He‑Neレーザーの電流変調特性
著者 山岸 万千雄, 北島 巌, 岩沢 宏
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 23
号 2
ページ 339‑348
発行年 1975‑09
URL http://hdl.handle.net/10098/4634
福井大学
工 学 部 研 究 報 告 第
2 3
巻 第2
号昭和
50年9月I ‑ I e ‑ N e レーザーの電流変調特性
山 岸 万 千 雄 ・ 北 島 巌・岩 沢 宏
Modulation of Discharge Current i n a H e ‑ Ne Laser
Machio YAMAGISHI , Iwao KITAZIMA , Hiroshi IWASAWA ( R e c e i v e d Apr.
15, 1975)I n order t o study t h e c h a r a c t e r i s t i c o f modulation n o i s e and t h e mechanism o f o s c i l l a t i o n i n a gas discharge l a s e r , the current has been modulated i n square wave. I n t h e present experiment , the discharge current o f a 6328A
oHe‑Ne l a s e r i s p e r i o d i c a l l y under square wave modulation o f 1 0 p e r c e n t . The frequency dependence o f discharge current and l a s e r emission i s a l s o o b s e r v e d . The resonance phenomena appear near 3 0 kHz and t h e c r i t i c a l frequency appears near 1 0 0 kHz. The response time o f l a s e r emission i s found t o be 3 0 μ s e c . As modulation frequency i s increased , p u l s e waveform o f l a s e r l i g h t does not form a square wave. I t i s found t h a t the component o f high frequency n o i s e , or quantum n o i s e o f 3 0 0 MHz , i s superposed on modulation wa veform o f l a s e r l i g h t .
1 .
序 論 波数を求めているoまた,田幸氏らめは高周波でH e ‑ Ne
レーザー(1.15.μm)をパルス励起して,そのと 気体レーザーの雑音には放電電流に依存する変調雑 きのレーザー・パルス波形から励起終了後,パルスが 音光共振器の機械的振動によるマイクロフォニック雑enhance
されることを観測している。最近,上原・音,多モード競合による過剰光子雑音,熱雑音および 藤井の両氏3)は放電電流を繰り返し短形波変調するこ レーザー準位聞の遷移の統計的ゆらぎに基づく量子雑 とにより各準位の自然遷移率を求めている口
音など各種のものがある。この中で変調雑音は普通の 本実験は 6328Aで発振している
He‑Ne
レーザー 直流放電型のHe‑Ne
レーザーの雑音の中で最も大き の放電電流を強制的に繰り返し短形波変調をし,変調いもので、ある。 雑音の臨界周波数を求め発振機構の考察を行うことを
従来,気体レーザーの変調雑音の臨界周波数や励起 目的としてしる。レーザ一光の変調波形の周波数依存 機構を考察するために放電電流の変調実験がなされて 性から
H e 2 ' S
準安定状態の働きの重要性を測定する きているo本郷氏らりは6328Aで発振しているHe‑Ne
とともにN e 3 s
状態Ne2p
状態などレーザ一発振に レーザーの放電電流を繰り返し短形波変調して臨界周 関係している各状態の働きも調べ考察を行う。骨電子工学科
340
2. 実 験 装 置
実験装置の概略を Fig.1に示す。電流変調の実験 装置は He‑Neレーザー管, 変調回路,パルス発生 器,シンクロスコープ,光減衰器などで構成されてい るoHe‑Neレーザーは発振波長6328A,内部鏡型で あり, 内径 2mm仇 有効放電長 10cm,光共振器 長 30cmのものであるo変調回路はトランジスタを 2段縦接続したエミッタ入力型であり,アースとエミ ッタの聞に挿入した 22012の抵抗で放電電流の変調波 形を検出しているo パルス発生器は O.lHzから 1MHzまで変化させることができ,また交流信号に直 流分を重ね合わせることも可能であるo光検知器には 光電子増倍管 MS‑9Sと光電管 PV‑24を用し、,レー ザー管から充分離して受光し,逆二乗則で減衰する自 然放出光を無視できるようにした。また,測光の変調 測定には移動縞の影響の少ない陽極側にMS‑9Sを設 置しであるO光減衰器には1 %透過フィルターと10%
透過フィノレターを用いた。
F Mirror‑ended‑tube
Synchro
Fig. 1 Experimental setup for the discharge current modulation
変調回路をレーザー管の陰極とアースの聞に挿入し 放電電流を強制的に繰り返し短形波変調をする。その ときのレーザ一光と測光の応答を光検知器で検出し放 電電流の変調波形とともにシンクロスコープで測定し ているO
3 .
