ベクトルと行列 参考資料 2 ( 演習問題解答 ) 2020年度第
2ターム
学芸学部数学科
1年
(木曜
3,4限
/オンライン講義
)担当
:原 隆
(学芸学部数学科・准教授
)■演習問題解答
演習問題
2-1. a=
1 2 0
,b=
3 2 1
,c=
−1 1 1
である。
(1) a×b=
1 2 0
×
3 2 1
=
det
"
2 2 0 1
#
det
"
0 1 1 3
#
det
"
1 3 2 2
#
=
2
−1
−4
である。
(2) 6a+b= 6
1 2 0
+
3 2 1
=
6·1 + 3 6·2 + 2 6·0 + 1
=
9 14
1
より
(6a+b)×c=
9 14
1
×
−1 1 1
=
det
14 1 1 1 det
1 1 9 −1
det
9 −1 14 1
=
13
−10 23
である。或いは
(6a+b)×c= 6(a×c) +b×cであり、
a×c=
1 2 0
×
−1 1 1
=
det
2 1 0 1 det
0 1 1 −1
det
1 −1 2 1
=
2
−1 3
,
b×c=
3 2 1
×
−1 1 1
=
det
2 1 1 1 det
1 1 3 −1
det
3 −1 2 1
=
1
−4 5
,
であるから
(6a+b)×c= 6
2
−1 3
+
1
−4 5
=
13
−10 23
となる。
(3) (a×b)×c(1)=
2
−1
−4
×
−1 1 1
=
det
"
−1 1
−4 1
#
det
"
−4 1 2 −1
#
det
"
2 −1
−1 1
#
=
3 2 1
である。
(4) a×(b×c)(2)=別解
1 2 0
×
1
−4 5
=
det
"
2 −4 0 5
#
det
"
0 5 1 1
#
det
"
1 1 2 −4
#
=
10
−5
−6
である。
babababababababababababababababababab
コラム ベクトル三重積
本問
(3), (4)で登場した
3つの空間ベクトルの外積
(a×b)×cなどを
(スカラー三重積と 対比させて
)ベクトル三重積
vector triple productと呼ぶ。
(3), (4)の計算結果からも分か るように、外積に於いては 結合法則が成立しない
(!!)ので、ベクトル三重積を表す際には 必ず括弧
( )を付けて積の順番を明示する必要がある。ベクトル三重積に対しては、例えば
(a×b)×c= (a·c)c−(b·c)a (
ラグランジュの恒等式
) (a×b)×c+ (b×c)×a+ (c×a)×b=0 (ヤコビの恒等式
)など、様々な公式が成り立つことが知られている。講義ではこれ以上踏み込まないが、興 味を持った人は例えば 飯高茂『内積・外積・空間図形を通してベクトルを深く理解しよう
(数学のかんどころ
1)』
(共立出版
)などの文献を読んでみることをお薦めしたい。
演習問題
2-2. a=
1 2 0
,b=
2 5 1
である。
(1) |a|=
1 2 0
=√
12+ 22+ 02=√
5
なので、
e1= 1|a|a= 1
√5
1 2 0
である。
(2) a×b=
1 2 0
×
2 5 1
=
det
"
2 5 0 1
#
det
"
0 1 1 2
#
det
"
1 2 2 5
#
=
2
−1 1
かつ
|a×b|=
2
−1 1
=√
22+ 12+ 12=√ 6
なので、
a,bに直交する大きさ
1のベクトルは
± 1√6
2
−1 1
である
*1。
e2はこの
2つのベク
トルのうち
z座標が負であるものなので
e2=
−2 1
−1
である。
(3)
外積の定義より
e3=e1×e2= 1
√5
1 2 0
× 1
√6
−2 1
−1
= 1
√30
det
1 −2 2 1
det
2 1 0 −1
det
0 −1 1 −2
= 1
√30
5
−2 1
である
*2。
※ 本問のように、ベクトルの外積は
2つの
(平行でない
)ベクトルに直交するベクトル を求める 際に非常に役立つ。特に平面の方程式
(次回扱います
)を立式する際に 法線ベクトル
normalvector
を求める際には、外積が大活躍します。
演習問題
2-3.とにかく最初に
3次行列式
det ha b c i
を計算しましょう。あとはその符号を確認すれば……。
(1) a=
1 1 1
, b=
−1 2 2
, c=
0 4
−3
.
det
a b c
= (a×b)·c=
det
1 2 1 2
det 1 2
1 −1
det
1 −1 1 2
·
0 4 3
=
0
−3 3
·
0 4 3
=−3.
