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提訴前の証拠保全の正当な利益

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(1)

提訴前の証拠保全の正当な利益

‑フランス新民事訴訟法典

1 4 5

条をめ ぐって‑

町 村 泰 貴

一 、 は じめに

二 、旧民事訴訟法典の下 における証拠保全

a)古法 と 1 80 6

年民事訴訟法典

b)

旧民事訴訟法典の下での

C)小括

三 、新民事訴訟法典 における 「将来の証拠調べ」の基本構造

a) 1 4 5

条の基本的内容

b)

レフェ レおよび証拠調べの一般的要件適用の有無 ア) レフェレの一般的要件 との関係

イ)証拠調べの一般規定 との関係

C) 1 4 5

条 による証 明 レフェレの 自律性の確立

d)小括

四、将来の証拠調べの要件 としての正当理 由および認容性

a)訴訟前 に証拠の保全 または立証を行 うための正当な理 由

ア)将来の訴訟 との関係 イ)証 明上 の利益

b)認容性

五 、終わ りに 一日本法‑ の示唆 ‑

〔 3 3 1 〕

(2)

‑、はじめに

我が国の証拠保全制度 は,特 に医療過誤訴訟 におけるカルテ等の医療記録を 対象 として,実務が証拠開示的運用を認め,判例法 ともい うべ き状況がで きて きた。 この傾向に対 しては積極 ・消極の両方の評価が対立 しているが,少な く とも医療過誤訴訟 について は積極 的な評価が一般的 と思われ る1)。 しか しな が らこうした現状 にはい くつかの問題点が指摘で きる まず証拠開示の必要な ケースと証拠保全の必要 なケースとは必ず しも一致 しないので,証拠方法の保 全を 目的 とした現行法の要件 は証拠開示 目的の申立 に不必要 な障害 となること がある。第二に証拠開示 は情報の開示 こそが本来の 目的 といえるが,証拠保全 制度 は要証事実 と証拠方法を特定 して申 し立てる証拠調べの先取 り実施にす ぎ ず, そ こで は情報 開示 を 目的 とす る申立 は本来 な ら不 適法 とな るはずで あ

2 )

。第三 に現行法 は本訴 の提起 を当然 の前提 として い るが,現実 には証拠 保全 申立事件 の多 くが本訴提起 に至 らない3) 。 これ らは証拠 開示 による和解 促進 とい う積極的評価が可能な場合 もあろうが,他方濫用的申立の場合 もあろ そ して第四に,現行法には証拠保全の十分な実効性確保のための制度が欠 けてい る4)。 この ことは証拠保全 の要件緩和 を,いわば黙認す ることにつ な が っていると思われ るが,本来の証拠保全制度 については もちろん証拠開示制 1)証拠保全の本来の立法趣 旨か ら逸脱す るもの と して批判す る見解が特 に実務家の手 による文献で主張 されているが,実務 は 「予想以上 に弾力的な運用,すなわち,証 拠開示的な運用に近づ いている」 とされている。林圭介 「証拠保全 に関す る研究」

民訴雑誌37号24頁以下参照。

2

)いわゆる模索的証明の禁止 に関連す る問題である。

3

)最近の大阪地裁本庁 における事件の調査によれば,昭和55年か ら平成

2

年 までの提 訴前の申立事件の うち本訴提起 に至 ったのはわずかに1

4 . 8 %にす ぎず,85 . 2%が本

訴提起 に至 っていない。林 ・前掲論文 (

1) 47

頁の表参照。なお,松 田克 己 「 許侵害訴訟 における証拠保全手続 について」パ テ ン ト

22

3

1

1

( 1 96 9

年),同

民事訴訟 における証拠保全 に関す る実証的研究』書記官実務研究

9

2

6

( 1 97 0

年),高見進 「証拠保全 の機能」講座民事訴訟

5

321

( 1 9 83

年)、特 に32

8

以下 も程度 は異なるものの提訴率の低 さを報告 している。

4

)道 田信一郎 「権利侵害 と証拠保全」法学論叢11

6

1 ‑6

号26

( 19 85

年),宮里節子

「イギ リス法の証拠保全 についての一考察」民訴雑誌3

5

号21

0

( 1 9 89

年)参照。

(3)

提訴前の証拠保全の正 当な利益

33 3

度 として も,それが必要であるとの価値判断に立っ限 り,実効性を伴 うもの と すべ きである。そ してそれは逆 に要件面で,濫用的な申立が排除 され る仕組み が必要 とい うことになる

このよ うに現行の証拠保全制度の証拠開示的運用をめ ぐっては問題があると ころ,近時公表 された法務省民事局参事官室作成の 「民事訴訟手続に関す る検 討事項」においては,証拠保全 とは別に証拠収集手続を拡充す る考え方を掲 げ て検討を求めている。そ こでは現行法の文書提出義務の拡張 と秘密保護,それ に文書 に関す る情報開示 と当事者 間の照会が主要な柱 となっている。 これ らは 訴訟提起後の利用を念頭 においていて,現行法の下で証拠保全制度の転用によ りまかなわれて いる訴 え提起前の証拠開示 は含 まれていないよ うに思われ る が,現在のような訴え提起前 における証拠開示の必要性を否定 しているわけで はない。現在 の証拠保全の転用 に問題があ るがその必要性 は否定で きない以 上,改正の一つの項 目として考慮 され るべ きである5) 。

そ して証拠開示を解釈論上認 めるにせよ,立法論 として考えるにせ よ,その 要件を考え る場合 には単 に証拠保全の事 由の拡張解釈では足 りず,どのような 場合 に証拠開示制度の利用が正当とされ るか とい う問題を正面か ら考えてい く 必要がある。証拠保全の濫用的申立の排斥 とその正当な利用の限界 という問題

は,証拠保全の実効性を確保すべ Lという議論 にあって も,よ り実効的な制度 になればそれだけ濫用の弊害 も大 きく無視で きな くな るので,実効性確保の前 提 として検討 され るべ き課題で もある。

ところで フランス新民事訴訟法典

ユ 45

条 は, 「すべての訴訟 に先立 って,紛 争の解決の基礎 とな るであろう事実の証拠を保全 し証明を行 う正当な理 由が存 す る場合 には,法律上認め られ る証拠調べは,すべての利害関係人の要求によ り,申請 に基づいて又 は レフェレの方式 によって これを命 じることができる」

と規定 している6)。これは一般 に「将来の証拠調べ

mes ures d' i ns t ruc t i on i n

5

)なお 日弁連民事訴訟法改正問題委員会による 「民事訴訟手続 に関す る検討事項」に 対す る意見書

( 1 99 2

7

月)では,訴え提起前 における情報開示のための制度 を 提案している。同書1

3 5

頁以下参照。

(4)

fut urum

」と呼ばれ,また最近で は「予防的証拠調べ

mesur esd' i nst ruct i on pr6vent i ves 」

という言 い方 もされ る7)が,要す るに訴え提起前 に証拠調べを 行 うことがで きる規定で, その 中心 とな る要件が 「正 当な理 由

mot i f1 6gi ‑ t i me 」であ る。 この規定 は証拠を保全す る必要があ る場合 に限 られず,広 く

訴え提起前 に証拠調べをす る必要がある場合を対象 としてお り, どのような場 合 にその必要が認 め られ るかをめ ぐって多数の判例の蓄積がある。

フラ ンスの訴訟制度 は日本法 とかな り異 な ってお り,特 に

1 9 7 0

年代の全面 改革 において は一般的な証拠提 出義務を明文で認 めた8)ので,限定 的な証拠 提 出義務 しか持たない 日本法 とは前提が異な っているように見える。 しか しな が らフラ ンス新民訴法典1

