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心の理論課題遂行過程は領域一般の抑制機能で説明可能か [ PDF

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(1)心の理論課題遂行過程は領域一般の抑制機能で説明可能か キーワード:心の理論,誤信念,抑制機能,他者視点,就学前児 行動システム専攻 渕上 浩樹 子どもが自分自身あるいは他人が望んでいること,感じ. Frye らの見出した抑制機能と心の理論課題の成績との相. ていること,信じていること,といった心的状態について. 関は重要であり,その後,様々な抑制機能と心の理論課題. どのような理解をしているのか,という点に関して検討し. との間にも同様に相関が見出された.Frye ら(1995)の直. た一連の研究として心の理論研究が上げられる.心の理論. 前の行動規則を抑制する能力に加え,Charman ら(2001). とは他者や自分自身の精神状態について認識する能力のこ. は Go-NoGo 課題を用いて,直前の行動そのものを抑制する. とである.人の考えや意図,欲求といった精神状態につい. 能力,Davis & Pratt(1995)は数列逆さ読み課題を用いて,. て知ることができれば人の行動を予測することが可能とな. 習慣的行動と模倣行動を抑制する能力,Russell ら(1991). る.心の理論研究で用いられる代表的な実験パラダイムの. は窓課題を用いて,欲求を抑制する能力と,心の理論課題. 一つが「標準誤信念課題」と呼ばれるものである.この課. の成績との間に相関関係を見出した.上記の4課題におい. 題では幼児の「他人は,自分や別の人が知っている事実と. て要求される抑制の対象はそれぞれ異なっているにも関わ. は異なる信念(自分から見て誤信念)をもつことがあり,. らず,共通して心の理論課題との相関が見られている.こ. その信念にもとづいて行動する」ということの理解を調べ. れらの結果から,心の理論課題の遂行過程には,領域一般. ている.ここでいう誤信念とは,例えば,ある人物がおも. に関わる能動的な抑制という機能が重要な働きを果たして. ちゃを箱に片付けた後,その人物の不在時におもちゃが箱. いることが示唆される.. からカゴへと移動する,その人物はこうした移動を目撃し. こうしたことから考えられるのは,心の理論課題において. ていないので,おもちゃは箱にあると信じているという状. 正答,誤答を決定しているのは,心に関する理解の獲得だ. 態を指す.標準誤信念課題では,この一連の出来事を第三. けではなく,その遂行過程において相対する二つの間の葛. 者として見ていた観察者(被験児)は,本当はおもちゃは. 藤において一方を抑制するという抑制機能も重要な役割を. カゴに移動しているが,その人物はおもちゃは箱に入って. 果たしているということである.では,課題の遂行過程で. いると信じていることを理解し,その人物がおもちゃを探. 葛藤状況を生み出す要因を取り除くことによって,課題で. すなら箱の中を探すだろうということを予測しなければな. 要求される抑制を容易にすると,従来述べられてきた課題. らない.一連の研究から「標準誤信念課題」は 4 歳ごろか. で正答できなかった幼児も正答できるようになるのだろう. ら正答するようになり, 3 才ではむずかしいという結果が得. か.こうした点に関して,先行研究では心の理論課題と様々. られた(Perner,Leekam,& Wimmer,1987) .. な抑制課題の間で相関関係は見られているが,実際に心の. Frye ら(1995)は簡単なカード分類課題を用い,幼児が. 理論課題の中で,抑制に影響を与えている過程を実験的に. カード分類規則の変更に困難を示すことを明らかにし,心. 操作したわけではない.より実証的に心の理論課題と抑制. の理論課題の成否との間に関連性を見出した.この結果を. 機能との関連を検討するためには,心の理論課題の遂行過. Frye らは,二つの課題は共通した課題構造を持ち,二つあ. 程中で抑制に影響を与えている過程を実験的に操作する必. る観点のうち,一方の観点から判断を下すために,もう一. 要があるだろう.. 方の観点を棄却するという抑制機能が重要な働きを果たし. 1.実験Ⅰ. ているという説明を行った.カード分類課題と心の理論課. 1-1.問題と目的. 題との間に相関が見られるのは,カード分類課題と同様に. 心の理論課題の中で抑制に影響を与えている過程を実験. 心の理論課題では他者の信念から判断するために,自己の. 的に操作することで,抑制機能との関連をより実証的に検. 信念を抑制することが必要となっているからであると説明. 討することを目的とする.心の理論課題の遂行過程中で抑. した.ここで重要なのは,心の理論課題に必要なのが,心. 制に影響を与えているのはどの部分であろうか.ここでは. の理論という領域固有な能力だけではなく,領域一般に関. 最も代表的な実験パラダイムである標準誤信念課題につい. わる能力,さらに言うならば,2 つの前提条件を切り替える. て検討する.標準誤信念課題の特徴として,被験児は対象. ことができるという抑制能力が必要であるということを示. 物(おもちゃ)がある場所(箱)から別の場所(カゴ)へ. 唆している点である.. と移動するという出来事を目撃するという点が挙げられる.. 1.

