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韓国社会における長男の役割の実践とその形成に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)韓国社会における長男役割の実践とその形成に関する研究 キーワード:長男、儒教、両班化現象、門中組織、祖先祭祀. 発達・社会システム専攻 姜 文淑 (目 次). られている特別な地位と役割、それにともなう一定の思考. はじめに 第 1 章 韓国儒教社会と長男役割. と行動のパターン、そしてそれらをめぐる人々の言説の総 体を長男文化と呼ぶことにした。. 第 1 節 両班化現象と儒教伝統 第2節 男子選好. 本論文の目的は、韓国における長男文化とはどのよう なものなのか、そしてその長男文化が、近代的平等思想. 第3節 門中組織の結節点としての長男. や合理主義が普及しつつある現代の韓国社会において、 どのように存続しているのかを考察するとともに、長男 文化がどのように長男の中に形成されるのかという、長. 第2章 長男役割を支える民法体系 第1節 戸主制度 第2節 相続制度 (1)戸主相続. 男文化の文化化の様子を考察することである。そして、 そのような考察によって、現代韓国社会の文化的動向を. (2)財産相続. 理解することである。. (3)祭祀相続 第3章 祖先祭祀と長男. 第 1 章 韓国儒教社会と長男役割. 第1節 祖先祭祀の種類 第2節 祖先祭祀における長男の役割. 本章では、韓国社会における男子選好、両班化現象に 伴う長男役割の普及、家族・親族における結節点として. 第3節 不遷位祭祀と長男の役割. の長男の地位などに焦点をあてて、儒教規範の中での長 男の地位と役割について考察した。 第1節 両班化現象と儒教伝統. 第4章 長男役割の実践に関する言説 第1節 『大韓民国で長男として生きる』の分析 (1)長男としての生い立ち (2)長男役割の実践に関する言説. 韓国では朝鮮王朝以来、両班化現象が進んでいるが、 とくに 1960 年代以降の高度経済成長のなかで、それは. 第2節 長男役割の実践に関するインタビュー調査. ますます進んでいる。ところが、両班文化は儒教文化を 基礎とした文化であるため、両班化現象とは儒教文化が 韓国社会に普及するという現象である。そして、儒教文. 第3節 考察 第5章 長男役割の形成 第1節 長男としての育ち方 第2節 長男役割の形成に関するインタビュー調査. 化において中心的役割を担っているのは長男である。し たがって、両班化現象は、結果として、儒教規範に基づ. 第3節 考察. いた長男の特別な地位と役割を韓国社会に普及させ定着 させる役割を果たした。 第2節 男子選好. おわりに. 韓国社会において、伝統的に男子選好の考え方が強い ことは、男子出産のためのさまざまな方法が語り継がれ. はじめに 儒教文化は、現代の韓国社会においては、近代と伝統と. ていることから明らかである。しかし、韓国では現在に. の葛藤の中心にある。そして、長男は、儒教文化を社会生 活の中で実践する中心的な存在である。つまり、韓国の長. おいてもなお、男子選好の考え方は強い。それは各種の 統計資料、アンケート調査、あるいはインタビュー調査. 男は、儒教文化において中心的な役割を持つことによって、 韓国の歴史と文化に関わり、家族関係においても中心的役. でも明らかである。そして、韓国社会において男子選好 の考えが現在もなお強いのは、それが長男の確保という. 割を与えられ、家族の代表者として親族の行事に関わり、. 問題と強く結びついているからである。. 祖先祭祀においても祭主としての役割をはたす重要な中心 的存在である。本論文では、そのような韓国の長男に与え. 1.

