か ろ う 。 出 来 得 る な ら ば 一 人 残 ら ず 救 い た い が 、 一 切 衆 生 に 成 仏 の 可 能 性 が あ り や 否 や 、 こ れ は 又 、 仏 四 七性 論 諍 史 と し て 三 国 を 通 じ て 見 ら れ る も の で あ る が 、 一 切 衆 生 に 成 仏 の 可 能 性 の あ る こ と を 始 め て 理 論 的 根 拠 を 示 し て 説 か れ た の が 今 こ こ に 聞 題 と し よ う と す る 如 来 蔵 の 教 説 0 で あ る 。 そ の 起 源 は 、 A n g u t ta r a n ik y a に 出 で 、 舎 利 ② ③ ④ 弗 阿 毘 曇 論 や 、 阿 毘 達 磨 大 毘 婆 沙 論 、 阿 毘 達 磨 順 正 理 論 及 0 び 成 実 論 等 で 論 議 せ ら れ て い る 心 性 本 浄 説 で あ ろ う と 考 え ⑥ ら れ る が 、 こ の 思 想 的 流 れ は 、 般 若 経 の 縁 起 論 、 華 厳 経 の 唯 心 論 的 影 響 を 受 け て 如 来 蔵 思 想 が 成 立 し た ご と く で あ O る 。 こ の 教 説 に 最 も 近 い 思 想 は 、 華 -厳 経 、 如 来 性 起 品 に 、 爾 時 如 来 。 以 二 無 障 礙 清 浄 天 眼 鴫 観 察 二 一 切 衆 生 殉 観 已 作 二 如 レ 是 言 ℃ 奇 哉 奇 哉 。 云 何 如 来 具 足 智 慧 在 ニ レ 於 身 中 殉 而 不 二 知 見 一 我 当 ﹂ 教 二 彼 衆 生 一 覚 悟 聖 道 悉 令 丙 永 離 乙 妄 想 巓 倒 垢 縛 脚 具 見 下 如 来 智 慧 在 二 其 身 内 一 与 レ 仏 無 上 レ 異 。 と あ り 、 こ の 思 想 の 直 接 的 な 影 響 を 受 け て 成 立 し た の が 、 ⑧ 如 来 蔵 系 経 典 群 中 最 も 初 期 の 経 典 と 考 え ら れ る 如 来 蔵 経 で あ り 、 そ こ に は 我 以 亀 仏 眼 一 観 ユ 一 切 衆 生 殉 貧 欲 恚 癡 諸 煩 悩 申 。 有 二 如 四 八 ⑨ 来 智 如 来 眼 如 来 身 殉 と 説 か れ 、 更 に 有 名 な 如 来 蔵 の 九 喩 が 述 べ ら れ て 一 切 衆 生 は こ と ご と く 仏 性 を 具 有 し て お り 、 貧 欲 恚 癡 の 煩 悩 を 除 く こ と に よ つ て 仏 性 が 開 顕 す る こ と を 明 ら か に し て い る 。 こ の 様 に 如 来 蔵 経 に 於 い て 一 応 基 盤 が 出 来 上 つ た こ の 思 想 は 更 に 不 増 不 減 、 勝 鬘 、 無 上 依 、 涅 槃 と 言 う 一 群 の 経 典 に お い て 成 長 し 、 な お も 、 宝 性 、 仏 性 、 無 差 別 等 の 論 書 を 生 み 出 し 、 夊 、 後 に は 、 如 来 蔵 を 識 説 的 に 理 解 し よ う と す る 傾 向 が あ ら わ れ 、 大 乗 密 厳 経 、 楞 伽 経 、 大 乗 起 信 論 へ と 発 展 0 し た の で あ る 。 シ ナ に お け る 華 厳 の 学 匠 、 賢 首 大 師 法 蔵 は 仏 教 を 随 相 法 執 (小 乗 諸 部 ) 真 空 無 相 (般 若 申 観 ) 唯 識 法 相 (深 密 、 瑜 伽 ) 如 来 蔵 縁 起 (楞 伽 、 密 厳 、 起 信 、 宝 性 ) の 四 宗 に 分 類 し 、 如 来 蔵 縁 起 宗 を 理 事 融 通 無 礙 の 説 と し て 非 常 に 高 く 評 価 し 、 大 乗 教 申 の 一 学 派 と 見 な し て い る が 、 私 は 一 学 派 を 形 成 す る ほ ど の 勢 力 は 持 つ に は 至 ら な か つ た で あ ろ う と 思 う 。 も ち ろ ん 以 上 の よ う な 経 論 を 産 み 出 し た ほ ど の 思 想 で あ る が 、 如 来 蔵 と し て 単 独 に 行 わ れ た 時 期 は 極 め て 短 く 、 や が て 唯 識 的 に 夊 、 密 教 的 に 解 釈 せ ら れ て 、
そ れ ら の 思 想 に 溶 け 込 む の で あ る 。 こ の 思 想 の 発 展 段 階 の 申 、 殊 に 勝 鬘 経 は 小 部 の 経 典 で あ り な が ら 、 そ の 果 し た 役 割 は 極 め て 大 き い と 思 う 。 そ の 理 由 は 、 如 来 蔵 教 義 の 中 、 主 な 教 義 内 容 は ほ と ん ど 勝 鬘 経 が 始 め て 説 い た 教 説 で あ り 、 且 つ 、 後 世 の 論 書 も 最 も 多 く こ の 経 典 を 引 用 し つ つ 論 述 を 進 め て い る こ と に よ つ て も 窺 い 知 る こ と が 出 来 る で あ ろ う 。 今 、 こ の 経 典 を 取 り 挙 げ 、 特 に そ こ に 説 示 せ ら れ る 如 来 蔵 思 想 を 解 明 せ ん と す る と 共 に 、 前 後 の 経 論 と の 関 係 に も 注 意 を 払 つ て 思 想 史 的 な 位 置 を も 把 握 し た い と 思 う 。 Q A .n a u tt a r a n ik y a I . 5 . p °8 ② 舎 利 弗 阿 毘 曇 論 二 七 、 大 正 二 八 ふ 六 九 七 、 b ③ 阿 毘 達 磨 大 毘 婆 沙 論 二 七 、 大 正 二 七 、 一 四 〇 、 a l b ④ 阿 毘 達 磨 順 正 理 論 七 二 、 大 正 二 九 、 七 三 三 、 a I c ⑤ 成 実 論 三 、 大 正 三 二 、 ご 七 八 、 b ⑥ 心 性 本 浄 説 に 関 し て は 、 西 義 雄 氏 ﹁原 始 仏 教 に お け る 般 若 の 研 究 ﹂ 、 坂 本 幸 男 氏 ﹁ 心 性 論 展 開 の 一 断 面 ﹂ (印 度 学 仏 教 学 研 究 、 第 二 巻 第 一 号 所 収 ) に 詳 論 さ れ て い る か ら こ こ で は 省 略 す る 。 ⑦ 六 十 巻 本 華 厳 経 三 五 、 大 正 九 、 i; 1:j 四 、 a 勝 鬘 経 の 研 究 ⑧ 如 来 蔵 経 典 の 成 立 問 題 に 関 し て は 拙 稿 ﹁如 来 蔵 経 典 の 成 立 に つ い て ﹂ (印 度 学 仏 教 学 研 究 第 四 巻 第 一 号 所 収 ) を 参 照 さ れ た い 。 ⑨ 大 方 等 如 来 蔵 経 大 正 一 六 、 四 五 七 、 b i c ⑩ 起 信 論 義 記 上 、 大 正 四 四 、 二 四 三 、 c 二 ︹ -) 諸 本 梵 本 は 現 存 し て い な い が 、 大 乗 集 菩 薩 学 論 の 梵 -K r 砂 ik s - s a m u c c a y a に 摂 受 正 法 章 の 文 が 三 ケ 所 、 究 竟 一 乗 宝 性 論 ② 6 - R a t n a g o t ra v ib h g a M a h y n o t t a r a t a n t r a s s tr に ご 十 ケ 所 の 引 用 が あ る と こ ろ よ り 、 そ の 一 端 は 知 る こ と ・が 出 来 る 。 経 の 梵 名 に つ い て S ik s s a m u c c a y a に は の r im l s im h a n d a s tr a 即 ち 勝 鬘 師 子 吼 経 で あ る が 、 U tt a r a t a n tr a E; 引 用 に は A r .y a s r im l s tr a 即 ち 聖 勝 鬘 経 と な つ て い る 。 西 蔵 訳 に は A r y a s r im a la e v is im h a -③ n d a n m a m a h y n a s q tr a 聖 勝 鬘 師 子 吼 と 名 附 く る 大 乗 ④ 経 と あ る 。 唯 、 至 元 法 宝 勘 同 総 録 一 に は 、 大 宝 積 経 第 四 十 八 会 の 勝 鬘 夫 人 会 の 箇 所 に 梵 題 と し て 阿 喇 二 合 亜 尾 喩 訶 八 哩 二 合 巴 哩 赤 憙 . 四 九
(A r y a v y h a -p a r ip r ic c h ) ⑥ . ⑥ と あ る が 、 こ れ は 南 条 目 録 、 大 谷 目 録 の 注 意 す る ご と く 、 次 の 第 四 十 九 会 、 広 博 仙 人 会 の 梵 題 で あ る 。 至 元 録 の そ の と こ ろ に は 梵 題 を 欠 く の み な ら ず 、 飜 訳 名 義 大 集 の 広 博 仙 人 会 鼬 麓 に は v y s a -p a r ip r ic c h と な つ て い る か ら 誤 つ て 一 会 前 の 梵 題 と し た の で あ ろ う 。 漢 訳 は 開 元 録 よ り す る 時 、 次 の 三 度 の 飜 訳 が あ つ た こ と を 伝 え て い る 。 ⑧ ω 勝 鬘 師 子 吼 一 乗 大 方 便 経 一 巻 北 涼 曇 無 讖 訳 (霞 b。 ∼ 4 3 3 . A ° U ) ⑨ ② 勝 鬘 師 子 脇 一 乗 大 方 便 方 広 経 一 巻 劉 宋 求 那 跋 陀 羅 訳 (戯 ω ① ゜ 諺 ゜ U ) 0 ⑧ . 勝 鬘 夫 人 会 (大 宝 積 経 中 、 第 四 十 八 会 ) 一 巻 唐 菩 提 流 支 訳 (刈 8 ∼ 7 1 3 . A . D ) こ の 中 、 第 一 訳 は 現 在 欠 本 と な つ て い る が 費 長 房 の 歴 代 三 宝 紀 第 砂 至 つ て 始 め て 経 録 笛 で ・ 且 つ 出 三 蘿 峯
鏑蘭
糲
灘
戦
驚
黠
戳
鰯
紛讖
