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事業別 「 拠出資本 と留保利益の区別」

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事業別 「 拠出資本 と留保利益の区別」

1794年 プ ロ シ ア普 通 国法 をつ う じたGAAPと して の位 置 づ け ‑

・卜

1 序 一 本稿の 目的 2 本稿の動機 と背景

3 プロシア普通国法の組合規定 ・商事会社規定にみる 事業 ごとの拠州にもとづ く州資者 ‑経営者間の利害調整 4 プロシア普通国法の組合規定にみる

拠州資本 と留保利益の区別」 と州資者 ‑経営者間の利害調整 (以上,本号) 5 プロシア普通国法の商事会社規定にみる

拠州資本 と留保利益の区別」 と州資者 ‑経営者間の利害調整 6 現在では 「拠州資本 と留保利益の区別」 は

州資者 ‑経営者間における利害調整のためのGAAPではないのか ? 7

1 序 一 本稿 の 目的 本稿 の 目的は,大 き く分 けて,次 の3つ であ る

1794年 に公布 ・施行 された プ ロ シア普通 国法 (AllgemeinesLandrecht fnrdiepreuL3iscllenStaatell)にお ける,商事会社 (ない し組合) の資本 概 念 を明 らか にす るこ とをつ う じて, わが国 (株 式会社 )会計制度 におけ

る資本概 念の源流 をみ る

その1794年 プ ロシア普通 国法 の商事 会社 (ない し組合)規定 において も,

拠 出資本 と留保利益 の区別」 (具体 的 には,事業 ごとの 同 「区別」)を想

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138 商 学 討 究 第61巻 第2 ・3

定 した規定が採 り入れ られてお り,そ してそれは,債権者‑ の配慮以前 に, 出資者 と経営者の間での財産分配 をめ ぐる利害調整のためであった とみ ら れることを確認する

上の①②で確認 される内容か ら,事業 ごとの 「拠 出資本 と留保利益の区 別」 は実務慣行 に根 ざした1つのGAAP (GenerallyAcceptedAccount ingPrinciple(S))であった とみ られるが,現在はその ことが,正面か ら 取 り上げ られなかった り,知 られていなかった りす る (ようにみえること がある)状況 について,その根拠 と是非 を考 える。

これ らの うち,本稿 にとって最 も重要な 目的は,③である。①② にも,先行 す る歴史研究 との関わ りで,個 々に意義はあ り得 るか もしれない。 とい うのは これまでに,1794年 プロシア普通国法 における資本概念 を主たる検討対象 とし た研究は見当た らず,同法会計規定研 究の間隙が多少 とも埋 め られるか もしれ ないか らである。 しか し,それ らは本稿では,なによ り③の 目的のための布石 であって, ここでの主眼はあ くまで,現在の 日本 における資本会計のルールを め ぐる分析 (に対す る含意) に向け られている。

以上が本稿の 目的であるが,あえて,表面的な説明に抑 えてある。 よ り根本 的な,本稿の 目的を支える動機 と背景 については,次の第2節 をあてて詳 しく 述べて,なぜ上記の 目的が設定 されているのかを説明 しよう。それが,本稿の 実質的な出発点 となる

それを受けて続 く3つの節では,いずれ もプロシア普通国法 における,組合 と商事会社 の事業 ごとの拠 出ルール (3節),組合の 「拠 出資本 と留保利益 の区別」(4節),お よび,商事会社の 「拠 出資本 と留保利益 の区別」(5節) が,すべて,なによ りもまず出資者 と経営者の間の利害調整 を目的にしていた ことが確認 される。次の第6節では,そこまでの検討 をふ まえた うえで,現代 (の とくに日本) における 「拠 出資本 と留保利益 の区別」の意義づ け ・あ り方 についての反省に取 り組みたい。そ して最後の第7節では,歴史的な会計ルー ルの研究 に対する自省を含めた,本稿 のまとめを行 う

(3)

2 本稿の動機 と背景

それに して も (とい うよ り,主眼が現在の 日本 における資本会計 のルールに 向け られているのな らなお さら),なぜ200年以上 も昔の,地理的条件 も経済的 環境 も日本 と異 なっていたプロシアにおける, しか も法の もとでの資本概念 を 検討す る必要があるのか ? この ことについては,それな りに説明が必要であ ろ う。明確 な意図を もって,その説明か ら本論 を始めたい。 そ うす ることで, 本稿 の含意が, よ りわか りやす くなるはずである

もっとも,検討の必要性 を確認す るのは,研 究論文 としては当た り前 の こと であろ う。それで もここで,その確認 を丁寧 に際立たせて行 ってお きたいのは, これ までの簿記 ・会計分野 にお ける広 い意味での (古い会計 ルールの検討 も含 めた)歴 史研 究 に対 して,未熟 なが らも自問 と改善 を試みたいか らであ る。 こ れは,本稿 の表 (お もて)面的な 目的 と切 って離せ ない,いわばその裏 (うら) 面 的な 目的であ り, よ り具体的 にいえば,以下の とお りであ る