45

条の証拠調べ は,見かけか ら想像 され るほど無限 定な ものではない。訴え提起前の証拠調べを正当とす る理 由の解釈により,証 拠調べによる証拠および情報の収集の利益 と,証拠調べを受 けで情報開示を迫 られる相手方の利益 との調整が図 られている。そのよ うな証拠保全による事前 の証拠開示の正当性をめ ぐる豊富な実例 は,我が国の制度を考え る上で参考 と な り得 るものである。

そ こで検討の順序 として,まず フラ ンス新民訴法典1

45

条制定前の法状況を 簡単なが ら概観す る (二)。次いで1

45

条の構造 について,特 に レフェレの一般 的な要件や証拠調べの一般的な要件 との関連性 について論 じられているところ を考察 し (≡),その後で中心的な要件である 「正当な理 由

mot i f1 6gi t i me 」

の内容について,特に判例を中心 に検討を加え ることとす る (四)

なお,本稿の参考文献の うち主要な ものは本文末尾 に掲げ,引用に当たって

6

)フランス民事訴訟法の条文訳は原則として,法務大臣官房司法法制調査部編 『注釈

フランス新民事訴訟法典

』 ( 1 9 8 3

年 ・法曹会)によった。

7)Pe rr ot ,l oc .c i t .no7 8 4

参照。なお

mes ured' i ns t ruc t i on

という言葉は直訳 すれば 「審理措置」であるが,具体的には当事者尋問,検証,証人尋問,技術者に よる鑑定 ・診断 ・確認がその内容であり,我が国における証拠調べにはぼ同義であ る。

8

)フランス民事訴訟法における証拠提出強制をめぐる考え方の変遷については,拙稿

「フランスにおける

Ledroi t a l apre uve

の観念」北大法学論集

3 8

1

9 3

頁参 照。

(5)

提訴前の証拠保全の正当な利益 は原則 と して著者名のみを記す こととす る。

335

二、旧民事訴訟法典の下 における証拠保全

a)古法 と

1806

年民事訴訟法典

1 806

年 に制定 され た民事訴恵法典 は,証拠保全 に相 当す る規定 をおいて い なか った。 この法文の沈黙 は意図的である。 とい うの も沿革 を見 ると, フラ ン ス古法 において カノ ン法の影響か ら将来 の証人尋 問

enquet e a f ut urとい う

証拠保全制度が存在 したが

, 1 667

年 の民事王令 が これを廃止 した9)。廃止理

由は,相手方 当事者が不在で防御の機会がないところでの証明には偽証の危険 が あること,顔死の証人が生 きなが らえた り長期旅行 の予定のある証人がその 後 もとどまった りす ることが多 く,その場合で も一度 なされた証言 は裁判官 に 先入観を生 じさせ ることか ら,濫用のおそれが あるため とされている10)。

一般的 に

1806

年 の民事訴訟法典 は この王令 を多 くの点で継承 した といわれ て いる11)が,証拠保全制度 の否定 につ いて も,王令 による明示的禁止 を受 け 継 いだ ものであ る

( Vi ncent ,n o27)

。 そ して この立場 の正 当化 のために学説 は,裁判官の任務が存在す る訴訟を解決す ることであ って当事者 に新 たに訴訟 を準備す るための手段を提供す ることで はない こと,訴権を基礎づ ける利益 は

9)

1 3

章 『将来の審理のためにする証人尋問

enqu6t ed' e xame n a f ut ur

と慣習 不詳点に関する集団ごとの証人尋問

e nqu8 t epart ur be s

との廃止につきて。』第 1 朕は,将来の審理のためにする証人尋問のすべてを,また,慣習および慣行 の解釈

i nt e r pr6 t at i on

に関わる,集団ごとの証人尋問のすべてを廃止す。 しかし て,朕は全裁判官に対 し,それを命ずること,および,それを顧慮することを禁止 す。これに違背するときは,裁判官は,無効の制裁に服すべ し

。」

(塙浩 「ルイ

1 4

世民事訴訟王令

( 1 6 67

4

)

」神戸法学雑誌

2 4

2

1 65

頁以下の翻訳によった)

1 0 ) M.Me rl i n,R6 per t oi r euni v e r s ele trai s onn6dej ur i s prude nce,5e 6 d.

( 1 81 4 ) t ome 6 ,pp. 38 a 4 0 .

なお同書によれば

,1 667

年の王令の後にロレー ヌ地方につーいては

1 7 0 7

年の

duc1 6 opol dによるオル ドナンスが提訴前の将来のた

めの証人尋問を廃止 したが提訴後のそれは残され,フランドルのパルルマンについ ては廃止されることなく残されていたという。同書はフランドルにおける実務を紹 介 している。

l l )

塙 ・前掲論文 (

9) 1 66

貢,

Vi nce nt ,n09

など参照。

(6)

既 に生 じた現実的かつ確実な利益であることが必要であるのに,未係属の訴訟 のために証拠調べだけを求める利益 は未確定な ものにす ぎないことを理由とし て付け加えていた

( Peyre,n o3)

0

なお訴訟前 に事実関係の確定を目的 とす る個別の規定 としては,例えば商法

106

条 は貨物運送 に関 してその受領 に争 いが生 じたときは貨物の状態を鑑定 人 に検査 させ ることがで きる旨規定 してお り,特別法では狩猟 によ り生 じた損 害の状況を確認す るための鑑定人指名が訴訟前 にで きる旨の規定が見 られ る

12)。 民法典

1323

1324

条および民事訴訟法典

193

条 による私署証書の検真,氏 法典

2263

条 によ る新 たな証書 の交付義務 も同様 に将来 の紛争 に備えた証拠 の 確保を 目的 とした規定である

1 3 )。

b)

旧民事訴訟法典の下での判例

法文の意図的な沈黙の下で判例 も,一般に訴訟提起前 に証拠調べのみを求め ることはで きないと していた。例えば1

8 86

年の破穀院審理部判決 ‑4)は,溝の 穀損が 自らの農地‑の引水を妨 げたと主張 して被害状況の鑑定を求めた訴えに 対 して,損害賠償を求め る本訴が末提起であることを指摘 し,鑑定 は本訴の付 帯事件 にす ぎず本訴 の存在を必要 とす るので不適法であ ると判示 した

1 5 ) 。

こでは鑑定を求めること自体を主 たる請求 とす る訴えの適否が問題 となってい るが,同 じく鑑定を求め る訴えで も損害賠償請求訴訟の提起 とともに提起 され

1 2 )1 937

7

24

日法律第

1

4

1 3 )

文書の検真 は我が国 における証書真否確認 の訴 え (日本民訴法

225

条) に相 当す る ものである。 フラ ンス旧法 時の文献で将来のための証拠調べ禁止 に対す る例外 と し て文書 の検 真 を挙 げ る もの は,

R.Mor el ,Trai t 661 6ment ai redeproc 6dur e c i v i l e ,2 C6d.( 1 9 49 ) p. 40 ,no35

,

H. Sol usetR.Perrot ,Droi tj udi ci ai re pri v

6

,t ome1 ( 1 9 6

1),

p.21 3 ,no236 ,J. Si card

,

La preuveen j us i t ce

,

( 1 960 ) ,no7 2

な どが あ る。証拠保全制度 の関連 で文書 の検真が意識 されて い る

ことは注目されるべきである。

1 4 )Req.25oct .1 8 86 ,D. 87 .1 . 1 6 4 .

