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小学校における「子ども理解のポイント」作成

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Academic year: 2021

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小学校における「子ども理解のポイント」作成

〜若手教員の学級づくりへの支援を通して〜

高度学校教育実践専攻 実習責任教員 阿 形 恒 秀 教職実践力高度化コース 実習指導教員 金 児 正 史 望 月 崇 宏

第1章 実践研究の課題設定 1 主要な問題

主要な問題を明らかにするために、学校評価で の教職員アンケートや児童アンケート、管理職や 若手教員への聞き取りを行った。また、置籍校の 卒業生である校区内の中学校に通学する3年生に アンケートを実施した。そのアセスメントにより、

置籍校の強みを「子ども:教え合う児童文化・落 ち着いた生活」「教員:学校組織を意識した取り組 み・研修体制」とし、弱みを「子ども:楽しさや 役立ち感が低い・基礎学力の定着」「教員:学級づ くり・子ども理解の難しさ」とした。そこで、実 践研究における主要な問題を「教員の子ども理解」

と設定した。教員の子ども理解を深めることで、

子どもの学習への楽しさや役立ち感が高まると考 えた。また、幼稚園や中学校、関係機関との連携 の視点が弱いことも明らかになった。

2 文献・先行研究・合同ゼミ・地域プロジェク トフィールドワーク

子ども理解を実践研究のテーマにするにあたっ て、教育学を基にした文献と臨床心理学を基にし た文献を参考とした。そこで得た知見を合同ゼミ や地域プロジェクトフィールドワークで、意見を 聞いたり実際に子ども理解を試してみたりした。

また、フィールドワークを実施するための基本的 な知識や方法を押さえた。

3 実践研究の課題設定

(1) 教員の「子ども理解」のイメージ

子ども理解のイメージを「見る」「判断する」「指 導する」のサイクルとした。教員は理解だけに終 わるのではなく、指導も含めた思考過程と捉えた。

(2)実践研究の課題設定

若手教員向けの資料「子どもの理解のポイント」

を作成することを課題とした。資料を作成するこ とで、子ども理解の基礎的なことを押さえられる と考えた。

第2章 実践研究の実施と経過、考察 1 実践研究の計画・実施・評価

研修体制や学校評価などの協働を生む仕組みが 置籍校に存在している現状から、それらの仕組み などを<見直す><意味付ける>という視点で実 習を行うことにした。そして、実習の柱を「教職 員への聞き取り」と「若手教員への支援」とした。

「聞き取り」は、校区内の中学校・幼稚園、児童 相談所などの関係機関、スクールソーシャルワー カー(以下SSWrと表記)やベテラン教員、教職 経験年数が同じ教員とした。「若手教員への支援」

は、参与観察を中心に「指導要録などの子ども理 解のための資料の見直し」「研究授業」を行うこと にした。実習の母体を教職採用2年目の教員(以 下U教員と表記)の学級とし、共同研究者という 立場で接した。それらの実習についての筆者の考 察を実習便りとして、教職員に配布した。そして、

実習で得られた「子ども理解」に関する知見を生 かして「子ども理解のポイント」を作成すること で、実践研究の成果物とすることにした。

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2 2 実践研究の実施と経過

(1)校区内の中学校、幼稚園の参観

小中連携や置籍校の弱みである「基礎学力の定 着」についての「子ども理解」を深めるために、

中学校1年生の数学の授業を参観した。また、数 学担当の教員や生徒指導主事等と中学校での授業 の進め方や子どもの様子についての情報交換を行 った。生活面や学習態度面では、子どもたちの戸 惑いは見られなかった。一方で、「負の数のイメー ジ」を膨らませたり、既習事項を使って応用問題 に取り組んだりする子どもたちの力が弱く、置籍 校での指導の盲点であることを再認識した。幼稚 園との連携は置籍校で継続されている「1年生の 母校訪問」の活動に同行することにした。1週間 に1回程度、1年生の母校訪問に向けての学習成 果の発表や遊びの計画等を参与観察し、子どもの 様子について1年生の教員と情報交換した。母校 訪問当日は、1年生も幼稚園生も活動への意欲が 見られた。幼稚園の教員も<話を聞く>などの指 導を子どもたちにしており、幼少中で一貫した指 導が子どもの成長を生むとわかった。また、「幼稚 園や保育園からの指導の記録」にも目を通すこと で、小学校での指導に生かせる情報を得ることが できた。

(2) 関係機関への参観、聞き取り

小学校での関係機関との連携の頻度を考え、参 観する場所として児童相談所と適応指導教室を選 択した。児童相談所では職員への聞き取りと施設 の見学、適応指導教室では子どもたちへの参与観 察と職員への聞き取りを中心に行った。その中で 子ども理解に関して、「子どもや保護者を受け止め る」「柔軟に対応する場とそうでない場の見極め」