対象が,会計行動や制度であ るか,学説 であるか を問わず,それ らを歴史的 に比較検討す る とい う取組みは,法律学や経済学 といった他 の学問分野で も行 われて きた ようであ る。しか し,か な り思い切 ってい えば,とくに 日本の簿記 ・ 会計分野で試み られて きたその取組みの中には,一部の例外1)を除いて, なん

らかの因果関係 を探 るとい う意図 (が明 らかで) もなければ,検証 で きる仮説 す ら示 されない ものが, なか った とはいえない ように思 う2)。 た とえば,素朴

1) たとえば,R.L.ワ ッツ‑J.L.ジマ‑マ ン著 ・須田一幸訳 『実証理論 としての 会計学』白桃書房,1991,415‑416頁 (訳者による 「本書の読み方と考え方」) における,安藤英義 『商法会計制度論』国元書房,1985年 (新版,白桃書房,1997 年)の位置づけを参照されたい。

2) 科学ないし研究の役割 とは,現象の因果関係についての推定に寄与する,( 規な)仮説の構築 と検証 ・分析 である,というような見方で一定の合意があると すれば,その もとでは,本文のような取組みの評価は,高 くはならないであろう (ここではとくに,大 日方隆 『ア ドバ ンス ト財務会計一理論 と実証分斬』中央経 済社,2007年,および,八重倉孝 「国際競争力のある研究者の養成」『合計』第177 巻第1 (20101月)参照)

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140 商 学 討 究 第61 2 ・3

な歴 史 (的文章) の紹 介 に と どま りつつ3)そ れが現 在 の 日本 に与 え る含意 に無 関心 でい た り飛躍 的 な議論 を示 した りす る4)とか,そ れ まで まった く (あ ま り) 取 り組 まれて こなか ったか ら取 り組 む とい うだ けの単 純 な作 業理 由5)ち, とき にはみか けて きた。

た しか に, そ うい った作 業 に も,簿記 ・会計 にお け る知識 体系 のす き間 を埋 め て新 た な展 開 を もた らす可 能性 が ない とはい えない。 広 く科 学 の領域 にお い

この ような見方に対 して,反応 はさまざまとみ られるが (た とえば田中章義 「ア メ リカ会計学界の反省 と教訓」 『合計』第178巻第 1号 (20107月)参照),あ くまで,比較 ・歴史的な検討 に取 り組んで きた者 (私)が果た して どう応 じるこ とがで きるのか,それが,本文で意識 されている問題である。

3) 国内外の古い規定や文献 を紹介するという作業 には,古語 ・外国語の翻訳 ( 代語訳 ・日本語訳) とい う資料作成的な意味はあ り得て も,それだけで簿記 ・会 計研究 を進展 させ るような追加的な含意があるのか どうかまではわか らない。当 然であるが,規定の内容 も文献の内容 も,それぞれの原典にすでに書かれている のだか ら,それを復唱す ることの意義は, 自明ではない。

4) 時代 を問わず,他国のルールと日本のルールとの違いを紹介 して,そこか らほ ぼ直接的に,参考になる」 とか 「日本 に導入すべ き」 といった見方が示 される こともあった。 しか し,違っているとい う事実 と,参考になるとか導入すべ きと い う見方の間には,即座 につ なげるには決 して小 さ くはない距離があるはずであ る。個 々の具体的なルール以前に,それを取 り巻 く環境 を含めた歴史的な文脈が 異 なっている場合,他国でうま く機能 しているルールでさえ 日本ではうま く機能 しない場合があ り得ることは, もはや否定されないであろう。それがふまえ られ ているのなら,上記の ような見方は梼措 されるはずである。

5) 研究者のだれ もがまった く (あま り)取 り組んでこなかったのは,明示的にせ よ暗黙的にせ よ,その作業に意味がない (少 ない) とか,研究者が率先 して取 り 組むべ き問題ではない (実務家やマスコ ミ,州版社 (編集部)が取 り組んだほう が効率 も効果 も高い), とい う合意があったか らか もしれない。その可能性 をふ まえれば,取組みの少なさという表面的な事実だけでは,検討のための積極的な 理由にな らないのであろう。

もっとも,先行研究の少なさが,一層,新たな取組みの価値 を高める事情 もあ り得る。たとえば,可能であるのにだれ も取 り組んでこなかった作業があるとし て,知 られていなかったその重要性 を明 らかにで きる場合や,重要 とみ られてい て も不可能であった作業がなん らかの事情 (新 しい技術の開発やアイデ ィアの着 想等)によって可能になった とい う場合,それに取 り組む積極的な理由が生 じ得 る (明確 にな り得 る)であろう。

いずれにして も,以上の ような意味で,研究の量 (多寡) とともに質を考える という,だれ もがわかっているはず (わかっているつ もり)のことを,たてまえ で終わ らせないように, 自戒 したい。

(5)

