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景観計画の策定過程における住民参加と計画内容に関する研究 [ PDF

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らに , 対象団体の HP より資料を取得し , 策定過程が計 画内容に与えた効果について分析する [5 章 ]。なお , 本アンケート調査は 2013 年 11 月に実施し ,95 団体か らの有効な回答が得られた(回収率 83%)。 2. 研究対象の選定 2-1 選定基準  研究対象は ,2013 年 3 月末までに景観計画を策定し ている 384 団体のうち , 以下の 3 点の基準を満たす 95 の市町村を対象とする(図 2)。 (1)一般的な都市を研究対象とするため , 国に指定さ れる水準の歴史的市街地や景勝地等を持たない点 (2)自ら景観行政団体となった意欲のある中小団体の 策定過程に着目するため , 都道府県 , 政令市 , 中核市 以外の団体である点(特例市以下の団体である点) (3)策定過程の実態と成果物としての景観計画との関 係を分析するため , アンケートへの回答がある点  国に指定される水準の歴史的市街地や景勝地等には , 歴史的・文化的・学術的な価値が非常に高く都市のシ ンボルとして共有されやすい 9 つの地区や景勝地等を 選んだ注 1) ( 表 1)。数値は全国の所在団体数と景観計画 を有する 364 団体における所在団体数 , 割合を示す。

景観計画の策定過程における住民参加と計画内容に関する研究

1. はじめに 1-1 研究の背景  2005 年 6 月に全面施行した景観法は , 景観の保全・ 形成における計画の実効性を高めるものとして期待さ れている。2013 年 3 月末の時点で ,575 の自治体が景 観行政団体となっており , そのうち 384(20 都道府 県 ,364 市区町村)の自治体が景観計画を策定している。 その中でも景観法の施行以前から自主条例等による景 観施策に取り組んできた自治体には歴史的・文化的に 価値の高い景観を有するものが多い。しかし , 全ての 自治体がそのような特長的な景観を有しているわけで はなく , 目指すべき都市の将来像を住民や事業者等と 共有するのに苦心する自治体は少なくない。そのよう な自治体では , 生活環境周辺から失われつつある景観 を発掘し「まもる・つくる・そだてる」といった住民 参加を主体とした , いわゆる景観まちづくりがより重 要性を帯びる。また , 景観計画は策定主体である自治 体の自主性に委ねられるところが大きく , 地域の実情 にあわせた景観施策を講じることができる点で , 個性 ある街づくりに向けた施策として期待されている。 1-2 研究の目的  本研究は , 全国の中小自治体の景観計画の策定過程 における体制と住民参加の活動の実態及び , 景観計画 の内容への効果を明らかにすることを目的とする。 1-3 既往の研究  本研究に関連が深い研究として , 全国的に景観計画 の特徴や運用実態に着目した研究1)2)や事例研究とし て景観計画の策定過程に着目した研究3)等がある。し かし , 本研究は住民参加と計画内容との関係に着目し ている点で前者と , 全国の自治体を対象としている点 で後者と異なる。また , 一般的な都市における景観施 策に着目した研究はみられない。 1-4 研究の方法  研究フローを示す ( 図 1)。まず , 後述する 3 つの選 定基準に基づき , 対象とする団体を選定する [2 章 ]。 次に , 景観計画の策定過程について , 対象団体の景観 担当課へアンケート調査を実施し , 策定過程における 体制と住民参加の活動の実態を把握する [3,4 章 ]。さ 図 1 研究フロー ・選定基準 ・研究対象と所在地 ・移行・新規の区分 ・構成員別の会議 ・住民の参加度合による分類 ・策定期間と開催回数 ・会議 B の開催目的 ・会議 A,B の構成員の分野と平均人数 ・移行・新規との関係 ・住民参加の活動 ・参加体制別の 1 団体当たりの活動回数 ・計画構成への反映 ・公共性の高い重点区域の指定への効果 ・住民参加の効果が顕著な事例 5 章 計画内容への効果に関する分析 検証 6 章 おわりに 4 章 策定過程における住民参加の活動の実態 3 章 策定過程における体制の実態 2 章 研究対象の選定 1 章 はじめに 田中 潤 14-1 表 1 国に指定される水準の歴史的市街地や景勝地等 景観計画のある 364 団体における 所在団体数 20 32 20 32 46 8 105 35 89 全国所在団体数 43 57 41 32 84 10 383 84 129 69 56 49 47 100 55 80 27 42 近世主 要城郭 特別 史跡 特別名勝 世界 遺産 重要文化的景観 重要伝統 的建造物 群保存地区 歴史的風 土特別保 存地区 国立 公園 国民保養温泉地 文化財保護法 計画法都市 保存法古都 公園法 温泉法自然 ― 関連法 名称 割合 (%) 景観計画を有する 384 団体 研究対象 95 団体 選定 国によって指定 される水準の 歴史的市街地や 景勝地等を有する 団体 (283) 都道府県 (20) 政令市 (19) 中核市 (36) アンケート の無回答 (19) 図 2 研究対象の選定