実験および結果3.1 se‑Ne レーザーの諸特性
レーザ一光の出力強度,放電電流中に存在している 振動的ゆらぎの振幅,レーザー管の陰極一陽極間電圧 などの放電電流依存性を調べた。
放電電流の値を変化させ,そのときのレーザ一光の 出力強度を光電管 PV‑42で検知し,シンクロスコー フ。で、観測した。その結果を Fig.2に示す。レーザー
光の出力強度は放電電流増大とともに増加していき,
放電電流 15mA弱のところで最大値を示し,それ以 上の値になると減少してし、くoまた,出力強度の変化 は上に凸形の放物線に近似されるo
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Fig. 2 He‑Ne laser light intensity as a function of discharge current.
放電電流を増加させていくと放電電流中に振動的ゆ らぎの生じる現象がある。そのゆらぎをレーザー管の 陰極とアースの聞に挿入した50012の抵抗で検出しシ ンクロスコープで観測した。その結果を Fig.3に示 すO 放電電流 12mAまでは振動的ゆらぎが存在して いないが, 14mA近傍から発生し始める。 20mA近 傍でその振幅が急激に増加しており, 22mA以上で 安定して発生しているのが観測された。
放電電流(Ip)を増加さぜていき,そのときの陰極 一陽極間電庄 (Vp)を入力インピーダンス 1M12の 真空管電圧計で測定し,その結果を Fig.4に示す。
Ipの増加とともに急速に Vpは減少していくが,高 電流になるとその減少の仕方は非常に緩慢になってい る。特に,高電流領域では Ipの変化に関係なく Vp の値が変化せず一定値を保っている部分が生じてく
るo
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トレースはノ勺レス発生器からの出力波形である口変調 周波数 500Hzでは放電電流の変調波形は入力波形と ほぼ一致しているO 変調周波数 10KHzになると変調 波形の立ち上がりにくずれが生じているがほぼ短形波 に追随しているO この変調周波数までの放電電流の変 動分は 0.77rnAであるO 変調周波数 90KHzで変調 波形の立ち上がりにオーパー・シュートが表われ短形 波らのくずれが目立ってくるO このオーバ・シュート の部分は指数関数的に上昇しているO 変調周波数400 KHz以上において, この指数関数状の部分が成長し ていくのが見られ, 700KHzでは三角形状になってい る。これらのことから,短形波で電流変調を行うには 90KHzが限界と考えられる。放電電流の変調波形の 振幅の周波数依存性を示したのが Fig.6である,直 流放電電流は 6rnAと14rnAをとってある。放電電 流 6rnAのときは変調周波数 6KHzまで, また,
14rnAのときは 7KHzまで平坦部分を構成している が,それ以上の変調周波数では単調に減少してし、くO
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Arnplitude of oscillation noise as a function of discharge current.
Fig. 3
D.C.Discharge Curre円t
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Fig. 6 A.C. cornponent of modulated discharge current versus rnodulation frequency .
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レーザー光と測光の変調特性
変調回路で放電電流を繰り返し短形波変調をして,
そのときのレーザ一光と測光の応答を光電子増倍管 MS‑9Sで検出し放電電流の変調波形とともにデュア ル・ビーム・シングロスコープで観測した。ここで,
直流放電電流は 6rnAであり放電電流の変動分は 0.77rnAであるOその測定結果を Fig.7に示す。図 において (a)から (d)まではレーザ一光の変調特性 を示している口上のトレースはレーザー光の変調波形 を示し,下のトレースは放電電流の変調波形を示して いるo(e)から (h)までは測光の変調特性を示して いるO 上のトレースは測光の変調波形を示し,下のト レースは放電電流の変調波形を示しているO 変調周波
3.3
変調回路で放電電流を繰り返し短形波変調をし,そ のときのパノレス発生器からの出力と放電電流の変調波 形とをデュアル・ビーム・シンクロスコープで観測し 変調波形の周波数依存性を測定した。 Fig.5には直流 放電電流 6rnAのときの変調周波数500Hzから 700 KHzまで6種類の放電電流の変調波形を示してあ るO上のトレースが放電電流の変調波形であり,下の 70
Fig. 4 Supply voltage as a function of discharge current.