て,今で こそ世界規模で評価 される研 究業績 も,当初はまわ りか ら無視 されて いた り,その研究を した本人で さえ明確 には意義 ・必要性 を見出せていなかっ た りとい うケースは,たびたび見聞 きするところである。そ してそのように, 事前 には意義が必ず しも明 らかではなかった ところに,いわば偶発的にで も発 見や展 開を もた らす研 究業績 について一層,「意外 な」 とか 「思いがけない」

といった形容があてはまるのか もしれない。

それで もやは り,合理的な事象や処理 (会計処理) を想定 しようとした り, 不合理 (にみえそ う)な現実 について さえも説明の合理性 は確保 しようと試み る私たちの姿勢は,含意の示 し方 を含めた研究 目的にも貫かれるのが,やは り 合理的であろう。合理性,含意, 目的を, 自らごまかせ ない。 ぎりぎりまで含 意 を明示 しようとす る意識 は,それが展望的な ものであれ近視眼的な ものであ れ,他の研究者や偶然 に含意の評価 ない し展 開を任せ きって しまう態度 とは, 同 じではないはずである

後者の ような態度か ら本稿 も自省 ・脱却 して,「基礎研 究」 とか 「研 究の多 様性」 といった表現 を,適切 な意味を超 えてア ド ・ホ ックに (意義のあいまい な作業の逃げ道に)使わないように,前節で掲 げた 目的の必要性 をひときわ明 示的に確認 してお きたい。それが,本節 における以下の記述の狙いである

本稿のベ ンチマークとしての株 式会社会計制度における伝統的資本概念 これまでに私は, 日本の株式会社会計制度における伝統的資本概念を明 らか にする拙稿6)を公表 して きた。そ こでは,同制度の直接 的な源流 とみ られる, ドイツ株式会社会計制度の出発点,つ ま り,ドイツの有力な‑王国であったヴユ ル テ ンベ ル クの1839年商法草案 (EntwurfeinesHandelsgesetzbuchesftirdas K611igreicllW亡1rttembergmitMotivell)まで遡 っている。そ して,同草案い

らいの株式会社会計制度における資本概念は, ドイツでは現在 もなお, また,

6) わが国株式会社会計制度における伝統的資本概念の特質一会計理論における 資本概念を財産分配局面で利用する合理性の尺度(1)(2)(3・完)」 『愛知経営 論集』第155号 ・第156号 ・第158 (20072・20077・20087月)

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142 商 学 討 究 第61巻 第2 ・3

日本で も最近 まで,フローに もとづ くのではな く,「充実 (拠 出)されるべ き」

とか 「維持 され るべ き」 といった,当事者 間の合意それ 自体 に もとづいて きた ことを確認 した。

そ こで重要 とみ られたのは,起源云 々に関わる表面的な側面 よ りも,合意 に もとづ く資本概念が,その生成か ら200年近 くに もわたって,ドイツ(ない しヨー ロ ッパ) で も日本‑ も定着 して きた とい う, よ り実質的な側面であ った。その 生成 ・確立 に,実務か らの帰納 (ボ トムア ップ) 的な側面があった場合 はなお さらであ るが,権力 による超越 的な決定 (トップ ダウン)の側面があった場合 で も7),合意 に もとづ く資本概念が, とにか くも長期 間にわた って先進諸国の 実務か ら排 除 されなか った ことは,軽視 しに くい と思 われるのであ る。 なぜ な ら,その資本概念 も,時代や地域 ,経済的環境 を超 える普遍 (的有用)性 を もっ て きたか らこそ廃止 されなかった, とい う可能性 がない とはいえないか らであ る。合意 に もとづ く資本概念が,時間 ・距離 ・環境 に耐 えて,制度的 ・実務的 に生 き延 びて きた概 念であ った ようにみ える, といいか えて もよい。

それに もかかわ らず合意 に もとづ く資本概念は,少 な くとも日本の会計学界 では, フローに もとづ く資本概 念 (払込資本ない し拠 出資本) として解釈 され て きた。 この ことは,それ 自体がなぜ なのか と関心 をひ く現象であ った とみ ら れ るの と同時 に,多少 とも注意 を喚起す る現象で もある とみ られた。 とくに後 者 の見方 の理 由についてい えば8),それは, もともと合意 に もとづ いて きた概 念 を,それ とは異 なるフローに もとづ くもの と同一視す るな ら, まず,平成13 6月の商法改正以 降に生 じていた資本概 念 をめ ぐる議論 を, よ り意義 のある かたちで適切 に分析 ・整理 で きない とみ られたか らであ る。 さらには,資本の

7) この事情については,前掲拙稿 「わが国株式会社会計制度における伝統的資本 概念の特質(2)」,とくに,31頁以下を参照されたい。

8) 前者の見方の理由については,前掲拙稿 「わが国株式会社会計制度における伝 統的資本概念の特質 (1)」,第1章第2節 を参照 されたい。また,後者の見方の 理由についてもより詳しくは,同 じ拙稿の同 じ箇所 と,さらに前掲拙稿 「わが国 株式会社会計制度における伝統的資本概念の特質(3・完),119‑121頁を参照さ れたい。

(7)

