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駒澤大學佛教學部研究紀要 59 - 010挽地 茂男「「供食物語」における語りの位相 : マルコ6:30-44の時制諭的考察」

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(1)

Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Umversrty 駒澤大 學佛教學 部研究 紀要第

59

 

平 成

13

4

月 (

19

供食物 語

位 相

  

6

30

44

時 制

地 茂 男

 

来福 音 書 研 究は 歴

的批 評 的

historical

−critical

)方 法

が 主流を占め て き た。 そ れ は

実体

再構

成 し よ

とする史 的 探

へ の 衝 動 に端を発 して い る 。 史 的イエ ス

探 求

の 熱と は

らは らに 、

料 と して の 福 音 書 に対 す る楽 観 的 な信 頼が 、

音 書の 歴 史的資 料 と して の 価 値が徹 底 的に吟 味 ・批判 さ れ る こ とに よっ て 崩れ る 。

19

末か ら

20

に か けて の こ とで ある。 い わ ゆ る

Literary

 

Criticism

ばれ る聖 書 学上の 用 語は こ の

資料

批 判を内 容 と して い る

1

)。 つ ま りそ れは、 本

Literary

文 学 的

Criticisn1

と呼ば れ る よ り も

Source

資料)

Criticism

ば れるべ

きも

の で あっ た。 近年聖書 学 方 法 論 における

しい

が 、 旧

Literary

 

Criticism

に批 判 を向 け つ つ 、 再び

Literary

 

Criticism

と称 して登 場 する。 こ れ は 、聖 書 文書が

来 的に

Literary

文学

な もの であ り、聖 書批 評 家た ちは最 近に至る まで 、この を見過ご し に し、

Literary

と言い つ つ も

の 文 学 理 解 を

きた こ と を

指摘

する もの

ある。

 

歴 史的批 評 的研

的パ ラ ダ イム

範例)

の発 想の 心 は聖書 伝 承の発 展       ロ ギ オン 理論に ある。 す な わ ち伝 承 が その

最古

階 (例えば、語 録、物 語、

律 法)

か ら 聖 書の

テ クス トに着 床す るまで の発 展 段 階 を仮 定 し、その発 展の 過程で 伝 承へ の

加 あるい は削除 に よ っ て も た ら され る意 味の 改 変 ・創 出が研 究の 対

と さ れ た。 当 初 こ の研 究は、 こ の 発 展 段 階を

逆算

的に遡 及 する こ とに よ っ て 、 聖書に言 及 さ れて い 事 件 を示 す

に し て最 良の 証 拠を求め る こ と を主 眼 と して い た。 しか し歴 史 的批

的研 究の 方

が様 式 史を経て 編集 史 の 階 に 至 ると 、福 音 書テ クス ト形 成に決 定的 な

割を演 じる福 音 書記者 (編 集 者

) 自

身によ る 、最 終段 階で の 伝 承

材の 配 列 ・編

の た め の プ ラス ・マ イ ナ ス の改 変、つ ま りその編 集 操 作が主た る分析

対象

となっ た。 こ れ に加 えて その 編

操 一

460

(2)

NII-Electronic Library Service (

20

) 「供食物 語 」にお けるりの位 相 (挽 地茂男)

を 要

し た福 音 書 記

神 学 思 想 お よび著 作 意図 に研 究 者の 目が 向 け ら れ る に お よ んで 、 福 音

書記 者

なる

料の収 集 者の 位 置か ら ひ とつ の全 体 性

wholeness ) を持っ た

品の

著 者

(author ) と して意 識 さ れ る た 。 こ の 時 点で

音 書 研 究はすで に 、

資料

批 判か ら文 学 研 究の

対象

となる領 域に一歩 踏み込ん だの で ある

2

。 この

が 方法 論 的に 自

さ れ な け れ ばならない 。 発 展理論は聖 書 文 書の形 成 力の 大 方を、 伝 承 と社 会 的

環境

との

生 に見て い た が 、 編集 史 的研 究におい て この

著者

に位 置 付 けら れ る に至 っ たの で あ る。 い わば、 は か らず も 「編 集

文学 的 文 書につ い て文

的 問い を可 能に したの で ある

」 (

3

 

史的

評的 方法

に対 する批判 は 、 ひ と り文 学批 評の み な らず 学際 的諸 領域 か ら な され た。 例 えば

社 会

学 的な聖 書研 究 方

は 、

伝承

が発展 する状 況 すなわ ち社 会 的 文脈に お ける聖

書文

書の 機 能 を究 明 しよう とした。 こ の方法は 一

で は

式 史 的研 究が内 包 する社 会学的 な射 程 を自

的に

徹底

しよ

る もの で ある が 、 他 方で は従 来の資 料 分 析中心の 歴 史 的批評 的研 究に対 する

憤 懣

ら われの 一つ で っ た と見ら れ て い る (注

4

こ れ に対 して 文学 批 評か らの 接 近 は、 編 集 史 的方

に内

す る文学批 評 的 射 程 を

徹底

す る もの と見る こ とがで き る が、 こ れ も従 来の 方

する

根 本

的な批 判か ら 出発 してい る つ ま り聖 書 諸 文 書が 歴

的史 料 と して解 体 され 、

史的事

実を再 構 成す る

材と して用い ら れ る前 に、まず全

を持っ た

作品

と して

容 し理 解 され るべ き あり 、 む しろ聖 書 文 書が 歴

的素 材 と して有 効 に用い ら れ る た め は 、 そ

が よ くよ く理解 さ れ な け れ ば な ら ない 。 す な わ ち文 学批評 は歴 史批評に先 行 する と され るの であ る

5

)。

 

こ の 論 稿の 目的は、 マ ル コ 福

音書

五千人の 供 食」の 物 語 を

学理論 特 に時 制 論 と物語 論

ナ ラ トロ 観 点 問 う 、 マ ル コ

福音

書の 述 の 文学 的性 格の一一端 を確 認 す る こ とにあ る。 そこ で先 ずわ れわ れ は、 (

1

) 分析 方 法の 要 となる ヴ ァ イ ン リ ヒの

時 制論

を批判的に整理 し、 こ れ を 援用 して

2

テ クス トを分 析 する こ と に よっ て マ ル コ ・テ クス トの 文学 的構 造を確 認 し、最 後 に

3

)宗

教 共 同 体を支える伝 承 と

祭儀

、つ ま り くか た り〉 と 〈ふ り〉 の 題 に一考を加える こ と と す る。 一

459

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(3)

Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty 「供食物語」にお ける語 りの 位 相

挽 地茂男) (

21

1

 

方 法

論 的考察

 

ル ト・ヴァ イ ン リヒ

Harald

 

Weinrich

時 制

論』

の 中で 、時 制の

を時 間の 実

とは

別様

の もの と し、

諸言語

の時 制形式の 再 編 成を試み て い る

6

。 その

時 制論

め 大 きな特

は、〈か た りの時制 〉

erzahlendes  

Tempus

と 〈は な しの

時制

besprechendes

 

Tempus

区 別で ある

7

。 ヴ ァ イ ン リヒ の

議論

は現 代 ヨ ーロ ッ パ 諸 語 を中心 に展 開されて い るが 、

分類

を新 約聖書の ギ リシ ア語に適用 する と、 〈か た

制〉 には アオ リス ト

不定

過 去

未完

了 過 去、 過 去

了が 、くは な しの

制〉 に は現

、 現

在完

了、未 来、 未来完 了が分 類 さ れ る

8

。 ヴ ァ イ ン リヒは 、広

造 主 義の立場に立 か た りの 時 制 ア オ リス

不 定 過

去)

過 去 完 了

未完 了

過 去 はなしの 時 制

未来

現 在 完 了、 未 来

r

つ が、 機 械的 な記 述に よ る

考察

の 不 毛 を避 け、 こ の

分 を基礎に し て充 分 な 理

論展

開を保 証 するた め に、 三 つ の メ ル クマ ー ル を道 具 と な る基 本 概 念 と し て

入 してい る。 つ ま り

1

)〈発

話 態度

Sprechhaltung

2

〈発

話方 向

Sprechperspektive

) (

3

>〈浮 き彫 り付 与 〉(

Reliefgebung

の 三つ の概

であ る。 こ の 三つ の メ ル クマ ー が 、

様 な言 語の

現 を整 理 する

具 となる。 さ らに ヴァ イン リ ヒの 理論で は、こ の三概

か ら発 展 的に

出され た (

4

)〈時 制 転 移〉

Tennpus

Metaphorik

Methapher

)が加え ら れて お り、 わ れ わ れ は ま

ず以 下 に、 こ の 四概 念につ い て

批 判

的に整理 してお くことにする

9

 

1

1

 

話態

度の転 換

 

まず わ れわ れ は くか た り〉 とい う言 語

行為

が 、行 為主体の 二重 化 を と も なっ て遂 行 さ れ る こ と を確 認 してお かな けれ ば な ら ない 。 こ の行 為は、 過去 に所 属 する

事態

を、現 在 に所

する 主体が、 現

か らの 視 点 を介在 させ な が ら再 統 合 する とい

で 、二 重 化 的統 合ない し二 重 化 的超 出 を実 質とす る

行為

で ある。 こ の 二重 化は 〈か た り〉 の テ ク ス トにおい て は、 過 去 時 制 を用い る こ とに よ っ て なされ る。 〈む か し〉を語る 〈い ま〉 の くわ た し〉 は過 去 を指 示す る時 制 に 一

458

(4)

NII-Electronic Library Service (

22

) 「供 食 物 語 」 にお けるりの位相 (挽地 茂 男) よっ て、 現 在 と は異 質 な境 域に

入 し、 同時に過 去 を現 在 化 する。 歴 史と はつ ねに、 現 在 におい て過 去 を

るこ となの で ある。

 

音 書の 物 語は、 過 去 時 制つ ま りギ リ シア語の ア オ リス トを

使

っ て語られ て い る。

述 べ た よ うに、当 然の こ となが ら、 〈か た り〉の テ クス トの 基

時 制 は 過

時 制で ある。 しか しわ れ わ れ は 、 この

然の 過 去 時 制の

使

用 にお い て 、 「発

話態

度の 転 換 」 とい う事 態 を確 認 して お く必 が あ る 発 話 態 度 と し の 〈は な しの時 制 〉は、 目前の 行 動 ・効 用 ・

利害

関心 に か か わる場 面に

する 注 意 を喚 起して、 聞 き手 を緊張 (

Gespanntheit

Spannung

)と関 与に誘 う。 つ ま りこ の くはな しの

〉は、 問い か けや説明 や

判 とい っ た発 話 行 為に見 ら れ る、

対話者

直接 的

応答

喚起

する 日常 効用の 生活世界の 時 間に属 してい る。 こ れ に対 して、〈か た りの

制〉の ほ

は、 反対 に、 現 在 聞 き

に さ しむ け られて い る言 語 行 為が、 さ しあたっ て

面の

行動

状 況や利 害 関心 とは無 関

で あ り、 その か ぎり単な る 〈お話 し〉と して聞い て もらっ て さ しつ か え が ない と い

、 〈緊 張 緩 和 〉

Entspanntheit

へ の 誘い の信 号 を含ん で い る。 こ の く緊

張緩和

〉は、 〈む か しむ か しある とこ ろ に … … 〉 とい うあの 〈むか しば な し〉 に 顕

ら れ る、 現 在の 直接 性か らの

放の

果で ある。 以

h

.の ような時制 形

の選 択は、

が発 話の 内容につ い て

方 」

を示 すメル クマ ー ル と言っ て よい 。

 

しか しこ の 〈むか し〉 語 りは現 在 との 関係 性の無 化で は ない む し過 去 時 制 に よ っ てかた られ る くむ か し〉は、 かたる者の

直接

的 ・効 用 的な 〈い ま〉 と 直 交 す る 垂直の 次 元を搆 成し、 現

に対して 〈む か し〉 とい う

位 相 去 と し て関 わるの で あ る。 こ の

態が くか た り〉 とい う言 語 行 為 をそれ と して 特 徴づ け る の 、 すな わちそれ を他の 言 語 行 為か ら分か つ 特 徴で あ る だ か ら

〈む か し〉一 くい ま〉 とい

う表

ア に よ 示 さる 時 間 理 、 そ れ を単 に、 過 去一 現在一 未 来 とい う単 層 的な 図

に配

して理 解 すべ き もの で は絶 対

457

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(5)

Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty

        

「供食物語」に お

りの位 相 (挽 地 茂 男)

       

23

) にな

、 む しろ、 さ しあたっ てい えば、 上の ような

重層

時 間体験

の 図

っ て 理

され るべ き もの

となる の で ある

10

。 〈い まはむか し … … とい

〈む か しばな し〉 の 導入定 式 は、 こ の 重

的 な時 間

験 を端 的に

現 し てい る。

 

また 同 時 に、

去 時 制 を基

とする くか た り〉 で は 、すで に述べ た ように、 現

時制 を 基本 とする 〈はな し〉 らの 二 重

的 統

ない し二重

的超 出が

こ っ て い る。 それは 〈は な し〉 をする

我 主 体が くかた り〉 と い

う言

語 行

に お い ては二 重

され るこ とを意 味 する。 こ の 二重

は物語にお ける 〈作 者 〉 と 〈語 り

〉 の

別 に お い て しば しば

じ ら れ る

11

。 さ らに こ の 二 重

に よっ て志 向さ れ る世

は、 別 次元 の 奥深い

域 へ と通 じい る 物 語の

り手 は 〈か た り〉 におい て 、

い わ ば 日常

用の 生 活 世 界の

水平

時 間 の れ と 直 交 する、 〈 ミュ ー トス 〉の 遠 くは る かな

憶 と想 像 力 の垂 直の 時間の次 元の

行 きへ

入 し つ の

元を

来 しつ つ か た るこ とに よっ て 、共 同

同 性の

り返 して の

出基 盤 ともな り、 ま た わ れ われ の心 性 と宇

根底

の 形 成

との きずな ともなる もの の うちへ とこ ころ を根づ かせ、 また、 世

と人 間の 生を解

し、

動の指 針 をあた え る一連の 母 型

トリッ クス

ない し

型 を凝 縮 さ れ た形で提 供す る とい

なこ ともある

の で あ る

12

)。 〈ミ ュ ー ト ス 〉は元 来、 物 語の 〈

〉を

意味

する ギ リシ ア

であ る が 、 これ が

神話 (

myth

の 語 源であるこ と は、 くか た り〉 に よっ て 開か れ る境 域が単な る過去 時 へ

及 に とど まらず、 非日

的な世 界 開 示の 端 緒 と なる こ とを

し て い る。

 

ヴァ イン リヒ の 時 制 論を さ ら に展 開 した坂 部 恵は、 〈はな し〉か ら 〈か た り 〉 へ と向か

方 向に

の 言

語 行為

として超 出の度 合い の

まっ た く

た 〉       の りc の レベ ル を配 置し、 その 類例

行為

と して、

や 「祝 詞」 に見ら れ る、 〈つ       と な                                   Y       うた げる 〉 〈の る 〉

上 か らの 言 語

行為)

「称え」 「

に見られ る 〈っ た う〉 〈と なえる 〉くい の る〉

下 か らの 言語 行 為

を確 認 し て い (注

13 )

そ し てそれ らの言 語行 為におい て は、二 重 化 的超 出の 度

垂 直方

に高ま るこ と を指 摘 してい る。 さ らに彼は、 人間の 身体

行動

の 〈ふ る ま い 〉一 くふ り〉一 くまい 〉 が 、 〈は な し〉 一 一 〈た 〉 とい う垂 直 方 向の 二重 化 的 超出 と並 行

係に ある と

摘 して 次の ように述べ てい る。 「〈は な し〉 一 か た り〉一 くうた 〉、 あるい は くふ る まい 〉 一 〉 と

た どっ て、行

とその主体の 二重 化 的超 出 ない し 二 重

的 統 合の

合い が

ま り、 ま 一

456

(6)

NII-Electronic Library Service (

24

) 厂供 食物語」に お ける語 り 挽 地男 ) たその 構 造が顕 在 化 する につ 、 ひ と は 、い わ ば 日常 目前の生

世 界の 時 空 の 拘 束か ら

、 そ うした 目前の 利 害 ・効 用 に

直結

するい わ ば

水平

の 時 問 ・ 空 間 か ら、

憶や

想像

力の 垂

の 時 間 ・空 間の

奥行

きの うちへ と

入 す る 。 こ の 垂 直の時 間 ・空 間の 次 元は 、 そ

にお い て、

に非日常 的 な 〈ミュ ー ト ス 〉神 話空 間

憶を絶 した 〈イ ン メ モ リ ア ル 〉な時 間に ふ れる

(注

14

。 くむ か し〉と 〈い 〉を結ぶ 時 間は 、垂

時 間、 神 話 的世界に

わ まる記憶 と 想 像 力の時 間である。 こ こで は 、人 間の 生

世 界の 水

の 時 間とは ちが て 、 くむか し〉と 〈い 〉の い だ に、 絶 対 的 な異

性お よ び不 可

性と同時に原理 的 な 反

性が

在 する こ とに なる。 宗 教の 伝 承と儀 礼 は 、 この くか た り〉 と くふ り〉 を

媒介

と して、 日常 的 時 問に対 して、垂 直 的な非 日常 的時 間と して

直交

す る。

 

1

2

 

方 向の 転 換

 

ヴ ァ イ ン リヒ に よっ て 区 別 され た 〈か た りの時 制〉 と 〈はな しの

〉は、 さ らに 〈発 話 方 向 〉

Sprechperspektive

メ ル クマ ー ル を 基準に、 下 図 の ように整理 さ れる。

果 として 、 アオ リス ト

不 定 過 去 )お よ び未完 了 過

と 、現

在時制

を、 それぞ れ 〈か た

制〉お よび くは な しの時 制〉の ゼ ロ段

Null

Stelle

)と して 、回顧 的な方

向 (

Perspective

) を

時 制と予 的 な

方 向

Perspective

)を持つ 時 制振 り分 けられ る

15)

。 要 する に回顧 時制 と は先 行 情

を遡及 的に とらえ、予 見 時 制 とは後 続情報を予め先

取 りす

る時 制 の こ とで ある。 回 顧 時 制 ゼ ロ 予 見 時 制 か た りの  時 制 過 去

了 ア オ リス ト 未

了 過 去

接 続 法 〕 は な しの  時 制 現 在 完 了 現 在

 未

来 未来 完了

 