(2) 被験児は「今現在,おもちゃはカゴに入っている」という. 一方の刺激に対してはボタンを押し,一方の刺激にはボタ. 事実を目撃する.その後主人公がおもちゃを探すのにどこ. ンを押さずに待つことが求められた.. を探すかを予測させると,今現在の事実を目撃したことに. 数列逆さ読み課題:Davis & Pratt(1995)の行った実験を. 影響され,事実に基づいた予測(自己の視点からの予測). 用い,被験児は実験者の読みあげた数列を逆唱することが. を抑制するのに失敗し,今現在の事実に基づいた予測を答. 求められた.. えてしまい誤るということが考えられる.おもちゃが箱か. 窓課題:Russell ら(1991)の実験を用いた.被験児は報. らカゴへと移動するという出来事を目撃するという点が,. 酬を得るために,報酬が入っている入れ物がわかっている. 自己視点からの予測を抑制することを困難にしており,事. 状態で,2つの入れ物のうち報酬の入っていない方の入れ. 実に基づいた予測をドミナントにし,結果としての誤答を. 物を選ぶことが求められた.. 引き起こしていると考えられるのである.では,おもちゃ. 1-3.結果. が箱からカゴへと移動する場面を被験児に目撃させないよ. 被験児を抑制機能の高・低で群分けするために,抑制課. うに課題に変更を加え,被験児が視覚的に獲得する情報を. 題4課題の得点を各課題が 10 点満点,計 40 点満点になる. 失わせることによって自己視点からの予測の抑制を容易に. よう得点化し,その合計を抑制成績とした.. すると,標準誤信念課題はより容易になると考えられる.. 第一試行で目撃条件を行った場合は,第二試行の非目撃. そこで、対象物の移動場面を目撃する条件,目撃しない条. 条件での正答者数が多くなっていたので,この順序効果を. 件の 2 条件を実験的に設定し、抑制課題の成績と比較する. 取り除くため,標準誤信念課題(目撃条件・非目撃条件). ことで,標準誤信念課題の遂行過程において抑制機能が重. について一試行目に行われた条件の結果のみに注目して分. 要な働きを果たしているのかを明らかにする.. 析を行った.. 1-2.方法. 目撃条件群,非目撃条件群それぞれで抑制成績から,抑. 被験児:福岡県内の保育園児 60 名 (3歳児クラス 29 名,. 制成績の高群・低群が半数ずつになるように群分けを行い,. 4歳児クラス 31 名). 抑制成績の高・低と目撃条件・非目撃条件での正答・誤答. 手続き:それぞれの被験児は二日間かけてすべての課題を. 者数に関して fisher の直接確立法による分析を行ったとこ. 行った.一日目の課題は次の順序で行われた.カード分類. ろ,目撃条件群にのみ抑制成績の高・低と正答・誤答者数. 課題1試行(分類規則1の学習) ,心の理論課題1試行,カ. の比率の偏りに有意な差がみられ(χ2=6.14,df=1,p. ード分類課題1試行(分類規則2の学習) ,心の理論課題2. <.05) ,非目撃条件群では有意な差はみられなかった(χ2. 試行目,カード分類課題4試行.二日目の課題は Go−NoGo. =0.0,df=1,n.s.) . 表 1-1 抑制成績の高・低と条件ごとの正答・誤答者数と. 課題,数列逆さ読み課題,窓課題の順で行われた.. 抑制高群・低群それぞれの抑制成績の平均値および SD. 心の理論課題:手で操作できる男の子と女の子の人形一体 ずつを用い,主人公が片付けたおもちゃが主人公の不在時 に別の人物によって移動するという物語をビデオによって. 目撃条件. 被験児に提示する形式で行われた.被験児は,目撃条件で. 計 抑制成績. はおもちゃの移動を見ることができるが,非目撃条件では. 正答 誤答 平均 SD. 抑制成績 低 高 1 5 14 8 15 13 22.03 32.85 4.75 3.73. 計 6 非目撃条件 22 28 計 抑制成績. 正答 誤答 平均 SD. 抑制成績 低 高 6 6 10 10 16 16 23.28 32.97 4.78 2.58. 計. 1-4.考察. おもちゃの移動を見ることはできなかった.. 抑制課題4課題間でGO-NO GO課題と数列逆さ読み課題. 