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2-2 研究対象と所在地  研究対象を地方別・都道府県別に整理した(表 2)。 団体数の上位三位は , 地方別では関東地方(45), 中 部地方(17), 近畿地方(15), 都道府県別では神奈 川県(11)埼玉県(10), 千葉県(7)と , どちらも関 東の占める割合が高い。括弧内は団体数を表す。 2-3 移行・新規の区分  各団体の景観計画 , 景観条例 ,HP より , 景観法施行 以前から自主条例等による景観施策を講じていた団体 と景観法施行後に新たに景観施策を始めた団体(以下 , 移行団体 , 新規団体 , という)とに区分した。95 団体 中 , 移行団体は 25 団体 , 新規団体は 70 団体であった。 3. 策定過程における体制の実態 3-1 構成員別の会議  文献調査とアンケート調査によって , 構成員別に主 に 3 種類の会議が存在し , それらを組合せ , 策定体制 が組まれていることが明らかとなった。例として佐野 市のものを示す ( 図 3)。下記のどの会議も開催しな かった団体は , 景観担当課が主体となって策定したも のと判断した。また以下 , 会議 A と会議 B の 2 つの会 議を開催した場合を「AB」のように表す。会議の組合 せは ,AC(35),A(36) が特に多かった ( 表 3)。 (会議 A)学識経験者 , 議員 , 関係行政機関 , 関係団体 , 事業者 , 公募住民等からなる会議 (会議 B)構成員の半数以上が公募住民からなる会議 (会議 C)庁内関係部署の職員等からなる会議 3-2 住民の参加度合による分類  各団体の体制を , 住民注 2)の参加度合に着目し ,「体 制への住民参加があるか」,「構成員の半数以上が公募 住民である会議があるか」という 2 点によって ,「公 募住民重視型」(19),「住民代表型」(71),「庁内型」(5) の 3 つの「参加体制」に分類した ( 図 4)。 3-3 策定期間と開催回数  策定期間は , 各団体が最初に始めた会議の開催日か ら景観計画の策定日までの期間とした。まず , 参加体 制別では , 公募住民重視型と住民代表型の策定期間の 平均は 2.0 年で , 差はないが , 庁内型 (C) は 1.1 年と 短い。会議の組合せ別では , 複数の会議を組み合わせ ている団体は 2 年以上要しているのに対し , 一つの会 議のみ開催した団体は策定期間が 2 年未満である。  開催回数の平均は , 参加体制別では , 公募住民重 視型 (16 回 ), 住民代表型 (10.4 回 ), 庁内型 (C)(5.3 回 ) の順で多かった。会議の組合せ別では ,ABC(22.4 回),AB(16.5 回 ),AC(14.3 回)の順で多かった。複数 の会議 , 特に会議 B を併せて開催している団体の方が 策定期間が長く , 開催回数が多くなる傾向がある。 3-4 会議 B の開催目的  会議 B を開催した団体にその開催目的を聞いたとこ ろ , 最も多かった回答は「景観計画の内容に対し意見 を提案してもらうため」(17) であり , 住民の声を計画 に反映させようとする意志が読み取れる(図 5)。また , 続く「地域の魅力と課題の把握のため」(12) では , 地 域の景観特性の把握を意図していることがわかる。 