1

2

1

回顧 時制

 

過 去の 出 来

を語る場 合に も、 過 去 時 制

ア オ リ ス ト、 未 完了 過

)を用い る こ と も 現 在完了時制を用い る こ と も可 能である 。 し か し問 題の 出 来

年 前 過 去 来事 っ て も、 こ の 出 来

に対 す る語 り手の 関 わ り方に よっ て 、

使

用さ れ る時 制が異なっ て くる 。 例 え ば語 り 一

455

−・ N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(7)

Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty 「供食物語」に おりの 相 (挽 地 茂 男) (

25

が、 この 過 去の 出来

を、

単純

に過 去の

事 実

として

報告

す る場

と、

法廷 審

理の よ

有罪

・無 罪 を かけて

論争

わす 場 合とで は、 ひ とつ の 出来

に全 く別の 対 応が 生 じる こ とに な る。

前者

の 場 合は、 だい たい 〈か た りの時 制 〉、 と りわけア オ リ ス トと

未完了

過 去 が 用い れ、

後者

場合

は、

現在

完 了お よ び そ の の 〈は な しの

時制

〉が用い られ るの がつ つ ま り現 在

了で遡 及 される過 去は、 問題 にすべ き過 去、 つ ま り 〈は なし〉合 う べ 過 去、 とい う

つ の で ある。 こ こ で は過 去の

実につ い て の情 報の交換が問題 なの で はな い 。

事 実

が 、人に対 する告 発や

明 の ため に引

き合

い に 出さ れ るの で ある。 そ れ ゆえ遡 及 さ れる 一一・連の

は 、 そ れ 自体が一

発 書

であ り

弁 明 書

なの である。 過 去 を 回

する こ とに よっ て な され る

発や弁 明は明ら か に

用 を

図 して なさ れ る説 明 ない くは な し〉 で あ り、 〈か た り〉 で は ない 。 そ れ ゆ え こ の ような 目前の行 動 ・効用 ・

害 関 心に関わ る場面 には 、 現在 完了 が と く に

く見 ら れ るの で あ る。 〈か た りの 時 制 〉 に属す るア オ リス トや未 完 了 過

と、 〈は な しの 時制 〉に属 する現 在 完 了は、 過去の

柄につ い て

造上 の

境 界

線 を ひ き、 過去の

件 にたい

る立

明 する。 こ れ らの 時 制

形式

の 相 違は 、

間的経 過の

別 を

すの で は な く、 過 去に対

る立

場 (

Pe

spectivc )の違 い を表 明 して い るの で ある

16)

 現

在完

了は よ く

現 在に まで

用 し続 ける過 去 」 と定

さ れ る が 、 ヴァ イ ン リヒ は これ を不 十 分 と してつ ぎの ように述べ てい る。 「現

在完

了 が過 去の

柄 を説 明する とい うの は、い わ ば過去 を くか た る 〉 こ とに よっ て 、 わ れわ れの

在と行 動か ら切 り離 し閉 じこ めて しま うの で は な く、 説 明ない し 〈は なす〉こ とに よっ て 、 過 去 を わ れわ れ の 存在 と行 動の ため に開 い た ままに してお くこ と なの で

る。

つ ま り現

完 了時制 が 「過去の こと を 〈か た る〉 の で は な く説 明 ない し くはな す〉 とす れば、 そ れ は まさに完 結 し た

perfectum

柄で は な く、 現 在あ るい は未 来の

柄 と同

、 まさに自分の 世 界に属 し、 それ へ 配慮 か ら説明する もの だ か らで ある。 そ れ は 一 種の 過 去で は ある が 、 自ら行 為す る ときと同じ

言葉

表現

する の だ か ら 、 自ら関与 する過 去であ る。 そ して 過去 を 説 明 しなが ら表 現 す るこ とに よっ て 、 同時に 自己の 現在と未来 を変え る の で あ る。 それ は緊

した

あっ て、 語られ た 世

を その ま まに してお く語 り手 の

い た 冷 静 さ とは お よ そ かけ離れて い る」の で ある (注

17

)。 一

454

(8)

NII-Electronic Library Service (

26

) 「供 食物語 」 にお語 りの位 相 (挽 地茂男)

 

1

2

2

予 見 時 制

 

先 取 りれた後 続

情報

を もた らす

来 時 制 も、 過 去の事 実 と同 じく、 〈か た りの時 制〉と 〈は なしの 時 制〉 で は 、未 来 に対す る 立場や見 方

Pcrspective

相違

を示 す こ とになる。 つ ま り くは な しの

制 〉 に属す る未

来時制

は 、

潜 在力

に おい て、 わ れ わ れの行動 や利 害 関 心に

接 的に 関

する

で あるの に

して、 〈か た りの 時 制〉 に属 する予 見 時 制は 間

的 関

、 ない し想

的な次元 を指示 してい る。 そ れ は読 者を、 未 来と も呼べ ない 次 元に誘

する。 もちろ ん ギ リシア

には、時 制と して こ の 機 能を担 う時 制は存

しない が 、 われ われ の 見 解で は 、接 続

が こ れ を

担 う

もの と考え ら れる。 こ こで はこ れ につ い て 指 摘 する に と どめ 、

詳論

の 研 究に ゆ ず るこ と とす る (注

18

)。  

1

3

 浮 き彫 り付 与

 

ギ リ シ ア語の未 完 了 過 去 とア オ リス トは、〈

発話態度

〉 とい

で は両 方 とも 〈か た りの 時 制 〉 に 属し、 〈発 話 方 向 〉とい う点で は ゼ ロ段階 に属 して い る。 そ こ で ヴァ イン リヒ は、 この 未完 了過去とア オ リス ト (ヴ ァ イン リ ヒ の説 明に頻 出 する フ ラ ン ス で は半 過 去 と