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10 '20 30 40Discharge Current
放電電流の変調渡形
342
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Fig. 5 Waveform of modulated discharge current for modulation frequency with constant modulation input power.
(a) 500Hz, 0.5msjdiv (b) 10kHz, 20μsjdiv (c) 90kHz, 2μsjdiv (d) 400kHz, 0.5μsjdiv (e) 600KHz, 0.5μsjdiv (f) 700kHz, 0.2μsjdiv
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( g )
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Fig. 7 Waveform of modulated He‑Ne laser light v.s. modulation frequency with constant A.C. component of modulated discharge current.
(a) (e) 500Hz, 0.5ms/div, (b) (f) 9kHz, 20μs/div, (c) (g) 20kHz, 10μs/div, (d) (h) 30kHz, 10μs/div,
344
数は500Hz,9KHz, 20KHz, 30KHzの4種類を掲げ であるO 変調周波数の増大とともにレーザ一光,測光 とも変調波形のくずれが顕著となってくるO変調周波 数 500Hzのときレーザー光の変調波形は変調が加わ ったときに若干のはね上がりが見られるO それに対し 測光の変調波形は入力波形に追随してしる口よって,
このはね上がりはレーザ一光特有のものであるO 変調 周波数9KHzになるとレーザ一光,測光とも変調波形 にくずれが表われている。双方とも変調波形の立ち上 がりにオーバー・シュートが表われ定常状態になるま でに約 30μsecかかっている。さらに励起が終了した のち約.30μsecの間,変調成分が残存している。変調 周波数 20KHzでレーザ一光,測光の変調波形とも短 形波からのくずれが顕著に表われてLる。また,定常 状態の部分はほとんど見あたらなし、口変調周波数 30 KHzでは短形波変調終了後次の変調が行われるまで
レーザ一光の変調成分が残存してL、るO 変調周波数 9KHzから 30KHzまでレーザ一光と測光の変調波形 はほとんど相似形である口さらに, レーザ一光の変調 波形には光電子増倍管のショット・ノイズ以外の量子 雑音と思われる高周波成分が存在しているぺ これは 測光の変調波形と比較するとさらに明確であるO
レーザ一光と測光の変調振l幅の周波数依存性を 500 Hzから 100KHzにわたって測定し Fig.8とFig.9 にその結果を示しであるoFig.8には放電電流6mA, 8mA, 14mAの3種類をパラメーターとして選んで ある口 Fig.3から前二者は振動的ゆらぎの生じていな い領域,後者は不安定に発生している領域に相当して いるO 放電電流 6mAのときには変調周波数泣CHz
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Amplitude of modulated He‑Ne laser light versus modulation frequency.
にかけて, 放電電流 8mAのときには 2KHzから 4KHzにかけて変調振幅が若干上昇しているDその前 後の変調周波数領域では一定値を示しているO また,
放電電流6mAのときには変調周波数30KHzのとこ ろに放電電流 8mAのときには 35KHzのところに 共振現象が表われている口それ以上の変調周波数にな ると変調振幅は急激に減少してL、くD放電電流14mA のときには 6mA,8mAのときと異なり変調周波数 2KHzから 4KHzにおける変調振幅の若干の上昇,
変調周波数 30KHz近傍における共振現象は表われて いなし、。また,変調振幅は前二者に比較し非常に小さ L 。、 Fig.9 にはパラメーターとして直流放電電流 6mA と 14mAをとってあるO 変調周波数が約 20 KHz までは放電電流 14mAのときの変調振幅の方 が 6mAのときのものよりも大きし、。放電電流 6mA のときには変調周波数25KHzのところに共振現象が あらわれ,放電電流 14mAのときには変調周波数10 KHz近傍に平坦なピークがみられるO これはレーザ
一光の変調特性と異なるところであるD
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Fig. 9 Amplitude of modulated side light versus modulation frequency.