数値 を もとに計算 され る比率等 の解釈 ・使 い方や, 同 じく資本の数値 を規準 に した分配親制 についての理解 に,多か れ少 なかれ誤差や誤解 が もた らされかね ない とみ られた こと も,理 由であ った9)。

以上 の ように, この合意 に もとづ く資本概 念 は, フロー に もとづ く資本概 念 の特徴 を浮 き彫 りに して,議論 の整理 や概 念の理解 を補助 す る, 1つのベ ンチ マ ー ク とみ られ るの であ った10)。 そ して また本稿 に とって は,次 に述 べ る と お り,別 の意味で もベ ンチマー クの役 割 を果 たす ことになる

株 式会社 会計制度 における資本概念 か ら会計制度一般の資本概念 の あ り方へ わが国株式 会社 会計制度 にお ける資本概 念 は,すで にふれた とお り, ドイツ で初めて株式 会社規 定 を もった1839年 ヴユルテ ンベ ル ク商法草案 に起源 を もつ ものであ って, と くに ドイツの株式会社 会計制度 にお け る もの としては,それ 以 上 に起 源 を遡 る こ とはで きない11)。 ところが 同草 案 は, その株 式 会社 会計 制 度の資本概 念 につ いて まで も,株式 会社 の規定 を もた ない1794年 プロ シア普 通 国法 の規定 (社 員 (出質者)全員が無 限責任 を負 う,商事 会社 の規定) を参 照 しなが ら起草 されていた, とみ られ るのであ る12)

9) このことは,わが国株式会社会計制度における資本概念がフローにもとづいて い くようになった,現時点で もいえることである。なぜなら,現在すでに計上さ れている資本の金額のほとん どが, もともと合意にもとづいて計上 (当初認識お よび当初測定)されたものだか らである。たとえ,ルール変更後の資本がフロー にもとづ くになっても,それは,変更前の資本が合意にもとづいていたことまで をも変えるわけではない。

10) その点で,本稿脚注6で示 した拙稿における仮説の 「検証」は,統計手法 を用 いる実証研究の方法には及ばず,その仮説が適時的にも共時的にも, どれだけ多 くの事象や,概念ないしルールと共存で きるか (矛盾 しないか) という規準で行 われていたにとどまることになる (ここではとくに,内井惣七 『科学哲学入門一 科学の方法 ・科学の 目的』世界思想社,1995年,第4章参照)

ll) 株式会社会計制度としては,1838年オランダ商法におけるものが先行 している が,そこに,わが国株式会社会計制度における資本概念の起源があるとはいいづ らいのではないか と,ここでは見込まれている。詳 しくは別稿にゆずるはかない が,手がか りは,安藤,前掲書,第4章の第2節および第3節である。

12) EntwurfeinesHandelsgesetzbuchesftirdasK6nigreichWtirttembergnit Motiven,Ⅱ.Theil,Motive,Stuttgart,1840,261条理由 (230頁),お よび,206

(8)

144 61 2 ・3

この よ うな, ヴユルテ ンベ ル ク商法草案 に対す るプロ シア普通 国法 の影響 を 辿 る とい う意味で,本稿 には, わが国 (株 式会社 )会計制度 にお け る資本概 念 の起源 を遡 る拙稿 の続編, とい う位置づ けを与 えることがで きる。 その文脈 に お いて, ヴユルテ ンベ ル ク商法草案 い らいの株式 会社 会計制 度 にお ける伝統 的 資本概 念 (合 意 に もとづ く資本概 念) は,比較対 象 ・評価規準 として次節以 降 で用 い られてい くベ ンチマ ー クになる と同時 に, あ るい はそれ以前 に,上記 の 意味 にお ける 「続編」 としての本稿 の,起 点 にな ってい る

そ こで は,有 限責任社 員か らなる会社 の資本概 念 と,無 限責任社 員か らなる 会社 の資本概 念 との, と くに共通点 を探 る作業か ら,含意が引 き出 され る と見 込 まれてい る。 とい うの も,その作業 はつ まる ところ,必ず しも企業 の形態 を 問 わない,会計制度上 の資本概 念 につ いての一般性 にふ れ る とい う性格 を もつ か らであ る13)。 と りわけて この こ とに,本稿 が プ ロ シア普通 国法 を検 討対 象

とす る理 由があ る

結論 を少 し先取 りす る こ とにな るが, その一般性 とは, 「拠 出資本 と留保利 益 の 区別」 (以下 ,単 に 「区別」 と呼ぶ こ とが あ る) の, よ り広範 囲 にわた る 企業形態 での利用 であ る。 た しか にその具体 的な意味内容 は,資本概 念 のあ り 方 に影響 を受 け る ものの, それで も,有 限責任社 員の会社 にあたか も必然 的 に

条理由 (183‑185頁)参照。そこでは,株式会社の配当ない し資本概念に関わる 規定 (261条)の参照先 として,合名会社の同規定 (206条)があげられ,そ して その理由書が,プロシア普通国法の商事会社規定 (28656条) を参照 して いるのである。このことについては,安藤,前掲書 (新版。以下同 じ),190‑193 頁 もあわせて参照。

