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手の運動制御における視覚系の役割−なぞり動作の時空間特性の検討 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)手の運動制御における視覚系の役割 −なぞり動作の時空間特性の検討− キーワード:運動制御,視覚情報,なぞり動作 行動システム専攻 助宮 治 はじめに. 胴部から 40cm 離れた位置と一致するよう配置した(図 1).. 近年,多くの研究によって,指示動作や到達動作,到達. 各被験者の右手人差し指の先に赤色発光ダイオード(直径. 把持動作の実行中にどのような視覚情報が利用されている. 5mm)を取り付け,一連の動作をデジタルビデオカメラ(サン. かが議論されており,そのメカニズムが明らかになりつつある. プリングレート30frame/s)で撮影し,マーカー の位置座標. (Desmurget&Grafton,2000).. をフレーム毎に解析した.. 例えば指示動作では,手が見える条件と見えない条件を. 動作対象の形状(2:直線/円)×サイズ(3:. 実験条件. 比 較 すると,後 者 に お け る動 作 の 正 確 さが低 下 す る. 5cm/10cm/15cm)の計 6 条件を設けた.各条件につき8. (Conti&Beauraton,1980).また到達把持動作においても,. 試行の繰り返しとし,計 48 試行をランダムに行った.. 手の見えが排除されると,運動時間の増加や把持における. 手続き. 指間距離の増大が生じる(Berthier et al.,1996).これらの. 手の人差し指の先をスタート位置の上に置いて眼を閉じた.. 事実は,指示動作や到達把持動作 の制御において,手に. 合図音が鳴ると被験者は目を開け,ターゲット図形の輪郭に. 関する視覚情報が重要な役割を担っていることを示している.. 沿って右手人差し指でなぞり,再びスタート位置に指先を置. 近年では,これらの動作の制御機構として,動作の終了時. いた.ここで被験者には,素早くかつ正確になぞり,円図形. 点における位置決めのための視覚フィードバックに加えて,. の場合は,動作開始時の指先の位置(以下,「開始位置」)と. 動作の実行中におけるオンラインでの視覚情報の利用につ. なぞり終わった時の指先の位置(以下,「終了位置」)を一致. いても議論がなされており (Desmurget et al.,1999),その. させるように教示した.. 制御機構について,ハイブリッド型の制御モデルが考案され. 被験者. 試行の始まる前,被験者は椅子に着席し,右. 7 名が実験に参加した.全員右利きであった.. ている(Desmurget&Grafton,2000).しかしこのモデルで は,主に手と対象物 に関する視覚情報に重点が置かれ,そ れ以外の視覚情報(以下,「外的枠組み」)の役割について は明らかでない.また手の動作は,その機能の複雑さ故に 多くの視覚運動変換を必要とするため,あらゆる動作を説明 できるモデルの構築には至っていない. そこで本研究では,図形の輪郭と指先の動きを同期させる. (a). 「なぞり動作」に注目し,その時空間特性を明らかにするとと もに,手,外的枠組みの見えが制御メカニズムにおいてどの ように利用されるかを検討した.なぞり動作については,これ までに殆ど研究がないことも,この動作を取り上げた大きな 理由である. 実験 1 目 的. 実験 1 は,なぞり動作の時空間特性を明らか. にするとともに,動作対象の形状とサイズが,その特性にど のような影響を及ぼすか検討することを目的とした. 方 法 刺 激と装 置. (b) 図1. ターゲット図形 には直線と円 を用 い(幅. 2mm,黒色),その中点又は中心点が被験者の正中軸上で. 実験 1 における刺激と装置の配置. (a)は上方向から見た場合,(b)は横方向から見た 場合の刺激と装置の配置..