五 〇 い つ れ も こ の 説 を 継 承 し て お り 、 夊 、 曇 無 讖 の 伝 記 に も 勝 鬘 経 訳 出 の 記 事 は ど こ に も 見 当 ら な い か ら 、 第 一 訳 と 称 す る 曇 無 讖 訳 の 勝 鬘 経 は 存 在 し な か つ た と 見 て 差 支 え な か ろ う 。 第 二 訳 竺 磐 流 通 し て い る も の ぷ 古 来 の 註 釈 家 も 皆 こ の 訳 に よ つ て い る 。 出 三 斃 鬻 九 に 収 録 さ れ る 碯 や 慈 法 師 の 勝 鬘 経 序 、 梁 高 僧 伝 第 三 及 び 開 元 釈 教 録 第 五 の 記 事 を 綜 合 す る と 、 求 那 跋 陀 羅 は 元 嘉 十 ご 年 (4 2 5 . A .D ) 海 路 広 州 へ 来 た り 、 そ の 翌 年 丹 陽 郡 に お い て 、 彼 自 ら は 手 に 正 本 を 執 り 、 口 に 梵 音 を 宣 べ 、 宝 雲 は 伝 語 、 慧 観 が 筆 受 の 任 に 当 つ た こ と を 伝 え て い る 。 第 三 訳 は 、 奎 蘿 に 収 め ら れ た 磯 + 八 会 で あ り 、 そ の 訳 出 に 関 す る 消 息 は 続 古 今 訳 経 図 紀 が 詳 し く 語 る と こ ろ で あ る 。 今 そ の 大 要 を 述 べ る な ら ば 、 菩 提 流 支 は 、 玄 奘 の 果 し 得 な か つ た 大 宝 積 経 訳 出 の 事 業 を 申 宗 の 命 に よ り 、 上 代 の 訳 と 彼 の 新 た に 齎 し た 梵 本 と を 勘 同 し 、 帝 が 自 ら 筆 受 に 当 り 、 夊 、 百 僚 妃 后 等 も 訳 場 に 参 列 す る と 言 う 朝 廷 を 挙 げ て の 大 事 業 で あ つ た 。西 蔵 訳 は 甘 殊 爾 部 、 宝 積 部 の 申 、 大 宝 積 経 の 第 四 + 八 会 が そ れ で あ り 、 題 し て h p h a g s -p a lh a -m o d p a l-p h r e n g i s e n -g e h i-s g r a ・ . s h e s -b y a -b a t h e g -p a , c h e n -p o h i m d ( 聖 勝 鬘 師 子 吼 と 名 附 く る 大 乗 経 ) と 言 い 二 巻 よ り 成 つ て お り 、 偈 数 に つ い て デ ン カ ル マ 目 録 0 の み は 六 百 偈 で あ る と し て い る 。 飜 訳 者 は J in a m it r a , S u r e n d r a b o d h i, Y e -s e s -s d e s の 三 人 で あ り 、 訳 出 年 代 は 明 ら か で な い が 、 飜 訳 官 の 名 前 よ り し て ラ ル パ チ ャ ン 王 の 仏 教 保 護 政 策 の 下 に 、 最 も 飜 訳 の 盛 ん な 時 代 を 思 わ せ 、 夊 、 現 存 最 古 の 西 蔵 大 蔵 経 目 録 と 伝 え ら れ る デ ン カ ル マ 目 録 に も 記 載 せ ら れ て い る と こ ろ 等 か ら 見 て 、 芳 村 修 基 教 授 ⑱ の 同 目 録 編 纂 推 定 年 代 た る 八 二 四 年 を 下 る こ と は あ り 得 な い か ら 第 九 世 紀 の 初 頭 頃 と 考 え ら れ る 。 以 上 三 訳 を 概 観 す る に 、 形 態 上 か ら は ほ と ん ど 相 違 な く そ の 増 広 や 省 略 の 跡 す ら 見 ら れ な い の で あ る が 、 漢 訳 、 西 蔵 訳 共 に 宝 積 本 が 同 じ 箇 所 を 同 じ よ う に 誤 つ て い る と こ ろ が 二 、 三 あ る こ と は 原 典 学 上 注 意 す べ き で あ る 。 こ れ は 恐 勝 鬘 経 の 研 究 ら 囚 宝 積 本 の 梵 本 に 始 め か ら こ の よ う な 誤 り が あ り 、 そ の ま ま 流 通 し て い た の で は な か ろ う か 。 ︹ 2 ︺ 註 疏 印 度 撰 述 と し て 、 世 親 が 勝 鬘 経 の 註 釈 を 作 つ た と は 婆 藪 槃 豆 法 師 伝 の 伝 え る と こ ろ で あ る が 現 存 し な い の み な ら ず 、 他 の 書 物 に 引 用 さ れ た こ と も な い か ら 、 或 は 仏 性 論 の こ と を 言 つ て い る の か も 知 れ な い 。 勝 鬘 経 に 限 ら ず 広 く 如 来 蔵 経 、 不 増 不 減 経 等 の 如 来 蔵 系 経 典 の 思 想 を 解 釈 し た も の と し て 究 竟 一 乗 宝 性 論 、 仏 性 論 、 大 乗 法 界 無 差 別 論 等 あ つ て 、 こ れ ら は い つ れ も 勝 鬘 経 研 究 の 上 に は な く て は な ら な い 論 書 で あ る 。 ・ 申 国 に お い て 数 多 く の 註 釈 書 が 著 さ れ た こ と は 各 種 の 高 僧 伝 や 現 存 の 註 疏 、 そ の 他 の 資 料 に よ つ て も 知 ら れ 、 中 国 の 地 に 勝 鬘 経 が 非 常 に 珍 重 さ れ た こ と を 物 語 る も の で あ O る 。 矢 吹 慶 輝 博 士 の 研 究 で は 、 実 に 二 十 数 種 の 多 き を 数 え ら れ る が 現 存 す る も の は 僅 か に 次 の 七 部 で あ る 。 ω 浄 影 慧 遠 勝 鬘 経 義 記 上 巻 八 下 巻 欠 ) ② 吉 蔵 勝 鬘 宝 窟 六 巻 五 一
⑧ 窺 基 勝 鬘 経 述 記 一 巻 ㈲ 作 者 未 詳 勝 鬘 義 記 一 巻 (首 部 欠 ) ㈲ 照 法 師 勝 鬘 経 疏 (首 部 欠 ) ㈲ 作 者 未 詳 挾 註 勝 鬘 経 疏 (失 題 ) ω 明 空 勝 鬘 経 疏 義 私 鈔 六 巻 こ の 中 、 ㈲ 、 ㈲ 、 ㈲ は い つ れ も 燉 煌 よ り 発 見 さ れ た も の で 不 完 全 で あ る が 、 ω の 勝 鬘 義 記 は 正 始 元 年 (α O 魁 ゜誤 ゜ U ) 写 訖 と 言 う 後 記 を 記 し て い る か ら 、 現 存 最 古 の 勝 鬘 経 註 釈 で あ る と 矢 吹 博 士 に よ つ て 発 表 せ ら れ た 珍 本 で あ る 。 夊 、 ω は 、 聖 徳 太 子 の 著 と 伝 え ら れ る 勝 鬘 経 義 疏 の 複 註 で あ る 。 我 が 国 で は 次 の 三 部 を 挙 げ る こ と が 出 来 る 。 ω 聖 徳 太 子 勝 鬘 経 義 疏 一 巻 ② 凝 然 大 徳 勝 鬘 経 疏 詳 玄 記 十 八 巻 (初 五 巻 欠 ) ⑧ 普 寂 律 師 勝 鬘 師 子 吼 経 顕 宗 鈔 三 巻 ω は 聖 徳 太 子 の 著 と 伝 え ら れ る が 、 果 し て 真 作 で あ る か が 花 山 信 勝 、 福 井 康 順 両 氏 の 間 で 激 論 が 交 わ さ れ つ つ あ る 書 物 で あ る 。 五 二 後 の 二 は 義 疏 の 複 註 で あ る 。 我 が 国 に お い て は 最 近 を 除 い て こ の 外 に 勝 鬘 経 に 関 す る 著 作 は な か つ た よ う で あ る 。 以 上 、 申 国 、 日 本 に お け る 註 釈 を 通 し て 代 表 的 な も の は 吉 蔵 の 宝 窟 と 義 疏 で あ ろ う 。 義 疏 は 一 乗 章 等 の 前 半 は 甚 だ 要 を 得 て い る が 後 半 の 如 来 蔵 思 想 の 説 示 さ れ て い る 部 分 に 入 る と あ ま り に も 簡 単 に 過 ぎ 、 そ の 上 、 時 に は 理 解 の + 分 で な い よ う な 面 も 見 ら れ る 。 し か し 未 だ 日 本 文 化 の 揺 籃 時 代 で あ り 、 又 、 仏 教 の 伝 来 さ れ て 間 も な い 時 代 に あ つ て か く の ご と き 著 述 の 出 た こ と は 著 者 が 誰 で あ ろ う と 我 が 国 の 誇 り で あ る 。 そ れ に 対 し 、 吉 蔵 の 宝 窟 は 当 時 の 学 界 の す べ て の 説 を 参 考 と し て 非 常 に 詳 細 な 研 究 を 行 つ て い る 。 そ の た め 却 つ て 、 煩 瑣 な 欠 点 は あ る が 、 い ろ い ろ な 学 者 の 説 を 引 用 し て 一 々 そ れ に 批 判 を 加 え て 最 後 に 彼 自 身 の 意 見 を 述 べ て い ゐ か ら 、 ど う し て も 欠 か す こ と の 出 来 な い 書 物 で あ る 。 ︹ 3 ) 最 近 の 研 究 勝 鬘 経 の 研 究 と し て 原 典 的 に は 、 次 の 二 を 挙 げ る こ と が 出 来 る 。
ω .河 口 慧 海 氏 ﹁ 勝 鬘 経 に 就 て 漢 蔵 両 訳 の 比 較 研 究 ﹂ 大 正 十 二 年 世 界 文 庫 蔵 訳 の 和 訳 と 旧 訳 を 対 照 し 、 註 が 施 さ れ て い る 。 ② 月 輪 賢 隆 氏
蝨
罍
響
鬘
経
、
宝
月
童
子
所
問
軽
昭 和 十 五 年 竜 谷 大 学 宝 瞳 会 新 旧 両 漢 訳 と 北 京 、 ナ ル タ ン 、 デ ル ゲ の 三 版 校 合 の 蔵 訳 及 び そ の 和 訳 と 註 と よ り な つ て い る 。 今 、 西 蔵 訳 に 関 し て は す べ て こ の 月 輪 本 に よ つ た も の で あ る 。 夊 、 中 村 元 博 士 の 報 告 に よ れ ぼ 、 カ リ フ オ ル ニ ヤ 大 学 に て ド イ ッ 人 の レ ツ シ ン グ 教 授 が 多 田 等 観 氏 と 共 に 勝 鬘 経 の 英 訳 に 努 力 さ れ て い た と の こ と で あ つ た が 、 そ の 後 、 ど う な つ た か は 未 だ 聞 い て い な い 。 思 想 的 研 究 と し て 特 に 勝 鬘 経 の み を 取 り 挙 げ た 主 な る も の は 極 め て 少 い が 、 如 来 蔵 思 想 史 上 よ り 、 こ の 経 典 に 触 れ ら れ た の は 非 常 に 多 い か ら 、 こ こ で は 省 略 す る 。 勝 鬘 経 の 研 究 ノ C . B e n d a l l; S i k s s a m u c c a y a { B ib l io t h e c a B u d d h ic a I ) 日 ○◎ ㊤ ¶ ∼ 日 O O N ° ② 国 ゜ H . J o h n s t o n , D ° L i t t ; T h e R a t n a gq o t r a v i b h g a M a h y n o t t a r a t a n t r a s s t r a . 1 9 5 0 . P a t n a , ③ 北 京 版 、 ナ ル タ ン 版 は d e v i と な つ て い る が 、 デ ル デ 版 の 如 v d e v i で な け れ ば な ら な い 。 又 、 三 版 共 ヨ 巴 帥 と な つ て い る が 月 輪 本 が 改 め る 如 く 目 91 団 が 正 し い 。 ④ 至 元 法 宝 勘 同 総 録 一, 、 昭 和 法 宝 総 目 録 二 、 一 八 六 b -c ⑤ 大 明 三 蔵 聖 教 目 録 二 〇 頁 ⑥ 西 蔵 大 蔵 経 甘 殊 爾 勘 同 目 録 二 五 六 頁 ⑦ 飜 訳 名 義 大 集 楙 本 P . 1 0 7 . N o .1 3 9 2 ( 6 7 ) ⑧ 開 元 釈 教 録 一 八 、 大 正 ・ 五 五 ・ 六 七 四 ・ b ⑨ 同 右 五 、 大 正 ・ 五 五 ・ 五 二 八 ・ a 同 右 一 一 、 大 正 ・ 五 五 ・ 五 八 七 ・ c ⑩ 同 右 一 七 、 大 正 ・ 五 五 ・ 六 六 六 ・ a @ 歴 代 三 宝 紀 九 、 大 正 ・ 四 九 ・ 八 四 ・ b ⑫ 出 三 蔵 記 集 五 、 大 正 ・ 五 五 ・ 四 〇 ・ a ⑬ 隋 、 衆 経 目 録 四 、 大 正 ・ 五 五 ・ 一 七 三 ・ c ⑭ 開 元 釈 數 録 一 八 、 大 正 ・ 五 五 ・ 六 七 四 ・ b ⑮ 大 周 刊 定 衆 経 目 録 一 五 、 偽 経 目 録 大 正 ・ 五 五 ・ 四 七 二 ・ a ⑯ 出 三 蔵 記 集 九 慧 観 、 勝 鬘 経 序 大 正 ・ 五 五 ・ 六 七 ・ a i b 請 外 国 沙 門 求 那 跋 陀 羅 。 