13) 加えて,1839年ヴユルテ ンベルク商法草案が,1807年フランス商法や1838年オ ランダ商法を参照 して起草されていたこと (たとえば,前掲理由書,206条理由(183

‑185頁)参照) と, 1794年 プ ロシア普通 国法 が, 1673年 フラ ンス商事勅令 (Ordonnanceducommerce)の影響 を受けていたといわれること (たとえば, Barth,K.,DieEntwicklungdesdeutschenBilanzrechts,1.Bd.,Stuttgart,1953 年,66頁 (松尾憲橘 ・百瀬房徳共訳 『貸借対照表法の論理』森山書店,1985年,20 頁)参照) も,ここでは念頭 にある。つま り,ヴユルテンベルク商法草案か らプ ロシア普通国法に遡 ってお くことは,このあとさらに,フランス商法やオランダ 商法か らの流れを検討するための橋渡 しの意味 ももつ という認識が,本稿にはあ る (その検討結果が どうなるのかは,ひとまずおいて,である。本稿脚注11参照)

(9)

結 びつ けて考 え られやすい 「区別」が,無 限責任社 員の会社 (や級合) につい て も前提 とされ ていた こ とが確 認 され る。 この こ とが示 す の は, 「区別」 は, 債権者 のため とい うこと以前 に, 出資者 と経営者 の間の財産分配 をめ ぐる利害 調整14)のため に利用 されていた, とい うこ とであ る

なお, プロシア普通 国法 が想 定 していたその利 害調整 は,現在,少 な くとも 研 究者 の 間ではほ とん ど想 定 されない ほ どに具体 的で,特殊 であ る ようにさえ み えるか もしれ ない。 その ように思 われ る理 由の1つ は,そ こでの 「区別」が 事業 ごとに想 定 されていた と理解 で きることにあ る。私見 に よれば, と くに財 務 会計学 の分 野では暗黙 的であれ通常 了 区別」は企業全体 で1つの ものであ る,

と想定 されてい る (きた) とみ られ る15)。それ に対 して,事業 ごとの 「区別」

を想定す る規 定内容 を含 むプロ シア普通 国法 は,全体 と して,実務 のルールを 吸収 して起草 された ことが特徴 的であ る とみ られてい る16)。つ ま り同法 には,

14) この利害調整 自体 の想定 につ いては,Vehn,A.ter,DieEntwicklungder Bilanzauffassungenbiszum AHGB,ZeitschriftftirBetriebwirtschaft,6,Jg,, 1929,337頁による指摘が古い。

15) それは必ず しも, 日本の会計学界だけにみ られる傾向ではないと思われるが, わか りやすさを考えて,ひとまず 日本の会計制度における表現を用いていえば, たとえば資本金は,全体 としての1つであるというような見方が示されていた( こではとくに,上田明信 ‑吉田昂 ‑昧村治 『新商法解説 株式会社の計算』中央 経済社,昭和38,60頁参照)。 もっとも,その資本金は,厳密な意味での拠州 資本ではなかったが (本稿脚注6に示 した拙稿 を参照 されたい),会計学の立場 か らも,その資本金は払込資本ないし拠州資本 と呼ばれる場合がほとんどであ り, したがって払込資本をひとまとま りの単位 としてみることにも,おそ らく違和感 は強 くはもたれないであろう。

なお,いわゆる株式種類別経理は,資本金や資本剰余金,ないし,払込資本を, その名の とお り株式種類別に会計処理する方法 として論 じられていた (ここでは とくに,中村忠 『資本会計論 〔増訂版』白桃書房,昭和50,30‑32頁および76

‑79頁参照)。た しかに株式の種類の違いは,それによる資金調達の意図や運用 の使途,ひいては事業別の 「区別」につながる可能性 はある。 しか し,そこでは やは り,あ くまで株式種類別の経理までが考えられるにとどまり,たとえば普通 株式についての払込資本なら, どの事業のためであったかを問わず,ひとまとま りに扱われていたとみ られる (1つの手がか りとして,中村,前掲書,65頁参照)。

16) たとえば,AllgemeinesLandrechtftirdiePreuLSischenStaatenvon1794, Textausgabe,niteinerEinfiihrungYonHansHattenhauerundeinerBibliograpie vonGtlntherBernert,Berlin,1970年,お よび,AllgemeinesLandrechtftirdie

(10)

146 商 学 討 究 第61巻 第2 ・3

当時の財 産分 配 をめ ぐる利 害調整 の実務 を反映 した,デ ・フ アク トス タンダー ドない し一般 に認 め られた会計 原則 (GAAP)と しての,事業 ごとの 「区別」

が含 まれてい る とみ られ るのであ る17)。

もしかす る と,商法 ・会社法規定 を主題 にす る とい うだけで批判 があ り得 る か もしれ ないが, ここ (一連の拙稿) で法規定が題材 と して選 ばれてい る理 由 は,上述 の ような意味で表面 的でない,実 質的な特徴 に着 目 してい ることにあ る。意識 として は,結果 的 に会計基準 の形式 を とろ うと,法規定の形式 を とろ う と,GAAPと しての性格 を もつ 会計 ルー ルのあ り方 ・意義 が注 目され てい るのであ る