抑制課題: カード分類課題:Frye ら(1995)の実験を基にラップトッ. の間にのみ相関関係がみられなかったが,その他の課題間. プコンピュータ上で再現されたプログラムを作成し用いた.. には相関関係が,それぞれの課題では被験児が抑制しなけ. 被験児の入力用として市販のジョイスティックコントロー. ればならない対象が異なるため,それらの成績から算出さ. ラが用いられた.被験児は,同時に 2 つの次元に分類可能. れた抑制成績は,多領域にわたる領域一般的な抑制機能を. な図形を指定された一方の規則にしたがって分類すること. 測定しているということができるだろう. 抑制課題によって測定された抑制成績から被験児を抑制. が求められた. Go-NoGo 課題:Charman ら(2001)の実験を基にラップ. 高群・低群に群分けし,抑制の困難さを実験的に操作した. トップコンピュータ上で再現されたプログラムを作成し用. 標準誤信念課題との関連を検討した結果,抑制機能が発達. いた.被験児の入力用として市販のジョイスティックコン. した被験児は,より高い抑制機能が求められる目撃条件で. トローラが用いられた.被験児は,2 種類の刺激のうち,. も,それほど高い抑制機能が求められない非目撃条件でも. 2. 12 20 32.

(3) ある程度の割合で正答できたのに対し,抑制機能があまり. 被験児が,観察者が部屋に戻ってきて開けようとする箱に. 発達していない被験児は,それほど高い抑制機能が求めら. は対象物(缶ジュース)が入っていないことを理解できる. れない非目撃条件ではある程度の割合で正答できたが,よ. かを質問した.目撃条件では,主人公がどちらに対象物を. り高い抑制機能が求められる目撃条件では,ほとんどが誤. 入れるかを被験児も見ることができ,観察者の様子も見る. 答してしまうという結果が得られた.こうしたことから,. ことができた.非目撃条件では,主人公がどちらに対象物. これまで心の理論課題として一般的に用いられてきた標準. を入れるかを被験児は見ることはできず,観察者の様子は. 誤信念課題(目撃条件)では,対象物(おもちゃ)が移動. 見ることができた.. する場面を被験児が目撃するということが,主人公の行動. 抑制課題:実験Ⅰと同様の抑制課題 4 課題.. を予測させる際の被験児の予測に影響を与えているだろう. 手続き:被験児はすべての課題を二日間に分けて実験Ⅰと. ことが示唆された.目撃条件(標準誤信念課題)では実際. 同様の順序で行った.. に対象物がどちらにあるのかという事実というよりも,視. 2-3.結果 被験児を抑制機能の高・低で群分けするために,実験 1. 覚的に得られた事実情報,あるいは視覚的イメージと結び ついた事実を抑制するのが困難になっていると考えられる.. と同様の方法で抑制課題4課題の得点の合計を抑制成績と. これは,視覚的情報が幼児の思考に影響を与えているとい. した.. う従来の研究とも一致する.つまり,抑制能力の発達した. 3,4 歳児のみについて分析したところ,目撃条件では順. 子どもは,視覚的情報から得られる事実と切り離して他者. ,非目撃条件 序効果はみられず(χ2=0.32,df=1,n.s.). 視点から予測することができ,抑制機能の発達していない. では第一試行で目撃条件を行った場合は,第二試行の非目. 子どもは視覚的情報から得られる事実がドミナントになり. 撃条件での正答者数が多くなる順序効果に有意な傾向がみ. そこから予測を行うので,心の理論課題に誤答してしまっ. . られた(χ2=2.99,df=1,p<.10) 4,5 歳児のみについてはどちらの条件でも順序効果はみ. ているという可能性を示唆するものであった. 2.実験Ⅱ. られなかった(目撃条件:χ2=0.07,df=1,n.s., 非目. 2-1.問題と目的. . 撃条件:χ2=1.97,df=1,n.s.). 実験Ⅰにおいて,標準誤信念課題の非目撃条件では,対. 第一試行で目撃条件を行った場合は,第二試行の非目撃. 象物(おもちゃ)が移動するという視覚情報を与えないよ. 条件での正答者数が多くなっていた.そこで,この順序効. うにすることで,被験児が自己の視点(事実)からの予測. 果を取り除くため,一試行目に行われた条件の結果のみに. を抑制するのを容易にすることで,他者視点からの予測を. 注目して以下の分析を行った.. 促進することを試みた.