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松 谷 和 俊

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Academic year: 2021

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倉橋惣三の幼年期教育に関する研究

人間教育専攻 幼年発達支援コース 松 谷 和 俊

1.研究の目的

幼稚園から小学校低学年にかけての教育につ いての議論は大きく二点に集約できる。まず第一 点は義務教育の枠組みに関するものであり、第二 点は幼稚園、小学校とし、う異校種間の連携の在り 方に関するものである。本研究では、我が国の幼 児教育の基礎を築いた倉橋惣三に焦点を当てる。

倉橋については「誘導保育案」に代表されるよう に、幼児教育の大家であり、その精神は現行の幼 稚園教育要領にも息づいているとされる。こうし た事実ーから、倉橋に関するこれまでの先行研究は 幼児教育に関するものが多い。しかしながら彼は 幼児教育のみならず、小学校教育に関する著作物 や、幼児期から児童期にかけての子どもの生活や 学び等に関する著作物を多く遣しており、それら はこれまで研究の対象とされることはほとんど なかったと言ってよい。そこで本研究ではこれら の著作物を検証することを通して、倉橋惣三が考 える幼年期教育の在り方を明らかにすることを

目的とする。

2.研究の方法

文献研究とし、主に倉橋恕三選集全5巻と、観 察絵本「キンダーブックJ1939年(昭和 14年) 2月号から 1955年(昭和30年)7月号の計77 冊を使用する。

3.明治期から昭和初期における倉橋惣三の幼年

指 導 教 員 塩 路 晶 子

期教育の在り方

『倉橋惣三選集』全5巻に収録されている、明 治期から昭和初期の著作物を中心に、教育観、児 童観、小学校低学年という観点から、具体的に倉 橋がどのように幼年期教育を捉えていたのかに ついて検証を進めた。低学年を受け持つ教師は、

自然物や自然現象を単に学問的に説明できるだ けでは不十分であり、子どもと共に喜んだり、驚 いたり、不思議に思ったりという、いわば子ども と同じ目線、心を保持することや、現状に甘んじ ることなく、常に高みを目指して努力し続けるこ とが必要であると、倉橋が考えていたことが明ら かとなった。また、子どもの大人に対する優位性 を示すなど、かなり早い時期から子どもを一人の 人間として尊重するという、倉橋の生涯を通じて 見られる、彼の特徴とも言うべき児童観が形成さ れていたことが明らかとなった。こうした教育観、

児童観の背景には、幼少期に父母から受けた教育 がその根底にあると推測できると言える。また、

倉橋は、机に固執しない教室の在り方や、ークラ スあたりの適正児童数を提示するなど、従来の小 学校教育の概念を打ち破り、幼稚園教育で取り入 れられている教育環境の導入を提案していた。加 えて、教室内の環境だけではなく、教師の在り方 もまた、それに合ったものが求められるとし、授 業がしやすいように子どもたちを統制し、教師主 導の授業を展開するといった、従来の低学年教育 で見られる方法は不適当で、むしろ、子どもたち

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- 40 - の遊びを促し、教師もその中に加わる、すなわち、

子どもの回線に立ち、子どもと相互的なやりとり のできる教師が、低学年を受持つ教師として相応

しいと倉橋は考えていたことが明らかになった。

4.戦時中から戦後民主主義における倉橋惣三の 幼年期教育の在り方

戦時中における児童観と教育観として、キンダ ーブック [1939年(昭和 14年2月号)から 1942 年(昭和17年2月号)まで]を、戦後民主主義 における児童観と教育観として、キンダーブック

[1946年(昭和21年8月号)から 1955年(昭 和 30年 7月号)まで]を検証したc 戦時中にお いては思想統制が行われたり、「戦争に非協力と いうことで政府・軍部ににらまれれば、たちまち 廃刊の憂目をみなければならなしリという厳しい 状況下で、あったものの、倉橋は子どもを一人の人 格者として見、その可能性を否定することはなか った。戦後においても同様のことが言えるだろう。

彼の目に映る子どもは、常に一生懸命で、内に「す さまじい気力Jを持っていたりと、大きな力を備 えている存在であり、大人と対等か、むしろ、そ れをも上回るものとして捉えられていた。子ども と対峠する時に、私たち大人に求められるのは、

子どもと共に喜んだり、驚いたり、不J思議lこ思っ たりという、いわば子どもと同じ回線、心を保持 することであると、倉橋は考えていたことが明ら かとなった。教育観については、知識を一方的に 子どもに教え込むことよりも、子どもたちが能動 的、主体的に活動することを通して自己の能力を 高めることに重きを置くなど、戦中においても第 2章で見てきたように、これまでの倉橋らしさが 失われることはなかったといえよう。

5.全体的考察と展望

倉橋は、子どもたちとの関わりから、理論と実 践の統合を図ることで、子どもの心性を熟知し、

的確に把握していたこと、また、 2年間に亘る欧 米留学で見たコロンピア大学、シカゴ大学両大学 附属学校の初等教育における、子どもの主体性を 重視した教育方法を目の当たりにしたことが、 3

~8 歳までの子どもにふさわしい教育、すなわち 幼年期教育を考えるに至ったことが分かつた。そ の教育の方法の根底にあるものは、子どもを個と して尊重するという、時として我々大人が忘れて

しま~.、がちな、しかしながら世界人権宣言や子ど

もの権利条約にも見られるような、基本的な人権 感覚で、以って構成されているものであるといえ

るだろうO

倉橋は数多くの著作を遺しており、本研究で用 いた著作物はほんの一部に過ぎ、ない。より多くの 著作物に当たって、さらに詳細に幼年期教育の在

り方を探っていくことが今後の課題である。

引用・参考文献

津守真『子ども学のはじまり』フレーベル 館,1979

森上史朗『子どもに生きた人@倉橋惣三の生 涯と仕事(上)ーその生涯・思想・児童福祉 -~フレーベル館, 2008 , (倉橋惣三文庫⑦)

森上史朗『子どもに生きた人@倉橋惣三の生 涯と仕事(下)一保育・家庭教育・児童文化 -~フレーベル館, 2008 , (倉橋惣三文庫③) e  坂元彦太郎『倉橋惣三。その人と思想、』フレ

ーベル館,2008, 倉 橋 惣 三 文 庫 ⑨ ) 他

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