3.4 レーザ一光変調振幅の電流変調度依存性 変調周波数を 100Hzに固定し,パラメーターを直 流放電電流にとって電流変調度を変化させることによ
りレーザ一光の変調振幅を測定した。この振幅は光電 管 PV‑24で検出した。また,各直流放電電流におい て最大の変調がかかるようにしたときと,そのように しなかったときの双方について行った。 前者を 整 合ぺ後者を 不整合"と呼ぶ。その測定結果をFig.10 から Fig.13にかけて示す。 Fig.10とFig.llから
レーザ一光の変調振幅は放電電流の変調度に比例して いるD また,直流放電電流の増大とともにその直線の
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傾きは若干ずつ急になっていくが変調振幅は急速に減
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Fig.12 Amplitude of modulated He‑Ne laser light as a function of D.C. discharge current with unmatched condition
Fig.10 Amplitude of modulated He‑Ne laser light as a function of A.C. component of modulated discharge current with unmat‑
ched condition
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Component of Modutated Discharge CurrentFig.13 Amplitude of modulated He‑Ne laser light as a function of D.C. discharge current with matched condition
Fig.11 Amplitude of modulated He‑Ne laser light as a fuction of A.C. component of modulated dis‑ charge current with matched condition
検 討 ・ 考 察
レーザ一光の放電電流依存性
Fig.2から Fig.4を通して He‑Ne νーザーのい くつかの性質を調べた。これらの結果について若干の
4. 4.1 少してL、くoその減少の仕方は Fig.12とFig.13に
示されてし唱。不整合のときは直流放電電流増大とと もに線形的に減少しているのに対し整合をとったとき には指数関数的に減少してしる。 Fig.l0から直流放 電電流 3.7mAのとき放電電流の変動量が O.27mA を超えると発振は停止したD
346
考察を加えるo
Fig.2については,放電電流を増加させるとHe21S 準安定状態への励起が強くなり Ne3s状態へのエネル ギー移乗が多くなる。そのためにNe3s状態と Ne2p 状態間の反転分布度が強くなりレーザー光の出力強度 が増大してし、くO しかし,さらに放電電流を増加させ ていくとより高い準安定状態へ励起されHe21S準安定 状態の密度が小さくなるo同時に, Ne2p状態の密度 が高まれ結局, Ne3s状態と Ne2p状態聞の反転 分布強度が小さくなり出力強度が減少していくことに なるD また, rate equationを解くことによりレー ザ一光の出力強度の放電電流依存性を求めることがで きるわ口
Fig.3に示されている現象は放電電流を増加させて いくと放電電流中に振動的ゆらぎが発生することを示 しているO これは陰極付近に生じた振動がプラズマ内 の電界からエネルギーを受け取り成長しながら陽極へ 伝播していく5)ので移動縞発生による雑音と考えられ
るo
Fig.4には Ipの変化に関係なく Vpが一定値を 保っている部分があるがこれはレーザー管のインピー ダンスやイン夕、、クタンスが影響しているものと考えら れる口
He‑Ne レーザーの変調雑音の考察には発振機構を も含めて考えていかなければならなし、口
4.2変調雑音特性
a) Fig.8から変調振幅の最大値の1/10まて減少した ときの変調周波数を臨界周波数とするとその値は約 100KHzとなるoそれ以上の周波数になると変調雑 音の影響はほとんどないものと考えられるG
b) 変調周波数20KHzまでの変調振幅はほぼ一定値 を保っているoこのことは Fig.8に示されている。
この理由は rate equationを解くことによって 理解されるO
レーザ一光の交流分ωと放電電流の交流分 iとの 聞には次の関係がある九
二一 Po ̲ k
I
521 ‑ 532・ 一一一
山 521 (j w+r) (jω十5e)l
519,
s
21519 ‑S32519(aio+ 1 ) ~ 1ω十 521‑ 5 3 ‑a 532iol・
i…
(1) l+jω(1/519十1/543)‑UJ /519543このように
7
の振幅が一定であればωも一定を保つ ことがわかる。ここで,Po; He21S準安定状態への励起確率と He
基底状態の密度との積. 5ij:準位
t
から準位jへの 自然、遷移率 r:光共振器の半値幅 io:直流放電 電流. k:自由電子の直流分と直流放電電流との比 例定数.5e:定数.a = 24 (521/582 ‑1)c) 放電電流を増加させていくと Ne3s状態が飽和 していき, 同時に Ne2p状態の密度が増大してい くo従って,放電電流に変調が加わり,それによっ て He21S準安定状態の密度が変化しても,それほ どレーザー光に影響が表われないものと考えられ るoこのことを Fig.14を用いて図式的に考察して みるoFig.14に示すように放電電流11と12を中
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Fig.14 Discharge current dependence of modulated noise.