などの知見を得た。また、子どもに関する話し合 いに参加することで、子どもの理解を深めたり職 員の意見を引き出したりする司会の役割の大切さ

を学んだ。

(3) 校内の教職員からの聞き取り

校内ではSSWrと校内支援員、ベテラン教員に 話を聞いた。SSWrとは、一緒に校内を巡回した り、中学校の生徒指導主事と情報交換会をしたり した。校内支援員には、実習便りの感想や授業後 の子どもの様子を聞いた。ベテラン教員について は、終日子どもへの指導を参与観察し、その後「子 ども理解で大切にしていること」等について意見 を聞いた。

SSWrからは、「子どもを継続して見ていく」

「様々なアプローチを考える」ことを学んだ。さ らに、子どもへの関わりに悩む保護者が増えてい ることも示唆された。校内支援員からは、「学級の 様子や学級担任の思いを知りたい」という思いを 聞いた。従って学級担任と校内支援員との情報交 換の場が必要と考えた。ベテラン教員からは、保 護者が変化している現状を聞くことができた。そ のような現状であっても、「保護者と関わりを持 つ」「指導することは指導する」ことをベテラン教 員が続けていることが分かった。さらに、筆者の 実習便りについての「学ぶことが多い」と感想や、

「子ども理解は永遠の課題」という言葉から、ベ テラン教員は<学ぶ姿勢>を持ち続けていること も分かった。

(4)教職経験年数が同じ教員からの聞き取り 子ども理解を柱にした研修を継続している小学 校の研修主任を務めたX教員と情緒障害短期治療 施設に併設されている小学校に勤務しているW 教員から「子ども理解」「中堅教員として」という 視点で聞き取りを実施した。2人の発言から「組 織運営と個々の教員へのサポートの役割を担う」

という中堅教員の姿勢を学んだ。また、X教員の

「研究発表を聞きに来る人は、どれだけ効果があ るか、どんな方法があるかを求めている」という

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3 発言から、現場の教員が即効性や効率を求めてい ることや、W教員の「関わりが困難な子には人的 な環境を整える」という発言から、子ども理解を するための環境整備の必要性も知ることができた。

(5)若手教員の学級づくりの支援

「指導要録などの子ども理解のための資料の見 直し」では、「指導要録」「家庭環境調査票」「幼稚 園や保育園からの指導の記録」から<子どもの良 さや課題><家族構成や家庭からの要望><幼稚 園や保育園での子どもの様子>を、筆者が単独で 子ども一人一人の個票を作って記述した。「家庭訪 問」や「保護者面談」は、U教員と協働で実施し た。「家庭訪問」では筆者が<子どもの良さ>を記 述した資料を作成し、U教員がその資料を参考に して保護者と話をした。「保護者面談」では、U 教員が<子どもの良さと課題><これからの指導 方針>などの視点で資料を作成し、保護者と話を した。両者とも、実施する前と実施した後に筆者 とU教員で<保護者の様子><感じたこと><

今後の方針>という視点で意見交換をした。

「研究授業」は、6月に特別活動「自然教室(宿 泊活動)を振り返ろう」、9・10 月に算数「分数」

を実施した。両者とも「授業で学ばせたいこと」

「子どもの実態」「授業の組み立て」という3つの 視点で授業構想を行った。前者は、学年団の教員 と事後研修会を実施し、置籍校の学年研修の一環 として行った。後者は、日々の授業形態を維持し たまま実施した。筆者が全体の進行を行い、U教 員や算数支援員が個別の支援を行う形を取り、授 業後に<子どもの様子><今後の方針>について 意見交換した。「自然教室を振り返ろう」では、自 然教室での活動を子どもたち自身が振り返ったり、

グループの子ども同士で感謝の手紙を交換したり、

筆者が子どもたちの活動を写真で具体的な姿を提 示して意味付けたりした。「分数」では、事前の算

数に関するアンケートから、「子ども同士で教え合 うこと」の評価が高いこと、「自分から意見を言う」

という意識が低い傾向が見られた。プレテストで は、「分数の意味」を答える問題の正答率が低かっ た。そこで、ホワイトボードを使った3人組での 話し合い活動と振り返りカードを使って、<話し 合いによって理解を深める><子どもの考えや思 いを把握し、次時に生かす>ことにした。研究授 業を通して、「子どもと教員」「子どもと教材や活 動」「教員と教材や活動」との間の<ずれ>をどの ように生かすかという知見を得た。特に「子ども と教材や活動」との<ずれ>を教員が把握するこ とが重要であるとわかった。

