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雑誌名 明治学院大学法律科学研究所年報 = Annual Report of Institute for Legal Research

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(1)

た親族等に特別縁故者として財産分与を認めた事案 について(大阪高決平成28・3・2 判時2310号85頁

著者 黒田 美亜紀

雑誌名 明治学院大学法律科学研究所年報 = Annual Report of Institute for Legal Research

巻 35

ページ 123‑131

発行年 2019‑07‑31

URL http://hdl.handle.net/10723/00003710

(2)

【判例研究】

被相続人の成年後見人で報酬を得ていた親族等に特 別縁故者として財産分与を認めた事案について

(大阪高決平成28・ 3 ・ 2 判時2310号85頁)

黒 田 美亜紀 1 はじめに

2 事実の概要 

原審および本抗告審によると、以下の事実が認定されている(破線は抗告審で補正された認定 事実)。

Aは、平成25年に、 1 億2,572万円余りの銀行預金等を遺して死亡した。

葬儀は、X2(Aのいとこ)を喪主として、X2の夫、長女および次女、X1およびその夫が出席 して執り行われた。

Aには相続人がいなかったため、相続財産管理人が選任され、相続人捜索の公告手続がとられ たが、公告期間内に相続人の申出はなかった。

X1(昭和21年生まれ)は、Aと縁戚関係はないが、Aの近隣に居住し、昭和54年から 8 年間、

Aが経営していた薬局にパート従業員として勤務していた。

平成 9 年、Aの夫が自宅で倒れた際、同人の入退院にAと共に付き添い、週 2 回程度の留守番 を手伝うようになり、平成12年10月10日のAの夫の臨終の際、Aとともに立ち会い、納骨にも同 行した。

平成12年10月以降、被相続人の週 3 、 4 日程度のAの通院に付き添うようになり、その後、週 3 日程度風呂を沸かしたり、夕食の準備をするなど身の回りの世話をするようになった。

X1は、Aの財産管理能力に不安を覚え、Aが居住する吹田市役所の法律相談に出向いて、 B 弁護士に相談した結果、成年後見の申立てに向けた準備を進めることになり、Aの精神科受診に 付き添ったり、被相続人のいとこである申立人X2と連絡を取り合ったりして、Aについての成 年後見申立てに向けた支援に取り組んだ。

平成16年 4 月以降、夕食の準備などAの身の回りの世話をする際、Aからアルバイト料の支払 いを受け、また、平成17年 1 月 5 日にAの成年後見人に B 弁護士およびX2が選任されて以降、

成年後見人からアルバイト料の支払いを受けるようになった。

具体的には、X1は、週に 3 日程度、Aの自宅を訪問して、夕食の準備などの身の回りの世話

(3)

ムに通い、通院、外出の付添いや被相続人の居室の風通し、さらには掃除などの身の回りの世話 を行っていた。

平成16年 4 月からAが死亡する平成25年 9 月まで、 1 か月おおむね 1 万5,000円から 2 万円の アルバイト料(交通費を含む)の支払いを受けていた。

X2(昭和 8 年生まれ)は、Aのいとこであり、成年後見申立ての前から、冠婚葬祭への出席 等の親戚づきあいに加え、被相続人の相談に親身にのってやるなどのつきあいをしていた。

X1X2は、X1と相談しながら、Aについての成年後見申立てに協力をし、平成17年 1 月 5 日にB 弁護士と共にAの成年後見人に選任され、Aが死亡する平成25年 9 月までAの身上看護を担い、

後見人報酬として、323万5,000円を受領していた。

Aは、平成17年 7 月 6 日ころ、自身が亡くなった後の不動産及び預貯金をX1、X2及びその他 3 名に分配するよう求める書面を作成した(ただし、X2については、いったんその氏名を記載し た後、「X2」の部分に線を引いて抹消し、X2の夫の名前である「P2」を記載している。)。

X1とX2は、特別縁故者として、財産分与を申し立てた。

3 裁判所の判断

⑴ 原審:大阪家審平成27・11・19判時2310号89頁(却下、抗告)

X1、X2は、「民法958条の 3 第 1 項にいう『被相続人と生計を同じくしていた者』にも、『被 相続人の療養看護に努めた者』にもあたらないというべきである。」なぜなら、「X1は、

・・・・・・Aの身の回りの世話をしてきたに過ぎないので、『被相続人の療養看護に努めた者』

と評価できない。」「また、X2は、Aの成年後見人としてAの身上看護を担当してきたので、

『被相続人の療養看護に努めた者』にあたるともいえそうではあるが、・・・・・・後見人報酬と して323万5,000円を受領しており、これによりX2がAに対して行った身上看護はすべて賄わ れているというべきである。」したがって、X2を「被相続人の療養看護に努めた者」と評価 できない。