心に.o.ldだけ変動させたとすると,放電電流 11
に対して .o.ldの変動によって,レーザ一光の強度 はL1から h まで変化する。放電電流 12に対して は ふIdの変動によって, レーザー光の強度が L3 から L4まで変化する。このように,放電電流が増 大するにつれレーザ一光の変調振幅は減少してい くoただしこの場合,レーザー光の出力強度が飽 和に達するまでの放電電流の値に対して考察してい
るD
d) 放電電流の変調度の増加に比例してレーザー光の 変調振幅が大きくなってし、く。これは He21Sの準 安定状態の励起密度が放電電流の変動に比例して増 減していることが考えられるo放電電流の変調度を 増加させていくと放電電流の変調波形にひずみが生 じるために Fig.10,Fig.11に示すように直線の傾 きが変化する。
このようにして,変調雑音は約100KHzまで存在し ていることが測定された。そこで,光検知器でレーザ
一光のゆらぎを検出し,フィード・ノミック回路でその ゆらぎと逆位相で放電電流を変調すれば, 100KHz までのレーザ一光のゆらぎならばかなりのところま で減少させられると考えられるO しかし, Fig.7よ
り,放電電流への入力波形とレーザ一光の変調波形 とは高周波領域で異なってくるので, 100KHz近傍 のゆらぎの削除は非常に困難であると考えられるo
e) 放電電流 6mAと8mAのとき変調周波数 30 KHz近傍で共振現象が表われるのは Ne3s状態の populationとNe2p状態の depopulationと がある周波数において一定の関係を生じて発生して
くるものと思うD そのことを Fig.15を用いて説明 する。放電電流を変調すると He21S準安定状態が 励起され Ne原子と共鳴衝突して Ne3s状態へエ ネルギーが移乗される前記により Ne3s状態の密 度は約 30μsec(30KHz)で最大となることを示し ておいた。そこで,短形波のパノレス幅を30μsecと すると変調終了後. Ne3s状態の密度が最大とな
るoNe2p状態の緩和時間は非常に短いので変調終 了と同時に Ne2p状態の密度は最小となるO よっ て, Ne3s状態と Ne2p状態聞の反転分布強度が最 大となり共振現象が生じるものと考えられる。放電 電流 14mAのときには共振が表われない。この理 由はFig.2に示すようにレーザ一光の出力強度は放
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Fig.15 Operation of Ne(2p) state and Ne(3s) state under excited condition
電電流 15mA弱のとき最大となっている口よっ て放電電流 14mAのときには Ne3s状 態 が ほ と んど飽和の傾向にあり,また Ne2p状態の depo‑
pulationの影響を考慮しなくてもよい状態になっ ているためと考えられるO
f) Fig.8から変調周波数 40KHzを越えると変調振 幅は急速に減少してし、くO 放電電流を短形波で変調 すると Ne3s状態へ He21S準安定状態から指数 関数的にエネルギーを受けとるO そして,ある時間 経過後,放電電流の変動分による反転分布が形成さ れてレーザ一光の出力に変動が表われる。さらに,
時間経過とともに Ne3s励起原子の密度が増加し ていくことから変調振幅が増大してし、くO ここで,
変調周波数を高くしていくと励起開始からの時間が 短くなっていくことから変調振幅が減少してし、くQ
これらのことから He‑Neレーザーの電流変調 には He21S準安定状態のエネルギー移乗時間がか なり影響している口
g) Fig.8において,放電電流 6mAのとき変調周 波数2KHzから 3KHzにかけて,放電電流8mA のとき変調周波数 2KHzから 4KHzにかけての変 調振幅の若干の上昇はモードに関係したものであろ
うと考えられる円
4.3 He‑Neレーザーの発振機構
4.2で発振機構も含めて変調雑音について考察を行 ってきた。ここでは, レーザ一光と測光の変調波形の 周波数依存性から発振機構について考察を進めてい くO ここで, 4.2から変調雑音の臨界周波数100KHz と与えられていることより, He21S準安定状態の減 衰時間は約 10μsecである。
a) 変調周波数 500Hzと9KHzにおける小さなピ ークは次のように考えられる。放電電流を短形波で 変調したとき He21S準安定状態の密度が急激に増 加する口その反面.Ne1s状態から Ne2p状態へ の励起が緩慢であるため, Ne3s状態と Ne2p状態 聞の反転分布強度が一時的に強まったものと考えら れるo
b) レーザ一光の変調波形に表われでいる約 30μsec の過渡的状態は He21S準安定状態から Ne3s状態、
へのエネルギー移乗によって Ne3s励起原子の構 成されてし、く時間変化に原因しているO
c) 変調終了後もレーザー光の変調波形が残存してい るoこれは He21S準安定状態の緩和時間が長いた め励起が切れてもなおかつ Ne3s状態ヘエネルギ
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ーが移乗し続ける。また.Ne2p状態の密度が最小 となるため放電電流の変動の影響が Ne3s状態と Ne2p状態聞に残存するためと考えられる。
d) 変調周波数 20KHz,30KHzにおけるレーザー 光の変調波形はレーザ一光の出力に変動が表われた ときの Ne3s励起原子の密度を Nthとし,任意 の時間における Ne3s励起原子の密度を Nとする とCN‑Nth)に対応していると考えられる。
e) レーザー光と測光の変調波形の相似性の原因は測 光の最も強い放出光である赤色光 C5852A)がレー ザ一発振の上準位と共通で、あるため同じ変調を受け るものと考えられる。
f) レーザ{光の変調波形に見出される高周波雑音は 量子雑音と考えられ,特に Ne2p状態の緩和時間 に影響されると考えられる。
5 .