では,被験児を対象物が移動する. 抑制課題4課題の得点を合計した抑制成績から,抑制成. 前からどこにあるのかわからないという状況においてしま. 績の高群・低群が半数ずつになるよう群分けを行った.抑. い,結果としてどうなったのかに関して,完全に他者の視. 制成績の高・低と目撃・非目撃条件での正答・誤答者数に. 点から予測しなければわからないという状況を作ることで,. ついて分析した結果,3,4 歳児のみについては目撃条件,. 他者視点からの予測を促進することができるのではないだ. 非目撃条件とも,正答・誤答者数と抑制成績の高・低群と. ろうか.そこで,対象物が事前にどこにあるのかわかって. の間に統計的に有意な偏りはみられなかった(目撃条件:. おり移動後もどちらにあるのかわかっている条件(目撃条. χ2=1.20,df=1,n.s.,非目撃条件:χ2=2.22,df=1,. 件)と対象物が移動する前からどこにあるのかわからない. n.s.) ,4,5 歳児のみについては,目撃条件では,正答・誤. という条件(非目撃条件)を設定し,抑制成績との関連を. 答者数と抑制成績の高・低群との間に統計的に有意な偏り. 検討する.. ,非目撃条件では がみられ(χ2=7.46,df=1,p<.05). 2-2.方法. 正答・誤答者数と抑制成績の高・低群との間に統計的に有. 被験児:実験Ⅰとは異なる福岡県内の保育園児 75 名 (3. 意な偏りはみられなかった(χ2=0.00,df=1,n.s.). 歳児 25 名,4 歳児 25 名, 5 歳児 25 名). 表 2-1 目撃条件・非目撃条件での抑制成績の高・低と正. 心の理論課題:主人公が外見上は同一の 2 つの箱の一方に. 答・誤答者数(3,4 歳児のみ). 対象物を入れる,主人公の後ろにはもう一人この様子を見 ている観察者がおり,一連の出来事を見た観察者が部屋か. 目撃条件. ら退場すると主人公は 2 つの箱の場所を入れ替えてしまう. 計. という物語をビデオで被験児に提示する形式で行われた.. 3. 正答 誤答. 抑制成績 低 高 1 3 11 9 12 12. 計 4 正答 非目撃条件 20 誤答 24 計. 抑制成績 低 高 1 4 12 9 13 13. 計 5 21 26.

(4) 表 2-2 目撃条件・非目撃条件での抑制成績の高・低と正. に入っているかを知ることになり,さらに対象物が移動す. 答・誤答者数(4,5 歳児のみ). 目撃条件. 正答 誤答. 計. 抑制成績 低 高 3 9 11 3 14 12. 計 12 正答 非目撃条件 14 誤答 26 計. ることを目撃し,移動したことを知らない観察者の信念(移 抑制成績 低 高 5 5 7 7 12 12. 動前の場所にある)からの予測を答えるためには,自己視. 計 10 14 24. 点からの予測(移動後の場所にある)を抑制する必要が生 じる.一方,非目撃条件では,被験児は対象物が実際には. 2-4.考察. どちらに入っているかを知らないので,自己視点からの予. 実験Ⅱでは,被験児を目撃条件では対象物の移動前の場. 測を抑制する必要は生じない.. 所を知っており,非目撃条件では対象物が移動する前から. しかし,ここで 3,4 歳児では他者信念を想定するために. どこにあるのかわからないという状況におくことで,非目. 他者信念と結びつく視覚的イメージによる手がかりが必要. 撃条件で他者視点からの予測を促進することを試みた.. であり,その視覚的イメージが与えられない非目撃条件で. 3,4 歳児の間では実施順序による効果がみられ,4,5 歳. は他者信念を想定することそのものが困難であったと想定. 児の間では実施順序による効果がみられなかったことから,. してみると,3,4 歳児では抑制機能と関係なく非目撃条件. 3,4 歳児と 4,5 歳児において異なる要因が課題の困難さ. も目撃条件同様に困難であったと解釈することもできる.4,. を招いている可能性が示唆される.3,4 歳児は信念の内容. 5 歳児では非目撃条件では他者信念と結びつく視覚的イメ. と結びつく視覚的な手がかりがない状態では,他者の信念. ージなしで他者信念を想定できれば,目撃条件で必要とな. を想定することが難しいのかもしれない.