純過去に相

す る

とい

〈か た りの 時 制 〉 に属 する二 つ の

発話 行 為にお ける役

分 担 を

明 する た め に、 <浮 き

付 与

Reliefgebung

とい

〈か た り〉 にお ける 〈背 景 〉

Hintergrund

の 叙 述と 〈前 景〉(

Vordergrund

)の 叙述 の 役 割分担に基づ く効 果の 概 念を導入 し てい る。 つ ま り未 完 了 時 制は 〈背 景 〉 を構 成 し、ア オリス トによ っ て描か れ る く前景を浮 き彫 りにす る効 果 を持つ と さ れ

19

 

一般の 文 法 書 にお い て 、 未 完 了 過 去とアオ リス トの

い は 下 図の よ

に説 明 一

453

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(9)

Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty 「供食物語」における語 りの位相 (地茂男) (

27

) され る。 まず

1

)未 完了

が状 況や付 属

的細 部

や行 為 経 過 を

述する の に対 し て、 アオ リス トは 生起 した

純 な事 実を報 告 し

総括

的発 言 を行 う。

2

)未完

了 が

永続

的 条 件や 継

的行 動 を叙 述 するの に対 して、 アオ リス トは

結 点

頂 点

、最 終 的 争

結論

的 過 程 ) を叙述する。

3

) 未

了が全

的 描 写 に従

す るの に対 して、 アオ リス トは個 別 的な

事態

特徴

的 な実例 を

描写

する。

4

未完 了

が 「努 力 」を描 写す る とする と、 ア オ リス トは

達 成

描 く

こ と にな る。

5

未 完 了が 中

心 点行為

に従 属 す る

行為

を描 写 するの に

して 、 アオ リス トは

行 為 との 関

に左 右 されない 中心

点行為

を描 写す る

20

。 そ の

、未完 了 を

線 的過去」

と しア オ リス トを 「点 的 過 去」 と説 明 する もの や、 ま た未 完 了を

継続 的

過 去

と して ア オ リス トを

一回 的 過去

と説 明 する

の もある

21

 

とこ ろ で わ れ われは、 まず こ れ らの 一般 文

説 明が 、語 およ び

単位

と して述べ ら れて い る こ と に注 意してお か な ければ ならない ぜ な ら、 こ れ に対 して ヴァ イン リヒ の 理

が、 テ ク ス トを

単位

と して展 開さ れてい る か らで ある。 それ ゆ えこ の

をふ ま えておけば、 上

の 説 明は決 して、 ヴァ イン リ ヒ 理論の 〈背 景の

時制

〉〈

前景

に時 制〉 とい う説 明と対立 す る もの で はな く、 む し ろ両

補完

的 な関 係にあ るこ とが 理解 さ れる 。

 

しか し 〈背 景の時 制 〉が 、物 語の 導 入部 と終 結 部に 頻 出する とい

う事 実

は、 ヴ ァ イ ン リヒ理 論が対

とする テ クス ト

成 全

を視 野に入れ た場

にの み見 えて くる事 柄で あ る。 そ れは こ の時 制が、

ろ うとする世 界に

読 者

み 、 読

りの 世

を巡 っ た

再度

りの世 界 を閉じ、 語 りの 世 界か ら切 り 離さ れ た 日常 の 世 界へ

読 者

を誘

する役

を担 うこ とが 多 い か らで あ る。 つ ま り 〈背 景の時 制 〉 の もつ 主 要な機 能の 一つ は 、くは な し〉の 世界 と 〈か た り〉 の世 界の 間 に境界 を設 ける とい こ とで ある 。 一

語の 中心 部にお い て 〈背 景時 制 〉が用い ら れ る場 合は、

付帯状況

、細 部 描 写、 省 察の 付

その 他、 語 り

背景

の 中に入れて お こ うと

えるす べ

柄 を記 述 するこ と が 可

で ある。

 

〈前 景 〉と は 、ふつ うそのた め にこ そ物 語が語られ る

柄であ り、 目次や表題 に要 約 する こ とが で き る。 一 背景 とは 、 そ の ただ 一度の 出来

を、 既 知 の 関連 性が形 成 す る地 平つ ま

Bildfeld

組み 入れ よ うとす る技 法 なの で ある。 一 一

(10)

NII-Electronic Library Service

28

) 「供 食 物語」に お語 りの位相 (挽 地 茂男 )

 

1

4

  時制 転移

 

E

の よ うに 三 つ の

時制

の 移 行 を示 す メ ル クマ ール を基 礎 概 念 と して 、

さら に ヴァ イ ン リヒは、 〈時制 転 移 〉

Tempus

Metaphorik

Methapher

とい う

た な

概 念

入する。

 

1

4

1

時制

転移

の構 造

 

ヴ ァ イ ン リ ヒ は、 この ; つ の う ち、 一 度 に異 質 な二 つ の

制 移

た もの を 〈時 制 転 移 〉 と

22

。 例 えば 下図の

 

の 時 制

移の よ

に、 くか た り〉 の テ ク ス トの 動 詞の

制 がア オ リス トか ら現在 完了 へ と移

した

、 まず

1

〈か た りの 時 制 〉か ら 〈はなしの

制 〉へ と 〈発 話 態 度 〉 の 移

と ともに 、 さ らに

2

ゼ ロ 段 階か ら回顧

制へ と、 つ ま り現 在 時 制か ら現 在 完 了 時 制へ の 〈発

〉 の 移行が 同時に起こ る こ と に な る。 ヴ ァ イン リ ヒ は 、この ように一

に二

時 制 移 行を経た もの を 〈

時 制

〉 と

ぶ の である。 〈か た りの 時 制〉       ア オ リス ト 過 去 完 ∫    未完 了 過 去      〔接 続 法 〕 回 顧

 

ゼロ

段 階  

予見

時制

 

くは な しの時 制 〉 回顧 時 制 現在 完 了

ゼロ段 階 現 在 予 見

制   未 来 未 来 完 了

 

一方

 

の よ うに、 〈は な し〉 の テ クス トの 動 詞 が 、 現 在 時 制 か ら、 くか た り〉 の予 見 時 制に移行 した場 合 も、 (

1

〈発話態 度 〉と (

2

)〈発 話 方 向〉が 同 時 に変 化 を

して お り、 〈時制 転移 〉が起 こ っ て い る。 以 上 の

 

 