結 論放電電流のゆらぎに追随してゆらぐレーザー光の雑 音の存在領域は He21
S
準安定状態の減衰時間によっ て決定される。測定結果から約 10μsec状態であるか ら変調雑音の臨界周波数は約100KHzとなる。 100Hz で放電電流を繰り返し短形波変調をし放電電流の変調 度を変化させると He21S準安定状態の単位時間当た りの励起密度が変調度に比例して増減するため放電電 流の変調度とレーザー光の変調振幅との間には線形関 係がある。さらに,放電電流を増大させるとNe3s状 態が飽和してくると同時に Ne2p状態の密度が高く なってくるのでレーザー光の変調振幅は押えられてく るo特異な性質として Ne3s状態の密度が変調開始 後 約30μsecを経て最大となるoここで,変調周波数 30KHz と す る と 変 調 終 了 後 で あ る 30μsec 後に Ne2p 状態の密度は最小となるため Ne3s 状態と Ne2p状態間の反転分布強度が最大となるoよって,この変調周波数近傍で 共振現象が表われるO
レーザ一光や担.U光の変調波形の周波数依存性からも 発振機構を考察していくことができた。放電電流を繰 り返し短形波変調することにより He21S準安定状態
から Ne3s状態にエネルギーが移乗し, Ne3s励 起 原子の密度がある値に達したときにレーザー光に変動 が表われる。 Ne3s励起原子が飽和するとレーザー光 の変調振幅も定常値を保つようになるoその過渡状態 が 約 30μsecとなっているo さらに, 励起開始と同 時に He21S準 安 定 状 態 の 密 度 が 高 く な る の に 対 し Ne2p状態の密度はそれほど高くならない。よって,
変調周波数 500Hz,9KHzの比較的低周波のとき立 ち上がりにピークが表われる。変調周波数 20KHz, 30KHzのとき過渡状態が顕著に表われるが,これは くN‑Nth)に対応し, Ne3s励起原子の時間変化を表 わしているoまた,レーザー変調波形にみられる高周 波成分は量子雑音であると思われる九
謝 辞
実験装置の製作,測定にあたって協力された本講座 卒業研究生の佐賀信裕,向出和彦の両君に感謝の意を 表 し ま すO
参 考 文 献
1) 本郷昭三, 久保宇市, 木下幸次郎, 犬 石 嘉 雄 He‑Neレーザーの動的特性と雑音"
電気学会雑誌, 90 (1970) 1408
2) 田幸敏治,小林功,植松健一,大井みさほ He‑Neレーザーのパノレス励起(1)"
応用物理.34 (1965) 513 3)上原信吾,藤井陽一
He‑Ne気体レーザーの放電電流変調と雑音"
電子通信学会論文誌.53‑B (1970) 451 4) 向出和彦,北島最,岩沢安
気体レーザーの放電電流雑音の周波数特性"
応物学会,北陸支部, B‑10,昭和49年12月 5) 鈴 木 健 夫
気体レーザーの放電雑音"
応用物理, 39 (1970) 263
6) 山岸万千雄,佐賀信裕,岡井善四郎,北島巌 He‑Neレーザーの電流変調特性"
応物学会,北陸支部.B‑l1,昭和49年12月