手 執 正 本 口 宣 梵 音 。 山 居 苦 節 通 悟 息 五 三心 。 釈 宝 雲 訳 為 宋 語 。 徳 行 諸 僧 慧 厳 等 一 百 余 人 。 考 音 詳 義 以 定 厥 文 。 大 宋 元 嘉 十 三 年 歳 次 玄 楊 八 月 十 四 日 。 初 転 梵 輪 。 訖 干 月 終 。 慈 法 師 、 勝 鬘 経 序 大 正 ・ 五 五 . 六 七 . b -c ⑰ 梁 高 僧 伝 三 大 正 ・ 五 〇 ・ 三 四 四 ・ a ⊥ ご 四 五 . a ⑯ 開 元 釈 教 録 五 大 正 ・ 五 五 ・ 五 二 八 . a 明 版 の み は 訳 出 年 時 を 元 嘉 十 二 年 と す る が 、 訳 出 に 参 加 し た 慧 観 が 十 三 年 な る こ と を 経 序 に 述 べ て い る か ら 彼 に 従 う べ き で あ ろ う 。 ⑲ 続 古 今 訳 経 図 紀 大 正 ・ 五 五 ・ 三 七 一 . b -c ⑳ 目 録 に ょ り 多 少 異 る デ ン カ ル マ 日 [録 h p h a g s -p a l h a -m o d p a l -h p h r e n s e n -g e h i s g r a ( 聖 勝 鬘 夫 人 の 師 子 噺 ) 河 口 目 録 ( .{, ル タ ン 版 ) l h a -m o d p a l-h p h r e n g i s e n -g e h i -s g r a b s t a n -p a b a m -p o g n is --p a (勝 鬘 夫 人 師 子 吼 の 教 二 巻 ) 河 口 、 世 界 文 庫 本 の 経 題 8 僧 1 ld a n lh a -m o s e n -g e h i s g r a -s g r a s - a 右 は 鬘 に 相 当 す る 字 を 欠 い て い る 。 谷 大 目 録 も こ の 点 を 指 適 し て ﹁ 河 口 氏 の は 何 版 に よ ら れ た か 、 か く の 如 く ん ば 勝 鬘 の 鬘 の 字 を 脱 し て た だ 具 吉 祥 天 女 の 義 で あ る ﹂ と 述 べ て い る 。 P r o f . S h y u k i Y o s h im u r a ; T h e D e n k a r -m a a n o ld e s t C a t a l o g u e o f t h e T i b e t a n B u d d h is t C a n o n s w i th 五 四 in tr o d u c to r y n o t e s . P .9 . N o .7 0 ⑳ 北 京 版 の み 飜 訳 官 に つ い て の 記 事 を 欠 く 。 ⑳ 芳 村 氏 前 提 書 九 -一 四 頁 同 目 録 の 序 文 中 に 記 さ れ て い る 辰 の 年 (h B r u g g i lo ) を 根 拠 と し 、 そ の 年 に 符 合 し 得 る 八 〇 〇 、 八 = 一、 八 二 四 年 の 中 、 そ こ に 掲 載 す る 経 が R a l-p a = ca n 王 代 の 仏 教 全 盛 時 代 を 思 わ せ る と こ ろ よ り 八 二 四 年 説 を 採 用 さ れ て い る 。 ⑳ 婆 藪 槃 豆 法 師 伝 大 正 ・ 五 〇 . 一 九 一 . a 兄 云 汝 舌 能 善 以 毀 謗 大 乗 。 汝 若 欲 滅 此 罪 当 善 以 解 脱 大 乗 。 阿 僧 伽 法 師 姐 歿 後 天 親 方 造 大 乗 論 。 解 釈 諸 大 乗 経 華 厳 涅 槃 法 華 般 若 維 摩 勝 鬘 等 諸 大 乗 経 論 。 悉 是 法 師 所 造 。 ⑳ 矢 吹 慶 輝 博 士 ﹁ 燉 熄 出 勝 鬘 義 記 に 就 て ﹂ 大 正 六 年 、 宗 教 界 所 収 、 及 び ﹁ 北 魏 正 始 元 年 筆 写 現 存 最 古 の 勝 鬘 経 義 記 に 就 い て ﹂ 鳴 沙 余 韻 第 二 部 所 収 ⑳ 福 井 康 順 博 士 ﹁ 三 経 義 疏 の 成 立 を 疑 う ﹂ 花 山 信 勝 博 士 ﹁ 三 経 義 疏 に つ い て ﹂ 1 福 井 教 授 の 疑 問 に 即 答 、ー 共 に 印 度 学 仏 教 学 研 究 第 四 巻 、 第 二 号 所 収 ⑳ 申 村 元 博 士 ﹁ 最 近 に 於 け る 世 界 の 印 度 及 び 仏 教 の 研 究 ﹂ 印 度 学 仏 教 学 研 究 第 一 巻 、 第 一 号 、 一 二 一 頁 三 勝 鬘 経 以 前 よ り 如 来 蔵 の 空 、 不 空 に つ い て は 自 ら そ の 教 説 の 中 に 意 趣 せ ら れ て い た で あ ろ う が 、 明 ら か に 、 空 、 不
空 と 言 う 言 葉 を 用 い て 説 示 さ れ た の は 、 勝 鬘 経 を 以 つ て 最 初 と す る こ と が 出 来 る 。 以 後 は 究 意 一 乗 宝 性 論 、仏 性 論 、 大 乗 法 界 無 差 別 論 の 諸 論 で 説 か れ て お り 、 又 、 大 乗 起 信 論 で も 空 、 不 空 真 如 を 説 く の で あ る が 、 こ の 場 合 の 意 義 は 少 し 違 う よ う に 考 え ら れ る 。 ま ず 空 、 不 空 如 来 蔵 の 意 義 が 何 で あ る か を 調 べ る の で あ る が 、 そ の 意 義 は 甚 だ 把 み 難 く 、 古 今 の 註 釈 家 達 の 間 で も 難 関 の 一 つ で あ つ た 模 様 で 、 意 見 が 一 定 し て い な い 。 そ の こ と は 、 本 経 自 体 の 飜 訳 に も 責 任 が あ る よ う で あ り 、 旧 訳 、 新 訳 、 西 蔵 訳 、 い つ れ も 大 分 意 味 の 相 違 が あ る 。 三 訳 を ま ず 対 照 す る と 次 の ご と く で あ る 。 バ 旧 訳 ) 世 尊 。 空 如 来 蔵 。 若 離 若 脱 若 異 。 一 切 煩 悩 蔵 。 世 尊 。 不 O 空 如 来 蔵 。 過 於 恒 沙 不 離 不 脱 不 異 不 思 議 仏 法 。 ( 新 訳 ) 謂 空 如 来 蔵 、 所 謂 離 於 不 解 脱 智 一 切 煩 悩 。 世 尊 。 不 空 如 ② 来 蔵 。 具 過 恒 沙 仏 解 脱 智 不 思 議 法 。 ︹ 西 蔵 訳 ︺ ・ b c o m =l d a n -h d a s d e -b s h in -g s e g s -p a h i-s n in -p o 勝 鬘 経 の 研 究 ri o n -m o p s -p a th a m s -c a d k y i s b u b s d a n th a -d a d d u g n a s -p a m a -g r o l-b a s s e s -p a -r n a m s k y is s t o n -p a d a ri / b c o m -I d a n -h d a s d e -b s h in -g se g s -p a h i-s a in -p o h s a n s -rg y a s k y i c h o s th a -d o d d u m i-g n a s s i n g r o l-b a s s e s -p a b s a m -g y is -m i-k h y a -p a g a n -g h a h i k lu n -° . .③ g i-b y e -m a -s n e d -d a g g i s m i-s t o p -p a la g s -s o / 世 尊 よ 。 如 来 蔵 は 、 一 切 の 煩 悩 蔵 と 別 異 に 住 し 、 解 脱 せ ぎ る 諸 智 の 空 で あ る 。 世 尊 よ 。 如 来 蔵 は 仏 法 と 別 異 に 住 せ ず し て 解 脱 せ る 恒 河 の 沙 よ り 多 き 不 可 思 議 な る 諸 智 の 不 空 で あ る 。 以 上 の ご と く 対 照 す る と 新 訳 と 蔵 訳 と は 一 致 し て い る が 旧 訳 の み は 少 し 異 り 新 訳 で 不 解 脱 智 、 蔵 訳 で ヨ 甲 鴨 o 甲 9 ? s e s -p a -r e a m s (a m u k t a jn . S K T .) と 訳 す る と こ ろ を 旧 訳 は 、 唯 、 脱 と 訳 し て い て そ の 上 否 定 の 言 葉 も 欠 い て い る 。 シ ナ 、 白 本 の 註 疏 に も こ こ の と こ ろ の 解 釈 に 非 常 な 苦 心 を 払 つ て い る の み な ら ず 、 意 見 が ま ち ま ち で あ る の は 一 つ に は 、 こ の 箇 所 の 飜 訳 が 明 確 さ を 欠 い て い る た め で も あ ろ う 。 ま つ 註 釈 に よ れ ば 、 こ こ の 解 釈 は 二 通 り の 意 見 に 分 れ 五 五
て い る よ ケ で あ る 。 、 、 嘉 洋 大 師 吉 蔵 の 勝 鬘 宝 窟 は 、 ま ず 、 ④ ﹁ 有 二 能 蔵 所 蔵 啣 故 名 二 如 来 蔵 巴 と し て 如 来 蔵 に 能 蔵 所 蔵 の 二 あ る こ と を 明 し そ れ に 空 、 不 空 の 義 を 当 て て 、 ﹁ 仏 照 二 能 蔵 之 法 一 畢 竟 空 故 。 名 = 空 如 来 蔵 智 崎 仏 知 三 0 所 蔵 申 道 仏 性 。 具 = 一 切 徳 幻 故 名 二 不 空 叩 ﹂ と し て 能 蔵 た る 煩 悩 蔵 が 空 如 来 蔵 で あ り 、 そ れ を 知 見 す る を 空 如 来 蔵 智 と し 、 そ れ に 対 し て 所 蔵 た る 法 身 が 不 空 如 来 蔵 で あ つ て 、 そ れ を 知 見 す る の が 不 空 如 来 蔵 智 で あ り 、 い つ れ も 仏 智 で あ る こ と を 述 べ ん と し て い る よ う で あ る 。 そ 伽 こ と は 更 に 空 如 来 蔵 ⋮ ⋮ 空 蔵 明 二 煩 悩 畢 竟 空 幻 ⋮ ⋮ 不 空 蔵 具 二 一 切 ⑥ 功 徳 幻 空 如 来 蔵 即 是 妄 。 不 空 如 来 蔵 即 是 真 也 。 ⋮ ⋮ 世 尊 。 空 如 来 蔵 。 ⋮ ⋮ 釈 有 二 二 種 ∼ 一 妄 法 中 空 無 真 実 如 来 蔵 。 此 是 互 無 空 也 。 二 妄 法 虚 誑 。 故 名 為 レ 空 。 此 当 体 明 レ 空 。 以 二 此 空 義 幻 能 蔵 瓢 如 来 割 故 名 = 空 如 来 蔵 ℃ ⋮ ⋮ 世 尊 。 五 六 Q 不 空 如 来 蔵 者 。 ⋮ ⋮ 恒 沙 仏 法 体 有 亀 不 空 ∼ 故 名 一一 不 空 鴨 と 語 る と こ ろ よ り 明 ら か で あ る 。 こ れ に 類 す る 説 は 凝 然 大 徳 の 勝 鬘 経 疏 詳 玄 記 で あ る 。 即 ち 、 ⑧ 空 義 是 能 覆 体 。 真 実 即 所 覆 法 。 問 何 故 是 名 亀 空 如 来 蔵 鴨 答 妄 法 即 体 本 来 空 。 ⋮ ⋮ 問 何 故 此 義 名 ⇒ 不 空 蔵 鴫 答 智 体 本 有 。 於 レ 中 即 有 亀 無 量 万 徳 殉 ⑨ 以 レ 智 為 レ 首 。 以 レ 智 顕 レ 之 。 故 名 二 不 空 殉 更 に 宝 窟 の 文 を 引 用 し て O 今 疏 家 意 与 二 金 陵 一 同 然 。 と 述 べ て い る こ と に よ つ て 、 嘉 祥 と 凝 然 の 意 見 が 一 致 し て ti い る こ と を 知 り 得 る 。 こ の 他 、 燉 煌 本 の 照 法 師 の 疏 や 同 じ ⑫ く 燉 煌 本 の 勝 鬘 義 記 も こ れ と 同 様 の 説 で あ る 。 以 上 の 説 を 今 便 宜 上 第 一 類 の 解 釈 と し て 置 こ う 。 こ れ に 対 し て 第 二 類 の 解 釈 と で も 称 す べ き 他 の 解 釈 が あ る 。 即 ち 宝 窟 に ﹁ 江 南 師 釈 云 ﹂ と し て 引 用 す る 異 説 が そ れ で あ る 。 此 釈 空 如 来 蔵 。 謂 レ 脱 該 離 衆 惑 煩 悩 蔵 幻 無 累 故 云 レ 空 。 蘊 二 万 徳 一 故 云 レ 蔵 。 此 則 法 身 也 。 此 大 意 明 。 法 身 顕 時 。