現在 にお ける 日本 の会計ル ール分析 への示唆

出資者 と経営 者 の ための,GAAPと して の 「区別」 の意義 は,債権 者 のた め の もの と比べ て,一 部 の論 者 に よる場 合18)を除 いて はあ ま り語 られ て こな か ったが, それ はなぜ であ ろ うか ? 「区別」 の意義 を債権 者へ の配慮 と結 び つ けて きた見解 の中 には,少 ない ものの,根拠 は さてお き結論 的 には明確 に, 出資者 と経営 者 の ための 「区別」 の意義 を否 定す る見解 もあ る19)。 しか し, 他 方 で多数 は,上述 の意義 につ いて沈黙 してい る ようであ る。 その場合 , この 議論 の結論 とい うの は, どの よ うな方 向 に向か ってい る と理解 すれ ば よいので PreuLSischenStaatenvon1794.niteinerEinftlhrungvonHansHattenhauer undeinerBibliograpieYonGtintherBernert,3,,erw.Auf1.,Berlin,1996年の序

(Vorwort)ない し導入 (Einftihrung)や,安藤,前掲書,第5章第21,お よび,百瀬房徳 『貸借対照表法の生成史』森山書店,1998, 3頁参照。

17) もともと 「拠汁l資本 と留保利益の区別」は多様であ り得るのであって,その中 か ら,個 々の企業における 「区別」の具体的なあ り方が,当事者間の合意にもと づ く選定によって決まるとみ られるのであった (このことについては,払込資 本 と留保利益の区別」の多様性 と当事者間の合意による選定」 『経営総合科学』

88 (20073月)を参照 されたい)

18) これについては,拙稿 「払込資本 と留保利益の区別」 と州資者 ・経営者の利 害調整」安藤英義先生退官記念論文集編集委員会 『会計学論考一歴史と最近の動 向』中央経済社,2007年,第10章 を参照されたい。

19) ここでは,斎藤静樹 『会計基準の研究 (増補版)』中央経済社,2010,139 参照。

(11)

あろうか ?

これ らのことについての具体的な検討はあ とで行 うが,そ こか ら,比較 ・歴 史研究の現代 における意義の (もちろんすべてではないにして も)一端が確認 され得 ると本稿 はみている。本稿で取 り上 げ られるの も,すでに公 になってい る規定の内容であるが,それ らが取 り上げ られるのは,翻訳 ・資料作成 までを 目的 としているか らで もなければ,歴史ある ものへの純粋 な憧れや素朴 な好奇 心 によるので もない。そこでの歴史的な制度 ・ルール比較 に,現在の 日本 と断 絶 されない,時間の縦糸で結ばれるような意味を意識す ることで,アイデ ィア の再発見や経験の忘却 を予防 して,研 究の進展 を意図的に補助することがで き ると考え られているか らである

た とえば,上述の ような 「区別」 に もとづ く利害調整ルールがあったことを 知れば,当然,その うえでの判断が可能になるであろう。 もちろん,そこでの

「区別」の使い方が,当時 においては慣行的であった として も,現在において まで有用であるか どうかは仮説の域 を出ず, これはあ らためての検証対象 とな る。それで も,検証 される (べ き)仮説が,新たに構築 ・追加 され得 ることや, 忘却 されずに済むとい うこともまた,た しかであろう。それでこそ,その先の 実証の意義 も, さらに高 ま り得 るはずである。先行研究がふ まえられないのが 生産的でないの と同 じように, とくに実務 を反映 した歴史的なルールのあ り方 がふ まえ られないの もまた, (関心が現在 に向いている場合で も)生産的 とは 思 えない。

ひとくちに歴史研 究 (による現在‑ の示唆) といって も,その意味内容は自 明ではないか ら,取 り組む根拠 に慎重であ りたい。だか らこそ,あ くまで概要 としてではあるが,本稿では上述のような意味での現在への示唆が会計 ルール の歴史研 究によって もた らされ得 る, とい う見込みを示 しておいた。そ して, それを具体的に確認 しようとす るのが,次節以下の作業 とい うことになる

(12)

148 61 2・3

3 プ ロ シア普 通 B]法 の組 合 規 定 ・商 事 会 社 規 定 にみ る 事 業 ご との 拠 出 に も とづ く出資 者 ‑経 営 者 間 の利 害 調整

1794年 に公布 ・施行 された プ ロ シア普通 国法 (AllgemeinesLandrecht ftirdiepreussischenStaaten)は,民法,商法,行政法等 にわた る広範 な法典 であ る20)」。 その内容 の うち,本稿 の 目的 に照 らして主要 な検討 の対象 になる のは,商法 に該 当す る部分 であ る。 これ についての重要 な理 由の1つ は, 「 代 商法 において,広 く商人一般 を対象 とした会計規定は1673年 フラ ンス商事勅 令 に始 まるが, しか し特 に会社 の会計規定 といえる ものは,私 (安藤英義教授 一 石川)が知 る限 りプロシア普通国法 に始 まる21)」 とい うことにある