3-5 会議 A,B の構成員の分野と平均人数  住民参加があった会議 A と会議 B について , 構成員 の分野の上位 5 位と平均人数を調べた ( 表 4)。括弧内 は回答のあった団体数を示す。まず , 会議 A について , 表 2 対象団体一覧 地方 合計(区分別) 合計 北海道 1市2町 3 東北 3市 3 関東 40市4町1村 45 中部 14市3町 17 近畿 13市2町 15 中国 3市1町 4 四国 1市 1 九州 沖縄 5市2町 7 80市14町1村 95 【三重】鈴鹿市【滋賀】守山市,長浜市,栗東市,草津市,野 洲市【京都】長岡京市【大阪】茨木市,箕面市,太子町,吹田 市,寝屋川市【兵庫】伊丹市,三田市【和歌山】有田川町 【岡山】早島町【広島】三次市【山口】宇部市,山口市 【愛媛】伊予市 【福岡】大牟田市【佐賀】武雄市【熊本】山鹿市 【大分】宇佐市【宮崎】綾町【沖縄】浦添市,本部町 合計 【北海道】小樽市,当別町,黒松内町 【都道府県名】団体名 【茨城県】つくば市,守谷市,牛久市【栃木】小山市,高根沢, 町,佐野市【群馬】伊勢崎市,富岡市,太田市,高山村,甘楽町, 藤岡市【埼玉】草加市,川口市,戸田市,熊谷市,和光市,新座 市,三郷市,所沢市,春日部市,越谷市【千葉】市川市,我孫子 市,流山市,市原市,浦安市,松戸市,茂原市【東京】府中市, 町田市,八王子市,立川市,三鷹市【神奈川】大磯町,真鶴町, 秦野市,逗子市,藤沢市,茅ヶ崎市,座間市,大和市,海老名市, 平塚市,厚木市 【岩手】奥州市【宮城】登米市【山形】長井市 【山梨】笛吹市【長野】小布施町,佐久市,下諏訪町 【石川】七尾市,小松市【岐阜】多治見市,中津川市,美濃 加茂市,各務原市,可児市,土岐市【愛知】常滑市,みよし市 【福井】永平寺町,あわら市,鯖江市 14-2 体制への 住民参加がある スタート 半数以上が公募住民 である会議がある C, なし ABC, AB, B AC, A Yes No Yes No 公募住民重視型 (19) 住民代表型 (71) 庁内型 (5) 会議 A,B の有無 会議 B の有無 図 4 住民の参加度合いによる分類 ( 参加体制 ) 2.1 3.8 22.4 48 12 2.3 3.2 16.5 37 6 1.5 1.5 9.0 9 1 2.0 3.8 16.0 48 19 公募住民 重視型 ABC AB B 住民代表型 AC A 庁内型 C 参加体制 組合せ 団体数会議 なし 2.3 5.4 14.3 51 35 1.7 7.6 6.6 28 36 1.1 1.4 5.3 8 3 2.0 7.6 10.4 51 71 平均 最長 平均 最多 策定期間(年) 開催回数 2 - - - - 1.4 8 5 - - 表 3 策定期間と会議回数 【会議A】 【会議B】 【会議C】 図 3 策定体制の例 ( 公募住民重視型 , 佐野市) 6 7 17 12 4 1 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 景 観 づ く り の リ ー ダ ー を 育 成 す る た め 景 観 計 画 策 定 後 も 主 体 的 に 活 動 し て も ら う た め 景 観 計 画 の 内 容 に 対 し 意 見 を 提 案 し て も ら う た め 地 域 の 魅 力 と 課 題 の 把 握 の た め 運 用 時 の 理 解 が 得 ら れ や す く す る た め そ の 他 ※ 複 数回答 図 5 会議 B の開催目的 (n=19)