1 5 )

同 旨

、Orl eans,29j ui l l .1 896 ,D. 97 . 2 . 209 ,Req.6f 6v r.1 900 ,D.1 900 .1 .1 67

S. 190 2 . 1 . 270 ,Rennes,1 6mars1 926 ,D.H.19 26 . 3 26 ,Re nnes,1 5nov. 1

9 33 , Gaz.Pal .193 4 . 1 . 7 0 ,Di j on,7f 6v r.1 9 45 ,D. 1 9 45 .

J.

31 5 .

(7)

提訴前の証拠保全 の正当な利益

337

た場合 は,主 た る請求 の形式 を とって いて も適法 で あ る とされて い る 16) 0

しか しなが ら, これ らとは別 に レフ ェ レ17)によ る鑑 定 が古 くか ら認 め られ て きた 18)。 この こ とは ほ とん ど争 われ て お らず

1

9), その適否 を正面 か ら判 断 した裁 判 例 は ほ とん どな い わず か に レンヌ控訴 院

1926

3

16

日判 決 は, 原則 と して未係 属 の訴 訟

proc昌

S解決 の ため に レフ ェ レ裁判 官 が証 拠調 べ を命 じる こ とは許 され な い と判 示 したが,例 外 的 に争 訟

l i t i ge

の 開始 が 迫 って い て その解 決 に関係 す る場合 , また は緊急性が あ るため遅滞 な くな され るべ き場 合 に限 り鑑 定 を命 じる余 地 を認 め て い た20)。 この よ うに レフ ェ レに よ る証 拠 調 べ命令 に関 して裁判例 で主 と して問題 とな って い るの は, その要件 で あ る緊 急性

urgence

を満 た して い るか ど うかで あ る21) 。 緊急性 の要件 を備 えて い る とされ た例 と して は,破 穀 院審 理 部

1894

1

1

7日判 決 2

2)の ほか, 交 通事 故

1 6 )Req.1 7j ui l l .1 899 ,S. 1 899 . 1 . 51 2 ,Req.7mars1 905 ,S.1 905 . 1 . 407 ,Ci v., 3

mai1 934 ,D.

H.

1 924 .434;

1 7 )旧法典の下での レフェレについては,小山昇 「 r6f 6r

6について ‑ ただ し,その

Or donnanc e

の効力の紹介 と研究 ‑ 」北大法学論集1

4

巻3I4

387

頁,同 「フラ ンス法における r6f6r6‑

urgence

の判例紹介 と研究 ‑ 」吉川大二郎博士還 暦記念 『保全処分の体系 上巻

』 ( 1 965

年 ・法律文化社)1

25

頁,江藤仇泰 「フラ

ンスにおける 「仮処分」制度」同 『フランス民事訴訟法研究』(

1 98 8

年 ・日本評論 社)24

3

頁以下,若林安雄 「レフェレ‑仏における仮処分制度」近大法学

1 6

巻3・4

96

貢以下,17巻1・2

1 33

頁以下,18

1

1 3

頁以下参照。また新旧両法典の レ

フェレにつ き野村秀敏 『保全訴訟 と本案訴訟

( 1 981

年 ・千倉書房)1

01

頁以下の ほか,法務大臣官房司法法制調査部編 ・前掲書 (

6)290

真以下,41

6

貢以下な ど参照。

1 8 )江藤 ・前掲書 (

注17

)247

頁および野村 ・前掲書 (注1

7 )11 0

頁で言及 されている。

なお小山 ・前掲論文 (注1

7 )のいずれ も,鑑定を命 じるレフェレの実例が多数見 ら

れる。

1 9 )注1

3所指の各文献参照。

20 )Rennes,1 6mars1 9 26 ,D.H.1 926 . 3 26 .

結論 としては本訴提起が迫 っているとい う主張立証がないこと理由として,鑑定命令を取 り消 している。 レフェレによる鑑 定を肯定する判断を示 したもの として,Mont

pel l i e r,1 2nov.1 928 ,∫.P.C.

1 929 . 24 .

がある。鑑定を命 じるレフェレの申立 と実施が時効を中断させないとする 裁判例 として,Ci

v. ,5j ui n1 882,S.84.1 .49,Pari s,1 6j ui l l .1 90 3 ,D. 1 904 .2 . 392 ,S. 1905. 2. 6 8

,

Pari s,30nov.1 944,D.1 945. ∫.1 7 5,Ci v.3

,4j ui n19 70

,

D. 1 97 0 .∫. 674 .

これ らは鑑定を命 じるレフェレの適法性を当然の前提 としている。

2

1

)urgence

の意義 と裁判例につ き,小山 ・前掲論文 (注17

)吉川還暦記念上巻参照。

22)Req. ,7nov.1 894 ,D. 95 . 1 . 8 .

もっともこの判決は当事者間に争いのある状況か ら 原判決が黙示に緊急性あることを認めたと判示 している。

(8)

の現場確認 と目撃者および当事者の陳述を聴取する任務を与え られた鑑定が証 拠滅失の可能性に照 らして後の本案訴訟での証人尋問より決定的であるため緊 急性あ りとされたパ リ控訴院

1953

1 0

23

日判決 23)などが挙げ られ る 逆 に 緊急性な しとして申立が排斥 された例 としては,病院の医療記録の調査許可を 求めた申請 に対 して病院記録が廃棄対象 となっていないことを理由に却下 した

ドゥエ控訴院

1959

9

25

日判決 24)が挙げ られる。

なお レフェレにより証人尋問を命 じることはできないと解 されていたが, こ れを認めた裁判例 も一つだけ見 られ る25)。 レフェレによる証人尋問が認め ら れない理 由は,旧法典,特 に

1958

年デ クレ26)による改革前の規定の証人尋問 に関す る厳格な形式主義が レフェレにな じまないためとされている27)。 しか し実際には,鑑定人が事情聴取を行 うことがで きたので,証人尋問 も間接的な が ら可能であった 28) 。

C)

小括

要するに旧法の下で証拠保全が認め られていなかったとい うのは,いわばた てまえに近 く,実質的には我が国における仮処分に近い レフェレによ り,少な くとも鑑定を行 うことができた。そ して鑑定は,我が国におけるそれよりも一 般的に用い られる措置であり,鑑定人による調査のため当事者および第三者 は 必要な書類を交付 しなければな らないとされた こと29)などか ら,実質的には 訴え提起前の証拠開示 ・情報開示が実現 されていたのに近い状態であった。

23 )Pari s,23oc t .1 953 ,D. 19 53 . 688 .