空 無 二 諸 果 叩 故 言 亀 空 如 来 蔵 閃 世 尊 不 空 如 来 蔵 者 。 此 明 一風 隠 時 之 蔵 弔 隠 時 未 脱 離 異 於 煩 悩 喝 為 ⇒ 不 空 如 来 蔵 弔 以 = 其 深 隠 ∼ 故 云 識 不 思 議 仏 法 ↓ 以 未 ラ 脱 衆 累 ∼ 故 云 二 不 空 幻 隠 而 未 レ 彰 。 名 レ 之 為 レ 蔵 。 大 意 明 二 随 時 仏 性 一 為 二 ⑬ 煩 悩 所 覆 ℃ 故 云 二 不 空 ゆ 今 謂 二 此 釈 ご 事 不 可 殉 と 言 つ て 、 吉 蔵 は こ の 説 に 反 対 し て い る の で あ る が 、 こ の 説 に 従 え ば 、 出 纒 の 法 身 を 空 如 来 蔵 と 称 し 、 在 纒 の 法 身 を 不 空 如 来 蔵 と 考 え て い る σ こ の 解 釈 に 類 す る 疏 と し て は 、 聖 徳 太 子 の 義 疏 と 、 普 寂 律 師 の 顕 宗 鈔 を 挙 げ る こ と が 出 来 る 。 ︹ 義 疏 ︺ 未 一ジ 離 煩 悩 一 故 蔵 為 = 不 空 崎 己 離 二 煩 悩 一 故 法 身 為 レ 空 。 所 以 照 レ 蔵 為 = 如 来 蔵 智 幻 照 二 法 身 一 為 二 如 来 空 智 嶝 照 レ 蔵 照 二 法 身 一 智 。 即 終 是 一 体 智 。 ( 顕 宗 鈔 ︺ (前 掲 の 宝 窟 の 説 を 引 用 し て ) 寂 日 。 此 弁 恐 不 允 当 。 ⋮ ⋮ 若 是 情 有 妄 計 隠 二 覆 真 理 一 之 義 者 。 応 レ 言 二 煩 悩 隠 覆 一 也 。 那 得 レ 言 二 空 義 隠 覆 凶 乎 。 前 上 宮 所 弁 深 得 二 経 旨 一 勝 鬘 経 の 研 究 ⑮ 也 。 と 普 寂 は 、 吉 蔵 の 説 を 批 判 し 、 上 宮 の 疏 の 説 に 賛 同 し 、 空 義 隠 覆 真 実 章 と 言 う 題 名 か ら し て も 、 空 義 は 隠 覆 せ る 真 実 の 相 で あ り 、 不 空 は 在 纒 の 法 身 な る こ と を 言 わ ん と し て い る 。 こ の よ う に 見 て 来 る と 、 第 一 類 の 解 釈 で は 、 新 訳 、 蔵 訳 の 空 如 来 蔵 を 不 解 脱 智 と し 、 不 空 如 来 蔵 を 解 脱 智 と す る の に よ く 合 致 す る が 、 空 を 一 切 煩 悩 蔵 と 異 つ て 住 す と 言 う こ と に は 相 応 し な い 。 又 、 第 二 類 の 解 釈 で は 、 新 訳 、 蔵 訳 の 空 を 一 切 煩 悩 蔵 と 異 つ て 住 す る こ と に は 合 致 す る が 、 空 を 不 解 脱 智 、 不 空 を 解 脱 智 と す る こ と に は 相 応 し な い 。 今 こ の 問 題 を 解 明 せ ん が た め に 、 印 度 に 於 い て 撰 述 せ ら れ た 後 期 の 論 書 を 手 掛 り と し て 考 察 を 進 め た い 。 宝 性 論 梵 文 如 来 蔵 品 第 百 五 十 五 偈 に は 、 s z n y a g a n t u k i r d h t u h s a v in i r b h g a l a k s a n i h / a s n y o 'n u t t a r i r d h a r m i r a v i n i r b h g a l a k s a n i h / / ⑯ . . 。 1 5 5 / / 界 は 客 塵 で あ り 、 離 を 有 す る 相 な る に よ つ て 空 で あ る 。 五 七
無 上 法 な る 不 離 の 相 な る に よ つ て 不 空 で あ る 。 月 輪 氏 は 西 蔵 文 よ り こ の 箇 所 を 訳 さ れ 、 今 、 離 を 有 す る 相 と 訳 し た と こ ろ を 差 別 的 性 格 と 訳 さ れ 、 意 味 が は つ き り と す る 。 故 に 差 別 的 な 有 為 法 の 面 を 空 如 来 蔵 と 言 い 、 無 差 別 的 な 無 為 法 の 面 が 不 空 如 来 蔵 で あ る と 説 か れ て い る 。 こ の こ と は 宝 性 論 の 他 の 文 に よ つ て も 理 解 さ れ る と こ ろ で あ る 。 世 尊 。 是 故 如 来 蔵 。 是 依 。 是 持 。 是 住 持 。 是 建 立 。 世 尊 。 不 離 不 離 智 。 不 断 不 脱 不 異 無 為 。 不 思 議 仏 法 。 世 尊 。 亦 有 断 脱 異 外 離 。 離 智 有 為 法 。 亦 依 亦 持 亦 住 持 亦 建 H 立 依 如 来 蔵 。 ( t a s m d b h a g a v a m s t a t h g a t a g a r b h o n i s r a y a d h r a h p r a t is t h s a m b a d d h n m a v i n i r b h g n m a m u k t a -j n n n m a s a m s k r i t n m d h a r m n m / a s a m b a -d d h n m a p i b h a g a v a n v i n i r b h g a d h a r m n m m u -k t a j n a n n m s a m s k r it n m d h a r m n m n i s r a y a . ⑱ . d h r a h p r a t i s t h t a t h g a t a g a r b h a ) 即 ち 、 右 の 文 は 、 前 半 は 不 空 を 、 後 半 に お い て 空 の 如 来 蔵 五 八 が 説 か れ て い る が 、 明 ら か に 不 空 の 方 を 無 為 と し 、 空 を 有 為 と 言 つ て い る の で あ る 。 宝 性 論 は 、 か か る 解 釈 を 施 し て い る が 、 更 に 大 乗 法 界 無 差 別 論 の 解 釈 を 参 照 し て よ り 理 解 を 深 め た い 。 こ の 論 書 は 同 じ 提 雲 般 若 の 訳 出 と し て ご 本 あ り 、 丹 本 の 方 は 大 体 旧 訳 と 同 じ で あ る が 、 別 訳 国 宋 両 本 で は 空 如 来 蔵 。 与 職 煩 悩 穀 鴫 和 合 無 レ 別 。 不 レ 了 一顧 解 脱 一 。 ⑲ 不 空 者 。 過 二 恒 河 沙 弔 不 離 不 脱 不 異 不 思 議 仏 法 成 就 。 と し 、 空 を 煩 悩 の 穀 ( k o ヌ a ) と 和 合 し 、 未 だ 解 脱 し て お ら な い 状 態 を 説 く 点 は 他 の 論 書 に は 見 ら れ な い 説 示 の 仕 方 で あ る 。 こ の 論 書 は 梵 本 も な く 蔵 訳 も な い か ら 原 典 的 に 吟 味 す る こ と は 出 来 な い が 、 こ れ ら を 綜 合 し た と こ ろ に よ つ て 私 は 次 の よ う に 理 解 出 来 る 。 空 義 は 如 来 蔵 が 未 だ 客 塵 の 煩 悩 に 包 ま れ て い る 因 位 の 状 態 で あ り 、 染 と 浄 と が 和 合 し て 住 、 す る 意 味 に お い て 空 義 な の で あ つ て 、 こ れ は 人 間 の 現 実 の 相 を 語 つ た も の に 外 な ら な い 。 こ れ に 対 し て 不 空 義 は 煩 悩 よ り 全 く 解 脱 し た 法 身 そ の も の を 言 う の で あ つ て 、 そ こ に は 染 と 浄 と の 対 立 と 言 う も の は な く 、 染 浄 を 超 越 し た 畢 竟
空 、 空 を も 更 に 否 定 し て 乗 り 越 え た 世 界 で あ る 意 味 に お い て 不 空 と 説 か れ た の で あ つ て 、 こ れ が 仏 教 者 に と つ て の 理 想 と す る 境 界 で あ る 。 換 言 す れ ば 空 義 は 真 空 の 立 場 で あ り 不 空 義 は 妙 有 的 展 開 で あ る と 言 え る 、 こ の 故 に 、 先 に 述 べ た 第 二 類 の 解 釈 は 不 当 で あ る と 考 え ら れ る 。 し か ら ば 普 寂 の 言 う 論 拠 た る 空 義 隠 覆 真 実 章 と 言 う 章 題 よ り 空 な る 法 身 が 隠 覆 せ ら れ て い る と す る 説 は い か に 抗 弁 さ れ 得 る だ ろ う か 。 勝 鬘 経 に お け る 章 の 題 目 は 経 末 流 通 分 に 本 経 を 何 と 呼 ん で 流 通 す べ き か に つ い て 多 く の 名 を 挙 げ て い る と こ ろ よ り と つ た も の で 旧 訳 の ﹁ 説 空 義 隠 覆 真 実 。 如 是 受 持 。 ﹂ に 当 る 蔵 文 に よ る と s to n -p a -n id k y i. d o n gq y i d o n s -p a y a n -d a g -p a r -b s t a n -p a s h e s -b y a -b a r y a n z u n s ig / (空 性 の 意 義 の 深 密 の 正 し き 説 示 と 名 附 く と 受 持 せ よ 。 ) と な つ て い る の で 、 何 ら 空 義 が 隠 覆 し て い る と 言 つ た 意 味 が な く 、 た ま た ま 求 那 跋 陀 羅 が 隠 覆 と 訳 し た 為 に 、 普 寂 は こ れ を 混 同 し た の で あ る Q そ れ で は こ の 空 、 不 空 の 如 来 蔵 義 は い つ 頃 か ら 説 か れ 出 し た の で あ ろ う か 。 勝 鬘 経 の 研 究 .両 者 の 考 え は 、 如 来 蔵 と 言 う 考 え が 成 立 し た 当 時 よ り 存 在 し た 筈 で あ る 。 し か し 空 、 不 空 と 言 う 言 葉 で 呼 ば れ た の は 勝 鬘 経 が 最 初 で あ る が 、 不 増 不 減 経 に は 、 不 空 如 来 蔵 と ほ と ん ど 同 じ 文 が 法 身 の 義 を 説 く と こ ろ に 用 い ら れ て い る の に 注 意 せ ね ば な ら な い 。 即 ち 、 法 身 義 者 。 過 於 恒 沙 不 離 不 脱 不 断 不 異 。 不 思 議 仏 法 如 来 功 徳 智 慧 。 と 説 か れ て い て 、 不 空 如 来 蔵 は 結 局 法 身 そ の も の な の で あ る 。 こ こ に 我 々 は 具 体 的 な 発 展 段 階 を 見 る と 共 に 勝 鬘 経 が 如 来 蔵 思 想 史 上 に 一 時 期 を 劃 し た こ と を 知 る こ と が 出 来 る Q ① 勝 鬘 師 子 咀 一 乗 大 方 便 方 広 経 ( 以 下 勝 鬘 経 と 略 す ) 大 正 ・ 一 二 ・ 二 二 一 ・ c ② 勝 鬘 夫 人 会 大 正 ・ 二 ・ 六 七 七 。 a ③ 月 輪 本 一 三 〇 、 一 三 二 頁 ④ 勝 鬘 宝 窟 下 本 大 正 ・ 三 七 ・ 七 三 ・ b Q ib id ⑥ ib id 七 三 ・ c O ib id 七 四 ・ a 五 九