そこで、X1、X2が「被相続人と特別の縁故があった者」に該当するのかを検討するに、

同要件は、「被相続人との間に『被相続人と生計を同じくしていた者』や『被相続人の療養 看護に努めた者』に準ずる程度に現実的かつ具体的な交渉があり、相続財産の全部又は一部 をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に被相続人と 密接な関係があった者と解するのが相当であるところ、・・・・・・事実によれば、上記の要件を 満たしてないというべきである。」

「なお、Aが平成17年 7 月 6 日頃にX1、X2ら及びその他 3 名に被相続人の不動産及び預貯 金を遺贈しようとして作成した書面があるところ、当該書面作成の経緯及び作成時のAの意 思能力の問題は置くとしても、被相続人が上記書面を作成したとしても、そのこと一事で、

(4)

民法958条の 3 第 1 項に定める客観的要件を満たすということにはならないので、上記書面 の存在が前記判断を左右することにはならないというべきである。」

⑵ 抗告審:大阪高決平成28・ 3 ・ 2 判時2310号85頁(一部取消・一部認容、確定)

「X1は、平成12年10月以降Aが死亡するまで、Aの身の回りの世話をするようになり、さ らに、被相続人の精神科受診に付き添ったりX2と連絡を取り合ったりして、Aについての 成年後見申立てに向けた支援に取り組んだこと、Aは、平成17年 7 月 6 日ころ、同人が亡く なった後の不動産及び預貯金をX1を含む 5 名の者に遺贈しようと考えてその旨の書面を作 成したことなどが認められるのであって、これによれば、X1は、相続財産の全部又は一部 をX1に分与することがAの意思に合致するとみられる程度にAと密接な関係があったと評 価するのが相当である。」

もっとも、X1は、平成16年 4 月以降、Aまたはその成年後見人からアルバイト料の支払 いを受けていたものであるが、その額は 1 か月概ね 1 万5,000円から 2 万円程度であって、

引用に係る原審判の認定したX1のAに対するかかわりあいの実情に照らせば比較的低額と いえ、しかも、X1がAの身の回りの世話を始めたのは、平成12年10月であることなどに照 らすと、アルバイト料支払いの事実は、X1が民法958条の 3 第 1 項の特別縁故者に当たると 認定することの妨げにはならないというべきである。

「X2は、成年後見申立ての前から、Aとの間で、冠婚葬祭への出席等の親戚づきあいに加え、

Aからの相談に親身にのってやるなどのつきあいをしていたこと、X1と連絡を取り合った りして、Aについての成年後見申立てに向けた支援に取り組み、自ら成年後見人に就任して Aの身上看護を担ってきたこと、Aは、平成17年 7 月 6 日ころ、Aが亡くなった後の不動産 及び預貯金をX2を含む 5 名の者に遺贈しようと考えその旨の書面を作成したことなどが認 められる(Aは、上記書面にいったんX2の氏名を記載した後、「X2」の部分に線を引いて抹 消し、同人の夫の名である「P2」を記載しているが、一件記録によれば、Aは、公正証書 遺言を作成するために、上記書面に受遺者としてX2の氏名を記載したところ、後見人に利 益となる遺言はできないこと(民法966条 1 項)がわかったため、X2の名を抹消の上その夫 の名を記載したが、後見人の夫に利益となる遺言もできないこと(同項)がわかったことか ら、公正証書遺言の作成を断念したことが認められ、この事実によれば、Aがその財産を X2に遺贈する意思を有していたことは優に認定することができる。)のであって、これによ れば、X2は、相続財産の全部又は一部をX2に分与することがAの意思に合致するとみられ る程度にAと密接な関係があったと評価することができるというべきである。もっとも、引 用に係る原審判の認定するとおり、X2には後見人としての報酬として既に323万5,000円が支 払われている(これが報酬として正当な額でないと認めるに足りる資料はない。)ものの、

上記の各事情、とりわけ被相続人がその財産をX2に遺贈する意思を有していたと認められ ることからすれば、なおX2は民法958条の 3 第 1 項の特別縁故者に当たると解するのが相当 である。」

(5)

⑴ 特別縁故者制度

相続人の範囲を近親者に限定しつつ、相続人不存在の場合に相続財産の適切な分配をさせ ようとする制度であり、昭和37年の民法の一部改正(昭和37年法律第40号)により創設され た。