それゆえ,信念. る自己視点からの予測の抑制が必要ないので抑制能力の低. の内容と結びつく視覚的な手がかりの得られない非目撃条. い被験児にも容易であったと考えられるのである.. 件を経験した後に目撃条件を行っても効果がみられず,信. 3.総合考察. 念の内容と結びつく視覚的な手がかりが得られる目撃条件. 標準誤信念課題において,自己視点からの(事実と合致. を先に経験した後に非目撃条件を行うと,正答することが. する)予測を抑制することが,他者視点からの予測を行う. できるようになる傾向がみられたのかもしれない.それに. ために重要になっているという仮説のもと,実験Ⅰでは対. 対して 4,5 歳児では,信念の内容と結びつく視覚的な手が. 象物が移動する場面を見る条件,見ない条件を設定し,抑. かりがなくとも,他者信念を想定することができるので,. 制能力との関連を検討した.その結果,他者視点から予測. 順序効果がみられなかったとも考えられる.. することができないのは,視覚的イメージと結びついた事. 抑制課題によって測定された抑制成績から被験児を抑制. 実を抑制することが困難だからであるという可能性が示唆. 高群・低群に群分けし,心の理論課題との関連を検討した. された.. 結果,3,4 歳児のみを対象とすると目撃条件・非目撃条件. 実験Ⅱでは,事前に事実を知っている条件と知らない条. のどちらでも抑制成績の高・低で正答・誤答者数に違いは. 件を設定し(目撃条件では自己視点を抑制する必要があり,. みられなかった.一方,4,5 歳児を対象とすると,目撃条. 非目撃条件では自己視点を抑制する必要がない) ,抑制され. 件では抑制機能の高・低で正答・誤答者数に有意な差がみ. るべき自己視点からの予測の有無と抑制機能との関連を検. られたが,非目撃条件では抑制機能の高・低で正答・誤答. 討した.その結果,3,4 歳児と 4,5 歳児とでは課題の遂. 者数の有意な差はみられなかった.ここでも,3 歳から 4. 行過程において,異なる過程で困難さを抱えている可能性. 歳にかけては抑制機能とは異なる何らかの要因で回答が左. が示唆された.. 右され,4 歳から 5 歳にかけては抑制機能によって回答が. 実験ⅠとⅡから,心の理論課題の遂行過程において抑制. 決定されているのかもしれないことが示唆された.. 機能が重要な役割を果たしていることが示唆された.幼児. 4,5 歳児では,抑制機能が発達した被験児は,目撃条件. が他者の誤信念に基づいた行動を予測するためには,まず. でも非目撃条件でもある程度の割合で正答でき, (それぞれ. 他者信念そのものを想定することが必要であり,さらに自. 12 名中 9 名,12 名中 5 名) ,それに対し,抑制機能があま. 己視点からの予測を抑制することが重要になっているとい. り発達していない被験児は,非目撃条件ではある程度の割. うことが考えられる.. 合で正答できた(12 名中 5 名)が,目撃条件では,ほとん. 参考文献. どが誤答してしまう (14 名中 3 名) という結果が得られた.. D.Frye, P.D.Zelazo, & T.Palfai (1995)Theory of mind. この課題で正答するためには,目撃条件,非目撃条件と. and. rule-based. development,10,483-527. もに被験児はまずはじめに,他者信念を想定することが必 要となる.そして,目撃条件では対象物が実際にはどちら. 4. reasoning.Cogtinive.

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表 2-2  目撃条件・非目撃条件での抑制成績の高・低と正 答・誤答者数(4,5 歳児のみ)  404低高低高正答3912正答551誤答11314誤答771141226121224抑制成績計計計非目撃条件抑制成績計目撃条件2-4.考察 実験Ⅱでは,被験児を目撃条件では対象物の移動前の場所を知っており,非目撃条件では対象物が移動する前からどこにあるのかわからないという状況におくことで,非目撃条件で他者視点からの予測を促進することを試みた.3,4 歳児の間では実施順序による効果がみられ,4,5 歳児の間では実施

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