24 )Douai ,25s ept .1 959 ,∫. C.P.1 960 .Ⅰ Ⅰ .11 429 ,not eR.Savat i er.

ただ しこ の事件 は既 に本案訴訟が提起 されてお り,また鑑定を求める申請却下の理由は緊急 性欠如の外 に医療機関の秘密に触れ ることも挙げ られている。

25 )Tri b.Tul l e( raf ) ,1

er

j ui l l .19 26

,

S.1 927 . 2 . 86 . 26 )d6cretno58‑1 289du 22d6C.1 95 8 .

27 )J.Si card,op.ci t( n. 1 3 ) ,n o7 3 .

28 )H.Sol usetR.Pe rr ot ,op.° i t(n. 1 3 ) ,n o238 ,R.Morel ,op.°i t(n. 1 3 )

,

n o35 .

29 )

旧法典

31 7

条参照。 なお鑑定人 に対す る書類 の交付 につ いての判例 は,拙稿 ・前掲 論文 (

8)1 62

頁以下参照。

(9)

提訴前 の証拠保全 の正 当な利益

339

訴え提起前の証拠調べを明文で認めた新法典 は, このような旧法の下での状 況を受け継いで,証拠調べを レフェレまたは申請による命令の形式で命 じるこ

ととした。そ こで レフェレまたは申請 による命令の一般的要件が

1 45

条 におい て も必要 とされるかどうか,特 に旧法の下で提訴前の証拠調べの中心的要件で あった緊急性必要 とされるかどうかが問題 となった。また証拠調べに関する一 般的要件の要否 も問題 となった。 この ことは

145

条の体系的な位置付 けにも関 わる問題である。

三 、新民事訴訟法典 にお ける 「将来 の証拠調べ」 の基本構造 a)

145

条の基本的内容

フラ ンスの新民事訴訟法典 は

1965

10

13

日のデ クレによる実験的な改革 を前触れ として

, 1970

年代前半の

4

つのデクレとこれを統合補充す る

1975

1 2

5

日デクレ

1123

号 によ り法典化 された30)。 本稿で問題 とす る証拠保全の規 定 は,

1973

12

17

日デ クレ

1122

31)の

4

条 に規定 され,それがそのまま新 法典

145

条 となった ものである32) 0

この規定の基本的内容 は,訴訟手続開始前に証拠調べを行 うことができると す るものである。我が国の証拠保全 と異な り

1 45

条による証拠調べは本案訴訟 が提起 される前に限 られ,本案訴訟提起後はもはや適用 されない。 このことは い くつかの裁判例で も確認 された33)。 本案訴訟提起か ら弁論期 日までは,準

30 )

新民事訴訟法典制定の経過 については, 『注釈新民訴法典』冒頭の 「フランス民事

訴訟法の沿革 について」 と題す る論文が最 も簡潔明瞭である。

3

1

)D6cretno7 3‑11 22du1 7d6cembre1 97 3 i ns t i t uantunequat ri 8mes6 ri e dedi s pos i t i onsdes t i nies a s' i nt 6grerdansl enouveau c odedepr oc6 l

dureci v i l e

.

32 )

以下ではフランスの新民事訴訟法典の法文は原則 として条数のみを記す。

33 )Ni nes,1 9f 6vr.1 97 5,Gaz.Pal .197 5.2Somm.293,Com. ,1 5nov.1 983

,

Gaz.Pal .1 98 4.Pan,79,obs.Gui nchard,J.C.P.198 4.I V.29,Ci v. 2C , 24

oc t .1 99 0 ,D.S.1 9 90 . Ⅰ.良. 266 .

なお不動産差押が既に係属 している段階でそ の進行 と解決 に影響を与え得 る鑑定を

1 45

条 に基づいて命 じることは許 されないと 判示した例として

,Pari s,3mai1 98 4,D.S.1 98 4 .Ⅰ.R.27 2 .

(10)

備手続裁判官

l ej ugedel ami s een6t at

が証拠調べ を行 う排他的権 限を有 す る

( 7 71

5

号)。準備手続裁判官 の下 に事件が係属す る以前 に, あ るいは準 備手続裁判官 によ らないで弁論期 日が開かれ るケース(いわゆる

ci rcui tcour t

)で も弁論期 日前 に証拠保全が必要 とな る場合 には,緊急の証拠調べを レフェ

レによ り命 じることがで きるが,その権限は

1 45

条以外 の法 に基づ くものであ 34)

。 808

条 に規定 された緊急性

urgence

を要件 とす る本来の レフ ェ レによ り,証拠調べを命 じることがで きるとい うことであろ う35)。

もっとも

145

条の 申立 において は予定 され る本案を正確 に特定す る必要 はな い とされてお り

( Jeant i n,D. S. n o19

,

Per

ro

t ,n o788 .

), 申立人 と相手 方 との間に係属 中の本案訴訟 と

1 45

条 の申立で想定 され る本案訴訟 との同一性 判 断が常 に明 らか とい うわ けで はない。例 えば破穀院商事部

1991

4

16

判決 36)は,裁判上 の清算 中の会社に対 して株式譲渡無効 の訴 えを提起 した株 主が さらに会社理事の責任を追及す るため会社の会計鑑定を申 し立てた とい う 事例で,個人訴権 た る会社理事 の責任追及 は株式譲渡無効 の訴 え と別個で あ

り,後者の係属 は妨 げ とな らないとした。

また

145

条 は,証拠調べ

mes ured' i ns t ruct i on

につ いて規定 し, その規定 の位置 も証拠調べの総則 におかれているが,その対象 は狭義の証拠調べ に限 ら れない

( Perrot ,n o789.

)。公刊 され た例で見 られ る

145

条の証拠調べ の例 は 大半が技術者 による証拠調べ,特 に鑑定

expert i s e ( 26 3

条以下)で あるが, 裁判執行吏

hui ss i er de j us t i ce

による確認

cons t at at i on ( 249

条以下)

34 ) S.Gui nc har d,obs.i bi d.Je ant i n ,D. S.mo

ll.も同旨か。そこでは 「準備手 続裁判官への係属がない場合にレフェレ裁判官が審理進行中命 じることのできる証 拠調べと,レフェレ裁判官がすべての訴訟手続に先立って命 じる将来の証拠調べと を混同してはならない」と指摘されている

。Pe

rrot

,n o7 28

も参照。

35 )

本案訴訟進行中のレフェレ利用の可否については

,Vi nc e nt ,n o57

1.参照。

36 ) Com. ,1 6 av r . 19 91 ,J. C. P. 19 9

1

.Ⅰ Ⅴ. 235 .