〔沿革〕

・確認:戦後の民法改正以前の旧法

相続人の範囲を広く定めており(ex. 家督相続の場合、最終的には他人の中からでも相続 人を選定可/遺産相続でも最後の順位で戸主が相続)、相続人不存在で相続財産が国庫に帰 属することはほぼあり得ない

・戦後の民法改正

近代的相続の見地から、遺産相続のみとし相続人の範囲を家族的共同生活を営んでいた近 親者にほぼ限定して相続人を打ち切った結果相続人不存在による国庫帰属の事例が多く生 じた

・遺言があまり普及していない状況や遺言できずに急死するケースを考慮

⇒ 内縁の妻、事実上の養子、最後まで世話をした人など特別に縁故の深い者に、家庭裁判所 を通じて適当に相続財産を取得させる道があれば都合が良いとして、特別縁故者制度を創

根拠・被相続人の意思の推測(遺言がなされた遺贈されていただろう人に分与)

 ・相続人と実質的に同様な地位にある者に、法定相続制度の補充として、遺産を分与1

〔現況〕

高齢社会の進行と家族関係の変容を背景に、相続人不存在手続開始の件数が増加

昭和40年 昭和60年 平成17年 平成27年

相続財産管理人選任 910 2,567 10,736 18,615

特別縁故者への相続財産分与 189   369    822  1,043

〔手続〕

①相続人の不存在

→②相続人および知れない債権者の除斥

→③特別縁故者からの残余財産の分与請求

 ※「請求」は、家庭裁判所の判断を促す申立てとしての意味を持つにとどまる

→④家庭裁判所の審判

(6)

審判では、特別縁故者という抽象的資格の有無を検討→特別縁故者であれば、一切の事情 を考慮して、分与するのが相当か、分与するとすればどれだけのものを分与するのかを審理 する。

・特別縁故者かどうかは、もっぱら家庭裁判所が判定する

・ 特別縁故者と認定しても、相当でないと認めて相続財産を与えないことも考えられる(特 別縁故者であれば何らかの権利が存在するというものではない2

⇒「特別縁故者」に「分与の相当性」がある場合に、遺産の分与が認められる

・分与をするかどうかは「相当性」の判断によって決せられる

・ 財産分与を受ける者は、相続財産法人から、無償で特定承継するもの(相続財産法人から の贈与)と解される3

⑵ 特別縁故者の範囲

特別縁故者に該当する者として、958条の 3 第 1 項は、「被相続人と生計を同じくしていた 者」、「被相続人の療養看護に努めた者」、「その他被相続人と特別の縁故があった者」の三類 型を挙げている(前二者は例示)

・かなり広い表現で、個々の場合における裁判所の具体的判断、裁量にゆだねられる

・ 例示の趣旨にかんがみ、単に抽象的な親族関係の遠近ではなくて、具体的・実質的に存在 した故人と申立人との縁故関係の濃淡厚薄をその判断の基準とすべき4

A .被相続人と生計を同じくしていた者

内縁配偶者、事実上の養子、養子縁組前の養子の子、配偶者の連れ子など

B .被相続人の療養看護に努めた者

被相続人が、その努力に対して遺贈ない死因贈与をするであろうという客観的状況であれ ば、被相続人の意思を擬制した効果が認められると考えるべき5

cf. 衡平法的観念から分与を認めるべきとの見解もある6

・ 被相続人と生計を同じくしていた者が被相続人の療養看護にも努めることが多いので、被 相続人の療養看護に努めたという事情のみで特別縁故者と認められた例は多くない

⃝ 被相続人の親族かつ成年後見人であった者による申立ては?

成年後見人には身上配慮義務があり(858条)、特別縁故者と認められるためには、成年後 見人としての職務の程度を超えて被相続人の療養看護に尽くしたと評価できなければならな いとされる。また、成年後見人として報酬を受領している場合には、分与すべき財産を判断 するにあたり、報酬として受領した金額が考慮されることになる。

参考 大阪高決平成20・10・24家月61巻 6 号99頁

「被相続人が高齢及び認知症状により一人暮らしが困難となって老人ホームに入所するまで

(7)

交流を中心とするもので、親しい親戚関係の範囲内にあるものと評価することはできるが、相 続財産の分与を相当とする関係に達しているとまでみることは困難というべきである。

しかし、被相続人が平成11年に老人ホームに入所してからは、 B が、入所時の身元保証人や 成年後見人となったほか、Aと B は、多数回にわたって、遠距離の旅程をものともせず、老人 ホームや入院先を訪れて、親身になって被相続人の療養看護や財産管理に尽くした上、相当額 の費用を負担して、被相続人の葬儀を主宰したり、その供養も行っているものである。

このような関係をみると、Aと B は、被相続人と通常の親族としての交際ないし成年後見人 の一般的職務の程度を超える親しい関係にあり、被相続人からも信頼を寄せられていたものと 評価することができるから、民法958条の 3 所定の、いわゆる特別縁故者に該当するものと認 めるのが相当である。」

● 職業的に療養看護に当たっていた者による申立ては?