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学識経験者では , 都市や建築に関わる分野が上位に挙 がった。また , 学識経験者のみならず他の構成員でも 「建築」が上位に挙がっており , 建築に関連のある主 体が参加する傾向がある。平均人数は学識経験者 (3.5 人 ) と関係団体 (3.9 人 ) で比較的多い。会議 B につ いて , 公募住民の分野は「特になし」が大半で , 平均 人数が 29.8 人と多い。 3-6 移行・新規との関係 3-6-1 体制  体制と移行・新規の関係を調べた(図 6)。参加体制 別では , 移行・新規団体ともに住民代表型の占める割 合が高い。また , 会議の組合せ別では , 新規団体の方 が ,ABC や AC の割合が比較的高く , 複数の会議を開催 する傾向がある。 3-6-2 会議 A,B の合計開催回数  住民参加のあった会議 A と会議 B の合計開催回数と 移行・新規の関係を調べた ( 図 7)。移行団体は ,「5 回未満」と「20 回以上」の割合が比較的高く , 二極化 する傾向がある。自由記述より , 開催回数の少なかっ た団体の中には , 景観法施行以前よりある景観基本計 画の策定の際に , 住民参加による計画の策定を行って いる団体も見受けられた。 4. 策定過程における住民参加の活動の実態 4-1 住民参加の活動  住民参加を広義に捉え , その活動を目的別に「a. 住 民の意向把握」,「b. 啓発・教育」,「c. 情報発信・提供」 の 3 つの観点で , 策定に至るまでにどのような活動が 14-3 会議名 会議A 会議B

