論文の内容の要旨
氏名:保 坂 敦 子
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:胆嚢長軸方向のCT-MPR画像を用いた胆嚢癌診断
背景:胆嚢癌は、日本国内において5年相対生存率が22.5~19.9%と腹部臓器悪性腫瘍において予後不良 な癌腫の一つである。しかし、消化管癌と異なり術前の組織診断は未だ安全に施行困難であるため一般化 されていない。術前の画像診断と血液検査で手術戦略が決定されるが、胆嚢壁の肥厚を伴う慢性胆嚢炎や 大きさ10mm以上の胆嚢ポリープなどの良性腫瘍と胆嚢癌の鑑別は困難である。よって、術前に良性胆嚢 疾患として治療を受け偶発性の胆嚢癌が指摘される例、良性疾患に拡大手術を余儀なく施行される例が問 題である。その対策として、さらなる術前診の正確性の向上と適切な術式の選択に対する検討が必要であ る。
目的:胆嚢隆起性病変に対する、胆嚢床を含めた胆嚢長軸方向の任意多断面再構成像(multi-planar
reformat; MPR)の術前診断の正確性向上における有用性を検討することを目的とした。
対象と方法:2006年から2010年の間、複数の術前画像検査で胆嚢床側の胆嚢癌と診断され手術を施行さ れた54名の患者を対象とした。最終病理組織診断で、胆嚢癌30名、胆嚢良性疾患24名の2グループに 分けられた。MPR画像は、術前に撮影された多列検出器型CT(multi-detector row CT ; MDCT)のデー タを使用した。MDCTの門脈相データから胆嚢床を含む胆嚢長軸MPR画像を再構築し、胆嚢の石灰化(胆 石、胆嚢壁内結石、胆泥、総胆管結石)、胆嚢と肝臓境界部の低吸収域層、胆嚢粘膜層連続性の破綻、胆嚢 壁の厚さ(最大厚、最小厚)、胆嚢壁厚比(最大厚/最小厚)、胆嚢腫瘍近傍の胆嚢床部の単独造影効果に ついて評価した。また、胆嚢腫瘍近傍の胆嚢床単独造影効果と組織学的深達度との関係を評価した。
結果:胆嚢長軸MPR画像では、胆嚢粘膜層連続性の破綻(胆嚢癌93% [28/30例] v.s. 良性疾患13% [3/24]、
p値<0.001)は、胆嚢癌に有意な所見として認められ正診率91%であった。胆嚢粘膜層連続性の破綻は、
良悪性の多変量解析で唯一の独立規定因子であった(オッズ比8.5、95% CI:5.99–28.1、P値 < 0.001)。 胆嚢壁厚比(最大厚/最小厚)は胆嚢癌で有意に大きく(6.8 [1.92–14.0]v.s.5.83 [2.3–8.69]、P値=0.04)、 胆嚢癌の局所的壁肥厚の性状を示唆した。腫瘍近傍の胆嚢床限局性造影効果は胆嚢癌に有意な所見であっ た(40.0% [12/30]v.s.12.5% [3/24]、p値=0.03)。組織学的深達度pT3症例では胆嚢長軸MPR画像で88.9%
(8/9例)に造影効果を認め肝浸潤を示す所見といえた。
結語:胆嚢長軸MPR画像は、胆嚢床側の胆嚢癌における術前診断の向上に寄与できる。