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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 越 川 美 乃

     学位論文題名

Tyrosine phosphatase‑like activity of bone‑type     alkaline phosphatase at neutral pH range      (骨型アルカリ性ホスファターゼの中性pH 領域における      チロシンホスファターゼ様活性)

学位論文内容の要旨

【 目 的 】 ア ル カ リ 性 ホ ス フ ァ タ ー ゼ(ALP)は 生 体 内 に 広 く 存 在 し 、 特 に 骨 型ALP は骨 芽細 胞の分化や硬組織形成能の指標あるいは骨の動態を反映するマーカー酵素と し て 多く の 研 究 に 用 いられ てい る。ALPは硬 組織 の石灰 化過 程に おい て重 要な 役割 を果 たし ている とさ れる が、 その 機能 は明 らか では なく 、生 理的 基質や至適pHの同 定も され ていな い。ALP活性 を測 定す る際、p‑nitrophenylphosphate (pNPP)等の人 工基 質を 用いる と、 生理 的状 態か らは るか に離 れた アル カリ 側が 至適pHとなる。生 体 内 で働 く 本 来 の 基 質を用 いた 際に 、ALPは アル カリ側 のpHで効 率よ く作 用す るこ とができるのかどうかが問題となる。

  そ こで 骨 芽 細 胞 様 細 胞 株MC3T3−El細 胞 の 精 製ALPを 用 い てALPが プ ロ テ イ ンホ ス フ んタ ー ゼ と し て 働く可 能性 を検 討し た。 本研 究は 骨芽 細胞 のALPが中 性付 近の pHで チロ シ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ 様 の 活 性 を 持 っ か 否かを 調べ た最 初の もの であ る。

【 材 料と 方 法 】 骨 芽 細胞様 細胞 株MC3T3一E1細胞 を通法 に従 って 石灰 化前 期ま で培 養し た。 培養細 胞を 回収 後、 超音 波破 砕しbutanol抽出した。各カラムクロマトグラ フイ ーはFPLCシステムを用いた。濾過後の酵素を用いて陰イオン交換(POROS50D)、

ConAアフ イニティー(HiTrapConA)、さらにゲル濾過クロマトグラフィー(SuperdeX 200HR10/30) を行 い、ALPを 精製 した 。ゲ ル濾 過ス タン ダー ドタ ンパクを同様にカ ラム に通 し、その分子量を推測した。同様にSDSゲル電気泳動(SDS‐PAGE)により、

その精製度と分子量を推測した。

  ALP活 性 は ロ 卿 加 水 分 解 活 性pNPPase) と し 、Besseyら の 変 法 を 用 い て 測 定 し た。 プロ テインホスファターゼ活性はチロシンリン酸化したミエリン塩基性タンパク 質 (Tyr・P‐MBP)、 セリ ン・ スレ オニ ンリ ン酸 化した ミエ リン 塩基 性タ ンパ ク質

(Ser/Thr・P―MBP)、チロシンリン酸化したRCM‐lysoZyme(TyrIP‐RCM‐lysoZyme)、セ リン・スレオニンリン酸化したHiStone(Ser′nlrIPーHistone)を基質として、ラジオア イソ トー プラベルしたりンの脱リン量を液体シンチレーションカウンターにて測定し た。 各ク ロマト グラ フイ ーに より 得ら れた 分画 の脱 リン 酸化 活性 を測定し、pNPPの

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加水 分解 活性 と比 較検 討し た。 さら にゲ ル濾 過後 の酵 素を用 い、各活性のpH依存性 と 阻 害 剤 に対 する 感受性 を調 べた 。ま た、 他の 生理 的基 質検 索の ため 、ALPによ る 種 々 の り ン 酸 化 合 物の 加 水 分 解 活 性 と そ のpH依 存 性 に つ い て も 検 討 を 行 っ た。

  【 結果と考察】3種類のカラムを用いた精製により、最終精製酵素はおよそ900倍以 上精 製さ れた 。ま たSDS‑PAGE後 の銀 染色 にお いて 単一 のバン ドとして認められた。