構成員名 No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 平均(人)

学識経験者 都市計画(67) 建築(52) まちづくり(29) 色彩(25) 造園・園芸(20) 3.5 議員 特になし(11) 不明(3) 商店会(2) 都市計画(1) エネルギー(1) 0.4 関係行政機関 都道府県(36) 庁内職員(17) 農業(8) 環境保全(6) 文化(6) 1.8 関係団体 建築(42) 自治会(28) 商業(26) 観光(24) 農業(24) 3.9 事業者 建築(10) 公募住民 特になし(52) その他 特になし(9) 公募住民 特になし(13) 進行役 都市計画(2) その他 町内会(2) 屋外広告物(8)農業(4) 商業(4) 不動産(4) 建築(6) 女性(6) まちづくり(3) 自治会(2) 町内会(6) 自治会(6) まちづくり(5) 女性(5) 建築(3) 教育(3) 商店会(3) まちづくり(2) 庁内職員(2) 建築(1) 商店会(1) 都道府県(1) 庁内職員(2) まちづくり(1) 環境保全(1) 福祉(1) 0.7 1.8 1.9 29.8 1.3 2.3 表 4 会議 A,B の構成員の分野上位 5 位と平均人数 11, 44% 7 , 28% 2 , 8% 1 , 4% 4 , 16% 18, 26% 31 , 44% 12 , 17% % 7 , 10 2 , 3% 5回未満 5回以上10回未満 10回以上15回未満 15回以上20回未満 20回以上 5回未満 5回以上10回未満 10回以上15回未満 15回以上20回未満 20回以上 移行 (n=25) 新規 (n=70) 凡例 図 7 会議 A,B 合計開催回数と移行・新規の関係 (n=95) 移行 (n=25) 新規 (n=70) 1, 4% 2, 8% 0, 0% 7, 28% 15, 60% 0, 0% 0, 0% 11, 16% 4, 6% 1, 1% 28, 40% 21, 30% 3, 4% 2, 3% 凡例 B AB ABC 公募住民重視型 A AC 住民代表型 C 庁内型無 図 6 体制と移行・新規の関係 (n=95) 図 8 住民参加の活動を行った団体数と 1 団体当たりの活動回数 (n=95) 図 9 参加体制別の 1 団体 当たりの活動回数 (n=95) a b c 48 11 79 40 13 1 11 56 14 27 0 19 29 9 54 41 0 1 2 3 4 5 6 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 (回) 住民代表型(n=71) 庁内型(n=4) 1.4 0.5 0.9 3.3 0.1 0.2 5.8 0.8 0.6 1.0 0.4 0.9 1.4 0.6 0.3 1.1 2.4 0.7 4.8 0.5 0.2 0.6 0.3 2.0 1.6 0.4 0.0 0.4 0.8 0.4 5.6 0.0 0.4 0.8 0.0 0.0 0.4 0.4 0.2 0.2 0.5 0.5 0.0 0.0 0.0 0.0 (団体) 公募住民重視型(n=19) 活動を行った団体数 1団体当たりの活動回数 0 1 2 3 4 5(回)6 0.8 0.3 1.0 2.5 0.2 0.6 5.1 0.5 0.5 0.0 0.3 0.7 0.3 1.9 1.5 0.0 a : 住民の意向把握 b : 啓発・教育 c : 情報発信・提供 ヒアリング調査 アンケート調査 ワークショップ 風景写真コンテスト 風景画コンクール 良好な景観の選定・表彰 説明会 風景啓発パネルの展示 まち歩きイベント 学校における景観の授業 先進事例の視察 講演会・シンポジウム 公開講座 広報誌・回覧板による周知 インターネットによる広報 パブリックコメント 行われたのかを調べた ( 図 8)。活動を行った団体数を みると ,「パブリックコメント」(79),「説明会」(56), 「広報誌・回覧版による周知」(54),「アンケート調査」 (48) に関しては半数以上の団体が行っていることが分 かった。1 団体当たりの活動回数をみると ,「説明会」 (5.1 回 ),「ワークショップ」(2.5 回 ),「広報誌・回 覧版による周知」(1.9 回 ) で比較的多かった。その他 の活動としては ,「重点区域における懇談会・勉強会」, 「公聴会」,「祭りの開催」等が挙がった。 4-2 参加体制別の 1 団体当たりの活動回数  全体的に公募住民重視型が高い値を示している(図 9)。特に「ワークショップ」では , 公募住民重視型が 3.3 回と最も多い。また , 庁内型は , 全体的に低い数値を 示しているが ,「説明会」(5.6 回 ) と「先進事例の視察」 (0.8 回 ) の回数は比較的多い。 4-3 計画構成への反映  策定過程における住民参加の活動が計画構成にどれ ほど反映されたのかを , 対象団体全体と公募住民重視 型に着目して調べた ( 図 10)。まず ,「反映された」に 着目すると ,「景観特性の把握」(39) で最も多かった。 これは公募住民重視型でも同様であった。次に ,「反 映された」,「やや反映された」の合計値に着目する と ,50% を超えていたのは , 全体では「景観特性の把握」, 「目標とする景観像」,「景観形成の基本理念」,「景観 計画区域内の重点的に景観形成を図る地区 ( 以下 , 重 点区域 , という )」,「良好な景観の形成に関する方針」, 「景観形成基準」であった。  公募住民重視型では , これらに加え「計画の実現に 向けた取組・体制」においても 50% を超えており , また , 全体と比べ ,「景観特性の把握」,「目標とする景観像」,