その1794年 プロシア普通 国法 の規定の中で も,本稿が とくに関心 を向けるの は,社 員 (出質者)全員が無限責任 を負 う商事会社 (Handlungsgesellschaften) の資本概 念 に関わる規定である。 この規定 は, ドイツで初めて株式会社規定 を もった1839年 ヴユルテ ンベ ル ク商法草案 の参考 に されていたのであ り, した が って, わが国 (株式会社)会計制度の資本概念 についての理解 を助 ける源流 を, ここでみ ることになる

なお,商事会社規定が置かれてい る,プロシア普通国法第2編第8章の第614 条 は, 「商事会社 においてほ,別段 の規定が ここでな されていないか ぎ り,組 合契約の一般規定 (1編 第17章 第186条以下)が適用 され る22)」 と定めてい る。 したが って,商事会社 についてのルールを適切 に理解す るには,組合 につ

20) 安藤,前掲書, 20頁。プロシア普通国法についての,比較的最近の評価につい ては,本稿脚注16で示 した文献のほかに,たとえば,Koselleck,R.,PreuLSischen zwischenReform undRevolution,AllgemeinesLandrecht,Verwaltungundso zialBewegungvon1791bis1848,Stuttgart,1967年や,D61emeyer,B.undH. Mohnhaupt,hrsg.,200JahreAllgemeinesLandrechtftirdiePreuLSischen Staaten,WirkungsgeschichteundinternationalerKontext,Frankfurtam Main, 1995年を参照。

21) 安藤,前掲書,184頁。

22) 訳については,ここでは,安藤,前掲書,53頁における訳をほぼそのまま引用 させていただいた。

(13)

いてのルールをみてお く必要が あ る

そ こで本節 で は,先 に組合 についての規 定,次 いで商事 会社 についての規 定, とい う順番 で,資本のあ り方 を示 唆す る規定 をみてみ よ う。よ り具体 的 には,「 出 につ いての判 断 に際 して (inAnsehungderBeytrage)」 とい う題 目の もと に置かれた規 定か ら,そ こで想 定 されてい る とみ られ る資本概 念の手がか りを 探 ることにす る

それ らの規 定 は,会計処理 に直接 に関わる規定 とい う意味 での,会計規定で あ る とはいいづ らい。 しか し, その意味での会計規定だ けか らほ,特 定 の概 念 を十分 には理解 で きない こ とさえあ った とい うのが,過去 の拙 稿23)で も学 び 取 られた教訓であ る。 む しろ,会計規 定以外か らも,資本概 念 につ いての手が か りが得 られ る場合 があ る とい って よい。次 に示 してい くプ ロシア普通 国法 の 規 定か らもまた,その ような成果が得 られ る ことになる

組合 にお ける 「拠 出 についての判断 に際 して」 の規定

プ ロ シア普通 国法 にお け る組合規 定 (1編7章) の うち,下 に示 してい く規 24)の,本稿 に とって重要 と思 われ る特徴 を,前 もって ここで述べ てお こ う

その ほ うが, (読 み方 にバ イアス をか け るか もしれ ないが) やや多 めの規 定 の 理解 も容易 にな るであろ う25)0

23) 本稿脚注6参照。

24) 資料は,本稿脚注16で示 した文献。

25) 規定を示すにあたって,い くつか確認 してお きたいことがある。

まず,1794年プロシア普通国法においでは,条文に条項数が示 されているが, たとえ異なる条項数でもそれ らが連続 している場合,そこでの各条文がひとつな が りの文のようになっていることがある。たとえば,第1条の終わ り方が 「‑し なければならない。」であるとすると,第2条が 「それにもかかわ らず,‑」 と 続 くことがある。現在の私たちにとっては,1条の規定にもかかわ らず」といっ た丁寧な書 き方のほうに馴染みがあるのだろうが,本稿では基本的に,原典に即 した訳を示す ことにする。

また,同法では,ある場合に限定ない し特定 して適用されるルールが記述 され るときに,たびたび,

‑である場合 :その ときは‑である。 というように,コロンやセ ミコロンを用いて

(14)

150 第61 2 ・3 それ らの特徴 は,大 きく分 けて次の とお りであ る

(訂 組合員 (出資者 ない し経営者)どうしの拠 出をめ ぐる利害調整 について, 詳細 な規定が置かれていること

事業 ごとの拠 出 と利益持分が想定 されてい ること

合意 に もとづ く資本概念の手がか りが薄弱 であること

189

契約 に別段 の定めがなければ,各組合員は,共有 の基金 (Ponds)のた めに,同 じ割合 で拠 出を行 う (beytragen)義務 を負 う

190

あ る個 別 の組 合 員 が 明確 に契約 した もの よ り大 きな拠 出 (mehrere Beytrage)につ いて,その者 は, どうい う事情 の もとで も,他 の組合員