その 酵素の推定分子量はゲル濾過の結果から78,000、SDS‑PAGEより76,000であり、

従 来 報 告 され てい る骨型ALPのモ ノマ ーの 分子 量と一 致し た。 さら に、 グル 濾過 ま で の 精 製 過 程 でpNPPaseとTyr‑P‑MBP脱 リ ン酸 化活性 は同 一の 挙動 を示 した が、 大 部分 のSer/Thr‑P‑MBP脱リ ン酸化 活性は陰イオン交換カラムクロマトグラフィー後に pNPPase活性 から 分離 され 、グル 濾過クロマトグラフィー後にはほとんど検出されな かった。またTyr‑P‑RCM‑Iysozyme、Ser/Thr‑P‑Histoneは脱リン酸化活性が広い範囲の pHに 渡 っ て検 出さ れず、ALPの示 すプ ロテ イン ホスフ ァタ ーゼ 様活 性に は基 質特 異 性が観察された。

  pNPPaseとTyr‑P‑Iv0:3P脱リン酸化の至適pHはそれぞれ9.4‑10.4と8.3‑8.8であった。

pNPPaseは 中 性pHで は ほ と ん ど 活 性 を 示さ ない が、Tyr‑P‑MBP脱リ ン酸 化の 至適pH はアルカリ側に存在するものの、中性付近のpH7.O‐7.6でも最大活性の約62%の活性 が保たれていた。

  口岬PaseとTyr一P‐MBPの脱リン酸活性に対するいくっかの阻害剤の効果を調べた結 果 、 両 活 性と もALPの特 異的 阻害 剤で あるleVamis01eによ り阻 害さ れた が、 プロ テ インホスファターゼの阻害剤であるオカダ酸とdephostatinによっては阻害されなかっ た。 またvanadateやL‐homoarginineにお いて もpNPPaseとTyrlP−MBPの脱リン酸活 性は 阻害 され た。 これ によ り、 ロ卿aseとTyr一P―MBPの脱リン酸活性はいずれもALP により行われる反応であることが強く示唆された。

  他 の様 々な りン 酸化 合物 の加 水分 解活 性の 至適pHを 調べた ところいずれもアルカ リ側 にあ った 。至 適pHにお ける 活性 とpH7での 活性 の比 率はpNPPで32.2、Tyr一P‐ MBPで1.6であり、測定したりン酸化合物の中ではTyr・P−MBPの値が最小であった。

【 結 論 】ALPの 生理 的機 能を 理解 する ため 、生 理的基 質と その 至適pHを 知る こと は 非 常 に 重 要 で あ る 。 本 研 究 では 、MC3T3―E1細 胞のALPを 精製 し、 基質 特異 性を 調 べ、 様々 な基 質を 用い て至 適pHを検 索し た。 推測 した 分子量 とアルカリ側での高い 〆 卿aseと 阻 害 剤 の 実 験 に よ り 、 最 終 精 製 酵 素 はALPの 典 型 的 な 特 徴 を 示 し た。

  著 者 はALPの 生 理 的 な 基 質 を 用 い た 場 合 、 活 性 の 至 適pHは 中 性 付 近 にシ フ卜 す ると推測して研究を行った結果、1、yr−P‐MBPを基質とした際、中性pHでも活性が保 た れ る 事 が明 らか となっ た。 他の いく っか のり ン酸 化合 物に っい てALPの生 理的 基 質 と な る 可 能 性 を 調 べ た が 、い ず れ も 中 性pHで はALPの 良い 基 質 に は なら なか っ た。

  以 上 よ り、ALPが 中性pHに おい てチ ロシ ンホ スファ ター ゼ様 活性 を保 持す るこ と を 示 し た 。ま たこ の活性 が硬 組織 石灰 化に おけ るALPの機 能に 関連 して いる 可能 性 のあることが考えられる。

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学位論文審査の要旨 主査   教授   飯田順一郎 副査    教授    松 本    章 副査   教授   久保木芳徳

     学位論文題名

Tyrosine phosphatase‑like activity of bone‑type     alkaline phosphatase at neutral pH range      (骨型アルカリ性ホスファターゼの中性pH 領域における      チロシンホスファターゼ様活性)

審査はいずれの 担当者も口頭試問の形式で提出論文の内容及び関連分野 について試問した。

矯 正臨 床に おけ る歯 の移 動の メカ ニズ ムを 理解 する 上 で、 骨形 成機 構の 研究は重要である。 なか で も 骨 型ア ルカ リ性 ホス フん タ ーゼ(ALP)は 骨芽 細胞 の分 化 や硬 組織 形成 能の 指標 とし て多 くの 研 究 に 用い られ てい る。ALPは 硬組 織の 石灰 化過 程に おい て 重要 な役 割を 果た して いる とさ れる が 、そ の機 能は 明ら かで はな く、 生理 的基 質や 至適pHの同 定も され てい ない。そこで骨芽細 胞様 細 胞 株MC3T3‑E1細 胞 の 精 製ALPを 用 い てALPが プ ロ テ イ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ と し て 働 く 可 能 性を 検討する事を目的として以下の実験を行った。