⑧ 勝 鬘 経 疏 詳 玄 記 一 七 大 日 本 仏 教 全 書 四 二 四 九 上 -下 ⑨ ib id 二 五 〇 ・ 下 ° ib id l j 五 一 ・ 下 ⑪ 照 法 師 撰 、 勝 鬘 経 疏 大 正 ・ 八 五 ・ 二 七 五 ・ a 空 如 来 蔵 者 。 煩 悩 是 可 空 之 法 故 。 可 名 空 如 来 蔵 。 煩 悩 鄙 悪 可 指 捨 故 名 若 離 可 得 易 脱 故 言 若 口 。 可 得 変 異 言 若 異 。 如 此 之 法 未 指 其 体 故 。 次 言 一 切 煩 悩 蔵 也 。 ⋮ ⋮ 従 此 以 下 説 作 不 空 如 来 蔵 。 過 於 恒 沙 者 。 逕 於 劫 数 体 不 可 断 離 故 言 不 離 。 常 住 湛 然 不 可 易 脱 故 言 不 脱 。 不 異 者 。 不 可 変 易 。 雖 言 不 異 等 指 其 状 故 。 次 言 不 思 議 仏 法 是 也 。 ⑫ 勝 鬘 義 記 大 正 ・ 八 五 ・ 二 五 九 ・ b 空 如 来 蔵 者 。 若 離 説 一 切 煩 悩 蔵 。 此 解 空 智 也 。 不 空 如 来 蔵 説 不 思 議 仏 性 法 。 此 明 衆 生 仏 性 也 。 ⑬ 勝 鬘 宝 窟 下 本 大 正 ・ 三 七 ・ 七 四 ・ a l b ⑭ 勝 鬘 経 義 疏 大 正 ・ 五 六 ・ 一 六 ・ b ⑮ 勝 鬘 師 子 吼 経 顕 宗 鈔 下 大 日 本 仏 教 全 書 四 三 五 三 ・ 上 ⑯ T h e R a tn a g o tr a v ib h g a ° ℃ °♂ ° ⑰ 究 竟 一 乗 宝 性 論 四 大 正 ・ 三 一 ・ 八 三 九 ・ a ⑱ T h e R a tn a g o tr a v ib h gq 9 ℃ °刈 。。 ° ⑲ 大 乗 法 界 無 差 別 論 (国 宋 両 本 ) 大 正 ・ >> 1 1 ・ 八 九 六 ・ a ⑳ 勝 鬘 経 大 正 = 丁 二 二 三 ・ b ⑳ 月 輪 本 = ハ 八 頁 ⑳ 不 増 不 減 経 大 正 ・ 一 六 ・ 四 六 七 ・ a 六 〇 四 前 章 の 終 り に お い て 少 し 触 れ た ご と く 、 不 増 不 減 経 に お い ・て は 勝 鬘 経 の 説 く 不 空 如 来 蔵 義 が 、 そ の ま ま 法 身 の 義 と し て 説 か れ て い た 。 凡 そ 如 来 蔵 の 教 説 は 、 所 纒 の 煩 悩 身 と 雖 も 法 身 を 蔵 し て い る が 、 能 蔵 の 煩 悩 か ら 解 脱 し て 法 身 を 顕 現 し て そ こ に 涅 槃 の 境 地 を 得 る こ と が 大 綱 で あ る と こ ろ か ら 、 法 身 に 関 す る 説 示 も ま た 重 要 な 地 位 を 占 め る の で あ る 。 如 来 蔵 経 に お い て は 、 法 身 と い う 言 葉 は 用 い ら れ て い な い が 、 如 来 智 如 来 眼 如 来 身 或 は 単 に 如 来 身 と 言 つ て い る の が 結 局 他 経 典 に 見 ら れ る 法 身 に 相 当 す る も の で あ ろ う 。 如 来 蔵 経 に は 次 の ご と く 説 か れ る 。 我 以 二 仏 眼 一 観 二 一 切 衆 生 鴫 貧 欲 恚 癡 諸 煩 悩 中 。 有 二 如 来 智 如 来 眼 如 来 身 鴫 結 加 趺 坐 儼 然 不 動 。 (中 略 ) 譬 如 下 天 眼 之 人 。 観 二 未 敷 花 一 見 中 諸 花 内 有 = 如 来 身 一 結 加 趺 坐 や 0 除 去 一一 萎 花 一 便 得 二 顕 現 ℃ こ の よ う に 如 来 智 如 来 眼 如 来 身 は 煩 悩 中 の 如 来 蔵 法 身 を 指 す も の に 外 な ら な い 。 不 増 不 減 経 で は 、 前 述 の ご と く 、 法 身 が 不 空 如 来 蔵 な る こ と が 知 ら れ る が 、 更 に 衆 生 界 も 法 身
や 如 来 蔵 と 同 じ も の で あ る こ と を 明 ら か に し て い る と こ ろ ② が あ る 。 こ れ は 宝 性 論 も 引 用 す る と こ ろ で あ る が 、 舎 利 弗 。 甚 深 義 者 即 是 第 一 義 諦 。 第 一 義 諦 者 即 是 衆 生 ③ 界 。 衆 生 界 者 即 是 如 来 蔵 。 如 来 蔵 者 即 是 法 身 。 と 説 き 、 更 に 如 来 と 衆 生 界 と が 一 な る こ と を 、 法 身 を 媒 介 と し て 衆 生 も 菩 薩 も 如 来 も 同 じ で あ る こ と を 説 き 明 す も の と し て 次 の 経 文 を 挙 げ る こ と が 出 来 る 。 舎 利 弗 。 即 此 法 身 過 ニ レ 於 恒 沙 弔 無 辺 煩 悩 所 レ 纒 従 二 無 始 ⑥ ◎ 世 一 来 随 一﹁ 順 世 聞 殉 波 浪 漂 流 往 〒 来 生 死 一 名 為 二 衆 生 鴫 舎 利 弗 。 即 此 法 身 厭 ⇒ 離 世 閥 生 死 苦 悩 幻 棄 二 捨 一 切 諸 有 欲 求 殉 行 一嘱 + 波 羅 蜜 弔 摂 亀 八 万 四 千 法 門 鴫 修 二 菩 提 行 ↓ o ○ 名 為 二 菩 薩 一 。 復 次 舎 利 弗 。 即 此 法 身 離 一二 切 世 間 煩 悩 使 纒 過 二 切 董 。 離 三 切 煩 悩 壅 。 得 レ 浄 得 二 清 浄 一 。 住 ニ レ 於 彼 岸 清 浄 法 申 一 。 到 一二 切 衆 生 所 願 之 地 一 。 於 一二 切 境 界 中 一 。 究 竟 通 達 更 無 臨 勝 者 一 。 離 三 切 障 一 離 二 一 切 礙 一 。 0 0 0 0 0 0 於 一二 切 法 申 一 得 = 自 在 力 一 。 名 為 亀 如 来 応 正 遍 知 一。 是 故 舎 利 弗 。 不 ジ 離 衆 生 界 一 有 二 法 身 一。 不 ニ レ 離 法 身 一 有 二 衆 生 界 一 。 衆 生 界 即 法 身 。 法 身 即 衆 生 界 。 舎 利 弗 。 此 二 法 勝 鬘 経 の 研 究 ④ 者 義 一 名 異 。 即 ち 法 身 を 具 す る と 言 う こ と で 衆 生 も 菩 薩 も 如 来 も 無 差 別 で あ る 。 三 者 は 実 に 法 身 の あ り 方 に よ つ て 仮 に 差 別 せ ら れ る も の で あ り 、 衆 生 は 煩 悩 に よ つ て 法 身 が 覆 わ れ 、 生 死 に 流 転 し て い る も の を 言 い 、 夊 、 菩 薩 は 、 法 身 が 世 間 の 苦 を 厭 う て + 波 羅 蜜 等 の 行 を し て 菩 提 行 に 励 む も の に 名 附 け 、 又 如 来 応 正 遍 知 と は 、 一 切 の 煩 悩 の 垢 を 離 れ て 清 浄 に 到 り 一 切 に 無 礙 な る も の に 名 附 け て 言 う の で あ つ て 法 身 と 言 う 面 か ら 見 れ ば 、 現 実 の 相 に お い て こ そ 差 別 が あ る が 、 本 質 的 に は 平 等 な る こ と を 強 張 さ れ て い る も の と 見 る こ と が 出 来 る 。 か く の ご と く 不 増 不 減 経 の 法 身 説 は 、 如 来 蔵 経 と 結 び つ い て 、 法 身 が 、 菩 薩 に も 又 一 切 衆 生 に も 遍 満 す る と 言 う こ と は 、 言 い 換 え れ ば 、 一 切 衆 生 が 如 来 に 摂 取 さ れ る と 、 ⑤ 言 う こ と に も な り 、 世 親 が 仏 性 論 で 述 べ る 如 来 蔵 の 三 義 の 中 、 所 摂 蔵 の 意 味 に も 解 さ れ る と こ ろ で あ る 。 勝 鬘 経 で は 法 身 と 如 来 蔵 に つ い て は ど の よ う に 説 か れ る で あ ろ か 。 経 に は 次 の ご と く 説 れ て い る Q ⑥ ︹ 旧 訳 ) 如 来 法 身 。 不 夛 離 煩 悩 蔵 一 。 名 二 如 来 蔵 一 。 六 一
O ︹ 新 訳 ︺ 法 身 不 一ジ 離 煩 悩 一 。 名 ⇒ 如 来 蔵 一 。 と し て 漢 訳 二 訳 共 に 法 身 が 在 纒 の 状 態 に お い て 説 か れ て い る の で あ る が 西 蔵 訳 で は 、 む d e -n i d l a d e -b s h i n -g s e g s -p a h i -s n i n -p o -c h o s -k y i s k u ri o n -m o p s -p a h i -s b u b s n a s n e s -p a r -g r o l -b a . s h e s -⑧ . b g y i h o / そ れ を 如 来 蔵 法 身 は 煩 悩 蔵 よ り の 完 全 な る 解 脱 と 言 わ れ る Q と あ り 意 味 が 異 る 。 こ こ を 月 輪 教 授 は 問 題 に せ ら れ て い る 。 即 ち 漢 訳 宝 性 論 に は 、 ⑨ 如 レ 是 如 来 法 身 。 丕 ジ 離 煩 悩 蔵 ﹁ 所 レ 纒 名 二 如 来 蔵 一 。 で あ る が 、 同 論 の 蔵 訳 は 勝 鬘 経 蔵 訳 と 同 じ で 解 脱 を 否 定 す べ き 打 消 の 語 が 漢 訳 よ り 見 れ ば 欠 け て い る よ う に 思 わ れ る 。 無 差 別 論 で も や は り ⑩ ︹ 丹 本 ) 即 此 如 来 法 身 。 未 一ジ 離 煩 悩 蔵 ㌔ 説 二 如 来 蔵 ㌔ ti ︹ 国 宋 両 本 ︺ 此 即 如 来 蔵 未 一ジ 脱 煩 悩 殼 一 。 名 = 如 来 蔵 一 。 