の 例以外 に も、 一 度に 二つ の メ ル クマ ール の 変

を示す もの は 、 すべ て 〈時 制転 移 〉 と

ば れ る。  

1

4

2

テ クス ト効果  で は、 こ れ ら の く時 制 転 移〉に よっ て 〈か た り〉 の テ ク ス トにい かなる効果が発現 するこ とに な るの だ ろ うか (こ こ では説 明の た め に、便 宜上

 

 

の 例 だけ を問題 にす る こ とにする )。 まず

 

の 場 合に は 、 テ クス トの 制 が 〈か た りの 時 制 〉か ら くは な しの 制 〉へ と移行 示 す 、 そ こ で は 、すで に述べ た 〈はな しの 制 〉か ら 〈か た りの 時 制〉へ 移 行 逆 方

451

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(11)

Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Umversrty 「供食物語」にお ける語 り

挽 地茂男〉 (

29

転換

が 起 こるので ある。 つ ま

この

換は、 くか た

〉 の 中に

本来

あっ た 緊張

緩和

特性

を部 分 的

り消 すの で 、 そこに は 〈か た

〉 に よ る 〈

緊張緩

和〉 と逆の こ とが起こ る の で ある。 こ れ を 〈

再 緊張

化〉作 用 と

ん で おこ う。 そ して さ ら に 、こ の 〈

発話態

度 〉 の

逆転換

に よる く再 緊張

〉に 、第二 の 〈発 話 方

〉 の

転換

が 加わ る と、 これ に よっ て くは なし〉の 回

顧 時

制 ( つ ま り現 在

制 効 果

追加

され るこ と になる。 ヴ ァ イ ン リヒ は こ の 二

の 異

制 移 行 によっ て発 現 する効 果 を、 〈有 効 性の増 大〉 とい う

現で つ

の よ

に述べ てい る。 「二 度の 異 質時制移

、 つ ま り、

移 が 問 題 なの であ る。 時制は こ の 移

の さい 、 発 話

態度

と発 話 方

の 二

メ ル クマ ー ル

の 変化を示 してい る。 〈か た り〉か ら

明 ない し 〈は な し〉 へ 、 ゼロ

階か ら回顧 時 制へ 飛躍 てい る。 これ ら二元 的 移 行に よっ て、

語は

略〕

そ れ まで と 全

く違 う様

態の話 し

に移 され る。 こ れをわ れ わ れ は有効性 の 増大とい っ て よ い

」 (

23

。 結 果 として こ の 〈

有効性

の 増 大 〉は、 〈時

移 〉 に よ る

物語

実 世 界へ の 〈連れ戻 し〉 とい

う効

果 を発 現 させ るの で ある。

 

 

場 合につ い て ヴ ァ イ ン リヒは、 〈

有効性

の 制 限〉 とい

う表

現でその テ クス ト効果 につ い て述べ い る

24

。 つ ま り 〈は なしの

時 制

〉か ら 〈か た りの 時 制〉へ

発話態

度〉 の転

見 時 制へ の 〈発 話 方 向〉 の 転

が 起こ るこ とに よ

1

〈はなし〉か ら 〈か た り〉 へ の

換が もた らす く

緊張

和 〉と、

2

)予

見 時 制に付 随 する 〈不 確 実 性 〉の 相乗 効果 によ っ て、 〈

効 性の 制 限 〉 とい

文脈 的 効 果が もた ら され るこ とに なる。 しか しこ の 〈有 効 性の 制 限 〉 は 、

無効 性の 拡

大」

を意 味 するの で は な い 。 それ は、 目

の 効 用とい

そ の 時々 の一 つ の 視点にの み

拘束

さ れ、 当面の 必 要の 〈

緊張

〉 に しば ら れ た 〈は な し〉 の 発 話 を超 えた、 よ り

い 記憶 や

想像

期待

の世

につ な が っ て い る の である。 む しろ こ の 〈

時制転

移〉 に よ る 〈有 効 性の制 限〉 は 、現 実 世 界か ら の 物 語 世 界へ の 解 放 とい う効 果を 増大 させる の で ある 。

 

この よ うな 〈時制転 移 〉 の は た らきを

介 とし て 、 ひ とは、くは な しの

制 〉 と 〈か た りの 時 制 〉 の問 を

来 し、 現 実の 世

を出て、 垂直の 過去の 神 話 的 世 界の 底 知れぬ み まで を含め た 〈かた り〉一 〈うた 〉、 ある い は 〈ふ り〉一 くま い 〉の 世界に遊ん で 、 回顧 時制の 含み や 予 見 時制の 不 確 実 性 を拡 大 した ひ ろ く 深い ス コ ー プ か ら現実 を照 ら し出 しつ つ の 潜 在 的可

能性

を さ ぐ り、 あるい は、 そ こ か ら現 実の世 界に立 ち 返 っ て、 具 体 的

行為

指 針を定め る とい っ た 一

450

(12)

NII-Electronic Library Service (

30

      

「供 食 物 語」にお けるりの位相

挽 地茂男)        メ ダフア  プロ セ ス

返 すの であ る (注

25

)。 こ こ に 〈

移 〉

隠 喩 )の もつ 本 来 的       メ クフ ニレン な 〈移

する〉

う効

が発 現 する の である。

 

物 語テ クス は 、 こ の よ

々 の テ クス ト効 果の 統 合 体 と して成 立 して い る。 本 稿の課 題は 〈

時制

〉 とい

う 「

達 価

が か りとして こ れ らの 効 果 を可 能に して い マ ル コ の テ クス ト構 造の 一

を明 らかにす る こ とで ある。

2

 

  2

1  私

と時 制 分 析

  

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32

そ こ で 、 一 同 は舟に乗 っ て 、 自 分 た ち だけで荒野へ て 行 た 。

33

とこ       ア  オ  リ  ス  ト ろ が、

くの 人 々 は

らが 出 かけて行 くの を 見 て 、 そ れ と

づ い て、 ずべ て の       ア オ リス ト         ア .牛 リ ス ト        ー…

449

一 N工 工一Eleotronio  

(13)

Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Umversrty 「供食物語」に お ける語 りの 位 相 (挽地茂男

31

町か ら

歩で そこに一斉に

駆 け

つ け 、

らよ

り先

い た。       ア オ リ ス ト         ア オ リ ス ト

 