  骨 芽 細胞 様細 胞株MC3T3・El細胞 を通 法に 従っ て石 灰化 前 期ま で培 養し 回収 後、 超音 波破 砕と butanol抽出 を行 った 。さ らに 陰イ オン 交換 、ConAア フイ ニ ティ ー、 ゲル 濾過 クロ マト グラ フイ ー を 行 い、ALPを 精製 した 。グ ル濾 過ス タン ダー ドタ ンパ ク を同 様に カラ ムに 通し 、そ の分 子量 を 推 測 し た 。 同 様 にSDSゲ ル 電 気 泳 動(SDS‑PAGE)に よ り 、 そ の 精 製 度 と 分 子 量 を 推 測 し た 。 ALP活 性 はpNPP加 水 分 解 活 性pNPPase) と し 、Besseyら の 変 法 を 用 い て 測 定 し た 。 プ ロ テ イン ホ スフ ァタ ーゼ 活性 はチロシンリン酸 化したミエリン塩基性タンパク質(TyrIP―MBP)、セリ ン・

ス レオ ニン リン 酸化 したミエリン塩基 性タンパク質(Ser/ThrIPm毋P)を基質として、ラジオ アイ ソ トー プラ ベル した りンの脱リン量を 液体シンチレーションカウンターにて測定した。各分画 の脱 リ ン 酸 化活 性を 測定 し、pNPPaseと 比較 検討 した 。さ らに グ ル濾 過後 の酵 素を 用い 、各 活性 のpH 依 存 性 と阻 害剤 に対 する 感受 性 を調 べた 。ま た、 他の 生理 的基 質検 索の ため 、ALPによ る種 々の りン酸化合物の加水分解活性とそのpH依存性についても検討を行った。

  最 終 精 製 酵 素 は 、 約900倍 以 上 精 製さ れSDS‐PAGE後の 銀 染色 にお いて 単一 のバ ンド とし て認 め られ た。 その 酵素 の推 定分 子量 はゲ ル濾 過よ り78,000、SDS−PAGEより76,000であり、従 来報 告されている骨型ALPのモノマーの分子量と一致した。 さらに、ゲル濾過までの精製過程でzぬ岬Pase とTyr一P−MBP脱リン酸化活性は同一の挙動を示したが 、大部分のSer/ThrIPーMBP脱リン酸化活性は 陰 イオ ン交 換カ ラム 後にpNPPase活 性か ら分 離さ れ、ゲル濾過後にはほとんど検出されなかっ た。

ロ旺 PaseとTyr・P−MBP脱リン酸化の至適pHはそれぞれ9.4‐10.4と8.3‐8.8であった。pNPPaseは中 性pHで はほ とん ど活 性を 示さ な いが 、Tyr‐P―MBP脱 リン 酸 化の 至適pHは アル カリ 側に 存在 する

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ものの、中性付近のpH7.0‑7.6でも最大活性の約62%の活性が保たれていた。pNPPaseとTyr‑P‑MBP の脱 リン酸活 性に対す る阻害剤の 効果を調 べた結果 、両活性 ともALPの特異的阻害剤である levamisoleにより阻害されたが、プロテインホスファターゼの阻害剤であるオカダ酸とdephostatin によっては阻害されなかった。これにより、pNPPaseとTyr‑P―rvn3:Pの脱リン酸活性はいずれもALP により行われる反応であることが強く示唆された。他の様々なりン酸化合物の加水分解活性の至適 pHを調 べたところいずれもアルカリ側にあった。至適pHにおける活性とpH7での活性の比率は pNPPで32.2、Tyr‑P‑MBPで1.6であり、測定したりン酸化合物の中ではTyr‑P‑MBPの値が最小で あった。

  本論文は、歯科矯正学的な歯の移動を行う際の重要な生体反応のーつである骨形成機構における ALPの生理的機能にっいて検討を加えたものである。本研究では、骨芽細胞様細胞株のALPを精 製し、基質特異性を調べ、様々な基質を用いて至適pHを検索した。最終精製酵素は心Jの典型 的な特徴を示し、Tyr‐P.MBPを基質とした際、中性pHでもその活性が保たれる事が明らかとなっ た。他のいくっかのりン酸化合物についてその可能性を調べたが、いずれも中性pHではALPの 良い基質にはならなかった。以上より、ALPが中性pHにおいてチロシンホスファターゼ様活性を 保持し、この活性が硬組織石灰化におけるALPの機能に関連している可能性のあることが示唆さ れた。

この研究は生理的pHの範囲でALP活性を測定した基質検索実験で興味深く、この分野の研究に 貢献できる新知見があり、この成果は、矯正学的にも、骨形成に関する基礎的研究としても、大い に貢献するものと考えられる。加えて、試問に対する明快な回答から、申請者は本研究に直接関係 する事項のみならず、関連分野における基礎的、臨床的な広い学識を有していると認められた。よ っ て 申 請 者 は 博 士 ( 歯 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。

参照

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