裁判上の清算

l i qui dat i onj udi ‑

c i ai r e

とは

1 98 5

1

25

日法律

9 8

1 48

条以下の手続で,文字どおり清算を目的と する。会社理事が会社の債務超過に運営上の過失がある場合は同法

1 80

条により会 社債務の填補義務を負い

,1 82

条所定の事由があれば理事自身に更生手続が開始さ れる

.19 85

年法については,佐藤鉄男‑町村泰貴

「 1 9 85

年のフランス倒産法に̲ する法文の翻訳

( 1 )〜 ( 4 )

」北大法学論集

38

3

〜39

3

号に試訳がある。

(11)

提訴前の証拠保全の正当な利益

341

37㌦ 特 に姦通確認を 目的 とす る姦通調書

const at sd' adu

ltbre作成を執 行吏 に命 じる例 38',単 なる診断

si mpl econsul t at i on

を命 じた例 39'などが見 られ るO さ らに本来 の

mesured' i nst ruct i on

で はな い証 明資料の提 出 ・伝 達 について も,テ レビ局 のイ ンタ ビューフイルムの提 出を レフェレによ り命 じ た例40),労働組合の会計帳簿を組合員‑伝達

com muni cat i on

せ よ と命 じた

4

)

, 138

条の第三者所持文書 の提 出命令 は証拠確保のため

1 45

条 に基づ き認 め られ ると判示 した例42)など も見 られ る。

なお この規定 は,前節で述べたよ うに旧法典の下で レフェ レによ って発展 し て きた ことを継承 して, レフェ レまたは申請 による命令の方式 によるとしてい この両手続 との選択 について見 るな らば,一般 に申請 による命令 は対審審 理を必要 としないとい う点が レフェレとの基本的な差異であ り,従 って対審主 義の例外を必要 とす る事情のあるときにのみ申請 による命令 によることが許 さ れ る43)。 この ことは

1 45

条 にお ける両者 の選択 において も同様で,密行性が措 置 の有効性の条件 とな る場合 にのみ 申請 による命令が許 され る とされ る44)。

実際

に145

条 に基づ く証拠調べが 申請 による命令 によ り命 じられた例 は多 くが いわゆる姦通確認調書の事例である45)。

ところで レフェレまたは申請 による命令 に基づ く証拠調べ とい う基本的な構

37 )Pari s,1 8j ui n1 980,Gaz.Pal .1 9 80. 2.770,not e∫.‑C.Fourgoux.

蜂蜜輸入

販売会社がライバル会社の最新設備があるなどの広告に偽りがあるとして、ライバ ル会社内で広告の真偽を確認するための裁判執行吏の任命を求めた。原判決は棄却

したが控訴院は認容。

38)Cass.ci v.

1er

,6 f 6vr.1 97 9,Gaz.Pa

l

.1 97 9.1 .252,not ed.Ⅴ. ,J.C.P.

1 980 .

.1 9290,obs.R.Li ndon.

など多数。

39 )Pari s,28j ui n1 976,RTI )C.1 97 6. 630,obs.Perr ot

40 )Pari s,5f 6vr.1 9 86,Gaz.Pal .1 9 86.1 .244.

なお

,Pari s,26d6C.1 986,D.S.

1 987.∫.344,not e M.Jeant i n,Gaz.‑ Pal .1 987.1 .95.

もテレビ局に対 して放 送用テープの提出が求められたケースである。

4

1

)TG‑ I.Evry ( r

af.)

,25av r.1 980,Gal.Pal .1 9 8

1.1

.Somm.1 6 0

。ただし伝 達は組合所在地でなされるべきで ,交付を求めることはできないとされた。

42)Ve rsai l l es,1 6avri l1 9 86,D.S.1 9 86.L R.29 8

,

43 )Est oup,no25 2,Ci v.3C ,1 7nov.1 981 ,Gaz.Pal .1 9 82.1 .1 06,not eJ.Vi at t e.

44)Pe

rrot

,na7 91,Es t oup,i b‑ i d.

反対か

, Jeant i n,D.S.no23 .

(12)

造を持つ

1 45

条の適用においては, レフェレや証拠調べの一般的要件,例えば

8 08

条所定の緊急性が必要 とされるのではないか という点が問題 となる。次にこ の 「将来の証拠調べの 自律性

aut onomi e

と呼ばれ る問題 につ いて,特 に判 例の動向を検討す る。

b)

レフェレおよび証拠調べの一般的要件適用の有無 ア) レフェレの一般的要件 との関係

レフェレについては,4

84

条以下 に基本 となる共通規定を置 き,具体的要件 規定が80

8

条以下 に置かれている46)。 これによれば,一般 に レフェレの要件 と

して は緊急性

urgenceが あ る ことに加 え,重 大 な異議 cont es t at i on s 6‑

ri eus e

が存在 しない こと,または争 い

di f f 6rendの存在が処分 を正当化す る

ことが必要である。 これ らの要件 はいずれ もその定義が困難な不確定な概念で あ り,相互の関係 も,重大な異議の不存在 と争 いの存在 との関係や809条の規 定 との関係 など,必ず しも明確 とは言 いがたい

( Cr oz e,no31 0 . )

0

一般に緊急性 とは, レフェレ本来の 目的 と照 らして,申立人が通常の遅い手 続 によることを余儀な くされた場合 に重大 な困難 の可能性があ ること

( Pe r‑

rot ,no1 274 .)

とか,数 日または数時間の遅れが当事者 の一方 に損害を与え る可能性があること

( Vi ncent ,no1 38 )などの定義が与え られているが,そ

れ と同時に紛争の性質や客観的要素によ り内容が異な りうる相関的な概念であ ると言われている

( Perrot ,no1 274,Es t oup,no7 0 .

)。 また重大な異議があ

4 5 )Ci v.2

,1 3mai1 9 8 7 ,J. C.P.1 9 8 7 . Ⅰ V. 2 4 4 .

この判決 は,申請 に基づ く命 令 により執行吏 に調書確認をなさ しめるには対審主義の例外を正当化す る理由が必 要 と判示す る。なお姦通確認調書 について は正当な理由 との関係で後述す る。

4 6 )4 8 4

条 「レフェレの命令 は,本案受理裁判官でない裁判官 に即時に必要 な処分を命 じる権限を法律が与えている場合 において,当事者の一方の要求 によ り,他方当事 者 を出席又は呼び出 してな され る仮の裁判である

。」 80 8

条 「すべての緊急の場合 には,大審裁判所所長 は,それ らに対 しなん ら重大な異議が存在 しない場合,又 は 紛争の存在がそれを正当化す る場合において,すべての処分を レフェレの手続 によ り命令す ることがで きる。」 他 の裁判所 につ いて も同内容が規定 されている。小 審裁判所 につ き

8 4 8

条,商事裁判所 につ き

8 7 2

条,農事賃貸借同数裁判所 につ き

8 9 3

条,控訴院につ き

9 5 6

条。

(13)

提訴前の証拠保全の正当な利益

34 3

るとされ る場合 とは,裁判官が レフェ レによ り命 じる措置の正当化のために本 案問題 を解決す るにつ なが る場合 とされ

( Est oup,no75 .

),法律行為の解釈 に争 いがあ った り事実の存否,法律の解釈 に争 いがあ る場合 は,それ らに判断 を下す ことはで きない とされ る

( Perrot,no1 277 .