*1外積を計算したら、直ぐにa,bと内積をとって0となることを確認するように心掛けよう。
*2e1,e2 は直交する大きさ1のベクトルなので、e1とe2の張る平行四辺形(=正方形)の面積は1である。したがっ てe1×e2の大きさが1であることは、外積の性質(ⅱ)から自動的に従う。
よって求める平行六面体の体積は
3。また、
det ha b c i
>0
より、
a, b, cはこの順で 左手系 をなす。
(2) a=
1
−1 0
, b=
−1 2 1
, c=
−1 1 4
.
det
a b c
= (a×b)·c=
det
−1 2 0 1
det 0 1
1 −1
det
1 −1
−1 2
·
−1 1 4
=
−1
−1 1
·
−1 1 4
= 4.
よって求める平行六面体の体積は
4。また、
det ha b c i
>0
より、
a, b, cはこの順で 右手系 をなす。
(3) a=
2 1 3
,b=
−1 4 5
,c=
3
−2
−1
.
det
a b c
= det
2 −1 3 1 4 −2 3 5 −1
=−4.
よって求める平行六面体の体積は
4。また、
det ha b c i
<0
より、
a, b, cはこの順で 左手系 をなす。
(4) a=
√3
0 7
,b=
4 1 9√ 3
,c=
√3
−2 10
.
det
a b c
= det
√3 4 √ 3
0 1 −2
7 9√ 3 10
= 3√ 3−2.
よって求める平行六面体の体積は
3√3−2
。また、
det ha b c i
>0
より、
a, b, cはこ
の順で 右手系 をなす。
※
(1), (2)ではスカラー三重積を直接計算していますが、勿論どの問題もサラスの公式を用いて計算
しても構いません。
演習問題
2-4.
演習問題
1-4.のように、等式に現れる
3次行列式を サラスの公式を用いて
“展開
”して、両辺 を比較して証明しても構いませんが、非常に計算が繁雑になります。ここは、
3次行列式が スカ ラー三重積
scalar triple productで定義されていたことを利用して、
(1), (2), (3)の等式を 外 積の基本性質
(命題
2.1)に帰着させて証明することにしましょう。
x z y
平行六面体自体は同じもの
(1)外積の 歪対称性
(命題
2.1(1))より
det
x y z
= (x×y)·z
歪対称性= −(y×z)·z=−det
y x z
である。この等式は、
x,y,zの順で 右手系か左手系かと
y,x,zの順で 左手系か右手系かが
(x, yの順番を入れ換 えると
) “逆転する
”ことを表している
(右図を参照
)。
(2)外積の 双線形性
(命題
2.1(2))より
det
kx y z
= (kx×y)·z 双線形性= k(x×y)·z=k det
y x z
が成り立つ。この等式は、
xを
k倍すると、平行六面体の体積が
(符号も込めて
)*3 k倍され ることを表す
(下図を参照
;どちらも
x,y,zが右手系となるように描いています
)。
○1 k
○ x kx
z y 1 k
○1
|k|
kx x
y z
|k| 1
k >0 (kx,y,cは右手系) k <0 (kx,y, cは左手系)
x x′ x+x′ y
y
z z
(3)
内積・外積の 歪対称性
(命題
1.1 (2),命題
2.1(1))より
detx+x′ y z
={(x+x′)×y} ·z
双線形性= (x×y+x′×y)·z双線形性= (x×y)·z+ (x′×y)·z
= det
x y z
+ det
x′ y z
である。
この等式は、
x,y,zで張られる平行六面体 と
x′,y,zで張られる平行六面体
を合わせた図形の体積が、 等積変形
(右図を参照
*4)により
x+x′,y,zで張られる平行六面体 の体積と一致することを表している。
*3つまりkx,y,zが(この順で)右手系であるか左手系であるかが、x,y,zの関係と一致しているか逆転しているかも 含めて正しく反映されているということ。
*4実際、青色の平行六面体と赤色の平行六面体の共通面を含む平面(図に描き込まれた平面)に沿って、青色の平行六面 体と赤色の平行六面体を等積変形する(“ずらす”)と、緑色の平行六面体と一致します。