(2) 第3節 門中組織の結節点としての長男. 完全に平等に分配するという規定になった。したがって、. 門中的親族組織においては、本家・分家の家同士の関. 門中的親族のなかで特別な地位と役割を担っている長男. 係においても、家族内における人間関係においても、長. は、その役割を果たそうとすれば、過重な負担を背負わ. 男が結節点として重要な役割を果たしている。つまり、. なければならないにもかかわらず、相続に関しては他の. 家族内においては、長男を中心にして兄弟姉妹が結びつ. 兄弟姉妹と対等の権利しか与えられないという、逆の意. き、また、長男を中心に親と子の世代が結びつく。そし. 味での不平等が生じることとなった。そして、これが現. て、家を代表するのは長男であるから、親族内の家同士. 在の韓国で、長男をめぐるさまざまな問題を引き起こす. の関係においても長男が中心的役割を担っているのであ. 原因にもなっている。. る。分家の場合、分家した本人は長男ではないが、次世. (3)祭祀相続. 代以降は再び長男が家の代表者となる。したがって、韓. 祭祀相続については、1958 年制定の民法では戸主相続. 国の門中的親族組織は、可能な限り長男を結節点として. 人が族譜と祭具も継承すると規定されているが、戸主相. 結びつくような仕組みを持った組織である。. 続人は長男なので、長男が祭祀関連物も継承するという 規定である。1990 年の改正によって長男に限らず、祭祀 主宰者が祭祀関連物を継承するという規定に変わったが、. 第2章 長男文化を支える民法体系. 長男が祭祀主宰者であるという一般的社会状況に変化は. 本章では、韓国民法を主に用いて、戸主制度や相続制. ないというのが実情である。. 度などに焦点をあてて、韓国の法体系のなかで、長男文 化がどのように支えられているのかを考察した。. 第3章 祖先祭祀と長男. 第1節 戸主制度 韓国では、解放後の 1958 年に初めて制定された民法に. 本章では、長男文化と関係が深い祖先祭祀に焦点を当. おいて戸主制度が制定された。その後、個人の自由と平. てて、祭祀の種類や祭祀方法を明らかにし、祖先祭祀に. 等思想が普及するにともなって 1962 年と 1977 年に一部. おいて長男がいかに重要な役割を果たさなければならな. 改正が行われ、1990 年に大幅な改正が行われた。この. いかを考察した。. 1990 年改正によって戸主の権限は大幅に制限された。し. 第1節 祖先祭祀の種類. かし、戸主制度そのものは、1990 年改正においても残さ. 祭祀の種類について、年間を通してどのような種類の. れたし、長男の特別な地位も一部残された。たとえば、. 祖先祭祀が行われているのかを検討した。資料よって祭. 長男は戸主継承放棄の手続きなしには分家することがで. 祀の種類や名称に多様性があるが、たとえば、歳一祭、. きないとされている。この戸主制度そのものが廃止され. 茶礼、年始祭、節祠、忌祭、墓祭、四時祭などがあげら. たのは 2005 年の改正においてであるが、この民法の施行. れている。これらすべてを行っているという家系は少な. は 2008 年からとなっているため、現行民法ではまだ、戸. くなったけれども、忌祭などは各祖先の命日ごとに行う. 主制度とそれに伴う長男の特別な地位が法的に継続して. のが原則なので、年間ではかなりの回数になる。1969 年. いることになる。. に韓国保健福祉部が出した「家庭儀礼準則」では、忌祭. 第2節 相続制度. と茶礼を公認とし、2代祖までを奉るよう指導している. (1)戸主相続. が、実際は、家庭儀礼準則はあまり守られていないのが. 相続制度のうち、戸主相続については、1958 年制定の. 実情である。. 民法では、長男が戸主相続の最優先順位であり、しかも、. 第2節 祖先祭祀における長男の役割. 戸主相続権放棄はできなかった。1990 年の改正によって、. 祭祀における長男の役割については、市販のテキスト. 手続きをすれば、長男は戸主継承を放棄することができ. や先行研究によって、祭主としての長男の具体的な役割. るようになったが、現在でも長男が戸主継承の最優先順. を明らかにした。しかも、長男は基本的に、祭祀供物を. 位であることに変わりはない。. 準備するための費用も支払う。したがって、祭祀に伴う 長男の負担は非常に大きい。しかし、前述のように、法. (2)財産相続 財産相続については、1958 年制定の民法では戸主相続人. 的には財産相続は均分相続となっているため、長男にか. である長男には、固有相続分の5割を加算して相続する. かる負担はますます大きくなっているという点などが明. 権利が与えられていた。しかし、平等思想の普及にとも. らかになった。. なって、1990 年改正で、子供の相続分は、男子も女子も、. 第3節 不遷位祭祀と長男の役割. 戸主継承者もそうでない者も、婚出者もそうでない者も、. さらに、一部の名門家系に受け継がれている不遷位祭. 2.