)。争 いの存在が措置を正 当化す る場合 とは,係争物 につ いて保管す るなどの保全措置が必要 とされ る場 合 が想 定 され て い る

( Est oup,no77,Croz e,no31 0.

)。 なお 旧法 典

809

は, 「レフェレに関す る命令 は本案を害 して はな らない」 と規定 しているが, 新法典 は この条項 を受 け継がなか った。本案を害す るか ど うかにつ いて は レ

フェレ命令が本案 に関 して既判事項 の権威 を有 しない

( 488

条参照) とい う効 果の面の はか,要件面で は上記 の重大 な異議 の不存在 に関係 して くるので, 旧

809

条 に関す る問題 は重大 な異議 の不存在が必要か ど うか とい う局面 に吸収 さ れ るもの と考え られ る。なお

1 45

条 との関係で もこの点が問題 とされ たが,本 案を害す るとい う当事者の主張が認め られた例 は見当た らず, これを否定 した 例のみ見 られ る47)0

以上のよ うな レフェ レの一般 的要件が

1 45

条の 申立 において も必要 とされ る か どうかについて, まず緊急性 は, これを必要 とす るもの も多 く,不要 とす る もの との対立が見 られた

。 1970

年代か ら

80

年代初 めの期 間にお ける判例 を見 ると,破穀院第

1

民事部

1975

1 2

2

日判決48)は,緊急性が ないに もかかわ らず鑑定人を命 じた と主張 してな された破穀 申立 に対 し

、 1 45

条を引用 しなが ら,原審 は緊急性があ ると専権的に評価 した と判示 して破穀 申立を棄却 した。

47 )TG

I

.Tour ous e,(r

ef),1

0f 6v r.1 97 6,J.C.P.1 97 6.I V.6 6 3 2,p. 2 88obs.

J.

A.

離婚 した妻が夫婦財産の清算のため元夫の銀行口座の特定年の取引明細 書を提出させるよう請求 し,レフェレによる命令が出た。その後,この命令に対 し て元夫が取消を求めるレフェレを申し立てたのが本件で,提出を命 じられた明細書 の年は既に共有が解消 した後であるはずでこの点は本案訴訟で審理されるべきとこ ろ,この提出命令を認めると本案を害すると主張 した。 しか し裁判所は本案を害す るかどうかが関係無いとした

。 TG

I

.Toul ous e, 23nov.1 97 6,l oc.°i

t

. (n. 5 5 )

も,本案を害するかどうかは

1 45

条の申立に関係 しないと判示 している。なお旧法

8 09

条の意義につき,野村 ・前掲書 (

1 7 )1 1 2

頁以下参照。

48 )Ci v.

1re

,2d6C.1 97 5,Bul l .ci v.I ,no35 7,p.296,RTDC.1 9 7 6.6 01,obs.

Normand.

(14)

また逆 に破穀院第

2

民事部

1981

7

20

日判決49)は,緊急性 な しと して レ フェレ申立を却下 した原判決を支持 した。さらに下級審 レベルで も,同様に緊 急性の要件を必要 とした例が多 く見 られ る50)。 これ らに対 して,同 じ時期 に 緊急性を要 しないと した例 は,下級審の裁判例でい くつか見 られ る51)。 この うちエ クサ ンプロバ ンス控訴院

1 981

12

15

日判決52)は

, 1 45

条によるレフェ レの体系的位置付けを

808

条の適用例 とす ることを排 し, レフェレの根拠条文

484

条であることを前提 に,その具体化が

808

条等でなされ,

145

条 も直接

48 4

条の具体的適用法文であるとす る。従 って

,145

条 と

808

条 とは相互 に全 く独 立 してお り,緊急性の有無を顧慮す ることな く事実の立証を可能にす る鑑定措 置を命 じることがで きるとい うわけである なお緊急性が必要だ とす る中に も, これを緩やかに認める裁判例が見 られる。例えばサ ン ・デ二 ・ドゥ ・ラ ・ レユニオ ン控訴院

1974

9

6

日判決53)は,姦通の執行吏確認調書作成を命 じる場合に緊急性 は常に認め られると判示 している。またグラス大審裁判所

1 9 81

5

26

日レフェレ54)は,緊急性を

808

条や

809

条および

1 45

条に共通する条 件であるとしつつ,それぞれに内容が異なるとし

, 1 45

条に基づ くレフェレで 要求 され る緊急性 とは証拠滅失を避ける必要の意味であると判示 し,証拠滅失 の恐れが全 くない場合にはレフェレ裁判官の権限がないとした。

49 )Ci v. 2

C

,20j ui l l .1 981 ,J.C.P.19 81.Ⅰ V.369.

同 旨

,Ci v.1

re

,26avr.1977

,

D.S.1 977 .

.R.41 4,197 8.∫.66 4,not eTe ndl er.

50 )TG

I

.Lyon,1 5j anv.1 975,Gaz.Pal .1 97 5.2.81 4,not ePh.Lauren

t.( 理解雇について企業委員会が申 し立てた鑑定の レフェレは緊急性 も争 い もない とし て不受理)

,TG

I

.Lyon,1 6oct .1 97 3,D.S.1 974.389,mot eFourgoux,∫.C.

P.197 4.

Ⅰ .17762,not eCouchez.

5

1

)TG

I

.Toul ouse( ref . ) ,1 0j ui n19 75,J.C.P.1 97 6.Ⅰ Ⅰ .1 831 0not eGui l l o

t. (会社の管財人 は総会に諮 る事な く緊急性を立証せずに、証拠保全 申立がで きる),

Pari s,1 0j anv.197 9,l oc.°i

t.(

n.65 ) , Par i s, 27nov.1 9 80

,

Gaz.Pal .1 98

1.

1

.Somm.1 60

, (銀行 に対 し,会計鑑定人 が 申立人 の 口座 の収支計算 をす る レ フェレが認 め られた事例)

,TG

I

.Toul on,( r

af.)

,30j anv.1 981,J.C.P.1 9 8 2.Ⅰ V.224

52 )Ai x‑en‑Provence,1 5d6C.1 9 81 ,D.S.1 982 .

I

.R.17 0,obs.Jul i en.

53 )Sai nt ‑D6ni sdel aReuni on,6sept .1 974,J.C.P.1 97 4.I V,6 457,p.36 3

,

obs.∫. A.

54 )TG

I

.Grasse( re

f)

, 26mai1 9 81 ,D.S.1 98 2.

I

.R.17 0,obs.Jul i en.