(2) 最大到達速度[mm/ sec]. 平均運動時間 [ms]. 4000 3000 2000 1000 0. 50. 100. 150. ターゲット図形のサイズ[mm]. 500. 円. 400 300 200 100 0 50. 100 150 ターゲット図形のサイズ[mm]. (a). 開始位置と終了位置の誤差[mm]. 直線 5000. 20 15 10 5 0 50 100 150 ターゲット図形のサイズ[mm]. (b). (c). 図 2 実験 1 の結果 (a)は各図形 における運動時間の平均値.(b)は各図形における最大運動速度の平 均値.(c)は動作の開始位置と終了位置との誤差量.誤差棒は標準誤差を示す.. 結果と考察. について,1(3 種類のサイズ)要因分散分析を行った結果,. 指先が図形の輪郭上をポイントしてからなぞり動作が完了. サイズ の主 効 果 に有 意 傾 向 が見 られ (F(2,12)=3.509,. するまでを,1 試行の実験データとして画像解析した.ここか. p=0.0631),その拡大に伴って誤差量が増加する傾向が示. ら得られた位置座標から,動作の時間特性の指標として「平. された(図 2c) .本実験では,被験者に動作軌跡に関する視. 均運動時間」と「指先の最大運動速度」,空間特性の指標と. 覚フィードバックを与えていないため,被験者は,動作の開. して「円図形における運動の開始位置と終了位置の誤差」を. 始位置を記憶しておく 必要がある.サイズの拡大に伴う運動. 算出した.直線図形については,運動の始点と終点がそれ. 時間の増加が,開始位置に関する記憶表象の安定性 を低. ぞれ直線の両端と対応しているため,特に分析は行わなか. 下させ,そのことが終了位置の確定に反映された可能性が. った.. 考えられる.. 運動時間と最大運動速度について,2(図形の形状)× 3(サイズ)の 2 要因分散分析を行った.運動時間については,. 実験 2 実験 2 は,手と外的枠組みの見えを独立して操. 形状の主効果,および サイズの主効果 がみられ(それぞれ. 目 的. F(1,6)=110.971,p<.001; F(2,12)=43.902, p<.001),す. 作する実験パラダイムを用い,なぞり動作の制御に利用され. べてのサイズの間に有意差がみられた(p<.05(図 2a).また. る重要な視覚情報源の特定を目的とした.. 最大運動速度についても,形状の主効果,および サイズの. 方 法. 主 効 果 が 有 意 であり(そ れ ぞ れ F(1,6)=8.237,p<.05 ;. 刺激と装置 刺激と装置は実験 1 に準じた.ターゲット図形. F(2,12)=20.79, p<.001),全てのサイズの間に有意差が. は見える状況で手の見えを排除するために,不透明な台を. みられた(p<.05 (図 2b)).以上の結果から,なぞり動作の時. 設置し,その台の下方で課題が遂行された(図 3).. 間特性が図形の形状とサイズの影響を受けることが示された が,同時に,本実験 ではサイズ条件の各水準 において,直 線の長さと円の直径を一致させていたことから,運動距離の 増加によっても説明が可能である.つまり運動時間は,その 距離の増加に伴って増加するが,素早い動作の実現が可 能となることが示された.このことは到達運動においても確認 されている(例えば Paulignan et al.,1997).しかし,運動 距離がほぼ同じであった直線/15cm 条件と円/5cm 条件 では,後者においてより運動時間と速度の増加が示されたこ とから,図形の形状に伴う筋運動の複雑さも時間特性に影 響を及ぼす可能性が考えられる. 次に,円図形における動作の開始位置と終了位置の誤差. 図 3 実験 2 の刺激と装置 手の見えない条件における刺激と装置の配置. 手の見える条件は,実験 1 の装置を用いた..