と 説 い て 因 位 の 状 態 に あ る 法 身 が 如 来 蔵 で あ る よ う に 訳 し で い る に も か か わ ら ず 、 勝 鬘 経 の 蔵 訳 は 、 デ ル ゲ 、 ナ ル タ ン 、 北 京 の 三 版 共 打 消 の 字 を 欠 い て い る 。 宝 性 論 の 蔵 訳 も 六 二 夊 そ う で あ る が デ ル ゲ 版 の み は 打 消 の ﹁ ︼β 90 ﹂ の 字 が あ る そ う で あ り 、 更 に 西 蔵 の 高 僧 D h a r m a -r i n -c a n の 宝 性 論 註 に も 打 消 の あ る 本 に よ つ て い る と の こ と で あ る 。 同 註 に は b c o m -l d a n -h d a s d e -b s h i n -g s e g s -p a h i -c h o s -k y i -s k u h d i -n i d n o n -m o n s -p a h i -s b u b s -l a s m a -g r o l -b a -n i d e -b s h in -g s e g s -p a h i -s n i n -p o s h e s -b g y i h o / / 世 尊 よ 、 此 の 如 来 の 法 身 が 煩 悩 の 殼 か ら 解 脱 せ ぎ る も の を 如 来 蔵 と 言 う 。 以 上 は 月 輪 教 授 の 論 ぜ ら れ る 大 要 で あ る が 、 梵 文 の 宝 性 論 は 、 打 消 の 言 葉 を 入 れ て い る 。 b h a g a v a m s ta t h g a t a d h a r m a k y o 'v in ir m u k t a k le ヌ a -⑫ k o ヌ a s t a t h g a t a g a r b h a li こ こ に 如 来 蔵 が 法 身 で あ る と 語 ら れ る 場 合 の 法 身 は 必 ず 煩 悩 蔵 に 覆 わ れ た と こ ろ の 因 位 の 状 態 に あ る 法 身 で あ ら ね ば 起 ら な い 。 次 に 如 来 法 身 の 相 に 対 し て は 如 何 に 見 ら る べ き で あ る か 。 経 に は 、 如 来 法 身 是 常 波 羅 蜜 。 楽 波 羅 蜜 。 我 波 羅 蜜 。 浄 波 羅 蜜 。
⑲ 於 二 仏 法 身 一。 作 職 是 見 一 者 是 名 二 正 見 一 。 と し 三 訳 い つ れ も 一 致 し て い る 。 こ の 常 楽 我 浄 の 見 は 以 前 は 顛 倒 の 見 と し て 退 け ら れ て 来 た も の で あ つ た の が 今 は 顛 倒 真 実 と し て 説 か れ て い る 。 何 故 に 顯 倒 が 真 実 で あ る か 、 そ の 説 か れ る に 至 つ た 因 縁 を 知 る た め に は 顛 倒 真 実 章 の 経 文 を 調 べ ね ば な ら な い 。 経 に は 、 凡 夫 識 者 。 二 見 顛 倒 。 一 切 阿 羅 漢 。 辟 支 仏 智 者 。 即 是 清 浄 。 辺 見 者 。 凡 夫 於 二 五 受 陰 凶 我 見 妄 想 計 著 生 n 1 1 見 一 。 ti 是 名 辺 見 。 所 謂 常 見 。 断 見 。 と ま ず 断 常 二 見 が 辺 見 な る こ と を 述 べ て 、 見 二 諸 行 無 常 一 。 是 断 見 非 亀 正 見 一 。 見 二 涅 槃 常 一 。 是 常 見 ⑲ 非 二 正 見 一 。 ︹ 旧 訳 ソ と 言 つ て 、 諸 行 無 常 と 言 う の も 断 見 で あ り 、 涅 槃 常 と 見 る の も 常 見 で あ る と し 、 根 本 仏 教 以 来 三 法 印 若 し く は 四 法 印 と し て 仏 教 の 根 本 教 理 の 二 項 目 が 真 正 面 か ら 遮 遣 せ ら れ て い る 。 し か し こ の 経 文 に 対 し て は 原 典 的 な 再 検 討 が 必 要 で あ る 。 と 言 う の は 新 訳 、 西 蔵 訳 共 に 旧 訳 の 意 義 す る と こ ろ と は 違 つ て 、 諸 行 無 常 も 湟 槃 常 も い つ れ も 否 定 さ れ て お ら 勝 鬘 経 の 研 究 な い Q 世 尊 。 若 復 有 レ 見 二 生 死 無 常 一 涅 槃 是 常 。 非 ⇒ 断 常 見 一 。 ⑬ 是 名 亀 正 見 一 。 ︹ 新 訳 ) ` . b c o r ri -ld a n -h d a s g a l -t e h d u -b y e d r n a m s l a m i r t a g -p a r -1t a n a d e n i d e h i C h a d -p a r -l t a -b a m a -1 a s t o J d e n i d e h i y a n -d a g -p a h i -l t a -b a l a g s -s o / / b c o m -l d a n -h d a s g a l -t e m y a -n a n -l a s -s i d a s -p a l a r t a g -p a r -l t a -b a d e n i d e h i r t a g -p a r -l t a -b a _ m a l a g s t o / d e ° ⑰ n i d e h i y a n -d a g -p a p i -lt a -b a l a g s -s o / / 世 尊 よ 。 若 し 諸 行 を 無 常 と 見 る な ら ば 、 そ れ は 断 見 で は な い 。 そ れ が 正 見 で あ る 。 世 尊 よ 。 若 し 涅 槃 を 常 住 と 見 る な ら ば 、 そ れ は 常 見 で は な い 。 そ れ が 正 見 で あ る 。 以 上 の 諸 訳 を 比 較 す る と 、 旧 訳 に お い て 、 諸 行 無 常 、 涅 槃 常 が 断 見 若 し く は 常 見 で あ る と し て 否 定 せ ら れ て い た の が 、 新 訳 及 び 西 蔵 訳 に よ れ ば 、 反 対 に 、 諸 行 を 無 常 と 見 る も 、 渥 槃 を 常 と 見 る も 正 見 で あ る と し て 肯 定 せ ら れ て い る の で あ る 。 こ の 問 題 に つ い て 、 河 口 氏 と 月 輪 氏 と の 意 見 に ⑱ 相 違 が あ つ て 、 河 口 氏 は 新 蔵 両 訳 の 方 が 正 し い と し 、 月 輪 六 三
⑲ 氏 は 旧 訳 の 方 が 正 し い と せ ら れ る が 、 こ れ は 明 ら か に 、 旧 訳 の 方 が 正 し い と 見 な け れ ば な ら な い 。 無 上 依 経 に は こ れ と 同 じ こ と が 説 か れ て い る Q 若 計 亀 諸 行 無 常 一 。 是 名 二 断 見 一 。 若 計 = 涅 槃 常 住 一 。 是 名 二 常 見 一。 こ の 他 、 涅 槃 経 、 宝 性 論 、 仏 性 論 も 同 じ 説 示 を 行 つ て い る か ら 新 訳 、 蔵 訳 は 誤 り で あ る 。 こ の よ う に た び た び 、 同 じ 宝 積 経 に 収 め ら れ た 漢 訳 の 新 訳 と 西 蔵 訳 が 同 じ 誤 り を 行 う の は 、 宝 積 経 の 梵 本 に お い て 既 に 書 写 の 時 に 誤 つ て そ れ が そ の ま ま 、 宝 積 経 と し て 流 布 さ れ た こ と に 起 因 す る の で あ ろ う か 。 た と え 諸 行 無 常 、 湟 槃 常 住 の 見 を 辺 見 と す る こ と が 一 見 仏 教 で は 逆 の 説 で あ る か ら と て 遇 然 に 両 訳 同 じ く そ れ を 原 本 と 反 対 に 訳 し た と い う こ と は 考 え ら れ な い か ら で あ る 。 或 は 、 西 蔵 訳 宝 積 経 の 申 に は 漢 訳 よ り の 重 訳 が 数 種 含 ま れ て い る か ら 、 西 蔵 訳 経 官 は こ の 漢 訳 を 参 照 し た と 考 え ら れ る か も 知 れ な い 。 い つ れ と し て も 旧 訳 が 正 し い と 考 え ら れ る が 、 こ の 常 楽 我 浄 の 見 を 規 準 と し て 経 は 衆 生 を 三 類 に 分 類 し 常 楽 我 浄 の 見 が 正 見 で あ る こ と を 順 次 に 明 瞭 な 六 四 ら し め て 行 く の で あ る 。 ω 顯 倒 衆 生 於 一↓ 五 受 陰 一。 無 常 常 想 。 苦 有 亀 楽 想 一 。 無 我 我 想 。 不 浄 浄 想 。 ② 一 切 阿 羅 漢 、 辟 支 仏 智 者 。 則 是 清 浄 。 辺 見 者 。 凡 夫 於 亀 五 受 陰 一 我 見 。 妄 想 計 著 生 ユ ニ 見 一。 是 名 = 辺 見 一 。 所 謂 常 見 、 断 見 。 見 臨 諸 行 無 常 齲 。 是 断 見 非 一孟 見 一 。 見 二 涅 槃 常 一 。 是 常 見 非 二 正 見 一。 妄 想 見 故 作 二 如 レ 是 見 殉 ⑧ 或 有 衆 生 。 信 二 仏 語 一 故 。 起 二 常 想 一。 楽 想 、 我 想 、 浄 O 想 。 非 二 顛 倒 見 一 。 是 名 二 正 見 一。 ま ず 第 一 類 の 顛 倒 の 衆 生 と は 、 一 般 凡 夫 で あ り 、 仏 教 側 か ら 言 え ば 外 道 の 見 で あ る 。 第 二 類 に お い て は 第 一 類 の 見 を 否 定 し た 仏 教 の 立 場 で あ る が 、 今 は こ の 見 も 声 聞 、 縁 覚 の 教 で あ る と し て 否 定 せ ら れ 、 最 後 の 第 三 に 来 て 、 常 想 、 楽 想 、 我 想 、 浄 想 を 起 す 見 、 仏 語 を 信 ず る 徒 が こ こ に 容 認 せ ら れ 、 そ の 見 が 正 見 と 見 做 さ れ る に 至 る 。 こ こ に そ の 過 程 を 知 る こ と が 出 来 る の で あ る 。 単 な る 常 楽 我 浄 で あ れ ば 外 道 の 言 う 我 見 と 何 ら 異 る と こ ろ は な い の で あ り 、 外 道 の 見 を 否 定 し た 無 我 の 立 場 を も 更 に 否 定 し た 絶 体 空 の 立 場 で