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「重点区域」「計画の実現に向けた取組・体制」で 1 割 以上の伸びを示した。  選択項目の景観農業振興地域整備計画や自然公園法 に関する項目には , あまり反映されなかった。 5. 計画内容への効果に関する分析 5-1 公共性の高い重点区域の指定への効果  身近な生活環境に対する住民参加の効果を把握する ために , 重点区域に着目する。重点区域には様々なも のがあるが , 歴史的・文化的な区域である場合が少な くない。そこで , より一般的な地域における効果を把 握するため , 公共性の高い重点区域(例えば , 駅周辺 , メインストリート等)を , また , 新たに指定された重 点区域における効果を把握するため , 新規団体 (70) を対象とし , 重点区域の指定の有無と指定数を調べた ( 図 11, 図 12)。  その結果 , 公共性の高い重点区域の指定がある団体 の割合は , 参加体制別で公募住民重視型 (62%) が最も 高かった。また , 公共性の高い重点区域の 1 団体当た りの指定数も , 公募住民重視型 (1.8 区域 ) が最も多 かった。これらより , 公募住民重視型の団体では , 公 共性の高い重点区域が指定される傾向がある。 5-2 住民参加の効果が顕著な事例  策定過程における住民参加の効果が表れている事例 として , 自由記述への回答があった伊勢崎市 ( 公募住 民重視型 ) と三鷹市(住民代表型 ) を例に挙げる。  伊勢崎市では景観計画を策定するにあたり ,「いせ さき風景探偵団」という 28 人の公募住民からなる会 を組織した。そして ,6 回の活動を経て , 報告書を市 長へ提出した。この活動に加え , アンケートやヒアリ ングで得られた住民の意見が , 景観計画区域の頁等に 「コラム」として反映されている。  三鷹市では景観計画を策定するにあたり ,「三鷹風 景百選」を作成し , それを基に住民の意見を聞きなが ら ,「まち並み資源図」を作成した。さらに , 景観形 成の基準にまち並み資源図に配慮する基準を設け , 間 接的ではあるが住民参加の効果が計画内容に表れている。 6. おわりに  本研究では以下のことを明らかにした。 (1) 景観計画を策定するに当たり , 全国の中小自治体 では , 主に , 構成員別に 3 つの会議を組合せることに より体制を組んでいる。それを住民の参加度合によっ て公募住民重視型 , 住民代表型 , 庁内型に分類し , 実 態を把握した。 (2) 策定過程における住民参加の活動の目的には様々な ものがあるが , 中でも住民の意向把握を目的として行わ れるものが多く , 活動回数は説明会やワークショップ等 で多い。そして , 計画構成において , 特に , 景観特性の 把握や景観施策の方向性の決定等に反映されやすい。 (3) 策定過程における住民の参加度合が高いほど , 公 共性の高い重点区域が指定される傾向があり , 地域の 実情に合った景観形成という点で住民参加の効果が表 れている。また , 住民の意見は , 法定の範囲内に記載 することにより , 効果的に景観誘導を行える可能性が ある。  今後の課題としては , 策定過程における住民参加が , 運用面にどのような影響を与えているかを詳細な追跡 調査によって明らかにしていく必要性がある。 14-4 <謝辞>  アンケート調査にご協力いただきました自治体関係者の皆様には多大なご協力をいただきまし た。心より感謝申し上げます。 <注釈> 注 1)「近世主要城郭」は , 全てが国による指定を受けているわけではないが , 中心としての城郭や   周囲に城下町が形成されていた経緯をもつ都市の場合 , 歴史的市街地や景観形成の手がかりと   なる資源が比較的多く残存すると思われたため選んだ。 注 2)「住民」とは , 対象団体内に存在する「関係団体」「事業者」「公募住民」のことを指す。また ,   「関係団体」とは非営利の法人または組織と定義する。 <参考文献> 1)小浦久子 : 景観法における景観計画の構成と運用実態に関する研究-初期に策定された景観計   画を事例として- 日本都市計画学会都市計画論文集 ,No.43-3,pp.211-216,2008 2)佐藤貴彦 , 堀裕典 , 小泉秀樹 , 大方潤一郎 : 景観法下の建築物規制の運用実態と課題-景観計画   に基づく届出制度に着目して- , 日本都市計画学会都市計画論文集 ,No.43-3,pp.217-222,2008 3)木方十根 , 吉田浩司 : 景観法を契機とした景観施策の展開に関する研究-鹿児島県下の自治体に   おける景観計画策定プロセス- , 日本都市計画学会都市計画論文集 ,No.45-3,pp.343-348,2010 反映された やや反映された どちらでもない あまり反映されなかった 反映されなかった 無回答 景観特性の把握 目標とする景観像 景観形成の基本理念 景観計画区域 景観計画区域内の重点的に景観形成 を図 る地区(重点区域) 良好な景観の形成に関する方針 届出対象行為 景観形成基準 景観重要建造物又は景観重要樹木 屋外広告物の表示及び屋外広告物を 掲出す る物件 の 設置に 関す る行為 の制限に 関する事項 景観重要公共施設の整備に関する事項 及び占 用許可 等の基 準 景観農業振興地域整備計画の策定に関す る基 本的事 項 自然公園法の許可の基準 計画の実現に向けた取組・体制 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 必須項目 選択項目 39 25 27 25 25 27 15 25 6 7 4 2 14 23 39 32 16 24 36 17 32 11 18 14 2 1 1 24 15 14 18 36 28 16 44 20 53 43 49 49 48 34 0 0 0 0 0 0 2 1 3 4 4 4 2 1 4 3 3 5 2 4 5 3 6 9 6 12 14 4 14 14 15 13 16 12 12 14 16 14 18 27 28 18 公募住民重視型 (n=19) の「反映された」、 「やや反映された」の合計値 図 10 住民参加の活動の計画構成への反映 (n=95) 図 12 公共性の高い重点区域の 1 団体当たりの指定数 新規団体 公募住民重視型 住民代表型 庁内型 (n=70) (n=16) (n=49) (n=5) 1.8 1.3 0.8 1.4 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 (区域) 指定がある 公募住民重視型 (n=16) 住民代表型 (n=49) 庁内型 (n=5) 指定がない 新規団体 (n=70) 34, 49% 36, 51% 10, 62% 6, 38% 22, 45% 27, 55% 3, 60% 2, 40% 図 11 公共性の高い重点区域の指定の有無

参照

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<RE100 ※1 に参加する建設・不動産業 ※2 の事業者>.

番号 団体名称 (市町名) 目標 取組内容 計画期間 計画に参画する住民等. 13 根上校下婦人会 (能美市)

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