34

イエ ス は舟か ら 上 が り、

大勢

の群

を 見 て 、

らを

く憐れ まれ た。 そ       アオ リスト      ア   オ  リ  ス   ト れ は彼らが、 羊

い のい ない

の よ

なあ りさまで あっ た か らで ある。 そ し て       未   完    丁 彼ら に 、

くの こ と を

え始め ら れ た。       オ  リ  ス ト       ア

 

35

やがて長 時 間が た っ たの で 、

弟子

たちが イエ ス の もとに来て言っ た。

こ       i      ア ・ は

し・ も

間に な ります・

36

人々

さ せ

ξ

い ・ そ

すれ ば・

分で

りの 里や村 へ ・ 何か

物を買

で し

±

」 (

26

37

しか し イエ ス は これ に

えて 言っ た。

た がたが 彼 ら に

を       ア オ リス ト 与 え なさい 。

する と弟 子た ちは

に向か っ て

わ た し た ちが二 百デ ナ 1f

 

パ ン を 買

、 み ん な

1

え るの で すか.

38

し か       ボ       し イエ ス は彼 らに

言 う

。 「あ なた が た はパ ン をい くつ 持っ てい るか 。 行

6

て 、       π                                  現          命 令 法

確認

しな さい 。

」弟子

たちは確か めて来て、言 う。

五つ あ ります。 それ に魚が二

峨 魂

そ。 で、 イエ ス は

子たち

1

ん なを

に分 けて

の 上にす わ らせ る よ

じた。

40

人々 は 、百 人、五十 人

つ まとまっ て

わっ た。

41

      ス  ト       ア オ リス ト      ア ォ リ それ か ら イエ ス は五つ のパ ン と二匹の魚を

取 り

、 天 を

い で 、

謝 して       オ     リ    ス    ト       ア

27

、 パ ンを裂い て 、

弟子

たちに与 えて 人々 に配 らせ 、 二匹の

もみ ん な に       ア オ リス        ボ     分 けら れ た。

42

み んなの 者は

べ て、

腹 した。

43

そ して 、パ ンの

を軸

た とこ ろ ..  −

f

龕齢

1

。 た.

44

パ ン を食べ た

ge

ま男       ア オ リス ト が五千 人であっ た。         未  完  了

 

2

2

ス トー リ ー ・ライン

 

物 語の 中心 にな るス トー リー ・ライン は、 過 去

時制

す なわ ち ギ リシ ア語の ア オ リス トに よっ て展 開 さ れ る。 イエ ス と

弟子

た ちの 一 行が 荒野 へ 「出て い っ た」

32

節 )

き さ 、 その

前で 述べ られ て い る g つ ま り宣 教 活動 に派遣 されて い た弟 子 た ちが 帰 還 し、 そ の 活 動 の報 告 を

け る と、 イ エ ス は、 弟 子 た ち に

息 を取 る ように勧め る (

30

31

。 その 勧め に

さ れ た 一 行が

に 乗っ て 出て い く とい う くだ りか ら、 場 面 展 開が

まっ て い る。 こ れ と同時

イ エ ス と

子た ちの

移動

知 した群 衆が、

行動

を開 始す る

33

節 )。 群衆 は 陸 地づ たい

、 イエ ス の 一よ りも先 的 地 に到 着 す 。 そ して 一

けて い た 群 衆 を見て 、 イエ ス は、 飼い 主の い ない 羊の よ うな

らの 有 様を深 く憐れみ 、教 え始め る

34

節 )。 教え が

長時

間に及び、

群 衆

の 食

の心 一

448

(14)

NII-Electronic Library Service (

32

) 「供食物 語 」にお ける語 りの位相

挽 地茂男) 配 をした

子たちが 、 イエ ス に 、 群衆が食 料を調 達で きる ように解 散 を要

す る

35

36

節 )

。 こ の弟 子たちの 要

を きっ かけに 、 イエ ス と

た ちの 問 答が 始 まる。 イエ ス は

子た ちに、 彼 ら 自

が群

の た め に食 料 を調 達 す る ように 命 じる。 しか し

らは、 群 衆の 人数 が あ ま りに

い の で 、

分た ちの 手でパ ン を購入 して食べ さ せ る こ と な ど不可 能だ と訴える

37

節 )

。 する と イエ ス は 、 手元 に あるパ ン の を調べ させ 、弟子た ち が そ れ を報告 する と

38

節)

、 弟子た ちに命 じて 、群

を百人、 五 十 人 ずつ の 組に して青 草の上 にすわ らせ る

39

40

節 )

。 そ して イエ ス は、 五 つ の パ ン と二 匹の魚 を と り、 天 を 仰 い で、 神 を称え 感 謝 して、 パ ン を

い て 、

子たちに 与 えて 配らせ 、 魚も同 じ ように分 配 した (

41

節)

。 すべ て の 者が食べ て満 腹 し、残り を集め て 見ると十二の 籠にい ぱい にな っ た

42

43

。 そ して最 後に、食べ た男の 数が五 千人であっ た こ とが報 告 さ れ る

44

節 )。

 

2

2

1

場面設定

 

この 人の

物 語の 胃頭は 、 イエ ス と弟子 た ち の 一行が舟に 乗っ て 出 て行 く場 面か ら始 まっ て い る が 供 食の 物 語が終 了す る と、 イエ ス は強い て 弟子 た

を舟 に乗せ 、 場 面は再 び舟の 場 面 に戻 っ て い る

6

45

52

。 つ ま りこ の 供 食 物 語は 、 前

を舟の 場 面に よ っ て囲 まれ た く囲い 一

447

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(15)

Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Umversrty 「供食物語」に おけるりの位相 (挽 地茂男) (