によって促 され ることはない。

191

ただ し,その ような よ り大 きな拠 出がな く,共有 され る究極 的な 目的の 達成が まった く遂 げ られない場合 :組合か らの脱退 を しようとしない組合 員は, (拠 出を‑ 石川)促 され得 る

192

この事情の もとで, さらに明確 に申 し合 わ された拠 出によって も究極 的 な 目的が達成 され得 ない場合,各組合員は,契約期 間の満了前 で もなお, 組合 を脱退す る権利 を も

193

新 た な拠 出によって,組合 の事業 (Geschafte)が さ らに拡張 され るべ き場合 ;ただ し,その対象が変 わ らない ままである場合 :他 の組合員は, 自らの判断で, この拠 出を増加す ることがで きる。

場合ないし条件 : (;)

[ 垂二 重

]

という関係が規定されることがある。これについても,現在の私たちにはあまり 馴染みがないと思われるが,基本的に原典の表現に従ってい くことにしよう。

(15)

194

しか し彼 らは,それをしない組合員に対 して,均等な増加 を強要するこ とも,その拒絶 を理由に組合員を除名することも,で きない。

195

反対 に彼 らがで きることは,拡張 される事業 において生 じさせ られた利 (Gewinn)について,増加 させ られた拠 出の割合 に もとづ き, よ り厚 い持分 (Antheil)を求めることだけ,である

196

それに対 して,他の組合員が,新たな拠 出によって,彼 らの結び付 きの 目的を,そ こでそれまでに運営 されていない新たな対象 に広げようとする 場合 :そのための拠出を拒絶する者は,この拡張 される事業の持分(Theil)

を受 け取 ることについて,義務 も負わない し,権利 ももたない。

197

その場合 に他方で,他の組合員の結 び付 きは,彼 らによってのみ構成 さ れる1つの新 しい組織 (Societat)と見なされる

198

組合事業の運営のために調達 される基金(zusammengetragenerFonds) は,締 結 された契約上 の時点か ら,共有 の財 産 (gemeinschaftliches Eigenthum)と見なされる

‑ (土地 ・動産の拠 出 ・共有等 に関する第199条 一第202条は省略) 203

規金 によるのではない拠 出の履行 (LeistungseinerBeytrage)につい て遅滞する者は,その遅滞 によって生 じる損害について,組合 に対 し賠償 を行 わなければな らない。

204

現金拠 出 (Geldbeytrage)の遅滞 された払込み (Entrichtung)の場合, 他の組合員は,損害賠償のかわ りに,法定の遅延利息 を請求す ることを選 択で きる (括弧内の参照規定は省略‑石川)。

(16)

152 第61 2 ・3 205

組合 が 開業 す れ ばす ぐに,利益 と損失 (NutzenundSchaden)は,拷 分割合 に もとづ いて,組合 員 に共有 され る

出資者 ‑経営者間の拠 出をめ ぐる利害調整

189条か ら第191条 は,組合 員の拠 出の義務 と非強制 に関す る規 定,続 く第 192条 は,組合 員の拠 出 目的の未達成 と脱退 に関す る規 定,そ して,第193条お よび第194条 は,特 定 の場 合 の新 た な拠 出 とその非 強制 に関す る規 定 であ る

これ らは,拠 出 をめ ぐる組合員 (出資者 ない し経営者) どう しの対立 を緩和 す る,利 害調整 のため の規 定 と位 置づ け る こ とが で きよ う26)。 その詳細 さ ・具 体性27)は,規 定 の数 か らい って も内容 か らい って も,現 在 の 日本 にお け る同 じ目的の組合規定 (民法669,674,678条参照) と比べ る と,明確 であ る

そのあ との第195条お よび第196条 も, 出餐者 ‑経営者 間の 同 じ利 害調整 に関 わ る規定 に含め られ るであ ろ う。 ただそれ らは,前述 の規定 と比べ て,利益持 分 に関係 す る ものであ る点 で特徴 的であ る28)29)。

26) とくに事業道営の方法に関わる規定であるので本論文では示 していないが,同 様の趣旨をもつ規定としてほかに,第208条 と第209条 をあげることができる。

27) このような特徴 をもつ,プロシア普通国法の もとでの州資者 ‑経営者間の利害 調整のための配慮は,本文には示 さなかった次の規定か らも読み取れる。

170

結び付 きの 目的,お よび,それに到達する際の,そ して,到達するための結 合関係はつねに,物財の区別な く(ohneUnterschleddesGegenstandes),書 面での契約によって,詳細 な処分についてまで (beyStrafederNichtigkeit), 定められなければならない。

28) 196条 と利益持分 との関わ りについて, とくに念のためにいえば,同条はそ れを「拡張 される事業の持分」に含めるというかたちで,利益持分に関わっている。

29) 本稿脚注26と同様,とくに事業運営の方法に関わる規定であるので本論文では 示 していないが,利益持分 をもとにした利害調整の趣 旨をもつ規定としてほかに, 212条をあげることがで きる。

参照

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