(15)

提訴前の証拠保全 の正 当な利益

345

重大な異議の不存在または争いの存在による正当化について見 ると, トゥ‑

ルーズ大審裁判所

1976

1

1

23

日判決55)は,請負人 と注文者の請負代金清算 をめ ぐる争いで帳簿の鑑定を請負人が申 し立てた という事例において

,1 4 5

による証拠調べについて も

808

条の重大な異議不存在または争 いの存在が適用 されるという前提で,請負契約が見積 り払いか否かについての重大な異議があ るという相手方の主張に対 して,重大な異議 に当た らないとし,代金支払方法 に争いがあることを理由として鑑定請求を認めた。 これに対 して破穀院第

3

事部

1980

12

10

日判決 56)は,不動産譲渡契約 に付 された条件の成就につい て重大な異議があるのに鑑定を命 じたとの破穀 申立に対 し,重大な異議の有無 に言及す ることな く破穀 申立を棄却 した。争いの存在について ドゥエ控訴院の

1978

2

22

日判決57)は,死亡 した鉱山労働者の妻が鉱 山労働者救援組合地 域連合を相手に死因究明のための医療鑑定を求めたという事例で,桂肺病によ

る死亡を理由とす る年金請求を棄却 した既判事項の確定力のある裁半順i既にあ り,連合 との間に争 いがない として申立を却下 した。 また破穀院商事部

1982

1

4

日判決は,営業財産の所有者 と経営賃借人 との間に賃料不払をめ ぐる 争 いがあることを指摘 して賃貸財産中の不動産の状態の鑑定を命 じた原判決 は 正当であると判示 した 58) 。 もっともこの判決 は争 いの存在を必要 とす るか ど

うかまで判断 した ものではない。

ともあれ このように,緊急性をめ ぐる対立 ほどではないに して も

,1 4 5

条の

55 )TG

I

.Toul ouse, 23nov.197 6,D.S.1 978.66 4,not eTendl er.

56 )Ci v.3C ,1 0d6C.19 80,Bul l .ci v. ,no1 9 3,p.1 4 4,Gaz.Pal .1 9 8

1.

1.287,not e J.Vi at t e.

土地の適格証明を条件 とす る分譲地の譲渡で対価は道路管理 と導水作 業。分譲主が相手方の仕事状態に鑑定を申 し立て認容 された。相手方 は請求の基礎 となる事実の捜索で, しか も条件成就をめ ぐる重大な争 いに抵触す ると主張 した

,1 45

条 により申立人 は契約責任訴訟の基礎 となる事実資料の収集が許 され ると 判示 し,その余の上告理 由については判断す る事な く上告を棄却 した。

57 )Douai ,22f 6v r.1 97 8,Gaz.Pal .1 978.2.Somm.47 2

,この事件ではさらに死因 を明確に したいとす る遺族の願いも故人を治療 した医師に聞けば分かるので、証拠 調べ による利益 ない と判断 されている。 この ほか

,TG

I

.Lyon,15j anv.19 75

,

pr6c i t .(n. 50 )

も争いがないことを理 由に申 し立てを却 けている0

58 )Com. , 4j anv.1 982,Gaz.Pal .1 9 82.Pan.1 83 .

(16)

適 用 に際 して808条 の要件 を満 たす必要 が あ る ことを前 提 に して い る裁 判例 が い くつか見 られ,破穀 院 の態度 はは っき りと して いなか った とい うことが で き

イ)証拠調 べ の一般 規 定 との関係

証拠 調 べ の総 則 規 定 の 中 で は主 と して

1 46

2

項 と150条 の適 用 の有 無 が 問 題 とな って いた。 146

2

項 は, 「いか な る場 合 も証拠 調 べ は証拠提 出 にお け る当事者 の慨 怠 を補充す る 目的で命 じて はな らない」 と規定 す る。 その意義 に つ いて は争 いが あ り,証拠調 べ の対象 た る事実 を十分主 張 して いな い場合 に証 拠 調 べ が 禁止 され る と解 す る立 場59),証 拠 の端 緒 が な けれ ば証 拠調 べが許 さ れ な い もの と解 す る立 場 60), 当事 者 が 自己の主 張事 実 の立 証 に対 して 自 らな し うる寄 与 を 故 意 に控 え た こ とが 慣 怠 で あ る とす る立 場

( Dev

ze,no188

,

Jeant i n,∫.‑c

l

.no37

,Perrot,no736

.)

な どが主 張 され て い る。 この規 定

1 45

条 に基 づ く申立 に適 用 され るか ど うか につ いて裁 判例 を見 る と, シャ ン ベ リー控 訴 院

1978

6

27

日判 決6りは, 山小 屋 の買 主 が建築 会 社 を相 手 に し て欠 陥 の鑑定 を求 め る レフ ェ レ申立 を して認 め られ たが,鑑定項 目の うち作業

59 )Bl an

°

,pp. 1 6 a 1 8 .この考え方 は新民事訴訟法典制定 に強い影響を与えたモテユ

ルスキーの主張責任の考え方に従 うものであり,わが国でいえば模索的証明の禁止 と解す る見解 と理解で きる。なお1

975

年 に法典化 され る以前の規定は, 「証拠提 出における

dansl ' admi ni st rat i ondel apr euv e

」という限定がついてお らず, ブランクの見解はそうした限定抜 きの規定を前提 としている。そこでこの限定がつ いた現在では,主張が十分でないことは証拠提出における傭怠ではないのでブラン クの見解は取 り得ないと批判 されている。Dev

占z e,no1 83 .

60 )Ci v.2C ,1 0f 6v r.1 977,D.S.1 977.

I

.R.26 4 .

この判決は不動産差押の暫定的停

sursi s

を求める申立において債務者が競売対象物件の価値を明 らかにす る最低 限の証明資料 も提出 していない以上,1

46

2

項に照 らして鑑定申立を却下 したのは 正当と判示 した。

6

1

)Chamb6r y,27j ui n1 978,Gaz.Pal .1 979.1.1 9 2 ,not eLeneveu

,なお結論は 僻怠に当た らないとしなが ら僻怠の有無を問題 とした例 として,Pari

s,27 nov.

1 980,pr6ci

t.(

n. 5

1)

,Rouen,25f 6v r.1 982,D.S.1 9 82.

I

.R.495,obs.M.

Vasseur.

(裁判上の整理中の会社の債権者が支払停止の原因 と責任を明 らかにす るための鑑定申立。債権者 らが独 自に証明資料を獲得できないのは僻怠 とはいえな いとする)

(17)

提訴前 の証拠保全 の正 当な利益 347 中に新たに発見 した欠陥を補充することとい う任務が当事者の僻点を補充す る

ものとして控訴 により寂 り消 された。 この判決 は明 らかに模索的証明の禁止の 意味で

146

2

項を適用 した ものである。他方,破穀院第

2

民事部

1982

3

17

日判決 は,建物の欠陥を明 らかにす るために注文者が申 し立てた鑑定につい て,原告決が これを認めたのは注文者の僻怠を避けるためであるとし, これに たい して

1 46

2

項 に反 しているとの非難 はで きないと判示 した62)。 この判決 が,憐怠を補充す るためではな く避けるためであるか ら許 されるという趣 旨で

1 46

2

項の適用を前提 としているのか,それ とも

146

2

項 は適用 されない が故に同条違反を主張できないとしたのか,いずれかは明 らかでない。

150

条は証拠調べを命 じる裁判 に対 して独立 して控訴および破穀 申立をす る ことがで きないとす る規定であ り,鑑定については

272

条に特則があ り,控訴 院院長の許可を条件 として独立の控訴が可能であるとされている。 これに対 し

490

条 は, レフェレの命令につ き控訴が可能であると規定 している。そこで

1 45

条に基づいて証拠調べを命 じるレフェレに対 しては控訴 ・破穀申立が可能か

どうかが問題 とな り,破穀院第

3

民事部

1978

5

18

日判決63)は,証拠調べ を命 じる判決に対する独立の上訴 は許 されないと判示 した。 もっともこの判決 の事案は,別の レフェレ申立の審理に必要な証拠調べを レフェレで命 じた もの で,証拠調べを命 じた後 もレフェレ裁判官の係属が失われない場合であり,特 殊であったが,判例の立場は不明確な ものと考え られたようである。

C)

145

条による証明 レフェレの自律性の確立

以上 のよ うな判例上の混乱 に一応の終止符を打 ったのが,破穀院混合部の

62 )Ci v. 2C ,1 7mars1 982,Gaz.Pal .1 982.Pan.27 3 .