正当な報酬を得て職業的に被相続人の療養看護に当たっていた者は、特別の事情がない限り、

被相続人の療養看護に努めた者とはいえず、原則として特別縁故者とは認められないが、対価 としての報酬以上に献身的に被相続人の看護に尽した場合には特別の事情がある場合に該当 し、例外的に特別縁故者として認められ得る7

ex. 看護師、家政婦、専門職後見人もこの範疇?

C.その他被相続人と特別の縁故があった者

「被相続人と生計を同じくしていた者」、「被相続人の療養看護に努めた者」に準ずる程度 に被相続人との間に密接な関係があった者をいう

a . 生計同一者、療養看護者に準ずる程度に被相続人との間に具体的かつ現実的な精神的・物 質的に密接な交渉があり、相続財産の全部または一部をその者に分与することが被相続人 の意思に合致するであろうとみられる程度に被相続人と密接な関係があった者をいうと解 すべき(大阪高決昭和46・ 5 ・18家月24巻 5 号47頁8

・・・① 具体的かつ現実的な密接な交渉、②被相続人の推測的意思に合致することを要求す る立場9

b . 生計同一者、療養看護者と同視し得る程度に密度の濃い具体的実質的な関係であることを 必要とするものであって、単なる血縁の存在のみでは特別縁故があるとはいえないものと 解すべき(大阪家審昭和52・ 3 ・15家月30巻 1 号94頁)

 「特別縁故者については、抽象的な親族関係の有無、遠近ではなくて具体的実質的な縁 故の内容、濃淡を基準として判断すべきものである。被相続人と申立人ら各自の具体的な 生活関係の実質如何による。」(大阪家審昭和57・ 3 ・31家月35巻 8 号129頁10

・・・具体的・実質的な関係のみに言及する立場11

(8)

⇒相続法全体の趣旨により多く合致するような方向で考えるべき12

→ 本来被相続人には、相続人の存在・不存在に関係なく、自己の財産について所有権に基づく 処分の自由(遺贈の自由)が認められている。

※相続人が存在する場合、遺留分減殺請求が行使される範囲では遺贈が効力を失うに過ぎな

しかし、わが国ではまだ遺言によって自分が死亡した後の問題を処理する慣行が定着して いるとはいえない。

cf. 公正証書遺言作成+自筆証書遺言の検認 ※あわせて死者の 1 割弱

昭和40年 昭和60年 平成17年 平成27年

公正証書遺言作成 7,767(41年) 41,541 69,831 110,778

遺言書の検認 971  3,301 12,347  16,888

→被相続人の意思/推定的意思に基づいて解するのが妥当13

※被相続人が遺贈をしたであろうとの意思を推測できる根拠として、具体的・実質的、密接 な交渉を要求するのであれば、C-AとC-Bの見解はその本質は異ならない?

X1について

X1はAの親族ではなく、近隣の住民。

平成12年10月~平成25年 9 月まで、Aの身の回りの世話をした。

具体的には、

・週 3 、 4 日程度の通院に付き添う

・週 3 日程度風呂を沸かしたり、夕食の準備をする

・Aについての成年後見申立てに向けた支援に取り組む 平成17年 9 月にAが老人ホームに移った後は、

・週 1 、 2 回老人ホームに通い、通院や外出に付添う

・Aの自宅の風通し、掃除その他の管理をする

平成16年 4 月以降、X1が受け取ったアルバイト料は約 1 万5,000円~ 2 万円/月(交通費含 む)

アルバイト料について

・原 審:X1はAの身の回りの世話をしてきたに過ぎない

・抗告審: X1のAに対する関わり合いの実情に照らせば比較的低額で、身の回りの世 話 を始めたのが平成12年10月であることなどを考慮すると、アルバイト料支払いの 事実は特別縁故者該当性の認定の妨げにはならない

遺贈書面について

・原 審:書面の存在が特別縁故者該当性の判断を左右することにはならない

・抗告審: 相続財産の全部または一部をX1に分与することがAの意思に合致するとみられ る程度にAと密接な関係があったと評価するのが相当

(9)