33

形式

inclusio

っ てい る。 マ ル コ

福音 書

におい て ガ リラヤ

は 、ユ ダ ヤ人の地 と異

人の 地 を

分離 す

壁を、 つ ま り浄 と不 浄 を分 離 する

壁 を

徴 して い る が

28

、 イエ ス と

弟子

た ちを乗せ た

は何 度 もこ の湖 を横 断 する。 同

は、 押 し

せ る群衆 を前に して 、 イエ ス が湖 畔で教 え を語る

設定

3

9

4

1

、 また嵐の湖に浮かぶ

は、

難にある

子た ちの

を露 呈 し (

4

35

41

6

45

52

、 彼らの無理解が強 く叱 責 され る

場 面

をつ くっ てい る (

6

52

8

14

21

。 つ ま り

の場

は、イエ ス の宣 教

活動

と、

子 たちの教 育 ・訓 練 とい

、 宣 教 を中心と して

止 す る こ との ない

動的

な イエ ス と弟 子た ちの

活動

徴 して い るの で

る。 それゆ えこ の舟の 場 面 に前 後を囲 まれ た

供食物語

舞台

となる

は、 宣 教の合 間、

活動

の 一時 休 止 して ま

は設

され て い る

31

節)

。 しか し な が らこ の

休息

の 場に も、 群

た ちは や っ て くる。

 場 所

荒野

」 (

35

節 )

とされて い るの に は意 味が ある。

各種

翻 訳は こ れ を、

寂 しい 所 」

人 里離れ た

所」 (

共 同訳 )、 “

a remote  

place

NIV

、 “ adeserted  

place

NRSV

と訳 して い 、 こ の よ

して しま うと、 マ ル コ 「荒野

とい う言 葉

たせ よ うと してい る意

り過 ご して し ま

こと になる。 マ ル コ に とっ て 「荒 野 」は、 イエ ス の 先 駆 者である洗 礼

ヨ ハ ネ が神の悔い 改 め の メ ッ セー ジ を宣べ

え、 同時に イエ ス の到 来を預言 した、 神 の 啓 示の

である。 ま た そ こ は、 イエ ス が サ タン の

み を

けたの ちにi 天

使

が彼に仕 え、 野 獣が

意 を捨て て 人と共に い る と い う

園 的 なイ メ ー ジを

起 させ る場

で ある (

1

12

13 )

。 そしてそ こ は ま た、 イエ ス が 宣 教 活 動の 合 間 に、 祈 りや

休息

の た めに戻っ て い く

  

その た めにマ ル コ は地理 的 な誤 謬を犯 して

を配置 するこ がある

29

)一 特 別な場 所である

1

35

45

6

31

32

荒 野

は イエ ス と弟 子た ちに とっ て、

示の場 所で

り、

へ の 近 が 可能 な、一種 共 同体的 な 場 所で もある。 つ ま

り供食物 語

は、 舟の 場 面 を境

線 と して切 り

ら れ た特 別な場 面 設

っ て い るの で ある。

 

2

2

2

背景

 

テ クス トは、 こ の 場 面の 背 景を 四つ の

未完

了過 去で描 い てい る。 こ れ ら の未 完 了過 去 は 、 まず 群 衆の様 子 を 「羊飼い の い ない の よう

であ り

33

、 その 規 模が男だけで五 千 人 に 上 っ た こ とを

えて い

44

。 こ

して イエ ス と弟子 た ち とそれ に加わっ た

群 集 か らなる一

が 、 場 面 経 過の

勢 を

決定

し、 群 衆の

状 と

希求

が場 面 展 開の

背景

的動 因と して 場面 を

(16)

NII-Electronic Library Service

34

> 「供食物語」に おける語 りの位相 (挽 地 茂 男 〉 進行 させる。 さら に群

の必 要 を

して イエ ス に進 言 する弟

たちの

動を

的に

す 「

っ た

」 (

35

節)

とい

未完 了 時 制 も、 イエ ス と群

と して の

弟子

たちの

い を、 一回 的 な

行動

ではな く反

復 的

行動

として

背景

設定

してい る。

重 要

なの は、

与 え る

41

節 ) とい う イエ ス の

所 作

が 、〈背 景 〉を示 す 未

了 過

現 されてい る こ とで ある。 この 「

える

と い う動 詞は、「五 つ の パ ン と二 を取 り、 天 を仰い で 、

感謝

して、 パ ン を裂い て 、弟子 た ち に

えて 人々 に配らせ 、 二 匹の魚もみ ん なに分 けら れ た」 とい 、 群 衆 に食物 を分配する際の イエ ス の 一 所 作連 鎖 込ま れ て い る。 一連の 動 詞が ア オ リス ト時 制で あ るの に対 して 、 こ れ だけが未

了 過 去の 時 制 を取 っ てい る。 つ ま りこの

時制

に よっ て、 イエ ス の

与え る

とい

う行

を群 衆 に対 する常 態 的 な行 動 と して背 景 化 するの で ある。

え て 、 この イエ ス の 一連の

は、

述する よ うに、

最 後の晩 餐

の い わ ゆ る

聖 餐 制 定

ば れ る 、 イエ ス がパ ン を裂い て 弟 子た

に与える

所作

緊密

な並 行 関係 にある

14

22

 

さ らにわ れ わ れ は、 こ の物 語に、 ユ ダヤ ・キ リス ト教の 宗教 的伝 承と経 験が、

々 の メ ー ジ として

びつ い てい る こと を、 背 景 との 関連で指摘 して お く必 要があるだ ろ う。

  2

2

3

伝 承 史 的 考 察

 

現 在まで の

伝承史

研 究

に よ る と、 こ の 物 語 に は以 下の ような イメ ージ との結 びつ きの可 能 性が指 摘 され て い る。

 

1

)神の 民 が 、 出エ ジ プ

、 約 束の 地に至 る まで の 問 置かれ た 「荒野

とい う状 況

プ ト

13

18

。 「

野 」は 出エ ジ プ ト記一 申命 記で

92

回登 場す る

 

2

) 頑迷 な イス ラ エ ル 人/

弟子

たち。

ら は

野で の

物の 供 給は不 可 能 だ と 、疑 念 を表明する

出 エ ジ プ ト

16

2

3

6

35

38

) 。

 

3

)神

は、 羊 飼い の い ない 羊の よ うな 民 を

く (民 数 記

27

17

= マ ル コ

6

34

)。

 

4

)人 々 は軍 隊 の よ うに組 分け さ れて い る

出エ

13

18

= マ ル コ

6

40

)。

 

5

羊 飼い と しての は、 詩 編

23

編 とその 「緑の 青草」の イメ ー につ な が る

詩 編

23

2

6

39

的、

物 学 的指 摘で はな く 、 聖書へ の 問 接 的言 及

。 一

445

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

参照

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