あ る こ と を 知 り 得 る 。 こ の 意 味 に お い て 特 に 波 羅 蜜 と 言 う 言 葉 が 用 い ら れ 、 常 波 羅 蜜 、 楽 波 羅 蜜 、 我 波 羅 蜜 、 浄 波 羅 蜜 と 説 か れ る 所 以 が こ こ に あ る 。 故 に 因 縁 観 に 基 く 常 楽 我 浄 で あ る こ と に お い て 仏 教 で あ り 、 更 に 仏 教 の 本 旨 を 発 揮 す る と こ ろ で あ る 。 し か し 特 に 我 と い う こ と に つ い て は 、 誤 解 を 招 く こ と が 屡 々 あ つ た の で あ ろ う 。 湟 槃 経 に も 楞 伽 経 に も 外 道 の 我 と 異 る と こ ろ を 注 意 レ て 次 の よ う に 説 い て い る 。 即 ち 涅 槃 経 で は 、 外 道 の 我 は 虫 が 木 を 食 し て 偶 々 字 を 成 す 譬 で 説 明 し て 、 . 是 諸 外 道 。 所 レ 言 我 者 。 如 二 虫 食 レ 木 偶 成 ジ 字 耳 。 如 来 於 二 仏 法 中 一 唱 二 是 無 我 閃 為 ニ レ 調 衆 生 一 故 。 為 レ 知 レ 時 故 説 二 是 無 我 一 。 有 二 因 縁 一 故 亦 説 二 有 我 ∼ 如 三 彼 良 医 善 知 二 於 乳 是 薬 非 薬 鴎 。 非 レ 如 三 凡 夫 所 ニ レ 計 吾 我 暢 凡 夫 愚 人 所 レ 計 我 者 。 或 言 大 如 二 拇 指 扁 。 或 如 二 芥 子 叩 或 如 二 微 畢 。 如 来 説 二 我 悉 不 ラ 如 レ 是 。 是 故 説 言 。 諸 法 無 我 実 非 二 無 我 一 。 何 者 是 我 。 若 法 是 実 是 真 是 常 是 主 是 依 性 不 変 易 者 。 是 名 為 レ 我 。 と 説 き 大 乗 入 楞 伽 経 に は 、 勝 鬘 経 の 研 究 仏 言 。 大 慧 。 我 説 三 如 来 蔵 不 ニ レ 同 外 道 所 説 之 我 一。 大 慧 。 如 来 応 正 等 覚 。 以 二 性 空 実 際 涅 槃 一 。 不 生 無 相 無 願 等 諸 句 義 説 ・ 如 来 亟 。 為 ・ レ 令 愚 夫 離 二 無 我 怖 一 。 説 ・ 無 分 別 無 影 像 処 如 来 蔵 門 一 。 未 来 現 在 諸 菩 薩 摩 訶 薩 。 不 レ 応 下 於 二 此 執 著 一 於 ヒ レ 我 。 と 外 道 所 説 の 我 と 同 一 視 せ ら れ て は な ら な い こ と を 強 張 し て い る の で あ る 。 か か る 如 来 法 身 の 常 楽 我 浄 の 四 徳 に つ い て は 、 如 来 蔵 思 想 史 の 上 で は 本 経 を 以 つ て 最 初 と 見 ら れ 、 以 後 は 、 涅 槃 経 、 無 上 依 経 、 宝 性 論 、 仏 性 論 の 説 く と こ ろ で あ る が 、 そ れ 以 前 に お い て も 常 楽 我 淨 と こ そ 説 か な い が 経 文 の 各 処 に そ れ に 似 た 説 示 が 見 ら れ る の で あ る 。 如 来 蔵 経 で は 法 身 の 常 と 浄 に つ い て の 説 示 が 予 想 せ ら れ て い る 。 一 切 衆 生 。 難 ジ 在 諸 趣 煩 悩 身 中 一 。 有 二 如 来 蔵 一 常 無 二 染 ⑳ 汚 弔 ⋮ ⋮ 一 切 衆 生 如 来 蔵 常 住 不 変 。 前 述 の 如 く 如 来 蔵 経 に は 法 身 と 言 う 言 葉 は 用 い ら れ て い な い が 、 如 来 蔵 は 在 纒 の 法 身 の 意 で あ り 、 諸 煩 悩 中 の 如 来 六 五
智 如 来 眼 如 来 身 は 、 実 に 如 来 法 身 を 指 す 文 句 で あ る か ら 法 身 に つ い て 説 か れ て い 乃 も の と 見 て 差 支 え な か ろ う 。 右 に 引 用 し た 経 文 の 中 、 ﹁ 常 無 染 汚 ﹂ は 浄 波 羅 蜜 で あ り 、 ﹁ 常 住 不 変 ﹂ は 常 波 羅 蜜 で あ る と 解 す る こ と が 出 来 る 。 こ の 両 者 は 時 に は 、 自 性 清 浄 、 常 恒 不 変 、 と 言 う 言 葉 で 語 ら れ 、 ほ と ん ど す べ て の 如 来 蔵 経 典 に 説 か れ る と こ ろ で あ る 。 不 増 不 減 経 で は 、 常 と 浄 は も ち ろ ん 説 く が 、 更 に 楽 を も 説 い て い る 。 0 0 0 0 0 舎 利 弗 。 此 法 身 者 是 不 生 不 滅 法 。 非 二 過 去 際 ℃ 非 二 未 来 0 際 喝 離 二 一 辺 一 故 。 ⋮ ⋮ 舎 利 弗 如 来 法 身 常 。 以 孟 不 異 法 一 @ 故 。 以 二 不 尽 法 一 故 。 舎 利 弗 。 如 来 法 身 恒 。 以 三 常 可 二 0 0 帰 依 一 故 。 以 二 未 来 際 平 等 一 故 。 舎 利 弗 。 如 来 法 身 清 涼 。 以 二 不 二 法 扁 故 。 以 二 無 分 別 法 一 故 。 舎 利 弗 。 如 来 法 身 0 0 0 不 変 。 以 二 非 滅 法 一 故 以 二 非 作 法 一 故 。 更 に 0 0 0 0 此 法 身 離 二 一 切 世 聞 煩 悩 使 纒 一 過 二 一 切 苦 崎 離 一一 一 切 煩 悩 垢 幻 得 レ 浄 得 一 清 浄 幻 住 レ 於 二 彼 岸 清 浄 法 中 唄 到 二 一 切 衆 生 所 願 之 地 喝 於 二 一 切 境 界 中 叩 究 竟 通 達 更 無 二 勝 六 六 者 幻 離 誌 一 切 障 一 離 二 一 切 礙 鴫 於 亀 一 切 法 中 一 得 二 自 在 ⑳ 力 幻 名 為 二 如 来 応 正 遍 知 弔 と 説 き 、 言 葉 こ そ い ろ い ろ と さ ま ぎ ま で は あ る が 、 常 、 浄 の 二 に 統 摂 せ ら れ 、 夊 そ の 申 、 ﹁ 過 一 切 苦 ﹂ と 言 う こ と は 、 楽 の こ と を 意 味 す る と 考 え ら れ る 。 N 叉 、 央 掘 摩 羅 経 で は 仏 性 と い う 言 葉 が 如 来 蔵 と 同 義 に 用 い ら れ て い る が 、 そ こ で は 仏 性 を 、 不 生 、 真 実 性 、 常 性 、 恒 性 、 不 変 易 性 、 寂 静 性 、 不 壊 性 、 不 破 性 、 無 病 性 、 不 老 死 性 、 無 垢 性 と さ ま ぎ ま な 形 容 を も つ て 説 明 せ ん と す る の で あ る 。 こ れ ら の 種 々 の 表 現 を 統 ︻ し て 纒 め た の が 湟 槃 経 、 勝 鬘 経 等 に 説 示 さ れ る 常 楽 我 浄 で あ ろ う 。 不 増 不 減 経 や 、 央 掘 摩 羅 経 の 説 い て い る こ と も 結 局 常 楽 我 浄 の 四 に 含 ま れ 得 る の で あ る 。 し か し こ の 常 楽 我 浄 と 言 う の は そ れ ぞ れ が 別 々 に 他 と 一 線 を 劃 し て 区 別 さ れ 得 る も の で は な い 。 例 え ば 我 に つ い て 、 先 に 引 用 し た 湟 槃 経 の 文 に あ る ご と く 、 我 と は 、 実 で あ り 、 真 で あ り 、 常 で あ り 、 主 で あ り 、 依 性 不 変 易 な る も の を 言 う の で あ る か ら 、 我 は 常 と も 関 連 す る こ と に な る 。 涅 槃 経 の 我 を 定 義 す る と こ ろ に よ れ ば 、
丶 央 掘 摩 羅 経 に は 、 明 ら か に 我 の 波 羅 蜜 が 予 想 せ ら れ て い る 。 即 ち 真 実 性 で あ り 、 常 性 で あ り 、 恒 性 で あ り 不 変 易 性 な る こ と は 、 ほ と ん ど そ の ま ま 涅 槃 経 の 我 を 定 義 す る と こ ろ で 述 べ ら れ て い る か ら で あ る 。 又 、 不 増 不 減 経 の 場 合 も 、 常 で あ り 恒 で あ り 、 清 涼 で あ り 、 不 変 で あ る と す る こ と も 、 我 の 意 味 を 含 ん で い る と 見 て 差 支 え な か ろ う 。 常 楽 我 浄 に つ い て は 、 そ の よ う に 勝 鬘 経 や 涅 槃 経 を 待 つ ま で も な く 、 順 次 に 萌 芽 と し て 熟 し つ つ あ つ た の で あ る が 、 我 は 表 面 に は 説 か れ な か つ た 。 こ れ は 無 我 と 言 う こ と が 仏 教 の 最 高 の 標 識 で あ る と こ ろ か ら 控 え て い た の で あ ろ う が 、 勝 鬘 経 で は 一 大 勇 猛 心 を も つ て 表 面 に 堂 々 と 唱 え る に 至 つ た の で あ る 。 こ の よ う に 考 え る な ら ば 、 如 来 蔵 経 や 不 増 不 減 経 、 央 掘 摩 羅 経 の 成 立 は 思 想 史 的 な 面 か ら 言 つ て 、 法 身 の 四 波 羅 蜜 (完 成 さ れ た 形 に お け る ) を 説 く 、 勝 鬘 、 涅 槃 、 無 上 依 の 諸 経 よ り 早 い こ と は 明 ら か で あ る 。 故 に 不 増 不 減 経 の 法 身 観 は 涅 槃 経 の 法 身 観 の 影 響 を 受 け て 成 立 し た も の 0 で あ る と 言 う 七 里 氏 の 意 見 は 妥 当 で な い と 考 え ら れ る 。 勝 鬘 経 の 研 究 ① 大 方 等 如 来 蔵 経 大 正 ・ = ハ ・ 四 五 七 か c ② 究 竟 一 乗 宝 性 論 二 大 正 ・ 三 一 . 八 二 四 。 a ③ 不 増 不 減 経 大 正 ・ = ハ . 四 六 七 . a ④ ib id 四 六 七 ・ a I b ⑤ 仏 性 論 ご 大 正 ・ 三 一 ・ 七 九 五 . c l 七 九 六 . a こ の 三 義 に 関 し て は 、 水 谷 幸 正 氏 ﹁ 如 来 蔵 と 仏 性 ﹂ (仏 教 大 学 学 報 第 三 十 一 号 所 収 ) 、 拙 稿 ﹁ 如 来 蔵 の 諸 相 ﹂ ( ア ッ タ デ ィ ー パ 第 三 号 所 収 ) を 参 照 さ れ た い 。 ⑥ 勝 鬘 経 大 正 ・ = 丁 二 二 一 ・ c ⑦ 勝 鬘 夫 人 会 大 正 ・ = . 六 七 七 . a ⑧ 月 輪 本 一 三 〇 頁 ⑨ 究 竟 一 乗 宝 性 論 二 大 正 ・ i> 1 1 ・ 八 二 四 ・ a ⑩ 大 乗 法 界 無 差 別 論 (丹 本 ) 大 正 ・ >> 1 1 ・ 八 九 四 . a ⑪ 同 論 (国 宋 両 本 ) 大 正 ・ 三 一 。 八 九 六 . b ⑫ R a tn a g o tr a v ib h g a P .1 2 ⑬ 勝 鬘 経 大 正 ・ = 一 ・ 二 二 二 . a lb i d ⑮ ib id ⑯ 勝 鬘 夫 入 会 大 正 ・ 一 一 ・ 六 七 七 ・ b ⑰ 月 輪 本 一 三 八 頁 ⑱ 河 口 慧 海 氏 勝 鬘 経 に 就 て 漢 蔵 両 訳 の 比 較 研 究 一 〇 七 ー 一 〇 九 頁 (世 界 文 庫 本 ) ⑲ 月 輪 本 註 一 二 、 二 二 頁 六 七