6 3)Ci v.3e ,1 8mai1 97 8,RTDC.1 97 9.4 32,obs.R.Perr ot .

下級審 には反対 に直 接の上訴を適法 と判示す るものが多 く見 られる

。Pari s, 26f 6v r.1 97 4,J.C.P.1 9 74.I I .1 77 48,obs.L.Boyer,Lyon,28j anv.1 97 5,D.S.1 97 5.Somm.97

,

N壬 mes,10nov.1 97 5,l oc.c i t .(n. 94 ) ,Lyon,3d6C.197 5,J.C.P.1 975 .J V.

6607,p.1 97,obs.J.A. ,Pari s,28j ui n1 976,pr6c i

t

.(n. 39 )

,

Versai l l es

,

20j ui n1 978,Gaz.Pal .1 9 80.

1

.Somm.280 .

(18)

1982

5

7日に下 され た 3

つ の判 決 64'で あ る 事実 関係 か ら多少詳 しく紹 介す る。

[事案]Phydor杜 は1978

1

月1

6

日に財産の清算を宣告 されたが、仮取締役の 提出 した貸借対照表の記載 によ り銀行

5

社 (

Credi tLyonnai s

銀行、Soc

i 6 t 6 G6n6ral

銀 行、 Soc.Uni

cr edi t

銀 行、 Soc.UCI

NA

銀 行、

Banque Na‑

t i onal edePari s

銀行)が

Phydor

社 に不相 当に大 きい融資を していた こと を知 った

Phydor

社 の債権者

2

社が、銀行

5

社 を相手方 として、1

45

条 に基づ

Phydor

杜が これ らの銀行か ら金融支援を受 けた状況が どのよ うな もので あったかを探求す るために鑑定を申 し立て、管財人 もこれに参加 した。パ リ商 事裁判所所長 は1

97 8

1

1

8

日に鑑定を命 じる レフェレ命令を下 し、 これに銀

5

社が控訴を申 し立てた。申立人側 は、Phydor社の年間総売上高に近 い額 の融資がなされたこと、 この過剰貸 し付 けのゆえに銀行 は他の債権者に対 して 責任あ りと見 られ ること、および鑑定によ ってのみ銀行 に対 して裁判上 の請求 を行 うことの適否を評価す ることがで きるのに、銀行

5

社 は先 に主任官が命 じ た鑑定に協力を拒んでいることを主張 した。銀行側 は、 (a)申立人がまだ債権 登録を済ませていない こと

、 ( b)

証拠の滅失 の恐れがない本件でその保全を緊 急になすための レフェ レ手続 によることは許 されないこと、 (C)そ して管財人

Phydor

社 の会計帳簿すべてを利用で きるに もかかわ らず銀行側の帳簿を 調べ るのは1

45

条の正当理由を欠 き傑意を補 うものであると主張 した。

[原判決]パ リ控訴院

1 97 9

1

月1

0

日判決65)は、融資の大 きさが他 の債権者 に 対す る銀行の責任の可能性を推測 させ ることか ら融資がなされた事情を立証 さ せ る利益があ るとし、銀行側の主張に対 して、 (a)申立債権者の資格 に?いて は本案訴訟提起の資格がない と認 めつつ、1

45

条の利用 はで きると し、管財人 が申立に加わ っていること、申立債権者が債権者全体 とは別の個人的損害を受

64 )Ch.mi x

t.

,7mai1 9 82,Bul l .ci v.M. ,no2,Gaz.Pal .1 98 2.2. 571,not e

∫.

Vi at t e,D.S.1 98 2.∫.541 ,conc

l

.∫. Cabannes,J.C.P.1 98 2,Ⅰ

,p.24 6.

65 )Pari s,1 0j anv.1 979,Gaz.Pal .1 97 9.1 .1 66,not eJ.Ⅴ.

(19)

提訴前 の証拠保全 の正当な利益

349

けた可能性 もあ る ことを指摘 して、 1

45

条 によ る申立 を適法 で あ ると した。

( b)

緊急性 がない ことにつ いて は、商事裁判所 の レフ ェレを定 めた87

2

条が適 用 されない以上緊急性 は不必要であ ると し、 (C)鑑定の必要性 と傑怠の補充 の 問題 については、管財人が会社の会計文書を調査で きると して も融資決定を導 いた情報を明 らかにす るには銀行の文書の検査が不可欠であ ることか ら、憾怠 の補充を 目的 とす るもので はない と した。そ して以下のよ うな任務の鑑定人任 命を命 じた。

(D

Phydor

社 の債権者 たる銀行 に対 し、同社 に付与 した貸付等 の支援 に 関連す る文書、その同意の基礎 とな った条件 と保証の内容を記述 した一切の銀 行文書、書面 を伝達 させ る こと。

( 2 )

それ らの貸付が

Phydo r

社 に与え る金 融負担額 と同社の弁済可能額 を調査す ること。

( 3) 1 97 7

年 中になされた弁済、

特 に同期 間に企業の状態を知 っていた可能性 のある第三者 の利益のためなされ た弁済を調査す ること。以上 の調査 レポー トを

4

カ月以内に商事裁判所書記 に 提 出す ること。

これに対 して銀行側 は

3

つのグループに分れて破穀 申立を した。他方 申立人 側 は、そのいずれ に対 して も

1 50

条 に基づ いて破穀 申立が不適法で あ ると主 張

した。

[破穀院判決]混合部 は、 まず破穀 申立の適法性 につ いて、1

50

条 は主 た る請求 が裁判官 の もとに係属 して いるときにのみ適用 され、1

45

条 に基づ く訴訟前 の 証拠調べが命 じられ る場合 には適用 されない と判示 して適法 と認 めた66)。 いで本案 について、申立債権者の両社が本案訴訟提起の資格がない と認めつつ 正 当理 由あ りとす るの は矛盾だ とい うの に対 して は、両社 が個人的 に損害 を 被 った可能性があ ると認 めた後 に1

45

条請求を認 め るの は矛盾で はない と判示 した67)。 また憐 怠 を補 う申立 で あ るとい うの に対 して は、 1

46

条 は1

45

条 の 証拠調 べ に適用 され な い と して却 け 68)、正 当理 由が欠 けて い るとい う主 張

66 ) 3

つの判決のいずれにおいて も触れ られている。

6

7

)B.N.P

とUCI

NA

の破穀申立に対する判決,D.S.1

9 82. a.541 .

6 8) 3

つの判決のいずれにおいて も触れ られている。

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