X2について

X2はAのいとこ。

・成年後見申立て前から、Aとの間で冠婚葬祭への出席等の親戚づきあい

・Aの相談に親身に乗ってやるなどのつきあいをしていた

・Aの成年後見申立てに向けた支援に取り組む

平成17年 1 月に B 弁護士とともにAの成年後見人に選任され、Aの身上看護を担う。

→後見人報酬として、323万5,000円を受領(単純割りで 3 万810円/月)

※後見人報酬額の目安

 成年後見人が、通常の後見事務を行った場合の報酬(基本報酬)の目安となる額は、

月額 2 万円14

・抗告審:被相続人の意思を尊重

⑶ 相続財産分与の相当性

申立人に相続財産が分与されるには、申立人に「特別な縁故の存在」のほか、分与の相当 性があることが必要。

民法は、なにも規定していない。学説は、「相当性を判断する基準としては、縁故関係の 内容、厚薄、程度、特別縁故者の性別、年齢、職業、教育程度、残存すべき財産の種類、数 額、状況、所在その他一切の事情を調査し、これを参酌して決められる」とする15

 被相続人の意思が基準

 〔根拠〕・ 相続財産を被相続人の特別縁故者に分与するのがだから、その基準になるのは相 続人の意思、あるいは被相続人のあるべき意思

  ・遺言の補充として相続財産分与の制度がある点

⇒ 被相続人の事実上の遺言、あるいは被相続人が生前にいっていたことは、家庭裁判所も 尊重すべき。被相続人がなにもいっていない場合でも、相当性を判断する際には、被相 続人が遺言をするとしたらどのように相続財産を処理するかということを基準として考 えるのが妥当

5 むすびにかえて

相続法改正の議論について紹介

1 内田貴『民法Ⅳ 補訂版 親族・相続』457頁。

2 加藤一郎「民法の一部改正の解説(三)」ジュリ251号53頁は、特別縁故者に対して相続権に準ずる ほどの強い請求権を認めるものではなく、家庭裁判所が国家的見地から恩恵的に相続財産の一部ま たは全部を取得させるに過ぎないとして、特別縁故者たることは、「分与を受けるための最小限度の

(10)

抽象的資格」とする。

3 ただし、相続税法上は、被相続人から遺贈により取得したものとみなされる(相続税法 4 条)。

4 我妻栄=唄孝一『相続法判例コンメンタールⅧ』233頁。

5 中川善之助「相続法」(法律学全集)304頁。

6 この見解は、特別縁故者を、相続権者に近い類型、衡平の観点から認める類型、被相続人の意思を 推測して認める類型に分類する(沼辺愛市=藤島武雄「特別縁故者に対する相続財産の処分をめぐ る諸問題」判タ155号63頁)。

7 神戸家審昭和51・ 4 ・24判時822号17頁参照。

8 長崎家審平成 2 ・ 1 ・26家月42巻 9 号41頁、東京家審昭和60・11・19家月38巻 6 号35頁などが引用。

9 久貴忠彦『判例特別縁故者法』100頁は、この判例がいう特別縁故者概念を全く正当であるとする。

10 法人を特別縁故者と認定したケース。

11 我妻=唄・前掲・注⑷ 233頁。

12 山主政幸「民法の一部改正について」法時34巻 7 号14頁は、その場合に考えられる諸点として、① 遺言法の補充としての分与(現行法の遺言の規定が厳格に過ぎること、まだそれにしても新遺言法 が期待したほどに遺言の数が伸びないこと、を補充する意味で、遺言が正規の要件を欠くため無効 であるが遺言意思の明確な場合、被相続人が生前「某に遺産をやりたい」としばしば言っていた場 合等には、つねに緩やかに解して、死者の意志に従うべき)、②遺贈ないし死因贈与法の補充として の分与(①と同じような見地から、黙示の意思表示が認められることが多く、そうでなくとも現代 における死者の有すべき意思の擬制的存在を推定する制度として運用されるべき)、③濫用の危険の 防止を挙げる。

13 人見康子「身分法研究 第17回 特別縁故者に対する残存財産の処分について」ジュリ306号54頁、

右近健男「特別縁故者の財産分与請求」判タ613号110頁、加藤・前掲注⑵ 54頁。

14 管理財産額(預貯金及び有価証券等の流動資産の合計額)が高額な場合には、財産管理事務が複雑、

困難になる場合が多いので、管理財産額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合には基本報酬額を月 額 3 万円~ 4 万円、管理財産額が5,000万円を超える場合には基本報酬額を月額 5 万円~ 6 万円が目 安。

15 加藤令造編『家事審判法講座Ⅱ』岡垣学「相続関係」212頁、沼辺=藤島・前掲・注⑹ 74頁など。

参照

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