(3) 外的枠組みの見え(2)×手の見え(2)の計 4. 実験条件. ることが示された(図 4c,4d).この結果は,実験 1 と一致する.. 条 件 を設 けた:「明 所 / closed-loop 」条 件 ,「明 所 /. 一方,手の見えの効果は,いずれの図形においてもみられ. open-loop 」条 件 ,「暗所 / closed-loop 」条 件 ,「暗 所 /. なかった.しかし本実験では,直線と円のいずれにおいても,. open-loop」条件.それぞれの条件を1 ブロックとし,各ブロッ. 外的枠組みと手の見えの間に交互作用がみられた(それぞ. ク内では,ターゲット図形の形状(2)×サイズ(3)の計 4 条件. れ F(1,6)=20.192,p<.001;F(1,6)=6.65, p<.05).多重比. を設け,それぞれ 8 試行の繰り返しとして全 48 試行をランダ. 較の結果,両図形とも,closed-loop 条件における外的枠組. ムに行った.. みの効果と,明所条件における手の見えの効果がみられ. 手続き 被験者. 実験 1 に準じて行った.. (p<.05),運動時間は,同じように 手が見えている状況でも. 実験 1 に参加した 7 名.全員右利きであった.. 明所<暗所の順で有意に増加し,一方,外的枠組みが利用. 実験データの解析方法は実験 1 に準じて. 結果と考察. できる状況でもclosed-loop 条件<open-loop 条件の順に運. 行った.本実験では,実験 1 で用いたパラメーター以外に,. 動時間が増加することが示された.このことから,手の見えは,. 空間特性の指標として「open-loop 条件において再現された. 外的枠組みが利用できるか否かによって,動作の制御に利. 図形サイズの,ターゲット図形に対する誤差の割合(以下,. 用される方略が異なり,外的枠組みが利用できる場合には. サイズの誤差率)」を算出した.. その利用が低下するが,外的枠組みが利用できない場合に. まず,時間特性について以下の結果を得た.運動時間と最. は,より重要な情報源として制御に利用される可能性が考え. 大運動速度について,図形ごとに 2(外的枠組み)×2(手の. られる.. 見え)×3(サイズ)の 3 要因分散分析を行った結果,直線図. また空間特性については,動作の開始位置と終了位置と. 形では,運動時間と最大運動速度のいずれにおいてもサイ. の誤差において 2(外的枠組み)×2(手の見え)×3(サイ. ズ の 主 効 果 が 有 意 で あ り (そ れ ぞ れ. ズ)の 3 要因分散分析を行った結果,外的枠組みの効果は. F(2,12)=15.072,p<.001;F(2,12)=47.659, p<.001),運動. 見 られなかったが,手 の見 え の主 効 果 が有 意 であり. 時間は 5cm<15cm,10cm<15cm の関係で増加し(図 4a),. (F(1,6)=18.238,p<.01),open-loop 条件において誤差が. 運動速度は 5cm<10cm<15cm の順に増加することが示さ. 増加することが示された(図 5a).また,サイズの誤差率につ. れた(図 4b).円図形においても同様に,両パラメーター にお. いては,いずれの図形ともサイズの主効果が有意であり,. け る サ イ ズ の 主 効 果 が 有 意 で あ り(そ れ ぞ れ. 5cm>15cm の関係で誤差率が増加した(図 5b,5c).このこと. F(2,12)=21.706,. は,サイズの小さい図形ほどその制御に手の見えを必要と. p<.001 ;F(2,12)=54.848,p<.001 ),運. 動時間と最大運動速度は 5cm<10cm<15cm の順に増加す. <Line> 3000. する可能性を示唆している.. <Circle>. <Line>. 6000. 2000. LC. 4000. LO. 1000. DC. 2000. DO. 50. 100 150 ターゲット図形のサイズ[mm]. (a). <Circle>. 400. 400. 300. 300. 200. 200. 100. 100. 50. 100 150 ターゲット図形のサイズ[mm]. 50. 100. 150. ターゲット図形のサイズ [mm]. (b). (c) 図4. LC LO DC DO. 0. 0. 0. 最 大 運 動 速 度 [ mm / s ec ]. 運 動 時 間  [ ms ]. 8000. 0 50. 100. 150. ターゲット図形のサイズ[mm]. (d). 実験 2 の結果. (a)は直線における平均運動時間.(b)は円における平均運動時間.(c)は直線における最大運動速度. (d)は円における最大運度速度.「L」は明所条件,「D」は暗所条件 ,「C」は closed- loop 条件,「O」は open- loop条件を表す..