⑳ 無 上 依 経 大 正 ・ 一 六 ・ 四 七 二 ・ c ⑳ 勝 鬘 経 大 正 ・ 一 二 ・ 二 ご 二 ・ a ib id i b id ⑭ 大 般 涅 槃 経 二 大 正 ・ = 丁 三 七 八 ・ c ー 三 七 九 ・ a ⑳ 大 乗 入 楞 伽 経 二 大 正 ・ 一 六 ・ 五 九 九 ・ b ⑳ 大 方 等 如 来 蔵 経 大 正 ・ 一 六 ・ 四 五 七 ・ c ⑳ 不 増 不 減 経 大 正 ・ 一 六 ・ 四 六 七 a -b ● ib id 四 六 七 ・ b ⑳ 央 掘 摩 羅 経 二 大 正 ・ 二 ・ 五 二 六 ・ a l b ⑳ 七 里 恒 賢 氏 ﹁ 勝 鬘 経 と 如 来 蔵 心 ﹂ 宗 学 院 論 輯 第 二 十 一 輯 所 収 一 四 九 頁 五 仏 教 の 教 理 は 常 に 彼 岸 と 此 岸 、 理 想 と 現 実 、 悟 と 迷 の 対 決 の 中 に 説 か れ て い る 。 こ こ で も 前 節 の 法 身 説 が 理 想 に 対 す る 説 示 で あ る と す れ ば 、 今 述 べ ん と す る 煩 悩 論 は 現 実 の わ れ わ れ の 自 己 観 察 で あ る 。 煩 悩 は 本 来 ど ん な 性 質 を 持 つ て い て い か な る 形 で わ れ わ れ を 取 り ま い て い る の で あ ろ う か 、 不 増 不 減 経 に は 、 此 本 際 未 離 脱 不 相 応 煩 悩 所 纒 不 清 浄 法 。 唯 有 如 来 菩 提 智 六 八 之 所 能 断 。 舎 利 弗 。 我 依 此 煩 悩 所 纒 不 相 応 不 思 議 法 界 。 0 為 衆 生 故 説 客 塵 煩 悩 所 染 。 自 性 清 浄 心 不 可 思 議 法 。 と あ り 、 自 性 清 浄 心 、 客 塵 煩 悩 の 立 場 を 堅 持 し て い る の を 知 り 得 る が 不 増 不 減 経 で は 、 こ れ 以 外 煩 悩 の こ と に つ い て あ ま り 触 れ て い な い 。 し か し 勝 鬘 経 に な る と 急 に 煩 悩 の 教 説 が 単 に 客 塵 煩 悩 と 言 う こ と で な し に 新 た な 相 で 勝 鬘 独 特 の 煩 悩 論 を 展 開 し て い る 。 ま ず 煩 悩 を 大 別 し て 、 住 地 煩 悩 と 起 煩 悩 の 二 種 を 挙 げ 、 住 地 煩 悩 に 、 見 一 処 住 地 、 欲 愛 住 地 、 色 愛 住 地 、 有 愛 住 地 、 無 明 住 地 の 五 を 数 え 、 こ の 申 、 前 四 住 地 の 煩 悩 を 総 称 し て 、 有 愛 数 住 地 と 呼 ば れ る 。 こ の 有 愛 数 住 地 は 、 一 切 の 起 煩 悩 の 所 依 で あ る が 、 他 の 無 明 住 地 の 煩 悩 は 更 に 一 段 と 有 力 で あ ら ゆ る 起 煩 悩 、 上 煩 悩 の 根 本 所 依 と な り 、 仏 智 の み 能 く 断 ず る と こ ろ で あ つ て 、 二 乗 の も の の 所 断 で は な い と 説 か れ る 。 無 明 住 地 が か く の ご と く 四 住 地 に 勝 れ る と 言 う こ と を 説 明 す る 文 に 関 し て 、 漢 訳 両 訳 と 西 蔵 訳 と の 間 に 相 違 が あ る 。 ② 如 レ 是 無 明 住 地 力 。 於 二 有 愛 数 四 住 地 喝 其 力 最 勝 。 ︹ 旧 訳 ︺
③ 如 レ 是 無 明 住 地 蔽 二 四 住 地 殉 ︹ 新 訳 ∪ し か る に 西 蔵 訳 で は 、 d e -b s h in -d u m a -r ig -p a p i-g n a s -k y i-s a s r id -p a p i -h d o d -c h a g s la g n a s -p a h i g n a s -k y i -s a s h e -b g y i-b a s k y a n g n a s -k y i -s a -b sh i -p o h d i-d a g z il g y i s g n o n t e / か く の 如 く に 、 無 明 住 地 は 有 愛 に 住 す る 住 地 と 言 わ れ る か ら 、 又 そ れ ら 四 住 地 を 威 圧 し て 、 と 訳 さ れ て い て 、 無 明 住 地 は 夊 、 有 愛 住 地 と 異 称 せ ら れ る と 言 う よ う な 説 き 方 で あ る が 、 何 故 に こ の よ う に 説 く か に つ い て 月 輪 教 授 は 、 如 来 不 思 議 秘 密 大 乗 経 巻 十 二 を 引 用 し て 、 こ の 経 典 は 竜 樹 以 前 の 成 立 で あ る が 、 無 明 と 有 愛 の 両 者 が 屡 々 一 具 し て 談 ぜ ら れ た 慣 例 が こ こ に 顕 わ れ た も の で あ ろ 艶 説 明 さ れ て い る ・ 経 の 一 部 分 が 月 称 の 中 論 釈 ・ 第 十 八 章 に 引 用 せ ら れ て お り 、 そ れ に よ れ ば 、 h e t v r a m b a n o p a ヌ a m a i t y a v i d y b h a v a t r i s n o p a ヌ a m a -・。 < 鋤 幽 け ・δ 。 鋤 象 く ・。 。 ・。 昌 ・。 お \ ① < 冠 く 似 喜 鋤 く 程 の 唱 。 層 ・δ 崘 曽 ♂ it y a h a m k r a m a m a k r o p a a m a s y i t a d a d h i v a c a n a m / 勝 鬘 経 の 研 究 因 所 縁 の 寂 靜 と は 、 無 明 有 愛 の 寂 靜 の 増 語 で あ る 。 無 明 有 愛 の 寂 靜 と は 、 我 執 我 所 執 の 寂 静 の 増 語 で あ る 。 と あ り 、 厳 密 に 言 え ば 、 無 明 と 有 愛 と は 同 義 で は な い 。 西 蔵 訳 の 経 文 が 単 に 以 上 の 慣 例 が こ こ に は あ ら わ れ た の で あ る と 言 う だ け で は も う 一 つ 納 得 し 難 い よ う に 思 わ れ る 。 こ こ に 言 う 有 愛 住 地 と は 、 前 四 住 地 の 第 四 た る 有 愛 住 地 を 指 す の で な く 四 住 地 全 体 を 指 す 有 愛 数 住 地 を 意 味 し 、 無 明 住 地 一 つ の み で 有 愛 数 住 地 の 異 称 と さ れ 、 又 無 明 住 地 が 前 四 住 地 を 統 摂 し て 住 せ し め る よ う な と こ ろ か ら 無 明 住 地 が 又 有 愛 に 住 す る 住 地 と 異 称 せ ら れ た の で は な か ろ う か 。 又 無 明 住 地 は 成 唯 識 論 第 八 に は 無 明 習 地 と 訳 さ れ 、 法 界 無 差 別 論 の 丹 本 は 無 明 住 地 と な つ て い る が 国 宋 両 本 で は 、 ・ ⑦ 無 明 習 気 地 と 訳 さ れ 、 宝 性 論 の 蔵 文 に m a -r ig -p a h i b g a -c h a g s k y i s a ( 無 明 習 地 ) と 訳 さ れ て い る よ う で あ る 。 習 気 と 言 つ て も 意 味 は 通 ず る が そ の 原 語 た る く 91 の 鋤 謬 ① (住 ) と v s a n (習 気 ) と の 混 同 か ら 来 て い る よ う で あ つ て 、 正 し く は 住 地 と 訳 さ る べ き で あ り 、 習 気 と す る の は 、 唯 識 的 立 場 よ り の 解 釈 で あ る 。 六 九
煩 悩 と 心 と の 関 係 に つ い て 、 起 煩 悩 は 刹 那 心 と 相 応 す る ⑧ が 、 無 始 無 明 住 地 煩 悩 は 刹 那 心 と は 相 応 せ ず と 語 ら れ て い る 。 け だ し 煩 悩 が 心 の 刹 那 に 相 応 、 不 相 応 の 問 題 は 阿 毘 達 磨 仏 教 で 論 じ ら れ て い る と こ ろ で あ る 。 婆 沙 論 二 七 に は 、 若 心 本 性 清 浄 客 塵 煩 悩 所 染 汚 故 相 不 清 浄 者 。 何 不 下 客 塵 ⑨ 煩 悩 本 性 染 汚 与 二 本 性 清 浄 心 一 相 応 故 其 相 清 浄 加 又 、 成 実 論 に は 、 O 煩 悩 与 レ 心 常 相 応 生 。 非 二 是 客 相 ∼ と 心 性 本 浄 客 塵 煩 悩 の 説 を 批 判 し て い る 。 心 性 非 本 浄 論 者 は 、 煩 悩 は 心 と 相 応 し な い か ら 客 塵 と す る 説 は 妥 当 で な い と す る 。 こ れ に 対 す る 本 浄 論 者 の 反 論 が な い の で わ か ら な い が 、 少 く と も 本 経 に お い て は 、 煩 悩 は 心 と は 全 々 触 れ る こ と な き も の で あ り 、 起 煩 悩 は 相 応 す る が 、 無 明 住 地 の 煩 悩 は 刹 那 心 と は 相 応 し な い 為 に 客 塵 で あ る と 説 い て い る こ と は 、 婆 沙 の 攻 撃 に 対 し 煩 悩 が 刹 那 心 と 相 応 す る こ と は 認 め ね ば な ら な い 。 し か し そ れ は 起 煩 悩 の こ と で 客 塵 と す る た め に は 、 ど う し て も 心 と 不 相 応 な る 煩 悩 が な け れ ば な ら な い と こ ろ か ら 説 か れ た の が 無 明 住 地 煩 悩 で あ る ま い か 。 七 〇 こ の 煩 悩 は 無 始 以 来 存 す る 煩 悩 で あ り 、 一 切 の 起 煩 悩 、 上 煩 悩 の 根 本 所 依 で あ る 。 こ の 上 煩 悩 に 十 一 種 を 挙 げ る こ と は 又 本 経 独 自 の も の で あ つ て 、 心 上 煩 悩 、 止 上 煩 悩 、 観 上 煩 悩 、 禅 上 煩 悩 、 正 受 上 煩 悩 、 方 便 上 煩 悩 、 智 上 煩 悩 、 果 上 煩 悩 、 得 上 煩 悩 、 力 上 煩 悩 、 無 畏 上 煩 悩 で あ る が 、 そ の 一 々 の 意 味 や 性 格 に つ い て は 経 に は 何 ら 語 ら れ て い な い ⑫ が 、 宝 窟 に よ れ ば 、 ま ず 上 煩 悩 は 、 諸 徳 の 上 を 覆 う 義 、 起 る こ と 増 強 な る 義 、 起 る こ と 根 本 の 上 な る 三 義 よ り 上 煩 悩 と 名 附 け ら れ る と し 、 そ の 一 々 に つ き 釈 す る と こ ろ を 簡 単 に 要 約 す る と 、 心 は 菩 提 心 、 止 は 定 の 初 、 観 は 慧 の 初 、 禅 と 正 受 は 定 行 成 ず る こ と 、 方 便 と 智 と は 慧 行 成 ず る こ と 、 果 は 以 下 の 三 つ の も の を 総 じ た も の 、 以 下 三 つ は 別 で 徳 は 功 徳 、 力 と 無 畏 は 仏 の 智 慧 で あ り 、 そ れ ら を 覆 い 、 又 そ れ ら を 行 ず る に 際 し て 障 と な る も の で あ る と 言 つ て い る Q 以 上 大 要 を 述 べ た 本 経 の 煩 悩 論 は 、 こ れ よ り 後 に 名 目 の 上 で は 相 承 さ れ た が 、 組 織 の 上 で は 、 全 く 異 つ た 説 き 方 に 改 め ら れ 、 宝 性 論 や 仏 性 論 で は 、 如 来 蔵 経 の 九 喩 に 一 つ 一 つ を あ て は め て 説 か れ て い る 。