(3) 祀を検討することによって、名門家系の宗孫が、門中規. 第3節 考察. 模の祭祀において、いかに大きな役割を担っているかを. 韓国社会で長男は、子供の頃から、家族や親族のなか で、長男として特別に優遇され、大きな期待がかけられ、. 検討した。. 家系や祖先について、とくに熱心に、繰り返し、いろい ろな話を聞かされてきている。また、長男は、長男とし. 第4章 長男役割の実践に関する言説 本章では、具体的事例に基づいて、韓国社会において. ての自覚や行動規範についても、子供の頃から、とくに. 長男役割が実際にどのように実践されているのかを考察. 厳しく聞かされてきている。そして、長男は、多くのこ. した。. とを聞かされ、教えられるだけでなく、長男としての具 体的経験を重ねているということが明らかになった。. 第1節 『大韓民国で長男として生きる』の分析 ユン・ヨンムの著書『大韓民国で長男として生きる』. 長男は、長男として生まれ、長男として処遇され、長. に基づいて、韓国社会において長男が長男役割を実際に. 男としての知識が与えられ、そして小さい頃からの長男. どのように実践しているのかを明らかにした。. としての役割実践をとおして、長男としての自覚と行動. 第2節 長男役割の実践に関するインタビュー調査. 規範が形成されるのである。韓国社会では、長男は生ま. 筆者が韓国で行ったインタビュー調査に基づいて、韓. れたときから長男として社会に参加し、同時に、長男と. 国の長男が長男役割を実際にどのように実践しているの. して社会参加することを通して長男役割を身につけてい. かを明らかにした。. くのである。つまり、韓国の長男は、学校のような日常. 第3節 考察. 性と分離した状況での教え込みによる学習ではなく、生. 韓国社会における長男は、人生の節目で、自分の人生. まれたときから長男として韓国社会に正統的に周辺参加. を選択する際に、長男としての選択をしようとするし、. し、長男として状況に埋め込まれながら学習することに. また、それを家族から求められる場合もある。その際の. よって、長男としてのアイデンティティを獲得していく. 選択の基準は、長男個人のためではなく、家族のためと. といえるだろう。. いう基準である。家族の中では、まず、親に対して、親 おわりに. との同居や扶養も含めて、孝行を尽くさなければならな い。他の兄弟姉妹に対しては、家族の中心として、「父. ここでは、論文全体の要約を行ない、長男文化の研究. 親」の役割を果たさなければならない。家系を外に向か. に関する将来の展望を次のように指摘した。すなわち、. って輝かせるのも長男の役割である。祖先祭祀に参加し、. 韓国の長男文化に関する研究は、ジェンダー論の視点か. あるいは主宰するのも長男の役割である。. らの研究以外、これまでほとんど行われていないので、. しかし一方で、韓国の長男は、近代化とともに平等主. 今後も大きな可能性のある研究分野と考えられる。その. 義的価値観が社会全体に浸透してきている現代的状況も. 長男文化を取り巻く韓国社会は、法改正や核家族化や個. 十分認識しており、とくに若い世代では、長男役割を近. 人主義思想の広がりなど、長男文化の存続にとって不利. 代的価値観とどのように調和させていくのかという点で、. な方向へと急速な変化を遂げつつある。しかし、一方で. さまざまに対応していることも明らかになった。. は、韓国の伝統文化を再評価し、現代社会に活用しよう という動きも起こっている。伝統文化を現代に活かすこ とによって、韓国人としてのアイデンティティを再構築. 第5章 長男役割の形成 本章では、4章と同じく具体的事例に基づいて、韓国. しようという動きである。そのような状況の中で長男文. における長男役割がどのように形成されるのかを考察し. 化がどのように存続し、あるいは変容するのかという点. た。. は、今後、韓国社会の動向を知る上で、興味深い研究課 題の一つである。. 第1節 長男としての育ち方 ユン・ヨンムの著書『大韓民国で長男として生きる』. ( 主要参考文献). に基づいて、韓国社会において長男が長男役割を実際に. 〈日本語〉. どのように形成していくのかを明らかにした。 第2節 長男役割の形成に関するインタビュー調査. 宮嶋博史『両班』( 中公新書 1258) 、中央公論社、1995. 同じく筆者自身によるインタビュー調査に基づいて、. 年.. 韓国の長男が長男としての役割を実際にどのように形成. 岡田浩樹『両班−変容する韓国社会の文化人類学的研究. していくのかを明らかにした。. −』、風響社、2001 年.. 3.

(4) 崔吉城著『韓国の祖先崇拝』、御茶の水書房、1992 年. 嶋陸奥彦「氏族制度と門中組織」( 伊藤亜人・関本照夫・ 船曳健夫編『現代社会人類学Ⅰ』、東京大学出版会、 1987 年) . 嶋陸奥彦「族譜―歴史人類学的展望―」(杉山晃一・櫻 井哲男編著『韓国社会の文化人類学』、弘文堂、1990 年). 末成道男「韓国社会の『両班』化」(伊藤亜人・関本照 夫・船曳健夫編『現代の社会人類学Ⅰ』、東京大学出版 会、1987 年). 吉川美華「韓国における親族相続法の制定過程について の一考察」( 『韓国朝鮮の文化と社会』第3号、韓国・朝 鮮文化研究会、2004 年) . 〈韓国語〉 池承鍾・朴チェフン「現代社会の両班文化に関する研 究」(池承鍾他『近代社会変動と両班』、アセア文化社、 2000 年). 『社会統計調査報告書―家族・福祉・労働部門―』、統計 庁、2002 年. 李光奎『韓国家族の構造分析』、一志社、1975 年. 崔在錫『現代家族研究』、一志社、1982 年. !"#『現代韓国家族研究』、$%社,1989 年. 金ヒョンジュ『長男とその』―33 の長男夫婦が語る―& セムルキョル出版社&2001 年. 女性のための会『七つの男性コンプレックス』&ヒョナ ム社&1994 年. ユン・ヨンム『大韓民国で長男として生き』&'()*& 2004 年. +スンヒョン『韓国の名門宗家』&ソウル大学校出版部& 2002 年. 崔弘基『韓国戸籍制度史』、ソウル大学校出版部、1997 年. 金疇洙『親族・相続法−家族法−』、法文社、2005 年. 李光圭「急変する社会においての韓国文化の伝統性」 ( 『韓国文化人類学』 7 輯、1975 年) . 李吉杓「家礼からみた韓国人の意識構造研究」−婚・祭 礼を中心として−( 『誠信研究論文集』第 17 輯、1983 年) . 趙ヘジョン「韓国の社会変動と家族主義」( 『韓国文化人 類学』 第 17 輯、1985 年.. 4.

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