(4) <Circle>. 1. 1. 30. 0.8. 0.8. 0.6. 0.6. 0.4. 0.4. 0.2. 0.2. 0. 0. 20. LC LO DC. 10. DO. 0 50. 100. 誤 差 量 [%]. 開始位置 と終了位置 の誤差[ mm]. <Line> 40. 明所 暗所. 50 100 150 ターゲット図形のサイズ[mm]. 50 100 150 ターゲット図形のサイズ[mm]. 150. ターゲット図形のサイズ[mm]. (a). (b) 図5. (c). 実験 2 の結果(左から(a),(b),(c),). (a) 動作の開始位置と終了位置との誤差量.(b)直線におけるサイズの誤差率.(c)円におけるサイズ の 誤差率.「L」は明所条件,「D」は暗所条件,「 C」は closed- loop条件,「O」は open- loop条件を表す.. 総合的考察 本研究では,図形の輪郭と指先の動きを同期させるなぞり. ないときにより重 要 となる」と主 張 す る Churchill et al.(2000)の見解を支持するものである.しかし一方で,運動. 動作を取り上げ,その時空間特性を解明するとともに,動作. の終了位置の確定といった空間的な正確さには,手の見え. 対象の形状やサイズの効果(実験 1)と,動作の制御メカニズ. が重要となることも明らかとなった.これらの結果から,比較. ムが重要とする視覚情報源の特定を行った(実験 2).実験 1. 的単純な図形に対するなぞり動作においても,動作実行中. の結果から,なぞり動作の基本特性として,運動時間と最大. の様々なタイミングで質的に異なる視覚情報を使い分けるよ. 運動速度は,課題が求める運動距離に応じて増加するが,. うな制御がなされている可能性が示唆された.. このとき,形状によって求められる筋運動 の複雑さも時間特 性に影響を及ぼす可能性が示唆された.さらにこのことは ,. 引用文献. 運動の開始点と終了点との位置合わせの正確さに反映され る可能性がある.また実験 2 の時間特性から,外的枠組みが 利用できるか否かによって,手に関する視覚情報の利用方 略は異なり,外的枠組みが利用できる場合にはその利用が 低下するが,外的枠組みが利用できない場合には,より重 要 な 情 報 源 として 利 用 さ れ る可 能 性 が 示 さ れ た. Akamatsu(1992)は,なぞり動作において,図形を触りなが ら同時に手の動きを見る事ができる「視覚−触覚」条件と, 図形と手の動きを見る事はできる「視覚」条件では,前者の 条件において,最大運動速度,平均速度,最大加速度が有. Akamatsu,M.. Ergonomics, 35(5/6), 1992, pp.647-660. Berthier,N.E., Clifton,R.K., Gullapalli,V. McCall,D.D. and Robin,D.J.. Journal of Motor Behavior , 28,. 1996, 187-197 Conti, P. and Beaubaton, D.. Perceptual and Motor. Skills, 50, 1980, 239-244 Churchill,A.,. Hopkins,B.,. Ronnqvist,L.. and. Vogt,S.. Experimental Brain Reseach, 134, 2000, 81-89. 意に増大すること,また視線の停留回数が減少することを示 し,「視覚と触覚が共に与えられたときには,手の動きは速く. Desmurget M., Epstein CM., Turner RS., Prablanc C.,. なると共に視覚の使用が低下する」と結論付けている. 本. Alexander GE. and Grafton ST.. 実験によって明らかとなった,明所/closed-loop 条件での. Neuroscience, 2(6), 1999 June , 563-567.. 運動時間の短縮は,Akamatsu (1992)のいう視覚情報の 利用低下が,外的枠組みが利用できる状況でのみ採択され る制御方略であり,その場合,利用が低下する情報源は手 の見えである可能性を示している.また本実験の結果は,到 達把持動作において「手の見えは,外的枠組みが利用でき. Desmurget,M. and Grafton,S.. Nature. Trands in Cognitive. Science, 4(11), 2000, 423-431 Paulignan,Y.,. Frak,V.G.,. Toni,I.. and. Jeannerod,M.. Experimental Brain Research, 114, 1997, 226-234.

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参照

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