実習便りは、「小中連携」「関係機関との連携」を テーマにした特別号を含めて 24 号作成し、置籍校 の教職員に配布した。実習便りを作成することで、

U教員の学級開きの様子や筆者が子どもと関わっ た事例などについての筆者の考察が深まった。さ らに、子どもの様子から得た筆者の考察を違う角 度や視点から見直すことができた。

着目児として3人の子どもの4月から 10 月ま での様子を記述した。個に焦点を当てることで「子 ども理解をする場や資料が違う」「人間の強みと弱 みは表裏一体」などの知見を得られた。また、授 業中や普段の関わりにおける筆者の意図しない言 動が、子どもに学びを促すことも知った。U教員 との関わりにおいても知見を得ることができた。

U教員が持っている「活動や授業への見通し」「子 どもや保護者への関わり方」「他の教職員から自分 がどう見られているか」という悩みや課題を筆者 が一緒に考え、見通しを持ったり保護者と関わっ たりするために、必要なことやできることを実施 した。また、4月に比べて 10 月のU教員は、子 どもの様子に対して自分の思いを持って語ったり、

子どもの思いに寄り添って関わったりしていた。

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4 このようなU教員の様子から筆者は「人間の成長 には時間がかかる」ということを再認識した。

第3章 実践研究の成果と課題、今後の取組 1 子ども理解のポイント作成(実践研究の成果)

実践研究で得られた知見を基に、小学校の若手 教員向けの資料「子ども理解のポイント」を作成 した。ベテラン教員の言葉にもあったように「子 ども理解は永遠の課題」であることから、「子ども 理解でどんなことができるか」「どんな時に子ども 理解ができるか」という問い設定し、資料の柱と した。実践研究で得られた知見は<子ども理解そ のものに関する知見>と<わかったことや大事な 点を伝える知見>に整理した。前者は「子ども理 解のポイント」の内容に生かし、後者は構成や表 現方法に生かした。基本的な形式は、筆者の設定 した子ども理解のイメージ「見る」「判断する」「指 導する」のサイクルに関する述語=キーワードを 巡る中堅教員と若手教員の<問答>という形とし た。述語という言葉を使用することで、子ども理 解が主観と切り離すことができず、目の前の子を 理解して指導した教員の責務を示したり、省察を 生んだりするためである。また、学校アセスメン トなどで、PDCAサイクルの“D=行為”が多く なることが教員の特徴であると筆者は感じたため、

述語をテーマに問答を行うことで、教員の行為に ついての見直しや意味付けができると考え、資料 を作成した。さらに<問答>形式にすることで、

筆者が実践研究で知った教員の子ども理解で抱え ている悩みや葛藤をわかりやすく示した。一例を 挙げると「記録する」というキーワードについて 中堅教員が若手教員に<記録の仕方>などを伝え る。それについて若手教員が<わからないこと>

を聞き、中堅教員が<わからないことへの答え>

や<なぜ、記録することが大事なのか>を答えて いく形で進行していく。項目の最後には、「ポイン

ト」を示してまとめている。そして、「記録する」

を学校現場で実践していくためのワークシート

「子どもの記録、座席表」「子どもの記録、時系列」

を作成し、具体的な資料とした。述語は、幼稚園 や中学校への参観で得た「つなげる」「見守る」や 関係機関やSSWrから得た「受け止める」、筆者 が研究授業を通して学んだ「語る」「意味付ける」

などを含めた全 30 項目設定した。実践研究で、学 校では一つの言葉に様々な意味付けができること を知ったため、意味が重複しないように、1つの 言葉が1つの意味になるように配慮した。ワーク シートは、実践研究でU教員と保護者面談前につ いての話し合いで使用した「目指す子どもの姿と 具体的な表れ・手だて 行動の評価編」や筆者が

「指導要録などの子ども理解のための資料の見直 し」で子どもの様子を記録したノートを参考にし た「個票」など、14 種類を作成した。構成は「4 月編」と「3月編」に大まかに分けた。4月編で は中堅教員から若手教員に伝えることが主になっ ており、3月編は若手教員が中堅教員に自分の経 験を通した学びを伝えることが主になっている。

これは、子ども理解には、「知る」「納得する」と いう段階があることや若手教員が成長するために は、時間をかけて実践をしていくことが必要であ ることを示している。

2 課題と今後の取組について

筆者は「子ども理解」は「他者理解」「自己理解」

であり、他者の考えを受け入れて、自己の考えを 再構築することであると実感した。つまり、子ど も理解を追求することが「学び続ける教師」とな ると言える。今後は、「子ども理解のポイント」を 基に実践をして、内容を改善していくことに取り 組んでいきたい。実践研究で明らかになった「幼 小連携」などの課題も、子ども理解を追求してい くことが課題解決につながっていくと考えている。

参照

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